下書き)地方公営企業の職員の労働関係に適用できる法律、判例法理について(3)修正1
(2)行政財産の目的外使用(国有財産法18条3項・地方自治法238条の4第7項)
地方公共団体の公有財産は行政財産と普通財産に分類され(自治法238条の3)行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産という(自治法238条の4)。
行政財産の目的外使用については、その用途又は目的を妨げない限度で、その使用を許可できる(自治法238条の4第7項)している。なお許可を受けてする行政財産の使用については、借地借家法は適用されない。
なお、国有財産法18条3項にも類似の規定があり、「行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度において、その使用又は収益を許可することができる」としている。
目的外使用の実例として地方自治法の解説書で例示されているのは、食堂、売店施設、理髪室等の厚生施設、記者クラブ等の広報施設、災害時の応急施設である。自動販売機の設置もそうである。
「公用又は公共用に供し」と区別していることには意味がある。公用(財産)とは事務また事業を執行するため、直接使用しているために保有しているもので、庁舎、議事堂、研究所、公用車等という。
公共用(財産)とは住民の一般利用に供されるために保有しているもので、道路、橋梁、公園、学校、病院等の敷地、建物をいう。公共用財産について、公共の利用に供するために人的サービスを伴い、上記の目的のために施設管理サービスを行っているものを「公の施設」という[i]。
なお、近年では大都市の土地の有効活用、市町村合併や学校統廃合による行政財産の空きスペースの活用の観点から、平成18年の地方自治法の改正(地方自治法238条の4第2項。それを受けて地方自治法施行指令169条の3)がなされ、庁舎等の床面積又は敷地のうち、当該普通地方公共団体の事務又は事業の遂行に関し現に使用され、又は使用されることが確実であると見込まれる部分以外の部分がある場合(要は余裕のある部分)には、これを貸し付けることができ、地上権、地益権を設定できることとなった。この場合、建物の貸し付けをすると借地借家法の適用を受けることになる。
ア 地方自治法と地方公営企業法の関係
地方公営企業法では、「地方公営企業の用に供する資産」(地公企法9条7)には自治法に定める、行政財産と普通財産の両者が含まれるとしているが、地方公営企業法と地方自治法の関係はおよそ以下のとおりである。
○地方自治法の適用がある
自治法238条(公有財産の範囲と分類)
自治法238条の3(職員の行為の制限)
自治法238条の4(行政財産の管理及び処分)
自治法238条の5(普通財産の管理及び処分)
自治法238条の6(旧慣による公有財産の使用)
自治法238条の7第3項から6項まで(行政財産を使用する権利についての不服申立)など
○地方自治法の適用除外
自治法96条1項5号から7号まで(契約の締結、財産の交換、出費等、重要な財産の取得又は処分について議会関与を排除)地公企法40条1項による。
自治法237条2項 など。
したがって、地方公営企業用資産のうち行政財産の目的外使用については、その用途又は目的を妨げない限度で、その使用を許可できるとしている地方自治法が適用される。
なお、地方公営企業用資産のうち行政財産を目的外使用された場合に徴収する使用料については、条例で定めることを要せず、管理者限りで定められる(地公企法40条3項)。行政財産の目的外使用の許可およびその取消、使用料にかかる督促手数料等の決定についても管理者が定めるものである(行実昭和41.10)[ii]]。
イ 公用財産と公の施設は違う
なお自治法224条2項は正当な理由がない限り、住民が「公の施設」を利用することを拒んではならないとし、同条3項で住民が「公の施設」を理由することについて、不当な差別的取扱いをしてはならないと定めているが、庁舎は行政財産のうち公用財産であり、「公の施設」とは別の範疇である。水道局についていえば庁舎等は公用財産、配水本管は公共用財産あるいは公の施設と区別してよいと思う。
エ 庁舎管理規程における目的外使用規定の例
