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2018/05/20

麻生太郎財相がセクハラ認定を渋ったとの報道とについての感想

 麻生太郎財務大臣は、福田事務次官とテレビ朝日記者のケースについて、セクハラ罪はないと言ったこと、セクハラ認定を渋ったとか、「被害者」への謝罪がない配慮のない発言だとしてさかんに叩かれているが、セクハラ認定に慎重な姿勢をとることは正しいと考える。
 問題の事案について、全体像が不明なので総合的な評価ができないから安易にきめつけられない。
 報道によれば女性記者は以前にパジャマ姿を見せたりしている。性的挑発的な服装をしていたのかもしれないし、「おっぱい揉ませて」発言に至る前にも交際が有り良好な人間関係を築き、性的冗談や性的会話にも不機嫌にならず乗ってくる女性だったので、性的会話を歓迎せざる行為と相手は認識していないと思わす状況があったから、この女性が好みなので機を見てをみて口説いたということかもしれない。そもそも本当に嫌悪していたのかも本人の発言が直接ないからわからないのである。このときだけの口説きならば執拗性も感じない。性的誘いに応じないなら何か不利益をこうむるぞと威嚇されたというわけでもない。
 加えて、政治記者ならばたんに政策に通じ質疑ができるだけでなく、特ダネを得るために、取材対象にくらいつき取入っていく交渉術にたけているのがプロだろうから、一般のOLを比較すれば、大物に物怖じせずメンタル面の強い人がなる職種といえるので、世間でいわれているほど同情はしない。
 もっとも国の枢要な地位にある幹部としては録音をばらされたり脇が甘く、仮にセクハラではないとしても不倫に発展しうる行為であり、特定の政治記者を信用しすぎたのは軽率としてなにがしかの処分は免れないとしてもセクハラ認定は別問題にしてもよかったのではないか。

一.不快な言動はそれだけでセクハラ認定できないのは当然
(一)EEOCのガイドライン
 アメリカ合衆国ではセクハラはもっぱら、性別に基づく雇用上の差別を禁じた1964年タイトル7の性差別の問題なのだが、1980年EEOC(雇用機会均等委員会)のガイドラインを要約すると、歓迎せざる性的言動がセクシャルハラスメントとなる場合を次のように定義している。
(1) その言動に対する服従が個人の雇用の条件とする場合
(2) その言動に対するその言動に対するある個人の服従または拒絶が、その個人の雇用にに関する決定の起訴となる場合する決定の基盤となる場合
(3) その言動が個人の職務遂行を妨げたり、敵対的職場環境をつくり出した場合 (篠田実紀2004)
 敵対的職場環境型セクハラの定義は、
 「‥‥望まれない性的言い寄り、性的行為の要求、その他の性質を有する言葉又は身体的行為は、次の場合セクシャルハラスメントを構成する‥‥かかる行為が個人の職務遂行を不合理に妨げる又は脅迫的、敵対的もしくは侮辱的な職場環境を不合理に創り出す目的と効果を有する場合」(山崎文夫2004『セクシュアル・ハラスメントの法理』184頁)
 
