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2016/10/01

地方公営企業職員の争議行為及び争議付随行為に対してどのような責任追及ができるか(下書)その18

12.北九州市清掃事業局小倉西清掃事務所事件最二小判昭63・12・9民集42-10-880判時1314 

 

 前日の北九州交通局事件最一小判昭63128で地方公営企業職員の争議行為を理由とする懲戒処分を適法とし、最高裁として地公労法11条1項が合憲とする判断を初めて下したのであるが、本件は、地公労法附則4項により地方公営企業以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される地公労法11条1項を合憲とする初めての判断を下した判決である。

 事案は以下の懲戒処分取消訴訟である。

X1市労(北九州市役所労働組合)本部執行委員・青年部長 懲戒免職

X2小倉支部支部長 停職三月

X3同支部執行委員 停職三月

 昭和4310月8日公務員共闘の全国統一行動の一環として、市労は始業時から1時間のストを実施したが、小倉西清掃事務所では作業員114名中100名の市労組合員が午前8時~同57分までの間、職場集会を開催した。その際、X1は、A書記長とともに右集会において挨拶し、X2は司会をつとめ、X3は職務命令書を一括返上したほか、X2、X3はスト不参加者に対する説得行為をなし、また、職務命令書をもって所長ら管理職の入室を阻止し、X1、X2は副所長のマイクによる命令に激しく抗議する等した。

 同日、屎尿車が不足したので、小倉東事務所から予備車を借りて作業を行なおうとしたとこうとしたところ、組合はこれに反発し、X1ら三名は管理職らに強く抗議し、暴言を吐く等した。

 清掃事業所の作業員の勤務時間は午前8時から午後3時50分までとなっていたが、現実には厳守されない傾向にあったので、小倉西事務所では、表黒、裏赤の木の名札を用いて、管理職立会いのもとで出欠勤状況を把握することとしたが、市労はこれに反対し、A書記長及びX1ら3名の指導のもとで、作業員約100名が職場集会を開催した。また、A書記長とX1ら3名を含む20~30名は事務所においかけ、前記措置に激しく抗議する等し、X1、X3は管理職に暴言を浴びせる等した。(労判534の概要82頁より引用)

 一審は本件は違法な争議行為ではないとして懲戒処分を違法としたが、二審は地公労法11条1項を合憲として争議行為は一律全面的に違法とした上、X2・X3の停職三月を適法としたが、X1の懲戒免職は平等取扱の原則に反し裁量権を逸脱し違法とした。上告審は、棄却、原判決を維持した。

 

(1) 一審福岡地判昭51・7・22判時837

 

地公労法11条1項の趣旨は、地方公共企業体等の業務もしくは職員の職務の公共性の強弱と争議行為の種類、態様、規模とを相関関係的に考慮し、その公共性の度合、争議行為の態様等に照らして住民生活全体の利益を害し、住民生活への重大な障害をもたらす虞れのある争議行為に限りこれを禁止するところ、本件ストライキは同条項の禁止する争議行為には該当せず、懲戒権を乱用したものとして違法であるとして、懲戒処分を取り消した。

(TKC参照)

本件は岩教組学力テスト判決より後の判決であるにもかかわらず、一律禁止ではなく、東京中郵判決のような違法とされない争議行為があるという見解のようであるが、当時の判例変更の流れに抗した判例といえる。

 

 

()二審福岡高判昭57427判タ473

一審判決の一部取消、一部棄却であるが、一審判決とは異なり、先例に従って地公労法11条1項は争議行為を一律全面的に禁止するものであるとした上で、X1の懲戒免職については平等取扱原則上問題があり裁量権の範囲を逸脱した違法があるとしたが、X2・X3の停職三月は違法はないとして原判決を取り消したものである。

以下の判決理由は組合側の主張を明快に退けた上、地公法の適用法条についての判断など大変参考になる判例といえる。

 

(要所)

全農林警職法事件判決、岩教組学力テスト事件判決、全逓名古屋中郵事件判決、神戸税関事件判決、全逓東北地本事件判決等の先例が、地公労法11条1項と同旨の規定である国公法982項、地公法37条1項及び公労法17条1項は「いずれも憲法二八条に違反するものではなく、右各条項が公務員及び公共企業体職員の争議行為を一律全面的に禁止するものと解すべき」としたのであり、「少なくとも本件の如き争議行為禁止に違反した身分上の責任を問うについては当裁判所もこれに従うのが相当と解するところ、右判例の法理は地公法一一条一項にも妥当し、特に異別に解すべき理由もないと判断される‥‥

