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2016/10/02

地方公営企業職員の争議行為及び争議付随行為に対してどのような責任追及ができるか(下書)その19

13.北九州市病院局事件最三小判平元・4・25判時1336、判タ719

 

本件も懲戒処分取消請求訴訟で、地公労法11条1項を合憲とした上で、昭和42年給食・清掃・整備等の民間委託化による市立病院職員266人を分限免職とする等の北九州市の財政再建計画に反対して、地公法37条1項、地公法11条1項に違反し、12月14日市の一般行政職員の約1時間の職場放棄と、同月15日二か所の病院職員24時間の同盟罷業を企画、指導、参加をした組合役員(いずれも北九州市の事務吏員)に対する地公法による懲戒処分(免職1名、停職一月~六月4名)を適法としたものである。

 これで最高裁の三つの小法廷がすべて、地公労法11条1項を合憲としたので、確定的なものとした。また小倉西清掃事務所事件では裁量権の濫用とされた懲戒免職を本件では適法とした点なども意義を認めることができる。

 

少し詳しく経過を述べれば事案は大筋で次のとおりである。

北九州市は昭和38年に旧小倉等五市が合併して発足したが、旧五市の赤字を引き継ぎ、石炭・鉄鋼産業の不況に伴う税収入の鈍化、失業者の多発による社会保障費の増大、各種特殊特別会計収支の悪化により、昭和40年頃から財政が顕著に悪化した。

昭和42年谷伍平市長は自治省と協議のうえ組織改革を行い、地公企法全面適用の病院局を設置して具体的財政再建計画を作成し、42年12月8日の議会に提出、15日に可決しているが、労働条件に関するものとして次のような改革があった。1)給食・清掃・整備業務は民間に委託し、266人を減員する、2)高齢職員は退職勧告する、3)給料表は国家公務員に準じたものとする、4)期末勤勉手当は国家公務員を上回らないものとする、5)特殊勤務手当24種を15種廃止する、5)勤務時間拘束週43時間制を週48時間制として、人件費を削減するというものであった。

組合側は11月11日に再建計画案を知り強く反発、4回の団体交渉を重ねたが、12月5日より、市職が1割の休暇期闘争、6日から市労、水道労組など市労連参加の組合、7日より市職労が休暇闘争に入った。一方自治労現地闘争本部は同月5日、闘争委員会を開き、市議会の最終段階で病院24時間スト、全職場1時間ストの決行を決定、6日には第5回の団体交渉が行われたが交渉は空転し、現地闘争本部は、スト実施の方針を決定し、7日ら非常事態宣言を発した。(なお組合は現地組合だけでは対処できない問題として自治労本部への要請し1121日安養寺自治労本部書記長を本部長とする現地闘争本部が設置されたのであり、市職、病院労組などの市労連参加の組合は同本部の指揮下に入っていた。現地闘争本部では266人の分限免職を阻止することを最優先課題とし、病院局や各商社前での坐り込み、八幡・門司病院では超勤拒否闘争が行われていた。)

127日北九州市長谷伍平は記者会見して、「市労連が予定されているストライキを実施した場合は厳しい処分を行う」と警告を発した‥‥病院労組は同月六日福岡県地方労働委員会に対し‥‥交渉促進等の調停を申請し、同地労委は同月11日‥‥労使双方の事情聴取を行ったがその席上、病院局長が‥‥H執行委員長に対し、スト体制は是非といてもらいたい。そのうえで団体交渉をしよう。」と要請したが‥‥組合側が‥‥拒否した。‥‥同月12日ころ、同月14日に市職、市労による始業時から1時間の職場集会を‥‥翌一五日に病院労組による門司病院及び八幡病院における24時間ストを実施することを決定‥‥市当局は同月13日市長、市教育委員会名義で各職員に対し、同月14日及び15日は定められた勤務時刻に出勤して職務を遂行するようにとの職務命令書を交付し、さらに、同日午後五時頃から約二時間にわたり‥‥谷市長は、自治労現地闘争本部と話合いをし、谷市長は組合側に対し病院・水道両事業の窮状と財政再建の重要性を訴えたが‥‥物別れに終わった。‥‥組合側が13日付で右職場集会・実力行使の通告をしたのに対し、市当局は同月14日には病院職員に対し、翌15日の勤務につき病院長名義の同旨の職務命令書を交付した。

なお、15日市議会において再建計画が議決された後、病院当局は、病院労組と6回、病院評議会と10回団体交渉し、行政整理対象の266人に対する就職あっせん等の特別措置、勤務時間、給料表、特殊勤務手当の整理について譲歩したが、組合側は分限免職絶対反対の主張を繰り返し、実質的交渉に入ろうとしなかったのであり、基本的に対立したままであった。

 

(1) 一審福岡地判昭55・5・7判時980、労判341

 

