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2016年6月の10件の記事

2016/06/24

EU労働時間指令を廃止しないかぎり欧州に未来はない(再掲)

 2010/05/29のブログの再掲である。

  28日付産経新聞の「財政不安の欧州各国、超緊縮財政策を加速 」という記事を読んだがhttp://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100527/fnc1005272151020-n2.htm、EUのファンロンパイ大統領(首脳会議常任議長)は「欧州はこれまで以上に勤勉に長時間働かなければならなくなるだろう」と指摘しているとのコメントが印象に残ったが、これはとりも直さず「EU労働時間指令」によってヨーロッパ諸国が長時間労働を禁止していることに問題の一つがあると考える。

 EU労働時間指令http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2005_5/eu_01.htmとは、1993年に制定され、2000年に改正された。指令は、1)24時間につき最低連続11時間の休息期間を付与、2)6時間を超える労働日につき休憩時間を付与(付与条件は加盟国の国内法や労使協定で規定)、3)7日毎に最低連続24時間の週休及び11時間(1日の休息期間)の休息期間を付与、4)1週間の労働時間について、時間外労働を含め、平均週48時間以内の上限を設定(算定期間は4カ月)、5)最低4週間の年次有給休暇を付与。というものだが、例外規定があり、イギリスとマルタで適用されている。

 つまり、EU労働時間指令について新自由主義政策をとるイギリス保守党メジャー政権が激しく抵抗したため、結果として例外規定として週48労働時間の上限の免除を受けるかどうかについて個々の労働者が選択するオプト・アウト制度を勝ち取っている。イギリスは、EUに加盟しながらも、本来、加盟国の義務であるユーロの導入や労働時間指令についてオプトアウト(適用除外)の権利を獲得し、 欧州大陸諸国と一線を画してきた。

   保守党政権ではEU労働時間指令を受け容れず、一律の労働時間規制はなかったが、労働党ブレア政権によりEU労働時間指令を受け容れた。つまり、労働時間は週平均48時間を超えてはならないする「1998年労働時間規則」を設けたが、しかしながら同時に労働者により署名された書面による個別的オプト・アウトの合意により、法定労働時間規則の適用を免除する制度も設けた。2004年の『海外労働情報』によると使用者側のあるアンケート調査では、759社中65%の企業が、自社の従業員(一部または全部)にオプト・アウトに同意するよう求めているほか、CBI(イギリス産業連盟)の調査では、英国の労働者の33%が同意書にサインしており、事実上労働時間指令はイギリスでは空洞化しているとされている。イギリスの金融危機まで16年間の景気拡大は、オプト・アウト制度のおかげだと私は思う。

  EU15カ国において週48時間以上働いているフルタイム雇用者は5%以下であるが、イギリスはその数字が20%を超えている。http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2005_5/eu_01.htmというように労働時間に大きな違いが出ているのである。

   私は、労働時間規制というものが、そもそも雇用契約の自由に反し、営業の自由に反するものとして反対だがイギリスの戦略が正しかったといえる。

    『労働法律旬報』1716号2010年3/25シンポジウム「非正規労働者の権利実現会議」で脇田滋龍谷大学教授の発言をみると、イタリアはのんびりして良い、イタリアでは憲法で年次有給休暇を放棄してはならないと決められている。イタリアには軍人以外、配転慣行がなく、解雇もないのでのんびり働いている。イタリアをモデルとして人生を楽しむ社会にしたいなどということを語ってますが、ユーロ危機を認識しているのだろうか。

 時短、育児休暇、子ども手当などヨーロッパのやり方をモデルとする社会福祉政策にはろくなものがない。ユーロ危機がこれほど明らかになっているのだから、もう欧州礼賛はやめるべきだ。

    「勝間和代のクロストーク」「最低賃金 1000円に増額」2009109http://mainichi.jp/select/biz/katsuma/crosstalk/2009/01/post-7.htmlでは、我が国においてもEU労働時間指令と同様の週48時間の労働時間規制を実施すべきだとしている。ただでさえ、日本の労働生産性がOECD加盟国の中で中位にとどまっており、とくに非製造業部門の生産性が低いこと、林=プレスコット説において、90年代に進められた時短が失われた10年の要因だと指摘されているにもかかわらずである。EU労働時間指令なんかやったら、もはや我が国の経済成長は望めない三等国になるしかない。

    さらに政府は少子化対策という名目の、労働時間の抑制や有給休暇の完全消化などワークライフバランス政策を推進しているが、ヨーロッパに倣ってろくなことはないのである。民主党はドイツの会社法に倣って従業員代表を監査役に選任することを義務づけるになどの公開会社法の制定を狙っている。これは株主資本主義をやめて欧州型のステークホルダー資本主義、労働者管理型企業にしようとする方向と説明されている。http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51341659.html、そうなると我が国は経済自由主義ではなくなり、没落する欧州と同じような停滞してつまらない社会になる。

   もうヨーロッパに倣う政策はやめよう。PIIGSとかいってるが私はドイツやフランス、北欧も嫌いなのだ。

 

 

 以上が引用である。

 

   リーマンショックまでのイギリスは16年景気が拡大し経済が好調だったのは、EU労働時間指令に拘束されないオプト・アウト制度の活用により、週48時間規制等の労働時間規制からのがれることができたからである。リーマンショック後の経済は他の先進国に比べ好調といわれている。わが国のような長期低迷経済とは違うのである。

   オプト・アウト制度の活用というとだけでも、日本も含めた外国からの投資を呼び込む要因だったのである。

    そもそもイギリスのコモンローは、17世紀に勤勉に働くこと奨励することがパブリックポリシーと宣言し、営業の自由を重視してきた。1960年代まで労働組合が強かったが、ボランタリズムの伝統から、政府の干渉を嫌う土壌があって、協約自治の発達した大陸欧州とは労働法制のありかたが根本から違うのである。

    むろんオプトアウト制度を勝ち取っているからEUに残留してもよかったのであるが、、今回、離脱派が予想外(23日夜のブックメーカー大手のオッズは残留派勝利85%だった)の勝利の背景として、BSの報道では、経済が他の先進国より良いので、独立してもやってけるという国民の自信のあらわれといっていたのが印象にのこった。

