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2015/04/05

入手整理資料151

テーマ 呉市立中学校教研集会使用不許可事件平成18.2.7最高裁判決をどう評価するか。
 (決して悪くない。これをうまく説明することが肝心と考える)

10717★皆川治廣 「判例解説 学校使用不許可処分損害賠償事件」『法令解説資料総覧』295号
10718広島県高教組教研集会学校施設不許可事件広島高判平18.1.25 判時1937号95頁
10719黒原智宏「公立学校施設の目的外使用の不許可処分と司法審査-呉市公立学校施設使用不許可国家賠償請求事件上告審判決」『自治研究』84巻10号
10720★★仲野武志「公立学校施設の目的外使用の拒否の判断と管理者の裁量権」判時1956号177頁
10721★★★調査官解説 川神裕 呉市立中学校教研集会学校施設使用不許可事件最三小判平18.2.7 『最高裁判所判例解説民事篇平成18年度(上)』法曹会206頁
10722★★調査官解説 近藤崇晴 泉佐野市民会館「中核派」関西空港反対集会使用不許可事件最三小判平7.3.7『最高裁判所判例解説民事篇平成7年度(上)』法曹会282頁
10723★★調査官解説 秋山壽延 上尾福祉会館「JR総連総務部長」合同葬使用拒否事件最二小判平8.3.15『最高裁判所判例解説民事篇平成8年度(上)』法曹会202頁
10724★安藤高行「近年の人権判例(6)」『九州国際大学論集』16巻3号2010年(ネット公開)

 *コメント 呉市立中学校事件判決の評価(一)

 呉市立中学校教研集会使用不許可事件 最三小判平18.2.7 民集60巻2号401頁、判時1936号63頁、判タ1213号106頁 は平成11年11月13日(土)14日(日)広島県教組が広島県教研集会会場として呉市立中学校の施設の使用を申し出、校長が、職員会議を開いた上で支障がないと判断し口頭で了承されたが、その後、呉市教委の指導があり、不当に使用を拒否されたとして損害賠償を求めた事案で、一審、二審とも県教組が勝訴、最高裁は前年まで一回を除き会場として使用されていたこと、右翼団体の妨害もなかったとして、不許可処分が裁量権の逸脱したものであるとして上告を棄却したものである。
 本判決は、最高裁として初めて、学校施設の目的外使用の諾否の判断の性質、司法審査のありかたを明らかにしたもので、あくまでも原審確定事実の判断とはいえ、重要判例と認識している。

1 原審との理論構成の違い

   この事件は一審(広島地判平14.3.28民集60巻2号443号)、二審とも組合側が勝訴したが、原審と最高裁では理論構成に差異がある。 一審判決は、市教委に積極的に研修の場として学校施設を確保すべき配慮義務があるとし、許可しない場合の正当理由と存在の立証を求めている。
 一審判決の論理構成は「学校施設の使用の許否の判断は、管理権限者の広い裁量に委ねられているものであるが、 管理権限者の裁量権の行使にあたって恣意が許されないのはいうまでもなく、使用目的が学校施設の設置目的に沿っているのに、特に理由もなく使用を拒否したとか、使用目的が設置目的に沿うものでなくとも、不当な理由により拒否するなど、管理権限者の判断において、裁量権の逸脱・濫用にあたる事情があれば、違法というべきであり、その判断は、学校施設の使用目的、代替施設の確保の困難性、施設管理上、学校教育上の支障などの諸事情を基礎として総合的に判断されるべきものである」とし、本件を、目的外使用の問題ではなく、設置目的に沿った使用の問題と捉えているような行論を展開し(安藤高行論文参照)、結論として、「本件教研集会は、原告の労働運動という一面も併せ持ってはいるものの、主として、教員などによる教育研究活動の報告、検討会としての性格を有し、学校施設の設置目的に沿うものとして取り扱わなければならないこと、また、代替施設の提供は一応はなされているものの、学校教科項目の研究討議は、器具、設備との関係で、教室等の学校施設で行われることが必要不可欠であって、他の施設では、研究討議に不便を来し、研究討議が十分になされないおそれがあり、他の施設の提供では十分とはいえないこと、そして、さらに、前記認定判断のとおり、施設管理上、学校教育上の支障など、その使用を拒否するにつき、正当な理由が何ら認められないことなどの事情を総合勘案すると、原告の他の主張の当否を検討するまでもなく、本件不許可処分は、呉市教委において、その裁量権を逸脱した違法な処分であるといわざるを得ない」とするのである。

