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2016/09/04

地方公営企業職員の争議行為及び争議付随行為に対してどのような責任追及ができるか(下書)その9

(四)争議行為を理由とした懲戒処分の効力を是認した指導判例
 
1.神戸税関事件最三小判昭52・12・20民集31-7-1101、判時874、判タ357
 本件は、昭和36年における勤務時間内くい込み集会、繁忙期の怠業、超過勤務拒否等の争議行為等に指導的な役割を果たした全税関神戸支部幹部三名の懲戒免職処分を適法としたものであり、国家公務員は、私企業における労働者と異なって争議行為を禁止され、争議行為中であることを理由に当然に、上司の命令に従う義務(国公法98条1項)、職務に専念すべき義務(同法101条1項)、勤務中に組合活動を行ってはいけない義務(当時の人事院規則14-1第3項)等を免れないとした。
 また懲戒権者の広範な裁量権を是認し、社会観念上著しく妥当を欠くもの、裁量権付与の目的逸脱・濫用したものでない限り違法にならないと判示した。
争議行為を理由とする懲戒処分について最高裁の初めての判断を示したもので、被引用判例が110と多数あるように懲戒処分の有効性についての指導判例といえる。
 
(1)この指導判例の意義
 A 中郵判決や都教組判決を拡大解釈し違法性の弱い争議行為の懲戒処分を無効とする下級審判例を明確に否定したこと
 全逓東京中郵事件判決(最大判昭41・10・266刑集20-8-901)以来争議行為禁止規定の限定解釈の流れから続出していた、懲戒処分の適用についても一層のしぼりをかけた下級審判例を明確に否定したのが本判例の第一の意義と指摘できる。
 例えば神戸税関事件の第一審判決(神戸地裁昭和44・9・24)「争議行為であっても‥‥違法性の弱いものについては、国公法九八条五項で禁止する争議行為には当たらないものというべき」という。この立場に立つ裁判例としては(イ)山形地判昭44・7・16(鶴岡市職事件、労旬712号)(ロ)佐賀地判昭46・8・10(佐教組事件判時640号)(ハ)東京地判昭和46・10・15(都教組事件、判時645号)(ニ)高松高判昭和46・12・24(全財務四国地本事件労旬八〇五)。とくに都教組事件東京地裁判決が問題になる。地公法三七条一項は「(イ)公共性の強い職務に従事する地方公務員の、(ロ)国民生活の全体を害し、国民生活に重大な障害をもたらすおそれがあり、(ハ)他の手段による制限ではそのおそれを避けることができない争議行為に限って、これを禁止したものと解すべきである」として、そもそも刑事事件である最高裁都教組勤評事件判決の論理を、民事事件にも適用し貫徹してしまうのである。〔外尾健一「公務員の争議行為と懲戒処分-神戸税関事件」ジュリスト増刊(労働法の判例第二版)〕
 そも全農林警職法判決、岩教組学力調査判決は、都教組勤評判決、全司法仙台判決のいうところの国公法や地公法は争議行為のうち違法とされるものとされないものを区別し、さらに違法とされる争議行為についても違法性の強いものと弱いものを区別したうえ、刑事制裁を科されるのはそのうちの違法性の強い争議行為に限るものとする趣旨ではないとした以上、違法性の弱い争議行為につき懲戒処分を無効とする論理が成り立たないのは当然のことである。
 