例えば『郵政省庁舎管理規程』(昭40・11・20公達)「庁舎等における秩序維持等、犯罪の防止、業務の正常な遂行、清潔の保持及び災害の防止を図る」(一条)という目的のために必要な事項を定めたとし、「庁舎管理者は、庁舎等における秩序維持等に支障がないと認める場合に限り、庁舎等の一部をその目的外に使用することができる」(四条) とされ、国有財産法の趣旨に沿ったものとなっている。また厚生労働省が入居する霞ヶ関の『中央合同庁舎第5号館の管理に関する規則』では「第1条 この規則は、国有財産法(昭和23年法律第73号)第5条の2の規定に基づき財務大臣の指定した中央合同庁舎第5号館を厚生労働大臣が統一的に管理することを目的とし、「12条 管理官庁等は、原則として合同庁舎を所掌業務以外に使用させてはならない。2 管理官庁等は、やむを得ない事由によりその管理する合同庁舎の一部を目的外に使用させようとする場合は、あらかじめ「使用許可申請書」(別紙第4号様式)を提出させ、当該申請書を審査し、当該行為が所掌業務の遂行を妨げず、かつ、庁舎内の秩序維持及び安全保持に支障のないものに限り「使用許可書」(別紙第5号様式)を申請者に交付し、許可するものとする。この場合において、管理官庁等は、必要な条件を付し、又は指示することができる 」 としている。
しかし、昭和郵便局掲示板撤去事件最一小昭和57・10・7判決民集36巻10号2091頁が、庁舎管理権には国有財産法18条3項の目的外使用許可の範疇に含まれず、使用権や利用権を取得しない事実上の許可とう範疇があることを明らかにしているように、庁舎管理権の運用は、国有財産法の目的外使用許可に限定されるものではない。
とはいえ、禁止されるべき行為は大抵の場合「目的外使用」の範疇にくくられるから、庁舎管理規則の目的外使用=国有財産法および地方自治法の目的外使用でなくても、辻褄はあうものと考えてよいだろう。
オ 目的外使用の法律関係
学説は、公法上の関係であるという説と(長野士郎・加藤富子)と、基本的には私法上の契約関係だが許可・取消など公法的要素があるとする(原龍之介)がある。以下、主要判例を検討する。
(ア)中央卸売市場事件
中央卸売市場事件昭和49・2・5最高裁第三小法廷判決民集28巻1号1頁 判時736号41頁 判タ307号171頁[iii]は、都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使用許可が、当該行政財産本来の用途または目的上の必要に基づき将来に向かつて取消されたときは、使用権者はよって生じた損失の補償を求めうべきであるが、右取消による土地使用権の喪失に対する補償は、特別の事情のない限り求めることはできないと判示した。
最高裁判決は
「‥‥ 原判決は、(1)第一審判決添付別紙目録記載の土地合計一八〇〇坪‥‥上告人の所有であり、昭和六年六月一七日開設を認可された東京市(都)中央卸売市場築地本場の指定区域内にある行政財産である、(2)被上告人は、上告人から昭和二一年七月二七日および同年九月三日の二回にわたりいずれも始期を同年八月一日とし、使用期間の定めなく、使用目的をクラブ、レストラン、喫茶、料理およびこれに附随する事業を営むために建物を建築所有することとして本件土地のうち一五〇〇坪と残三〇〇坪とを順次借り受けたが、右は私法上の契約によるものではなく、当時施行されていた東京市条例昭和九年第三七号東京市中央卸売市場業務規程にもとづいてされた行政財産の使用許可処分によるものである、(3)その後まもなく、本件土地のうち七五六坪が進駐軍に接収されることになつたので、上告人は、昭和二二年一一月二五日右七五六坪の使用許可を取り消した、(4)被上告人は、昭和二四年末残余の一〇四四坪の一部に木造瓦葺平家建店舗一棟建坪五五坪を建築し、翌年から喫茶店等の営業を営むようになつたものの、一〇四四坪のうちのその余の部分については被上告人の事業計画が上告人の方針に沿わず承認を受けるに至らなかつた等の事情から利用されずに経過していた、(5)一方、朝鮮戦争のころから中央卸売市場への入荷が急激に増加し、市場としては右土地をも自ら使用しなければ入荷物や多数集合する市場関係者の混雑を防ぐことができなくなつてきたうえ、被上告人の土地使用が不必要または不適切と認められたので、上告人は、昭和三二年六月二九日昭和