   働かない主義の典型であるEU労働時間指令に拘束される国とは違うということである。いまでもコモンローの精神、プロテスタンティズムと資本主義の精神が生きているということで、大陸欧州より健全なのである。

   沈み行く船であるEUから離れた方が中長期的にはイギリスの競争力は高くなるというエコノミストの解説もきのう民放のニュースもみた。

 

   ところが、わが国は、安倍政権の一億総活躍プランのひとつとして、EU労働時間指令のような規制をおこなって長時間労働をやめさせることを検討するとしており政治日程になっている。

   沈んでいくEUに倣っていたんじゃわが国の競争力は低下する。まったくおろかというほかない。ビジネスフレンドリーでまったくない政策だ。

   たまたま、きのう共産党のビラを情報収集のため街中で受け取ったが、そこに残業時間規制と、翌日の始業まで最低11時間の休憩時間というEU労働時間指令と同じ内容があった。

   スティーブ・ジョブズの逸話として「マッキントッシュ」の開発メンバーは、「週80時間労働、それがうれしい」と大書されたTシャツを着させられて仕事に臨んでいた。それくらいで熱中しないと知識労働者は業績をあげることは難しいということだ。11時間のインターバル規制なんかできたら、知識労働者がアジアのよその国に中国とかへ逃げちゃうから、日本は技術革新できない停滞した国になるはず。

 

   自民党の安倍政権と共産党が同じ政策なのである。与党も野党も社会民主主義的なEUにならう政策を出しているということは、わが国の政治の選択の幅が狭い選挙を行っているということである。これは私にとってもっとも不満なことである。

   そういう意味ではEU労働時間を労働党政権でも全面的にうけいれなかったイギリスの政治基調は新自由主義にあり、今回の国民投票でEU離脱という大胆な選択を国民がとったというこからイギリスの自由主義はまだ健全であるとの心証をもった。

 

2016/06/22

非嫡出子相続分差別違憲判決の対抗措置ということなら反対はしない

 朝刊でみたhttp://www.sankei.com/affairs/news/160621/afr1606210033-n1.html法制審議会民法(相続関係」部会中間試案の配偶者の遺産相続拡大、結婚20~30年の夫婦は現行2分の1から3分の2にするなどの案だが、八木秀次氏が、『正論』の記事で非嫡出子相続分違憲判決の対抗措置として検討していくことになる云ってたように記憶している。基本的は私は民法とか刑法とか法律を安易に変えることを好まない主義だが、嫡妻への相続を増やす意味が、家業の継承や非嫡出子への流出を減らすためという趣旨で合理性があるなら特に反対はしない。

2016/06/19

地方公営企業職員の争議行為及び争議付随行為に対してどのような責任追及ができるか(下書)その2

その1 http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-d28c.html
目次
(Ⅱ)争議行為それ自体、もしくは争議行為に際して付随して行われた犯罪構成要件該当行為は刑事責任を免れない
一 争議行為禁止の合憲性をめぐる判例の変遷
(一)第一期 三鷹事件判決から檜山丸事件判決
1.三鷹事件最大判昭30・6・22刑集9-8-1189
2.国鉄檜山丸事件最二小判昭38・3・15刑集17-2-23 
(二)第二期 全逓東京中郵事件判決から全司法仙台事件・都教組事件
1.全逓東京中郵事件最大判昭41・10・26刑集20-8-901
(1)判旨
(2)特色
A合憲としつつも労働基本権を制限するための条件をかなり絞っている
B違法性二元論
C可罰的違法論
(3)悪影響
2.都教組勤評事件 最大判昭44・4・2刑集23-5-305
(1)判旨
(2)二重の絞り論
3.全司法仙台事件 最大判昭44・4・2刑集23-5-685
(1)判旨
(2)趣旨反対結論同意意見
    (今回ここまで)
(Ⅱ)争議行為それ自体、もしくは争議行為に際して付随して行われた行為が犯罪構成要件該当行為であれば刑事責任を免れない
一 争議行為禁止の合憲性をめぐる判例の変遷
 エグゼクティブなら周知の事柄であり説明不要だろうが平場の議論なので段取として一応コメントしたうえで本論に入りたい。
 国公法・地公法・旧公労法等により、公務員や公企体等職員の争議行為を禁止していることと、憲法28条の労働基本権保障との関係での最高裁判所の判断は、合憲としている点では一貫している。
 ただし禁止・制限の制約原理を何に求めるか、制約の根拠・条件について、顕著な判例の変遷があり、第一期(全面的合憲)、第二期(限定的合憲)、第三期(全面的合憲)と段階を区分して説明するのが通例である。
 私は従来、掘り下げることがあまりなかった、第二期から第三期への転換期となる国鉄久留米駅事件方式(東京中郵判決を判例変更せず、可罰的違法論を実質的に排除した段階)の判例の意義が重要であると考えるので、転換期の判例についても解説する。
 ただ本稿は実務目的のため、立法の沿革や合憲論議の詳細には踏み込まず。労働刑事事件に絞って取り上げ、民事事件(懲戒処分取消訴訟)は別途取り上げることとする。

                                                            
(一)第一期 三鷹事件判決から檜山丸事件判決まで
1.三鷹事件最大判昭30・6・22刑集9-8-1189
「日本国有鉄道職員が公労法一七条により争議行為を禁止されても、憲法二八条に違反しない」とした。
2.国鉄檜山丸事件最二小判昭38・3・15刑集17-2-23
 公労法違反の争議行為が罰則に触れる場合、犯罪の成否について、公共企業体等の職員は、労働組合法一条二項(刑事免責)を適用されないとし、組合員が職場集会の指令点検、指導のため当局の制止を振り切り青函航路車両船檜山丸に乗船したことについて、艦船侵入罪(刑法130条)の成立を認めている。
「公労法一七条一項によれば、公共企業体等の職員は、同盟罷業、怠業その他業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができないと規定されている。そして、国家の経済と国民の福祉に対する公共企業体等の企業の重要性にかんがみ、その職員が一般の勤労者と違って右のような争議行為禁止の制限を受けても、これが憲法二八条に違反するものでないことは、すでに当裁判所の判例の趣旨とするところである〔昭和30年三鷹事件大法廷判決』。かように公共企業体等の職員は、争議行為を禁止され争議権自体を否定されている以上、その争議行為について正当性の限界如何を論ずる余地はなく、したがつて労働組合法一条二項の適用はないものと解するのが相当である。」と判示した。
 
