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2019/01/14

地方公営企業に適用できる施設管理権(庁舎管理権)や行政財産の目的外使用許可の裁量等の判例法理(その1)

第一 地方公営企業に適用できるいわゆる施設管理権の3つの系統の判例法理

 

 

一 小論の目的

 

 我が国の労組法は、労働組合の資格要件や労働委員会制度などを規定するが、集団的労働法上の実体的な権利義務についての記述は少なく、団体行動(組合活動及び争議行為)の中心テーマである正当な行為であるか否かは、大部分が判例・学説の解釈に委ねられている。

 したがって労働委員会の命令以外に救済命令取消訴訟等判例の膨大な蓄積があるが、裁判所が案出した判例法理、先例の判断枠組が決め手になるのである。

 この小論は、地方公営企業における庁舎管理権ないし施設管理権の発動、つまり労務指揮権の及ばない勤務時間外休憩時間等も含めた庁舎構内(企業施設内)の組合活動(集会の開催、演説行為、ビラ貼り、ビラ配り、旗上げ、マスコット闘争、抗議行動その他の示威行為、他の職員の執務妨害、募金活動、署名活動、政治活動、立て看等工作物の設置)当該事業所以外の組合員による点検・オルグ活動、ピケッティング、外部の者の立ち入り、面会の強要、物品販売、保険勧誘等を規制していくために、その法的根拠となる判例法理の概略を整理して説明することが目的である。 

 

 

 判例法理を分類して以下の3つの系統の総てが地方公営企業に適用できると考える。

 

 3つの系統の判例法理とは

 

(一)一般私企業に適用される判断枠組。企業秩序論の判例法理

 

 指導的判例は、国労札幌地本事件最三小判昭541030民集336676(ビラ貼り戒告処分を適法とする)主な引用判例は、済生会中央病院事件最二小判平元・11211民集43-12-1786(無許可集会警告を適法とする)、オリエンタルモーター事件最二小判平798判時1546130頁(無許可食堂利用拒否を適法とする)など多数

 

 上記の判例法理の要所を示せば以下のとおりである。

 

 企業の管理する施設は、企業秩序に服する態様において利用されなければならない

 

 労働者は、企業の所有し管理する物的施設の利用をあらかじめ許容されていても、雇用契約の趣旨に従って労務を提供するために必要な範囲において、 企業秩序に服する態様において利用するという限度にとどまる。

 

 使用者の許諾なしに物的施設を利用する権限を有さず、使用者に受忍義務はない

 

 労働組合又はその組合員であるからといって、使用者の許諾なしに物的施設を利用する権限を有さない。もっとも企業内組合においては当該企業の物的施設を利用する必要性の大きいことは否定できないが、物的施設の利用は、本来、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものである。必要性が大きいことのゆえに、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を利用しうる権限を取得し、また、使用者において組合活動のためにする施設の利用を受忍しなければならない義務を負う理由はない。

 

③権利の濫用と認められる特段の事情がない限り正当な組合活動に当たらない

 

 使用者の許諾を得ないで企業施設を利用して組合活動を行うことは、使用者の有する権利の濫用と認めせれるような特段の事情が認められ場合を除いて、正当な組合活動にはあたらない。

 

 使用者は、無許諾施設利用に対して、中止、原状回復等の指示、命令のほか規則の定めるところに従い、懲戒処分を行うことができる

 

  使用者は、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもつて定め、又は具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができる。

 

 以上は若干言い換えをしたものの、大筋で、国労札幌地本判決の説示と同じである。

 

 なお、オリエンタルモーター事件最二小判平798が説示する「使用者が労働組合による企業施設の利用を拒否する行為を通して労働組合の弱体化を図ろうとする場合に不当労働行為が成立し得ることはいうまでもない」は総合花巻病院事件・最一小判昭60 523労働委員会関係裁判例集20164頁、が病院施設利用を拒否するに至った真の理由は、組合の上部団体加入を嫌悪し、これを牽制、阻止することに他ならなかったとして、組合運営に対する支配介入と判示した先例にもとづくと考えられるが、こうした権利の濫用と認められる特段の事情がない限り、施設の利用拒否が不当労働行為とはされない。

 

 

(二)行政財産の目的外使用(地方自治法238条の4第7項)の判例法理

 