B 争議行為禁止違反に懲戒処分はなじまないとするプロレイバー学説を明確に否定
 そもそもスト禁止法規違反の争議行為に対して懲戒処分はなじまず、科し得ないとする懲戒処分を無効とした裁判例として東京地判昭46・1・12(全逓都城郵便局事件、労民集22-6-1030、判時658号)があるが、この判例は当時の争議行為実行者の懲戒処分に否定的だった労働法学の多数説に従ったものである。
   つまりプロレイバー学説は、労働基本権確立、階級的戦闘的組合活動支援の立場から、争議行為の権利は、集団的行動の権利であり、団体的組織的行動である争議行為は、職務秩序に違反する職員の個別的非違を制裁する懲戒制裁とは論理的性格を異にするので、原則として懲戒処分を科しえないとするのである。[室井力1978]
  これに対して、争議行為は争議行為禁止規定に違反すると同時に上司の職務命令への服従義務ならびに職務専念義務にも違反することとなり、当然に、国公法八二条の懲戒事由に該当するという見解が対立し、行政事務はこの立場に立っている。本件の最高裁判決は、原審の判断を退けて後者の見解を採用した[宮田三郎1986]と解説しているとおりである
  つまり神戸税関判決は、行政当局の処分事例として一般的にとられていた争議行為禁止規定が他の服務規定違反とが競合的重畳的に成立するとする説(競合説)を是認した。
 越山安久の判例解説(最高裁判所判例解説民事篇昭和52年414頁以下)によると、「争議行為禁止規定とその他の服務規定とは、その趣旨、目的、保護法益を異にし、その双方に違反する以上、競合的に適用されるのは当然である」というものである。
 つまり国家公務員が争議行為を行った場合、争議行為を禁止した国公法98条2項(本件では旧98条5項)、法令または上司の職務上の命令に違反に従う義務を定めた98条1項、職務専念義務を定めた101条1項、組合活動により勤務中の職員の勤務を妨げてはならない義務を定めた人事院規則14-1第3項、場合によっては信用失墜行為を禁止した国公法99条に違反することになる。
  競合説の是認の意味は大きい。争議行為は集団行動であるが、争議行為でない公務員の個別的非違行為を懲戒制裁する場合にふつう適用される、上司の職務上の命令に従う義務、法令を遵守する義務、職務専念義務やその他の規則の違反にも該当することを明らかにすることによって争議行為を行った個々の職員に対する懲戒処分を承認したという意味が、非競合説よりより明確なものになったのである。
 集団行動であっても個々の職員の行為の総和であり、個々の職員の非違行為としても責任が問うことができることを明確にした意義がある。
 これを地方公営企業にあてはめれば、争議行為を行うことは、争議行為を禁止する地公労法11条1項に違反すると同時に、法令等及び上司の職務上の命令に従う義務を定めた地公法32条、勤務時間中の職務専念義務を定めた地公法35条に違反し、争議行為禁止規定と服務規定の双方に競合重畳的に適用されることとなる。
 
C 競合説是認により争議期間中の業務命令や職務専念義務を否定するプロレイバー学説を否定
 最高裁は、使用者は次の四判例で、使用者は、労働者側がストライキを行っている期間中であっても非組合員等を使って、操業を継続することできることを明らかにしている。。いずれも争議権が認められている私企業等の判例で、あり、従ってそもそも争議行為が禁止されている公務員等の職場において争議期間中であるから従業員に対し業務命令できないということはないとするのが道理だが、プロレイバー学説では業務命令を否認している。この問題に決着をつけたのが、公務員の職場では神戸税関判決であり、上司の命令に従う義務違反、職務専念義務違反として懲戒処分することができることを明らかにした以上、争議行為期間中、就労命令等、その他の労務指揮権が組合よって掣肘される理由はないのである。
 
a 操業の自由由4判例
ア.朝日新聞社西部本社事件(朝日新聞小倉支店解雇事件)最大判民集6-9-857
 これは解雇の効力が争われた事案で、部長級の非組合員が印刷局活版部の罷業対策として四版の大組みにとりかかろうとしたところ、活版部員約30名がスクラムを組んで3名の部長を取り囲んで作業をたまたげたので、版組作業を断念して引き揚げたが、一部長が無理矢理引っ張れ出されて左手小指に治療日数五日を要する傷害を被った。これがため当日発行の新聞は平常通り輸送されたのは僅かに五万九千部、列車に積遅れたためトラックで輸送されたもの九万八千部で他の四七万部は全部一日遅れとなった。
 最高裁大法廷は争議行為の時に生じた行為についても、就業規則を適用して解雇することができる。会社は正当な争議行為中の組合員の部署を他のいかなる者をもってしても代置することができない」と定めてある団体協約の失効後、組合員外の者の作業を暴行脅迫をもって妨害するような行為は、同盟罷業の本質と手段方法を逸脱したものであって、正当な争議行為とはいえないと判示したが、次の通り、正当な争議行為は消極的限度にとどまるものであり、使用者側の業務遂行行為を暴行脅迫により妨害できないことを明らかにしている。。
 「当時上告人等組合員側のした行為は単なる職場占拠に止まらず、被上告人会社側の非組合員職員によつてなさんとした業務の遂行を暴行脅迫をもつて妨害したものであつて、違法な争議行為であることは寔に明瞭といわねばならない。けだし、同盟罷業は必然的に業務の正常な運営を阻害するものではあるが、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであつて、これに対し使用者側がその対抗手段の一種として自らなさんとする業務の遂行行為に対し暴行脅迫をもつてこれを妨害するが如き行為は、叙上同盟罷業の本質とその手段方法を逸脱したものであつて到底これを目して正当な争議行為と解することはできないのである。そしてこの事は法令等に特別の規定が存しない限り労働事情の如何によつて右解釈を左右されるものとは考えられない。若しそれ所論の如く使用者側による所謂切り崩し又はスト破り行為等の行われる恐れありというだけでは、未だもって上告人等労働者側の前示行為を正当化せんとする根拠とはなし難いものと解せられるのである。」
 
