公務員に労働基本権付与絶対反対-政府は巨悪と手を結ぶな

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2015年5月の12件の記事

2015/05/31

入手資料整理162

入手資料整理162
(テーマ 超勤拒否闘争)
10803 三越事件 東京地判昭26.12.28労民2巻6号654頁
 紛争を労働委員会において調停中、組合の中央闘争委員会が、休日変更等に関する協議約款を無視して、各支部組合に対し中元時における休日変更等に関し会社と協議することを一切拒否すべき旨を指令し、各支部が協議を拒否したことは、「会社及び組合は労働委員会の斡旋、調停又は仲裁中は争議行為を行わない」旨の協約規定及び「互いに信義と誠実を以て紛争の平和的解決に最善の努力を払うものとする」旨の協約規定な違反するかが争われ、都労委昭27.12.7命令は、協定成立前には会社の運営すべき業務なるものはその限りではないまだ゜存在せず、正常な業務を阻害するということもあり得ないから、協定拒否を争議行為ということはできないとしたが、地裁判決は、協約の平和条項にいう争議行為とは解し得ない。我妻光俊『註解労働基準法』青林書院新社 1960年参照。
10804三井造船玉野製造所岡山地労委命令昭26.4.27 『労働法律旬報』77号(1951)
  「時間外労働協定の保留ないし拒否について見るに一般の労働者が、所定の平常労働時間を超えて、いわゆる時間外労働をするとしないとは、労働者自らの意思で決せられるものであって、何ら外的の強制を受くべきものではない。会社は申立人のなした拒否ないし保留行為に対し造船業と残業の特殊関係、特に造船工程中、残業が計画中に織込まれている点、永年の慣行であった点、従来累次の協定締結の際何らの紛議を生じなかった点等を挙げ右行為はこれ等の現実を無視し、信義則に反するものとして不当なる争議行為と主張しているが、右行為は当初においては格別争議行為の手段としての意図より出発せざるををえざるものと認められるからその間、客観的に見れば信義則を逸脱せし嫌いがないわけではなかった。しかしながら右行為のなされたのは争議中のことであり、諸般の事情より勘案して明らかに争議手段の一環として採用されたものとみることができるので、たとえ申立人らが争議行為として会社にに通告する場合早期にこれを行わず、ために会社が対策等樹立の上に支障を来するところ、被申立人主張するが如く当該会社が特に労調法上公益事業として指定されたことが認められない限りこれを違法不当なる争議手段とすることは当たらない。」
10805宝製鋼所事件 東京地判昭25.10.10労民1巻5号766頁
 本件は作業上圧延材に加熱する必要のための早出深夜作業が、組合との協定に基づかず単に会社の慣行で行われているにすぎない場合において、操炉工7名が割増賃金3割を不満としてその要求貫徹のため深夜早出作業を拒否した。会社は配置転換を行ったが拒否したため業務命令に違背しているとして解雇した事案で、地裁は件は正当な組合活動であるとして解雇を違法とした。
10806森茂樹「地方公営企業の争議行為と憲法28条-最一小判1988.12.8」法学セミナー412号1989年
10807最高裁新判例紹介「地方公営企業労働法11条1項と憲法28条」『法律時報』61巻9号1989年
10808中島茂樹「地方公営企業労働関係法11条1項の争議行為禁止の合憲性」『法学教室』113号1990年
10809渡辺章「争議行為-超勤拒否・休日出勤拒否-福岡高裁昭和55年10月22日判決」『公務員判例百選』1986年
10810判例ダイジェスト 「現業職員の争議権-北九州市交通局事件昭52.11.18判決」『季刊労働法』107号1978年
(テーマ外)
10811★大阪市チェックオフ廃止条例事件大阪地判平23.8.24労判1036号30頁

2015/05/26

公職選挙法改正選挙権18歳引下げに反対

 公職選挙法改正選挙権18歳引下げが27日審議入り6月2日採決、与野党合意はすでにできているので、衆院で可決されるとのことだが、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150526-00000058-mai-pol私は反対である。

 

要点は、第一にもともと民主党の政権公約であったものを、自民党が国民投票法を成立させるための取引したことがこの政策のはじまりである。たんなる政党間の都合にすぎない。政党の政治的打算だけでできたものである。

 

第二に国民が要望しているわけでもない、とくに若者が欲しているわけでもない。もともと欧米では成人年齢が21歳以上だったが、60代末期ベトナム反戦や、世界中で激しくなった学生運動では、兵役義務があるの選挙権がないのは不当という主張がなされ、学生運動を懐柔するために、選挙権を18歳に引き下げる方向となった。

 世界の多くが18歳に引き下げられた直接の要因は兵役義務に対応したものである。

 ところが我が国には兵役義務はなく、徴兵登録制度もない。兵役の反対給付として選挙権を若者に与える理由がそもそもない。

 

第三に民主主義の拡大に疑問をもつ。一般庶民・労働者でも選挙権を与えたから、非合法だった労働組合を法認したり、争議の不法行為免責をするようなことになった。選挙権の拡大が大衆迎合政治になったり、特定階層のためのクラス立法を行うようになった原因なら決してそれは善とはみなせない。

 

第四に若者に選挙権を与える以上、徴兵登録制度や兵役義務に道を開くことになる。軍国主義になだれこむ危険性ありとみる。

 

以下昨年4月に書いたものを再掲する 

 

●自民党に送った意見(制限600字)

私は国民投票法に絡んで選挙権の18歳引き下げ、特に成人年齢の引き下げに反対なので簡単に意見を上申する。

 米国はコモンローの成年は21歳であるが、ベトナム戦争の際、学生運動が盛んになり、18歳以上21歳未満の者は徴兵されるのに選挙権がないのは不当だとの主張がなされ、1971年に選挙権を18歳に引下げた。 ドイツも兵役義務が18歳からなのに選挙権が21歳なのは不公平だとの主張により1970年に18歳に選挙権が引下げられた。激しい学生運動を懐柔させる政策だったのである。(国会図書館調査及立法考査局「主要国の各種法定年齢」『調査資料』 2008-3-b

 しかし徴兵制のない我が国で選挙権を18歳に引下げる理由は見当たらない。

 とくに成人年齢は国民の7割が引下げに反対であり、若者が求めているわけでもない。明治9年の太政官布告で満20歳に定められ、私法においては、満20歳の成年制度で長い間安定しており、これを引き下げることは混乱を生じるだけだ。

 もっとも今回の三党合意は成人年齢にふれていない。しかし選挙権の次は成人年齢に俎上に載せられるだろう。米国では45州が18歳、コロラド、ミネソタ、ミシシッピが21歳、アラバマ、ネブラスカが19歳である。私はコロラド、ミネソタ州のように選挙年齢と成人年齢が違っていてもいいと思うが、国民の7割が反対しても成人年齢も引下げというのは納得できない。

●首相官邸に送った意見(制限2000)

自公民三党は国民投票改正法案について合意がなされた。報道によれば投票年齢については「改正法施行後4年」に18歳以上に引き下げるとする与党案を改正案に採用する。ただ、公職選挙法の選挙権年齢について「改正法施行後2年をめど」に18歳以上に引き下げるべきだとする民主党に配慮し、政党間のプロジェクトチームを設置し、2年以内に投票年齢と選挙権年齢を同時に引き下げる法整備を目指すとされている。

そもそも、この法案は第一次安倍政権の時代に、当時の自民党中川政調会長が、法案を通すために民主党の政権公約である選挙権18歳引き下げの主張に妥協したことからはじまっているが私は法案を通すための政党間の取引で選挙権も成人年齢も引き下げることに反対なので意見を上申する。

 主要国についていえばアメリカ合衆国はコモンローの成年は21歳だが、ベトナム戦争の際、反戦運動や学生運動が盛んになり、18歳以上21歳未満の者は徴兵されるのに選挙権がないのは不当だとの主張がさかんになされ、1971年に投票権を18歳に引き下げた(憲法修正26)

 ドイツも同じ事で、学生運動が激しくなり兵役義務が18歳からなのに選挙権が21歳なのは不公平だとの主張により1970年に18歳に選挙権が引き下げられた。政治不信を主張する激しい学生運動を緩和させるための政策だったのである。(国会図書館調査及び立法考査局「主要国の各種法定年齢」『調査資料』 2008-3-b 2008-12月参照)

 要するに60年代末期の学生運動を背景に、徴兵制(兵役義務)とのからみで、選挙権も引下げられたということである。それはあくまで、一時の社会現象にすぎないのであって徴兵制のない我が国で18歳に引き下げる理由は見当たらない。若者が選挙権を求めているわけでもない。

 これはたぶん民主党の政策立案グループに団塊世代の学生運動経験者がいて、昔の夢よもう一度という自己満足のための政策としか思えない。だから筋が悪いと思うのである。

 私は、国民投票法に反対する護憲派ではない。しかし選挙権とか、成人年齢という重要な事柄は、別の法律を通すための政治的取引の材料にすべきではないという主張である。

 とくに成人年齢引下げには国民の7割が反対している。明治9年の太政官布告で満20歳に定められてから、約140年間続いてきたもので国民に完全に定着しているのである。     私は日本大学法学部民事法・商事法研究会「『民法の成年年齢引下げについての中間報告書」に対する意見」『日本法学』75巻の結論に賛成である。「国民投票法の制定に伴い、成年年齢の引下げが議論されているが、私法においては、満二〇歳の成年制度で長い間安定しており、これを引き下げることは混乱を生じるだけではないかと思われる。‥‥立法趣旨についてきちんとした議論が全くなされてない状況において改正論議だけが先行することは、法改正のあり方として、あまりにも拙速である。」

 もっとも今回の自公民三党合意は成人年齢にふれていない。しかし三党合意で選挙権が2年以内に引き下げられると決定されれば、次は成人年齢に俎上に載せられるだろう。

実際、外国の例では成人年齢と選挙権は一致していることが多いからである。アメリカ合衆国では45州が18歳、コロラド、ミネソタ、ミシシッピが、コモンローと同じく21歳、アラバマ、ネブラスカが19歳である。

 私はコロラド、ミネソタ州のように選挙年齢と成人年齢が違っていてもいいと思うが、選挙権が引き下げられれば、国民の7割が反対しても成人年齢もということになりかねないので危惧しているのである。

 

 

 

 

 

 

2015/05/24

女性活躍法案に強く反対

 衆院で審議入りしたので昨年書いたものを再掲する

性活躍法案に強く反対 (自民党あて600字以内)

1.自由企業体制の危機
 公務員の管理職比率3割にも反対だが、民間企業における新採や管理職比率の数値目標の義務づけや、政府が女性登用実績のある企業を認定し公共工事、公共調達の受注機会で優遇する政策は、自由企業体制の深刻な危機と考える。
 採用や昇進という雇用判断、経営方針は本来、経営者の裁量権にあるものであり、行政の干渉はできる限り排除されるべきという、自由企業体制は断固守られるべきである。
特に公共調達等の受注機会の優遇は筋の悪い政策だ。米国では政府機関等の契約におけるマイノリティーが経営する若しくはマイノリティー雇用に積極的な企業に対して優先するアファーマティブアクションがあることを知っているが、ミシガン州がマイノリティーへの優先的取扱いの禁止を内容とする州憲法改正をしたように、共和党系から批判が根強い。
女性と少数民族と同列に扱う発想はおかしい。厚労省が認定した企業に特権を与えるのは市場経済を歪める。

