入手資料整理156
10751★★渋谷区行政財産目的外使用許可取消請求等事件 東京地判平25・6・11判例地方自治383号22頁
本件は渋谷区がイスタンブール市ウスキュダル区と友好都市協定を締結していることや、トルコ大使館からの要請もあり、渋谷区教育在日トルコ人子弟の教育事業に関し、国際交流学級の運営を目的とする学校法人(ホライズン学園)、国際交流学級設立準備会、NPO法人に対し、順次、地方自治法238条の4第7項、渋谷区教育財産管理規則9条7項に基づいて、渋谷区立神宮前小学校の一部について行政財産使用許可をするとともに、地方自治法225条、228条1項、行政財産使用料条例5条3号に基づいて、本件施設の使用料を免除するなどした。
渋谷区の住民が、渋谷区監査委員対する住民監査請求を経て、渋谷区を被告として本件委員会のした本件各使用許可及び本件各免除が違法であると主張して、これら各処分の取り消しを求めるとともに、渋谷区長を被告としてとしてこれら各処分当時の区長、本件委員会の委員らに対して渋谷区が被った使用料相当額等の損害について支払請求をするようにとの住民訴訟を提起したものである。
判決は一部却下、一部棄却。教育委員会が行う学校施設の使用許可が、当該教育財産の財産的価値に着目しその価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の行為としての財産管理行為に当たるものでない場合、住民訴訟として右使用許可の取消しを求める訴えは不適法であるとした。
また教育財産の使用許可に係わる使用料を免除するとの教育委員会の判断は、右使用許可の裁量判断の際に考慮される諸事情並びに免除による当該地方公共団体の財政運営への影響、相手方の資力状態、弁済能力を考慮して、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとしたうえで、本件各使用許可の目的には、本件都市協定を締結していて友好関係にあるトルコ人子弟を中心とした児童に初等教育を授けるとともに,本件小学校の国際理解教育や被告区の国際交流を推進するという点で一定程度の公共性.公益性を肯定でき、本件小学校の児童の学校教育上の支障も特に認められず、本件小学校の国際理解教育の推進にもつながり、一定程度の成果も上げられていて.本件小学校や被告区にとっても有益であって.教育財産管理規則9条7号に該当するとした本件各使用許可の判断過程や内容に重要な事実の基礎を欠いているとか.著しく不合理な点は特に認められない。そして.これを前提に、ホライゾン学園等の財務状況からして、使用料を負担させれば、財務構造や信用状態の悪化を招き、国際交流学級の事業にも影響が出かねないことを考慮すれば.使用料を免除することにつき、「特に必要があると認めるとき」(行政財産使用料条例5条3号)に該当するとした本件各免除の判断には、その内容が重要な事実の基礎を欠いているとか、著しく不合理であって社会通念に照らし著しく妥当性を欠くというべき点は特に認められない。として原告の主張を退けた。
10752杉並区立和田中学校夜スペシャル事件最一小決平26・4・17 TKC
データベース 棄却・不受理
10753大阪市アンケート事件大阪地判平27・3・30 TKCデータベース
10754★★大阪市組合事務所使用申請不許可事件大阪地判平26・9・10 Lexis
AS ONE
本件は、平成24年大阪市が庁舎内の職員労働組合の事務所使用を認めず労組を退去させるなどした問題で、8労組が橋下徹市長らによる不許可処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟
この判決では、呉市立二河中学校教研集会使用不許可事件最三小平18・2・7民集60巻4号401頁の判断枠組を明示的に引用(最高裁が学校施設の目的外使用に許可に関して、学校施設の法的性質に鑑み、学校教育上支障がなくとも不許可にする管理者の裁量を認める一方、本件事実関係に過大考慮・過小考慮定式を当てはめることにより、裁量の逸脱濫用を導いたものである)し、本件についても過大考慮・過小考慮定式を当てはめ重視すべきでない考慮要素(行政事務スペースとしての使用の必要性)を重視するなど,考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており,他方,当然考慮すべき事項(職員の団結権等に与える影響)を十分考慮しておらず,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといえるから,市長の裁量権を逸脱・濫用するものであり,その余の点を判断するまでもなく違法と判断され、不許可処分を取り消し、損害賠償の支払いを命じた。。
もともと、学校施設の目的外使用についての最高裁初めての判断だった呉市立二河中学校事件判決が、本件のような市庁舎の目的外使用について判断枠組みとして適用されることが妥当かどうかは疑問があるが、同判決の影響力の大きさを示したものといえる。