イ.羽幌炭礦事件最大判昭33・5・28刑集12-8-1694
 事案はスト決行派がストに反対した組合脱退者及び非組合員による採炭業務を制止し、出炭業務を不能にするため軌道上でスクラムを組んだり坐り込むなどして電車の運行を阻止したものであり、「長時間にわたり、一〇〇余名の者と共に電車軌道上およびその附近に座り込み又は立塞り或はスクラムを組み且つ労働歌を高唱する等の挙に出で、同会社電車運転手R等の運転する電車の運行を阻止し威力を用いて同会社出炭業務を妨害した」ことは「諸般の事情からみて正当な範囲を逸脱したものと認められる」として威力業務妨害罪の成立を認めたもので、争議期間中であっても操業の自由があること、正当な争議行為は消極的限度にとどまるものとする先例を追認し、以下のようにピケッティングの犯罪成否の判断基準を示し指導判例となっている。
 「同盟罷業は必然的に業務の正常な運営を阻害するものではあるが、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであつて、これに対し使用者側がその対抗手段の一種として自らなさんとする業労の遂行行為に対し暴行脅迫をもつてこれを妨害するがごとき行為はもちろん、不法に、使用者側の自由意思を抑圧し或はその財産に対する支配を阻止するような行為をすることは許されないものといわなければならない(‥‥)。されば労働争議に際し、使用者側の遂行しようとする業務行為を阻止するため執られた労働者側の威力行使の手段が、諸般の事情からみて正当な範囲を逸脱したものと認められる場合には刑法上の威力による業務妨害罪の成立を妨げるものではない。」
 
ウ 進駐軍横浜事件 最二小判昭33.6.20刑集12-22-50
 本件は駐留軍横浜陸上輸送部隊に勤務する日本人労務者により組織された労働組合が、、非組合員等の運転手を使った輸送業務に対し、実力による妨害行為に及んだもので、威力業務妨害罪、暴力行為等処罰に関する法律違反(示多衆威力業務妨害罪)の成立を認めている。本件も争議行為の最中であっても、非組合員等を使って継続操業の自由が使用者にあることを示している。
 「‥‥憲法二八条は勤労者の団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障しているが、この保障も勤労者の争議権の無制限な行使を許容し、それが国民の平等権、自由権等の基本的人権に優立することを是認するものではなく、従つて勤労者が労働争議において不法に使用者側の自由意思を抑圧するような行為をすることは許されないこと及び同盟罷業は必然的に業務の正常な運営を阻害するものであるが、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであつて、これに対し使用者側がその対抗手段の一種として自ららなさんとする業務の遂行行為に対し暴行脅迫をもつてこれを妨害するがごとき行為は、右同盟罷業の本質とその手段方法を逸脱したものであつて、正当な争議行為と解することのできないことは、すでに当裁判所の判例が示しているところである(昭和二三年(れ)一〇四九号同二五年一一月一五日大法廷判決、刑集四巻一一号二二五七頁、昭和二四年(オ)一〇五号同二七年一〇月二二日大法廷判決、民集六巻九号八五七頁)。原判決の確定した事実によれば、被告人三名は駐留軍横浜陸上輸送部隊に勤務する日本人労務者により組織された同部隊労働組合の組合員であつたが、同組合は昭和二八年七月二八日から七二時間ストライキに入つたところ、同月二九日午前六時四〇分頃判示場所の右部隊バス通用門からストライキに参加しなかつた同部隊勤務の日本人運転手B外六名が駐留軍軍人、軍属等を輸送するためa駅に赴くべく各一台のバスを運転し一列縦隊で順次出門しようとするや、被告人三名は右通用門前においてピケラインを張つていた組合員約三〇名位と共謀の上、その出門を阻止しようとして右門前において、一、被告人Cはバスを一台も出すなと呼びながら組合員数名とともに右Bの運転するバス前面の道路上に寝転んで、その進行を停止せしめ、二、被告人Dは所携の赤旗竹竿を右B運転のバス運転台窓からバスのハンドルめがけて突き込み、三、被告人Eは組合員数名とともに右B運転のバス内に乗り込み、車外の組合員等と呼応して同人を運転台窓から多衆の威力を示し且つ数名共同してバスの外に押し出して転落せしめる暴行を加えて、Bをしてバスの運転を不能ならしめると同時に、同人に続いてバスを運転して出門しようとしたF外四名の出門をも不能ならしめ多衆の威力を示して右B外五名の運転業務を妨害したというのであつて、かかる被告人らの所為が、争議権の行使として許された範囲内の行動ということができないことは前記判例の趣旨に徴し明らかであるばかりでなく、不法に威力を用いて使用者側の業務を妨害したものというのほかないのであるから、原判決には所論のような違憲、違法はないと云わなければならない。(なお昭和二七年(あ)四七九八号同三三年五月二八日大法廷判決参照)‥‥」
 