(二)第二期 全逓東京中郵事件判決から全司法仙台事件・都教組事件等
(左傾化した司法による相対的合憲論、可罰的違法論によって刑事罰からの解放を目論む)
 
1.全逓東京中郵事件最大判昭41・10・26刑集20-8-901
 
 昭和33年春闘において被告人全逓役員8名が従業員多数に「勤務時間内食いこみ職場大会」に参加するよう説得した結果、38名が応じ2時間40分から6時間職場を離脱し郵便物の取扱いをしなかったことが、郵便法71条1項の罪の教唆罪に当たるとされ公訴を提起した事件で、一審無罪、控訴審は檜山丸事件判決を引用し一審を破棄したが、大法廷は8対4で破棄差戻しの判決を下した。
 (1)判旨
 公共企業体等職員の争議行為を禁止した公労法17条1項は憲法に違反しないが、公労法17条1項に違反する争議行為にも労組法1条2項(刑事免責)が適用される。公共企業体等の職員のする争議行為について労組法の適用1条2項の適用を否定し正当性の限界のいかんを論ずる余地がないとした第二小法廷の判例〔檜山丸事件〕は、変更すべきものと認める。
  理由は「関係法令の制定改廃の経過に徴すると‥‥憲法の保障する労働基本権を尊重し、これに対する制限は必要やむをえない最小限度にとどめるべきであるという見地から‥‥刑事制裁は、正当性の限界を超えないかぎり、これを課さない趣旨であると解するのが相当である‥‥。争議行為禁止の違反に対する制裁としては解雇と損害賠償とが定められているが、その違反が違法だというのはこれらの民事責任を免れないとの意味である‥‥。
 したがって、争議行為が‥‥政治的目的のために行われた場合とか暴力を伴う場合とか社会の通念に照らして不当に長期に及ぶときのように国民生活に重大な障害をもたらす場合のような不当性を伴わないかぎり〔いわゆる三つの場合〕刑事制裁の対象とならない。」とした。
(2)特色
 特徴を要約すれば次の三点に要約できる。
A合憲としつつも労働基本権を制限するための条件をかなり絞っている
 「『公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない』とする憲法一五条を根拠として、公務員に対して右の労働基本権をすべて否定するようなことは許されない。ただ、公務員またはこれに準ずる者については、後に述べるように、その担当する職務の内容」に応じて、私企業における労働者と異なる制約を内包しているにとどまると解すべきである。」とし、公共企業体職員が労働基本権を制限する根拠として「国民生活全体の利益の保障」の内在的制約を掲げ、労働基本権を制限するための四条件として(1)労働基本権の制限は、合理性の認められる必要最小限度のものにとどめなければならないこと、(2)労働基本件の制限は、当該職務の停廃が国民生活に重大な障害をもたらすおそれのあるものについて必要やむを得ない場合に限り考慮すべきこと、(3)労働基本件権の制限違反に刑事罰罰課することしについては、慎重でなければならないこと。(4)労働基本権の制限する場合には代償措置が必要であることを指摘した(永井敏雄埼教組事件調査官解説)。
B違法性二元論
 多数意見は「憲法上の正当性を画する基準として民事上の違法と刑事上の違法を区別する違法性二元論の立場」をとる(臼井1977b)。
  そして刑事制裁の対象となるのはいわゆる三つの場合に絞られるとした。
C可罰的違法性論
臼井滋夫最高検検事は本判決をこう要約する。
「公労法の違法はその強さにおいて、解雇、損害賠償などの法的効果に結びつくものの、刑罰法規の予定する違法の程度に達してないと解するかぎり‥‥公労法17条1項はその合憲性を保ちうる」(臼井1976)
 中野次雄調査官解説は次のように要約する。
 多数意見は「公労法17条1項に違反して争議行為をしても、そのことのゆえをもって刑罰を科せられるべきではなく、したがってその行為がなんらかの刑罰法規に触れても違法性を阻却すると解すべきだと判示した。これは藤木英雄東大教授が説いた行為の違法性の相対性の考え方によっている。」
 つまり全逓東京中郵判決は、刑事制裁の対象となる争議行為を三つの場合①政治スト、②暴力を伴う、③長期に及ぶなど国民生活に重大な支障をもたらす場合に限定しているのであり、違法性の強弱・程度違法性阻却の問題としてとらえる考え方を示している。
 特に松田二郎裁判官の補足意見は「公労法上違法であるとしても、争議行為として正当な範囲内と認められるかぎり、右の違法性は、刑罰法規一般の予定する違法性、すなわち過罰的違法性の程度には達していないものと解すべきである」などと、違法争議行為でも、正当性を論ずる余地があるという労働組合を増長させる見解を示し、これは、一種の違法性段階論を基盤とする可罰的違法論にあり、藤木刑法学説の影響とみられる。
 可罰的違法性論は一般的には「構成要件に該当すると認められる行為のうち、当該行為の予想する可罰的程度に達しない行為は犯罪でないとし刑事責任を否定する見解」、「違法性の相対性・段階性を前提とする理論」(岡野1974) とされるが、労働法理念の正当化のために労働争議ならある程度の有形力行使の違法性阻却はなされて当然だとの悪しき風潮をもたらした。もとを辿ればそれは藤木英雄東大教授の悪質な刑法学説だといわなければならない。
 もっとも、東京中郵事件は単純不作為の同盟罷業(ウォーキングアウト)にすぎず、積極的な業務阻害行為はなかったから、過罰的違法性論を採用しやすい事案だったとはいえる。
 しかしながら中郵判決多数意見の思想の基盤にある藤木学説というものはその程度のものではない、ある程度の積極的な業務阻害、就労妨害を是認し、市民法的法益は侵害されて当然とするものであって、事実上、階級的でミリバントな労働運動を支援する学説だった。
 昭和30年代から40年代にかけて主として下級審においてスクラムや実力ピケを正当な行為として無罪とする判決が続出たのも、可罰的違法性論が司法判断に影響を及ぼし、犯罪構成要件の判断を縮小したり構成要件を曲解する傾向、外形的には構成要件に該当する行為があっても被害が軽微であるとか、許容されている限界を逸脱していないなどとして、刑事罰の対象としない判断を助長したためである。 
 藤木教授は労働刑法での違法性概念について「労働権の保障の結果それと矛盾する限度で財産権に対する保障が後退するのは当然のこと」「通常の一般市民間でなされた場合に威力ないし脅迫にあたる行為であっても、労働争議という実力闘争の場において常態を逸脱しない‥‥程度の行為については‥‥威力あるいは脅迫にあたらないとして構成要件該当性を否認することにより問題を処理することが許されよう」と述べたわけである。(藤木1967 81頁)私はこのように市民法秩序の軽視する理論は全く反対である。
 また藤木教授はピケッティングについて、「組合員であって争議から脱落した者は‥‥統制力の行使として、緊急の場合、スクラムによる絶対阻止が許される」「組合の組織の防衛をはかる目的で、会社のために就労しようとする者を‥‥強力な威力行使によって、その通行の最終的な阻止を試みることは‥‥場合によっては合法」としてスクラム阻止を容認している(藤木1967 181頁以下)。
 結局、東京中郵判決は司法を左傾化させた悪質な学説を思想の基盤にしているため、筋の悪い判断と評価せざるをえないのである。
 (3)悪影響
 本判決は、争議権の保障・制約=労働基本権の保障・制約という前提に立っており(臼井1976)社会に与えた影響は大きかった。争議行為の民事免責を否定しているとはいえ、適用を認めた労組法1条2項は「団体交渉その他の行為であって‥‥正当なもの」と規定し、刑法35条の適用があるという形式をとっている。刑法35条は法令または正当業務行為の違法性阻却を認めた規定である。したがって禁止とされている争議行為であっても公共企業体等労組の正当業務行為として認知されたように理解された。
 労働側弁護士の新井章が争議行為の「権利性」を確認した判決と評しているとおりである(新井1975 119頁以下)
 労働組合や職員団体は41年の中郵判決及び44年の都教組事件・全司法事件判決を錦の御旗として、公然と争議行為を行うようになり、スト権奪還をするようになった。
 それまでは勤務時間内職場集会、時間内くい込み行動、順法闘争、安全闘争など称し争議行為という言葉を避けていたが、ストライキとしてこれらの行動を行うようになったのである(高島1979)。
2.都教組勤評事件 最大判昭44・4・2刑集23-5-305
 都教組幹部は、東京都教育委員長が文部省の企図する勤務評定規則案を上程する動きに出たため、これに反対する日教組の行動方針にもとづき、組合員に対して昭和33年4月23日に一斉に休暇届を提出し、勤務評定反対行動をとるよう指令した。組合員約2万4千人は、この指令に従った行動を行った。組合幹部らによる指令の配布伝達行為は地方公務員法違反として起訴された。一審無罪、控訴審地方公務員違反(あおり)罪、大法廷は9対5で破棄無罪。
(1)判旨
       
