地方公営企業職員の争議行為及び争議付随行為に対してどのような責任追及ができるか(下書)その13
市民法において、違法行為が上位者の指図に拘束される組織的集団行動であっても個人は責任を問われるのは当然のこと。集団行動だから個人責任は問わないというのは、前近代なら「打ちこわし」等ありうるが、近代市民社会ではありえない。たとえば地下鉄サリン事件の実行犯5人のうち4人が死刑、一人は無期懲役である。自分が辞退しても他人がやるから同じこととして気が進まなかった実行犯もいたということだが、だからといって責任はのがれられないのである。
争議行為だけが市民法と異なる論理で貫徹するというプロレイバー学説に論理性はない。
(2)公労法違反の争議行為に対して、18条解雇と損害賠償請求はできるが、国家公務員法による懲戒処分は許されないとする下級審判例を明確に否定
(3)公労法17条1項違反の争議行為に「正当なもの」を認める余地はないとした
違法の「相対性」を前提とする下級審判例(都城郵便局事件東京地判裁昭46・11・12労民集22巻6号1030頁、江戸川・昭島郵便局事件東京地判昭48・6・28労民集24巻3号345頁と本件の一審・二審)が、公労法違反の争議行為が行われた場合でも、その目的及び態様に徴し労組法7条1項(労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、不利益な取扱いをすることは不当労働行為とする)所定の正当性を具備するときは、公労法一八条による解雇又は損害賠償の請求することができるにとどまり、行為者に対して国公法による懲戒処分は許されないというほぼプロレイバー学説に依拠する判断を下していたが、これを否定した。公労法3条1項は労組法7条1号本文の適用を除外しないが、公企体職員の労働関係については、公労法に定めのないものについてのみ労組法の定めによるととされており、公労法17条1項は一切の行為を禁止する定めがあるので、その争議行為について「正当な行為」なるものを認める余地はないとした。これは全逓名古屋中郵判決と共通するものであるが(矢崎秀一調査官解説参照)、地公労法も構造は同じであり、地公労法の定めないものについてのみ労組法の定めによるとしているので同じことだといえる
(4)公務員が争議行為を行うことは非行として懲戒処分ができるとした
争議行為を行った場合は、法令遵守義務、職務専念義務に違反するということはすでに神戸税関事件判決で示されていたことだが、新たに信用失墜避止義務にも違反するとして職員の個別責任を問えると明確に述べた。要するに公労法違反の争議行為は「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」(国公法八二条三号)に該当し、違法争議行為は当然に「官職の信用を傷つけ、官職の不名誉となる行為」(国公法九九条)として懲戒処分できる。
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