エ.山陽電気軌道事件最二小決53・11・15 刑集32-8-1855 判時907
 
 山陽電軌とは山口県西部を営業範囲とするバス、電気軌道(現在廃止)による旅
客運送業である。
 本件は、神戸税関判決より後の最高裁決定だが、ストライキに対抗する性格を有するストライキ中の操業が法的に保護されるか否かが直接の争点となり、ストライキ中の操業が法的に保護されること。組合側の計画していた争議行為に対抗するためにとられた措置であるという理由で業務性を失うことはないことを明らかにした決定的な意義のある裁判例である。先例として、上記の三判例(朝日新聞西部本社事件、羽幌炭礦事件、進駐軍横浜事件)を引用したうえね、違法性阻却判断基準として久留米駅事件方式をとり、建造物侵入罪、威力業務妨害罪、傷害罪の成立を認めた原判決を認容する決定である。
 事案は昭和36年春闘に際し団体交渉が難航し、私鉄中国地方山陽電軌支部組合(約500名)のストライキが必至の情勢になったところから、会社側は第二組合員(約800名)によるバス運行を図り、予め車両の分散をはじめ、支部組合がストライキに入った日以降は、第三者の管理する建物等を選び、営業の終わった貸し切り車等から順次回送する方法で数カ所に車両を分散し、保全管理していたところ、(1)支部組合員Aらは多数の威力を示して会社が取引先の甲整備工場に、またDらは系列下の乙自動車学校に預託中のバスをそれぞれ多数の組合員ととも搬出しようとして建造物に立ち入った。建造物侵入罪、共同正犯(130条60条)。(2)支部組合員らBは、組合員多数による威力を用いて会社が運行させていたバスを停車させ、運転手を強いて立ち退かせそのバスを確保した。威力業務妨害罪、共同正犯(234条233条60条)。(3)支部組合員Cせらは、路上に駐車中のバスを確保するために、約300名の組合員と共に会社側要員丙丁を殴打し傷害を負わせ、該バスを支部組合事務所まで得慣行確保した威力業務妨害罪、傷害罪、共同正犯、観念的競合(234条、233条、204条、60条54条1項前段)棄却。[中村2010 126頁]
(決旨)
使用者は、労働者測がストライキを行つている期間中であつても、操業を継続することができることは、当裁判所の判例の趣旨とするところであるへ昭和二四年(オ)一〇五号同二七年一〇月二二日大法廷判決民集六巻九号八五七頁、同二七年(あ)第四七九八号同三三年五月二八日大法廷判決・刑集一二巻八号一六九四頁、同三一年(あ)第三〇六号同三三年六月二〇日第二小法廷判決・刑集一二巻一〇号二二五〇頁参照)。使用者は、労働者側の正当な争議行為によつて業務の正常な運営が阻害されることは受忍しなければならないが、ストライキ中であつても業務の遂行自体を停止しなければならないものではなく、操業阻止を目的とする労働者側の争議手段に対しては操業を継続するために必要とする対抗措置をとることができると解すべきであり、このように解しても所論の指摘するいわゆる労使対等の原則に違背するものではない。従つて、使用者が操業を継続するために必要とする業務は、それが労働者側の争議手段に対する対抗措置として行われたものであるからといつて、威力業務妨害罪によつて保護されるべき業務としての性格を失うものではないというべきである。 。
 ‥‥‥そうすると、会社のした右車両分散等の行為は、ストライキの期間中もこれに参加しないd所属の従業員によつて操業を継続しようとした会社が、操業を阻止する手段として支部組合の計画していた車両の確保を未然に防いで本来の運送事業を継続するために必要とした業務であつて、これを威力業務妨害罪によつて保護されるべき業務とみることに何の支障もないというべきである。以上と同趣旨の原判断は相当として是認できる。
