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1-174 孫田秀春『労働法の開拓者たち-労働法四十年の思い出-』実業まの日本社1958
もちろん著者とは反対のイデオロギーで批判するための本。ドイツ留学に関する記事が多い。ローマ私法の個人主義を嫌う人々によって労働法が開拓されたということだが、私は反対にローマ私法の個人主義のほうが王道だと考え。ローマ法の労働は役務賃貸借という定義は18世紀のナポレオン民法に踏襲され、二千年の価値がある。我が国にも継受していることでそれを否定する理由はない。
1-175 M.バーチャル/J.ロビン 伊藤健市一訳『最高の職場-いかに創り、いかに保つか、そして何が大切か-』ミネルヴァ書房2012
経営書。アメリカの優良企業の事例など。まず目についたのは最高の職場にいる従業員は余分に働く、従業員は職務分掌を越える仕事もこなして初めて自信がつくというところだ。私が時短に反対するのもそういう理由。オープンドアーシステムなど双方向のコミュニケーション、気さくさも企業風土の重要なポイントとしている。引用されているのはほとんど組合不在企業だろう。
1-176-1 『労働法と現代法の理論 西谷敏先生古稀記念論集 上』日本評論社2013年
労働契約における労働者の「意思」と「規制」……吉村良一
労働法の実現手法に関する覚書……山川隆一
労働権の再検討と労働法システム……三井正信
労働条件決定法理の再構成――労働協約・就業規則・労働契約の意義と機能……川口美貴
取引的不法行為と自己決定権……吉田克己
良心について――憲法19条をめぐる考察……笹倉秀夫
公務員に対する職務命令の法的性質……晴山一穂 その他全部で22論文
1-176-2労働法と現代法の理論 西谷敏先生古稀記労働法と現代法の理論 西谷敏先生古稀記念論集した
労働法における集団的な視角……道幸哲也
労働組合の未来と法的枠組み……和田 肇
労働協約の規範的効力と一般的拘束力……浜村 彰
団体交渉は組合員の労働契約のためにあるのか?――団体交渉の基盤と射程に関する理論的考察……水町勇一郎
ILO条約と公務における団体交渉……清水 敏
法学と法実務――比較法史学的考察……水林 彪
子どもの自己決定権に関する一考察――ドイツの割礼事件をめぐって……西谷祐子
ドイツ連邦労働裁判所における基本権の第三者効力論の展開……倉田原志
イギリスにおける雇用関係の「契約化」と雇用契約の起源……石田 眞
ディーキン説の検討、雇用契約が関係的かつ相互的な性格を有しているという観念は、コモンローと雇用保護立法の複雑な関係から生み出された。裁判所は擬制解雇の領域において、誘い板書は、使用者に対して次第に「協力」や「誠実」という積極的な義務の遵守を要求するようになった。
主従法の時代は雇傭とは他者の当事者に排他的な労務の提供することで、一定の対価で特定の仕事をなす契約と区別された。1867主従法修正をへて1875年の使用者・労働者法により、契約違反を理由に投獄さけれることはなくなり、契約違反には適切な民事救済がなされるようになったとするが、家内使用人や事務員は対象とならず、今日の「契約」モデルは事務員からはじまったもので、1906年の公訴裁判所判決が労働者側の解約の予告義務に対し、使用者にも予告期間に労務を提供できなかった場合でも賃金相当額を支払う義務があるという当事者の相互義務り原則を産業労働者に適用したことしから、産業労働者も契約モデルとなったという説明である。
予告義務の法理との関係が複雑でこの点を整理して確認する必要がある。
アメリカにおける法学の政治的性格:「法と経済学」と「批判法学」――テレス著『保守派法運動の台頭』の紹介を通して……相澤美智子ドイツ集団的労働法理論の変容……名古道功
ドイツにおける大学教員の業績給……藤内和公
「使われなかった」年休、そして「ゆとり社会」の行方――ドイツ国内法とEU指令との相克……丸山亜子
ドイツ労働契約法理における法的思考……米津孝司
1-177金尚均編『ヘイト・スピーチの法的研究』法律文化社2014
7人の論文集。レイシズム批判の論者のほか、憲法学者の遠藤比呂通氏は「従軍慰安婦」に対すするヘイトスピーチを禁止することを緊急にやらなければならないとする。しかし、ヘイトスピーチの法的規制消極論の論者の論文もあるので一応バランスはとっている。
第 4 章 表現の自由とは何か 遠藤比呂通
第 5 章 表現の自由の限界 小谷 順子