 ‥‥被控訴人らは、控訴人が本来地方公共団体と職員各個人間の個別的勤務関係を前提に、その職員各個人の義務違背に対する制裁として行われるべき懲戒処分につき、集団的組織的労働関係を対象とする地公労法一一条一項の争議行為禁止規定を適用することは誤りであり、また、争議行為は労働組合の統一集団行動であって、個々の組合員の行為 の集積でなく、個人的行為に還元できない異質のものであるから、たとえ違法な争議行為であっても、それに参加したことの故をもって、組合役員や一般組合員が制裁を受ける筋合にはないとも主張する。

しかしながら、一般に労働者の争議行為が使用者の懲戒権を排除できるのは、その争議行為が目的及び態様において正当と認められる場合に限られると解されるところ、地公労法の適用を受ける職員の争議行為が認められないこと前記のとおりであるから、職員が争議行為に伴い事実上使用者の業務上の管理を離れ、組合の管理に服したとしても、労働契約関係の適法な一時的消滅とみることはできず、右争議行為を組成した 個々の職員の行為が労働契約上の義務違背と評価され、それが企業秩序を乱すものと認められるとき、個別的労働関係上の規制を受け、懲戒処分の事由となることは避けがたいところであり、また、労働関係の法的特殊性を考慮しても、個々の職員の行為が争議行為という集団的行動の中に解消し、何らの法的考慮の対象にもならないと解することはできない。被控訴人らのこの点の主張も採用できない。

‥‥被控訴人らの前記各行為の懲戒処分事由該当の有無について考えてみる。

一被控訴人らの一〇月八日における行為の評価

(一)一〇月八日の小倉西清掃事務所における勤務時間内の職場集会は、被控訴人らの所属する市労が自治労の決定した方針に従い、一〇月八日の始業時から一時間のストライキを行うことを決定し、右決定に基づいて、実際には始業時午前八時から同八時五七分まで開催されたものであるが、被控訴人らが清掃作業員約一〇〇名と共にこれに参加し、かつ、組合役員として右集会を主宰し指導したこと、引続いて行われた清掃車借用についての抗議行動によって業務の阻害を生じたことは前記のとおりである

そして、市労が右ストライキの実施を計画して後、控訴人は市労に対し、職員がストライキを行うことは違法であるから中止するよう警告書を発するとともに、職員個々人に対しても、同様の警告書と職務命令書を交付して、当日職務に服するよう命じていたところ、被控訴人らはこれに違背して職務を放棄したものである。

また、被控訴人らは右の違法争議を実施するに際し、同清掃事務所の所長以下管理職が、清掃作業員らに就労を命ずるとともに、その作業配置をすべく作業員詰所に入室しようとしたところ、被控訴人X1は三度、被控訴人X2、同X3はそのうち一度、右入室を実力をもって阻止したものであり、その違法であることはいうまでもなく、更に、被控訴人X1、同X2のマイク放送に対する抗議も、違法な争議行為の中止を呼びかけ、職員に就労を指示する中畑副所長の正当な職務行為に対するものであつて、その発言内容とともに違法たるを免れない。

(二)次に、被控訴人らは--〇月八日の右職場集会に引続き、小倉西清掃事務所が清掃車を他から借用したことに対し、やはり勤務時間内にその職務を放棄して抗議行動を行ったものであるが、その違法である‥‥右の抗議に際して、被控訴人X1が所長の机上のガラスを手拳で激しく叩いた行為は、そのためガラスに新たな破損を生じたとまでは認めえないこと前記のとおりであるが、抗議の際の発言内容の粗暴さと相まって、その違法であることは明白である。

被控訴人らの一〇月二六日における行為の評価

(一)一〇月二六日午前の小倉西清掃事務所における当局側による出退勤確認のための名札点検の実施に反対し、これを阻止すべく行われた市労の決定に基づく勤務時間内の職場集会、引続き行われた職務を放棄しての抗議行動といった一連の争議行為に‥‥組合役員として指導的役割を果したことは前記のとおりであるが、その違法であることにっいては、もともと地公労法一一条一項により争議行為そのものが許されていないことのほか、原判決‥‥に説示のとおりである‥‥。

(二)更に被控訴人X1は、同日午後退庁時前に同清掃事務所が早速実施に移そうとした名札の点検を粗暴な言動をもって妨害したものであるが、前記のとおり、出退勤確認のための名札点検の問題については、同清掃事務所は当初一〇月二六日から実施方針ではあったが、当日、所側と市労の代表者との話合の結果、近日中に改めて交渉するとの合意がで