 最高裁は原審の考え方について法令解釈を誤っているとし、理論構成を修正したうえで、本件は目的外使用不許可の裁量権の逸脱があったという結論については原審の判断を支持した。
 最高裁判決では、学校施設の目的外使用は本来、限定的なものであって、これを許可するかどうかは原則として管理者の裁量に委ねられているとし、その場合の裁量権の濫用と目される司法審査の判断指針として「その判断要素の選択や判断過程」にまで立入った「合理的」判断を求める一方で、その判断が 「重要な事実の基礎を欠くか,または社会通念に照らし著しく妥当性を欠く」場合にのみ濫用となるものとして、裁量権の幅を広く解している。

2 最高裁判決

「‥‥‥ (1) 地方公共団体の設置する公立学校は、地方自治法244条にいう「公の施設」として設けられるものであるが、これを構成する物的要素としての学校施設は同法238条4条4項[引用者註平成18年の地方自治法改正で、238条の4第7項]にいう行政財産である。したがって、公立学校施設をその設置目的である学校教育の目的に使用する場合には、同法244条の規律に服することになるが、これを設置目的外に使用するためには、同法238条の4第4項に基づく許可が必要である。教育財産は教育委員会が管理するとされているため(地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条2号)、上記の許可は本来教育委員会が行うこととなる。
 学校施設の確保に関する政令(昭和24年政令第34号。以下「学校施設令」という。)3条は、法律又は法律に基づく命令の規定に基づいて使用する場合及び管理者又は学校の長の同意を得て使用する場合を例外として、学校施設は、学校が学校教育の目的に使用する場合を除き、使用してはならないとし(1項)、上記の同意を与えるには、他の法令の規定に従わなければならないとしている(2項)。同意を与えるための「他の法令の規定」として、上記の地方自治法238条の4第4項は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができると定めており、その趣旨を学校施設の場合に敷えんした学校教育法85条は、学校教育上支障のない限り、学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができると規定している。本件使用規則も、これらの法令の規定を受けて、市教委において使用許可の方法、基準等を定めたものである。
 (2) 地方自治法238条の4第4項、学校教育法85条の上記文言に加えて、学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている(学校施設令1条、3条)ことからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。学校教育上の支障とは、物理的支障に限らず、教育的配慮の観点から、児童、生徒に対し精神的悪影響を与え、学校の教育方針にもとることとなる場合も含まれ、現在の具体的な支障だけでなく、将来における教育上の支障が生ずるおそれが明白に認められる場合も含まれる。また、管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時、場所、目的及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である。
 (3) 教職員の職員団体は、教職員を構成員とするとはいえ、その勤務条件の維持改善を図ることを目的とするものであって、学校における教育活動を直接目的とするものではないから、職員団体にとって使用の必要性が大きいからといって、管理者において職員団体の活動のためにする学校施設の使用を受忍し、許容しなければならない義務を負うものではないし、使用を許さないことが学校施設につき管理者が有する裁量権の逸脱又は濫用であると認められるような場合を除いては、その使用不許可が違法となるものでもない。また、従前、同一目的での使用許可申請を物理的支障のない限り許可してきたという運用があったとしても、そのことから直ちに、従前と異なる取扱いをすることが裁量権の濫用となるものではない。もっとも、従前の許可の運用は、使用目的の相当性やこれと異なる取扱いの動機の不当性を推認させることがあったり、比例原則ないし平等原則の観点から、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となったりすることは否定できない。
 (4) 以上の見地に立って本件を検討するに、原審の適法に確定した前記事実関係等の下において、以下の点を指摘することができる。
 ア 教育研究集会は、被上告人の労働運動としての側面も強く有するものの、その教育研究活動の一環として、教育現場において日々生起する教育実践上の問題点について、各教師ないし学校単位の研究や取組みの成果が発表、討議の上、集約される一方で、その結果が、教育現場に還元される場ともなっているというのであって、教員らによる自主的研修としての側面をも有しているところ、その側面に関する限りは、自主的で自律的な研修を奨励する教育公務員特例法19条、20条の趣旨にかなうものというべきである。被上告人が本件集会前の第48次教育研究集会まで1回を除いてすべて学校施設を会場として使用してきており、広島県においては本件集会を除いて学校施設の使用が許可されなかったことがなかったのも、教育研究集会の上記のような側面に着目した結果とみることができる。このことを理由として、本件集会を使用目的とする申請を拒否するには正当な理由の存在を上告人において立証しなければならないとする原審の説示部分は法令の解釈を誤ったものであり是認することができないものの、使用目的が相当なものであることが認められるなど、被上告人の教育研究集会のための学校施設使用許可に関する上記経緯が前記(3)で述べたような趣旨で大きな考慮要素となることは否定できない。
 イ 過去、教育研究集会の会場とされた学校に右翼団体の街宣車が来て街宣活動を行ったことがあったというのであるから、抽象的には街宣活動のおそれはあったといわざるを得ず、学校施設の使用を許可した場合、その学校施設周辺で騒じょう状態が生じたり、学校教育施設としてふさわしくない混乱が生じたりする具体的なおそれが認められるときには、それを考慮して不許可とすることも学校施設管理者の裁量判断としてあり得るところである。しかしながら、本件不許可処分の時点で、本件集会について具体的な妨害の動きがあったことは認められず(なお、記録によれば、本件集会については、実際には右翼団体等による妨害行動は行われなかったことがうかがわれる。)、本件集会の予定された日は、休校日である土曜日と日曜日であり、生徒の登校は予定されていなかったことからすると、仮に妨害行動がされても、生徒に対する影響は間接的なものにとどまる可能性が高かったということができる。
 ウ 被上告人の教育研究集会の要綱などの刊行物に学習指導要領や文部省の是正指導に対して批判的な内容の記載が存在することは認められるが、いずれも抽象的な表現にとどまり、本件集会において具体的にどのような討議がされるかは不明であるし、また、それらが本件集会において自主的研修の側面を排除し、又はこれを大きくしのぐほどに中心的な討議対象となるものとまでは認められないのであって、本件集会をもって人事院規則14-7所定の政治的行為に当たるものということはできず、また、これまでの教育研究集会の経緯からしても、上記の点から、本件集会を学校施設で開催することにより教育上の悪影響が生ずるとする評価を合理的なものということはできない。
 エ 教育研究集会の中でも学校教科項目の研究討議を行う分科会の場として、実験台、作業台等の教育設備や実験器具、体育用具等、多くの教科に関する教育用具及び備品が備わっている学校施設を利用することの必要性が高いことは明らかであり、学校施設を利用する場合と他の公共施設を利用する場合とで、本件集会の分科会活動にとっての利便性に大きな差違があることは否定できない。
 オ 本件不許可処分は、校長が、職員会議を開いた上、支障がないとして、いったんは口頭で使用を許可する意思を表示した後に、上記のとおり、右翼団体による妨害行動のおそれが具体的なものではなかったにもかかわらず、市教委が、過去の右翼団体の妨害行動を例に挙げて使用させない方向に指導し、自らも不許可処分をするに至ったというものであり、しかも、その処分は、県教委等の教育委員会と被上告人との緊張関係と対立の激化を背景として行われたものであった。
 (5) 上記の諸点その他の前記事実関係等を考慮すると、本件中学校及びその周辺の学校や地域に混乱を招き、児童生徒に教育上悪影響を与え、学校教育に支障を来すことが予想されるとの理由で行われた本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。そうすると、原審の採る立証責任論等は是認することができないものの、本件不許可処分が裁量権を逸脱したものであるとした原審の判断は、結論において是認することができる。‥‥」