2.安倍首相のこだわりは異常で非現実的

『週刊朝日』9月5日号「徹底調査120社」によれば、管理職比率で3割以上なのはツクイ38.2%、ユニリーバ・ジャパン35.0%、P&G34.0%の三社だけ。
特定の業種に限られているし、P&Gは長期雇用を前提とした教育訓練を重視する企業として有名である。他社が簡単に模倣できるものではない。

女性活躍法案に強く反対する意見(首相官邸あて、みんなの党あて)

1.自由企業体制の危機と認識する
 地方公務員の管理職比率3割にも反対だが、とりわけ民間企業における新規採用や管理職比率の数値目標の義務づけや、政府が女性登用実績のある企業を認定し公共工事、公共調達の受注機会の優遇政策といったアファーマティブ・アクションは、自由企業体制の深刻な危機と考える。
 私は女性が男性と同じ土俵で働いて、能力を発揮し昇進することでよいと思う。採用や昇進という雇用判断、とりわけ業務遂行能力の判断、経営方針は本来、経営者の裁量権にあるものであり、行政の干渉はできる限り排除されるべきであるという、自由企業体制は断固守られるべきである。
 とくに公共工事、公共調達の受注機会の優遇は筋の悪い政策といえる。米国にはアフリカ系アメリカ人(黒人)の経済的地位向上、過去の差別に対する補償という観点から、政府機関等の契約におけるマイノリティーが経営する若しくはマイノリティー雇用に積極的な企業に対して優先するアファーマティブアクションがあることを知っているが、ミシガン州がマイノリティーへの優先的取扱いの禁止を内容とするミシガン州憲法改正をしたように、共和党系の市民から批判が強い。
 女性と少数民族と同列に扱う発想はおかしい。女性は奴隷であったわけではなく、過去の差別の補償などありえない。人種差別が社会を引き裂く深刻な問題だった米国社会とは全く事情が異なるのであって、女性を黒人の経済的地位向上政策に類比して扱う必要は全くない。
 厚生労働省がフェミニズムを背景として女性登用の相違で良い企業、悪い企業を認定し、公共調達で優先処遇をしたりするのは市場経済を歪めるものとして自由企業体制の危機と認識するものである。
 韓国では女性登用の報告を義務づけ、17%まで女性登用が進んでいるというだが、ナショナリスト安倍首相は日本が韓国より遅れて6.6%にすぎないことに我慢ならないのかもしれない。しかし韓国をまねる必要があるのか。我が国は近代資本主義の大原則である雇用判断に政府は干渉せず自由主義経済を守るということでよいのではないか。ゲタをはかせて無理矢理昇進させても、業務遂行能力が伴わなければ輝くことはできない。ひがみ、敵意をもたらすだけである。
 大義は女性優遇ではなく自由企業体制防衛にあり、ゆえに女性活躍法案に断固反対である。

2.安倍首相の女性管理職3割のこだわりは異常である。(すべての企業がP&G並に人材育成することは絶対無理だし、すべての企業がP&Gを見倣う必要もない)
『週刊朝日』9月5日号「徹底調査120社「女性に優しい企業」ランキング」という記事によれば、管理職比率で3割以上なのは「ツクイ」(介護サービス)38.2%「ユニリーバ・ジャパン」(日用品)35.0%「P&G」(日用品)34.0%の三社だけ、役員比率三割以上は「P&G」57.1%と「ジョンソン・エンド・ジョンソン」(医薬・日用品)だけである。
特定の業種に限られているし、安倍の目標とする3割というのはダイバーシティーという社員構成をポリシーとする「P&G」並みということを意味するのだ。
 米P&Gはシンシナティチを本拠とする組合不在企業で、時価総額16兆円の世界トップ10に入る超優良企業、世界最大の一般消費財メーカーである。フォーチュン誌の従業員能力№1、長期雇用を前提とした教育訓練を重視する企業として有名である。米本社のヴァイスプレジデント和田浩子氏の『P&G式世界がほしがる人材の育て方』ダイヤモンド社2008年によれば、マネージャーの評価は、ビジネスの実績と部下のトレーニングが半々とのことである。いくら担当の売上げが伸びても部下が育てられないと評価は5割になるという。採用の男女比はき50対50だが、採用は「育つ人材しか採らない」と断言している。面接にトータル7~8時間もかけ初めから資質のある人にしぼって採っているのである。一般論として女性は出世競争意欲が男性より乏しいとされるが、昇進意欲をかき立てるノウハウも持って 教育訓練、人材育成にこれだけ重視する企業はなく、これは特有の企業文化で、他社が簡単に模倣できるものではないし、安倍首相の2020年企業の指導的地位での女性3割という目標は、すべての企業がP&G並を意味するが初めから現実的なものではない。ヒューマンリソースマネージメントのやり方は業種によってそれぞれであり、雇用判断は各社のポリシーに委ねられるべきだろう。

3.最後に

 今回の政策も女性の長期雇用、継続雇用を強化するもので、負の効果として全体としての女性の新規採用、とくに一旦子育てで離職して再就職したい女性の雇用を減らすと思われる。公務員や大企業では次世代育成支援など充実し長期雇用の女性は厚遇されており、さらに昇進での優先処遇は行きすぎと思える

入手資料整理161

(テーマ ながら条例 職務専念義務免除)

10798高槻市職免期間給与支給損害賠償請求住民訴訟事件 大阪地判平22・10・16判例地方自治344号

 本件は高槻市の職員らが、勤務時間中に職員団体や労働組合のための活動を行い、また部落解放同盟等の集会に参加するにあたり有給の職務専念義務の免除を受けた事に対し、住民が、当該支給は違法として高槻市長に対し、不当利得返還義務として給与相当額及び利息の支払い請求を求めたものであるが、裁判所は、職免自体は地方公務員法30条、35条の趣旨に反したとはいえず違法とはいえないとしたものの、「…職員が、勤務時間中に職務を離れて行う職員団体のための活動(地方公務員55条8項の適法な交渉を除く)又は労働組合のための活動(労働組合法7条3号ただし書の適法な協講又は交渉を除く)について、勤務しないことの承認をすることができるものとすることは、給与の根本取則について定める地方公務員法24条1項の趣旨に反し、高槻市長に与えられた裁量権の範囲を超え、これを濫用したものとして違法になるといわざるを得ない。」「部落解放同盟等の集会に参加するために行われたた本件職務免除は、‥‥地方公務員法30条、35条に反しており、本件承認は同法24条1項の趣旨に反して、‥‥違法になるというべきである。」としたうえで、高槻市長は「財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反したというべきはである」人事課長の地位にあった者にに対し、地方自治法243条の2第1項の賠償責任を負う」と判示した。

10799池田俊雄「判例解説 職務専念義務免除期間の給与等支給に係る損害賠償等請求住民訴訟事件 : 高槻市[大阪地裁平成21.10.6判決] 『判例地方自治』(352) 2012

10800佐々木泉顕・小山裕 「はんれい最前線 「ながら条例」に「ノーワーク・ノーペイ」の風当たり : 組合活動等を理由とする職務専念義務の免除は、法に定められた場合以外は違法 : 裁判所[大阪地裁平成22.10.16判決]」判例地方自治348号2011年

10801怠る事実の違法確認等請求事件 大阪地判平25・4・24 裁判所ウェブサイト     公営企業である市自動車運送事業において、労働組合に所属する職員が、他の職員に勤務を行わせてその勤務時間中に労働組合活動を行っていた時間に対応する給与を受領したこと及び管理者が職員に対し勤務時間中に労働組合活動を行うために職務専念義務の免除をしてその時問に対応する給与等を支払い、職員らがこれを受領したことについて、不当利得又は不法行為が成立し、その返還請求又は損害賠償請求したことが違法であるとして、地方自治法242条の2第1項3号又は4号に基づく請求が一部認容された事例。

10802高槻市水道事業職員有給職免損害賠償請求事件 大阪高裁平22.5.27 裁判所ウェブサイト

入手資料整理160

(テーマ順法闘争)

10788沼田稲次郎「遵法斗争と権利濫用-三井造船事件に関連して-」『労働法律旬報』77号(1951)
 三井造船事件とは昭和24年5月17日全造船玉野分会が団交を重ねていたが、妥結に至らず、9月21日から時間外労働協定の締結保留、11月19日から労働安全遵法斗争を開始、29日から部分ストを開始、12月19日一部組合員が業務命令に協力したためストは崩壊し、21日に
斗争態勢を解くにいたったという争議行為に対し会社側は組合指導者と積極分子を解雇した。

 時間外労働協定の締結保留について会社側の主張は従来慣行となっていたことを無視し信義則に反している点において不当であり労働基準法36条の権利の濫用であるというもの。組合側は労基法が慣行に優位するというのは法理的に明らかであり、突如保留を申し入れたからといって、抜打争議が禁ぜられているわけではないというもの。
 岡山地労委の裁定(昭26.4.27命令)は「明らかに争議手段として採用されたもの」で「違法不当なる争議手段とするには当たらない」というものであった。沼田はプロレイバーであるから、何時でも労組は時間外労働を拒否でき、権利濫用などというトンデモナイ議論の生ずる余地はないとしているが、岡山地労委は、時間外労働協定締結保留を争議行為の手段として是認したのであるけれども、問題は公労法や地公労法適用企業の時間外労働締結拒否も争議行為と認識されるがそれでも適法かということである。

10789有泉亨「争議権の構成について--違法性阻却論のために」『法学協会雑誌』 67(6) 1949

10790石川吉右衛門「サボタージュ」『法学協会雑誌』 67(6) 1949

1-49日本労働法学会編『新労働法講座4』労働争議 有斐閣1967

有泉亨 「ストライキ」

 日本の労働法制はイギリスとは対照的。イギリスの法思想の下では「労使関係の法的根拠をがんこに労働契約に求める」従ってストライキとは労働契約の終了であるのだが、山口俊夫「集団的労働紛争と労働関係」立教法学6号・8号からの引用だが、フランスでも1950年までそうだったし、西ドイツの連邦基本法ではストライキ権の保障はない。1954年の判例では解約予告をせずにストライキをすることは労働契約の違反であるとしている。ところが我が国では憲法で労働三権を保障しているほか、労組法7条2項は団体交渉が続いている限り個々の労働者と話あいができないと解されていることから、世界的にみても集団的労働関係にかなり手厚い保護をおこなっているとみるべきだろう。そこが私としては疑問点なのである。

 プロレイバーだが基本的な事柄として下記の見解は普通のものだと思う。

「ストライキに付随して組合が採用するあれこれの戦術、たとえばピケットのやり方、また個々の労働者の行動が、労使関係の領域において「正当」とされる範囲を超える場合を別にすれば-つまり労働組合の正当な争議行為であるストライキでカバーされる限りは-個々の組合員はそれへの参加によって使用者-個々の組合員はそれへの参加によって責任を問われることはない」

 法令によってストライキが禁止されているのは、「労調法36条・37条・38条、いわゆるスト規制法2条・3条、公労法17条、国家公務員法‥‥などに違反してストライキが行われた場合‥‥その禁止が誰に対してなされているかが一つの基準である。‥‥公労法は「職員及び組合」に向かって禁止している。‥‥労調法36条は名宛人が明らかにされていない。「安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為」は一般に違法であるが、「争議行為としても」違法性は阻却されないという趣旨むである。個々の労働者も直接同条の規制したにおかれていて単純なウォークアウトでもこれに該当すると解すべきであろう。」

