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2016/07/10

地方公営企業職員の争議行為及び争議付随行為に対してどのような責任追及ができるか(下書)その3

  前回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-0f39-1.html

承前
4. 札幌市労連事件(札幌市電ピケット事件)最三小決昭45.6.23刑集24-6-311
 
   事案は、昭和37年6月15日札幌市労連による交通部門の市電と市バス乗務拒否を主眼とする争議行為において、地公労法適用の札幌市職員である被告人3人が他の40名の組合員とともに札幌市交通局中央車庫門扉付近において、当局の業務命令によって乗車した罷業脱落組合員の運転する市電の前にスクラムを組むなどして立ち塞がり、「降りろ」「下がれ」等と怒号しながら電車を揺さぶる等したため、当局側ともみ合い、約30分電車の運行を阻止したことが、威力業務妨害罪により起訴されたもので、一審札幌地判昭41.5.2判時449は、威力業務妨害罪の構成要件に該当するが、労働組合法1条2項の正当な争議行為にあたるとして無罪判決を下した。原判決札幌高判昭42.4.27でも、被告人らの本件行為が威力業務妨害罪の構成要件に一応該当するものと認めながら、本件ピケ行為の目的、態様(手段、方法)に照らし、被告人らの本件行為は憲法の保障する労働基本権の行使として、正当な争議行為と認められるから、実質的違法性を欠き、罪とならないとして控訴を棄却したため、判例違反・法律違反等を理由として最高裁で争われた。
 最高裁第三小法廷決定は多数意見3、反対意見2の僅差で、本件ピケッティングは正当な行為として上告を棄却した。なお反対意見の下村、松本裁判官は、41年中郵判決より後に就任した裁判官だが、44年都教組事件で反対意見に回った5名のうち2名であり、地公労法一一条一項違反の争議行為は労組法一条二項は適用されないとの見解を示した。

(1)多数意見
 決定抜粋
「‥‥ 被告人らは、他の約四〇名とともに、札幌市交通局中央車庫門扉付近において、市電の前に立ちふさがり、その進行を阻止して業務の妨害をしたというのであって、このような行為は、それが争議行為として行なわれた場合においても、一般には許容されるべきものとは認められない。しかし、同じ原判決によると、右行為は、被告人らの所属する札幌市役所関係労働組合連合会が、昭和三五年一〇月ごろから、札幌市職員の給与、手当、有給休暇その他の勤労条件の改善等、職員の正当な経済的地位の向上を目ざした団体交渉の要求を続け、かつ、この要求について早期解決を図るべき旨の北海道地方労働委員会の調停や札幌市議会総務委員会の勧告があったのにかかわらず、札幌市当局が不当に団体交渉の拒否や引延しをはかつたため、一年有余の長期間をむだに過させられたのみならず、かえつて、当局の者から、ストをやるというのであればやれ、などと誠意のない返答をされるに至つたので、やむなく昭和三七年六月一五日午前六時ごろ、団体交渉における労使の実質的対等を確保するため、交通部門における市電・市バスの乗務員の乗車拒否を主眼とする同盟罷業に踏み切つたものであるところ、その同盟罷業中の同日午前一〇時ごろ、突然、同じ組合員であるYらが、同盟罷業から脱落し、当局側の業務命令に従つて市電の運転を始めるため、車庫内に格納されていた市電を運転して車庫外に出ようとしたので、被告人らが他の約四〇名の組合員らとともに、組合の団結がみだされ同盟罷業がその実効性を失うのを防ぐ目的で、とっさに市電の前に立ちふさがり、口ぐちに、組合の指令に従つて市電を出さないように叫んで翻意を促し、これを腕力で排除しようとした当局側の者ともみ合つたというのであって、このような行為に出たいきさつおよび目的が人をなつとくさせるに足りるものであり、その時間も、もみ合つた時間を含めて約三〇分であったというのであって、必ずしも不当に長時間にわたるものとはいえないうえに、その間直接暴力に訴えるというようなことはなく、しかも、実質的に私企業とあまり変わりのない札幌市電の乗客のいない車庫内でのできごとであったというのであるから、このような事情のもとでは、これを正当な行為として罪とならないとした原判断は、相当として維持することができる。‥‥」