3 これは組合活動に甘い判決といえるのか

 下級審判例で公立学校の学校施設の利用許可申請拒否を適法とした例は少なくない。少なくとも以下に挙げる6判例うち5判例は教職員組合主催集会等の不許可を適法としているのである。
 呉市立学校事件最高裁判決は「職員団体にとって使用の必要性が大きいからといって、管理者において職員団体の活動のためにする学校施設の使用を受忍し、許容しなければならない義務を負うものではないし、使用を許さないことが学校施設につき管理者が有する裁量権の逸脱又は濫用であると認められるような場合を除いては、その使用不許可が違法となるものでもない。」と述べ、これはプロレイバー学説である受忍義務説を明確に否定した国労札幌地本ビラ貼り事件・最高裁昭和54年10・30第三小法廷判決民集33巻6号647頁『労働判例』329号と同趣旨と思えるが、最高裁は原審の判断と同様、教員の自主研修を教育公務員特例法19条、20条(平成15年改正で21条・22条)の趣旨にかなうものと評価し、組合活動としての側面があることを否定しないが、教研集会それ自体には好意的であることが、不許可処分を違法とする結論をもたらしたとみるので、格別組合活動に甘いと評価する必要はない。この最高裁判決の直前の広島県高教組支部教研集会学校施設使用不許可事件 広島高判平18.1.25判時1937号 が教研集会不許可を適法としており、教研集会不許可が必ず違法となるというものではなくケースバイケースと考える。

