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2014/12/31

入手資料整理144

(全逓東北地本役員免職事件最小判昭53・7・18の矢崎調査官解説に引用されている先行研究の収集その1)

 今頃これか遅すぎるといわれるかもしれないが、企業秩序論、施設管理権、ピケッティング判例、争議行為刑事判例に時間をかけたうえ、英米仏法制史もひとおりみてきたつもりである。問題の核心ともいうべき個別職員へ行為責任を問う懲戒処分適法論を最後に調べたうえでいよいよ実務的問題を扱うこととするものである。
 

★★★★10635矢崎秀一(調査官解説)全逓東北地本役員懲戒免職事件上告審判決最三小判昭53・7・18民集32巻5号1030頁 『最高裁判例解説 民事篇 昭和五三年度』

(全逓東北地本判決の意義を私なりに要約すると)

 公務員の争議行為を理由とする懲戒処分を適法とした神戸税関事件判決(最三小判昭52・12・20民集31巻7号1101頁)と並ぶ指導判例であるが、争議行為を行った場合は、法令遵守義務、職務専念義務に違反するということはすでに神戸税関事件判決で示されていたことだが、新たに信用失墜避止義務にも違反するとして職員の個別責任を問えると明確に述べたことから最重要判例とみなす。要するに公務員の争議行為は「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」(国公法八二条三号)に該当し、違法争議行為は当然に「官職の信用を傷つけ、官職の不名誉となる行為」(国公法九九条)として懲戒処分できる。

判決の要所

「公共企業体等の職員につき争議行為を禁止した公共企業体等労働関係法(以下「公労法」という。)一七条一項の規定が憲法二八条に違反するものでないことは、既に当裁判所の判例とするところである(昭和四四年(あ)第二五七一号同五二年五月四日大法廷判決・刑集三一巻三号一八二頁[引用者註ー全逓名古屋中郵判決])。したがつて、郵政職員が禁止を犯して争議行為を行つた場合には、法令遵守義務を定めた国家公務員法(以下「国公法」という。)九八条一項、信用失墜行為避止義務を定めた同法九九条、職務専念義務を定めた同法一〇一条一項等に違反したものとして同法八二条一号に該当し、更に行為の態様によつては同条三号にも該当することがあり、懲戒処分の対象とされることを免れないと解すべきである。この場合に、公労法三条一項が労働組合法(以下「労組法」という。)七条一号本文の適用を除外していないことを根拠として、公労法一七条一項違反の争議行為のうちにもなお労組法七条一号本文の「正当な行為」にあたるものと然らざるものとがあるとし、右「正当な行為」にあたる争議行為については国公法八二条による懲戒処分をすることができないというような解釈は、これを採用することができない。けだし、公労法三条一項によれば、公共企業体等の職員に関する労働関係については、公労法の定めるところにより、同法に定めのないものについてのみ労組法の定めるところによるべきものであるところ、右職員の争議行為については公労法一七条一項にいつさいの行為を禁止する旨の定めがあるので、その争議行為について更に労組法七条一号本文を適用する余地はないというべきであるからである。公労法三条一項が労組法の右規定の適用を除外していないのは、争議行為以外の職員の組合活動については公労法に定めがないので、これに労組法の右規定を適用して、その正当なものに対する不利益な取扱を禁止するためであつて、公労法一七条一項違反の争議行為についてまで「正当な行為」なるものを認める意味をもつものではない。また、労働者の争議行為は集団的行動であるが、その集団性のゆえに、参加者個人の行為としての面が当然に失われるものではない以上、違法な争議行為に参加して服務上の規律に違反した者が懲戒責任を免れえないことも、多言を要しないところである。 」 

 この判決の意義は、第一に、争議行為は、組合の統一的集団的行為であり、これに参加する個々の組合員の行為は、かかる集団的行為の一環としてなされるものであるから、争議行為が違法であっても、争議行為の主体である組合のみが責任を負うべきであり、個々の組合員に対して懲戒その他個別契約上の追及することは許されないという多数説(プロレイバー学説)及び、それを受け容れ組合員個人の行為として懲戒責任を問いえないとした下級審判例である七十七銀行事件仙台地判昭45・5・29労民集21巻3号689頁を明確に否定し、「参加者個人の行為としての面が当然に失われるものではない以上、違法な争議行為に参加して服務上の規律に違反した者が懲戒責任を免れえない」と断言した点である。