 財政再建計画が266人の分限免職を含み、職員の勤務条件に重大な変更を及ぼすものであるにもかかわらず当局の態度は性急にすぎ、本件ストライキは違法であるけれども、14日のストは1時間にすぎず、15日の24時間ストについても、混乱を避ける諸種の措置をとっており、市当局の団交義務を尽くしたとはいえないとしたうえで、X1市労連・病院労働組合の執行委員長の懲戒免職は裁量権を濫用し違法とした。但し停職一月~六月の4名の懲戒処分は相応のものとして裁量権を濫用していないとした。

 

(2) 二審福岡高判昭58・9・29判タ534

 

 一審の当局の団交義務を尽くしていないとの判断を明確に否定したうえで、X1に対する懲戒免職についても裁量権を濫用したものではないとして、懲戒処分をすべて適法とした。

 この判決はできが良い。団交義務の違反の有無、程度の判断につき特に参考になる。

 

(要所の抜粋)

「 一審原告らは、集団的労働関係における争議行為に対して、個別労働関係を規律する地公法三〇条以下の義務規定を適用して同法二九条による懲戒処分を行うことはできない旨主張する。

 しかし、争議行為が集団的行為であるからといって、その集団性の故に争議行為参加者個人の行為としての面が当然に失われるものではないから、組合決定に基づく争議行為といっても、それが違法なものであるときには、組合事態の責任の生ずることがあるのはもちろん、当該違法行為者自身においても個人責任を免れないものといわなければならず、地公法三七条以下の服務規律を適用して同法二九条一項に基づく懲戒処分を行うことは許されるものというべきである(最高裁判所第三小法廷昭和五三年七月一八日判決)。

 したがって一審原告らの各行為は、信用失墜行為避止義務を定めた地公法三三条に違反し、また組合専従者‥‥を除く、その余の各一審原告らが‥‥職務に従事するよう命ぜられていたにもかかわらず、‥‥スト当日職場を離脱してその職務を放棄した行為は、職務命令遵守義務を定めた同法三二条、職務専念義務を定めた同法三五条に違反するものというべきである。

 ‥‥懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する部分が他の公務員及び社会に与える影響など諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか、を決定することができるもの解せられ、懲戒権者の判断は、右のような広範な事情を総合的に考慮してなされるものであるから、公務員につき法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うとどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を行うかどうか‥‥およそ裁量権者の裁量に任せられており、懲戒権者の右の裁量権の行使としての懲戒処分が社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められる務場合に限り当該懲戒処分を違法とすべきものである(最高裁判所第三小法廷昭和五二年一二月二〇日判決)。

 右の見地に立って、一審原告らに対する本件各懲戒処分を濫用したものと認められるかどうかについて検討する。

 地公法は、地方公務員たる職員は勤務条件の維持改善をはかることを目的として職員団体を結成することができるものとし(同法五二条一項、三項)、当局は登録を受けた職員団体から職員の給与・勤務時間、その他の勤務条件に関し適法な交渉の申入れがあった場合には、これに応じなければならないこととしており(同法五五条一項)、また、地公労法は、地方公共団体の経営する企業に勤務する職員につき、労働組合を結成できるものとし(同法五条一項)、その労働関係については地公労法のほか労働組合法及び労働関係調整法が適用されるものとし(地公労法四条)、労働協約締結権を認めている(同法七条)のであるから、職員の勤務条件について、地方公共団体の当局も誠実に団交すべき義務があるのは当然である。

 本件再建計画の策定及び同再建計画の市議会への上程等は、元来、地公法五五条三項管理運営事項と解されるが、しかし、前示のとおり、本件再建計画案は、二六六名の分限免職昭余分をはじめとして病院事業に勤務する職員の勤務条件に重大な影響を及ぼす事項が含まれているのであるから、右再建計画案のうち勤務条件に関連する事項を昭・病院当局と労働組合との団体交渉事項となし、同事項の諸問題解決のため、市・病院当局は誠実に団体交渉に応ずべきものであったといえる。しかして、本件においては‥‥市・病院当局と労働組合との間で、現実に行われた団体交渉、その他の折衝等の経緯が、実力行使としての本件争議行為との関係でいかなる意味を有していたかが問題とされなければならない。 