二三年東京都条例一四七号東京都中央卸売市場業務規程を適用し、一〇四四坪のうち九六〇坪につき同月三〇日限り使用指定を取り消す旨の通告を被上告人に対してし、同年九月二二日行政代執行法により右九六〇坪上に存した前記建坪五五坪の建物を取消をしていない八四坪上に移転し、右九六〇坪を回収した旨判示したうえ、上告人が右九六〇坪についてした使用許可の取消によつて被上告人が受けた右土地についての使用権の喪失という積極的損害は特別の犠牲に当たるから憲法二九条三項にもとづきその補償がされるべきであるとし、かつ、右土地の使用権は借地権と同一視することはできないが、これときわめて相似するものであるとして、補償金額は更地価格の六〇パーセントを相当とするとし、右の補償を求める被上告人の請求を一部認容している。
ところで、本件取消を理由とする損失補償に関する法律および都条例についてみるに、本件取消がされた当時(昭和三二年六月二九日)の地方自治法および都条例にはこれに関する規定を見出すことができない。しかし、当時の国有財産法は、すでに、普通財産を貸し付けた場合における貸付期間中の契約解除による損失補償の規定をもうけ(同法二四条)、これを行政財産に準用していた(同法一九条)ところ、国有であれ都有であれ、行政財産に差等はなく、公平の原則からしても国有財産法の右規定は都有行政財産の使用許可の場合にこれを類推適用すべきものと解するのが相当であつて、これは憲法二九条三項の趣旨にも合致するところである。そして、また、右規定は、貸付期間中の解除に関するものであるが、期間の定めのない場合であつても使用許可の目的、内容ないし条件に照らし一応の使用予定期間を認めうるときは、これを期間の定めのある場合と別異に扱う理由がないから、この場合にも前記規定の類推適用が肯定されてしかるべきである。(中略)
そこで、この見地から、被上告人の本件損失補償請求を一部認容した原判決を是認することができるかどうかについてみるに、前記国有財産法二四条二項は「これに因つて生じた損失」につき補償すべきことを定めているが、使用許可の取消に際して使用権者に損失が生じても、使用権者においてその損失を受忍すべきときは、右の損失は同条のいう補償を必要とする損失には当たらないと解すべきところ、原判決の前記判示によれば、被上告人は、上告人から上告人所有の行政財産たる土地につき使用期間を定めないで使用の許可を受けていたが、当該行政財産本来の用途または目的上の必要が生じて右使用許可が取り消されたものということができる。このような公有行政財産たる土地は、その所有者たる地方公共団体の行政活動の物的基礎であるから、その性質上行政財産本来の用途または目的のために利用されるべきものであつて、これにつき私人の利用を許す場合にその利用上の法律関係をいかなるものにするかは、立法政策に委ねられているところと解される。(中略)したがつて、本件のような都有行政財産たる土地につき使用許可によつて与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。すなわち、当該行政財産に右の必要を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひつきよう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであつて、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。
それゆえ、被上告人は、むしろ、上告人に対し、本件行政財産についての右の必要のもとにされたと認めうる本件取消によつて使用権が消滅することを受忍すべき立場にあると解されるから、被上告人が本件取消により土地使用権の喪失という積極的損失を受け、この損失につき補償を必要とするとした原判決の判断は、さらに首肯しうべき事情のないかぎり、これを是認することができないのである。もつとも、原判決は、被上告人が本件使用許可を受けた際上告人の依頼により本件土地を整理、宅地化するため相当の費用を支出したことをもつてあたかも借地権取得に際し権利金を支払つたのと対比することができる旨判示しているが、右の一事をもつて被上告人の使用権を借地権に比することはできないというべく、右の事情もいまだ原判決の前記判断を是認するに足りるものではない。したがつて、原判決には法令違背があることに帰し、ひいて審理不尽、理由不備の違法があるものというべきである。そして、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、その余の上告理由について判断するまでもなく原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れず、本件は前叙の観点からなお審理をつくす必要があるので、右部分を原審に差し戻すこととする。 ‥‥」