平成24年7月27日に可決された「大阪市労使関係に関する条例」12条は、大阪市が労働組合等に対する便宜供与を一切禁止する趣旨のものであるが、裁判所は「従前労使関係において特段問題が生じていなかった労働組合等が,本件条例12条により,従前受けていた便宜供与を廃止されることに何らの合理的根拠も認め難いことは明らかである。この点,被告は,不祥事事案に関係する便宜供与等に限って禁止した場合,禁止の対象外の便宜供与が不健全な労使関係の新たな温床となりかねないと主張するが,上記弊害を防止するためには,不健全な労使関係になったと認められた時点で便宜供与を廃止するとしても十分足りるのであって便宜供与の一律禁止を正当化する根拠になるとはいい難い。
したがって,本件条例12条は,少なくとも同条例が適用されなければ違法とされる被告の行為を適法化するために適用される限りにおいて,明らかに職員の団結権等を違法に侵害するものとして憲法2 8条又は労組法7条に違反して無効というべき」と述べ同条例を組合事務所使用不許可を適法化する根拠として認めない考えを示している。
ただこの言い回しは、例えば、労務指揮権侵害、業務阻害、秩序を乱す行為、目に余る政治活動とか不健全な労使関係と認められる時点で12条を根拠に便宜供与を廃止する余地を残す判断であり、必ずしも組合活動に好意的な判断をとっているわけではないとの心証も持った。
大阪市における労使関係改革は、関淳一市長時代の平成16年にカラ残業手当やヤミ専従、福利厚生での職員厚遇などマスメディアで大きく取り上げられたことから、市政改革に乗り出しており、大きな成果としては、平成17年(2005)9月に「ながら条例」改正による勤務時間内組合活動を規制する条例が改正されたこと。同時期に「庁舎使用にかかる組合支部に対する便宜供与の考え方」が発せられ「必要最小限のスペースに限ること」とされたことが挙げられている。また同年12月に「市政改革マニフェスト」が提出され、マネジメント改革、コンプライアンス改革、ガバナンス改革があり、ガバナンス改革のなかに健全な労使関係の構築が挙げられており、時間内組合活動の適正化、交渉協議事項の整理、便宜供与の見直しなどが推進され、平松邦夫市長時代の平成20年(2008)3月28日に市議会でチェック・オフ廃止条例が可決しており、関・平松時代にすでに改革は進んでいたのである。
橋本市長になってからの「大阪市労使関係に関する条例」はその総仕上げとしての意義を認めるが、それなりに改革が進んでいる状況で市長が問題視する政治活動とは直接関連のなさそうな組合事務所の追い出しはやや強引というか「エモーショナルな感じ」との心証を与えているのではないか。このため本判決の理由はともかく結論はやむをえないかもしれない。
(判決要所)
「(1)判断枠組み
ア 地方公共団体の庁舎は,地方自治法2 3 8条4項にいう行政財産であり,当該地方公共団体の公用に供することを目的とするものである。したがって,これを目的外に使用するためには同法2 3 8条の4第7項に基づく許可が必要であり,目的外使用を許可するか否かは,原則として,施設管理者の裁量に委ねられているものと解するのが相当である。すなわち,当該地方公共団体の庁舎の用途又は目的を妨げる場合には使用を許可することができないことは明らかであるが,そのような場合ではないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく,行政財産である庁舎の目的及び用途と目的外使用の目的,態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。そして,施設管理者の裁量判断は,許可申請に係る使用の曰時若しくは期間,場所,目的及び態様,使用者の範囲,使用の必要性の彳雖,許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度,代替施設確保の困難性等許可をしないことによる
申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり,その裁量権の行使が逸脱・濫用に当たるか否かの司法審査においては,その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱・濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である(最高裁平成4年2月7曰第三小法廷判決民集60卷2号401頁参照)。
イ この点,当該地方公共団体に任用される職員をもって組織される労働組合等は,その勤務条件の維持改善を図ることを目的とするものであって,当該地方公共団体の庁舎内をその活動の主要な場,とせざるを得ないのが実情であり,その活動の拠点として組合事務所を庁舎内に設置する必要性の大きいことは否定することができない。しかし,労働組合等にとって使用の必要性が大きいからといって,施設管理者において労働組合等の活動のためにする庁舎の使用を受忍し,許容しなければならない義務を負うものではないし,使用を許さないことが庁舎につき施設管理者が有する裁量権の逸脱・濫用であると認められるような場合を除いては,その使用不許可が違法となるものでもない。また,従前'組合事務所として利用するための1年間の使用許可申請を繰り返し許可してきたとしても,そのことから直ちに,従前と異なる取扱いをすることが裁量権の逸脱・濫用となるものではない。
