公務員に労働基本権付与絶対反対-政府は巨悪と手を結ぶな

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2015/05/17

「ブラック企業」社名公表は大反対だ  

一 不払い残業でなくても「ブラック」認定は異常だしやり過ぎ

 

 労使の取り決めなしに月100時間の残業がひとつの支社や営業所に10人以上か、社員の4分の1以上、1年間に3ヶ月以上あった場合に社名を公表すると、14日厚生労働省が発表し、18日から開始するという。公表は大企業に限定するとしているがNHKのネット報道(ブラック企業対策強化で企業名公表へ515 1838分)によれば全国チェーンの小売店や大手金融機関が是正勧告されるのではないかと示唆している。

 街頭でみかけた共産党のポスターには、同党参議院議員の追及で「ブラック企業」公表を安倍首相に約束させたと自慢げに書かれていたが、労組の点検闘争、順法闘争の延長線上にある政策のように思え、非常に不快である。

 

 今回の政策では、労使協定に取決めなしに長時間労働させている企業が対象なので、結局のところ、労働組合や労使委員会の集団的労働関係の規制力を強める効果をもたらすから、政策の利得者は労組と左翼政党になる。

月100時間以上時間外労働している勤労者は多数いるだろうが、労使協定で制限がなければ「ブラック」とされることはないからである。新自由主義の流れでは、集団的労働関係から個別契約主義に移行するのがトレンドのはずだが、それと逆行する政策ともいえる。

附に落ちないのは、不払い残業でなくても労使協定なしなら「ブラック」とされてしまうことである。むしろ100時間も残業代を出してくれるのはありがたいことで、近代市民法原則では違法であり(契約の相対効に反し契約の自由を侵害し不当に労働力無取引を制限するものとして)悪法以外のなにものでもない労基法を厳密に遵守していないということで「ブラック」認定されるのは全く不公正である。

 

問題は、労基法が強行法規であり、時間外労働させるのに過半数組合か、組合不在の場合は、労使委員会をつくって過半数代表といわゆる三六協定を締結しなければならないという制度にある。

三六協定のような強行法規は世界的に類例がない。三六協定は締結当事者でない非組合員などにも及ぶと解されていることから近代私法の原則である契約の相対効に著しく反し、むろん協定が強行法規であるということは、個別労働者の契約の自由に反するものである。英法では団体協約は取引制限の法理に反し普通法により違法である(英法では雇用契約はあくまでも一対一であって団体協約を個別協約に取り込んで運用しているだけ)。

三六協定は世界の常識に反している、準社会主義的な立法といえる。だからそれに反しているといっても「ブラック」とみなすべきではないと思うので私は強く反対だ。[i]

 

 そもそもジャパンアズナンバーワンといわれた80年代までは普通サービス残業年間300時間くらいはあたりまえだったとされている。政府は労使関係の問題として90年代まで積極介入はしていなかった。悪法が実効力をもつようになったのは比較的近年のことである。

 日経連の全ホワイトカラー裁量労働制の提案に危機感を抱いた、労組や左翼勢力の突き上げで、今世紀はじめから不払い残業の摘発を積極的に行うようになった。近[ii]年では不払い残業どころか、たんに労使協定なしの長時間労働でも「ブラック企業」と攻撃されるようになった。

 近代私法原則に反しても労基法は合憲だから、悪法も法なりということで役人は粛々と左翼勢力へのスケープゴートとして企業名をさらす仕事をすることになるのだろうが、恐るべき企業いじめだ。明らかにこの制度は自由企業体制を侵食することになるだろう。

 

 こんなことをやっていると、外資企業に嫌われる。中国や韓国に拠点を移したほうが益しとなるだろう。成長戦略からしてもマイナスの政策である。

 「労基法はオーバーホールし過労死は自己責任とすべき」とか言うと袋だたきに遭うので、あえて言わないが、アメリカ人ならそう言うと思う。米法は原則解雇自由だが、被用者が勝手に退社するのも自由なので、それで労使対等と観念される。無理をする前に退社するからアメリカ人に過労死はない。

もっともイギリスのよう予告義務の法理のある国では、退職するには職種別に慣習に沿った一定期間より前の退職通告が必要なので勝手にやめることはできないが、我が国にはそのような制度はない。従って原則的には自己責任としてもよいはずだが、労基法により時間外労働は個別交渉による制度ではないので個別責任に還元されないような仕組みになってしまっていることが悩ましい。

 

 

 

二 三六協定は世界の常識に反している(アメリカとの比較)

 

 

アメリカ合衆国と対比すればより明瞭である。

 

(一) アメリカの公正労働基準法は週40時間以上超過労働の割増賃金支払義務があるだけ

 

 合衆国の1938年公正労働基準法(FLSA)は、使用者に対し同法が適用される被用者に対し週40時間を超える労働に対して割増賃金支払義務を課すが、過半数代表との協定の必要はなく、たんに割増賃金支払義務があるだけだ。

