下書き)地方公営企業の職員の労働関係に適用できる法律、判例法理について(1)
(地方公営企業に適用できるものについて一般論をまとめた上で具体論に入ります。
(目次)
1.一般地方公務員との相違点
2.企業秩序定立維持権の判例法理が適用できる
3 施設管理権限の指導判例、国労札幌地本事件判決の判例法理は当然適用できる
○同判決の意義
(1)プロレイバー学説「受忍義務説」の明確な排除
(2)法益権衡論の観点での違法性阻却説の明確な排除
(3)抽象的危険説の確立
1.一般地方公務員との相違点
地方公営企業の労働の関係については一般地方公務員とは異なり私法関係とされる。都水道局時間外労働拒否事件東京高裁昭和43.4.26判決『判例タイムズ』222号202頁がそうであるが、ここでは都水道局時間外労働拒否事件 東京地裁昭和40・12・27判決『労働関係民事裁判例集』16巻6号1213頁を抜粋(一部略)して引用する。
「企業法〔地方公営企業法を指す〕は、地方公営企業の職員の身分取扱いについては原則として地公労法の定めるところによるものとし(三六条)、地方公務員法の職階制、給与、勤務時間その他の勤務条件、政治行為の制限等に関する規定は、職員に適用しない旨(三九条)を定めており、地公労法は‥‥職員の労働関係について原則的に労働組合法、労働関係調整法を適用するものとし(四条)、その労働条件に関しては団体交渉及び労働協約の締結を認め(七条二項)、右協定の内容が当該地方公共団体の条例、規則、予算に抵触する場相手の措置をも定めている(八ないし十条)‥‥もっとも、地方公務員法の任用(一五ないし二二条)、分限及び懲戒(二七ないし二九条)、服務(三〇ないし三五条、三八条)等に関する規定は、地方公営企業
の職員に対してもその適用があるけれども、これらの事項でも労働条件と目すべきものについては、なお団体交渉、労働協約、苦情処理、調停、仲裁の対象となりうるところである。(地公労法七条二項)。以上によると地方公営企業の職員の労働関係については‥‥私法的規律に服する契約関係とみるのが相当であり‥‥」とする。
民間私企業における労働契約関係と公務員の勤務関係とを区別する考え方もあったが、公共企業体においては私法関係とする考え方が下級審で定着したため、最高裁は、下級審裁判例を追認し、国鉄中国支社事件判決・最一小昭49・2・28民集28巻1号66頁、判時733号において国鉄職員の懲戒処分は行政処分でなく私法上の行為であるとした。また目黒電報電話局事件判決・
最三小昭52・12・13民集31巻7号974頁電電公社について「公社はその設立目的に照らしても企業性を強く要請されており、公社と職員との関係は、基本的には一般私企業における使用者と従業員との関係とその本質を異にするものではなく、私法上のものであると解される。」としており、地方公営企業もこの点については別異に解釈することはない。
従って、職場の規律維持に関して、三公社五現業や私企業に関する判例法理は、地方公営企業においても適用することが可能である。
2.企業秩序定立維持権の判例法理が適用できる
我が国の労組法は、労働組合の資格要件や労働委員会制度など詳細に規定するが、集団的労働法上の実体的な権利義務についての記述は多くなく、団体行動(組合活動及び争議行為)の中心テーマである正当性をめぐる問題その他、大部分が判例・学説の解釈に委ねられている。不当労働行為制度によって保護される正当な組合活動か否かも、労働委員会の命令以外に救済命令取消訴訟の膨大な蓄積があり、結局のところ判例の分析によって、何が正当な行為か否かを判断することになる。従って労働関係は実定法というより、裁判所が案出した判例法理によって争われることが多いのであるが、その典型例が、企業秩序定立維持権である。
リーディングケースである富士重工業(原水禁運動聴取)事件最高裁[i]第三小法廷昭和52年12月13日判決民集31巻1037頁は、「企業秩序」の維持確保のために「企業」に求められる権能として、(1)規則制定権(2)業務命令権(3)企業秩序回復指示・命令権(4)懲戒権を当然のこととして列挙し、このような「企業」体制を前提とした労働契約を媒介に労働者の「企業秩序遵守義務」を演繹し[ii]。「労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負う‥‥」としたのである。
企業秩序論の主要な判例としては、同日の目黒電報電話局事件判決・ 最三小昭52・12・13民集31巻7号974頁[iii]、国労札幌地本ビラ貼り事件判決・最三小昭54・10・30判決民集33巻6号647頁[iv]、関西電力事件判決・最三小昭58・9・8労判415号[v]であるが、昭和50年代に最高裁によって案出された最大の理由は「施設管理権」の脆弱さと空隙を埋める必要性によるものと
解するのが妥当である。
すなわち、終戦直後、経営者が直面した「経営権」に対する組合規制力を強化するための生産管理闘争のようなきわめて悪質な争議行為に対し、使用者は経営権を確立する必要があった。
当初は企業内組合活動を規制する根拠を、労働規律から施設利用までカバーする「経営権」に求めていたが、包括的な経営権の観念を裁判所が必ずしも受け入れなかったために根拠は「労務指揮権」+「施設管理権」であるとされるようになった。