恒藤武二 「サボタージュ」

 労働法もやっているがフランス政治思想史の著書も多い人。我が国では一般的ではないが、争議行為とは同盟罷業、怠業、業務管理の三種類に大別して概念を整理すべきとし、「怠業とは、団結した労働者が、使用者に対抗するため、その労働契約の履行を部分的はに拒否すること=労働契約の不完全履行」「怠業とは能率低下(スローダウン)による典型的な怠業のみでなく、定時出勤、順法闘争、上部遮断スト、納金スト、などのようなやや変則的な争議行為を包括し、さらに残業拒否、時限ストのような労働契約に基づくその日その日の労働義務の一部分を履行しない形でなされる争議行為を包括し」と述べ、残業拒否も時限ストも怠業の範疇としてとらえているから、公務員がやっている時限ストライキは、典型的なストライキではなく怠業というべきということになる。
 なお、地公法37条1項の怠業的行為は、行政活動妨害する目的でなされる個人的職務怠慢行為のことで、争議行為の範疇の怠業とは異なるとしている。なお怠業中の賃金の支払いに触れた判例として関西電力上部遮断事件京都地判30.12.17労民集6-2-218

佐藤昭夫「ピケッティング」

 スクラム等の防衛的実力行使は是認されるべきという左よりのプロレ-バー学説。最高裁判例では指導判例の羽幌炭礦事件をはじめとして非組合員の就労阻止を適法とした例はないが、下級審判例では新聞印刷事件大阪地裁昭33.7.30労民集9-3-383があるという。でもこれだけなら、根拠としては弱いだろう。

大脇雅子「順法闘争」
(ここでは特に引用せず)


1-50『争議をめぐる法律問題』東洋経済新聞社1955年

佐伯静治「争議行為の諸形態」  
「結局遵法闘争は社会的意義においては争議行為であるが、法律が遵法を禁止することはできないので、遵法闘争は禁止できない。‥‥争議行為は遵法闘争を含まないと考えざるをえない」プロレーバー学説

1-51大野雄一郎『争議行為法総論』

 安全運転は、その「提出される労務は、その限りにおいて労務の本旨に従うものであり‥‥争議行為は提供されない労務の分野において成立する」これに対して一斉休暇戦術、定時出勤戦術、超勤拒否戦術は時限ストの類型に属するものとしており、順法闘争を狭く解している。

1-52片岡・横井編『演習法律学体系〈17〉演習労働法』青林書院新社

10791片岡昇「遵法闘争」『労働法律旬報』359号1959年

 プロレーバー学説。「正常な運営を阻害する」を「『平常』とは区別して法規に従った業務の運営と解」し「違法状態のもとで業務の「正常」な運営というものは、存在せず、遵法闘争はたとい他の目的の手段として行われるとしても何ら使用者の「正常」ヶな業務をほ阻害するものではなく‥‥禁止される争議行為には当たらない」

10792清水明「総点検闘争の前進のために」

10793菊谷達弥「フランス法における争議行為の概念(上)」『熊本商大論集)21号1965年

110794 松本暉男・渡辺司郎「わが民法の「婚姻締結の方式」の史的考察(一)」『関西大学法学論集』21巻3号

10795青木周三「争議行為の概念について(三)」『関西大学論集』21巻5号1972年

10796林迪広「順法闘争について」『法政研究』25巻2-4号

 著者の見解は、順法闘争は労調法7条の争議行為にあたるとする。ところが公労法17条の争議行為禁止は国民生活に対する著しい侵害を及ぼす業務の正常な運営を阻止の行為に限定されるべきで、順法闘争は基本的に含まれないとするが、この見解は名古屋中郵判決で否定されていることから通用しない。争議行為と断定したのは正しいが、公労法の解釈はおかしいとみるべきである。


2015/05/17

「ブラック企業」社名公表は大反対だ  

一 不払い残業でなくても「ブラック」認定は異常だしやり過ぎ

 

 労使の取り決めなしに月100時間の残業がひとつの支社や営業所に10人以上か、社員の4分の1以上、1年間に3ヶ月以上あった場合に社名を公表すると、14日厚生労働省が発表し、18日から開始するという。公表は大企業に限定するとしているがNHKのネット報道(ブラック企業対策強化で企業名公表へ515 1838分)によれば全国チェーンの小売店や大手金融機関が是正勧告されるのではないかと示唆している。

 街頭でみかけた共産党のポスターには、同党参議院議員の追及で「ブラック企業」公表を安倍首相に約束させたと自慢げに書かれていたが、労組の点検闘争、順法闘争の延長線上にある政策のように思え、非常に不快である。

 

 今回の政策では、労使協定に取決めなしに長時間労働させている企業が対象なので、結局のところ、労働組合や労使委員会の集団的労働関係の規制力を強める効果をもたらすから、政策の利得者は労組と左翼政党になる。

月100時間以上時間外労働している勤労者は多数いるだろうが、労使協定で制限がなければ「ブラック」とされることはないからである。新自由主義の流れでは、集団的労働関係から個別契約主義に移行するのがトレンドのはずだが、それと逆行する政策ともいえる。

附に落ちないのは、不払い残業でなくても労使協定なしなら「ブラック」とされてしまうことである。むしろ100時間も残業代を出してくれるのはありがたいことで、近代市民法原則では違法であり(契約の相対効に反し契約の自由を侵害し不当に労働力無取引を制限するものとして)悪法以外のなにものでもない労基法を厳密に遵守していないということで「ブラック」認定されるのは全く不公正である。

 

問題は、労基法が強行法規であり、時間外労働させるのに過半数組合か、組合不在の場合は、労使委員会をつくって過半数代表といわゆる三六協定を締結しなければならないという制度にある。

三六協定のような強行法規は世界的に類例がない。三六協定は締結当事者でない非組合員などにも及ぶと解されていることから近代私法の原則である契約の相対効に著しく反し、むろん協定が強行法規であるということは、個別労働者の契約の自由に反するものである。英法では団体協約は取引制限の法理に反し普通法により違法である(英法では雇用契約はあくまでも一対一であって団体協約を個別協約に取り込んで運用しているだけ)。

三六協定は世界の常識に反している、準社会主義的な立法といえる。だからそれに反しているといっても「ブラック」とみなすべきではないと思うので私は強く反対だ。[i]

 

 そもそもジャパンアズナンバーワンといわれた80年代までは普通サービス残業年間300時間くらいはあたりまえだったとされている。政府は労使関係の問題として90年代まで積極介入はしていなかった。悪法が実効力をもつようになったのは比較的近年のことである。

 日経連の全ホワイトカラー裁量労働制の提案に危機感を抱いた、労組や左翼勢力の突き上げで、今世紀はじめから不払い残業の摘発を積極的に行うようになった。近[ii]年では不払い残業どころか、たんに労使協定なしの長時間労働でも「ブラック企業」と攻撃されるようになった。

 近代私法原則に反しても労基法は合憲だから、悪法も法なりということで役人は粛々と左翼勢力へのスケープゴートとして企業名をさらす仕事をすることになるのだろうが、恐るべき企業いじめだ。明らかにこの制度は自由企業体制を侵食することになるだろう。

 

 こんなことをやっていると、外資企業に嫌われる。中国や韓国に拠点を移したほうが益しとなるだろう。成長戦略からしてもマイナスの政策である。

 「労基法はオーバーホールし過労死は自己責任とすべき」とか言うと袋だたきに遭うので、あえて言わないが、アメリカ人ならそう言うと思う。米法は原則解雇自由だが、被用者が勝手に退社するのも自由なので、それで労使対等と観念される。無理をする前に退社するからアメリカ人に過労死はない。

もっともイギリスのよう予告義務の法理のある国では、退職するには職種別に慣習に沿った一定期間より前の退職通告が必要なので勝手にやめることはできないが、我が国にはそのような制度はない。従って原則的には自己責任としてもよいはずだが、労基法により時間外労働は個別交渉による制度ではないので個別責任に還元されないような仕組みになってしまっていることが悩ましい。

 

 

 

二 三六協定は世界の常識に反している(アメリカとの比較)

 

 

アメリカ合衆国と対比すればより明瞭である。

 

(一) アメリカの公正労働基準法は週40時間以上超過労働の割増賃金支払義務があるだけ

 

 合衆国の1938年公正労働基準法(FLSA)は、使用者に対し同法が適用される被用者に対し週40時間を超える労働に対して割増賃金支払義務を課すが、過半数代表との協定の必要はなく、たんに割増賃金支払義務があるだけだ。

 そもそもFLSAは、大恐慌により失業問題が深刻であった時代に立法されたため、その立法趣旨は追加的賃金を避けるメカニズムにより「雇用を拡大すること」や「ワークシェアリング」することであり、長時間労働の抑制ではないのである。[iii]

 

(二) アメリカの全国労使関係法は団体協約の締結を強要していない

 

 1935年全国労使関係法(NLRA)は、排他的交渉代表制度をとっているので、労働組合が承認され団体交渉権を得るには、適正な交渉単位で従業員の3割の署名によりNLRB(全国労働関係局)の監督下の選挙で、過半数の支持を得て認証を受けた組合だけであるが、企業は交渉代表となった組合と団体協約を締結する義務はない。強制調停制度はないのである。

 もし、日本の三六協定のような強行法規は、普通法(コモンロー)の取引制限に当たるだけでなく、アメリカでは憲法違反の疑いが濃いと考えられると思う。

 

 

 (三)アメリカの全国労使関係法は、従業員代表制を違法としているので、組合不在企業は団体協約にカバーされることのない個別契約となるし、大多数の企業は組合不在企業である

 

交渉代表選挙では組合が敗北するケースは多く、その場合企業に、組合を承認し団体交渉応諾する義務は全くないし、使用者によって設計された従業員代表制、労使合同委員会は会社組合とみなされ、たとえ多数の支持があるとしても真正の組合とはみなされず違法である。

合衆国の2014年の労働組合組織率は、11.1%だが、民間企業では6.6%にすぎない。http://www.bls.gov/news.release/union2.tn.htm従って民間企業の大多数の職場では団体協約でカバーされない個別契約といえるのである。

アメリカのエクセレントカンパニーの大多数が組合不在企業であり、団体協約も従業員代表制もない企業文化であるから、日本の三六協定は訝しく思われても仕方ない。従業員に対してフレンドリーで残業代を満額払っていても「ブラック」にされかねないのだ。

だいたい、今月の第二週のように、平日の三日間が祝日で、二日しか働かない週でも、一日八時間を超えて仕事させるには、過半数組合もしくは過半数代表と協定を締結し、なおかつ割増賃金を払わなければならないなどというのは、どの企業も異常だと思っているはず。

知識労働者なら週70時間労働くらいはふつうにありうると思うので、今回の政策も不快に思っているに違いない。こうゆう共産党に迎合する政策をやっていると外資を呼び込む安倍の成長戦略も絵にかいた餅になってしまうだろう。

 

 

(四)ベンチャー企業なら長時間労働は当然だ

 

企業の成長にハードワークは絶対必要だ。マッキントッシュ開発時にスティーブ・ジョブズのチームは「週80時間労働、大好き」と書かれたTシャツ着て3年間猛烈に働いたし、ウォズ二アックは数週間徹夜で働いたという伝説がある。フェイスブックのチームも週七日、三週間ぶっつづけに働いた。(桑原晃弥『ジェフ・ベソス ライバルを潰す仕事術』経済界201528)