地方公務員法37条、61条4号は憲法に違反しない。しかし、被告人らが組合の幹部としてした闘争指令の配布、趣旨伝達等、争議行為に通常随伴する行為については、地方公務員法61条所定の刑事罰をもってのぞむことは許されない。
 その理由は 
「これらの規定(地公法37条、61条4号)が、文字どおりに、すべての地方公務員の一切の争議行為を禁止し、これらの争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、あおる等の行為をすべて処罰すると解すべきとすれば、それは、公務員の労働基本権を保障した憲法法の趣旨に反し,必要やむをえない限度をこえて争謎行為を禁止し、かつ、必要最小限度にとどめなければならないとの要請を無視し, その限度をこえて刑罰の対象としているものとして、これらの規定は、いずれも、違憲の疑を免れないであろう。しかし…地公法61条4号は、争議行為をした地方公務員全体を処罰の対象とすることなく、違法な争議行為のあおり行為等をした者にかぎって、これを処則することにしているのである…ただ、それは争議行為自体が違法性の強いものであること前提とし、そのような違法なあおり行為等であってはじめて,刑事罰をもってのぞむ違法性を認めようとする趣旨と解すべきである。」
(2)二重の絞り論
      
 争議行為に許容的な全逓東京中郵判決と軌を一にし、その論理をさらに推し進めた。その象徴が14名中7名の裁判官による「あおり行為等」の意義につき「二重の絞りの論」である(多数意見を構成してはいないが有力な見解として示された)。
「二重の絞り」とは「あおり行為等」の目的となる争議行為につき
①政治目的など職員団体の本来の目的を逸脱してなされるとか、暴力その他これに類する不当な圧力を伴うとか、社会通念に反して不当に長期に及ぶなど国民生活に重大な支障を及ぼすとか等違法性の強いもの
②あおり行為それ自体においても、争議行為に通常随伴する行為のごときは除外され、それ以外の違法性の強いもの
 という二重制限的要件がなければ刑事制裁できないというものである。なり強い違法性のある争議行為、態様でないと刑事制裁は不可能にする趣旨である。