しかし、「労務指揮権」はその法的根拠を労務当事者の契約に求めざるをえず、「施設管理権」の主張も脆弱性を有していた。その根拠を所有権・占有権という物権的権利に求める限り、所有権の一部をなし、建物、敷地等の会社施設を維持、保全、改良する具体的機能として内容づけられることとなり、妨害排除の物権的請求権か、無権利者による無断利用、毀損行為をとらえて行う不法行為にともなう賠償請求という、民法上の主張にとどまり従業員懲戒の根拠としては難点があったのである。
このことはプロレイバー労働法学者につけ込む隙を与えていた。「受忍義務説」[vi](使用者の施設管理権も団結権・団体行動権の保障によって内在的・本質的に制約を受け「受忍義務」を負うとする[vii])という悪質な学説を流布させ、企業内無許可施設利用の組合活動の増長させたのである[viii]。
労務指揮権+物的維持管理権限に限定された施設管理権の主張は、直接労務指揮権限をもって規律しえない時間帯である、休憩時間、就業時間前、就業後の組合活動について空隙を残すことになったのである[ix]。
この空隙を埋めることができるようになったのが、ようやく昭和50年代になって企業運営の諸権利を統合する上位概念として形成された「企業秩序論」と称される判例法理が成立してからのことである。
中嶋士元也[x]は企業秩序論の内容範囲機能を次の5点にまとめている。
1.服務規定・懲戒規定設定権限
2.企業秩序維持権限にもとづく具体的指示命令権
(1)労務提供への規律機能
(イ)労働者の職務専念義務の発生
(ロ)他人の職務専念義務への妨害抑制義務
(2)労務履行に関する附随機能(信義則機能)
(3)秩序違反予防回復の機能
3.施設管理の機能
4.企業秩序違反の効果(懲戒機能)
5.その他の機能
いずれも法的常識の範囲にあるものとして評価されており、いかにプロレイバー学者が批判しようと、企業秩序論はリーディングケースより35年以上経て、判例法理としては安定的に維持され定着したものといえるだろう。
3 施設管理権限の指導判例国労札幌地本事件判決の判例法理は当然適用できる
「企業秩序」論を展開したもののなかで国労札幌地本ビラ貼り事件判決最高裁第三小法廷昭和54・10・30判決民集33巻6号647頁『労働判例』329号がいわゆる施設管理権限[xi]の指導判例としてよく引用されるが、この判例法理は、国鉄、郵便局等の三公社五現業のほか、私企業一般に適用されており、地方公営企業も私法関係とされる以上、当然適用可能である。
「企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、それを構成する人的要素及びその所有し管理する物的施設の両者を総合し合理的・合目的的に配備組織して企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであつて、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めうべく、その一環として、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもつて定め、又は具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができる」ものとした。
要約していえば使用者の権限として企業秩序に服することを労働者に要求する権利を認めた判決である。使用者はその行為者に対して行為の中止を求めることできる。原状回復等、必要な指示命令ができる。懲戒処分もなしうる。ただし使用者に「施設管理権」の濫用と認められる特段の事情がある場合は別で、それを除いて無許諾の組合活動は正当な行為として認められないということである。
○同判決の意義について要点を三点に絞れば以下のとおりである。
(1) プロレイバー学説「受忍義務説」の明確な排除
最大の意義はプロレイバー学説の「受忍義務説」を明確に排除したことである。
すなわち「‥‥労働組合による企業の物的施設の利用は、本来、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものであることは‥‥明らかであつて、利用の必要性が大きいことのゆえに、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために利用しうる権限を取得し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない、というべきである」と判示したのである。これによって職場規律維持に有害だったプロレイバー学説の一つが崩壊した。
(2) 法益権衡論の観点での違法性阻却説の明確な排除
国労札幌地本判決により使用者の施設管理権限を侵害する組合活動は原則として正当性はない。ただし同判決は権利の濫用と認められるような事情がある場合は別なので、例外的に労働組合活動が正当とされることがある含みを残してはいる。
判決が言い渡された当時、「当該施設を許さないことが権利の濫用と認められるような事情」はリップサービスに過ぎないだろう、現実には濫用と認められるものはほとんどないだろうと考えられ、労働組合に大変厳しい判決と受けとめられた。
もっとも何が「権利の濫用」なのかということだが、国労札幌地本判決は具体的な判断基準を示していないので、これはその後の判例の蓄積によって判断していくことになる。
