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2018/06/03

私鉄総連春闘ワッペン闘争の法的評価(下書きその3)

承前
3.最高裁は抽象的危険説を採用した
〔具体的な業務阻害がなくても企業秩序維持のために禁止できる〕



 日テレ報道番組コメンテーターとしても活躍された河上和雄氏(故人)による国労札幌地本ビラ貼り事件・最三小判昭54・10・30判批[河上和雄1980]は、「本判決が、具体的企業の能率阻害を判示せず、抽象的な企業秩序の侵害のおそれのみをもって、施設管理権の発動を認めている点は‥‥目黒電報電話局事件に関する最高裁判決(昭和五二・一二・一三)の延長線上にある判示として、あらためていわゆる抽象的危険説を確立したもの」と評されているが重要な論点である。
 目黒電報電話局事件・最三小法判昭52・12・13で決着をみるまで、企業施設内の政治活動に関して具体的危険説をとるものと抽象的危険説をとるものに下級審判例が分かれていた。
 
(1)具体的危険説
 具体的危険説とは「現実かつ具体的に経営秩序が紊され経営活動に支障を生じる行為」でなければ禁止できないというもの。
 ナショナル金銭登録機事件東京高判昭44・3・3労民集20-2-227、東洋ガラス事件横浜地川崎支決昭43・2・27労民集19-1-161、日本パルプ工業事件鳥取地米子支判昭50・4・22判時796-98、明治乳業事件福岡地判昭51・12・7判時855-110がそうした判例である[高木紘一1978]。
 例えば日本パルプ工業事件鳥取地裁米子支部判昭50・4・22は「ただ抽象的にそのような危険性があることのみを理由として企業内における政治活動の自由(表現の自由)を無条件、一般的に禁止することは、私的自治の許容限界を超越するものであり、民法九〇条の公序良俗に違反して無効であると解さざるをえず、私的自治の名のもとに右政治活動が禁止される範囲は、現実かつ具体的に会社業務が阻害される場合に限られるといわなければならない」と判示する。 
 具体的危険説が、事業所・職場という場所を公共に開かれた表現活動が可能なパブリックフォーラムのように解するのは適切でない。企業施設内に従業員が出入りが許されているのは、労務提供のためであり、表現する場所としての権利性はないというべきである。来客にしても事業所に用事があるため一時的に施設内の滞留が許されているにすぎない。具体的危険説は異様に政治活動をしたい労働者に有利な判断といえる。
 
(2)抽象的危険説


 これに対して、抽象的危険説とは作業能率の低下等の「おそれ」、すなわち、経営秩序の侵害に対する抽象的な危険が存すれば禁止しうるとするもので、この立場に立脚する判例として間谷製作所事件東京地決昭42・7・28労民集18-4-846、ナショナル金銭登録機事件東京地判昭42・10・25労民集18巻5号、横浜ゴム事件東京高判昭48・9・27判時733号104頁。目黒電報電話局事件・最三小法判昭52・12・13民集31-7-974である[高木紘一1978]。
 横浜ゴム事件東京高判昭48・9・27は「「企業と雇傭契約を締結した者(従業員)は職場の規律を守り、誠実に労務を提供すべき契約上の義務を負うものであり、企業の施設又は構内において労務の提供と無関係な政治活動を自由に行い得るものとすれば、もともと高度の社会的利害の対立、イデオロギーの反目を内包する政治活動の性質上、従業員の間に軋轢を生じせしめ、職場の規律を乱し、作業能率を低下させ、労務の提供に支障をきたす結果を招くおそれが多分にあるから、使用者が企業の施設又は構内に限ってこれらの場所における従業員の政治活動を禁止することには合理的な理由があるというべきであり、これをもって従業員の思想や信条の自由を侵し、又は思想、信条を理由として差別的取扱いをいい得ないことは勿論、言論その他の表現の自由に対する不当な制限ということもできないと解される。‥‥」と判示しており、これが目黒電報電話局事件・最三小法判昭52・12・13の基礎となった下級審判例と評価できる。
 目黒電報電話局最高第三小法廷判決は次のように判示した。
 「一般私企業においては、元来、職場は業務遂行のための場であつて政治活動その他従業員の私的活動のための場所ではないから、従業員は職場内において当然には政治活動をする権利を有するというわけのものでないばかりでなく、職場内における従業員の政治活動は、従業員相互間の政治的対立ないし抗争を生じさせるおそれがあり、また、それが使用者の管理する企業施設を利用して行われるものである以上その管理を妨げるおそれがあり、しかも、それを就業時間中に行う従業員がある場合にはその労務提供業務に違反するにとどまらず他の従業員の業務遂行をも妨げるおそれがあり、また、就業時間外であつても休憩時間中に行われる場合には他の従業員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後における作業能率を低下させるおそれのあることがあるなど、企業秩序の維持に支障をきたすおそれが強いものといわなければならない。したがつて、一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべきであり‥‥‥‥局所内において演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を行うことは、休憩時間中であつても、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあつて、その内容いかんによつては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがあるのであるから、これを局所管理者の許可にかからせることは、前記のような観点に照らし、合理的な制約ということができる。」と判示し抽象的危険説をとったものと評価されているが、表現者自身の職務専念義務違反というだけでなく、他の職員の職務専念義務履行妨害となるおそれがあることは企業秩序を乱すこととなると判示した点で新味といえる。
(3)政治活動も組合活動も同列に抽象的危険説を採用