3.全司法仙台事件 最大判昭44・4・2刑集23-5-685
 事案は、昭和35年6月4日全国税労組中央執行委員長で税務署職員であった○○が、全司法労組仙台支部が岸内閣による新安保条約、国会での強行採決に反対するため、仙台高裁前広場に於いて勤務時間にくいこむ職場集会を開催するにあたり、裁判所職員でなく、かつまた裁判所職員の団体に関係ない○○(全国税労組委員、税務職員)、裁判所職員であり、同支部執行委員長の職にあった○○らと共謀のうえ、同支部分会役員に対し、その職場大会の参加協力を要求し、または裁判所職員に対しその職場大会に参加するよう慫慂・使唆した。原判決は限定解釈しつつこの点について有罪とした。大法廷は上告棄却(多数意見13(趣旨反対結論は同意5)、反対意見1)。
(1)判 旨
 国家公務員法98条5項((昭和40改正前現98条2項)110条1項17条は憲法に違反しないとしたが、都教組勤評事件と同様、刑罰に処すことは限定的なものでなければ合憲でないとし、14名中6名の裁判官が「二重の絞り論」をとった。
 刑罰に処せる争議行為とは「暴力その他これに類する不当な圧力を伴うとか、社会通念に反して不当に長期に及ぶなど国民生活に重大な支障を及ぼすとか等違法性の強いものであることのほか、あおり行為等が争議行為に通常随伴するものと認められるものでないことを要するものと解すべきである。」とする。
 ただし本件は政治目的の争議行為であったことから違法性が強いとされ、第三者と共謀したことが争議行為に通常随伴する行為と認めることはできないゆえに、原判決の有罪を是認したのである。
 都教組事件と、全司法事件により非現業公務員にも争議行為に許容的判断が示され、司法判断は著しく左傾化した。
(2)趣旨反対結論同意意見
 奥野健一、草鹿浅之介、石田和外(長官)、下村三郎、松本正雄各裁判官は多数意見を批判し「要するに、「あおり」の概念を、強度の違法性を帯びるものに限定したり‥‥または「あおり」の対象となった争議行為が違法性の強いもの、ないし刑事罰をもってのぞむべき違法性のあるものである場合に限り、その「あおり」行為が可罰性を帯びるのであるというが如き限定解釈は、法の明文に反する一種の立法であり、法解釈の域を逸脱したものといわざるを得ない。」とする。
 この考え方が四年後に多数派となり第三期の判例変更をもたらすことになる。
(参考文献)
臼井滋夫
1976「地方公務員の争議行為禁止と刑事罰-全逓中郵事件判決以降の判例の系
譜から見た岩教組事件判決の意義」『法律のひろば』29巻8号
1977a「ピケッティングの正当性の限界」『法律のひろば』30巻4号
1977b 「五・四名古屋中郵事件大法廷判決について-公企体職員の違法争議行
為と刑事罰」『警察学論集』30巻7号
1977c 「公務員等の争議行為をめぐる刑事判例の動向--名古屋中郵事件判決
までの軌跡 」『法律のひろば」30巻8号
1977d「「可罰的違法性論」に対する批判的検討」『警察学論集』30巻7号
 香城敏麿
名古屋中郵事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇昭和52年』
 高島良一
 1979「公企体関係労働判例の一〇年を顧みて」『季刊公企労研究』40号
 中野次雄
東京中郵事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇昭和41年』
永井敏雄
日教組スト事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇平成元年』
岩教組スト事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇平成元年』
埼教組スト事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇平成二年』
中村秀次
2010「刑法総論に関する裁判例資料-違法性及び違法性阻却-」『熊本ロージ
ャーナル』4号2010年」
  藤木英雄
1957「労働争議行為と違法性」『 総合判例研究叢書/(5)刑法 -- 総論/刑
法(8)』
1967 『可罰的違法性の理論』有信堂高文社
 前田雅英
1984 「労働組合役員の他組合員に対する暴行,逮捕行為と実質的違法阻却事
由(最判昭和50.8.27) 」『警察研究』55巻1号 
 横井芳弘
1976「労働事件にみる村上コートの思想と論理」『労働法律旬報』908号

 

入手資料整理189

10093 動労尾久事件最三小決昭49・7・16 刑集28-5-216
柴田孝夫調査官解説
 本件はマスピケ事犯である。動労中央本部は当局の合理化に反対し全国8拠点で昭和38年12月13日19時を基準とする、勤務時間2時間の職場集会(事実上のスト)を指令した。被告人動労本部中央執行委員らは、約350人のピケ隊を組織し、上野発黒磯行525列車(11両編成で乗客約1200人が乗っていた)の尾久駅入構を待ち受け、ホーム一杯に押しかけ、約150人を線路上に降ろして列車の前方軌道上にスクラムを組んで、うずくまることなどし、また乗務員を職場大会に参加させるためその腕を抱えるなどして強いて下車させ、20時頃から20時44分頃までの間列車の発進を不能ならしめた。
 一審は、威力業務妨害罪、共同正犯(刑法234条233条60条)S被告人懲役四月執行猶予二年、他の2名は罰金5千円。東京中郵判決の趣旨に沿い「公労法一七条違反の争議行為であっても、その刑事上の責任については労組法一条二項の適用がある」「当該争議行為が同条第一項の目的を達成するものであって、かつ、単なる罷業又は怠業の不作為が存在するにとどまり、暴力その他の不当性を伴わない場合には、刑事制裁の対象とならない」という基準で違法性を判断し、 所属組合員に対するピケのついて「些細な実力的行動をも許さずとまで解すべきでないことは弁護人のいうとおり(であるが)、本件ピケは(中略)、すでに列車の運行を開始し、有機的な運転管制に服して線区に入り、多数の乗客を乗せた通勤列車を運転中の機関車乗務員に対してなされるものであるから、その時期、場所、方法、態様において制約を受け」るものであるとし、「説得にもかかわらず組合員が就労せんとする場合には、団結による威の域を超えた物理的な力で、就労を妨害することは許されない。」のであるから、「機関車の側方に於いて、その進行を妨げない程度の間隔をおいて集合し、車外から運転室の乗務員に対し団結の示威を背景として職場集会への参加を呼びかける程度」が適法の限界であり、本件は「労組法一条二項所定の正当な組合活動に該当しない」と判示した。
 控訴審も一審の判断をほぼ全面的に是認した。
 最高裁は決定で棄却。ただし一審の違法性判断とは異なり、久留米駅事件方式の違法性判断基準を採用している。
(決旨)
「‥ 右列車の乗務員が前記動力車労働組合所属の組合員であることを考慮しても、被告人らの本件所為は、法秩序全体の見地(‥‥四八年四月二五日大法廷判決‥‥)からとうてい許容しがたい不法な威力の行使による業務の妨害であるというべく、これにつき威力業務妨害罪の成立を認めた第一、二審判決の結論は、相当である。」
10093永井敏雄調査官解説 日教組スト事件最一小平元.12.18 刑集43-13-882
10094  永井敏雄調査官解説 岩教組スト事件 最一小平元.12.18 刑集43-13-1223
10095 永井敏雄調査官解説 埼教組スト事件  最三小平2.4.17刑集44-3-1
10096産経新聞H28・6・17 都職員「公用車は片道。せめてもの抵抗」」