この点『権利の濫用と認められるような特段の事情』に法益権衡的な違法性阻却の判断枠組みを設定し、判例法理に風穴を開けようとする試みが、少数の裁判官、中労委や下級審によってなされてきたが、結論を先に言えばこれらの試みはいずれも最高裁により明確に退けられており、国労札幌地本判決の判例法理は変質することなく、安定的に判例を維持している。
ここで法益権衡論と言っているのは、企業の企業秩序定立権、労務指揮権、施設管理権に対して、労働者の団結権・団体行動権保障による組合活動の必要性を重視し、両者の法益を調和させる総合的判断をとることにより、無許諾であっても使用者の権利の侵害程度の低い組合活動を許容(違法性阻却)しようとする考え方である。
プロレイバー学説というのは総じていえば法益衡量、法益調整論なのであるからそれに近いものである。しかし、以下のとおり少なくとも最高裁は国労札幌地本事件判決を引用して四度にわたって法益権衡論による挑戦を明確に退けているのである[xii]。
●池上通信機事件[xiii]
組合結成以来、工場の食堂を会社の許可を得ないで職場集会のために使用してきたことに対して、職制による阻止、説得、組合に対する警告等が不当労働行為にあたるかが争われた池上通信機事件最三小昭63・7・19判決判時報1293号判タ682号
の伊藤正己裁判官の補足意見が法益権衡論である。
最高裁は原判決を是認し不当労働行為に当たらないとして、神奈川地労委の上告を棄却した。東京高裁昭59・8・30判決労民集35巻3・4号 459頁 判時1154号 は「団体交渉等を通じて組合活動のための会社施設の利用について基本的合意を締結するのが先決であるとして、組合がその後個別にした従業員食堂の使用申し入れに対して許諾を与えなかったのも、やむを得ない措置というべきであって、これを権利の濫用ということはできないし、会社が組合員の入構を阻止したり、組合員集会の中止命令などの措置を採って、会社の許可を得ないまま従業員食堂において開催されようとする組合員集会を中止させようとし、あるいは組合員が無許諾で従業員食堂を組合活動のために使用した場合に組合又はその責任者の責任を追求し処分の警告を発するなどしたのは、先に見たようないわゆる施設管理権の正当な行使として十分是認することができる」と述べている。
伊藤正己裁判官は結論のみ同意の補足意見を記した。それは施設利用に関して合意のない状況での、施設利用不許可の状況で、組合活動が強行されても、それが即、正当でない組合活動と評価されることはないとし、「特段の事情」の有無を「硬直した態度」ではなく、当該企業施設を利用する「必要性が大きい実情を加味し」諸般の事情を総合考慮し、法益権衡の立場に立って評価判断しようとするもので、違法性阻却説の判断枠組みを提示したもの[xiv]であるが、一裁判官の少数意見にとどまるのであるから、判例を変質させているわけではない。
●日本チバガイギー事件[xv]
次に、労働組合の食堂使用および敷地内屋外集会開催の不許可が不当労働行為に当たるかが争われた日本チバガイギー事件最一小平元・1・19判533号の中労委の上告趣意書が法益権衡論である。上告趣意は「労働者の団結権、団体行動権保障の趣旨からする施設利用の組合活動の必要性と、その施設利用により使用者が蒙る支障の程度との比較衡量により、両者の権利の調和を図ることが要請される。そして、使用者の施設管理権行使が右の調和を破るときには、権利の濫用があるといわなければならない」とするものであった。この判定基準(法益調整比較衡量)は国労札幌地本判決が否定したプロレイバー学説の受忍義務説にかぎりなく近づいていく意味で判例法理の否定ともいえる最高裁への挑戦だった。
しかし、最高裁は集会不許可を「業務上ないし施設管理上の支障に藉口」するもので不当労働行為にあたるという中労委の判断を違法とする原判決を是認し、「本件食堂の使用制限及び屋外集会開催の拒否が施設管理権を濫用したものとはいえず、したがって、右使用制限等が労働組合法七条三号所定の不当労働行為に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない」として中労委の上告をあっさり棄却している。
●済生会中央病院事件[xvi]
済生会中央病院事件最高裁第二小法廷平成元年12月11日判決民集43巻12号1786頁判時1334号、労判552号は、勤務時間内であるが事実上の休憩時間で、業務に支障のない態様でなされた無許可組合集会等に対する警告書交付は不当労働行為に当たるかが争われた事件だが、東京地労委-中労委-東京地裁-東京高裁まで、警告書交付を不当労働行為としていた判断を覆し、不当労働行為にあたらないとしたことで重要な判例である。
つまり控訴審で是認された東京地裁昭和61年1月29日判決『労働判例』467号ml は、国労札幌地本判決を引用しながら、本件組合集会への警告書交付は『権利濫用と認められる特段の事情』があるという次のような判断をとっていた。