長時間労働を「ブラック」とラベリングする左翼勢力のいいなりになっていると、イノベーションによる経済成長も無理だと国力を衰退させることになる。

 

(付論)近年注目された交渉代表選挙

 

1.ターゲット・バレーストリーム店

 

2011年6月17日にディスカウントストア大手の「ターゲット」(本社ミネアポリス、全米売上げ第5位の組合不在企業)の、ニューヨーク郊外ロングアイランドにあるバレーストリーム店における、国際食品商業労働組合(UFCW)の申請による組合代表選挙が実施されたが、85対135で組合が敗北したとスタートリビューンなどが伝えている。http://www.startribune.com/business/124120324.html http://la-consulting.com/wordpress/?p=7438 http://newyork.cbslocal.com/2011/06/18/valley-stream-target-store-workers-reject-unionization/ターゲットの従業員は組合のない環境で働くことを選択した。

UFCWはグローサリーストアから発展した食品スーパーの一部を組織化しているが、労働統計局によると、小売業界の組合組織率は20143.1%にすぎない。アメリカでは非食品小売で労働組合が組織化されることはまずないといわれている。シアーズやウォルマートが組合不在企業として著名だが、ホームデポ、コストコみなそうなのである。

ターゲットはファッション系の自社ブランドが強いのが特徴で、全米で1755店舗を展開する。スタートリビューン記事によるとターゲットにおいても過去1990年にデトロイト近くで、5年後コロラドで、さらにジョージアで1997年に、カリフォルニアで組合代表選挙が実施されたが、いずれも従業員が組合を拒否しており、組合がなくてあたりまえの業界で、1店舗でも組織化される影響は大きく、経営環境の悪化を招くので従業員の選択は賢明である。

 

2.VWチャタヌーガ工場

 

戦後まもなくのCIОのディキシー・オペレーションで敗北したことが知られているように、南部の組合組織化は難しいとされてきたが、UAW(全米自動車労組)は2011年ニから稼働しているテネシー州チャタヌーガのVW新工場で猛烈な組織化攻勢を仕掛け、2014年2月12~14日に交渉代表選挙に持ち込んだ。この工場は地元の熱心な誘致運動が実ったもので、同じ非組合工場でも、ケンタッキーやオハイオなどにあるトヨタやホンダの工場より人件費はかなり安いと報道されていた。

VWは本国のドイツでは組合とは別に従業員代表制度もあるので、比較的組合に好意的な姿勢をつけこまれたと思う。

反対712、賛成626で辛うじて組合承認は否決された。[iv]もしこれがUAW勝利だったらインパクトの大きいニュースになっていただろう。

というのは、UAWはビックスリーを組織化しているが、外国系の組立工場は合弁事業の工場を除いて組織化に成功していない。

例えばUAWはテネシー州の北米日産スマーナ工場で2001年に交渉代表権獲得のための組合代表選挙に持ち込んだが反対3,103、賛成1,486の大差で否決〈2001年1011日(木)『日経連タイムス』〉されているように南部の組立工場の組織化は失敗している。アラバマ州モンドゴメリーにある現代自動車工場で組織化の努力を数ヶ月試みたが労働者は組合にほとんど関心を示さなかったという。ホンダやトヨタの工場も組織化は及んでいない。

アメリカの産業別労働組合で何が問題かというと 制限的労働規則(restrictive work rules)という労働組合によるジョブコントロールである。工場内における職務を細分化し、個々の職務範囲を極めて狭い範囲に限定するものである。このため、単一の工場内における職種が数十種類に及び、組合は個々の職種ごとに賃金等を設定し、仕事の規制を行うので、職場組織は極めて硬直的となるのだ。日本系の企業が組織化されないのは、組合職場のように仕事は制限されないが、内部昇進制度があったり、やり甲斐のある職場と認識されているためだろう。

きわどかったが、組合をとらなかったVWのチャタヌーガ工場の社員は賢明な選択をしたといえる。

このようにアメリカでは、交渉代表選挙に持ち込まれても否決されるケースが多く、結果的にニューディール型の団体交渉による労使関係から、個別契約の労使関係に大勢ガ移行シテイル。ている。団体交渉による労使関係を基本として、それを促す、労働法システムとなっている我が国の体制はもはや現代的なものとはいえないのである。

 


[i]私は「ブラック企業」が悪なのではなく、労基法こそが巨悪という逆の考えだ。私的自治、取引自由、契約自由、意思自治、自己責任が神聖で、集団による取引制限、責任転嫁が悪という考えだから、当然反対だ。筋の悪い政策だと思う。

[ii]中基審が2000年11月に「労働時間短縮のための対策に対する建議」を行い、厚生労働省が「労働時間の短縮促進に関する臨時措置法」の改正を労政審に諮問し、森内閣の坂口力厚労相のもとで2001年2月に同法改正を閣議決定し、それまでは労使間の問題として政府が積極介入しなかったあり方をやめ、サービス残業は労働基準法違反で、悪質な企業は司法処分を辞さないという労働基準局長通達(基発339号)を発出。家電大手が集中的に狙われたのである。

 まずNECが基準監督署の指導で主任以下の調査を行い過去2年分の残業代を支払わされた。本社田町の100人以上について平均150時間約4500万とされている。日立製作所でも未払い残業代が支払われ、三菱電機で是正勧告、係長級に導入していた残業手当の定額支給も見直された。さらにシャープで是正勧告、沖電機でも是正指導がなされた(清山玲「サービス残業の実態と規制政策の転換」『茨城大学人文学部紀要. 社会科学論集』39 2003 ネット公開論文参照)。

[iii] FLSAの目的につき比較的詳しく述べた連邦最高裁判決は、「時間外労働そのものは禁止されないものの、追加的な賃金の支払を避けるために雇用を拡大することに向けて財務上の圧力が加えられ‥‥追加的な賃金支払を避けるという経済メカニズムが、提供可能な仕事を分配するのに有効な効果をもたらすことが期待される」と述べている OVERNIGHT MOTOR TRANSP. CO. v. MISSEL,316U.S.572(1942) http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.pl?court=us&vol=316&invol=572

 

ここでは、法定労働時間を超える時間外労働それ自体を禁止することは法の趣旨とは捉えられておらず、長時間労働による労働者の健康への負担にも言及はなく、立法目的はあくまでも大恐慌対策としての雇用拡大、失業対策のためであるから、今日のような平時に戻れば廃止されるのか筋であるともいえる。(労働政策研究・研修機構の労働政策研究報告書 No.36『諸外国のホワイトカラー労働者に係る労働時間法制に関する調査研究』第一章アメリカ27頁(平成 17 年)http://www.jil.go.jp/institute/reports/2005/036.html参照)

 

[iv]  山崎憲「VW社工場の組織化投票、UAWが痛恨の敗北―不当労働行為で、地元議員を提訴」海外労働情報国別労働トピック:20143月独立行政法人労働政策研究・研修機構

2015/05/10

下書 三六協定締結拒否の争議行為性について(1)

 一 はじめに

(本論に入る前に前書きがやたらと長いが技術的議論だけでなく大所高所から捉えることを重視しているためである)

 

私は近代私法、古典的自由主義(個人主義的自由主義)、自由企業体制を侵害する、階級立法、労働法制の多くに反対であり、1906年ロックナー対ニューヨーク判決(労働時間規制立法違憲)、1923年アドキンス対小児病院判決(最低賃金立法違憲)〔1937年に明示的に判例変更したが、今日では再評価されている〕は正しいと考えるから、強行法規である労働基準法は当然、悪法と評価し、オーバーホールすべきと考える(むろん三者構成原則の労働政策決定の枠組み自体、準コーポラティズム的体制というべきものであり、それを打破して、英米型に移行しない限り困難であることはいうまでもないが)。

なかでも三六協定に類する労働法制は世界的にも類例がなく、著しい契約自由の侵害であり、合理的理由のない取引制限と考えるから、初めに結論を述べる。

三六協定締結拒否は法的にも争議行為であるというのが結論である。少なくとも社会的・事実的に争議行為であることは大多数が是認していることであるから、それが争議行為を禁止している公営企業でなされることは好ましくない。それを許容するあり方は是正されなければならないが、本稿はその論理構築を課題として取り組むものである。

 

 

 

 

(一)民法の相対効、契約の自由に反する労基法36

 

 

 市民法的論理、契約自由、意思自治の観点から労働基準法の三六協定について根本的に疑問に思うのは「八時間労働制」という時代遅れで非合理なドグマに固執し、たとえ個別労働者が受け入れるとしても過半数組合等が三六協定を締結されない限り、使用者の労働者使用に関する指揮・支配権が及ばないと解され、時間外労働に関する雇用契約について個別労働者の自由意思が基本的に否認されていること、

また事業所協定は、協定締結集団である過半数組合や代表等に関係ない非組合員や過半数代表を選出していない従業員にも及びうると一般に解されていることから、自己自身の労働力処分について自ら合意したわけでもない第三者による協定により拘束されるあり方は、近代市民法の原則である「契約の相対効」に反し、契約の自由にも反するという点である。

 我が国の労働法は個人の権利よりも第一次大戦後に広がったドイツで有力になった団体優位の思想に基づいている点で、本質的に近代私法と矛盾する性質のものといえるが、フランスでは、1886年労働組合を合法化したが労働協約は「契約の相対効」(民法典1165条)により法的強行性が否定されていた、それが本来の近代市民法のあり方である。

要するに、団体協約は近代私法の重要な原則に反するのである。

1919年に市民法論理を覆して労働協約は法認されたが、戦争協力の見返りとして労働組合に譲歩せざるをえなかっただけだ。英国コモンローは今日でも労働協約は営業(取引)制限の法理に反し違法であり、それ自体法的拘束力はないとされている。それが近代自由企業体制の本来のあり方だろう。

 

 

 

二)世界的に類例がない強行法規

 

 我が国の三六協定のような強行法規は世界的に類例がない。特殊であり、グローバルスタンダードに明らかに反する。TPPの加盟国、加盟交渉国にはニュージーランドの国民党、オーストラリアの自由党といった新自由主義政策を推進する政府があることを考慮すれば、TPP加盟交渉を契機に労働基準法の罰則など過剰な労働者保護的法制は世界の常識とずれたものとして見直す必要があるのではないだろうか。

 世界の常識に反しているということについて、ここでは英米法圏の法制と対比してみていきたい。

 

合衆国の1938年公正労働基準法(FLSA)は、使用者に対し同法が適用される被用者に対し週40時間を超える労働に対して割増賃金支払義務を課すが、過半数代表との協定の必要はなく、たんに割増賃金支払義務があるだけだ。

 そもそもFLSAは、大恐慌により失業問題が深刻であった時代に立法されたため、その立法趣旨は追加的賃金を避けるメカニズムにより「雇用を拡大すること」や「ワークシェアリング」することであり、長時間労働の抑制ではないのである。[i]

また1935年全国労使関係法では、従業員の過半数の支持を受けない限り組合は承認されず交渉権はなく、会社が関与する従業員代表制度を認めていないので、交渉代表のない大多数の職場は、団体交渉のない個別契約なのである。団体との協定を強行法規とする考えはとってないので、三六協定のような制度はない。もし強行法規とすると憲法違反の疑いが強くもたれたと考える。[ii]