 ‥‥‥ストライキに際し、使用者の継続しようとする操業を阻止するために行われた行為が犯罪構成要件に該当する場合において、その刑法上の違法性阻却事由の有無を判断するにあたつては、当該行為の動機目的、態様、周囲の客観的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判定しなければならない(前掲、昭和三三年五月二八日大法廷判決、同四三年(あ)第八三七号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻三号四一八頁、同四六年(あ)第一〇九五号同五〇年八月二七日第二小法廷判決・刑集二九巻七号四四二頁、同四八年(あ)第一二三一号同五〇年一一月二五日第三小法廷判決・刑集二九巻一〇号九二八頁参照)。
 ‥‥‥本件争議においては、会社側の強い関与を背景に誕生し支部組合に比較するときわめて会社寄りの山労が存在し、この山労が会社従業員の三分の二近くを擁して会社の操業継続に協力したこと、これら山労の存在及び行動が労使間にかなりの力の不均衡を生ぜしめ支部組合側の争議権行使の実効を著しく減殺するものであつたこと、しかし、これらの事実は、一面においては、支部組合として争議突入の当然の前提として受容すべき事柄の一つであつたことなど、前記認定に現われている諸般の事情及び所論の指摘する交通産業における特殊性をすべて考慮に入れ、法秩序全体の見地から考察するとき、本件車両確保行為は到底許容されるべきものとは認められない。
 そうすると、威力業務妨害罪又は建造物侵入罪に該当する本件車両確保行為には刑法上の違法性に欠けるところはない‥‥‥」
 他方プロレイバー学説は、争議中の操業は、市民的自由権ではあっても争議権との対抗の中では権利性を失い、法律上の特別の保護を受けることのない事実行為ないし自由放任行為にすぎない(片岡曻「使用者の争議対抗行為」労働法実務体系6 106頁、本多淳亮「争議中の操業について」労働法16 100頁、浅井清信 労働法論208、近藤正三「争議中の操業と施設管理権」浅井還暦労働争議法論)。とするものだが、山陽電軌事件判決で完全に否定されてたといってよい。
 地公労法適用の職場についていえば、地公労法11条2項で作業所閉鎖をしてはならないとしており、これはロックアウトできない趣旨と理解されているが、争議行為が行われても業務は継続して行うことが前提であり就労命令等は当然のことと思える。
 争議権のある私企業でもストライキ中の操業は法的保護があるといきちんとした判例がある以上、地方公営企業の管理職が最高裁判例で否定されているプロレイバー学説を根拠に業務命令をしないというあり方は、労組に労務指揮権を掣肘されているあり方といえるし、違法行為を正さない姿勢は不適切な労務管理であるといえる。
 
D 懲戒権者に広範な裁量権を認め、懲戒処分の司法審査について消極的な原則を示す
 
 神戸税関判決は「懲戒処分およびその内容の選択を懲戒権者の裁量に委ね、社会観念上の著しい不当、裁量権付与の目的逸脱・濫用の場合に限って司法統制を可能なものとしている‥‥公務員の懲戒処分の性格につき、単なる労使関係の見地からではなく、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することを本質的内容とする勤務関係の見地から、処分権が課せられることを強調し懲戒権者の広範な裁量と司法審査の消極性を導いている」[田村1999]
 この基準は、下級審がプロレイバー学説を根拠に安易に懲戒処分無効判決をできないものとした理解でき、いわゆる相場よりもやや重い懲戒処分であっても司法部は干渉しないことを意味しているものともいえるから、懲戒権者の広範な裁量権を与えるものであるる
 。逆にいうと、違法争議行為があっても懲戒処分をしないもしくは、機関責任だけをとって、率先助勢者の処分を行わないとか、組合との不透明な癒着とも思われるような実害の小さい処理がなされる根拠にもなりうるので、これは地方議会のチェックが必要であるといえる。
 