 上記はいずれも政治活動に関する判例だが、国労札幌地本ビラ貼り事件・最三小判昭54・10・30は企業施設内の組合活動についても、目黒電報電話局事件・最三小法判昭52・12・13と同様の抽象的危険説を支持する判断をとったものといえる。
 したがって、政治活動と組合活動は表現活動であるとしても性質の異なる問題であるが、企業秩序論の観点では同列に論じてよいと考える。
 国労札幌地本事件でビラが貼られたロッカーとは国鉄札幌駅の小荷物、出札、駅務、改札、旅客などの各係事務室内、同駅輸送本部操連詰所および点呼場に、札幌運転区検修詰所に備え付けのロッカーであるが、ビラは貼付されている限り視覚を通じ常時職員等に対しいわゆる春闘に際しての組合活動に関する訴えかけを行う効果を及ぼすものである、最高裁判決はそれは直接かつ具象的に業務を阻害するものではないが、禁止できるとした。
 国鉄は鉄道事業等の事業を経営し能率的な運営によりこれを発展させ、もつて公共の福祉を増進するとの目的にかなうように、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するという抽象的な理由でビラ貼付を禁止できると判示したのである。
 すなわち国労札幌地本ビラ貼り事件・控訴審判決札幌高裁昭49・8・28は「控訴人らが右ロッカーに本件ビラを貼付したことにより被控訴人の業務が直接阻害されあるいは施設の維持管理上特別に差し支えが生じたとは認めがたい等の諸般の事情を考え合わすと‥‥本件ビラ貼付行為は、正当な組合活動として許容されるべき」と判示し、具体的危険説をとってといるがこの判断は上告審判決で覆されたのである。
 上告審判決最三小判昭54・10・30民集33巻6号647頁は、「貼付されたビラは当該部屋を使用する職員等の目に直ちに触れる状態にあり、かつ、これらのビラは貼付されている限り視覚を通じ常時右職員等に対しいわゆる春闘に際しての組合活動に関する訴えかけを行う効果を及ぼすものとみられるのであつて、このような点を考慮するときは、上告人が所有・管理しその事業の用に供している物的施設の一部を構成している本件ロツカーに本件ビラの貼付を許さないこととしても、それは、鉄道事業等の事業を経営し能率的な運営によりこれを発展させ、もつて公共の福祉を増進するとの上告人の目的にかなうように、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保する、という上告人の企業秩序維持の観点からみてやむを得ないところであると考えられ、貼付を許さないことを目してその物的施設についての上告人の権利の濫用であるとすることはできない。‥‥‥剥離後に痕跡が残らないように紙粘着テープを使用して貼付され、貼付されたロツカーの所在する部屋は旅客その他の一般の公衆が出入りしない場所であり、被上告人らの本件ビラ貼付により上告人の本来の業務自体が直接かつ具象的に阻害されるものでなかつた等の事情のあることは‥‥‥うかがい得ないわけではないがこれらの事情は、いまだもつて上記の判断を左右するものとは解されないところである。従って被告人のらのビラ貼付行為は‥‥‥上告人の企業秩序を乱すものとして、正当な組合活動であるとすることはできず」上司が「中止等を命じたことを不法不当なものとすることはできない」と判示した。
(4)抽象的危険説は確実に維持されている