合衆国の2014年の労働組合組織率は、11.1%だが、民間企業では6.6%にすぎない。http://www.bls.gov/news.release/union2.tn.htm従って民間企業の大多数の職場では団体協約でカバーされない個別契約であり、我々が良く知るエクセレントカンパニーの多くは、組合不在企業で、団体との協定などないから、外資系の企業は三六協定について不可解に思っているのではないだろうか。

一方、EUについて1993年制定(2000年に改正)EU労働時間指令http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2005_5/eu_01.htmという労働時間規制が知られている。例外規定があり、イギリスとマルタで適用されている。

イギリスは、EUに加盟しながら、本来、加盟国の義務であるユーロの導入や労働時間指令についてオプトアウト(適用除外)の権利を獲得し、 欧州大陸諸国と一線を画してきた。EU労働時間指令について新自由主義政策をとるイギリス保守党メジャー政権が激しく抵抗したため、結果として例外規定として1週間の労働時間について、時間外労働を含め、労働時間平均週48時間以内の上限(算定期間は4カ月)の免除を受けるかどうかについて個々の労働者が選択するオプト・アウト制度を勝ち取ったのだ。

労働党ブレア政権は前政権が受容れなかった同指令を受容れ、週平均48時間を超えてはならないとする「1998年労働時間規則」を設けたが、同時に労働者により署名された書面による個別的オプト・アウトの合意により、法定労働時間規則の適用を免除する制度も設けたのである。

2004年の『海外労働情報』によると使用者側のあるアンケート調査では、759社中65%の企業が、自社の従業員にオプト・アウトに同意するよう求めているほか、CBI(イギリス産業連盟)の調査では、英国の労働者の33%が同意書にサインしており、EU労働時間指令の空洞化は明らかである。

EU15カ国において週48時間以上働いているフルタイム雇用者は5%以下であるが、イギリスは20%を超えている。http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2005_5/eu_01.htmというように他国とは勤勉さ、労働時間に大きな違いが出ている。

イギリスは1992年から2008年のリーマンショックまで16年間連続で景気拡大し経済は好調だった。日本が時短政策で失われた十年とも二十年ともいわれる経済低迷が続いたこととは対照的である。外国からの投資を呼び込んでいるのもオプト・アウト制度のおかげ。イギリスは近年でも5年連続プラス成長で経済は好調であり、リーマンショック以前の成長率に戻ったことが、201557日総選挙で保守党の勝因と報道されているが、欧州大陸諸国とは一線を画す労働政策が効果を現しているとみるべきである。

重要なことは、我が国のように労働時間規制を適用除外とするために、過半数組合との協議など必要なく、個別労働者との同意でオプト・アウトが可能だということである。なぜならば、イギリスではあくまで法的に雇用契約は一対一のものであって、労働協約は法外的に処理されている、1999年労働党がつくった労働組合承認(union registration)制度を別として、集団的労働関係を格別保護する法制が存在しないというメリットによるものといえるだろう。

また、私は新自由主義の先進立法としてオセアニア諸国に関心をもつものである。オセアニアは強制調停仲裁制度により労働条件規制をするユニークな制度があったが、時代遅れのものとして批判され改革がなされたのである。

ニュージーランド雇用契約法Employment Contracts Act は国民党政権により1991年より約10年施行され、(労働党への政権交代により2000年雇用関係法Employment Relations Act にとって代えられたが)仲裁制度を完全に廃棄して契約自由を理念とした新自由主義に基づく先進的な立法である。

同法では、個別的雇用契約については「集団的雇用契約があるときは、使用者と被用者は、集団的雇用契約の定める雇用条件に反しない範囲で個別的に雇用条件を交渉することができる」(19-2)(一)71頁とあり、集団的取引が優先されることとしている。しかしながら労働協約が個別契約を排除するのに対し、個別雇用契約を原則とする同法の先進的といえる。

同法は、団体交渉に関する規定も、それを支援する規定も、不当労働行為などの特別な救済も用意しない。集団的取引による労働契約をとるか否かは当事者の任意であるし、使用者に「団交応諾義務」を課すものは何もない。労働市場を規制する主要な要素であった「労働組合」、「団体交渉」および「労働協約」という集団的労働法の概念を排除し、契約自由を理念とする雇用契約を労使関係の基礎に据えた。「労働組合」は雇用契約のための交渉代理人にすぎず、「団体交渉」は交渉代理人と使用者の個別的交渉に改変されたのである。ニュージーランドでは時間外労働の割増賃金を定めた立法はなかったため、従前はアウォードや労働協約で定めていたが、1991年雇用契約法は契約自由なので、割増賃金やペナル賃率は廃止されるようになった[iii]

オーストラリアではニュージーランドの改革に刺激され、まずビクトリア州が1992年被用者関係法制定により仲裁制度廃止の口火を切り、1996年にハワード自由党・国民党の保守連合政権による職場関係法Workplace Relations Act を制定した。これにより90年以上続いた調停仲裁制度は原則的に廃棄され、労働条件の決定は企業別に行なわれる直接交渉と、使用者と労働者個人の個別雇用契約に委ねられることとなった。[iv]2005年職場関係改正法(Workplace Relations s Amendment Work Choices仕事選択法) Act)は、労働改革の総仕上げであるがオーストラリア労使協定Australian Workplace Agreements: AWAs)といわれるものは週38時間労働、公休日、4週間の有給休暇、12ヶ月の無給育児休暇、人員整理時の解雇手当とか一定の基準を定めている(その点で契約自由とはいえない)が、それらの基準をクリアすればそれ以外の労働条件は労働組合に干渉されることなく労働者個人が労働条件を契約交渉で決める制度である。超勤手当の割増し率、シフト勤務手当、休日勤務手当、休憩時間が個別交渉の対象となる。したがって、割増し賃金でない安い賃金でも長時間働くのは個人の契約の自由という考え方である。

仕事選択法という法令名からもわかるように、仕事の仕方について労働者個人と企業との直接交渉。それを通じた当事者の選択の自由に委ねられるべきであり、労働組合などの第三者の介入を許さないという点で個人主義的自由主義の復権と位置づけられる先進立法といえるが、まさに、我が国の三六協定のように過半数組合で時間外労働を規制する発想とは全く逆のベクトルの立法であるということがわかる。

同法は労働組合が猛反発し2007年の労働党政権によって廃止された。しかしオーストラリア経済好調の要因は、自由党を軸とする保守連合政権による労働改革の効果とみるべきである。

 

 

 


[i] FLSAの目的につき比較的詳しく述べた連邦最高裁判決は、「時間外労働そのものは禁止されないものの、追加的な賃金の支払を避けるために雇用を拡大することに向けて財務上の圧力が加えられ‥‥追加的な賃金支払を避けるという経済メカニズムが、提供可能な仕事を分配するのに有効な効果をもたらすことが期待される」と述べている OVERNIGHT MOTOR TRANSP. CO. v. MISSEL,316U.S.572(1942) http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.pl?court=us&vol=316&invol=572

ここでは、法定労働時間を超える時間外労働それ自体を禁止することは法の趣旨とは捉えられておらず、長時間労働による労働者の健康への負担にも言及はなく、立法目的はあくまでも大恐慌対策としての雇用拡大、失業対策のためであるから、今日のような平時に戻れば廃止されるのか筋であるともいえる。(労働政策研究・研修機構の労働政策研究報告書 No.36『諸外国のホワイトカラー労働者に係る労働時間法制に関する調査研究』第一章アメリカ27頁(平成 17 年)http://www.jil.go.jp/institute/reports/2005/036.html参照)

 

[ii]米国では我が国のような協定の締結を義務付けることは、憲法違反の疑義があるのである。

アメリカではニューディール期にいたるまでは、組合を承認するか否かは経営者の自由であったが、1935年全国労使関係法National Labor Relations Act(ワグナー法)制は、全国労働関係委員会の監督下で従業員の過半数の支持を得、交渉代表と認められた組合に排他的団体交渉権を承認した。しかし団体協約の締結を強要するものではない。また強制仲裁のような制度はない。団体協約の締結の強要はコモンロー取引制限の法理に抵触すると考えるが、締結を強要しない限りにおいて連邦政府は労使交渉に積極的に干渉するものではないし、契約の自由を積極的には侵害していないともいえる。かろうじて自由企業体制を侵害してないともいえるのである。

ワグナー法は違憲判断が下されると大方の人々の認識だったが、憲法革命直後の1937年全国労働関係委員会対ジョーンズ対ラフリン鉄鋼会社事件判決で「州際通商規制権に関して幅広い解釈を行い「州際通商」に密接で実質的な関係を持っている産業を規制することを認めて合憲判断が下され、さらに1941年合衆国対ダービー木材会社事件で1938年公正労働基準法も合憲判決が下された。

しかし、団体との協定の強行法規ならば違憲の疑いのあるものとしてすんなり合憲判断とされたかは疑問なのである。

 

 

[iii]林和彦「ニュージーランドにおける労働市場の規制緩和--一九九一年雇用契約法の研究(1) 」『日本法学』75(1) [2009.6]

林和彦「ニュージーランドにおける労働市場の規制緩和--一九九一年雇用契約法の研究(2・完) 」『日本法学』5(1) 75(2) [2009.9]

 

[iv] 長峰登記夫「規制緩和という名の規制強化-豪州「仕事選択法」の検討から」『大原社会問題研究雑誌』5842007

2015/05/09

入手資料整理159

(テーマ順法闘争)

1-47林迪広「怠業・順法闘争」『労働争議論 浅井淸信教授還暦記念』法律文化社(京都)1965年

    総論的に順法闘争=争議行為説 ただし三六協定締結拒否は原則として争議行為とするのは適切でないとする。

 

   順法闘争とは 「一般に順法闘争といわれるものには、労働基準法およびその関係法令、種々の安全保安法規の遵守というかたちでおこなわれているもの、有給休暇を集団的に一斉にとるというかたちでおこなわれているもの、定時出退の厳守、時間外労働協定の締結拒否の戦術、または業務上の指示を無視して作業動作を関係諸規定どおりに忠実におこなうかたちのものがある」

順法闘争の法的評価

「順法闘争は、社会的事実としては明らかに争議行為である‥‥問題は、法的意味における争議行為に該当するか否かである。」と述べるが結論はそのほとんどが、法的にも争議行為であるとする。

 労調法6・7条の概念、労働関係の当事者間での主張の不一致、主張の貫徹を目的として行う行為、業務の正常な運営を阻害する性質の三点から検討しているが、結論は労調法7条にいう争議行為に該当する。 「順法そのものを目的とする順法闘争はともかく、他の争議目的達成のための手段たる順法闘争においては、それを労使間に生じている紛争を全体的に直視して位置づけるならば、結局は「労働関係における意見の不一致」を原因として順法闘争が行われていることは明らかである。したがって‥‥法的意味での争議行為たる一定要件を満たす」 ‥‥ 業務の正常な運営の阻害については、「正常」の意味は「平常」とは区別して法規に従った業務の運営と解し、順法闘争によって法規どおりの作業を行ったとしてもなんら、「業務の正常な運営」阻害したとはいえないとする主張と、「正常」とは法規に従った業務とは解さず、法規に違反していても事実上行われている状態をさすものと解し、順法闘争も争議行為であるとする主張が対立しているが、結論的にいえば「労調法第七条にいう『正常』な業務の運営とは使用者の労働者使用に関する指揮・支配権能が他のものに阻害を受けずに事実上円滑に行為されている状態をさ状態をさすのであって、この場合においては、使用者の指揮・支配の内容が個別的契約関係の権利義務にてらして適法なりやいなやを価値的に判断することを前提とせず、ただ雇用関係を有する労働者に対する使用者の事実としての指揮権限が、労働組合の事実行為による阻害によらず貫徹されている状態をいう‥‥」  