 本決定の多数意見は、地公労法一一条一項の合憲性は問題にしていないが(これを争点とした決着をつけたのは北九州市交通局事件昭和63.12.8最高裁一小判 民集42-10-739である)、中郵判決により合憲の前提にたっているものであり、また地公労法一一条一項違反の争議行為に労組法一条二項(刑事免責)の適用があるとも明示していないが、昭和41年の東京中郵事件大法廷判決によりが公労法一七条一項  違反の争議行為にも労組法一条二項が適用があるとされたので、とそれは当然の前提としているというのが坂本武志調査官の解説である。
 つまり明示されていないが東京中郵判決の「三つの場合」に当たらないものとして本件争議行為は刑事上違法とできないという判断をとっているものと理解できる。
しかし多数意見は本件ピケッテイングのように、40名もの者が市電の前に立ち塞がって、進行を阻止する行為は、争議行為であっても一般には許容されないという本件ピケッティングの限界に関する原則的見解を明らかにしている。にもかかわらず無罪だというのは、本件における具体的事情のもとで、正当な行為ということができるとしているのである。
① 本件ピケッティングは、市当局が、組合側の正当な団体交渉の要求を一年有余
の長期間にわたって拒否したり引き延ばしたりして誠意のない態度をとったため、やむなく踏み切られた市電への乗務拒否を主眼とする同盟罷業がその実効性を失うのを防ぐためになされたものである。
② 本件ピケッティングは、同盟罷業の、同盟罷業から脱落した組合員が、当局の業務命令に従って市電の運転を始めたので、組合の団結が乱され、同盟罷業がその実効性を失うのを防ぐため、翻意を促す目的でなされたものであること。
③ 進行を阻止した時間が短く、暴力に訴えることはなく、しかも実質的に私企業とあまり変わらない市電の乗客のいない車庫内でのできごとだったこと。
 
(2)下村三郎裁判官の反対意見(要旨)
  地公法一一条一項は、争議行為を禁止しているのであるから、これに違反してなされた争議行為は、すべて違法であって、正当な争議行為というものはありえない。したがって、このような争議行為には、労組法一条二項の準用ないし適用はないと解すべきである。

(3)松本正雄裁判官の反対意見(要旨)

①地公労法一一条一項は、昭和四一年一〇月二六日大法廷判決(いわゆる中郵事件判決の趣旨からみて合憲であることに異論はないものと思われる。したがって、これに違反してなされた争議行為は違法なものであり、労組法一条二項の適用は排除される。しかも、地公労法一一条一項に違反してなされた争議行為は違法なものであるから、労組法一条二項にいう「その他の行為」には含まれず、また「正当なもの」ともいえない。
②仮に、労組法一条二項の適用があるとしても、被告人らの本件行為は、次に述べる理由により、正当性の範囲を逸脱したものである。
 A 被告人らのした本件行為は、かの中郵事件にみられるような単純な不作為ではなく、積極的な実力または威力による業務妨害行為であって、このような、このような行為は、当裁判所が昭和二五年一一月一五日の大法廷判決(山田鋼業事件)以来、累次の判例により違法としているものである。
 B Yが争議から脱落した組合員であるとしても、もともと職員の争議行為は禁止されており、これに違反した職員は解雇されることがある。(地公労法一一条、一二条参照)
のであるから、業務に従事しようとする組合員個人の自由意思は特に尊重されるべきであり、これを実力で阻止することは、組合といえども許されない。
 C ピケの正当性は、口頭または文書による、いわゆる平和的説得の程度のみに限られるべきだとは必ずしも思わないが、本件のごとく有形力を行使し、脱落者の就労を事実上不可能にすることまでも(たとい、それが説得の手段であったとしても)許されるべきとは考えない。かかる行為を許容することは、健全な労働運動の発展の障害にこそなれ、正しい方向とはいえない。