 抽象的危険説はその後の国労札幌地本判決を引用した判例で確実に維持されている。いずれも集会等無許可施設利用に関する事案だか゜゛、以下のような判例を挙げることができる。
イ..日本チバガイギー事件 最一小判平1・1・19労判533号7頁が容認した原判決である東京地判昭60・4・25労働判例452号27頁  http://web.churoi.go.jp/han/h00308.html
 組合の食堂利用の集会及び屋外集会の申し出の拒否を不当労働行為とした中労委の判断を否定したもので「‥‥本件食堂の使用や屋外集会を参加人の希望どおり許可したことによる現実の業務上の支障は必ずしも大きくなかったものと推認されなくもないが、他方工場部門とは別に本部の従業員の就業時間は午後五時四五分までであってその間に集会が行われるとすれば就業中の従業員が集会に気をとられ、職務に専念することができないなどの事態も予想しえないだけでなく‥‥そして参加人が集会の開催を午後五時に固執した理由は専ら組合員の帰宅時間の遅れを防ぐといった自らの結束力の弱さからくる事由であり、これに固執する合理性に乏しいこと‥‥、原告が参加人からの午後五時からの本件食堂の使用申出あるいは屋外集会を許可しなかったことについて、原告の権利濫用と認められるような特段の事情があったとはいえ‥‥ない」と判示。
 「就業中の従業員が集会に気をとられ、職務に専念することができないなどの事態も予想しえないだけでなく‥‥」というたんに抽象的なおそれがあるという理由で不許可が正当化されている。
ロ..済生会中央病院事件 最二小判平1・12・11 民集43-12-1796http://web.churoi.go.jp/han/h00554.html
 勤務時間内であるが事実上の休憩時間、業務に支障のない態事実上の休憩時間業務に支障のない態様様でなされた無許可組合集会に対する警告書交付は不当労働行為当たるとした、原判決を破棄自判。原判決の控訴審が是認している東京地判昭61・1・29労判467号18頁は「その開催された時間帯も事実上休憩時間と目される時間帯であり、業務や急患に対応しうるように配慮された方法で行われ、現実に業務に支障が生じていないこと、‥‥これら事情は、本件集会が就業時間後に開催しなかったのが外来看護婦の中に保育の必要性がいた者がいたにすぎないものであったとしても、‥‥特段の事由に該当するものというべきであり、本件職場集会をもって違法ということはできない。」と判示した。
対して最高裁判決は「一般に、労働者は、労働契約の本旨に従って、その労務を提供するためにその労働時間を用い、その労務にのみ従事しなければならない。したがって、労働組合又はその組合員が労働時間中にした組合活動は、原則として、正当なものということはできない。‥‥、本件職場集会(一)、(二)は、労働時間中に、病院の管理する物的施設(元空腹時血糖室、テニス・コート)を利用して開かれたものである。‥‥、労働時間中に職場集会を開く必要性を重視して、それが許されるとすることができないことも‥‥当然である。‥‥結局、病院が本件職場集会(一)、(二)に対して本件警告書を交付したとしても、それは、ひっきょう支部組合又はその組合員の労働契約上の義務に反し、企業秩序を乱す行為の是正を求めるものにすぎない‥‥」と判示しているが、業務を阻害しない態様であることは組合活動は勤務時間内の組合活動を正当化することできないことを明確にした判例ともいえる。
ハ. オリエンタルモーター事件 最二小判平7・9・8判時1546-130http://web.churoi.go.jp/han/h00640.html
組合に対する食堂利用拒否が不当労働行為とした原判決を破棄自判。「本件で問題となっている施設が食堂であって、組合がそれを使用することによる上告人の業務上の支障が一般的には大きいといえないこと。組合事務所を認められていないことから食堂の使用を認められないと企業内での組合活動が困難となること。上告人が労働委員会の勧告を拒否したことの事情を考慮してもなお、条件が折り合わないまま、上告人が組合又はその組合員に食堂の使用を許諾しない状況が続いていることをもって、上告人の権利の濫用であると認められるべき特段の事情があるとはいえず、組合の食堂利用拒否が上告人の食堂使用拒否が不当労働行為に当たるということはできない。」と判示し、やはり業務上の支障が一般的には大きいといえないことが組合活動を正当化する理由にはならないことを明らかにしている・
 業務に具たて意的な支障がないことは、特別の事情として組合活動を正当化する根拠にはならないことは、済生会中央病院事件判決で、オリエンタルモーター事件判決で重ねて示されているのであって。札幌地本判決の判例法理は変質することなく安定的に維持されていると理解してよい。
 必ずしも業務上の支障があったとはいえないということは企業施設内の無許可組合活動を正当化することにはならないという判断は一貫しているのである。
引用
河上和雄
1980企業の施設管理権と組合活動」「法律のひろば33巻1号
高木紘一
1978ジュリスト臨時増刊666号202頁 政治活動の禁止と反戦プレートの着用――目黒電報電話局事件

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