2.四国財務局(全財務四国地本高松支部)事件最三小判昭52・12・20民集31-7-1225 判時874
 本件は勤務評定反対闘争において「オールA・公開」等の要求貫徹のため十数日間にわたり違法行為を繰り返し、能力適正等を記入済みの勤務状況報告書を当局の意思に反し組合において保管した、局長退出妨害行為といった粗暴性を帯びた行為もあったという事実関係のもとでの大蔵省財務局職員の懲戒免職を適法としたもので、判決の論理は神戸税関判決と同じである。
 この判例で注目したいのは勤務中に頭上報告(マイク放送)行為が、事務室全体に聞こえる程度の大きさであったが執務中の職員の妨害になったとして懲戒処分の対象となっていることであり、引用できる判例といえることである。
(マイク放送関連)
 昭和37年10月2日のマイク放送について
   「全財組区愛四国地本及び高松支部において‥‥三七年九月二八日‥‥一審被告に対し勤務評定に関する合同交渉を申し入たが、‥‥交渉が進捗しなかったところ、その間において一〇月一日午後二時頃、一審被告が各課長からそれぞれ第一表停車に勤務状況報告書を交付して、勤務評定実施を命ずるや、組合側は直ちに掲示板、局庁舎食堂入口等に「勤評反対」「オールA・公開」等と記載したアジビラを貼付する等これに対抗する措置に及んだ。かような状況下において。一審原告Kが、一〇月二日午後四時五分頃勤務時間中、四国財務局の階上、階下事務室において、前後約五分間にわたり、携帯拡声器で、第一次評定者に対し、勤務状況報告書に記入しないことを要請する趣旨の放送を行なった。‥‥当時階下事務室には約三〇名の職員が執務しており、また階上の事務室にも約三〇名の職員が執務していた。そして右放送の音量は、無職員のなす電話の通話の邪魔になりかねない程度のものであり、各事務室全体に聞こえる程度の大きさであったのである。従って、いずれの事務室においても執務中の職員の妨害になった。‥‥‥」
   10月5日の放送について
  「一〇月五日午後三時頃勤務時間中、右原告Tが、局階上事務室において、携帯拡声器を用い、執務中の職員に対して午前中の局長と共闘役員との会談及びその後の状況について約四、五分にわたり放送した。そうして、M総務課長がS総務係長をして、この放送の中止命令を伝達させたのであるが、同原告は右中止要求を受けた後も、なおこの放送を続けたのである。右放送の当時、局階上事務室において執務していた職員は焼く三〇名であり、右放送は、形態拡声器によって、階上広間事務室全体に聞こえる程度の大きさでなされ、執務中の職員がその方に気を取られていたのであるから、その口調が淡々としたものであったかに否かなどにかかわらず、執務中の職員がこの放送によって執務を妨害されたことは明らかである。」
  懲戒事由に当たるかの判断
  「一審原告Kは公務員として職務専念義務があるにもかかわらず、前認定のとおり、勤務時間中において、本件勤評反対闘争の目的達成のためで第一次評定者に対し‥‥勤務状況報告書を記入しないでくれと要請する放送を、前認定の相当時間にわたって行ない、勤務中の他の職員の執務を妨害する結果を惹起したのであるから、その際用いた言語が刺激的なものであったかどうかは問うまでもなく、その行為の態様からみて、他に特段の事情がない限り、この放送は違法を免れないというべきである。‥‥その放送の内容、並びに時間、方法などの態様からみて、及びそれが多数の職員の執務の妨害になっている事実等からすれば、本件放送は、本件勤評反対闘争の一環として行われた組合活動であるが、たやすく組合運営のため必要最小限度のものとはいえないものであって、勤務時間中の組合活動としては正当なものとは認められず、あえて当局の中止命令等を待つまでもなく、違法を免れないものというべきである。‥‥Kはみだりに職務を放棄して右マイク放送により他の職員むの勤務を妨害したというべきである。」
  「一審原告Tの放送に対しS係長が制止したのは‥‥M総務課長がその中止命令を伝達させたものであり、その制止にもかかわらずTはその放送を続けたのである。‥‥右放送そのものがその際、内容的にも、時機的にも組合側にとってある程度必要なものであり、淡々と報国が行われたものであったとしても、前認定の右行為の態様からみて、勤務時間中の組合活動として全く違法性を欠くものとはいえない。従って右原告Tの子非初が、みだりに職務を放棄して、放送を行ない、もって職員の執務を妨害したものとされるのは止むを得ない。」
(参考文献)

