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2017/05/28

民法731条改正案反対シリーズ(下書き)成人擬制を廃止し、婚姻適齢を成人年齢に一致させることの不合理

二 .成人擬制を廃止し、婚姻適齢を成人年齢に一致させることの不合理

 

今回の民法731条改正は、1996年法制審議会手答申を下敷きにしているものの、ひとつ違うのは、当時は20歳成人年齢が前提だったが、今回は、成人年齢18歳引き下げに伴う法改正で、この際、成人年齢と婚姻適齢を一致させ、成年者の婚姻による成人擬制〈753条〉と未成年者の婚姻の父母の同意〈737条〉も廃止するというものである。

 成人年齢が18歳に引下げられる以上、18・19歳の同意要件は不要ということについて異議はないが、私の修正案は、男女を問わず配偶者が18歳以上なら、16歳以上で結婚可能とする案であり、形式的平等を達成しつつ、現行法制どおり、16・17歳女子も結婚を可能として婚姻資格剥奪という野蛮はやめ、十分配慮のいきとどいたものにしようというものであり、成人擬制〈753条〉と未成年者の婚姻の父母の同意〈737条〉も廃止しないというものである。

 民法学者に多いのが、成人擬制と親権者の同意要件を廃止して、婚姻適齢を成人年齢と一致させるのがシンプルな法規定で合理的という見解であるが、私は大反対である。

 シンプルだからいいなどいうのは暴論である。未成年者は、成人より広範な規制を受け、憲法上の権利も制約されるというのは一般論であるとしても、しかし成人年齢に基づく区分のみでは、未成年者の年齢差や個人差を考慮しえないし、年長の未成年者を子供扱いすることには問題がある。一定の未成年者は、一定の事項について成人と同等に扱うことも考慮されてしかるべきであるということしは一般論として認められる議論であり、婚姻の権利については、個人の幸福追求に不可欠な意義を有するものであり、成年擬制制度もこれまで問題を生じることなくつづいてきたことであるから、なおさら重視されなければならない。以下、その理由を記す。

 

 (一) 45州の成人年齢が18歳であるアメリカ合衆国にも成年擬制制度がある

 

 アメリカでは1971年の憲法修正26条1項で「18歳以上の合衆国市民の投票権は、合衆国または州により、年齢を理由として剥奪、制約されない」と定められているためが、成人年齢は統一化されてない。

米国の成人年齢は45州が18歳、コロラド、ミネソタ、ミシシッピが21歳、アラバマ、ネブラスカが19歳である。コモンローの21歳を墨守している州もあり、選挙年齢と成人年齢が違っていても別によいわけである。

もちろん婚姻適齢と選挙権は別の問題であり、すでに述べたように米国では16歳を婚姻適齢とする州が三分の二以上を占めるが、16歳未満でも裁判所の承認等により未成年者でも結婚は可能としている州が多い。

 

 すでに述べたように米国では16歳を婚姻適齢とする州が三分の二以上を占めるが、16歳未満でも裁判所の承認等により未成年者でも結婚は可能としている州が多い。

 米国の各州法では我が国の成年擬制と同じ未成年解放制度があるのである。

婚姻、妊娠、親となること、親と別居し自活していること、軍隊への従事等を理由として原則として成年として扱うのである。(原則としてというのは刑法上の成年とはみなさないこと、選挙権、アルコール、タバコ、小火器の所持、その他健康・安全に関する規則では成年とみなされないという意味)。[永水2017

 したがって、米国の立法例からみて成人を18歳に下げても婚姻による成年擬制があって当然よいのである。

 

 

(二)伝統的には成人年齢と成熟年齢は違う

 

 法制史的にみれば、西洋では成人年齢とは別に成熟年齢を設定している、教会法は成年期を満20歳と定められているが、これと別に成熟年齢があり男子14歳、女子12歳であり、未成熟者の7歳以下を幼児と区別するのである。婚姻適齢や証拠法上の証人は、成年より低い年齢を設定している。ローマ法も同様の規定である。

 

 (三)16歳で大人扱いするスコットランド法

 

現代のスコットランド法では成熟年齢の男子14歳女子12歳未満をpupilといって法的能力は極めて限定されるが、それ以上成人の18歳に満たない範疇をminorといって16歳で何人の同意なしに婚姻できる重要な能力をもつというように、成人年齢で権利能力の付与を一元化するという発想をとってない。[平松・森本1991]

 スコットランド法の特徴は、16歳であらゆる契約締結能力をもたせており、12歳以上で遺言の作成、弁護士に代理を支持する能力を持つとする。スコットランドでは男女とも親の同意要件なく婚姻適齢であることはすでに述べたとおりである。

 これは婚姻に親の同意要件を認めない古典カノン法がが「古き婚姻約束の法」として近代まで生ける法だった伝統に由来するものと思われる。グレトナ・グリーン結婚の結婚風俗で知られるとおの婚姻の自由の聖地としての国の誇りを看取することができる。

 

  (四)16歳未満がchild1617歳のyaungと明らかに区別するイングランド法

 イングランドにおいては同じ未成年であっても16歳未満がchild1617歳のyaung

personでは明確な線引きがあるのが特徴である。

 有効な意思確認は12歳以上、ヘッドギアなしの乗馬14歳以上、婚姻16歳以上(親の同意要、スクーターの運転16歳以上、避妊ピルの購入16歳以上、宝くじの購入16歳以上、オートバイ、自動車の運転17歳以上、飲酒は購入が18歳以上だが、親の責任下で自宅での飲酒は16歳以上、喫煙も購入は18歳以上だが喫煙自体は16歳以上となっている。[田巻2017

