巨人スカリア判事死去
13日レーガン任命(1986)の保守派、連邦最高裁スカリア判事死去というニュースを見て驚いている。頭脳明晰なプライバシー権否定の原意主義の裁判官であるが、業績と影響力からみて重量級裁判官だったと評価されている。http://newyork.cbslocal.com/2016/02/13/10-facts-u-s-supreme-court-justice-antonin-scalia/
印象深いのは表現権判例であり、ヘイトスピーチ規制を違憲とした1992年のR.A.V. v. City of St. Paul, Minnesota判決である。スカリア判事法廷意見は社会的に嫌悪される見解をその嫌悪感を理由に禁止することを禁じることが修正一条の根本原理という従来の連邦最高裁の見解をふまえ、人種等の憎悪に基づく表現領域を規制すること自体が違憲であるとし、セントポール市の憎悪表現規制市条例を文面上違憲としたものである。
トランプが集団誹謗とも受け取られる政治的表現で人気を集めているが、彼のように本音のいえる自由な社会であるのは実はスカリア判事の理論も貢献しているのである。
暴力的ビデオ・ゲームの18歳未満の者に販売、レンタルすることを禁止するカリフォルニア州法が合衆国憲法修正1条に反し違憲として叩き潰した2011年Brown v. EMA判決http://www.law.cornell.edu/supct/html/08-1448.ZS.htmlでは
法廷意見のスカリア判事は、修正1条の保護を受けない言論としては猥褻、扇動、闘争的言辞等があるが、動物虐待描写物の頒布等を処罰する連邦法の合憲性が問題とされたUnited States v. Stevens, 559 U.S. 460, 130 S.Ct. 1577 (2010)は、保護されない言論とされる新たなカテゴリーをバランシングによって創設することを求める政府側の主張を斥け、長い禁止の伝統を欠くような保護されない言論を新設することはできないとした。
暴力的表現物への子供のアクセスを制限する伝統はないとしており、例えばグリム童話、ギリシャ神話に暴力的表現があるとする。したがって本件は厳格審査を適用し、暴力的ビデオ・ゲームと害悪の直接の因果関係がないこと、テレビ等の媒体が規制されないことなども違憲判断の理由としている。
保守派は2008年の銃所持の権利の確立を評価している。就任初期の反対意見では女性優遇のアファーマティブアクションが平等保護条項に反するとしたことや、創造科学(進化論否定)教育を合憲とした反対意見も記憶に残る。この人がいて最高裁は左傾化せずバランスがとれていたのである。
最高裁の後任人事が大問題で、オバマの指名する人物がリベラルなら承認は絶対阻止しなければならない。
大統領選挙はきわめて重要になった。今回の共和党の候補は粒がそろっており、トランプ以外ならこの際だれでもよいだろ。ケーシックもクリスティーも州知事として実績がある。ブッシュでも悪くない。女性のフィオリーナでも民主党よりはずっとましだ。
とにかく次の最高裁判事は保守派でないと大変なことになる。
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