そもそも成人年齢引下げも反対だ
政治日程は遅れた。今年の通常国会で民法改正を成立させるはずだったが、政府が共謀罪審議を優先させたため、先送りとなり、ハプニング的解散により臨時国会は11月16日から3週間程度と観測されているため、年内成立は困難との報道である。
しかし土壇場の状況にかわりない。 これから反対運動ではまにあわないため、私は民法731条改正の修正1本に絞って抵抗したいと思うが、そもそも成人年齢引き下げも反対であることを説明しておく。
1. 安定している私法関係をいじくる必要などなかった
成人年齢引き下げは国民の7割が反対か積極的には賛成していない、不人気政策といえる。学生運動で若者が要求しているわけでもない。明治九年の太政官布告で満20歳に定められてから、約140年間続いてきたもので国民に完全に定着し安定していた私法関係をあえていじくる必要はないし、大義もない。政治家の取引のためと自己満足のための政策にすぎない。
しかも、政府部内では飲酒喫煙年齢や公営ギャンブルは現行どおりとする方向と報道されている。
イングランドでは酒の購入は18歳以上であり、親の責任下で自宅での飲酒は16歳以上で合法、喫煙も購入は18歳以上だが喫煙自体は16歳以上で合法である[田巻帝子「「子供」の権利と能力-私法上の年齢設定-」山口直也編著『子供の法定年齢の比較法研究』成文堂2017所収]。
我が国ではそうはならない公算であり、成人式で宴会も開けない中途半端な「成人」になりそうだ。
2. それは自民党と民主党の取引きで決まった
そもそも選挙権の18歳引下げの経緯は、2007年第一次安倍内閣で国民投票法を与野党合意で成立させるため当時の自民党の中川昭一政調会長が、民主党の公約だった18歳選挙権を丸呑みしたという政治的取引による。
2014年に自公民三党は国民投票改正法案について合意がなされ、公職選挙法の選挙権年齢について「改正法施行後2年をめど」に18歳以上に引き下げるべきだとする民主党に配慮し、政党間のプロジェクトチームを設置し、改正されたのである。
そして成人年齢も併せて法改正されることになったわけである。
もちろん国民投票法を成立させたかったのは安倍である。そのために民主党の要求を呑んで取引したという経緯である。要するに政治家のメンツをたてることが目的で成人年齢を引き下げるのであり、不人気政策なのは当然のことである。
しかし土壇場の状況にかわりない。 これから反対運動ではまにあわないため、私は民法731条改正の修正1本に絞って抵抗したいと思うが、そもそも成人年齢引き下げも反対であることを説明しておく。
1. 安定している私法関係をいじくる必要などなかった
成人年齢引き下げは国民の7割が反対か積極的には賛成していない、不人気政策といえる。学生運動で若者が要求しているわけでもない。明治九年の太政官布告で満20歳に定められてから、約140年間続いてきたもので国民に完全に定着し安定していた私法関係をあえていじくる必要はないし、大義もない。政治家の取引のためと自己満足のための政策にすぎない。
しかも、政府部内では飲酒喫煙年齢や公営ギャンブルは現行どおりとする方向と報道されている。
イングランドでは酒の購入は18歳以上であり、親の責任下で自宅での飲酒は16歳以上で合法、喫煙も購入は18歳以上だが喫煙自体は16歳以上で合法である[田巻帝子「「子供」の権利と能力-私法上の年齢設定-」山口直也編著『子供の法定年齢の比較法研究』成文堂2017所収]。
我が国ではそうはならない公算であり、成人式で宴会も開けない中途半端な「成人」になりそうだ。
2. それは自民党と民主党の取引きで決まった
そもそも選挙権の18歳引下げの経緯は、2007年第一次安倍内閣で国民投票法を与野党合意で成立させるため当時の自民党の中川昭一政調会長が、民主党の公約だった18歳選挙権を丸呑みしたという政治的取引による。
2014年に自公民三党は国民投票改正法案について合意がなされ、公職選挙法の選挙権年齢について「改正法施行後2年をめど」に18歳以上に引き下げるべきだとする民主党に配慮し、政党間のプロジェクトチームを設置し、改正されたのである。
そして成人年齢も併せて法改正されることになったわけである。