(二)日本の労働省のガイドライン
 労働省の雇用機会均等法21条2項の管理上配慮すべき指針(平成10年労働省告示第20号及び通達女発第168号平成10年6月11日)の環境型セクシャル・ハラスメントの定義は「職場において行われる女性労働者の意に反する性的言動により当該女性労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該女性労働者が就業するうえで看過できない程度の支障が生じること‥‥‥‥」
 通達では指針を解説して「『女性労働者の意に反する性的言動により当該女性労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該女性労働者が就業するうえで看過できない程度の支障が生じること』とは、職場環境が害されることの内容であり、単に性的言動のみでは就業環境が害されたことにはならず、一定の客観的要件が必要である
 私はこのガイドライン自体もセクハラの定義が厳密でなく問題があると思っているが、単に性的言動のみでなく職場環境が害されたた客観的な条件が必要と明確に述べている。
(三)1998オンケール判決のスカリア判事法廷意見-公民権法Title7が職場における全ての言動や肉体的な嫌がらせを禁じてはいないと明言
 米国では1993年連邦最高裁ハリス対フォークリフトシステムズ判決Harris v. Forklift Systems, Inc., 510 U.S. 17 (1993)が敵対的環境型セクハラの判断基準を示した先例になっているが、要するに客観的に敵対的・虐待的職場環境が作出されているが認定され、被害者の雇用条件を変化させ、悪質な職場環境を創出するほど十分にひどく浸透している場合であり、且つ当該被害者によって主観的にいやがらせ行為であればセクハラと認定される。
 1998年のファラハー対シティオブボカラトン判決Faragher v. City of Boca Raton, 524 U.S. 775 (1998)、では「嫌がらせの客観的過酷さ」は、状況とかかる振舞いが行われた社会的文脈の全てを考慮に入れた上で、「合理的な通常人」が従業員の立場に置かれた観点から判断するべきものとされた。つまり合理的通常人テストプラス総合的判断としたのである。「単なるからかい、当てこすり、極度に重大な場合を除く単独の行為は、労働条件の差別的な変更にあたるものではない‥労働条件の変更にあたるほど極端なものでなければならない」と述べている。 
 同年のオンケール対サンダウン・オフショア・サービスィズ社事件Oncale  v. Sundowner Offshore Services,Inc, et al., 523U.S.75(1998)「Title7は、職場における全ての言動や肉体的な嫌がらせを禁じてはいない。それは、『性を理由とする差別』のみを指している。我々は、たとえ職場での異性間のいやがらせであったとしても性的な内容や暗示を含む言葉をつかったという事だけで機械的に性差別だとは決して判示してこなかった。」「Title7は礼儀作法規範でもない」としている。 
 敵対的環境型ハラスメントは、このような趣旨から突発的、1回性、散発的、間延びした行為ではセクハラと認定されないのである。但し、下級審判例で男性器より精液の発射を見せた事例で1回性のものでもセクハラと認定された例、管理職からレイプされた事例は重大だとされたが例外である。女性器を意味するスラング(日本語に訳すと「オマンコ」)をはいたケースではセクハラと認定されていない。
例えば式守伊之助が酔って若手の胸を触って云々というだけでかなり重い処分が下された、1回性のものである限りセクハラとはいえないと思う。
 要するに環境型セクハラとは
○客観的に敵対的・虐待的な職場環境と認定
○雇用状況の深刻な悪化
○当事者が主観的にも歓迎せざるいやがらせと認識
の3要件がそろわなければ公民権法違反にならない。我が国の労働省の基準も矮小化はされているが大筋では同じである
 ところが3条件でなく1条件未満でもセクハラにしてしまうのが人事院規則である。
 