(1)広島県能美町立小学校施設使用不許可事件広島地判昭50.11.25は、隣保館使用不許可処分に対する抗議集会を行うため部落解放同盟広島県連合会能美支部の小学校施設使用申請に対し能美町教育委員会の不許可処分は違法でないとした。

(2)鹿児島県立大島高校等6カ所の学校施設目的外使用不許可事件(鹿高教組主催ミュージカル公演不許可)事件 鹿児島地判昭58.10.21訴務月報30巻4号685頁、控訴審福岡高裁宮崎支部判昭60.3.29判タ574号
 鹿児島県高等学校教職員組合が主任制反対闘争に関連してミュージカル公演(カチューシャ劇団の「ああ野麦峠」)を企画し県立高校体育館の使用申請をしたところ、校長が学校教育に支障があるとの理由で使用不許可処分を一審、控訴審とも適法とした。。
 憲法21条が争点としているために、控訴審判決の要旨は以下のように学校施設がセミパブリックフォーラムの性格を有しているという理論構成をとる。
 学校施設は本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置されたもので、一般公衆の集合、表現活動の利用のために設置された公会堂、公民館等の公の施設と異なるが、本来使用目的のほかに、社会教育法、スポーツ振興法の趣旨、慣行上、副次的に集合活動の場とされてきたことに照らし、全く住民が学校施設の目的外使用につき、憲法21条に基づく権利がないいとはいいきれないとしながら、「本来の使用目的である学校教育上に支障がある場合にまで、その使用を要求する憲法上の権利を有しないというべきであり、また管理者は右施設の本来の使用目的である学校教育上の目的に支障が全く存在しないことが明らかな場合など特段の事情がない限り、集会、表現活動のゆえをもって右施設を使用させることを義務づけられるものではないというべきである。」とし、本件カチューシャ公演が主任制形骸化闘争としてなされた主任手当拠出運動の一環であり‥‥右闘争の教育宣伝を行い、もって主任制度の終局的廃止を目指したものであって、本件公演の会場として本件学校施設の使用を許可することは主任制度をめぐる前示深刻な紛争に一石を投じ、校長らと控訴人組合員のみならず、教職員間の対立、緊張を一層昂め、紛争が激化増大して学校運営に支障をきたし、ひいて児童生徒に対する学校教育上に支障を与える蓋然性が高かったと推認するのが相当であり‥‥ミュージカル公演は学校教育の目的上明らかに支障がないとはいえないので、不許可処分は憲法に違反しないと述べ、裁量権の濫用にもあたらにないとしている。

(3)広島県高教組「人事委員会報告説明会」県立高校体育館使用拒否事件 広島地判平14.3.28(判例集未登載・控訴なく確定-引用は調査官解説236頁、皆川治廣の評釈)
 広島県高教組が「人事委員会の報告」集会を県立高校で開催しようとして、同校体育館の使用を申し入れたところ、これを拒否されたという事案につき、当該集会では、組合員にストライキの実施の賛否を問う批准投票が実施されることになっており、集会の内容に一部、争議行為を禁止するる地方公務員法37条1項の規定に抵触するものが存在することが明らかであるとし,広島県の教育行政の適正さについて衆目の関心が集まる状況において、本来の学校設置目的とは何ら関係がなく、一部、法律の規定に矛盾抵触する内容を含む集会が、一部の職員団体によって、学校施設を使用して開催されるとなれば,各種報道によって事実を知った生徒、保護者、さらには広島県民等が、学校施設の適正な使用、ひいては広島県の教育行政の在り方について不信を抱くのは明らかといえ、本件県立高校の学校施設を使用して当該集会が開催されることによる支障は、施設管理上、学校教育上の支障に該当するとして、不許可行為は適法であるとしたが、不許可を文書で通知する義務に違反した点を違法とし、教育長の責任を認め10万円の賠償を命令した。
 なお、この判例は、呉市立学校教研集会の使用不許可が裁量権を逸脱したと判示した広島地判平14.3.28民集60巻2号443号と同じ裁判体が同日に判決を下したものである。