(下級審判例では
 なお、下級審判例では、これより20年前の三井化学染料事件福岡地判32・7・20労民集8巻4号503頁が個人責任が問えなければ違法争議行為は掣肘できないとの見解を示していた。筆者もこれと同意見である。
 「組合の決定に基く組合活動といってもそれが違法な争議行為であるときは組合自身の責任(例えば損害賠償責任)を生ずることは勿論、当該違法行為者自身においても個人責任を負うべきものだと言わなければならない。けだし組合の決定に基き、組合のためにする行為だからといってこの行為に基く結果の責任をすべて組合に転嫁することを認めるにおいては、行為が行為者の判断、意欲、決意の決意に基づく価値行為たる本質をないがしろにし近代法の基本理念に背馳するそしりを免れないばかりでなく、組合の名のもとに違法行為を敢えてする組合員の行為を阻止し得ない事態を招来するからである。‥‥違法組合活動をなした者はその行為によって生ずることのある組合の責任とは別個に違法行為者としての個人責任を免れない‥‥」

 第二に、下級審判例(都城郵便局事件東京地判裁昭46・11・12労民集22巻6号1030頁、江戸川・昭島郵便局事件東京地判昭48・6・28労民集24巻3号345頁と本件の一審・二審)が、公労法違反の争議行為が行われた場合でも、その目的及び態様に徴し労組法7条1項(労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、不利益な取扱いをすることは不当労働行為とする)所定の正当性を具備するときは、公労法一八条による解雇又は損害賠償の請求することができるにとどまり、行為者に対して国公法による懲戒処分は許されないというほぼプロレイバー学説に依拠する判断を下していたが、これを否定したことである。
 本判決は、公労法3条1項は労組法7条1号本文の適用を除外しないが、公企体職員の労働関係については、公労法に定めのないものについてのみ労組法の定めによるととされており、公労法117条1項は一切の行為を禁止する定めがあるので、その争議行為について「正当な行為」なるものを認める余地はないとした。これは全逓名古屋中郵判決と共通するものであるが、地公労法も構造は同じであり、地公労法の定めないものについてのみ労組法の定めによるとしているので同じことだといえる。

 なお、懲戒免職の地本委員長は機関責任を問われているのではなく、全逓本部の指令にもとづくものであり、ストライキを実施させた行為、ステツカー貼付、庁舎内集団示威行進及び坐込み等についての実践指導という行為責任が問われてのものであり加えて過去7回の処分歴によるものである。

 以下解説に註として引かれている文献リストから入手しやすいものを収集した。
判例は、個々の違法争議行為に参加した組合員に懲戒処分できるというものであるが、同じ学説をA説、懲戒処分は許されない等プロレイバー学説をB説として表示する。

★★★A説1-19 田辺公二『労働紛争と裁判』弘文堂1965
死後出版された全集の2巻。司法研修所教官、水戸地裁判事、東京地裁判事を歴任、43歳で急逝したので著作は少ない。名著「同盟罷業権について」など収録している。英米法に精通したまともな学者。 
 違法争議行為の責任問題については、組合員の個別責任を否定するプロレイバー労働法学の見解について次のように批判する。
「‥‥労務提供の拒否などを「誘致」することが争議行為の本質だという考えに立ってみますと、争議行為というものは多くの組合員相互の誘致、さらにこれによって生ずる共同の労務放棄行為というものから成りたっている。そういう非常に緊密な精神的・有機的な共同活動である。これは株主が年に一度総会に来て、ごく形式的に会社の運営に関与するのとは根本的に違っていまして、組合員がこれに関与している程度がきわめて高いのであります。ですから一般の民法学者にこの問題を議論してもらえば、やはり組合と争議を指導した組合幹部から、さらに参加した組合員の全部にまで、理論上は一応責任が及ぶという結論になるのではないか。‥‥ドイツの学説でも‥‥たとえその行為が違法でも指令に違反して参加しないということは、到底期待できないということから、この責任をのがれさせようとした。しかし、この説は、結局一般に認められるには至らなかったのであります。違法な命令に従ったからといって、やはり責任は免れないといのが一般の刑法なり不法行為の考え方で、これはなかなか簡単には破れない考えないであります。」