行政財産の目的外使用は公法関係とされており、要するにこの判決は相手の損失を補償する必要は、「原則としてない」とし、都が使う必要があるから、あなたの使用許可を取り消す・・・と言われたら、それを受け入れなければならない性質の使用権であり、例外的に「当事者の特約などで、使用する側が継続して使用できる実質的理由があれば補償は必要」としたものである。[iv]
(イ)昭和郵便局掲示板撤去事件
昭和郵便局掲示板撤去事件最一小判昭57・10・7最一小判民集36巻10号2091頁判時1067号39頁[v]は、郵便局長が郵便局庁舎の二階にあった掲示板を全逓組合に使用することを許可していたが、古くなったので、環境整備の目的から一回の掲示板を拡大してこれを使わせるかわりに、二階の掲示板の使用を禁じこれを撤去したため、組合が二階掲示板の原状回復及び損害賠償を求めて訴えを定期した事件であるが、行政財産たる掲示板の使用関係につき、国有財産法18条3項の目的外使用であることを否定し、庁舎管理権に基づく掲示物の使用許可によって事実上使用を許可されたものであることを明らかにしたうえ、その許可の性質は講学上の「許可」、すなわち一般的禁止の解除であって、これにより私法上のみならず公法上においてもなんら権利を設定、付与させるものではないことを明言した。判決は「庁舎管理者は、庁舎等の維持管理又は秩序維持上の必要又は理由があるときは、右許可を撤回することができる」とした[vi]。
掲示板が国有財産法の目的外使用であったとしても、それは民法上の使用許可で契約関係を生じるものであるから、被許可者に何ら使用の権利を生じさせるものではないと説く見解もある[vii]]。しかし判決は掲示板の使用関係はそのように議論のある目的外使用ですらないので、なんら組合に占用利用の権利性を設定、付与するものでないとしているのである。
判決は次のとおり
「‥‥上告人の本訴請求は、上告人の支部組合である全逓信労働組合昭和瑞穂支部がかねて昭和郵便局長から掲示物の掲示の一括許可(以下「本件許可」という。)を受けて、その掲示場所として指定された同郵便局庁舎内の国の設置にかかる本件掲示板を組合活動のための掲示物の掲示に専用してきたところ、昭和郵便局長が違法に本件許可を撤回して本件掲示板を撤去したとして、被上告人に対し、本件掲示板が設置されていたのと同一の場所にそれと同一規格の掲示板を設置してこれを上告人に使用させるべきこと(以下「本件原状回復請求」という。)及び債務不履行若しくは不法行為又は国家賠償法一条一項の規定に基づく損害賠償の請求をするものである。そして、郵政省庁舎管理規程(昭和四〇年一一月二〇日公達第七六号。以下「庁舎管理規程」という。)二条は、各郵便局庁舎の庁舎管理者を当該各郵便局長とするものと定め、同規程六条は、庁舎管理者は庁舎等において広告物等の掲示等をさせてはならないものとするとともに、庁舎等における秩序維持等に支障がないと認める場合に限り、場所を指定してこれを許可することができるものとしているところ、原審が適法に確定した事実関係によれば、本件許可は昭和郵便局長が右規程六条の規定に基づいてしたものであることが明らかである。