き、その際、所側からは同日の点検を中止する旨の明言はなかったが、右交渉に加った被控訴人X2においてこれを点検中止と速断し、被控訴人X1ほか組合員に後日改めて交渉するのでそれまで点検の実施はない旨報告していたことから、被控訴人X1としては所側が合意を無視して一方的に点検を強行するものと憤慨し、右の妨害行動に出たものであることが窺われるが、本来当局の管理運営事項につき、合意の内容を十分に確認することなく直接妨害行動に出たことは、その発言内容、妨害の態様と併せて違法であることに疑問はない。

三  被控訴人らの前記各行為の該当法条

地方公務員法は、同法二七条三項において「職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、懲戒処分を受けることがない。」旨、職員の身分保障をはかるため懲戒処分事由を限定しているが、その処分事由としては同法二九条一項が「職員が左の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。」とし、地公法等の法律又はこれに基づく条例、規則もしくは規程に違反した場合(-号)、職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合(二号)、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合(三号)を列挙しているところ、また同法は職員の服務義務

として、三二条が法令等及び上司の命令に従う義務を、三三条が信用を失墜する行為の避止義務を、三五条が職務に専念する義務をそれぞれ規定している。

(一)そして右によれば、一〇月八日における被控訴人らのいずれも職務放棄を伴う職場集会及び清掃車借用に対する抗議行動への参加が、争議行為を禁止した地公労法一一条一項に該当するとともに、上司の職務命令に従う義務、職務専念義務を定めた地公法三二条、三五条に違反することは明らかであり、また、その際行われた被控訴人らによる管理職の作業配置のための入室阻止、被控訴人X1、同X2よるマイク放送への抗議、更には被控訴人X1が所長の机上のガラスを激しく叩いての抗議は、信用失墜行為の避止義務を定めた地公法三三条に違反するものと解され、いずれも同法二九条一項一、二号の懲戒事由に該当することになる。

(二)次に、一〇月ニ六日における被控訴人らの勤務時間内の職場集会及び引続き職務を放棄して行われた抗議行動への参加が、地公労法一一条一項及び地公法三二条、三五条にそれぞれ違反し、また、被控訴人X1による同日退庁時の名札点検実施に対する妨害行為が地公法三三条に違反するものと解されること前同様であり、したがって、いずれも同法二九条一項一、二号の懲戒事由に該当することになる。

‥‥被控訴人らの懲戒権濫用の主張について検討する。

一 ところで、地公法二九条一項は前記のとおり「職員が左の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。」として、四種の懲戒処分を定めているが、同法は、職員に同法所定の懲戒事由がある場合、懲戒権者が懲戒処分を行うかどうか、これを行うときいかなる処分を選択すべきかを決するにっいて、公正であるべきこと(ニ七条一項)、平等取扱いの原則(一三条)及び不利益取扱いの禁止(五六条)に違反してはならないことを定めている。そして、その他の点については具体的な基準を設けておらず、懲戒権者が懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、影響等のほか、当該職員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の職員及び社会に与える影響等、諸般の事情を総合して行う判断に委ねられ、その裁量に任されているものと解さるる。したがって、右の裁量はもとより恣意にわたることをえないものであるが、懲戒権者が右金量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。

二 そこで、被控訴人らに対する控訴人の裁量権行使の当否を考えてみるに、被控訴人らの一〇月八日、一〇月ニ六日両日の各勤務時間内の職場集会とこれに続く各抗議行動は、それ自体、地公労法一一条の争議行為の禁止に違背し、あるいは同法七条にいう管理運営事項についての抗議行動として違法であるにとどまらず、約一時間及び一時間三〇分に及ぶ職務の放棄により、それぞれ前記したような業務の阻害を現に生じており、被控訴人らは組合役員としてこれに参加し、かっ、指導的役割を担当したのであるから、その責任は軽視しえないものがある。しかもその際、被控訴人らは、一〇月八日には管理職の正当な業務である作業配置のための入室を実力をもって阻止し、あるいは粗暴な言動をもって抗議を行っているのである。これらの事実からすれば、右各職場集会、抗議行動に至る事情、経過等にっき被控訴人らの主張するような諸点を考慮したとしても,少くとも被控訴人X2、同X3に対する各停職三月の処分が、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を逸脱したものと