  (4)本決定の評価。

①  物理力を行使したピケットを正当としたきわめて例外的な裁判例

   争議行為の限界についてのリーディングケースは山田鋼業事件大法廷判決昭25.11.15刑集4.11.2257と朝日新聞西部支社事件大法廷判決昭27.10.22民集6.9.8である。
 争議行為は労務提供拒否という不作為を本質とし、したがって、これに随伴する行為も消極的行為の限度にとどまるべきであり、それを越えて使用者側の業務を妨害するような意図及び方法での積極的な行為は許されないとの見解が確立したものであって、この点についてプロレイバーが主張するように労働法は市民法個人法秩序を超克するものと解する余地はない。
 そしてピケッティングと犯罪の成否についての画期的判例が羽幌炭礦事件大法廷判決昭33.5.28刑集12-8-1694であり、事案は、争議続行と組合指導部に反発して組合を脱退し第二組合の結成に加わった労働者と非組合員による出炭を阻止するためのマスピケッティングであるが、「同盟罷業は必然的に業務の正常な運営を阻害するものではあるが、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであって、これに対し使用者側がその対抗手段の一種として自らなさんとする業務の遂行行為に対し暴行脅迫をもつてこれを妨害するがごとき行為はもちろん、不法に、使用者側の自由意思を抑圧し或はその財産に対する支配を阻止するような行為をすることは許されないものといわなければならない‥‥。されば労働争議に際し、使用者側の遂行しようとする業務行為を阻止するため執られた労働者側の威力行使の手段が、諸般の事情からみて正当な範囲を逸脱したものと認められる場合には刑法上の威力による業務妨害罪の成立を妨げるものではない。」と判示した。
 問題は、「諸般の事情」の解釈だが、臼井検事は、「基本となる基準はあくまで労働力の提供拒否にとどまるか否かであり」労働力の提供拒否にとどまるか否かという基準では割り切らないことを意味するというプロレイバー解釈は誤りと指摘している[臼井1977a]。 
 プロレイバー労働法学では、争議権とは本質的に「業務妨害権」であり、同盟罷業による業務妨害状態を有効に維持するためにピケッティングは争議行為の範囲にあるとし、一定程度の実力行使も許されるというものであるが、最高裁はもちろん認めていない。
 同判決以外でも最高裁は物理力を行使するピケットについて有罪と判決するのが通例である。(ホテル・ラクヨー事件最一小判昭和32.4.25、 進駐軍横浜事件最二小判昭33.6.20、 東北電力大谷発電所事件最一小判昭33.12.15、四国電力財田発電所事件 最一小昭33.12.25、嘉穂砿業事件最一小判昭35.5.26) 
 ただし最高裁は羽幌炭礦判決より前に例外的に三友炭鉱事件最三小判昭31.12.11刑集10-2-1605において物理力を行使したピケットを正当と判決している。札幌市労連事件決定はそれに続く二つめの例外的判例である。羽幌炭礦判決以降では唯一の例外である。それゆえ当時のプロレイバーは、ピケット権の確立を前進させた意義があるものとして本決定を評価している[佐藤1970]。
  三友炭鉱事件判決とは可罰的違法性論の典型とみなされるものである。罷業から脱退して生産業務に従事する者に対し「口頭又は文書による平和的説得の方法で就業中止を要求しうることはいうまでもないが、これらの者に対して、暴行、脅迫もしくは威力をもって就業を中止させることは、一般的には違法と解すべきである。」としたうえで、しかしながら違法性を阻却することがあることを認め、「諸般の状況を考慮して慎重に判断されなければならない」とし「炭鉱労働組合が同盟罷業中一部組合員が罷業から脱退して会社の石炭運搬業務に従事し石炭を積載した炭車を連結したガソリン車の運転を開始した際、組合婦人部長たる被告人が、右一部組合員の就業は経営者側との不純な動機に出たもので罷業を妨害する裏切行為であり、これにより罷業が目的を達し得なくなると考え、既に多数組合員等がガソリン車の前方線路上に立ち塞がり、座り込みまたは横臥してその進行を阻止しているところに参加して『ここを通るなら自分たちを轢き殺して通れ』と怒号して就業組合員のガソリン車の運転を妨害したというのであって、被告人の右行為はいわば同組合内部の出来事であり、しかもすでに多数組合員が運転行為を阻止している際、あとからこれに参加したというに止まるから」本件の具体的事情ではまだ違法ということはできないとしたものである。
 最高裁判決では触れられてないが、「諸般の状況」には三友炭鉱の出炭成績は悪くなかったにもかかわらず、社宅の飲料水の如きは山麓に一間半の水槽をつくり、その溜まり水を手押しポンプで汲出すという粗悪な設備で消毒もなく、平素も行列をつくって汲み水を待つ状況に放任されており、浴場も山間部にわずかに屋根があるだけで脱衣所なく濁った構内の腐水を使用し混浴であったが、経営者側が改善に着手する模様がなかったこと、被告人は経営者と縁故のある元組合長らが突然就業を開始した裏切り行為に極度に憤激したといった格別の事情を斟酌したものと考えられる。
 したがって、あくまでも同情的な例外的判例とみなすべきである。
 本決定は先例の判断基準を変更していないが、原判決が威力業務妨害罪の構成要件に該当することを認め「このような行為は、それが争議行為として行なわれた場合においても、一般には許容されるべきものとは認められない。」と判示しておきながら、具体的事情を斟酌して可罰的違法性にいたらないものとした。三友炭鉱事件に続いて例外的裁判例といえる。