第 6 章 言論規制消極論の意義と課題 小谷 順子
Ⅱ アメリカにおける規制消極論 2
Ⅲ 伝統的な規制消極論 4
Ⅳ 「PC(ポリティカル・コレクトネス)」に反対する規制消極論
Ⅴ 規制効果に対する懐疑論に基づく規制消極論
第 7 章 刑法における表現の自由の限界 櫻庭 総 など
小谷順子静岡大学教授は慶応出身の40代のアメリカ法研究者で1992年の連邦最高裁RAV判決(ヘイトスピーチ規制立法違憲判決)の専論のあるスマートな印象である。
小谷氏は、アメリカでは新規の表現内容規制を設けることに強い警戒感があることに加え、政治的表現の規制及び萎縮につながることに対する警戒感があることなどを述べたうえ、ヘイトスピーチ規制は肯定されてないとする。ヘイトスピーチこそ規制しないが、人種的動機で遂行された犯罪に刑罰を加重するヘイトクライム法は存在し、政府も人種差別や宗教差別の解消をめざすメッセージを発しており、憎悪や偏見が社会生活に支障をきたすことがないよう努めているとして、大筋で規制消極論を展開している。
櫻庭総山口大学准教授はヘイトスピーチの刑事規制は早計とする。ただし我が国の憲法学では、「価値の低い」言論の分類を公権力に委ねることの懸念や、対抗言論の余地なしとして、国家が規制、介入することにより「思想の自由市場」が脅かされることの懸念から、規制消極論が有力とされるが、実質的には市川正人の学説「‥‥暴力行為の煽動や侮辱を自己目的とするきわめて限定的な人種差別的表現処罰ならば、規定の文言がが明確であるかぎり、日本国憲法の下でも許容される可能性がある」という「条件付き合憲論」が有力と述べており、憲法学は規制消極論で固まっているわけでもないのでやはり警戒を要するのである。「条件付き合憲論」だけでなく集団誹謗罪創設論もあるのでこれに乗るような政治的動きには警戒を要すると考える。
私は集団誹謗表現規制ももちろん反対。1992年RAV判決は法廷意見を記したスカリア判事の真骨頂を示したものとし高く評価している。暴力的ビデオ・ゲームを未成年に販売することを禁止した州法を違憲とした2011年のBrown v. Entertainment Merchants Association (formerly titled as Schwarzenegger v. Entertainment Merchants Association) でもスカリア法廷意見は、保護されない言論とされる新たなカテゴリーをバランシングによって創設することを求める政府側の主張を斥け、長い禁止の伝統を欠くような保護されない言論を新設することはないとした。この法廷意見が覆されない限り、合衆国では、立法府が低価値であるとする、あるいは政治的な理由で保護されない表現領域が新たに立法化されても違憲となるのである。ようするにチャイルドポルノ規制で打ち止め。これ以上の表現内容規制するべきでない。
1-178 園田寿・曽我部真裕編著『改正児童ポルノ禁止法を考える』日本評論社2014年
第1章 児童ポルノ禁止法の成立と改正……………………園田 寿
第2章 判例から見た児童ポルノ禁止法……………………………奥村 徹
[コラム] セクスティングと児童ポルノ製造罪………………園田 寿
[コラム] 児童ポルノサイトへのアクセス遮断(ブロッキング)……曽我部真裕
第3章 単純所持規制の憲法上の論点……………………大林啓吾
第4章 所持規制の刑法上の論点………………………高山佳奈子
第5章 児童ポルノ単純所持規制についての検討………落合洋司
――刑事実務の観点から
1-179長沼秀世・新川健三郎『アメリカ現代史』岩波書店1991年
2冊め、前の本がぼろいので新品に近い良本とかえる。ニューディールの労働政策に詳しい。
1-180 平尾武久『増補アメリカ労務管理の史的構造-鉄鋼業を中心として』千倉書房 1984年
1870年代から1920年代くらいまでのアメリカ経営史。クラフトユニオンを使った内部請負制から、クラフトユニオンを追い出して、直接労務管理体制の確立とし、組合不在となった鉄鋼業の近代的労務管理体制の確立、アメリカにおける反労働組合色の強い労務管理を浮き彫りにしている名著だと思う。
1-181 ライト・ミルズ/河村・長沼訳『新しい権力者-労働組合幹部論』青木書店1975年
1-182 中澤誠・皆川剛『検証ワタミ過労自殺』岩波書店2014年
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