連邦最高裁 上院休会中のNLRB委員の大統領任命違憲判断について
25日~26日の連邦最高裁判決では、25日の携帯端末の令状なし捜査違憲判決(Riley v. California)は朝日・読売などが報道していた。エレオの月額8ドルで放送番組の生放送および録画放送を見ることができるというオンラインサービスが違法との判断(Am. Broad. Cos. v. Aereo, Inc. http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N7QIUK6VDLK601.html もネットを中心に我が国でも報道されている。
26日の中絶クリニック入口の35フィートバァッファーゾーン違憲McCullen v. Coakley (06/26/2014)判決http://www.latimes.com/nation/nationnow/la-na-nn-supreme-court-abortion-20140610-story.htmlは報道を確認していないが、オバマ大統領によるNLRB委員の休会任命は違憲判決Nat'l Labor Relations Bd. v.
Canning http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424127887323355204578264883161590380も多くのメデイアで報道されているが、このニュースの意味がわかりにくいのである。
NLRBとは不当労働行為の禁止や組合代表選挙の監督など1935年制定の全国労使関係法を執行する独立機関であるが日本の労働委員会と大きく違うのはILO原則にのっとった三者構成原則をとっていない。
我が国では今後3年間雇用の集中改革期間と位置づけているが、年収一千万以上のホワイトカラーエグゼンプション導入だけではインパクトはほとんどない。成長のためには抜本的に労働基準法をはじめとする労働者保護法のオーバーホールが必要だと思うが、それを阻んでいるのが政策決定過程での労政審議会などの三者構成原則である。結局労組側の言い分をある程度訊いて妥協したものになるので、政治主導の抜本的な改革ができないのである。
日本の労働組合組織率推定18%に対して、アメリカは11.3%、民間企業では6.7%にすぎないが、組織率が低迷している原因は、ニクソンやレーガンの時代に保守的なNLRB 委員が任命されて、団体交渉に枠をはめ、組合組織化を促進しない方向性での裁定をしてきたことが挙げられる。つまり政治主導で右傾化したのである。
一方、オバマは労働組合寄りでビジネス界には歓迎されないNLRB委員を任命しており、今回の判決で、訴訟当事者だけでなく3人の委員が任命されて以降のNLRBの1500件のの裁定が疑問視される事態となったので、アメリカ社会にとっては影響の大きな判決である。
反労働組合団体The National Right to Work Legal Defense Foundationは、自立した労働者の勝利でもあるとしている。
http://www.nrtw.org/en/press/2014/06/supreme-court-strikes-down-obama-recess-appointments-06262014
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