までは認めがたい。

‥‥これに対し、被控訴人X1に対する処分は懲戒免職であるところ、懲戒免職が被処分者から職員たるの地位を剥奪し、本人及び家族の生活の基盤を危険にさらすのみならず、地方公務員等共済組合法一一一条一項、同法施行令二七条一項二号により長期給付金のうち一定割合について支給を受けえないものとし、社会的、経済的に極めて重大な不利益をもたらすものであり、停職処分との間に格段の差があることはいうまでもない‥‥‥(略)‥‥

‥‥X1の免職処分についてみるに、前記のとおり地公法二七条は懲戒処分の選択について平等取り扱いの原則違反してはならないことを定めているところ‥‥X1は‥‥いささか情状が重いのであるが、

激しい言動についてもその場に居合わせた田の被控訴人らも共同の責任を負うべきものであることを考えると、他の被控訴人が停職三月の処分に止まり、またSが何らの処分を受けていないことと対比すると‥‥平等の原則上問題があるものというべく、さらに古典こ争議行為をした職員は単純労務職員でその争議による滞貨も弱いものであること等諸般の事情を総合すると、被控訴人X1に対する本件懲戒免職処分は社会観念城著しく妥当性を欠き裁量権を逸脱したものというべきである。」

 

()上告審

 

 棄却。

 X1の懲戒免職は違法、X2・X3の停職三月は適法とする原判決を維持

 

(130号事件 被上告人X1)

 原審の判断は是認することができる。

 

(131号事件 上告人X2・X3)

‥‥上告理由について 

一 論旨は、地方公営企業労働関係法(以下「地公労法」という。)附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員(以下「単純労務職員」という。)に準用される同法一一条一項の争議行為禁止規定が憲法二八条に違反しないとした原判決は、同条の解釈適用を誤ったものである、というのである。

二 よって考えるに、地方公営企業職員の労働関係について定めた地公労法(一七条を除く。)は、同法附則四項により単純労務職員の労働関係にも準用されるが、同法一一条一項は、「職員及び組合は、地方公営企業に対して同盟罷業、怠業その他の業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。また、職員並びに組合の組合員及び役員は、このような禁止された行為を共謀し、そそのかし、又はあおってはならない。」と規定している。そして、同法一二条は、地方公共団体は右規定に違反する行為をした職員を解雇することができる旨を規定し、また、同法四条は、労働組合又はその組合員の損害賠償責任に関する労働組合法八条の規定の適用を除外している。しかし、地公労法一一条一項に違反して争議行為をした者に対する特別の罰則は設けられていない。同法におけるこのような争議行為の禁止に関する規制の内容は、国の経営する企業に勤務する職員(以下「国営企業職員」という。)及び公共企業体職員の労働関係について定めた公共企業体等労働関係法(昭和六一年法律第九三号による改正前のもの。以下「公労法」という。)におけるそれと同じである。

ところで、国営企業職員及び公共企業体職員につき争議行為を禁止した公労法一七条一項の規定が憲法二八条に違反するものでないことは、当裁判所の判例とするところであるが(‥五二年五月四日大法廷判決・刑集三一巻三号一八二頁 名古屋中郵事件判決)、この名古屋中郵事件判決が公労法一七条一項の規定が憲法二八条に違反しないとする根拠として、国営企業職員の場合について挙げている事由は、() 公務員である右職員の勤務条件は、憲法上、国民全体の意思を代表する国会において、政治的、財政的、社会的その他諸般の合理的な配慮を経たうえで、法律、予算によって決定すべきものとされており、労使間の自由な団体交渉に基づく合意によって決定すべきものとはされていないのであつて、右職員については、労使による勤務条件の共同決定を内容とする団体交渉過程の一環として予定された争議権は、憲法によって当然に保障されているとはいえないこと、() 国営企業の事業は、利潤の追求を本来の目的とするものではなく、国の公共的な政策を遂行するものであり、かつ、その労使関係にはいわゆる市場の抑制力が欠如しているため、争議権は適正な勤務条件を決定する機能を十分に果たすことができないこと、() 国営企業職員は実質的に国民全体に対してその労務を提供する義務を負っており、その争議行為による業務の停廃は国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすか、又はそのおそれがあること、()争議行為を禁止したことの代償措置として、法律による身分保障、公共企業体等労働委員会による仲裁の制度など相応の措置が講じられていること、の四点に要約することができる。 