2016/06/15

舛添知事は辞める必要ない

第三者調査はすべて適法である。元検事が事実認定している以上、それ以上詮索する必要はないと思うし、政治家の信義として氏名は明かせないというのは合理的な理由であり十分納得できる。
不適切と指摘された部分もあるが金額は大きくないし、今後は是正するとしている。佐田行革担当大臣とか安倍がかばいつづけた松岡農林水産大臣のなんとか還元水の疑惑よりもはるかに金額は小さいのではないか。
こんなことで東大法学部出のエリートが失脚するなんて考えられないことだ。
号泣県議と同じだとかひどいことを言っている人がいるがとんでもない。号泣県議はカラ出張で実際に特急に乗って城之崎に言ってない、領収書もない。 実際に使っているし領収書もあるのとは全然違うのである。
セコイだの、ケチだのネコババだの人格攻撃はひどすぎると思うし、メディアの人格攻撃に世論が乗せられている感じがする。給与は返上する、絵画は手放す、気に入ったお風呂があるのに湯河原の施設も手放す、スッテンテンになると言っているのだから、許容すべきだと思う。
美術館巡りや書道の趣味も悪くないと思うし、これほど文化、芸術に明るい知事はそういないと思う。

2016/06/12

入手資料整理188

10090 国労久留米駅事件差戻後控訴審福岡高判昭52・10・25判時884号
 久留米駅事件方式という判断基準で著名な大法廷判決の差戻後高裁判決である。。
 事案はマスピケ事犯で、国労門司地本は、年度末手当増額支給等のため昭和37年3月31日に指令職場(八幡駅及び久留米駅)で勤務時間内し2時間の職場集会を実施することとし、組合員に動員を指令した。
 3月30日、久留米駅長の禁止に反し国労組合員40~50名が久留米駅東て子扱所に立入り、2階信号所に通じる階段でピケットの配置についたため立錐の余地のなく占拠される状態となった。
 同扱所は、列車の正常かつ安全な運行を確保するうえで重要な施設であり、駅長は主席助役を赴かせ、携帯マイクでピケットの退去を要求した。又、国鉄当局現地対策本部(本部長は門司鉄道管理局営業部長)の命を受けた鳥栖公安室長は、退去に応じないときは鉄道公安職員によって実力で排除する旨の警告を行ったが自発的に退去しなかったため、30日午後8時20分頃鉄道公安職員約60名に実力で排除するよう命じた
 被告人3名の国労役員は、禁止されている東て子扱所に立入り、国労組合員数名と共謀のうえの職務執行中の鉄道公安員に対し2階信号所の窓からバケツや洗面器に入れた水を浴びせる暴行を行ったことが、建造物侵入罪、公務執行妨害罪に当たるかというものである。
 原判決の一審福岡地裁久留米支部判決昭41・12・14は被告人3人について建造物侵入について有罪(共同正犯、刑法130条、60条)としたが、公務執行妨害については、鉄道公安職員が法律上許容された限度を超えた著しく強度の実力を用いたため、職務執行行為が違法として無罪の判決を下した。
 旧第二審福岡高裁昭43・3・26は、昭和41年の全逓東京中郵判決における公労法17条違反の争議行為につき争議行為につき「政治目的のためにおこなわれ行われた場合、暴力を伴う場合、社会通念上不当に長期に及ぶなど国民生活に重大な障害をもたらす場合には正当性の限界を超えるものとして刑事制裁を免れない」という基準に従い、本件争議行為は不当性を伴うものではなく、刑事制裁の対象にならない場合にあたるとし、東て子扱所への被告人の立入りも、その他国労組合員による侵入占拠も、違法又は不当視できない争議行為の一環として行われたもので、建造物侵入を無罪、鉄道公安職員に水を浴びせたことも暴行とはいえないとして、公務執行妨害も無罪として、一審の有罪部分を破棄した。
 上告審、最大判昭48・4・25刑集27-3-419は破棄差戻(多数意見8、諸反対意見5)
(判旨)
(建造物侵入罪について)
 「被告人ら三名は、いずれも管理者たる○駅長の禁止を無視して‥‥それぞれ信号所に立ち入つたものであるから、いずれも人の看守する建造物に看守者の意思に反して侵入したものといわなければならない。ところで、勤労者の組織的集団行動としての争議行為に際して行なわれた犯罪構成要件該当行為について刑法上の違法性阻却事由の有無を判断するにあたつては、その行為が争議行為に際して行なわれたものであるという事実をも含めて、当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判定しなければならないのである。これを本件について見るに、信号所は、いうまでもなく、列車の正常かつ安全な運行を確保するうえで極めて重要な施設であるところ‥‥被告人○は、当局側の警告を無視し、勧誘、説得のためであるとはいえ、前記のような状況のもとに、かかる重要施設である久留米駅東てこ扱所二階の信号所の勤務員三名をして、寸時もおろそかにできないその勤務を放棄させ、勤務時間内の職場集会に参加させる意図をもつて、あえて同駅長の禁止に反して同信号所に侵入したものであり、また、被告人○および同○は、労働組合員ら多数が同信号所を占拠し、同所に対する久留米駅長の管理を事実上排除した際に、これに加わり、それぞれ同所に侵入したものであつて、このような被告人ら三名の各侵入行為は、いずれも刑法上違法性を欠くものでないことが明らかであり、また、このように解して被告人ら三名の刑事責任を問うことは、なんら憲法二八条に違反するものではない」
(公務執行妨害罪について)
「鉄道公安職員は、必要最少限度の強制力の行使として、信号所階段、その付近、同所内にいる労働組合員らに対し、拡声器等により自発的な退去を促し、もしこれに応じないときは、階段の手すりにしがみつき、あるいはたがいに腕を組む等して居すわつている者に対し、手や腕を取つてこれをほどき、身体に手をかけて引き、あるいは押し、必要な場合にはこれをかかえ上げる等して階段から引きおろし、これが実効を収めるために必要な限度で階段下から適当な場所まで腕をとつて連行する等の行為をもなしうるものと解すべきであり、また、このような行為が必要最少限度のものかどうかは、労働組合員らの抵抗の状況等の具体的事情を考慮して決定すべきものである。