二 そこで、本件許可の性質について考えるのに、庁舎管理規程は、郵政省に属する行政機関の遂行する事業及び行政事務の用に供される土地、庁舎等における秩序の維持等を図るため、庁舎管理権に基づく右土地、庁舎等の取締りに関し必要な事項を定めたものであつて(一条)、同規程四条以下の庁舎等における諸行為の規制に関する規定も専らその趣旨で設けられたものであること、他方、右土地及び庁舎についての国有財産法一八条三項の規定によるいわゆる行政財産の目的外使用の許可については、別に、郵政事業特別会計規程(昭和四六年三月一七日公達第一〇号)第一一編四条において、許可権者、許可の要件、その手続等に関する規定が設けられていること等に照らすと、庁舎管理規程六条に定める庁舎管理者による庁舎等における広告物等の掲示の許可は、専ら庁舎等における広告物等の掲示等の方法によつてする情報、意見等の伝達、表明等の一般的禁止を特定の場合について解除するという意味及び効果を有する処分であつて、右許可の結果許可を受けた者において右のような伝達、表明等の行為のために指定された場所を使用することができることとなるとしても、それは、その者が許可によつて禁止を解除され、当該行為をする自由を回復した結果にすぎず、右許可自体は、許可を受けた者に対し、右行為のために当該場所を使用するなんらかの公法上又は私法上の権利を設定、付与する意味ないし効果を帯有するものではなく(したがつて、使用の対価を徴することなどは、全く予定されていない。)、もとより国有財産法一八条三項にいう行政財産の目的外使用の許可にも当たらないと解するのが相当である。そうすると、昭和郵便局長が庁舎管理規程六条の規定に基づいてした本件許可によつては、上告人は本件掲示板ないし庁舎壁面についての使用権ないし利用権を取得するものではないから、上告人の本訴請求のうち、かかる権利を有することを前提とする本件原状回復請求及び右権利に対応する債務の不履行を理由とする損害賠償請求は、いずれも理由がないというべきである。
また、昭和郵便局長が本件許可を撤回し又は本件掲示板を撤去するに至つた経緯及び事情についての所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。そして、庁舎管理規程六条の定める許可の制度の先にみたような趣旨に徴すれば、庁舎管理者は、庁舎等の維持管理又は秩序維持上の必要又は理由があるときは、右許可を撤回することができるものと解すべきところ、原審が適法に確定した事実関係のもとにおいては、昭和郵便局長がした本件許可の撤回又は本件掲示板の撤去が違法ではないとした原審の判断も、正当として是認することができる。‥‥」
組合側の主張は、掲示板使用賃借契約ないし掲示板使用契約の不当解除、国有財産法18条3項の目的外使用の違法な撤回だったが、いずれも否定した。
もし掲示物の許可を国有財産法18条2項の目的外使用とすると、同法24条(貸付契約の解除)が準用される結果、本件掲示板は「国又は公共団体において公共用、公用又は国の企業若しくは、公益事業の用に供するため必要を生じたとき」でないと許可の撤回ができないため、不都合であり、国有財産法上の目的外使用許可ではないとした最高裁判決は妥当といえる。
[i] 村上順・白藤博行・人見剛編 別冊法学セミナー211号『新基本法コメンタール地方自治法』日本評論社2011年313頁
[ii] 詳細は加賀裕『地方公営企業の理論と実際』帝国地方行政学会1978年163頁以下参照
[iii]判例評釈 川口冨男・法曹時報27巻6号100頁1975年6月 、大和勇美・法曹時報29巻3号90頁1977年3月、下山瑛二・民商法雑誌71巻6号134頁川口冨男・ジュリスト562号64頁原田尚彦・ジュリスト590号43頁
[iv] http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1089559255
[v]判例評釈 松永榮治・法律のひろば36巻1号38~44頁 秋山昭八・教育委員会月報389号19~25頁1983年1月津山直登・自治研修234号62~72頁1983年1月 小西國友・月刊法学教室31号90~91頁1983年4月 林修三・時の法令1173号59~62頁1983年3月23日 西谷敏・季刊労働法127号110~118頁
[vi]茂田忠良・内田淳一「昭和郵便局掲示板撤去事件に対する昭和57年10月7日最高裁判決について--庁舎管理権をめぐる問題」『警察学論集』36巻1号 1983
[vii]槇重博「郵政省庁舎管理規程(昭和四〇年一一月二〇日公達第七六号)六条に定める許可の性質(最判昭和57.10.7)『民商法雑誌』89巻1号 1983
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