「本件各集会は原告病院が外来看護婦の急患室勤務の負担を加重する勤務表を作成したことに端を発し‥‥職場内で協議する必要から開かれたものであって、その開催された時間帯も事実上休憩時間と目される時間帯であり、業務や急患に対応しうるように配慮された方法で行われ、現実に業務に支障が生じていないこと、従来本件と同様の態様でなされた集会について原告らは何ら注意を与えていないことが認められ、これら事情は、本件集会が就業時間後に開催しなかったのが外来看護婦の中に保育の必要性がいた者がいたにすぎないものであったとしても、なお前記の特段の事由に該当する」というものである。実際には業務に支障がないから許容されるべきと言うのである。
これに対して最高裁判決は「一般に、労働者は、労働契約の本旨に従って、その労務を提供するためにその労働時間を用い、その労務にのみ従事しなければならない。」「労働組合又はその組合員が労働時間中にした組合活動は、原則として、正当なものということはできない。」「労働時間中に職場集会を開く必要性を重視して、それが許されるとすること」はないと断言したうえ「本件警告書を交付したとしても、それは、ひっきょう支部組合又はその組合員の労働契約上の義務に反し、企業秩序を乱す行為の是正を求めるものにすぎないから、病院(上告人)の行為が不当労働行為に該当する余地はない」と明快な理由で原判決を破棄した[xvii]。
奥野久之裁判官の反対意見は「一般的には違法とされるべき行為であっても、組合員の意思を集約するために必要であり、かつ、労働組合ないしその組合員(労働者)のした義務違反ないし病院の権利に対する侵害の内容、態様及び程度その他諸般の事情をも総合して、団体行動権の実質的保障の見地から相当と判断される場合には、正当な組合活動として取り扱うべき場合がある」という法益権衡的な違法性阻却説であるが、少数の反対意見にとどまった。
●オリエンタルモーター事件[xviii]
オリエンタルモーター事件最二小平7・9・8労判679号判時1546号は組合執行委員長らによる守衛への暴言、脅迫を契機として業務に支障のない限り食堂の集会利用等の使用を承認してきた慣行を変更し不許可とした事案につき、原判決を破棄しこれまで業務に支障のない限り使用を認めてきたとしても、それが食堂の使用について包括的に許諾していたということはできないし、食堂の無許可使用を続けてきた組合の行為は正当な組合活動に当たらないとした。さらに条件が折り合わないまま、施設利用を許諾しない状況が続いていることをもって不当労働行為には当たらないとした。
企業施設の組合活動の正当性を「許諾」と「団体交渉等による合意」に基づく場合に限定した国労札幌地本判決の枠組に従った判断と評価できる。
東京地裁平2・2・21判決労判559号労民集41巻1号16頁判時1368号は不当労働行為に当たらないとして、中労委の救済命令を違法として取り消した。ところが、原判決控訴審東京高裁平2・11・21判決労判583号労民事集41巻6号971頁判タ757号は、それでは組合活動が著しく困難となるとして、不当労働行為に当たるとしていたのである(法益権衡論ともいえる)。
以上の最高裁判決、池上通信機事件、日本チバガイギー事件、済生会中央病院事件、オリエンタルモーター事件は、いずれも無許諾の組合集会事案であるが、法益権衡論を否定し正当な組合活動ではないとしている。国労札幌地本ビラ貼り事件判決の判例法理を維持したものと評価することができるのである。
(3)抽象的危険説の確立
これは、日本テレビの報道番組でよく知られている河上和雄元最高検公判部長の判例評釈[xix]が指摘されていることである。
「本判決が、具体的企業の能率阻害を判示せず、抽象的な企業秩序の侵害のおそれのみをもって、施設管理権の発動を認めている点は‥‥目黒電報電話局事件に関する最高裁判決(昭和五二・一二・一三)の延長線上にある判示として、あらためていわゆる抽象的危険説を確立したもの」と評されているが、重要な指摘だと思う。
つまり、政治活動等をめぐる判例では、目黒電報電話局事件・最三小法判昭52・12・13日民集31巻974頁 労働判例』287号で一応の決着をみるまで、具体的危険説をとるものと抽象的危険説をとるものに下級審判例が分かれていた。具体的危険説とは「現実かつ具体的に経営秩序が紊され経営活動に支障を生じる行為」でなければ施設管理権の発動ができないというものである。高木紘一[xx]によるとナショナル金銭登録機事件東京高判昭44・3・3労民集18巻5号、東洋ガラス事件横浜地川崎支決昭43・2・27労民集19巻1号、日本パルプ工業事件鳥取地米子支判昭50・4・22『労働判例』229号[xxi]、明治乳業事件福岡地判昭51・12・7『労働判例』256号がそうした判例である。
これに対して、抽象的危険説とは施設管理権の侵害ないし作業能率の低下等の「おそれ」、すなわち、経営秩序の侵害に対する抽象的な危険が存すれば禁止しうるとするもので、この立場に立脚する判例として関谷製作所事件東京地決昭42・7・28労民集18巻4号、ナショナル金銭登録機事件東京地判昭42・10・25労民集18巻5号、横浜ゴム事件東京高判昭48・9・28『労働法律旬報』923号[xxii]がある。
