入手資料整理183
10989北見郵便局懲戒免職事件第一審 札幌地判昭50・2・26判時771号3頁
「郵便局の庁舎は国の行政財産で郵政大臣が管理するものである(国有財産法三条、五条)。そこで、郵政省設置法四条は「郵政省はこの法律に規定する所掌事務を遂行するため、左に掲げる権限を有すると定め‥‥庁舎などにおける秩序の維持などを図るため郵政省庁舎管理規程がもうけられ‥‥郵便局長を庁舎管理者と定めている‥‥そして、同規程によると、庁舎管理者の許可なく広告物または、ビラ、ポスター、旗、幕その他これに類するものを掲示または掲出したときは、庁舎管理者は、その撤去を命じこれに応じないときはみずから撤去することができる(六条・一二条)‥‥」
これは就業規則に必要だ。
10990★★★北見郵便局懲戒免職事件控訴審 札幌高判昭54・3・29 判タ397号109頁
昭和44年春闘半日ストの実践指導、無断掲出の組合旗撤去作業の妨害、庁内デモ行進中に、管理者を巻き込み傷害を与えたことを理由とする全逓北見支部執行委員長に対する懲戒免職処分を過酷に失し懲戒権の濫用とした第一審を覆し処分を適法とした。
ポイント1 公労法17条1項の「そそのかし、あおり」について具体的に何が該当するかを明示した点
定義「共謀」とは二人以上の者が同条一項前段に定める違法行為を行なうため、共同意思のもとに、一体となった互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をすること
「そそのかし」とは、同法一項前段に定める違法行為を実行させる目的をもって、他人むに対し、その行為を実行する決意を新たに生じさせるに足りる慫慂行為をすること
「あおり」とは、右の目的をもって、その行為を実行する決意を生じさせるような、またはすでに生じている決意を助長させるような勢のある刺激を与えることをいうものと解する。
1 ストライキに突入する旨の連絡行為
共謀にはあたらない
2ストライキ実施指令の伝達行為
あおり、そそのかしに当らない
3ストライキを実施する旨の発言
あおり、そそのかしに当らない
4ストライキ参加者に対する激励の演説
あおり、そそのかしに該当する
ストライキ総決起大会自体ストライキ参加予定者のストライキ参加意思を鼓舞し、その闘争意思を堅固にさせる目的で開催され‥‥ストライキ参加者予定者の志気を昂揚、鼓舞し参加意思を強固にするためのもの
5ストライキ参加者に対する宿泊待機指示と同宿
あおり、そそのかしに当らない
6ピケ張りの実践、指導
ピケ張りの指示は、郵便業務の正常な運営を阻害する行為をあおり、そそのかしたものと認める
7ストライキ参加者に対する隊列行進の誘導
あおり、そそのかしに該当する
8ジグザグデモ行進の指導と実践
あおり、そそのかしに該当する
9集会の際のシュプレヒコールの音頭
右行為は、組合員の団結力を管理者に対して誇示するとともに、本件ストライキに参加した全逓の組合員の志気を鼓舞するものであるから‥‥あおったことに該当する。
ポイント2 組合支部執行権が停止されても、支部役員にスト責任がある。
全逓では支部役員にスト責任を負わせないため、支部執行権を停止し中央委員会が派遣する機関役員に権限移譲する方法がとられていたが、この方式でも、支部役員が実際にストを実践指導した場合、その責任は免れないと判示した。
「‥‥被控訴人Xは、本件ストライキは直接的には全逓中央執行委員長の指令二三号に基づいて全国統一闘争として行なわれたものであり、その闘争方法等については全国戦術委員会で全逓自身決定したものであり、更に、具体的には中央委員会のスト指令によって北見支部の執行権が停止され、中央委員会が指名する実施責任者のみがストライキ実施の一切の権限と責任を有し、被控訴人Xは、単に右指令や実施責任者の指示により一組合員として当然なすべきことをなしたまで‥‥‥と主張する。
しかしながら、本件のストライキは、公労法一七条一項前段の禁止する同盟罷業その他業務の正常な運営を阻害する行為である‥‥から、中央執行委員長の指令二三号が違法な行為の指令であったのは明白であるというべく、従って全逓の組合員としては法的にかかる指令に従う義務はなく、またこれに従うべきでもないから、本件ストライキが全国統一闘争として全逓組合の決議に基づき組合の意思として行なわれたものであるとしても、これに参加しこれを積極的に推進し、指導し、もしくは拠点指定を受けた局所において、具体的な実力行使を指示し、組合員を鼓舞した拠点局の支部組合の委員長が違法行為者としての個人責任を免れえるものではないというべく、ただ上部機関の指令に基づいたことにより、その違法行為の責任の評価の軽重の差が生じるにすぎない‥‥」
10991 明石郵便局事件 神戸地判昭54・12・13 訴務月報26巻3号
昭和43年4月25日全逓の賃上げを目的とした半日ストに参加し最低2時間49分~最高3時間59分にわたり欠務した郵政職員に対する減給1ヶ月俸給月額10分の1ないし戒告処分を適法とした。
10992 都南自動車教習所事件 横浜地判平7・30 労判755号66頁
会社側からの三六協定締結拒否が不当労働行為ではないとされた例
10993★★河上和雄「施設管理権と組合活動としてのビラ貼付」『季刊公企労研究』41号1979年
国労札幌地本判決の意義について「憲法28条により労働基本権が認められているとはいえ、憲法29条の認める私有財産制との関連で、労働基本権が私有財産を使用しうる権限となるものではなく、契約その他市民法秩序の上で認められているとはいる権限なくしては務労働基本権の行使として意味を持たないことを明らかにした」
10994判例寸評『季刊公企労研究』41号1979年
動労釧路地本事件第一審判決釧路地判昭64・6・30 いわゆる遵法闘争
全電通荻窪局懲戒処分事件東京地判昭54・9・14
この決まり文句は使える
公労法17条1項が憲法18条又は28条に違反しないこと(東京中郵判決・名古屋中郵判決)、一切の争議行為を禁止し、これに違反して行なわれた争議行為は、刑事法上、民事法上を問わず一律に違法であること。また、公労法3条1項が17条1項に違反する労働争議のうちにもなお労組法7条1項本文の「正当行為」に当るものとそうでないものがあるとする根拠にはならないこと(全逓東北地本判決)
争議行為を原因とする懲戒処分において、組合の役職員は、特段の事情がない限りその地位に応じて争議の実現に寄与したものと推認される。
全林野西条営林署事件控訴審判決 大阪高判昭54・12・7、全電通ビラ貼り事件控訴審判決仙台高判昭55・1・24
10995木藤繁夫「違法なビラ貼り目的と建造物侵入罪の成否 仙台高裁昭和55年3月18日判決
« 重ねてヘイトスピーチ対策法案に反対 | トップページ | ニューヨークはトランプリードだが »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 入手資料整理192(2019.01.13)
- 入手資料整理191 (2016.10.02)
- 『ハーバードの心理学講義』を読んで(2016.08.02)
- 入手資料整理190(2016.07.17)
- 入手資料整理189(2016.06.19)
コメント