もちろん国民投票法を成立させたかったのは安倍である。そのために民主党の要求を呑んで取引したという経緯である。要するに政治家のメンツをたてることが目的で成人年齢を引き下げるのであり、不人気政策なのは当然のことである。
3. 18歳が徴兵対象の年齢だから選挙権が与えられただけ
主要国についていえばアメリカ合衆国はコモンローの成年は21歳だが、ベトナム戦争の際、反戦運動や学生運動が盛んになり、18歳以上21歳未満の者は徴兵されるのに選挙権がないのは不当だとの主張がさかんになされ、1971年に投票権を18歳に引き下げた(憲法修正26条)。
米国では成人年齢も18歳に引き下げたのは45州であるが、18歳を徴兵対象としたのはルーズベルトにはじまるから、18歳が大人という発想は比較的新しく第二次世界大戦が根本要因といってもよい。
ドイツも同じ事で、学生運動が激しくなり兵役義務が18歳からなのに選挙権が21歳なのは不公平だとの主張により1970年に18歳に選挙権が引き下げられた。政治不信を主張する激しい学生運動を緩和させるための政策だったのである。(国会図書館調査及び立法考査局「主要国の各種法定年齢」『調査資料』 2008-3-b 2008-12月参照)
要するに60年代末期の学生運動を背景に、徴兵制(兵役義務)とのからみで、選挙権も引下げられたということである。それはあくまで、一時の社会現象にすぎないのであって徴兵制のない我が国で18歳に引き下げる理由は見当たらない。若者が選挙権を求めているわけでもなかったのである。
徴兵登録との引き換えならまだわかるが、若者から要求もされてないのにタダでくれてやったのはばかげていた。
4. ..コロラド、ミネソタ州のように選挙権と成人年齢を無理に一致させなくてもよいのでは
米国では成人年齢も18歳に引き下げたのは45州であるが、18歳を徴兵対象としたのはルーズベルトにはじまるから、18歳が大人という発想は比較的新しく第二次世界大戦が根本要因といってもよい。
ドイツも同じ事で、学生運動が激しくなり兵役義務が18歳からなのに選挙権が21歳なのは不公平だとの主張により1970年に18歳に選挙権が引き下げられた。政治不信を主張する激しい学生運動を緩和させるための政策だったのである。(国会図書館調査及び立法考査局「主要国の各種法定年齢」『調査資料』 2008-3-b 2008-12月参照)
要するに60年代末期の学生運動を背景に、徴兵制(兵役義務)とのからみで、選挙権も引下げられたということである。それはあくまで、一時の社会現象にすぎないのであって徴兵制のない我が国で18歳に引き下げる理由は見当たらない。若者が選挙権を求めているわけでもなかったのである。
徴兵登録との引き換えならまだわかるが、若者から要求もされてないのにタダでくれてやったのはばかげていた。
4. ..コロラド、ミネソタ州のように選挙権と成人年齢を無理に一致させなくてもよいのでは
選挙権はまだしも成人年齢引下げには国民の7割が反対しているのである。
私は日本大学法学部民事法・商事法研究会「『民法の成年年齢引下げについての中間報告書」に対する意見」『日本法学』75巻2009年の結論に賛成である。「国民投票法の制定に伴い、成年年齢の引下げが議論されているが、私法においては、満二〇歳の成年制度で長い間安定しており、これを引き下げることは混乱を生じるだけではないかと思われる。‥‥立法趣旨についてきちんとした議論が全くなされてない状況において改正論議だけが先行することは、法改正のあり方として、あまりにも拙速である。」
成人年齢と選挙権は一致しない例はある。アメリカ合衆国では45州が18歳成人年齢だが、コロラド、ミネソタ、ミシシッピが、コモンローと同じく21歳、アラバマ、ネブラスカが19歳である。
私はコロラド、ミネソタ州のように選挙年齢と成人年齢が違っていてもよいと思う。
成人年齢と選挙権は一致しない例はある。アメリカ合衆国では45州が18歳成人年齢だが、コロラド、ミネソタ、ミシシッピが、コモンローと同じく21歳、アラバマ、ネブラスカが19歳である。
私はコロラド、ミネソタ州のように選挙年齢と成人年齢が違っていてもよいと思う。
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