最高裁判例では、目黒電報電話局事件・最三小法判昭52・12・13民集31巻974頁判時871号では「一般私企業においては、元来、職場は業務遂行のための場であって政治活動その他従業員の私的活動のための場所ではないから、従業員は職場内において当然には政治活動をする権利を有するというわけのものでないばかりでなく、職場内における従業員の政治活動は、従業員相互間の政治的対立ないし抗争を生じさせるおそれがあり、また、それが使用者の管理する企業施設を利用して行われるものである以上その管理を妨げるおそれがあり、しかも、それを就業時間中に行う従業員がある場合にはその労務提供業務に違反するにとどまらず他の従業員の業務遂行をも妨げるおそれがあり、また、就業時間外であつても休憩時間中に行われる場合には他の従業員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後における作業能率を低下させるおそれのあることがあるなど、企業秩序の維持に支障をきたすおそれが強いものといわなければならない。したがつて、一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべきであり‥‥‥‥局所内において演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を行うことは、休憩時間中であつても、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあつて、その内容いかんによつては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがあるのであるから、これを局所管理者の許可にかからせることは、前記のような観点に照らし、合理的な制約ということができる。」と判示し、具象的な業務の阻害ではなく、たんに「施設の管理を妨げるおそれ」「その後の作業能率を低下させるおそれ」等の抽象的な企業秩序の侵害のおそれのみで、施設管理権の発動を是認したものである。
続いて国労札幌地本ビラ貼り事件・最三小判昭54・10・30民集33巻6号647頁『労働判例』329号の判断は、控訴審判決のいう「業務が直接阻害されあるいは施設の維持管理上特別に差し支えが生じ」ていなくとも、ロッカーのビラ貼付が「組合活動に関する訴えかけを行う効果を及ぼす」ことは本来の鉄道事業を能率的に運営する企業秩序維持の観点から「企業秩序を乱す」ものであるから、正当な組合活動であるとすることはできない。「本来の業務自体が直接かつ具象的に阻害されるものでなかつた等」の事情は「判断を左右するものとは解されない」と判示したのであるからこれは抽象的危険説をとったものとされるのである。
従って、使用者の施設管理権限の発動は,業務が直接、具象的に阻害されることを要するものではない、たんに「職務専念を妨げるおそれ」「業務への集中を妨げるおそれ」「作業能率を低下させるおそれ」「休憩時間の自由利用を妨げるおそれ」「使用者の管理を妨げるおそれ」等の抽象的な企業秩序を侵害を示すだけで十分なのである。(つづく)
[i] 就業時間中、他の従業員に原水爆禁止の署名を求め、その運動のために販売するハンカチの作成依頼、販売などをした他の労働者の「企業秩序違反事件」に関し、会社の調査に協力しなかつたとしてなされた懲戒譴責処分を無効と解した事例。「いつ、いかなる場合にも、当然に、企業の行う右調査に協力すべき義務を負つているものと解することはできない。けだし、労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによつて、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負うが、企業の一般的な支配に服するものということはできないからである‥‥調査に協力することが労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であると認められない限り、右調査協力義務を負うことはないものと解するのが、相当である」と判示した。
菊池高志「労働契約・組合活動・企業秩序法政研究 『法政研究』49(4) 1983
http://hdl.handle.net/2324/1792
調査官解説 江見弘武・法曹時報33巻5号225頁1981年,その他評釈阿久沢亀夫・労働判例287号4頁/吉田美喜夫・日本労働法学会誌52号104頁/橋詰洋三・判例評論253号33頁/橋詰洋三・労働判例百選<第四版>〔別冊ジュリスト72号〕34頁/窪田隼人・民商法雑誌80巻3号350頁/坂本重雄・法律時報50巻4号57頁/秋田成就ほか・労働判例308号4頁/諏訪康雄・昭和52年度重要判例解説〔ジュリスト666号〕198頁/西谷敏・ジュリスト659号78頁/萩沢清彦・判例タイムズ357号101頁/萩沢清彦・判例タイムズ367号44頁/林修三・時の法令1008号50頁/和田肇・ジュリスト678号152頁
[ii]池田恒男「国労札幌ビラ貼り事件」最高裁判決の「画期的」意義--現代日本法の一断面」『社會科學研究』33(5) 1981
[iii]石橋洋「企業内政治活動・ビラ配布の自由と企業秩序 : 目黒電報電話局事件・明治乳業事件判決を素材として」『季刊労働法』142号1987 http://hdl.handle.net/2298/14089
菊池高志「労働契約・組合活動・企業秩序法政研究 『法政研究』49(4) 1983 http://hdl.handle.net/2324/1792
大内伸哉「判例講座 Live! Labor Law(17)企業内での政治活動は,どこまで許されるの?--目黒電報電話局事件(最三小判昭和52.12.13民集31巻7号974頁)」『法学教室』347号 2009