②先例としての価値は認められない

  本決定は、藤木英雄東大教授の可罰的違法性論の影響力の大きかった時代の所産であり、諸般の状況によっては一定程度の実力行使も許容される余地があるピケット権を是認した先例とみなす評価は正しくない。先例として意義は以下の理由で認められない。

A 前提となってる刑事免責適用は判例変更された

 第一に、本決定は昭和41年の中郵判決の公労法17条1項違反の争議行為であっても労組法1条2項(刑事免責)の適用があるとの判断に従って、地公労法11条1項違反の争議行為にも適用があるとの前提に立っているが、52年の名古屋中郵判決で明示的に判例変更されていることである。
 同じく、41年中郵判決では刑事処罰の対象となりうる争議行為は、強い違法性のある争議行為、「三つの場合」に限定されるとしたが、この基準も52年の名古屋中郵判決で判例変更されていることである。

B 久留米駅事件方式により安易な可罰的違法性論がとられなくなった

 第二に国労久留米駅事件大法廷判決昭48・4・25刑集27-3-418がマスピケ事犯や列車の進行方向の軌道上に立ち塞がるなどの実力ピケを無罪とする下級審判例が否定されるターニングポイントとなった。
 久留米駅事件方式といわれる判断方式は「勤労者の組織的集団行動としての争議行為に際して行われた犯罪構成要件該当行為について刑法上の違法性阻却事由の有無を判断するにあたっては、その行為が争議行為に際して行われたものであるという事実を含めて、当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、法秩序全体の見地から許容されるべきものか否かを判定しなければならない」との判断方式を打ち出した。
 実質的違法性を判断することにかわりないが、久留米駅事件方式により、犯罪構成要件該当行為であっても争議行為及びそれに際して付随する行為については安易な可罰的違法性論によって社会的相当姓があるものとして無罪とする傾向が是正されるようになった。
 臼井検事は、久留米駅事件方式確立の結果、結論的に「最高裁判例においてはピケッテイングの正当性の限界につき,消極的性格の行為の限度にとどまるべきであるという見解が堅持され、いわゆる平和的説得の限度を越えたピケッテイングが犯罪構成要件に該当するときは、犯罪の成立を阻却するごく特殊な事情が存在する場合は格別、原則として違法性が阻却されないものとされている」(臼井1977a)
 本件は原判決が威力業務妨害罪の構成要件に該当することを認めているのであるから、久留米駅事件方式の原則論からして違法性は阻却されない。
  (以下次回とする)

参考文献表

 臼井滋夫
1976「地方公務員の争議行為禁止と刑事罰-全逓中郵事件判決以降の判例の系譜から見た岩教組事件判決の意義」『法律のひろば』29巻8号
1977a「ピケッティングの正当性の限界」『法律のひろば』30巻4号
1977b 「五・四名古屋中郵事件大法廷判決について-公企体職員の違法争議行為と刑事罰」『警察学論集』30巻7号
1977c 「公務員等の争議行為をめぐる刑事判例の動向--名古屋中郵事件判決までの軌跡 」『法律のひろば」30巻8号
1977d「「可罰的違法性論」に対する批判的検討」『警察学論集』30巻7号
 香城敏麿
名古屋中郵事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇昭和52年』
佐藤 昭夫
1970「札幌市労連最高裁決定とピケット権の展開」『労働法律旬報』756号 [

高島良一
 1979「公企体関係労働判例の一〇年を顧みて」『季刊公企労研究』40号
 中野次雄
東京中郵事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇昭和41年』
永井敏雄
日教組スト事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇平成元年』
岩教組スト事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇平成元年』
埼教組スト事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇平成二年』
中村秀次
2010「刑法総論に関する裁判例資料-違法性及び違法性阻却-」『熊本ロージャーナル』4号2010年」
  藤木英雄
1957「労働争議行為と違法性」『 総合判例研究叢書/(5)刑法 -- 総論/刑法(8)』
1967 『可罰的違法性の理論』有信堂高文社
 前田雅英
1984 「労働組合役員の他組合員に対する暴行,逮捕行為と実質的違法阻却事由(最判昭和50.8.27) 」『警察研究』55巻1号 
 横井芳弘
1976「労働事件にみる村上コートの思想と論理」『労働法律旬報』908号

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