   プロレイバー学説は、順法闘争を争議行為とみなさない立場で、順法闘争を支援する趣旨のものが多いと思うが、著者はそうではなく、論旨としてはまともなものだと思う。ただ三六協定についてはプロレイバー学説と同様である。  現実問題として、鉱山労働などを別として一日八時間労働でおさまってしまう事業所などほとんどない考えられ、三六協定が締結されていなければ、支障のある事業所がほとんどであるとすると、そもそも、過半数組合が締結しない限り、所定時間以外の労務の指揮、支配ができないこととなり、実質的に三六協定は運用次第で争議行為を内包するものといえるかもしれない。世界的に日本しか類例のないものであり、市民法的感覚では異常なありかたといえる。  

   そもそも厚生労働省が強行法規である労働基準法違反の摘発をしだしたのは、90年代の全ホワイトカラー裁量労働制案に危機感をいだいた労働組合勢力の突き上げによるもので2000年以降のことで、比較的最近のことである。それ以前は労使関係に積極的な干渉はしなかった。今日でこそ三六協定締結なしで時間外労働をしている企業を「ブラック」などと指弾されることがあるが、高度経済成長期から80年代までは、労基法の遵守というのは市民法的感覚(契約自由・意思自治・勤勉な労働倫理)から無視されて普通のことであり、当時であれば法規に反している経営体がほとんどだったといえるのではないか。市民法的な契約関係や慣行を重視する見解からは、そもそも契約自由・私的自治の侵害である労働者保護法の統制を遵守することには好意的になれないのであるが、著者のように順法闘争につき、それは社会的事実としても争議行為であり、法的にも労調法の争議行為にあたるとする見解はほぼ妥当なものといえると思う。

1-48西川美教『労働裁判官の眼』総合労働研究所1972年

2015/05/06

入手資料整理158

(テーマ順法闘争)

10785慶谷淑夫「順法闘争をめぐる法律問題」『法律のひろば』25巻12号1972年
 定時出退勤闘争・休暇闘争・国鉄の安全闘争(ATS闘争)・入出区規制を簡潔に説明しているほか、主要判例の勘所を説明している。つまりリーディングケースの日本化薬厚狭作業所事件はこの部分である「労使関係においては現実の慣行的事実が尊重されるべきで,いわゆる遵法闘争と称するのも、これにより期待される慣行的事実が尊重されるべきで、これにより期待される慣行的事実となっている業務の正常な運営が阻害される場合、これを争議行為となすを相当すべく」

10786三橋正『不当労働行為の諸問題』勁草書房1955年
 順法闘争=争議行為説
256頁「通常順法斗争と呼ばれる一連の斗争手段は、組合も争議戦術と呼び、社会通念的に又社会事実的に争議行為と考えられている通りに「業務の正常な運営を阻害し」「争議目的の貫徹のためになされ」る限り、労調法七条、従って公労法一七条の云う争議行為であると考えられる。」

10787我妻光俊『註解労働基準法』青林書院新社 1960年
391頁以下「遵法闘争が法律上も争議行為であるともるべきかどうかについては、‥‥遵法闘争の具体的態様に応じ各法規との関連において個別的にこの問題を決定すべし」という説
 中間説のように思えるが、争議行為説に近い。

 三六協定拒否については「協定拒否を行った労働組合または争議団の主たる意図が、その拒否を他の争議目的のためにする争議手段とするにあった場合には、労調法、公労法にいう「労働争議」の定義ないしその調整にに関連においてはこれを「争議行為」とみるべきであり、したがって協定拒否に対して争議目的になっている係争問題につき当事者は労委・公労委に調整を申請し、また労委・公労委は法律の規定に従い調整に乗り出すことができると解される(‥‥)。協定拒否の主たる意図が、これを他の争議目的のためにする手段とするにあった場合には、労調法の争議行為禁止との関連においても、協定拒否をこれら法条にいう争議行為と解すべきである(公益事業での争議手段としての協定拒否には労調法三七条の予告義務が課せられ、労調法三六条との関連においても同条にいう争議行為と解すべきである)。」とする、
 労調法三六条を絡めた議論をしているが、つまり安全保持施設の正常な維持運行につき時間外労働が不可欠であるのに協定を拒否することは、安全保持施設の正常な維持な維持運行を停廃、妨げるものとして、同条が禁止する争議行為に当たるということか。
 さらに「公労法、公務員法等の争議行為禁止との関連において、協定拒否がこれらの規定にいう「業務の正常な運営を阻害する行為」、「争議行為」または「政府(ないし地方地方公共団体の機関)の活動能率を低下させる行為」に該当するかどうかは、協定拒否がもっぱら他の争議行為目的のためにする争議行為のためにする争議手段として用いられた場合にかぎり、右規定にいう争議行為と解し、当事者の意図がかような点にあったと認められるかどうかは、拒否を右規定にいう争議行為と主張する側において立証する責を負うと解すべきだろう。副次的にも協定拒否が法律上非正常な時間外(休日)労働の状態化をあらためようとする意図に発するものであるかぎり、争議行為の禁止規定にら触れると解することは時間外労働の常態化を法律が保障する結果になるからである。」と述べているが、時間外労働が副次的な闘争課題として掲げられることは多いのであって、プロレイバー説に接近したように思える。

1-45長渕満男「三六協定と時間外労働拒否闘争」『労働組合法の理論課題 久保敬治還暦記念』世界思想社(京都)1980年
 プロレイバー学説
「順法闘争の争議行為性判断にあたっては、「業務の正常な運営」の阻害という点で一刀両断的に判定するのではなく‥‥時間外労働は八時間労働制という労働者にとって重要な労働条件から逸脱するものであり、かかる労務の提供のうえに遂行それる業務は、到底正常な業務ということはできないであろう。その結果、労働組合が自らの要求あるいは主張を実現するために、たとえその要求、主張が時間外労働もしくは労働時間に関するものではなく、それにもかかわらず時間外労働の拒否を実行したとしても、これを争議行為ということはできない‥」

1-46山本吉人「三六協定と残業拒否闘争」『団結活動の法理 野村平爾教授還暦記念』日本評論社1962年
 プロレイバー学説
「三六協定なしに命ぜられた残業を拒否する場合‥‥この場合、使用者の業務命令自体・違法・無効でありなんらの拘束力もない。‥‥集団的に命令を拒否しても争議行為というよりは正当な権利の行使というべきである。‥‥三六協定の締結自体を拒否する場合‥‥これについては従来残業が常態的・慣行的であった場合に、協定締結を拒否することは、業務の正常な運営を阻害するもので争議行為に該当する、または他の目的(たとえば賃上げ)貫徹の手段として拒否する場合には争議行為であると解する説も有力である。しかし、この場合も残業義務の有無にある。三六協定が存在しないところ残業手当の生ずるはずはなく、また使用者側に残業を命令する法的根拠もない。協定を締結するかす否かは労働者側の自由であり、いわば「適法な自由なに取引の範囲内にある行為」と考えるべきである」

2015/05/04

入手資料整理157

(テーマ 怠業・遵法闘争)
10758  日本化薬厚狭作業所争議事件 山口地判昭30・10・13労民集6巻6号916頁
10759  日本化薬厚狭作業所争議事件 山口高判昭34.5.30労民集10巻3号531頁
10760 島田信義「遵法闘争・怠業・ピケッティング・山猫争議・指名ストなどの諸問題」『季刊労働法』68号1956年
10761宮島尚史「怠業-日本化薬厚狭作業所争議事件-」『労働判例百選』1962年
10762青木宗也「怠業-日本化薬厚狭作業所争議事件-」 『新版労働判例百選』1967年
10763近藤正三「怠業-日本化薬厚狭作業所争議事件-」『労働判例百選』4版1981
10764菊池高志「怠業-日本化薬厚狭作業所争議事件-」『労働判例百選』5版10989年』
10765佐藤昭夫「安全闘争・順法闘争の問題点」『季刊労働法』95号1975
10766香川孝三「順法闘争の法理論」『季刊労働法』95号1975
10767奈良観光バス懲戒解雇事件 奈良地判昭34・3・26労民集10巻2号142頁
10768深瀬義郎「一斉休暇を理由とする懲戒解雇の効力-奈良観光バス事件-」『季刊労働法33号 1959年
10769吾妻光俊「休暇戦術-奈良観光バス懲戒解雇事件-」『労働判例百選』1962年
10770深山喜一郎「休暇戦術-奈良観光バス事件-」『労働判例百選』4版1981年
10771東洋酸素川崎工場事件 東京高判昭46・3・24判タ264号3941頁
10772門田信男「法定外休日労働の振替と就労義務 東洋鋼鈑事件最高裁第二小法廷昭和53・11・20判決」『季刊労働法』111号1979年
10773★動労四国地本事件 高松高判昭45・1・22労民集21巻1号37頁裁判所ウェブサイト
10774機労順法闘争事件 福岡高決昭42・1・25判タ207号179頁
10775★五稜郭駅事件 函館地判昭51・3・22判時818号92頁裁判所ウェブサイト
10776吾妻光俊「動力車労組四国地本事件 高松地裁昭和41年5月31日判決」『昭和41年重要判例解説』
10777宮本安美「順法闘争-動労四国地本事件-」『労働判例百選』3版1974年
10778清正寛「順法闘争-動労四国地本事件-」
10779阿久澤亀夫「公休拒否闘争と山猫争議みおよびこれに対する懲戒解雇-西日本鉄道事件福岡地裁昭和36・5・19判
10780東京都水道局時間外労働拒否事件 東京地判昭40・12・27労民集16巻6号1212頁判時434号9頁
10781東京都水道局時間外労働拒否事件 東京高判昭43・4・26労民集19巻2号623頁判タ222号202頁
10782渡辺章「三六協定の締結拒否-東京都水道局事件」『労働判例百選』3版1974年
10783野田進「残業拒否闘争-東京都水道局事件」『労働判例百選』5版1989年10784国労熊本地本順法闘争事件 熊本地判昭48・10・4判時719号21頁

入手資料整理156

10751★★渋谷区行政財産目的外使用許可取消請求等事件 東京地判平25・6・11判例地方自治383号22頁

 

 本件は渋谷区がイスタンブール市ウスキュダル区と友好都市協定を締結していることや、トルコ大使館からの要請もあり、渋谷区教育在日トルコ人子弟の教育事業に関し、国際交流学級の運営を目的とする学校法人(ホライズン学園)、国際交流学級設立準備会、NPO法人に対し、順次、地方自治法238条の4第7項、渋谷区教育財産管理規則9条7項に基づいて、渋谷区立神宮前小学校の一部について行政財産使用許可をするとともに、地方自治法225条、2281項、行政財産使用料条例53号に基づいて、本件施設の使用料を免除するなどした。

 渋谷区の住民が、渋谷区監査委員対する住民監査請求を経て、渋谷区を被告として本件委員会のした本件各使用許可及び本件各免除が違法であると主張して、これら各処分の取り消しを求めるとともに、渋谷区長を被告としてとしてこれら各処分当時の区長、本件委員会の委員らに対して渋谷区が被った使用料相当額等の損害について支払請求をするようにとの住民訴訟を提起したものである。