 三 そこで、名古屋中郵事件判決が公労法一七条一項の規定が憲法二八条に違反しないとする根拠として挙げた右各事由が単純労務職員の場合にも妥当するか否かを検討する。 

1 地方公務員の勤務条件は、政治的、財政的、社会的その他諸般の合理的な配慮により、国会及び地方議会が定める法律及び条例、予算に基づいて決定されるべきものとされている。この場合には、私企業におけるような団体交渉による労働条件の決定という方式が当然には妥当せず、争議権は、団体交渉の裏付けとしての本来の機能を発揮する余地に乏しいのである。右のような勤務条件決定の法理は、既に最高裁昭和四四年(あ)第一二七五号同五一年五月二一日大法廷判決(刑集三〇巻五号一一七八頁 岩手県教組事件判決)において非現業地方公務員につき示されたところであるが、この理は、現業地方公務員たる単純労務職員についても妥当するものといわなければならない。たしかに、地公労法は、単純労務職員に対し団結権を付与している(附則四項、五条。なお、附則四項、地方公営企業法三九条一項、地方公務員法五二条ないし五六条により、単純労務職員については職員団体に関する規定も適用される。)ほか、いわゆる管理運営事項を除き、労働条件に関し、当局側との団体交渉権、労働協約締結権を認めており(附則四項、七条)、しかも、条例あるいは規則その他の規程に抵触する内容の労働協約等の協定にもある程度の法的な効力ないし意義をもたせている(附則四項、八条、九条)。しかし、このような労働協約締結権を含む団体交渉権の付与は、憲法二八条の当然の要請によるものではなく、その趣旨をできる限り尊重しようとする立法政策から出たものであつて、もとより法律及び条例、予算による制約を免れるものではなく、右に述べた地方公務員全般について妥当する勤務条件決定の法理を変容させるものではない。

 2 単純労務職員の従事する業務は住民の福祉の増進を目的とするものであり、かつ、その労使関係にはいわゆる市場の抑制力が働かず、争議権が単純労務職員の適正な労働条件を決定する機能を十分に果たすことができないことは自明の理である。 

 3 単純労務職員の従事する業務の種類、内容等は、法律上具体的に限定されていないが、右職員は実質的に住民全体に対しその労務を提供する義務を負つており、その業務は当該地域関係住民の福祉を増進し、その諸生活の利益に密接な関係を有するものであつて、それが争議行為により停廃した場合には、行政運営に支障を生ぜしめ、地域関係住民の諸生活の利益ひいては国民全体の共同利益に悪影響を生ぜしめるおそれがあるものといわざるを得ない。 

 4 更に、争議行為を禁止したことの代償措置についてみるに、単純労務職員は、一般職の地方公務員として、法律によつて身分の保障を受け、その給与については、生計費、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならないとされている(地公労法附則四項、地方公営企業法三八条三項)。加えて、地公労法は、単純労務職員が労働委員会に対し労働組合法二七条の規定による申立てをすることができる(附則四項、四条)ほか、一定の場合に同委員会があつ旋、調停、仲裁を行うことができる(附則四項、四条、一四条、一五条、労働組合法二〇条、労働関係調整法一〇条ないし一六条)こととしている。このうち、特に、右の調停、仲裁についてみると、地公労法は、一般の私企業の場合にはない強制調停(附則四項、一四条三号ないし五号)、強制仲裁(附則四項、一五条三号ないし五号)の途を開いており、仲裁裁定に対しては、当事者に服従義務を、地方公共団体の長に実施努力義務をそれぞれ負わせ(附則四項、一六条一項本文)、予算上資金上不可能な支出を内容とする仲裁裁定及び条例に抵触する内容の仲裁裁定は、その最終的な取扱いにつき議会の意思を問うこととし(附則四項、一六条一項ただし書、一〇条、一六条二項、八条)、規則その他の規程に抵触する内容の仲裁裁定がされた場合は、必要な規則その他の規程の改廃のための措置をとることとしている(附則四項、一六条二項、九条)のである。これらは、単純労務職員に対し争議権を否定する場合の代償措置として不十分なものということはできない。 

 四 以上によれば、名古屋中郵事件判決が、国営企業職員の場合について、公労法一七条一項の規定が憲法二八条に違反しないことの根拠として挙げた前記各事由は、単純労務職員の場合にも基本的にはすべて妥当するから、地公労法附則四項により単純労務職員に準用される同法一一条一項の規定は、右判決の趣旨に徴して、憲法二八条に違反しないに帰するというべきであり、これと同趣旨の原審の判断は正当として是認することができる。論旨は、ひつきよう、独自の見解を前提として原判決を論難するものであつて、採用することができない。‥‥」

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