(4)広島県高教組定期総会学校施設使用不許可事件 広島地判平17.2.9(掲載-裁判所ウェブサイト) 広島県高教組の支部である原告がそれぞれの事務局のある高校の体育館で定期総会を開催するための使用許可申請の校長による不許可処分を適法とした。

判決(抜粋)
「 (ア) まず,本件各大会の目的及び使用態様について検討する。
 本件各大会は上記のとおり組合活動の一環として行われるものであり,前記(1)イ認定のとおり,本件各大会は原告らの組合員全員が参加資格を有し,新年度の運動方針などが報告・議決されるものであり,第50回定期大会(府中地区)には約250名もの組合員が参加する(証人E)のであるから,本件各大会では原告ら地区支部の意思が決定され公になるものと考えられ,例えば各種委員会や分会会議などと比べても大きな社会的影響を有する形態で開催されるということができる。
(イ) 続いて,代替施設の確保の困難性を検討する。
 前記(1)ウ(ア),エ(ア)に認定のとおり,原告旧府中地区支部においても原告三次地区支部においても,本件各申請を行う前に代替施設である府中市文化センター及び三次市まちづくりセンターを予約しており,本件各大会の1年前の第49回各大会はこれら施設において開催されていたことが認められる。そして,たとえ学校施設以外の施設を使用することによって事前準備や使用料,駐車場等の面で若干の不都合があるとしても(証人E,同F,同H),前記(1)ウ(イ),エ(イ)に認定のとおり本件各大会は特に混乱もなく開催されたのであるし,使用料を要したとしても,従前はたまたまこれが免除されていたに過ぎず,本来,施設を使用した原告らが料金を負担すべきことは論をまたない。原告らは他の施設使用の申込み等の事前準備のために年次有給休暇を取らなければならなくなったとして不満を述べるが,本件各大会は組合活動の一環であって,職務専念義務(地方公務員法35条)を負う教職員が組合活動を行うために年次有給休暇を取るべきことは当然である。これら事情からすれば,原告らにおいて代替施設を確保することが困難であったとはいえない。
(ウ) 従前の経緯を検討する。
 前記(1)イに認定のとおり,春の定期大会や批准集会は従前から高教組の各地区支部事務局が置かれている高等学校の体育館を使用して開催されてきたが,平成11年度の批准集会から一部を除いて高等学校の体育館を使用できなくなり,平成12年度の春の定期大会からは全く使用できなくなったことが認められる。しかしながら,これは平成10年の文部省是正指導以降,県教委が学校施設の使用関係について,それまでの事実上の慣例にとらわれることなく,学校設置目的との親和性,学校教育上の支障の
有無を一つ一つ審査して判断するという方針で臨んだ(前記(1)ウ(ア),エ(ア))からに他ならない。事実上の慣例を見直すという県教委の姿勢は文部省是正指導に従ったものと考えられるところ,確かに学校施設の使用関係の見直しは是正項目ではない(乙1)けれども,前記(1)アに認定の背景事情からすれば,文部省が是正指導を行うに至ったのは被告広島県における教育の適正化を図る必要があったと考えたからであると推測され,学校施設の使用関係の見直しもこの流れに則ったものと考えられる。そこで,文部省是正指導の内容をみると,そこでは教育内容や学校運営管理を法令等に従って実施するように求めており(乙1),特に明白な違法性を有するものは認められないから,文部省是正指導と同様の趣旨で学校施設の使用関係を見直すという県教委の施策にも相応の理由があると考えられる。原告らは文部省是正指導とそれ以降の県教委の施策に関して反対の立場を取るが,いずれが相当であるかは畢竟,民主政の過程ひいては県民の民意に委ねるべき事柄である。したがって,被告広島県においては文部省是正指導及びこれに伴う慣例の見直しによって,基礎となる事情が変更したというべきであって,原告らが学校施設を使用して春の定期大会を開催してきたという従前の経緯を過大に重視すべきではない。
(ア) 施設管理上・学校教育上の支障を検討する。
a 本件各大会が開催された平成14年4月20日は土曜日で,戸手高等学校でも三次青陵高等学校でも授業や特別な行事は行われておらず,本件各大会を開催しても部活動その他への影響はなかった(被告A,同C,弁論の全趣旨)し,従前は高等学校の体育館を使用して春の定期大会が開催されてきたとの経緯(前記(1)イ)からすれば,施設管理上の支障は特に認められないと考えられる。
b しかしながら,原告らの組合活動の一環である本件各大会を学校施設で開催することは,次に述べるように,学校教育上の支障を来すといわざるを得ない。第1に,前記(1)ウ(エ),エ(エ)に認定のとおり,本件各大会の内容は第49回各大会と大略同じであるところ,第49回定期大会(府中地区)において,「ストライキを基軸とした通年的な戦いを堅持して諸要求の実現を目指さなくてはなりません。」とストライキを視野に入れた組合活動が提言された上,ストライキの方針であったが最終的に不満を残しつつもストライキを回避するに至った経緯が詳細に報告され,第49回定期総会(三次地区)では,高教組がストライキを配置し,諸要求実現のために戦う方針であると組織決定され,ストライキ権が確立されたが最終的にはストライキが回避されるに至った経緯が詳細に報告された上で,「確定闘争は職場闘争の集大成です。だからこそ日常的な職場闘争をさらに強化していくことが,最大の課題だと思います。」と提言されている。そこで検討すると,地公法37条1項は地方公務員の争議行為を禁止しているのであって,ストライキ権の確立から回避に至る経緯を報告し,争議行為を視野に入れた活動方針を示すだけでは,直ちに地公法37条1項に反するものではない。しかしながら,学校教育上の支障の有無は,本件各大会の内容が現に法令に違反しているか否かだけで判断されるのではなく,法令違反がないとしても,生徒,保護者等が公教育に対して不信を抱く危険性があれば,学校教育上の支障を認めることのできる事情として考慮するのが相当である。現実にストライキの実施が予定されているものではなくても,ストライキ権が確立されたことの報告や,ストライキを視野に入れた活動方針の提言は,ストライキの実施という意図や法令違反の可能性を示すものであるし,「ストライキを基軸とした通