 判決は一部却下、一部棄却。教育委員会が行う学校施設の使用許可が、当該教育財産の財産的価値に着目しその価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の行為としての財産管理行為に当たるものでない場合、住民訴訟として右使用許可の取消しを求める訴えは不適法であるとした。

 また教育財産の使用許可に係わる使用料を免除するとの教育委員会の判断は、右使用許可の裁量判断の際に考慮される諸事情並びに免除による当該地方公共団体の財政運営への影響、相手方の資力状態、弁済能力を考慮して、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとしたうえで、本件各使用許可の目的には、本件都市協定を締結していて友好関係にあるトルコ人子弟を中心とした児童に初等教育を授けるとともに,本件小学校の国際理解教育や被告区の国際交流を推進するという点で一定程度の公共性.公益性を肯定でき、本件小学校の児童の学校教育上の支障も特に認められず、本件小学校の国際理解教育の推進にもつながり、一定程度の成果も上げられていて.本件小学校や被告区にとっても有益であって.教育財産管理規則97号に該当するとした本件各使用許可の判断過程や内容に重要な事実の基礎を欠いているとか.著しく不合理な点は特に認められない。そして.これを前提に、ホライゾン学園等の財務状況からして、使用料を負担させれば、財務構造や信用状態の悪化を招き、国際交流学級の事業にも影響が出かねないことを考慮すれば.使用料を免除することにつき、「特に必要があると認めるとき」(行政財産使用料条例53号)に該当するとした本件各免除の判断には、その内容が重要な事実の基礎を欠いているとか、著しく不合理であって社会通念に照らし著しく妥当性を欠くというべき点は特に認められない。として原告の主張を退けた。

 

10752杉並区立和田中学校夜スペシャル事件最一小決平26・4・17 TKC

データベース 棄却・不受理

 

10753大阪市アンケート事件大阪地判平27・3・30 TKCデータベース

 

10754★★大阪市組合事務所使用申請不許可事件大阪地判平26・9・10 Lexis AS ONE

 本件は、平成24年大阪市が庁舎内の職員労働組合の事務所使用を認めず労組を退去させるなどした問題で、8労組が橋下徹市長らによる不許可処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟

 この判決では、呉市立二河中学校教研集会使用不許可事件最三小平18・2・7民集60巻4号401頁の判断枠組を明示的に引用(最高裁が学校施設の目的外使用に許可に関して、学校施設の法的性質に鑑み、学校教育上支障がなくとも不許可にする管理者の裁量を認める一方、本件事実関係に過大考慮・過小考慮定式を当てはめることにより、裁量の逸脱濫用を導いたものである)し、本件についても過大考慮・過小考慮定式を当てはめ重視すべきでない考慮要素(行政事務スペースとしての使用の必要性)を重視するなど,考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており,他方,当然考慮すべき事項(職員の団結権等に与える影響)を十分考慮しておらず,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといえるから,市長の裁量権を逸脱・濫用するものであり,その余の点を判断するまでもなく違法と判断され、不許可処分を取り消し、損害賠償の支払いを命じた。。

 もともと、学校施設の目的外使用についての最高裁初めての判断だった呉市立二河中学校事件判決が、本件のような市庁舎の目的外使用について判断枠組みとして適用されることが妥当かどうかは疑問があるが、同判決の影響力の大きさを示したものといえる。

 

 平成24年7月27日に可決された「大阪市労使関係に関する条例」12条は、大阪市が労働組合等に対する便宜供与を一切禁止する趣旨のものであるが、裁判所は「従前労使関係において特段問題が生じていなかった労働組合等が,本件条例12条により,従前受けていた便宜供与を廃止されることに何らの合理的根拠も認め難いことは明らかである。この点,被告は,不祥事事案に関係する便宜供与等に限って禁止した場合,禁止の対象外の便宜供与が不健全な労使関係の新たな温床となりかねないと主張するが,上記弊害を防止するためには,不健全な労使関係になったと認められた時点で便宜供与を廃止するとしても十分足りるのであって便宜供与の一律禁止を正当化する根拠になるとはいい難い。

 したがって,本件条例12条は,少なくとも同条例が適用されなければ違法とされる被告の行為を適法化するために適用される限りにおいて,明らかに職員の団結権等を違法に侵害するものとして憲法2 8条又は労組法7条に違反して無効というべき」と述べ同条例を組合事務所使用不許可を適法化する根拠として認めない考えを示している。

 ただこの言い回しは、例えば、労務指揮権侵害、業務阻害、秩序を乱す行為、目に余る政治活動とか不健全な労使関係と認められる時点で12条を根拠に便宜供与を廃止する余地を残す判断であり、必ずしも組合活動に好意的な判断をとっているわけではないとの心証も持った。

 

 大阪市における労使関係改革は、関淳一市長時代の平成16年にカラ残業手当やヤミ専従、福利厚生での職員厚遇などマスメディアで大きく取り上げられたことから、市政改革に乗り出しており、大きな成果としては、平成17年(2005)9月に「ながら条例」改正による勤務時間内組合活動を規制する条例が改正されたこと。同時期に「庁舎使用にかかる組合支部に対する便宜供与の考え方」が発せられ「必要最小限のスペースに限ること」とされたことが挙げられている。また同年12月に「市政改革マニフェスト」が提出され、マネジメント改革、コンプライアンス改革、ガバナンス改革があり、ガバナンス改革のなかに健全な労使関係の構築が挙げられており、時間内組合活動の適正化、交渉協議事項の整理、便宜供与の見直しなどが推進され、平松邦夫市長時代の平成20年(2008)3月28日に市議会でチェック・オフ廃止条例が可決しており、関・平松時代にすでに改革は進んでいたのである。

 橋本市長になってからの「大阪市労使関係に関する条例」はその総仕上げとしての意義を認めるが、それなりに改革が進んでいる状況で市長が問題視する政治活動とは直接関連のなさそうな組合事務所の追い出しはやや強引というか「エモーショナルな感じ」との心証を与えているのではないか。このため本判決の理由はともかく結論はやむをえないかもしれない。

 

(判決要所)

(1)判断枠組み

ア 地方公共団体の庁舎は,地方自治法2 3 84項にいう行政財産であり,当該地方公共団体の公用に供することを目的とするものである。したがって,これを目的外に使用するためには同法2 3 8条の47項に基づく許可が必要であり,目的外使用を許可するか否かは,原則として,施設管理者の裁量に委ねられているものと解するのが相当である。すなわち,当該地方公共団体の庁舎の用途又は目的を妨げる場合には使用を許可することができないことは明らかであるが,そのような場合ではないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく,行政財産である庁舎の目的及び用途と目的外使用の目的,態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。そして,施設管理者の裁量判断は,許可申請に係る使用の曰時若しくは期間,場所,目的及び態様,使用者の範囲,使用の必要性の彳雖,許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度,代替施設確保の困難性等許可をしないことによる

 申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり,その裁量権の行使が逸脱・濫用に当たるか否かの司法審査においては,その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱・濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である(最高裁平成4年27曰第三小法廷判決民集602401頁参照)。

イ この点,当該地方公共団体に任用される職員をもって組織される労働組合等は,その勤務条件の維持改善を図ることを目的とするものであって,当該地方公共団体の庁舎内をその活動の主要な場,とせざるを得ないのが実情であり,その活動の拠点として組合事務所を庁舎内に設置する必要性の大きいことは否定することができない。しかし,労働組合等にとって使用の必要性が大きいからといって,施設管理者において労働組合等の活動のためにする庁舎の使用を受忍し,許容しなければならない義務を負うものではないし,使用を許さないことが庁舎につき施設管理者が有する裁量権の逸脱・濫用であると認められるような場合を除いては,その使用不許可が違法となるものでもない。また,従前'組合事務所として利用するための1年間の使用許可申請を繰り返し許可してきたとしても,そのことから直ちに,従前と異なる取扱いをすることが裁量権の逸脱・濫用となるものではない。

ウ もっとも,先に述べたとおり,労働組合等が組合活動につき庁舎を利用する必要性が大きいことは否定できず,施設管理者においても,労働組合等に対しその活動の拠点として組合事務所を庁舎内に設置することを継続的に許可してきた場合には,それまでは,組合事務所として利用させることが,当該地方公共団体の庁舎の用途又は目的を妨げるものではなく,相当なものであったことが推認される上,それを以後不許可とすることによって,労働組合等の庁舎内での組合活動につき著しい支障が生じることは明らかである。

したがって,そのように従前と異なる取扱いをした不許可処分の違法性を判断するにあたっては,施設管理者側の庁舎使用の必要性がどの程度増大したか(そもそも組合事務所として使用をしていた労働組合等に退去を求めざるを得ない程度に庁舎を公用に供する必要性が生じた場合には,前述したとおり,当該地方公共団体の庁舎の用途又は目的を妨げる場合に該当するとして使用を許可することができない。),職員の団結権等に及ぼす支障の有無・程度,施設管理者側の団結権等を侵害する意図の有無等を総合考慮して,施設管理者が有する裁量権の逸脱・濫用の有無を判断すべきである。

(中略)

 ‥事情をすべて考慮すれば,‥‥重視すべきでない考慮要素(行政事務スペースとしての使用の必要性や組合事務所として庁舎の使用を許可することによる弊害のおそれ)を重視するなど,考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており,他方,当然考慮すべき事項(労働組合等の団結権等に与える影響)を十分考慮しておらず,その結果,社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものといえ,市長の裁量権を逸脱・濫用したもので,その余の点を判断するまでもなく違法というべきである。

(中略)

 本件条例12条は,被告が労働組合等に対する便宜供与を行うことを一律に禁止

し,施設管理者の裁量を一切認めない趣旨であると解される。

(イ)ところで,労組法73号は,使用者が,労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えることを,労働組合の自主性を侵害する不当労働行為として禁止するのを原則とし,例外的に最小限の広さの事務所の供与等を許容しているものの,使用者が組合事務所として使用するための施設の利用を労働組合等に許諾するかどうかは,原則として,使用者の自由な判断に委ねられており,使用者がその利用を受忍しなければならない義務を負うものではないか6,権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては,使用者が利用を許諾しないからといって,直ちに団結権を侵害し,不当労働行為を構成するということはできない。したがって‥‥本件条例12条が労組法73号が許容している便宜供与を一律に禁止しているからといって,直ちに労組法に違反するとはいえない。

 しかしながら,地方公共団体は,労組法が適用される職員との関係では,労組法により,同法7条が定める不当労働行為を行うことが禁止されるし,労組法が適用されない職員との関係においても,職員が結成した職員団体は憲法2 8条が定める団結権等が保障され,それを違法に侵害してはならないのであるから,本件条例12条が労組法7条に違反したり,憲法28条に違反すると評価される場合には,これが無効となることはいうまでもない。

(ウ)そして‥‥市長の労働組合等への便宜供与の禁止の指示は,‥‥深刻な支障が生じ,ひいては職員の団結権等が侵害されることを認識し,これを侵害する意図をも有していたとみざるを得ないものであり,本件条例も,上記の指示の制度化として,対象となる労働組合等との間の労使関係が適正かつ健全なものであるか否か,対象となる便宜供与が従前から継続して与えられていたものか否かを問わず,一律に便宜供与を禁止する内容とする本件条例12条を含む案が提出され,そのまま市会で可決されて制定に至ったというもので,従前労使関係において特段問題が生じていなかった労働組合等が,本件条例12条により,従前受けていた便宜供与を廃止されることに何らの合理的根拠も認め難いことは明らかである。