調査官解説越山安久・法曹時報33巻2号257頁1981その他評釈遠藤喜由・地方公務員月報179号45頁/横井芳弘・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕126頁/喜多實・季刊労働法108号116頁/吉田美喜夫・日本労働法学会誌52号104頁/宮里邦雄・労働経済旬報1176号16頁/玉田勝也・公企労研究34号91頁/高木紘一・昭和52年度重要判例解説〔ジュリスト666号〕202頁/坂本重雄・法律時報50巻4号55頁/山口浩一郎・判例タイムズ357号105頁/山口浩一郎・労働判例287号22頁/山本吉人・労働判例百選<第四版>〔別冊ジュリスト72号〕36頁/松崎勝・公務員関係判例研究19号32頁/西村健一郎・民商法雑誌79巻4号568頁/西谷敏・ジュリスト659号78頁/西谷敏・労働判例百選<第四版>〔別冊ジュリスト72号〕106頁/前田光雄・地方公務員月報180号48頁/野田進・ジュリスト686号153頁/郵政省人事局労働判例研究会・官公労働32巻9号46頁/林修三・時の法令1003号52頁/林修三・時の法令1004号49頁
[iv]山口浩一郎「使用者の施設管理権と組合活動の自由--最高裁「国労札幌地本事件」判決を素材として」労働法学研究会報 31(3) 1980角田邦重「『企業秩序』と組合活動一『最高裁・企業秩序』論の軌跡」労働判例
435 号調査官解説山口浩一郎・法曹時報32巻7号1063頁、その他評釈 鵜澤秀行・労働判例329号8頁/下井隆史・判例タイムズ407号6頁/下井隆史ほか・ジュリスト709号78頁/河上和雄・法律のひろば33巻1号41頁/外尾健一・季刊労働法115号28頁/角田邦重・判例評論259号41頁/久保裕・教育委員会月報351号9頁/宮里邦雄・労働判例329号10頁/窪田隼人・民商法雑誌82巻6号828頁/山口浩一郎・労働判例329号4頁/時岡泰・ジュリスト709号76頁/秋田成就ほか・労働判例330号4頁/松村利教・昭和54年行政関係判例解説91頁/水野秋一・法律のひろば33巻3号73頁/西谷敏・昭和54年度重要判例解説〔ジュリスト718号〕268頁/竹下英男・日本労働法学会誌55号132頁/中山和久・労働判例百選<第四版>〔別冊ジュリスト72号〕198頁/渡部正和・警察学論集33巻3号100頁/平山優・地方公務員月報198号58頁/平山優・地方自治387号51頁/林修三・時の法令1057号59頁/林修三・時の法令1058号57頁 その他石橋洋「企業内組合活動慣行の法理」『流通經濟大學論集』19(2) 1985
[v] 企業秩序論の概説として三井正信「労働契約法と企業秩序・職場環境(1) <論説>」『廣島法學』三井正信33(2) 2009 http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00027808
[vi]受忍義務説の論理構成は「施設管理権」とは元来法律用語ではなく、昭和28・9年頃使用者側から主張された政策概念としたうえ、所有権・占有権の一つの機能として位置づけ、次のように物的管理権に限定して承認するというものであった。(西谷敏「施設管理権の法的性格とその限界」『法学雑誌』大阪市立大学法学会26(3・4), 1980)
「本来それは、使用者が企業施設に対する所有権に基づいて当該施設を支配し、それの維持、保全のための必要な措置をする等の管理を行う権能(物的管理権)をさすものと解せられ‥‥」(片岡曻『法から見た労使関係のルール』労働法学出版1962 109頁) そのように、施設管理権の物権的性格を強調しそれゆえ「物的管理権である以上、施設管理権は組合活動に対して直接向けられるべきものではない」とされる。(峯村光郎『経営秩序と団結活動』総合労働研究所1969 161頁、本多淳亮『業務命令施設管理権と組合活動』労働法学出版1964 21頁)
プロレイバー学説に従うと、施設管理権とは、物的管理権であって、企業の秩序の維持のために措置を行う権能ではない。そうすると狭義の業務命令権と抵触しない就業時間外、休憩時間は、使用者に対する示威であれ、集会など、広範な組合活動が規制できないことになる。ビラ貼りなどについても、対象物を毀損するなど損害を生じせしめた場合(例えば窓ガラスを破損した)、結果的損害の事後的てん補を請求する権利程度のものに矮小化されるのである。
しかし工場や機械を所有しても実際に人を配置して操業しなければ財産を生み出さない。物的施設は経営目的に従って使用収益にまで用いるのでなければ財産としての意味をなさないのであるから、使用者が物的施設に対して有する所有権等に基づく権能を、その消極的な維持改善にとどめるというのは詭弁としかいいようがない。
なお、本件はロッカー室でのビラ貼り事案であるが、休憩時間の企業秩序遵守義務については従業員の政治活動につきすでに目黒電報電話局事件最高裁第三小法廷昭和52年12月13日判決民集31巻974頁が「一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべき」「従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律による制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない」と判示している。