二 セクハラとはいえないものセクハラとし違法性のないものもセクハラと定義する人事院の定義
 我が国のセクハラ概念は、対価型・環境型の区別について米国の定義を輸入しているものの、環境型の被害者の雇用状況を変え、 敵対的労働環境をつくり出すほど十分に深刻または蔓延的であるという定義は直訳されず、米国の判例では当然のように出てくる「敵対的」「虐待的」「濫用的」「威嚇、嘲笑、侮辱」「悪質な職場環境を創出する」「十分にひどく浸透」といった語が欠落しているのである。このためにセクハラ概念が拡大しやすい素地をつくっているといえる。
 人事院規則10-10及び運用について(通知)平成10年11月13日人事院事務総長における環境型セクハラ定義の問題点(東京都もほぼ同じ) セクシャル・ハラスメントを「及び職員が他の職員を不快にさせる職場外の性的言動」と異常に幅広く定義し、「セクシャル・ハラスメントに起因する問題」を「セクシュアル・ハラスメントのため職員の勤務環境が害されること及びセクシュアル・ハラスメントへの対応に起因してその職員が勤務条件につき不利益をうけること」とし、通知によると『職員の勤務環境が害されること』とは「職務に専念できなくなる等のその能率の発揮が損なわれる程度に当該職員の勤務環境が不快になることをいう」(山崎文夫『セクシュアル・ハラスメントの法理』2004 345頁以下)としているが、米国や労働省における環境型セクシャル・ハラスメントの成立要件になっている悪質な職場環境を作り出したという客観的な成立要件を外して、セクハラの概念規定ではなく「起因する問題」にすり替えたことにより、異常に拡散した概念となっていることである。これは本末転倒であり、労働省機会均等法ガイドラインの環境型セクハラ概念には、「敵対的・虐待的」といった言葉を欠いていることを疑問としても、一応、セクハラの概念規定として、「能力の発揮に重大な悪影響が生じ」「就業するうえで看過できない程度の支障」が生じなければそれはセクハラではないとしているし、例えば性的冗談は継続性、繰り返しが要件としているように、アメリカの基準を矮小化しているものの、一応限定的にセクハラ概念を規定しているが、人事院規則やそれに準拠した東京都のセクハラ概念にはそれすらなく、労働省がグレイゾーンとしていたものも含めてなんでもセクハラと言いつのるものとなっている。
  なお、山崎文夫2004『セクシュアル・ハラスメントの法理』348頁によると人事院規則の指針で例示されている、身体的特徴を話すこと、卑猥な性的冗談、性的からかいの対象とする等の行為には人格権侵害の不法行為が成立しない行為が多数含まれていると批判的なコメントを述べている。
 一口でいえば人事院規則はセクハラ概念をはみ出ており、一般には違法とされることのない行為を含み、事実上無害な行為も禁止し、エチケット規範のようになってしまっている。
 一般企業でも従業員とのデートを禁止する規則を制定する場合があるが、セクハラの芽をを摘む趣旨としての自主規制であり、これらの規則は人事院規則も含めてセクハラと認定されるにいたらない行為まで広範に禁止しているというべきである。むろん企業は企業秩序維持のために就業規則を定め実質的違反者を懲戒処分できるが、従業員は企業秩序遵守義務はあっても、一般的な支配に服するものではないから問題はある。
 要するに「他の者を不快にさせる職場における性的な言動」という漠然不明確なき規定はセクハラ認定の一要素ともいえない緩さがある。
 この規定は一般論にされやすい。正確には対象となった個人が主観的に歓迎されない行為と認識していることがセクハラと認定するための一要素である。一要素にすぎないものを十分条件にすることももちろん間違っている。
 3つの必要条件があるのに1つの必要条件かそれ未満でも十分条件にしてしまうのは非論理的なのである。
 マスコミ報道なども、不快な表現だからセクハラだと言いつのっているが、私には私鉄総連の春闘ワッペンはきわめて不快だが、不快でない人もいるように、セクハラはあくまでも当事者の問題であり、加えて、客観的な職場環境等の悪化等の認定が必要でそれだけではセクハラと認定はされないのである。 
 セクハラといっても、それはどの概念規定にもとづくのか、違法性がないものもセクハラとするような人事院の規則なのか、厳密ではないが一応限定的に概念規定をする労働省のものか、私のようにそもそもセクハラは合衆国の公民権タイトル7違反(性差別)の問題からはじまったから、その観点から厳密に概念規定すべきという立場によって、違ってくる性格のものであり、いわんやセクハラとはポリティカル・コレクトネスでもなければ、礼儀作法規範でもないのに、本件に限らずなにか一言言えばセクハラと糾弾するのは間違っているし、マスコミや野党議員から迫るからセクハラと認めるという性格のものではない。
 結局些細なことでもセクハラにしてしまう風潮は、ロマンチックパターナリズム、過剰な女性に対する心理的保護になっていると考え、有能な男性の働き手を貶める結果にもなることは社会にとっても損失であり、そのような見地からみて麻生大臣の一連の発言それ自体は非難するに値しないというのが私の意見です。
 
三、付録【本文と一部重複するが合衆国連邦最高裁主要判例の要点を以下述べます】
 
 ざっくりいえぱ対価型ハラスメントとは性的要求に応えることが雇用継続・昇給・昇進の要件とされること。敵対的環境型ハラスメント脅迫的・敵対的・侮辱的不良環境におかれ被害者の雇用条件を変化させ、悪質な職場環境を創出するほど十分にひどく浸透すること。性的誘い等を受けた側が歓迎せざる行為であることは前提条件である。
 対価型ハラスメントについてはわかりきったことなのでここでは言及しない、問題は敵対的不良環境型セクハラだが、以下アメリカ合衆国で判断基準を示した主要判列の要点を記す
 