B説1-20新井章『労働基本権保障と制約法理』日本評論社1975

1ー21峯村光郎『公労法・地公労法』日本評論社1971

B説10636 蓼沼謙一「争議行為と責任追求」季刊労働法71号
B説10637 片岡曻 「懲戒権の根拠と限界」『菊池勇夫教授六十年祝賀記念 労働法と経済法の理論』有斐閣1960所収
469頁以下「‥‥明らかに服務規律の維持を目的とする就業規則の規定を争議中の労働者の行為に適用して懲戒処分を行うことは許されない‥‥元来労働者は争議中といえども組合事務所として企業内の施設を利用するとか、もしくは団体交渉の支援、スト破りの防止等の目的のために争議行為として企業内の施設に立ち入る一定の権利を認められている。‥‥外部団体の応援者を無断で企業内に誘導するといった問題についても、それが争議行為の支援のために限るという限度において、平常と同様の厳格な規制は適用されない‥‥〔ただしー引用者挿入〕労働者は、団交、ピケ、示威等の方法によってかかる業務の阻止を求めうるのほかは、当該業務の服務規律に服すべき義務ありといわなければならない。‥‥‥右に述べた争議時に当然適用を排除せらるべき服務規律については、労働者側に個人としても団体たる労働組合としても懲戒その他の責任を生じる余地がない。‥‥団体たる労働組合の行為としての争議行為のように、本来個別労働関係の主体としての地位をはなれた行為であり、従って個別労働者としての地位において責任を問いえないものについて懲戒の責任を問題とする余地がないものと考える。つまり、労働組合内部の正規の機関の指示や決定にもとづく行為はもちろん、かりに明示の指示・決定がない場合にも、組合の活動として判断せられうべき目的・態様のもとになされたと認められる場合はし、労働組合の行為といわなければならないから、もはや関与した個々の労働者につき懲戒の責任を問うことは許されない」

(典型的なミリバントで階級的な労働運動を支援する学説)

B説10638川口実「違法争議行為と懲戒」季刊労働法32号
22「‥‥争議行為は『二面的に集団的な本質』をもっているから、個別的な関係を規律する就業規則の懲戒条項を適用する余地はない。‥‥殺人・放火というような争議行為からはみ出た行為のみ非難すべき‥‥違法争議行為の責任についてはせいぜい組合が損害賠償責任を負うにとどまると解すべきである」(ただし後に改説)

B説10639籾井常喜「使用者による争議責任追及の限界」季刊労働法45号
46~47頁「争議中にあっては、労働者には、使用者の指揮・支配から公然と離脱する権利が保障されているのである。したがって、争議中、組合の統括のもとでおこなった組合員の行為にたいしては、使用者の労務指揮の権限が及ぶいわれはない‥‥組合員の行為は、単に個々の組合員の行為おこなう組合員の集積というべきものではなく、団結意思に基づく団体行動なのである。それは個人的行為に還元できない、質の全くちがった行動様式であり‥‥この団体行動の性質は、それが違法だからといって個人的行為に分解されるべき筋合のものではない‥‥‥
争議行為は労働組合の行為としておこなわれたものであり、組合員に対する懲戒処分とか解雇などの個別的責任追及にはなじまない性格のものなのである。したがって、もし違法争議行為によって使用者が損害をうけたとするならば、不法行為にもとづく損害賠償を組合を相手取って提起するのが本筋にかなった方法といってもよいのではないか‥‥」
(典型的なミリバントで階級的な労働運動を支援する学説)