 この点,被告は,不祥事事案に関係する便宜供与等に限って禁止した場合,禁止の対象外の便宜供与が不健全な労使関係の新たな温床となりかねないと主張するが,上記弊害を防止するためには,不健全な労使関係になったと認められた時点で便宜供与を廃止するとしても十分足りるのであって,便宜供与の一律禁止を正当化する根拠になるとはいい難い。 したがって,本件条例12条は,少なくとも同条例が適用されなければ違法とされる被告の行為を適法化するために適用される限りにおいて,明らかに職員の団結権等を違法に侵害するものとして憲法2 8条又は労組法7条に違反して無効というべきであり,上記各不許可処分の違法性を判断するに当たっては,独立した適法化事由とはならないというべきである。」

 

10755 ★東京高判平26326 TKCデータベース

夫婦同氏合憲適法判決

 

10756★武田芳樹「氏名の変更を強制されない権利と民法750条」『法学セミナー』71420147

 

10757★東京地判平25529 判時219667

夫婦同氏合憲適法判決

2015/05/03

入手資料整理155

10741神奈川県教組教研集会職免承認事案住民訴訟 横浜地判平15・10・20 Lexis AS ONE・TKCデータース登載

 神奈川県鎌倉市立小中学校の教員である被告7人は,平成11年11月11日、12日川崎市立労働会館及び同市立川崎高校における神奈川県教職員組合の主催する教育研究集会について,両日もしくはどちらか1日、それぞれ所属の学校長から教育公務員特例法2 02項の規定による研修として承認を受け,職務専念義務を免除され,有給の取扱いで参加し,神奈川県知事から参加した日の分の給与の支給を受けたところ,神奈川県の住民である原告が,上記教育研究集会への参加について教育公務員特例法2 02項による研修として承認することは違法であり,上記の給与の支給は違法な公金の支出であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下,同じ。)2 4 2条の214号に基づき,神奈川県に代位して,被告らに対し,不法行為による損害賠償又は不当利得の返還として,それぞれ上記教育研究集会に参加した日の分の給与相当額及びこれに対する違法な公金の支出の日の後の日である平成1211日から完済まで民法が定める年5分の割合による遅延損害金を神奈川県に対し支払うように求めた事案である。

 判決は、教研集会が職員団体の活動であり、職務専念義務免除による有給の参加は違法であるとしながら、にもかかわらず、当該職員の財務会計上の行為をとらえて損害賠償等の責任を問うことができるのは,その行為に先行する原因行為に違法事由が存する場合であつても,この原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られるとする先例を引いて、本件公金支出(支給決定)が、県知事においてその職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされた違法なものであるということはできないとして、住民の請求を棄却した。

 ここから私の見解だが、原告は教研集会は職員団体の運動方針に基づいて行われる組合活動であるとし、本件教研集会には旧社会党系の政治団体である「県政連」所属議員が多数参加していた。しかもそれ以外の政治家は参加していない。男女の共生や平和教育の重視という集会の内容からみても特定の思想政治的傾向を持つものと推定できる。にもかかわらず、通常、職務命令として行われる有給の職務研修と同じ扱いであることに対する疑義は当然であり、この点判決も本件教研集会は職員団体の活動としての法的性質を有するとし職免扱いを違法と判断した点で一定の意義が認められる。

 しかし本件住民訴訟には突破できない壁があり、学校長の判断が違法であっても、本件公金支出については被告らの給与支出者である県知事において看過できない瑕疵があるとはいえないとして住民の請求を棄却した。

 

 (要所)本件教研集会は職員団体の活動としての法的性質を有するもので、教育公務員特例法2 02項の規定による研修として承認することは,勤務時間中に.勤務場所を難れて.職員団体のために活動することを容認することを意味し、それが研修としての実質を有しているとの判断が,学校長に委ねられた裁量権の範囲内にあるものということができたとしても、教育公務員特例法は,同法202項の規定による「研修」としての承認が教員において,職務専念義務の免除を受けて,勤務時間中、勤務場所を離れて、職員団体のため法的性質を有する研修活動を行うために付与されることを予定しているものではないと解されるところであるから、各学校長においてはその裁量権の行使としても、被告らの本件教研篥会への参加につき,教育公務員特例法20条2項の規定による「研修」として承認する余地はないというべきであつて,結局,被告らの本件教研集会への参加について各学校長がした教育公務員特例法2 02項による研修としての承認は,学校長に委ねられた裁量権の範囲を超え,あるいはこれを濫用したものとして違法であるとした。

 

 しかしながら、職務上の義務に違反する財務会計上の行為による当該職員に対する損害賠償義務の履行を求める地方自治法242条の2の規定にもとづく住民訴訟については、先例である一日校長事件最三小判平成4年・12・15民集46巻9号2753頁 (教育委員会が公立学校の教頭で勧奨退職に応じた者を校長に任命して昇給させるとともに同日退職承認処分をしたことに伴い知事がした昇給後の号給を基礎とする退職手当の支出決定は、適法とした)が引用され、当該職員の財務会計上の行為をとらえて損害賠償等の責任を問うことができるのは,その行為に先行する原因行為に違法事由が存する場合であつても,この原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解するのが相当である(最高裁判所平成41215日第三小法廷判・民集4 692 7 5 3頁参照)。

 そして,上記のような法理は.242条の214号後段の規定に基づく代位請求に係る

当該行為の相手方に対する損害賠償請求訴訟若しくは不当利得返還請求訴訟についても同様であって,当該行為の相手方に対し損害賠償等の責任を問うことかできるのは,原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上義務に違反する違法なものであるときに限られる。

 教育委員会ないし学校長と地方公共団体の長との権限の配分についての関係に照らせば.学校長がした教育公務員特例法2 02項の規定による研修の承認については.地方公共団体の長は.その承認が著しく合理性を欠き,予算執行の適正確保の見地から看過することができない瑕疵があるものでない限り,学校長の判断を篇重し,その内容に応じた財務会計上の措置を採るべ義務があり、これを拒むことは許されないものと解するのか相当である(上記最高裁判所平成41215日第三小法廷判決参照)。

  本件教研集会は,県教組の主催によるものであるが,神奈川県市町村教育長会連合会,神奈川県市町村教育委員会連合会,神奈川県公立小学校長会,神奈川県公立中学校長会等の神奈川県下の多くの教育関係団体等により構成された「神奈川県の教育を推進する県民会議」及び「神奈川県PT A協議会」が後援団体として加わって,開催されたものであった。県教組主催の教研集会は,本件教研集会の開催で既に49回目を数えるに至っているが,この間,神奈川県下の多くの市町村教育委員会においては,県教組主催の教研集会は,教育活動のために行っているものであって,その研修内容は職務に密接に関連するものであるから,教研集会への参加は,教員の資質を高め,職務遂行に役立つものであると位置付けられ,このような教研集会への参加については,字校長において授業に支障がないと判断した場合,教育公務員特例法202項の規定による研修としての承認を与える,という取扱いが長年にわたり継続されてきた。

そして,本件教研集会が開催された当時における鎌倉市教育委員会の県教組主催の教研集会についての位置付けも,同趣旨のものであった。

 また,県教委においても,従前より,県教組が主催する教研集会への教員の参加について,参加する教員にとっての研修性と職員団体としての活動性のニ面性に照らして,これを教育公務員特例法2 02項の規定による研修と取り扱うかどうかは,承認権者である学校長の裁量権の範囲の事項としてきた。

 教職員組合主催の教研集会への教員の参加には,職員団体のための活動という性質だけではなく,他面で,自主的研修としての性質をも有するということを前提として,学校長が,教育公務員特例法2 02項の規定による承認をするかどうかを決めるに際し,このよラな教研集会への参加のニ面性のいずれに着目して判断しても,学校長の裁量権の範囲内である,との趣旨の裁判例札幌高等裁判所昭和5 2210日判決・行裁集2 812107 頁)があり,この裁判例等が,上記の教育委員会の取扱いの根拠の一つとなっていた。

 本件教研集会についても,その全体会や被告らが参加した各分科会のテーマ(家庭科教育,幼年期の教育と保育問題,男女の自立と共生をめざす教育,平和教育,学習と評価・選抜制度と進路保障)やそこでの報告内容等に照らせば,これに参加した被告らにとり,教員としての研修たる性質をも有するものであったことを否定することはできない。

 総合検討すれば,本件教研集会への参加について各学校長がした教育公務員特例法2 02頂による研修としての承認は違法なものであるといわざるを得ないのであるが、それが,著しく合理性を欠くものであつて,被告らの給与の支出権者である県知事において.予執行の適正確保の見地から看過することができない瑕疵があるとまでは断定することはできないというべきである(なお,原告は,本件における各学校長の研修の承認は,いわゆる「ヤミ協定」に基づくもので,学校長として事実上承認を拒絶できない状況の下で与えた承認であり,実質的に要件の存否を判断して与えた承認ではないから,これらの承認は無効であるとも主張するが,その主張する「ヤミ協定」に係る「給特法覚書.・了解事項にもとづく交渉確認メモ」の記載は,「教育公務員特例法第2 02項の活用については,教職員の研修の重要性から信頼関係の上に立ち,申し出があった場合は承認することを原則とする。」いうものにすぎず,その記載自体に照らしても,これにより,学校長が,教員が行おうとする自主的「研修」について,その研修性や授業の支障の有無につき個別な判断をすることなく,無条件で承認を与えるように拘束されていたものとは認められない。 

 そうであるとすれば、県知事においては,被告らの本件教研集会の参加について各学校長の教育公務員特例法2 02項による研修としての承認があったことを前提として,それに応じた財務会計上の措置を採るべき義務を負っていたのであるから本件公金支出(支給決定)が、県知事においてその職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされた違法なものであるということはできないというほかない。

 

[上記判例の引用判例関係10742~10750]

 

10742白老小学校教諭教研集会参加職免不承認事件 札幌高判昭52・2・10判時865号97頁

 

10743兼子仁「教師による時間内校外自主研修」 札幌高判昭52・2・10判時865号97頁評釈 『教育判例百選』第二版1979年

 

10744金子芳雄「地方自治法二四二条の二第一項四号(住民訴訟)における前行行為の違法性の承継」最三小判平4・12・15民集4 692 7 5 3頁評釈『法学教室』153号1993・6

 

10745関哲夫「一日校長事件」最三小判平4・12・15民集4 692 7 5 3頁評釈『平成4年重要判例解説』1993年

 

10746大久保規子「財務会計行為と先行行為-1日校長事件」最三小判平4・12・15民集4 692 7 5 3頁評釈 『地方自治判例百選』第二版2003年

 

10747伴義聖・大塚康男「中学校新設住民訴訟、住民、粘り腰で仕切り直し」最三小判平10・12・18民集52巻9号2039頁、判時1663号87頁評釈 『判例地方自治』187号

 

10748荏原明則「監査請求前置の意義(1)」最三小判平10・12・18民集52巻9号2039頁、判時1663号87頁評釈 『地方自治判例百選』第三版2013年

 

10749金子芳雄「川崎市役所汚職事件-汚職職員への退職金支給は適法か」最一小判昭60・9・12判時1171号63頁『平成60年重要判例解説』1986年

 

10750阿部泰隆「退職金支払い違法住民訴訟事件」最一小判昭60・9・12判時1171号63頁評釈『判例地方自治』21

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