[vii] 「受忍義務説」は昭和30~40年代に大きな影響を及ぼし、企業秩序を混乱させる元凶となったもので、今日でも多くの学者が支持している。
受忍義務説の立論の基礎は憲法28条の団結権、団体行動権をプロ・レ-バー的に広く解釈し、それは私人間効力の及ぶもので使用者の権利や自由(その中心は財産権、具体的には労務指揮権や施設管理権)を一定の制約の契機が含まれていると解するものである。片岡曻・大沼邦宏『労働団体法』青林書院1991年 p263は
「労働組合は‥‥‥労働力の取引過程の取引過程に介入し‥‥企業の内部にまで踏み込んで集団的な規制力を及ぼそうとする‥‥それは不可避的に使用者の取引を制約することになるし‥‥市民法上の権利や自由を侵害せざるをえないのであってそれゆえ現実に久しく違法評価を受けてきたのである‥‥にもかかわらず、むしろ、それを歴史的かつ社会的所与としつつ、生存権の理念に基づいて団結権に高度の法価値を認め、積極的な法的保護を与えることを意味している。要するに団結権(広義)は、その性格上、団結活動と対立する使用者の権利の自由の譲歩なくしてありえないものである」と説き「かくして、団結権(広義)は『市民法上の諸権利に対抗しそれを制約するあらたな権利として登場してきたものであり、それを基本権として憲法上保障することじたい、全法体系を貫く価値観の転換をともなわずにはいない‥‥』(籾井常喜『組合活動の法理』からの引用)ということができよう」と述べ、団結権(広義)とは他者の市民法の諸権利を制約する権利、全法体系の価値観の転換をともなうものである断言している。
しかも、「受忍義務説」が「正当な」組合活動と評価すべきというのは組織、運営に関わる組合活動だけではない。片岡・大沼前掲書は「団結を維持・強化するために必要な活動も認容しなければならない」p273「労働者相互の働きかけの自由、それに対する干渉・妨害を抑止することが、使用者の受忍義務の中心的な内容をなす」p274、さらに「団体行動権の保障が『圧力形態としての本質の法的承認』を意味するものである以上、使用者は結局のところ、かかる本質を有する労働者の集団行動を認容し、いわば団結力に基づく威圧を甘受すべく義務づけられていると解する」p276。「業務運営や施設管理に多少の支障が生じたとしても‥‥直ちに組合活動の正当性が否定されるわけではない。損なわれる使用者の法益よりも大きな法価値が認められ、なお正当と評価されるケースは少なくないだろう」、「示威ないし圧力行動たる実質を有する組合活動の場合にも‥受忍義務が使用者に課され、それに対応する法的保護が労働者や労働組合に与えられることは基本的に承認されなければならない」p279とする。
[viii] 「受忍義務説」を採用した下級審判例
昭和34年1月12日福岡高裁判決(三井化学三池染料事件)民集10巻6号1114頁では「そもそも会社の構内管理権は決して無制限なものではなく、組合の団結権に基く、組合活動との関係で調和的に制限せらるべきであるから、会社は組合活動の便宜を考慮してある程度の譲歩を行うべきであり、組合としてもでき得る限り右管理権を尊重しなければならない」という互譲調和論としての曖昧さを残していたが、刑事事件であるが昭和38年9月28日全電通東海電通局ビラ貼事件名古屋地裁判決『判例時報』359号に至って「使用者の施設管理権も労働者の団結権保障とのかねあいから、使用者が労働者に対して施設利用の便宜を拡張するとか、禁止の解除を行うとかの意味ではなく、権利の本質的な意味で制約をうけ、そこから生じる使用者の不利益は使用者において受忍すべき場合があると考える。」と使用者の受忍義務を団結権保障のコロラリーとして承認した。
事案は昭和34年総評の指導する春闘において、同年3月全電通役員が中心となって東海電気通信局(名古屋市中区)庁舎の正面玄関やガラス窓等に、不当処分撤回、大巾賃上げ等を求める趣旨のビラ約四千枚を糊で貼付した行為が、庁舎の外観を著しく汚したものとして刑法260条の建造物損壊罪に問われたものであるが、判決は建物の大部分をビラで貼りつくすとか、醜悪で見るに耐えない等の程度に至らなければ建造物の効用を毀損したとはいえないとして、刑法260条の構成要件に至ってないと判断し、みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札する行為を拘留又は科料に処すとした軽犯罪1条33号との関係も論及し、労使の紛争状態の組合活動については同法は適用されないと断じた。更に傍論として仮に本件ビラ貼りが形式上建造物損壊に当たるとしても、それは組合活動の一環として合法的であり、違法性を欠き無罪であるとした。
なお、無断ビラ貼りについては本文(次回以降)で後述するとおり近年では正当な組合活動として評価した判例はほとんどない。
[ix] 菊地高志「組合のビラ配布と施設管理権-日本ナショナル金銭登録事件を中心として-ー」日本ナショナル金銭登録機事件横浜地裁昭43・2・9判決 労判172号(1973.5.1)の解説参照
[x] 中嶋士元也「最高裁における『企業秩序論』」『季刊労働法』157号1992年