 そもそもFLSAは、大恐慌により失業問題が深刻であった時代に立法されたため、その立法趣旨は追加的賃金を避けるメカニズムにより「雇用を拡大すること」や「ワークシェアリング」することであり、長時間労働の抑制ではないのである。[iii]

 

(二) アメリカの全国労使関係法は団体協約の締結を強要していない

 

 1935年全国労使関係法(NLRA)は、排他的交渉代表制度をとっているので、労働組合が承認され団体交渉権を得るには、適正な交渉単位で従業員の3割の署名によりNLRB(全国労働関係局)の監督下の選挙で、過半数の支持を得て認証を受けた組合だけであるが、企業は交渉代表となった組合と団体協約を締結する義務はない。強制調停制度はないのである。

 もし、日本の三六協定のような強行法規は、普通法(コモンロー)の取引制限に当たるだけでなく、アメリカでは憲法違反の疑いが濃いと考えられると思う。

 

 

 (三)アメリカの全国労使関係法は、従業員代表制を違法としているので、組合不在企業は団体協約にカバーされることのない個別契約となるし、大多数の企業は組合不在企業である

 

交渉代表選挙では組合が敗北するケースは多く、その場合企業に、組合を承認し団体交渉応諾する義務は全くないし、使用者によって設計された従業員代表制、労使合同委員会は会社組合とみなされ、たとえ多数の支持があるとしても真正の組合とはみなされず違法である。

合衆国の2014年の労働組合組織率は、11.1%だが、民間企業では6.6%にすぎない。http://www.bls.gov/news.release/union2.tn.htm従って民間企業の大多数の職場では団体協約でカバーされない個別契約といえるのである。

アメリカのエクセレントカンパニーの大多数が組合不在企業であり、団体協約も従業員代表制もない企業文化であるから、日本の三六協定は訝しく思われても仕方ない。従業員に対してフレンドリーで残業代を満額払っていても「ブラック」にされかねないのだ。

だいたい、今月の第二週のように、平日の三日間が祝日で、二日しか働かない週でも、一日八時間を超えて仕事させるには、過半数組合もしくは過半数代表と協定を締結し、なおかつ割増賃金を払わなければならないなどというのは、どの企業も異常だと思っているはず。

知識労働者なら週70時間労働くらいはふつうにありうると思うので、今回の政策も不快に思っているに違いない。こうゆう共産党に迎合する政策をやっていると外資を呼び込む安倍の成長戦略も絵にかいた餅になってしまうだろう。

 

 

(四)ベンチャー企業なら長時間労働は当然だ

 

企業の成長にハードワークは絶対必要だ。マッキントッシュ開発時にスティーブ・ジョブズのチームは「週80時間労働、大好き」と書かれたTシャツ着て3年間猛烈に働いたし、ウォズ二アックは数週間徹夜で働いたという伝説がある。フェイスブックのチームも週七日、三週間ぶっつづけに働いた。(桑原晃弥『ジェフ・ベソス ライバルを潰す仕事術』経済界201528)

長時間労働を「ブラック」とラベリングする左翼勢力のいいなりになっていると、イノベーションによる経済成長も無理だと国力を衰退させることになる。

 

(付論)近年注目された交渉代表選挙

 

1.ターゲット・バレーストリーム店

 

2011年6月17日にディスカウントストア大手の「ターゲット」(本社ミネアポリス、全米売上げ第5位の組合不在企業)の、ニューヨーク郊外ロングアイランドにあるバレーストリーム店における、国際食品商業労働組合(UFCW)の申請による組合代表選挙が実施されたが、85対135で組合が敗北したとスタートリビューンなどが伝えている。http://www.startribune.com/business/124120324.html http://la-consulting.com/wordpress/?p=7438 http://newyork.cbslocal.com/2011/06/18/valley-stream-target-store-workers-reject-unionization/ターゲットの従業員は組合のない環境で働くことを選択した。

UFCWはグローサリーストアから発展した食品スーパーの一部を組織化しているが、労働統計局によると、小売業界の組合組織率は20143.1%にすぎない。アメリカでは非食品小売で労働組合が組織化されることはまずないといわれている。シアーズやウォルマートが組合不在企業として著名だが、ホームデポ、コストコみなそうなのである。

ターゲットはファッション系の自社ブランドが強いのが特徴で、全米で1755店舗を展開する。スタートリビューン記事によるとターゲットにおいても過去1990年にデトロイト近くで、5年後コロラドで、さらにジョージアで1997年に、カリフォルニアで組合代表選挙が実施されたが、いずれも従業員が組合を拒否しており、組合がなくてあたりまえの業界で、1店舗でも組織化される影響は大きく、経営環境の悪化を招くので従業員の選択は賢明である。

 

2.VWチャタヌーガ工場

 