(一)Meritor Savings Bank v. Vinson, 477 U.S. 57 (1986),

  連邦最高裁が初めてセクハラについて判決をくだし、敵対的不良環境型セクハラを当該行為 が「『被害者の雇用状況を変え、 敵対的労働環境をつくり出す』 ほど十分に深刻または蔓延的である」 (sufficiently severe or pervasive ‘to alter the conditions of[the victim’s]employment and create an abusive working environment)ことと定義した。
   事案は ヴィンソン女史は19歳の1974年にMeritor Savings銀行の金銭出納係訓練生として雇用され、係長にまで昇進したが1978年11月病欠を過度に使いすぎたために解雇された。上司Taylor氏に初めて誘われたのは彼女が訓練生の時だった。その後数年間にわたり、解雇を恐れるあまり上司Taylor氏と営業時間内外にわたって40~50回の性関係に陥ったという主張である。又、ある証言によればTaylor氏は他の従業員の前で彼女を撫でていた。又Taylor氏はトイレに入っている彼女をレイプしたという。事実審連邦地裁では相反する証言があって(彼女は性的挑発するドレス、音声の証言がある)それは自発的な関係で、銀行における継続的雇用と無関係という判断からセクハラとは認定しなかった。最高裁は二人の関係は 自発的ではなく要求がヴィンソン女史にとって歓迎されるものか否かという点を判断基準とした控訴審の判決を支持した。それが歓迎せざる行為だったのか事実審に差し戻す判決を下した。(平野晋1991、岡本幹輝2002。篠田実紀2004)
 もし連邦地裁の判断を支持していたなら、セクハラという言葉が世界的に広がることはなかったという意味で残念な判決だが、このケースでも40~50回の性行為が自発的な関係で歓迎せざる行為ではなかったなら当事者にとってはセクハラにはならない。
 問題は、 何を敵対的職場環境というか、被害者の精神的損害の査定の判断基準だが、下級審判例では、女性側に不利な基準と有利な基準とが現れたので混乱した状況となった。
 第6巡回区のRabidue v.Osceola Refining Co., 805 F.2d 611, 620 (CA6 1986)の厳格な判定基準で(環境型セクハラが成立する要件として、発言や行為で、他人を困らせたり、不愉快にさせただけでは救済を求めることはできないのであって、被害者は明確な、有形の被害Tangible Harmを被ったことを証明を要件とする。 有形の害とは、経済上の損害や、精神科医や分析医の診断によって認められた精神上の傷害である。神経症に陥るほどの深刻な精神的危害が客観的に立証されない限りセクハラで救済を求めることはできないとした。私はコモンローの不法行為法依拠した保守的な司法判断として優れていたと評価する。(平野晋1991)
 一方、第9巡回区のElison v ,Brady ,924F 2d.872(91hCir.1991)は Rabidue 判決に反対するとした上 で 、“reasonable woman ” 或いは” reasonable victim of the same sex” の基準を適用し、より女性固有の心理に焦点をあてるものであり、フェミニズムに近いこれは女性に有利な判断基準といえる。(篠田実紀2004)
 
(二)Harris v. Forklift Systems, Inc.,510 U.S. 17 (1993) 
 1985年4月から1987年10月までの2年半の間を通して女性マネージャーに対して,他の社員の前で何回か「君は女だ。なにが分かるというんだ。」「男のレンタル・マネージャーがほしい。」と発言し、一度は「ムレムレ尻女」と言うなど、しばしば女性であることを理由として侮辱し、また、他の社員の前で「君の昇給交渉のためにホリデーインに行かないか」、「顧客と週末にセックスすると約束したか」と言ったり,自分のズボンの前ポケットにコインを入れて女性社員にそれを取り出すよう要求したり,女性社員の前に物を投げてそれを拾わせて覗いたり、女性社員の衣服について椰楡するなど,しばしば女性社員を性的あてこすりのターゲットとした使用者(社長)の行為について、会社側勝訴の高裁判決を覆し、公民権法違反の環境型セクシュアル・ハラスメントが成立するとしたものであ
 ハリス判決は第六巡回区連坊高裁のラビデュー対オセオラ判決の判断基準により深刻な心理的傷害の立証がないとしてセクハラと認めなかった連邦高裁の判断を覆し環境型セクハラの判定基準を次のように示した。
『差別的な威嚇、嘲笑、侮辱などが、被害者の雇用条件を変化させ、悪質な職場環境を創出するほど十分にひどく浸透している場合には、Title7違反になる』When the workplace is permeated with discriminatory intimidation, ridicule, and insult that is sufficiently severe or pervasive to alter the conditions of the victim’s employment and create an abusive working environment, Title VII is violated.”
『客観的な敵対的、虐待的職場環境、すなわち合理的人間(道理をわきまえた通常人)ならば敵対的ないし虐待的であると認定できるような環境を作出するほどひどくはなくまた広範でもない行為は、Title7の適用範囲を超えている』“Conduct that is not severe or pervasive enough to create an objectively hostile or abusive work environmentan environment that a reasonable person would find hostile or abusiveis beyond Title VII’s purview.”
また「私たちは、環境が「敵対的である」か「虐待的であるか」が単にすべての事情を見ることによって決定できると言うことができる。これらは差別している行為の頻度を含むかもしれない。厳しさ。それは、物理的に険悪であるか、屈辱的であるか、単なる不快な発声か。そして、それは無分別に従業員の業務遂行を妨げるのであるかどうか。原告が、環境が虐待的であることが実際にわかったかどうか決定すると従業員の心理学的な幸福への効果はもちろん関連している。しかし、いかなる他の関連要素のようにも、精神的傷害は考慮に入れられるかもしれないが、どんなただ一つの要素も必要ではない。」と述べ、、客観的に敵対的、虐待的職場環境と形成していることが環境型セクハラの基準であって、深刻な心理的傷害の立証は不要であると結論した。
 私の見解は精神的傷害という医学的に客観的に判定ができるラビデュー判決の判断基準がコモンローの不法行為法に依拠した判断で安定的で、優れていたと判断するため残念に思う。この判断基準を退けた(コモンローの否定)ことで、ハリス判決は女性に有利な基準といえる。但し、本判決は敵対的職場環境の認定につき「合理的通常人」reasonable personテストを採用し、第9巡回区のより女性に有利な「合理的女性」テストはとらなかった。女性固有の心理理に配慮すべきとする下級審判例も退けられているからフェミニスト法学に迎合したわけではなく、中道的な判断基準と評価してもよい。
(三)Faragher v. Boca Raton, 524 U.S. 775 (1998)