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1977b 「五・四名古屋中郵事件大法廷判決について-公企体職員の違法争議行

為と刑事罰」『警察学論集』30巻7号

1977c 「公務員等の争議行為をめぐる刑事判例の動向--名古屋中郵事件判決

までの軌跡 」『法律のひろば」308

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 香城敏麿

名古屋中郵事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇昭和52年』

名古屋中郵事件(第二次)調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇昭和53年』

国鉄松山駅事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇昭和53年』

32年』

 坂本武志 

札幌市労連事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇昭和45年』

横浜中郵事件第一次判決調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇昭和45年』

 佐藤 昭夫

1970「札幌市労連最高裁決定とピケット権の展開」『労働法律旬報』756 [

1971「公労法違反の争議行為とピケッティング-横浜郵便局事件-」ジュリス

482

 白井駿 「市電の出庫阻止と威力業務妨害罪」『続刑法百選』1971

 越山安久

神戸税関事件調査官解説 『最高裁判所判例解説民事篇昭和52年』 

 宍戸達徳

 四国財務局事件『最高裁判所判例解説民事篇昭和52年』

 柴田孝夫

仙台鉄道管理局事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇昭和48年』

高島良一

 1979「公企体関係労働判例の一〇年を顧みて」『季刊公企労研究』40

玉田勝也

1978「国家公務員法上の争議行為禁止規定と懲戒処分(最判昭和52.12.20)」『法律のひろば』313

田村悦一

1999神戸税関事件評釈『行政判例百選〔1〕』<第4版>〔別冊ジュリスト150〕174~175頁

 

近石康宏

 1985a「地公法61条にいう「あおり」及び「あおりの企て」について--「日教組411地公法違反事件」各地裁判決を中心として-上」『警察学論集』3810

 1985b「地公法61条にいう「あおり」及び「あおりの企て」について--「日教組411地公法違反事件」各地裁判決を中心として--『警察学論集』3811

 外尾健一

1978 神戸税関事件評釈ジュリスト増刊〔基本判例解説シリーズ〕5号27頁

中野次雄

東京中郵事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇昭和41年』

永井敏雄

日教組スト事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇平成元年』

岩教組スト事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇平成元年』

埼教組スト事件調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇平成二年』

 中村秀次

2010「刑法総論に関する裁判例資料-違法性及び違法性阻却-」『熊本ロージ

ャーナル』42010年」

 藤木英雄

1957「労働争議行為と違法性」『 総合判例研究叢書/()刑法 -- 総論/刑

()

1967 『可罰的違法性の理論』有信堂高文社

 細谷芳郎

2013『図解地方公営企業法改訂版』第一法規

 前田雅英

1984 「労働組合役員の他組合員に対する暴行,逮捕行為と実質的違法阻却事

(最判昭和50.8.27) 」『警察研究』551号 

 宮田三郎

1986神戸税関事件評釈『公務員判例百選』〔別冊ジュリスト88〕7779

峯村光郎

1971『公労法・地公労法』日本評論社

 六車明

1989「刑事判例研究213地方公務員法「あおり」罪の成立を認め「あおりの企て」罪の成立を否定した事例〔東京高判昭六三・五・一〇判時一二七八・五八地方公務員法違反被告事件、控訴棄却、弁上告〕『警察学論集』423

室井力

1978 「公務員の争議行為と懲戒処分-神戸税関事件・四国財務局事件-」『ジュリスト』臨時増刊66645

 横井芳弘

1976「労働事件にみる村上コートの思想と論理」『労働法律旬報』908

  渡部尚

「刑事判例研究179地方公務員法六一条四号にいう「あおり」「あおりの企て」の意義〔浦和地裁昭和六〇・六・二七、判時一一六二・二〇。地方公務員法違反被告事件、有罪・控訴〕『警察学論集』

 

その他

注解法律学全集5 国家公務員法・地方公務員法 園部逸夫監修、栗田・柳編 青林書院1997

 

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コメント

川西みたいなぐうたらできる公務員って理想の生き方だよな
過労死とは無縁なところで民間の労働環境を上から目線で批判できるんだから
自分は大して働かないくせに民間は過労死するまで働けと言えるからな

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