[xi]国労札幌地本ビラ貼り事件最高裁判決は、「施設管理権」という言葉をあえて用いず、「職場環境を適正良好に維持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該物的施設を管理利用する使用者の権限」と表した。「施設管理権」と表さないのは、プロレイバー学説が物的管理権に限定されるべきものとしているからで、それと一線を画すためだろう。
[xii]私が法益権衡否定の意義を重視する理由は、本来、近代市民法秩序における自由、所有権、財産権と社会権的団結権労働法と相容れない性格を有するものであるからだ。プロレイバー労働法学の主張は、総じて言えば階級的・戦闘的労働運動の支援のため、労働組合に他者の財産権・所有権を制約(法益侵害)する権力を肯定し、近代市民法秩序を改変してしまおうという学説である。これに対し、最高裁は生産管理闘争を違法とした山田鋼業事件大法廷判決昭和25年11月15日 刑集4巻11号2257頁 判例タイムズ9号において、団結権・団体行動権は、国民の平等権・自由権・財産権に絶対的に優位するものとは認められないとして以来、プロレイバー的な、団体行動権の市民的権利に対する優位というような市民法秩序転覆の主張はもちろんみとめていないのである。いったん法益権衡論を認めてしまうと坂道を転げ劣るように市民法秩序は崩壊していくのであり、容認しないのは当然のことである。
[xiii]大内 伸哉 「企業施設を利用した組合集会に対する使用者の施設管理権の行使と支配介入--池上通信機事件(最判昭和63.7.19)(労働判例研究-747-)」『ジュリスト』988 1991
『別冊ジュリスト 労働判例百選(第6版)』 安枝 英訷 134号 240頁
[xiv]渡辺章『労働法講義下労使関係法雇用関係法Ⅱ』信山社出版2011
[xv]9680小西 国友「 労働界再編成下の組合活動と施設管理権--日本チバガイギー最高裁判決を契機に〔含 質疑応答〕」『労働法学研究会報』』40巻28号1989
9448「組合活動と施設管理権,併存組合と差し違え条件-日本チバガイギー事件(最判平成1.1.19)」『労働法学研究会報』40巻24号1989
[xvi]調査官解説増井和男・法曹時報42巻3号235~254頁、ほか評釈安枝英のぶ・月刊法学教室115号96~97頁1990年4月/岸井貞男・民商法雑誌103巻1号115~131頁1990年10月/宮澤弘・労働経済旬報1411号25~31頁1990年3月5日/佐治良三・最高裁労働判例〔10〕―問題点とその解説447~512頁1991年3月/秋田成就・季刊労働法155号102~117頁1990年5月/小宮文人・平成元年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊957〕221~223頁1990年6月/上條貞夫・月刊労委労協405号29~34頁1990年1月/盛誠吾・日本労働法学会誌76号
[xvii]最高裁は、集会の態様が、業務に影響のないようなされたとか、外来の看護婦が通常の昼休みをとれない実態にあり、その時間が事実上休憩時間だった等の事情を『特段の事由』とすることにより、不当労働行為にあたるとする労働委員会、下級審の判断を粉砕したのである。
本件は、警告が不当労働行為に当たるかが争われたもので、懲戒処分を是認したものではいが、この判決によって勤務時間中の無許可組合集会が正当な行為とされる余地は全くなくなったのであるから重要な判例といえる。
[xviii] 辻村昌昭 施設管理権および照会票による組合員調査と支配介入--オリエンタルモーター事件・最高裁第2小法廷判決(平成7.9.8)の研究〔含 判決文〕『労働法律旬報』1383 1996『現代労働法学の方法』信山社2010所収
道幸哲也「組合集会等を目的とする従業員食堂の使用禁止及び三六協定締結のための組合加入調査の不当労働行為性--オリエンタルモーター事件(最高裁判決平成7.9.8)」『判例時報』1567 1996
秋田成就「労働判例研究-839-会社が食堂の使用を許可しないこと,三六協定に際し組合加入の有無を調査したことと不当労働行為の成否--オリエンタルモーター事件(最高裁判決平成7.9.8)『ジュリスト』1086 1996
判例要解--組合員調査と不当労働行為の成否--オリエンタルモーター事件(最高裁判決平成7.9.8)『労働法学研究会報 』 47(2) 1996
小俣勝治・季刊労働法178号1996年
萬井隆令・民商法雑誌115巻3号439~443頁1996年
菅野和夫・労働判例百選<第7版>〔別冊ジュリスト165〕2002年11月
中村和夫・労働判例百選<第8版>〔別冊ジュリスト197〕2009年10月
[xix]河上和雄「企業の施設管理権と組合活動--昭和54年10月30日最高裁第三小法廷判決について(最近の判例から)」『法律のひろば』33(1)1980
[xx]高木紘一「政治活動の禁止と反戦プレートの着用-目黒電報電話局事件」『ジュリスト』666
[xxi]近藤昭雄「協約自治の限界と政治活動禁止条項の効力-日本パルプ工業事件を中心に-『労働判例』229
[xxii]座談会竹下英男・水野勝・角田邦重「企業内における政治活動の自由-横浜ゴム事件・東京高裁判決をめぐって-」『労働法律旬報』850号 1974
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