 このような法令解釈のもとに本件の状況を見るに‥‥鉄道公安職員らは、再三にわたつて労働組合員らの退去を促し、退去の機会を与えたが、これに応じなかつたため、やむなく、労働組合員らの手を取り、引張る等、実力を用いて排除にかかつたというのであり、さらに、記録によれば、被告人らが前記のように二回にわたる実力行使の際に鉄道公安職員らに対しバケツで水を浴びせかけたのは、単に数杯の水を浴びせかけたというものではなく、原判決も一部認めているように、寒夜それぞれ数十杯の水を浴びせかけ、そのため鉄道公安職員らのほとんどが着衣を濡らし、中には下着まで浸みとおつて寒さのため身ぶるいしながら職務に従事した者もあり、ことに第二回の投水の際には石炭がらや尿を混じた汚水な浴びせかけたというものであつたこと、また、右排除行動にあたつて負傷者が出たのは単に原判決の認めるような労働組合側の者だけではなく、労働組合員らの抵抗等により鉄道公安職員側にも負傷者が出たことがうかがわれるのである。‥‥鉄道公安職員らの本件実力行使は必要最少限度の範囲内にあつたものと認める余地があり、もしそのように認められるとすれば、鉄道公安職員らの排除行為は、適法な職務の執行であり、これを妨げるため二階信号所から鉄道公安職員らに対しバケツで水を浴びせかけた被告人らの所為は、公務執行妨害罪を構成するものと解されるのである。」
 差戻後控訴審福岡高判昭52・10・25は、一審の判断一部破棄、一部棄却。
 被告人3人の建造物侵入を有罪とする一審の判断を維持したうえ、一審では無罪だった公務執行妨害について、鉄道公安職員による本件強制力の行使はかなり強度のものというべきであるが、組合員らとの抵抗との関連における相対的な力として動的に観察すると、一方的に強力なものではなく、むしろ必要最小限のものであったと認めるのが相当であり、適法な職務執行と認むべきとして、被告人のうち2名は、職務執行中の鉄道公安員に対し、2階信号所窓から、数十回にわたりバケツなどで水を浴びせかける暴行を行ったとして、懲役三月(執行猶予二年)と判決し、1名は水かけ行為をしていないとして控訴棄却した。
 10091 香城敏麿 国鉄松山駅事件(最二小判昭53・3・3刑集32-2-159)調査官解説
 被告人Aは国労四国地本執行委員長、Bは四国地本書記長、Cは四国地本執行委員であるところ国労組合数百名と意思を通じ、昭和37年3月31日午前3時40分から約2時間にわたり、松山駅構内での列車の運行を阻止するため、組合員数百名を指揮し、上り2番線路上に機関士甲が乗り込んで発車すへく待機中の準急列車の前方線路上に集合して立ち塞がり、再三の立退き要求にも応じず、27分間乗務員による発進を不能にした。
 一審松山地判昭43・3・26、被告人らの行為は威力業務妨害罪に該当するとしつつも東京中郵判決に示したところに従い、公労法17条1項違反の争議行為であっても労組法1条2項の適用であり、本件行為は刑事制裁を加えなければならないほどの反社会性を有しないので違法性を欠くとし無罪。
 原審(控訴審)高松高裁46・3・26も一審の判断を是認した。
 上告審判決は破棄自判、威力業務妨害罪、共同正犯(234条、233条、60条)
 (判旨)
「原判決及び第一審判決は、いずれも東京中郵事件判決に示されたところに従い、公労法一七条一項違反の争議行為であつても労組法一条二項の適用を受けるものと解したうえ、被告人らの行為は違法性を欠くものと判断しているのであるが、その後、当裁判所は、名古屋中郵事件判決(‥五二年五月四日大法廷判決‥‥)において、右判例を変更し、公労法一七条一項違反の争議行為については労組法一条二項の適用がない旨の新しい見解を示した。そこで、‥‥新しい見解のもとで右各判決の判断が維持されるか否かを検討する。
 原判決‥認定した前記事実は、威力業務妨害罪の構成要件に該当し、かつ、公労法一七条一項に違反する争議行為であるから、他に特段の違法性阻却事由が存在しない限り、その刑法上の違法性を肯定すべきものである。そして、原判決が違法性阻却を認めるうえで根拠とした諸事情は、犯情として考慮しうるにとどまり、右の特段の違法性阻却事由にあたるものとは解されず、他に法秩序全体の見地からみて本件行為の違法性を否定すべき事由は認められない。‥」名古屋中郵事件方式の判断基準により有罪とした判例といえる。
 香城敏麿が名古屋中郵判決の要点を3点にまとめている。簡潔明快なので使える。
(イ)公労法一七条一項違反の争議行為が罰則の構成要件にあたる場合には、労組法一条二項の適用はなく、他の特段の違法性阻却理由がない限り、刑事法上これを違法とすべきである。
(ロ)但し、右の争議行為が単なる労務不提供のような不作為を内容とするものであって、公労法一七条一項が存在しなければ正当な争議行為として処罰を受けないようなものである場合には、その単純参加者に限り、当該罰則による処罰を阻却される。
(ハ)これに対し、公労法一七条違反の争議行為にあたらず、これに付随して行われた犯罪構成要件該当行為の場合には、その行為が同条項違反の争議行為に際して行われたものである事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、法秩序全体の見地から許容されるべきか否かを考察してその違法性阻却事由の有無を判断しなければならない。
 本件はこの基準の(イ)に当たると説明されている。
11091 松本光雄 国鉄南延岡機関区事件(最一小判昭53・6・29刑集32-4-759)調査官解説
 事案は動労西部地評事務局長A、動労大分地本執行委員長B、動労大分地本副委員長Cは、大幅賃上げ、合理化反対、最低賃金制確立、スト権奪還等を目的として昭和40年3月17日に時限ストを分頃までの行った際、その主張を貫徹させるため列車の運行を阻止しようと企て、動労組合員約500名と意思を通じて、同日6時24分から同7時15間、南延岡機関区入出区4番線付近で、発進予定の機関車の側面でスクラムを組み、之に乗車しようとした機関士甲外1名に「裏切者」と怒号するなど気勢をあげ、その乗降口に塞がり、動労組合員の排除にあたった鉄道公安職員約100名を押し返すなどして乗務員両名の乗車を妨げた。
 一審は威力業務妨害罪の構成要件に該当するとしながら、東京中郵事件と同趣旨の法律判断により無罪、二審も正当な争議行為として無罪。上告審は破棄自判、威力業務妨害罪、共同正犯(234条、233条、60条)罰金刑。
 
