報ステの解説者、中島岳志北大准教授は勉強不足だ「北条政子」は昭和以降広まった人名表記にすぎない
テレ朝の「報道ステーション」で最高裁大法廷のニュースを見た。明治9年の太政官指令に言及していたが、。私の太政官指令批判は、13日のブログhttp://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/7501075010-6deb.html とその前のブログhttp://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/750-0941.htmlに書いたとおりだが、
明治9年太政官指令「婦女人二嫁スルモ仍ホ所生ノ氏ヲ用ユ可キ事」は社会生活の実態とまったく乖離しており、事実上実効性がなかったと考えられる。それは夫婦の別氏を称することの不便さが各府県の多くの伺文で取り上げられていることでも明らかである。役所が公文書に生家姓を強いることも困難な実態にあり、事実上明治民法に先行して夫婦同氏が普及し慣行となっていたことが看取することができる。代表的な伺文を以下のとおりである。
(廣瀬隆司「明治民法施行前における妻の法的地位」『愛知学院大学論叢法学研究』28巻1・2号 1985.03参照)
明治22年12月27日宮城県伺
「婦女嫁スルモ仍ホ生家ノ氏ヲ用フベキ旨曽テ石川県伺御指令モ有之候処嫁家ノ氏ヲ称スルハ地方一般ニ慣行ニシテ財産其他公私ノ取扱上ニ於テモ大ニ便益ヲ覚候ニ付嫁家戸主トナル者ノ外ト雖モ必ズシモ生家ノ氏ヲ称セサルモ便宜ニ任セ嫁家ノ氏ヲ称スルハ不苦義ニ候哉」
明治23年5月2日東京府伺
「婦人結婚ヲ為シタル後ト雖夫ノ氏ヲ称セス其生家ノ氏ヲ称用スル事ニ付イテハ明治九年四月石川県伺ニ対シ内務卿御指令ノ趣モ有之候得共凡ソ民間普通ノ慣例ニ依レハ婦ハ夫ノ氏ヲ称シ其生家ノ氏ヲ称用スル者ハ極メテ僅々二有之然ルニ右御指令之レアルカ為メ公文上ニ限リ強イテ生家ノ氏ヲ称用セシメサルヲ得スシテ習慣ニ反シ往々苦情モ相聞実際ノ取扱上ニ於テモ錯誤ヲ生シ易キ義ニ付夫家ノ氏ヲ称セシムル方事実適当ナルノミナラス既ニ民法人事編草案第三十六条ニモ婦ハ夫ノ氏ヲ称用云々ト有之法理ニ於テモ然ルヘキ義ト相信シ候ニ付自今夫家ノ氏ヲ称用セシメ候様致度」
さらにコメンテーターの中島岳志北大法学部准教授が、夫婦別姓を立法施策として支持する理由で旧慣習であると主張していたが、旧慣習説がまちがいだということは、上記ブログに書いたとおりである。
一例として源頼朝と北条政子をあげていたが、高橋秀樹という中世史学者の『中世の家と性』山川出版社日本史リブレット2004年http://www.yamakawa.co.jp/product/detail/731で「北条政子」という人名表記はここ数十年で広まり、特に1960年以降一般化したのであって、大正より古い学者が「北条政子」と表記したケースは一例もなく、同時代人は尼御台所、二位尼などと称した。しかも「政子」という実名は、夫頼朝、父時政の没後の叙位に際しての命名なので、頼朝も時政も「政子」という名は知らないということを書いていて、もっとも位記は「平政子」だろうが、「北条政子」は同時代人どころか戦前まで使われたことがないので、夫婦別姓の根拠としてはダメ出しせざるをえない。
なおヤフー知恵袋「北条政子についてなんでもいいので教えてくだい」http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1491409294同時代人がどう指称していたか詳しく書かれてます。
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