 なお、イングランドは義務教育が16歳までであるから、婚姻適齢と重なる。私は英国の制度が必ずしも良いとは思ってないが婚姻適齢についは妥当であると考える。児童福祉法の定義で18歳未満はすべて子どもでなければならないというような、我が国にみられる考え方が杓子定規である。

 

(五)成人年齢でなにもかも一元化するのは不合理

 

 我が国の伝統社会(中世以降の臈次情合成功制宮座)において座入り、烏帽子成、官途成、乙名成と、段階的な通過儀礼があって村人身分の標識となっていた。[薗部2010]、烏帽子成は元服に相当するが、本当の意味で村人として責任のある地位につくのは官途成と考えられる。人間は成長し段階的に大人としての権利と責任を負うようになるというのが普通の考え方である。したがって、成人年齢になにもかも一元化してしまうのは本来不合理なものである。

 なお、多くの人が誤解していることであるが。元服式とは、本質的には父の地位の継承者であることを明らかにする儀式であり、添(副)臥のような性行為がなされ、そのまま妻となることもあったが、平安中期以降、貴族の元服叙爵が低年齢化ししたことをもって成人年齢が引き下がったとみるべきではない。

 わが国の元服儀礼は、天皇とその周辺から政治的社会的地位の確立過程で出現したものである。

位階は王権との距離をあらわし本来律令では臣君に仕えて忠をつくし功を積んでから授与されるものであった。

  令性の蔭位資格者は、五位以上の子に限り21歳で、蔭位の特権のない者は初叙年齢25歳以上、この位階授与原理は8世紀には遵守され、勅授すら21歳にほぼ蔭位どおりに授与され、祥瑞出現の特例でも20歳だった。

 令制の本来のあり方では21歳以上が今日でいう成人の概念にあたるとみてよいだろう

 一方、戸令聴婚嫁条男15歳女13歳(唐永徽令の継受)が婚姻適齢であることはすでにのべたとおりであり、それが成人年齢ではない以上、成人と婚姻は別の問題とすべきであろう。

  元服と叙位は別であるという原則が破られのは9世紀末期以降である。 

藤原時平は仁和二年(886)正月二日仁寿殿において「天皇手ずから冠をとって」元服儀礼が行われると同時に正五位下に叙位(初叙叙爵)がなされた。位記には「名父の子、功臣の嫡」と叙位理由が記載され、こののち元服儀礼は父の功績、政治的社会的地位の父子継承表明の性格が濃厚なものとなるのである[服藤早苗1991]

 

 

  適切な例とはいえないが例えば映画の観覧制限はもともと成人年齢とは関係ない、ピンク映画は18歳未満観覧制限だが、PG12指定、R15指定と段階があるはず。そうした事例からしても成人・未成人の線引きを明確にすることにこだわる理由はない。

 米国では証拠法や医療などで「成熟した未成年者の法理」がある。成人年齢に基づく区分のみでは、未成年者の年齢差や個人差を考慮しえないし、年長の未成年者の権利能力をことさら否定し子供扱いすることは全く不当といえるのである。

 私の提案は、未成年者の結婚は親権者の同意要件を継続させるというもので、未成年者のオートノミー・自己決定を重視しすぎるものではないから穏当なものであると思う。

 

(五)法律家だけでなく、発達心理学的見地、精神医学、人間学的洞察の必要性

 

  結婚の権利のはく奪という深刻な問題に際しては、法律家だけでなく発達心理学、精神医学、人間学的洞察にもとづく慎重な判断でなければならない。性欲も人間性の重要な一部分とて認識するならば、思春期以降の女子の性的欲求を是認した議論でなければならない。女子は性的欲求において、愛情の損失や失望による不満が多い。故に男性は性交によらなくても自慰によって性的不満を解消できるが、女性は対人関係によるのであり自分には容易に解決できないのであり、性的欲求と愛情欲求を満足させるだけでなく生活の支えとなる若年者の結婚を否定すべきではない。

  今回の改正案は性的に早熟な女子に対する敵意が看取できるが、性的に乱交傾向のある少女は、性的同一性の発達課題からみるべきであって、相手を独占できる結婚は情緒的に安定するので、結婚という選択肢を否定するのは酷である。

  特に女子は妊娠するのである。この点について、婚姻適齢を引上げても非嫡出子の法定め相続の差別は廃止され婚外子となっても不利益はないから問題ないとの主張がある。しかし法律婚制度をとっている以上、嫡出子となるべき子供をみすみす婚外子にしてしまうという議論はおかしい。嫡出子でも婚外子でもどうでもよいという議論は、乱暴である。少なくとも当事者の利益に寄り添った見解とはいえない。

  また農山村や離島において今なお古風な婚姻慣習がなされている可能性はあり、民法は国民全体に適合的なものでなければならない。

 

 (六)18歳未満の第二級市民化のおそれ

 

 さらに18歳での一元化は、18歳未満の第二級市民化を促すということである。18才未満は憲法上の権利を享受しえない、第二級国民に貶められる危険性である。すでに青少年保護育成の観点から18歳未満のJKビジネス就労規制、セクスティング規制の政策が打ち出されているが、これまでは婚姻適齢が16歳だったから通常の恋愛について政府の介入を防ぐことができても、婚姻適齢から外されることにより今後18歳未満ということで、死語となったはずの桃色遊戯として非行とされ、性行動の規制の口実として強化されることを強く懸念する。恐ろしい時代になりかねない。18歳以上は大人、未満は子供なので無権利でいいという極端な合理主義的思考に反対する。

  歴史的にみても1617歳の女子は性的に成熟し婚姻にふさわしい年齢であったはずである。(前掲 補遺参照)

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