B説10640 橋詰洋三「官公労働者の労働法上の地位-現業公務員を中心に-」判タ263
27頁「‥‥争議行為は、これに参加する個々行為の単なる総計ではなく、それを超絶した一個独自の集団行動として社会的・政治的に機能し、かかるものとして法的に評価の対象となり、従ってその正当不当、または合法違法を評価しうるものではない‥‥」

B説10641 山本博「公務員の争議行為責任の法理」法律時報43巻12号
22頁「‥‥国公労法の諸規定は‥‥個別公務員の一般的服務関係に関するものであることは明らかである。争議行為はこのような一般的服務の否定の上に立つところの異質の集団的現象である‥個別公務員の一般的服務に関する規定を拡張彎曲して適用しようとするのは解釈論としても合理性を欠く」

B説10642 片岡曻「公務員の争議行為と不利益処分」季刊労働法73号
14頁「たとい労働組合の争議行為が違法であるとしても、個々の組合員の行為が当該争議行為を組成し、その圏内にある行為と認められるかぎり、これを独立の行為として、使用者との関係における個別契約法的評価にさらし、使用者からの懲戒その他の民事上の責任の追及を許容することはできない‥‥」

A説10643 慶谷淑夫「一般公務員の争議行為、政治活動による行政処分の問題点」法律のひろば23巻12号
12頁「個々の労働者は、使用者と労働契約を締結することによって企業内に編入され企業秩序に服することになるのであり、このような関係は、労働契約関係が続く限り存続し、それは争議行為が行われたからといって変わるものではない。ただ争議行為が正当であれば、企業秩序違反の責任を問わないというだけであり、、もし違法な争議が行われ、企業秩序を侵害すれば、当然企業秩序違反として懲戒事由に該当することは明らか‥‥」

A説10644 菅野和夫「違法争議行為における団体責任と個人責任(一)ー損害賠償責任の帰属の問題として」法学協会雑誌88巻2号
「‥‥違法行為者は自己を拘束する他人の命令に従ったことをもってその責任を免れる一般的根拠となしえないこと責任法の基本原則である‥‥争議行為の「二面集団的本質」は、「個人の埋没」ばかりでなく、個人の「実行行為性」をも意味しうる‥‥団体法的見解の個人責任否定論は、まず、不法行為法や契約法の基本原則からその当否が疑われるようなあまりにも広範な無責任の結論を導いており、しかもその十分な理由づけを行っていない‥‥」

B説からA説に改説10645 川口実「争議行為に対する責任追求としての懲戒処分(四・完)」法学研究(慶大)44巻12号

11頁「懲戒は抽象的には解雇の自由にもとづいてはいるが、具体的には就業規則の適用として捉えられ、実質的には労使間における信義則違反行為として評価されるにいたったのである‥‥違法争議行為が実質的に信義則に反する場合は、その違法性に応じて、各段階の懲戒処分が加えられ、その処分が同時に信義則違反として無効になるかどうかが具体的に判断されることになる‥‥」

B説10646 山口浩一郎「公務員の争議行為と懲戒処分」ジュリスト472

A説に近い見解(都城郵便局事件東京地裁判決の評釈)10647花見忠「公労法一七条違反の争議行為と懲戒処分」判タ276

(全逓東北地本判決の評釈)10648 佐藤繁 ジュリスト682

(全逓東北地本判決の評釈)10649 田村和之 民商法雑誌80巻5号

(全逓東北地本事件の評釈)10650 吉田洋一(自治省公務員第一課)「スト・庁内デモ・ビラ貼り等を指導した地本委員長の懲戒免職処分が是認された事例」地方公務員月報185号

(全逓東北地本事件の評釈)10651 はやししうぞう 時の法令1037、1038

 上告人地本委員長の懲戒免職は、組合幹部としての責任を問うているものではなく、スト・庁内デモ・ビラ貼り等の指導をすべて現認したうえでなされたことを留意しなければならない。また過去に7回停職処分を受けた経歴もあるうえに本件の行為を繰り返したことから免職もやむをえないとした判断である。といったことを記載。

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