ウ もっとも,先に述べたとおり,労働組合等が組合活動につき庁舎を利用する必要性が大きいことは否定できず,施設管理者においても,労働組合等に対しその活動の拠点として組合事務所を庁舎内に設置することを継続的に許可してきた場合には,それまでは,組合事務所として利用させることが,当該地方公共団体の庁舎の用途又は目的を妨げるものではなく,相当なものであったことが推認される上,それを以後不許可とすることによって,労働組合等の庁舎内での組合活動につき著しい支障が生じることは明らかである。
したがって,そのように従前と異なる取扱いをした不許可処分の違法性を判断するにあたっては,施設管理者側の庁舎使用の必要性がどの程度増大したか(そもそも組合事務所として使用をしていた労働組合等に退去を求めざるを得ない程度に庁舎を公用に供する必要性が生じた場合には,前述したとおり,当該地方公共団体の庁舎の用途又は目的を妨げる場合に該当するとして使用を許可することができない。),職員の団結権等に及ぼす支障の有無・程度,施設管理者側の団結権等を侵害する意図の有無等を総合考慮して,施設管理者が有する裁量権の逸脱・濫用の有無を判断すべきである。
(中略)
‥事情をすべて考慮すれば,‥‥重視すべきでない考慮要素(行政事務スペースとしての使用の必要性や組合事務所として庁舎の使用を許可することによる弊害のおそれ)を重視するなど,考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており,他方,当然考慮すべき事項(労働組合等の団結権等に与える影響)を十分考慮しておらず,その結果,社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものといえ,市長の裁量権を逸脱・濫用したもので,その余の点を判断するまでもなく違法というべきである。
(中略)
本件条例12条は,被告が労働組合等に対する便宜供与を行うことを一律に禁止
し,施設管理者の裁量を一切認めない趣旨であると解される。
(イ)ところで,労組法7条3号は,使用者が,労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えることを,労働組合の自主性を侵害する不当労働行為として禁止するのを原則とし,例外的に最小限の広さの事務所の供与等を許容しているものの,使用者が組合事務所として使用するための施設の利用を労働組合等に許諾するかどうかは,原則として,使用者の自由な判断に委ねられており,使用者がその利用を受忍しなければならない義務を負うものではないか6,権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては,使用者が利用を許諾しないからといって,直ちに団結権を侵害し,不当労働行為を構成するということはできない。したがって‥‥本件条例12条が労組法7条3号が許容している便宜供与を一律に禁止しているからといって,直ちに労組法に違反するとはいえない。
しかしながら,地方公共団体は,労組法が適用される職員との関係では,労組法により,同法7条が定める不当労働行為を行うことが禁止されるし,労組法が適用されない職員との関係においても,職員が結成した職員団体は憲法2 8条が定める団結権等が保障され,それを違法に侵害してはならないのであるから,本件条例12条が労組法7条に違反したり,憲法28条に違反すると評価される場合には,これが無効となることはいうまでもない。
(ウ)そして‥‥市長の労働組合等への便宜供与の禁止の指示は,‥‥深刻な支障が生じ,ひいては職員の団結権等が侵害されることを認識し,これを侵害する意図をも有していたとみざるを得ないものであり,本件条例も,上記の指示の制度化として,対象となる労働組合等との間の労使関係が適正かつ健全なものであるか否か,対象となる便宜供与が従前から継続して与えられていたものか否かを問わず,一律に便宜供与を禁止する内容とする本件条例12条を含む案が提出され,そのまま市会で可決されて制定に至ったというもので,従前労使関係において特段問題が生じていなかった労働組合等が,本件条例12条により,従前受けていた便宜供与を廃止されることに何らの合理的根拠も認め難いことは明らかである。
この点,被告は,不祥事事案に関係する便宜供与等に限って禁止した場合,禁止の対象外の便宜供与が不健全な労使関係の新たな温床となりかねないと主張するが,上記弊害を防止するためには,不健全な労使関係になったと認められた時点で便宜供与を廃止するとしても十分足りるのであって,便宜供与の一律禁止を正当化する根拠になるとはいい難い。 したがって,本件条例12条は,少なくとも同条例が適用されなければ違法とされる被告の行為を適法化するために適用される限りにおいて,明らかに職員の団結権等を違法に侵害するものとして憲法2 8条又は労組法7条に違反して無効というべきであり,上記各不許可処分の違法性を判断するに当たっては,独立した適法化事由とはならないというべきである。」
10755 ★東京高判平26・3・26 TKCデータベース
夫婦同氏合憲適法判決
10756★武田芳樹「氏名の変更を強制されない権利と民法750条」『法学セミナー』714号2014・7
10757★東京地判平25・5・29 判時2196号67頁
夫婦同氏合憲適法判決
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