年的な戦いを堅持」などの内容からすれば,生徒,父兄等が公教育に対して不信を抱くことは想像に難くなく,本件のストライキに関する内容は,学校教育上の支障を肯定する事情として考慮するのが相当である。
 第2に,前記(1)ウ(エ),エ(エ)に認定のとおり,第49回定期大会(府中地区)において,主任制とは対等・平等であるべき教職員集団の間に分裂を持ち込もうとする制度であって,その実働化により職場に差別と分断が持ち込まれるとして反対の立場を明確にし,そのために学校組織の確立に向けた闘争を行うべきと提言され,第49回定期総会(三次地区)では,主任制とは教職員の管理・統制ひいては教育の国家統制に向けた攻撃であるとして反対の立場を示し,その実働化阻止闘争の経過と共に学校組織の見直しが提言された。そこで検討すると,学校教育法施行規則65条1項,22条の3第1項は高等学校に教務主任及び学年主任を置く旨を定めているから,主任制に反対し,学校組織の見直しと確立を提言している第49回各大会の内容には,学校教育法施行規則65条1項,22条の3第1項に抵触するものが含まれていたと認められる。
 第3に,前記(1)ウ(エ),エ(エ)に認定のとおり,第49回定期大会(府中地区)において,卒業式等での国旗掲揚・国家斉唱は権力者の意図を貫徹させ,権力者に従わせるための上意下達システムを構築しようとするものであるなどとして,国旗掲揚等を強制すべきではないとの立場を明確にし,強制阻止に向けた活動を展開すべきであると提言され,第49回定期総会(三次地区)では,国旗掲揚・国家斉唱の半ば暴力的な強制に対して的確な対抗措置や阻止行動を講じなければならないと提言された。そこで検討すると,学校教育法43条,106条により高等学校の学科及び教科に関する事項は監督庁たる文部省が定めるとされているところ,同法施行規則57条の2に基づく高等学校学習指導要領(平成元年3月15日号外文部省告示第26号)第3章の第3の3は,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と定めているから,第49回各大会の内容には,同学習指導要領に反する内容が含まれていたことは否定できない。なお,原告らは学習指導要領の法的拘束力を否定する旨を主張するが,学習指導要領は,全体としてみた場合,高等学校における教育課程に関し,教育の機会均等の確保及び全国的な一定水準の維持の目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な遵守基準を設定したものとして,法的拘束力を有するものとして有効と解されるのみならず,学校教育上の支障の有無を判断するに当たっては,法令違反の有
無のみを考慮するものではないのは上記のとおりである。文部省告示である学習指導要領に反している以上,生徒,県民等が公教育への不信を抱くことは否定できず,日の丸・君が代に関する内容は学校教育上の支障を肯定する事情として考慮すべきである。
 第4に,前記(1)ウ(エ),エ(エ)に認定のとおり,第49回定期大会(府中地区)において,次回の参議院選挙で新社会党から立候補する予定の者を組織推薦し支援することが決定されたこと,第49回定期総会(三次地区)においも同様に決定されたことが報告された。そこで検討すると,教育基本法8条2項において学校での党派的政治教育が禁止されていることなどから明らかなように,公教育においては政治的中立性が求められている。それにもかかわらず第49回各大会では特定政党の候補者を推薦する旨が報告されたのであって,教職員団体である原告らが特定政党に対する支持の報告を学校施設で行うことによって,政治的中立性を揺るがす事態を招く可能性があったことは否定できない。なお,原告らは,特定政党の支持について教職員組合としての原告らの政治活動であり,公職選挙法136条の2に反しないと主張する。しかしながら,法令違反がないとしても学校教育上の支障を判断するための事情となり得るのは上記のとおりである。いかに組合活動としての政治活動であったとしても,組合員は教職員であって,その教職員団体が特定政党の支持の決定をことさらに学校施設において報告することは,公教育の中立性を著しく害する結果となることは明らかである。したがって,特定政党支持に関する内容は学校教育上の支障を肯定する事情として考慮すべきである。
 このように,本件各大会は,主任制については学校教育法施行規則に現に違反する内容を打ち出し,日の丸・君が代問題については高等学校学習指導要領に反し,ストライキ実施・政党支持については公教育に対する不信を招く危険性を内包していることが認められる。本来中立である