 ハリス判決を踏襲し「嫌がらせの客観的過酷さ」は、状況とかかる振舞いが行われた社会的文脈の全てを考慮に入れた上で、「合理的な通常人」が従業員の立場に置かれた観点から判断するべきものとされた。つまり合理的通常人テストプラス総合的判断としたのである。「単なるからかい、当てこすり、極度に重大な場合を除く単独の行為は、労働条件の差別的な変更にあたるものではない‥労働条件の変更にあたるほど極端なものでなければならない」と述べている。 
(四)Oncale  v. Sundowner Offshore Services,Inc, et al., 523U.S.75(1998 )

 被害者が同性である場合にセクハラが認められるかが争われた容認した事件だが、スカリア法廷意見は次のように環境型セクハラの基準について述べた。
『Title7は、職場における全ての言動や肉体的な嫌がらせを禁じてはいない。それは、『性を理由とする差別』のみを指している。我々は、たとえ職場での異性間のいやがらせであったとしても性的な内容や暗示を含む言葉をつかったという事だけで機械的に性差別だとは決して判示してこなかった。』『我々が‥‥強調したように、この規定は、同性のあるいは異性との日常的なふれあいのなかの真正ではあるが害の無い相違には及ばない。職場での性を理由とするセクハラの禁止は‥‥ただ、被害者の職場環境を変えるのに十分な客観的いやがらせを禁じているだけである』『通常の職場における社交(男同士の馬鹿騒ぎや異性間でのいちゃつきであっても)を『職場の環境』に関する差別であると誤解しないことを保証する』『我々はさらに『全ての状況を考慮して』、原告の立場に置かれた合理的な人間という観点で、セクハラの客観的なひどさを判断すべきだということを強調してきた』『職場における行為の現実的影響は、しばしば、使用された言葉の詳細あるいは行われた肉体的行為の単なる再現によっては十分に把握されることのない周囲の環境、予期、人間関係の配置に依存している。良識や社会的背景に対する適切な感受性によって、裁判官や陪審は、単なるからかいや同性間での馬鹿騒ぎと、合理的な人間が原告の立場に立ったときに過度に敵対的で虐待的であると認識する行為とを見分けることが可能になるのである。』。などとして、単なるからかいや馬鹿騒ぎがセクハラにはあたらない。
 
参考文献
岡本幹輝
2002 「米国判例に見る教育現場での最近のセクハラ・性差別事例」白鴎大学論集,17(1)(ネット公開)
篠田 実紀
2004「アメリカ合衆国における職場のセクシュアル・ハラスメント : 救済から防止への道のり」神戸市外国語大学外国学研究 59 (ネット公開)
中野通明
1992「米国における雇用差別と最近の状況(上)」国際商事法務20巻6号1992
平野晋
1991「セクシャル・ハラスメント法入門」国際商事法務19巻12号
山崎 文夫
2004「セクシュアル・ハラスメントと企業内自主規制」比較法制研究 (27)(ネット公開)
2004『セクシュアル・ハラスメントの法理』労働法令)
ウェプサイト
米国におけるセクハラ問題(如水会ネット)
http://jfn.josuikai.net/ronbun/0011.html
ケネス J. ローズ米国の性的嫌がらせ法の法的遵守
http://rosegroup.us/files/Website--Sex%20Harassment--ILS--v.2%20Japanese%20version%20(00009052).PDF
 

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