 そこで、右見地から、市労連、病院労組と市・病院当局との間の交渉についしてみれば、前示のとおり、本件再建計画案が市労連ら正式に提示され団体交渉が開始されたのは、市議会の議決の一箇月前の昭和四二年一一月一五日であり、以来、市議会議決までもたれた市労連、病院労組との交渉回数は、合計五回、一回二、三時間で、右交渉は当局から本件再建計画案に含まれている病院職員の分限免職、給料表改正等の説明及びこれに対する若干の質疑応答と当局側に労使交渉により計画の手直しをする意思があるのかどうかをめぐる論議とがなされたにすぎず、右の点からすれば、右交渉事項の重要性から比して交渉回数・時間、交渉経過において右団体交渉の実効性には問題を残したかのようである。しかし‥‥市労連は、実際には、右団体交渉を行う前から本件再建計画案の内容をある程度予想し、これを合理化案あるいは二六六名の首切り案であるとし、なかでも二六六名の分限免職にさいては、これに断固反対する意向と全面的に対決する姿勢を繰り返し確認・決定し、右再建計画案阻止のための闘争を基本として集団による具体的行動を中核にすえ、対当局交渉を二義的なものとする方針を固め、したがって団体交渉その他当局側との折衝の機会が設けられたり、効率的な交渉方法の提案がなされても積極的実質的交渉に入る態度を示さず、手続問題などに時間を費し、形式的な話合いに終始したが、一方当局も給料表の改正など勤務条件等は譲歩の余地ありとしてある程度柔軟な姿勢を示しながらも二六六名の分限免職を財政再建計画の重要な柱の一つとし変更不可能なものとなしていたのであって、右のような基本的対立によって双方妥協の余地のなさこそが前記団体交渉を実りなきものに終わらせ、本件争議行為につながっていったことが明らかである。なお、本件再建計画議決後の団体交渉の実情も本質的には右と異ならなかった。

 しかして、これに、前示認定の事実によれば認められるとおり、市・病院当局が当時の財政窮迫状態を打開するため、本件再建計画が必要かつ緊急のものとし、またそうすることにつき十分な根拠があり、さらにこれが現実に市財政の健全化に寄与したことを考慮に入れるならば、本件において市・病院当局が誠実に団体交渉を行う義務を十分に尽くさなかったものとはとうていなし難いものというべきである。

 本件争議行為の状況、すなわち、一二月一四日のストは勤務時間に一時間喰い込む程度であったとはいえ、職場離脱が一部の職場ではなく全体で一斉に、かつ、市・病院当局の職務命令、警告を無視して強行され、一二月一五日の門司病院及び八幡病院における争議行為は公共性の高い医療部門におけるピケによるストライキであって、職員の多数をして職員の多数をして終日職務を放棄させたばかりでなく、外来患者数を通常に比し一五ないし二九%に減少させ、住民の生命と安全に危険な影響を及ぼす恐れのあるもので、‥‥大きな混乱を避けるための諸種の措置がとせれているとしても‥‥危険防止の観点から問題がなかったわけではなく‥‥市・病院当局がやむを得ず講じた緊急対策に負うところが大井のであって‥‥違法性の強いものであった。

 ‥‥本件各争議行為は、自治労中央本部安養寺書記長を長とする自治労現地闘争本部の指導により実施されたものであるが、‥‥具体的な闘争方針の提案を受け、これを単組として検討し、これを実行したものであるところ、現地闘争副本部長あるいは市職及び病院労組、市労連の各執行委員長として最高責任者の立場であったHは本件争議行為の企画、立案に関与したものであり、その主導的役割の下に、その余の一審原告らは、現地武藤そう本部の闘争委員あるいは市職の各役員として本件各争議行為の準備及び実施に各自の役職に応じた指導的な役割を果たしたものであるから、右のように違法な本件各争議行為にいて、それ相応の責任を免れ得ないものである。

 以上のとおりであって‥‥一審原告らの本件無核行為の性質・態様・情状、各組合役職、その他前記任手の諸事情に照らせば、本件処分が社会観念上著しく妥当性を欠くものとなすことができず‥‥本件処分が懲戒権者である一審被告に任された裁量権の範囲を超えこれを濫用してなされたという一審原告の主張は採用することができない。‥‥

 

(3) 上告審

棄却

‥‥地方公務員法三七条一項の規定が憲法二八条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判決(‥‥五一年五月二一日判決・刑集三〇巻五号一一七八頁)の判示するところであり、また、地方公営企業に勤務する一般職の地方公営企業労働関係法一一条一項の規定が、同法附則四項の規定により右地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される場合を含めて、憲法二八条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判決(五二年五月四日判決・刑集三一巻三号一八二頁)の趣旨に徴して明らかである(同六三年一二月八日第一小法廷判決・民集四二巻一〇号七三九頁、六三年一二月九日第二小法廷判決・民集四二巻一〇号八八〇頁参照)。これと同趣旨の原審の判断は正当‥‥‥      地方公務員に懲戒事由がある場合において懲戒権者が裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したものと認められる場合でないかぎり違法とならないと解すべきところ、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、上告人らに対する本件各懲戒処分が社会観念上著しく妥当を欠くものとまではいえず、懲戒権者に任された裁量権の範囲を超え、これを濫用したものとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。‥‥」

 坂上壽夫裁判官の補足意見と、伊藤正己裁判官の反対意見は略す。

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