べき公教育の実践の場である県立学校において,上記のとおり現に学校教育法施行規則に違反する内容等を含む本件各大会を学校施設で開催することは,原告らの主義主張に反対する生徒や父兄,県民はもちろん,そうでない者に対しても,公教育への不信を惹起させる危険性があることは否定できない。そして,前記(1)アに認定のとおり,被告広島県の教育を巡って様々な議論が紛糾し,全国的にも注目を集めてきたとの経緯をも併せ鑑みれば,県民や国民の間に公教育への不信を引き起こす危険性は,もはや抽象的なものではなく具体的なものとして認められるのであって,これらからすれば,本件各大会を開催することにより学校教育上の支障を来すと認めるのが相当である。
(オ) そこで,前記(ア)ないし(エ)に認定判示した各種事情を総合すると,組合活動を目的とする本件各大会は,原告ら地区支部の意思が決定されるもので大きな社会的影響を有すること,代替施設を確保するのに困難はなかったこと,従前は使用が認められていたという経緯があるけれども,被告広島県においては,相応の理由によって施設使用関係についての事実上の慣例を見直す施策が取られて基礎となる事情が変更したのであり,従前の経緯を重視することはできないこと,本件各大会のために学校施設を使用しても施設管理上の支障は認められないけれども,生徒,父兄,県民の公教育への不信を引き起こす具体的な危険性の存在という学校教育上の支障が認められることからすれば,本件各不許可処分の判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等によりその判断が事実の基礎を欠き又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合には該当しないので,被告A及び被告Cが裁量権を逸脱濫用したものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって,本件各不許可処分はいずれも適法である。
(3) 原告らの主張について
ア 原告らは,本件各不許可処分が憲法21条1項に違反する旨を主張するので検討する。憲法21条1項は集会の自由を保障するところ,集会に使用されることが前記(2)アに判示のとおり,本来的に教育目的のために設置されている学校施設の目的外使用の許否については管理権者に一般の行政財産と比
較してもより広範な裁量が認められており,憲法が集会の自由を保障した趣旨はかかる裁量の範囲内,あるいは少なくとも学校教育上の支障がない範囲内において考慮すべきであって,前記(2)イに認定判示のとおり管理権者等に裁量権の逸脱濫用も学校教育上の支障の不存在も認められない以上,本件各不許可処分によって集会の自由の趣旨が否定されたと認めることはできず,原告らの上記主張は採用できない。
イ 原告らは,本件各不許可処分は高教組の活動を抑えようとする不当労働行為意思の下になされた違法なものであると主張する。しかしながら,前項(2)に判示したように,本件各不許可処分は学校教育上の支障が認められることを理由として管理権者等の裁量権の範囲内で適法に行われたものであるから,
不当労働行為には該当しないといわなければならない。それだけでなく,本件各不許可処分は原告らの事務局が置かれている高等学校における学校施設での集会の開催を制約するものに過ぎず,原告らが公務員の労働基本権や日の丸・君が代などの様々な問題について議論を深め,原告らの立場から提言することを否定するものではないし,他施設の使用により原告らに多少の不便があったとしても,前記(2)イ(イ)に認定判示のとおり原告らにおいて代替施設を確保することが困難であったとすることはできない。また,前記(1)ウ(ア),エ(ア)に認定のとおり,県教委は各県立学校の分会に対して,分会専用電話やファクシミリの設置場所としてその学校の校舎の一部を使用することを許可し,地区支部に対しては地区支部事務所としてその地区支部が置かれている学校の校舎の一部を使用することを許可している。加えて,学校長は高教組主催のスポーツ大会等のためにグラウンド等の使用を許可している(乙10,11,被告A,同C)ところでもある。したがって,本件各不許可処分が不当労働行為意思をもってなされた不当労働行為に当たるとする原告らの主張は採用できない。
ウ 原告らは,本件各処分は便宜供与の一方的廃止であって不当労働行為に当たると主張する。前記(1)イに認定のとおり,従前から春の定期大会や批准集会は各地区支部の事務局が設置されている高等学校の体育館を使用して開催されてきたことは認められる。しかしながら,学校施設などの行政財産は,住民全体の利益のために使用されるものであって,特定の個人や団体の利益のために使用されるべきものではない。前記(2)アに判示のとおり,本来,行政財産は行政上の用途又は目的のために最も適正に使用されるべきものであるから,特定の個人や団体に当然に行政財産の使用請求権を認めることはできないのである。このことは,地方自治法238条の4第4項等の規定からも明らかである。とすれば,従前から施設の使用を認めてきたという経緯があったとしても,その施設の本来の目的を阻害する態様での使用であったのであればこれを是正すべきは当然であるから,公務員労働者は従前の施設使用の実績を基に施設の使用継続を求めることはできないというべきである。なお,使用不許可処分によって公務員労働者の労働基本権を不当に害することはできないこともまた当然ではあるけれども,本件においては,前記(2)イ(ア),(イ),(エ),(オ)に認定判示のとおり,本件各大会の目的は学校施設の設置目的とはかけ離れていること,代替施設の確保が困難であったという事情は認められず,本件各大会を開催すること自体は否定されていないこと,本件各大会を学校施設で開催すると学校教育上の支障を来すと認められることなどからすれば,原告らの労働基本権が違法に制約されたとみることはできない。
したがって,原告らの上記主張は採用できない。」

