下書き(一)1 総論1
(一)夫婦別姓推進運動は日本的「家」慣行を敵視し、婚入配偶者たる嫁女の婚家帰属性を否定することを目的としており、我が国の社会構造を根底から揺るがし、「家族」慣行に大混乱をもたらす。
1.社会構造としての婚入配偶者の婚家帰属の実証
鈴木さん、佐藤さん、山本さんといった社会的標識(姓とも、氏とも、苗字ともいう)は、家名といえるのだろうか、民法起草者の梅健次郎は「妻カ夫ノ家ニ入ルト云フコトガ慣習デアル以上ハ夫ノ家ニ入ッテ居ナガラ実家ノ苗字ヲ唱ヘルト云フコトハ理窟ニ合ワヌ」と言って、漢土法のような夫婦別姓には反対した、家名とみなしているようだが、家に入るというのは、同じ親族集団ないし同じ家内的集団への帰属という認識ともいえそうである。
もっとも、同族が集住している農村の場合、苗字は固有の家名にはならない。本家と分家を区別できないのである。また苗字が公称できなかった時代もあるので、厳密には家名は固有の「門名」で区別する(出雲地方の場合)ものである。しかし、家の成員は同一姓であるから家名というとらえ方でも誤りではないと思う。
妻が夫家(婚家)に入るとは、本来は夫家の家督に従う、夫権に従う、舅姑に仕えるということだろうし、私はそうあるべきだと考えるが、家督相続がなくなって、核家族化が進んでいる今日においては、たんに、婚家の成員となる、同じ親族集団、家族となる。同一の家内的集団(ドメスティックグループ)となるというとらえ方もをしてもさしつかえないだろう。
一方、夫婦同姓は西欧で13世紀以降普及した父系姓の夫婦同姓を継受した側面も多分にあるのでファミリーネームともいえる。典型的な日本的「家」とは違う、北西ヨーロッパのライフサイクルサーバント(子供は思春期に家を出て、他家の奉公人となり、技能を体得したのち、結婚して小屋住となる、小農は、日本のように親子で力をあわせて働くのではなく、赤の他人である年季奉公人をこき使って経営するので、複合家族にはならない)の単純世帯=核家族でもファミリーネーム(夫婦同姓)なのであるから、同一家内的集団の標識ともいえるのであり、夫婦同姓を「家」制度に残滓とだけとらえるべきではない。
したがってこれは親族構造にかかわる問題なのであるから、人類学の理論を無視して論じられる事柄ではない。この点で最も適切な社会人類学者として清水昭俊の学説から検討する。
私は日本的「家」制度を悪しきものとみなす法制審議会や夫婦別姓論者の見解に反対であるが、社会人類学でいう「家」とは部族的分節リネジ、ポリネシアのラメジ=円錐クラン、インド・中央・東アジアのリネジのことある。(清水昭俊『家・身体・社会』弘文社1987) (つづく)
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