 (判旨)
 松山駅事件と同じく名古屋中郵便事件方式により有罪。
「原判決及び第一審判決は‥‥東京中郵事件判決(‥‥四一年一〇月二六日大法廷判決‥‥)に依拠して労組法一条二項の適用を認め、正当な争議行為として威力業務妨害罪の違法性阻却を肯定したものである、しかし、その後、当裁判所大法廷は、名古屋中郵事件判決(‥‥五二年五月四日大法廷判決‥‥)において、東京中郵事件の判例を変更し、公労法一七条一項違反の争議行為については労組法一条二項の適用がない旨の新たな判断を示している。そして、原判決及びその支持する第一審判決が認定した被告人らの行為は、威力業務妨害罪の構成要件に該当し、かつ、公労法一七条一項に違反する争議行為にあたるものであるから、他に特段の違法性阻却事由がない限り、争議行為であるということだけでは違法性が阻却される余地はなく、原判決が認定した被告人らの行為の目的、手段・態様及び付随的事情を考慮しても、威力業務妨害罪としての違法性になんら欠けるところはないというべきである。 」

2016/06/06

舛添都知事政治資金問題、第三者調査で納得した

 元最高検検事がかなり細かい調査をして違法性がないという以上、進退問題にはならないとの心証をもち少し安心した。発表も素早く好感をもった。
 私が不愉快に思うのは舛添都知事を支えるべき都職員が匿名でペラペラとメディアに向けて違法性がないのに勝手な都知事たたきをやっていることだ。
 だいたい知事公館は住友不動産に売却されているので、その維持費がかからないということであれば、湯河原への片道の公用車利用は安いもんじゃなかったのか。
 あれだけ利用価値の高かった湯河原の施設:ケジメをつけるために売却するというのは気の毒にさえ思う。

川崎市の事件、大量動員ピケで合法的なデモを中止させるのは政治的少数者の言論封殺だ

 
 そもそも、横浜地裁川崎支部が事前に半径500メートルのデモを事前に禁止する仮処分を決定したのも問題だが、日曜日の川崎市中原区のデモは、道路使用許可を得た合法的デモで、デモに集まった20~40人に対し反対派は約600人で包囲し、危険混乱を生じると理由で警察が説得しデモは中止となったと報道されている。
 公衆に開かれた場での合法的なデモ行進にマスピケを仕掛けて中止させるというのは不愉快だ。多数者による少数者への横暴のように思える。
 多数者に嫌悪されるという理由でデモをつぶすなどということは少数者の市民的自由の抑圧である。
 政府は表現内容に中立であるべきだが、特定の団体だけは中立でなくてよいなどいうことが流布され、反対派が勢いづいたのが問題だ。
 私は、危険、混乱をもたらすなどという口実で安易に中止に追い込むのは言論抑圧のように思える、政府は特定の団体の立場に肩入れするべきではない。
 警察は、へイトスピーチ解消法を受けて、名誉毀損の積極適用を指示したとされるが、デモを物理的に阻止して妨害する反対派市民に対しても、道交法違反とか違法行為があれば取り締まるべきであり、デモ行進も市民の権利である以上、他人の権利を侵害する行為は許されないはずである。警察は公平であってほしい。

2016/06/01

毎日いらいらする

  本当にくだらない国会だったな。毎日いらいらする。再婚禁止期間法改正にしても最高裁の多数意見による最低限の改正でいいのに、わざわざ六人の判事の補足意見という少数意見に合わせるかたちで踏み込んだ改正をしてしまった。再婚禁止期間は国民的道徳として明治以来定着していたのに遺憾である。一人ぐらい反対票をいれたらどうだ。
  名人戦は常識人の羽生を応援してたが四連敗とはがっかりした。もっともニコ生を見たのは土曜日にやっていた第二局だけ、素人ながら相手が強いんでやばいと思った。中原名人も四十代半ばで失冠しているから、そういう齢なのかな。
その中原十六世名人は三月の週刊将棋の最終号に寄稿して佐藤天彦と趣味が同じで音楽ホールで偶然逢ったとか、彼の将棋をいつも注目していますよとか書いていましたが、名人奪取を予見していたようでさすがに超一流だと思った。加藤元名人の本も読みましたが、最も切れ味の鋭い将棋を指すのは中原さんと言っていたように思う。やっぱり男は突撃しなきゃダメです。

失われた20年で変わったもの

 ニッポン一億総活躍プラン閣議決定本当にくだらない。こんなことをやるなら自民党は第二社民党か国家社会主義党に党名をすべきだ。次の選挙は日本のこころか、幸福実現党ぐらいしか選択肢がない。そもそも18歳選挙権に反対だったので、たぶん棄権するだろう。31日発売の日刊ゲンダイが書いていたがオバマ広島訪問の三文芝居に九割の国民が好感し、それにで安倍の支持率が上昇なんてほんとに馬鹿げている。
 私はそもそもオバマは社会主義者だから嫌い、なにをやっても嫌いである。
 月刊高校教育三月号の教育社会学者耳塚寛明の「受験競争の先に待っていたものとは」を読んだ。必ずしも賛成する意見ではないが、 1950年代~90年代教育改革といえば学歴社会の是正と受験競争の緩和であり、多くの人が学歴偏重社会と受験競争が諸悪の根源で校内暴力やいじめの原因であるなど根拠不明な勝手なことを言っていたものである。
 しかし、90年代以降、少子化で大学の門を広くなり、受験競争は高校階層構造の頂点付近に局所的に残るだけになった。
 かつてのように受験競争が社会問題とされることはまったくない。AO入試は普通になり、東大ですら推薦入学をやるようになった 。加熱するどころか冷却されてしまっている。
 耳塚氏は受験競争は駆逐することに成功したが、代わりに学力低下と学習離れを手に入れたという。
 この見解が必ずしも妥当かは疑問とするものの、失われた20年間で様変わりとなったことは事実である。
 ここから私の見解だが、今、社会問題としてメディアがよくとりあげるのが保育園落ちたとか児童虐待である。受験競争が冷却化された先の結末はこうだった。それは保育園に入れさえすればそれでいいという社会だった。升添さんですら、美術館は行くが、保育園を視察しないのはけしからんとマスコミに攻撃されている。杉並区のように公園を潰して保育園を建設することに躍起になっている。
 女性活躍のために保育園に入れるようにすればよい。教育の卓越性などだれも求めない。古市憲寿のように保育園義務化などと言い出す評論家もいる。子どもによい教育をということより母親の都合、女性の活躍第一というこれも偏った社会になってしまった感がある。

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