(5)広島県高教組支部教研集会学校施設使用不許可事件 広島高判平18.1.25判時1937号

 広島県高教組東地区支部など四支部は。平成14年8.9月に開催予定の支部教研集会の会場として、県立高校6校の施設の使用許可を申請したが、校長が集会の内容が学習指導要領に反しているなどとして不許可処分にしたことに対し、組合側が裁量権の逸脱、違法があるとして損害賠償を請求したものであるが、一審(広島地判平17.1.20)は、裁量権の逸脱、濫用があるとして約260万円の損害賠償を認めたが、控訴審は一審判決を取消、損害賠償請求を棄却した。
 判決要旨
 学校施設においては、その設置目的に沿って使用することが原則とされ、目的外に使用する場合の管理権者の裁量は、学校施設がその性質上、広く一般に開放、利用されることを予定した施設ではないことから、行政財産一般と比較してより広範にわたるというのが相当であり、管理権者の広範な裁量の下で、その許可処分によって初めて例外的に使用が認められるにすぎないと解すべきである。
 教研集会においては高教組の当年度の運動方針を受けて、一定の指導方針と研究方針を提示し、学習指導要領や学校教育法施行規則、県教委の施策に対峙する討議を行うといった労働運動的側面を強く有しているといわざるを得ず、その目的は教育研究活動にとどまめものとは到底いえないから、学校施設を教研集会の開催のために使用することは、その設置目的に沿うとはいえない。
 学校長において、教研集会の開催のために使用させることは学校教育法上の支障があると判断したことが明白に合理性を欠くものと認められず、本件不許可処分に裁量権の逸脱、濫用の違法があるとうことができない。

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