戦後まもなくのCIОのディキシー・オペレーションで敗北したことが知られているように、南部の組合組織化は難しいとされてきたが、UAW(全米自動車労組)は2011年ニから稼働しているテネシー州チャタヌーガのVW新工場で猛烈な組織化攻勢を仕掛け、2014年2月12~14日に交渉代表選挙に持ち込んだ。この工場は地元の熱心な誘致運動が実ったもので、同じ非組合工場でも、ケンタッキーやオハイオなどにあるトヨタやホンダの工場より人件費はかなり安いと報道されていた。

VWは本国のドイツでは組合とは別に従業員代表制度もあるので、比較的組合に好意的な姿勢をつけこまれたと思う。

反対712、賛成626で辛うじて組合承認は否決された。[iv]もしこれがUAW勝利だったらインパクトの大きいニュースになっていただろう。

というのは、UAWはビックスリーを組織化しているが、外国系の組立工場は合弁事業の工場を除いて組織化に成功していない。

例えばUAWはテネシー州の北米日産スマーナ工場で2001年に交渉代表権獲得のための組合代表選挙に持ち込んだが反対3,103、賛成1,486の大差で否決〈2001年1011日(木)『日経連タイムス』〉されているように南部の組立工場の組織化は失敗している。アラバマ州モンドゴメリーにある現代自動車工場で組織化の努力を数ヶ月試みたが労働者は組合にほとんど関心を示さなかったという。ホンダやトヨタの工場も組織化は及んでいない。

アメリカの産業別労働組合で何が問題かというと 制限的労働規則(restrictive work rules)という労働組合によるジョブコントロールである。工場内における職務を細分化し、個々の職務範囲を極めて狭い範囲に限定するものである。このため、単一の工場内における職種が数十種類に及び、組合は個々の職種ごとに賃金等を設定し、仕事の規制を行うので、職場組織は極めて硬直的となるのだ。日本系の企業が組織化されないのは、組合職場のように仕事は制限されないが、内部昇進制度があったり、やり甲斐のある職場と認識されているためだろう。

きわどかったが、組合をとらなかったVWのチャタヌーガ工場の社員は賢明な選択をしたといえる。

このようにアメリカでは、交渉代表選挙に持ち込まれても否決されるケースが多く、結果的にニューディール型の団体交渉による労使関係から、個別契約の労使関係に大勢ガ移行シテイル。ている。団体交渉による労使関係を基本として、それを促す、労働法システムとなっている我が国の体制はもはや現代的なものとはいえないのである。

 


[i]私は「ブラック企業」が悪なのではなく、労基法こそが巨悪という逆の考えだ。私的自治、取引自由、契約自由、意思自治、自己責任が神聖で、集団による取引制限、責任転嫁が悪という考えだから、当然反対だ。筋の悪い政策だと思う。

[ii]中基審が2000年11月に「労働時間短縮のための対策に対する建議」を行い、厚生労働省が「労働時間の短縮促進に関する臨時措置法」の改正を労政審に諮問し、森内閣の坂口力厚労相のもとで2001年2月に同法改正を閣議決定し、それまでは労使間の問題として政府が積極介入しなかったあり方をやめ、サービス残業は労働基準法違反で、悪質な企業は司法処分を辞さないという労働基準局長通達(基発339号)を発出。家電大手が集中的に狙われたのである。

 まずNECが基準監督署の指導で主任以下の調査を行い過去2年分の残業代を支払わされた。本社田町の100人以上について平均150時間約4500万とされている。日立製作所でも未払い残業代が支払われ、三菱電機で是正勧告、係長級に導入していた残業手当の定額支給も見直された。さらにシャープで是正勧告、沖電機でも是正指導がなされた(清山玲「サービス残業の実態と規制政策の転換」『茨城大学人文学部紀要. 社会科学論集』39 2003 ネット公開論文参照)。

[iii] FLSAの目的につき比較的詳しく述べた連邦最高裁判決は、「時間外労働そのものは禁止されないものの、追加的な賃金の支払を避けるために雇用を拡大することに向けて財務上の圧力が加えられ‥‥追加的な賃金支払を避けるという経済メカニズムが、提供可能な仕事を分配するのに有効な効果をもたらすことが期待される」と述べている OVERNIGHT MOTOR TRANSP. CO. v. MISSEL,316U.S.572(1942) http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.pl?court=us&vol=316&invol=572

 

ここでは、法定労働時間を超える時間外労働それ自体を禁止することは法の趣旨とは捉えられておらず、長時間労働による労働者の健康への負担にも言及はなく、立法目的はあくまでも大恐慌対策としての雇用拡大、失業対策のためであるから、今日のような平時に戻れば廃止されるのか筋であるともいえる。(労働政策研究・研修機構の労働政策研究報告書 No.36『諸外国のホワイトカラー労働者に係る労働時間法制に関する調査研究』第一章アメリカ27頁(平成 17 年)http://www.jil.go.jp/institute/reports/2005/036.html参照)

 

[iv]  山崎憲「VW社工場の組織化投票、UAWが痛恨の敗北―不当労働行為で、地元議員を提訴」海外労働情報国別労働トピック:20143月独立行政法人労働政策研究・研修機構

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