 公用財産としての水道局の庁舎は行政財産であり、公有財産であり、企業用資産でもある。

 地方公営企業は、地方公共団体と別個の独立した法人格を有さないので、企業用資産も地方公共団体に帰属し、地方自治法上の行政財産として規制を受けるのは、企業用資産の範疇も同じことであるから、地方自治法238条の47項(旧4項)の目的外使用「行政財産はその用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる」の判例法理も適用される。

 なお東京都水道局の場合、地方自治法238条の47項の行政財産の目的外使用は、東京都公有財産規則ではなく、東京都水道局固有資産規程で運用がなされている。

 行政財産は行政執行の物的手段であり行政目的のために利用され、その用途のみに用いるのが本来のもので、原則として私法上の運用を禁止している(自治法238条の41項)が、市町村合併や少子化にともなう庁舎や学校の空きスペースを効果的に活用したいとの要望により、平成18年度地方自治法の改正で余裕スペースの貸付制度等が設けられており[奥宮京子・高橋哲也2015]、本来の用途と目的外で活用することは政策的に認められているのであって、目的外使用許可それ自体が非難される要素はないといえるだろう。 

 最高裁が学校施設の目的外使用について初めて判断を下した呉市立二河中学校事件・最三小判平1827民集602401(教研集会使用不許可を違法とする)の判旨が、学校施設以外でも多く引用されていて、判断枠組として定着している。

主な引用判例・大阪市組合事務所使用不許可処分事件・大阪高判平2762判時228228頁(平成24年度のみ違法、平成2526年度は適法とする)、枚方市組合事務所使用料徴収減免申請不許可事件・大阪地判平28328掲載TKC(使用料徴収を適法とする)、大阪市教職員組合分会会議使用不許可事件・大阪地判平291220掲載TKC(不許可を適法とする)など。 

 指導的判例の呉市立二河中学校教研集会使用不許可処分事件・最三小判平1827の判断枠組は、地方自治法238条の47項(旧4項)の目的外使用許可について、用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできると、管理者に裁量を認めたうえで、次のように裁量権の濫用として違法となるかどうかの判断枠組を説示した。

 「その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査において、‥‥その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である。」と従来の重大な事実誤認や社会通念からの顕著な逸脱という社会通念審査(最小限審査)に加えて、判断過程合理性審査[本田滝夫2007]を採用し、審査密度を濃くした審査方法を示したことが注目された。

そして本件を裁量権の濫用とした決め手は、判断過程合理性審査に過大考慮・過小考慮定式を当てはめたことである。

 「本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。」

重視すべきでない考慮要素とは過去に学校に右翼団体の街宣車が来て街宣活動を行ったことがあったという不許可の理由であり、当然考慮すべき事項として教研集会は自主的で自律的な研修を奨励する教育公務員特例法19条、20[平成15年改正で21条・22]の趣旨にかなうことなどを挙げている。

 従って当局は処分をする際の考慮事項(事実関係について過大考慮・過小考慮定式の審査に耐えられる必要がある)について注意しなければならないということである。

 しかし一方で、「職員団体にとって使用の必要性が大きいからといって、管理者において職員団体の活動のためにする学校施設の使用を受忍し、許容しなければならない義務を負うものではないし、使用を許さないことが学校施設につき管理者が有する裁量権の逸脱又は濫用であると認められるような場合を除いては、その使用不許可が違法となるものでもない。」という国労札幌地本判決の趣旨をなぞって、受忍義務を明確に否定しているのであって、教研集会不許可を違法としたことから、組合活動一般に好意的になったわけではない。

 というのも 一般私企業一般に適用される判断枠組である国労札幌地本事件最三小判昭541030は、無許諾の企業施設内組合活動は正当な組合活動としないものである。このことは憲法28条が認める労働基本権といえども契約その他、市民法秩序で認められている権原なくして、私有財産を利用し得る何らの権限を与えるものではないことを示す[河上和雄1980]。

労働基本権は市民法秩序を超克し、所有権、財産権の侵害を正当化するというプロレイバー学説を明確に否定しているのである。

同判決を引用する主要な判例も、労働委員会がとりがちな権利の濫用となる特段の事情論に法益権衡論的な諸般の事情を勘案する調整的アプローチを否定しており【註1】、行政庁の裁量であっても、私企業における先例と著しく乖離した判断はとれないはずだからである。

 とはいえ判断過程合理性審査に団結権等に配慮義務があるという組合寄りの下級審判例(大阪市組合事務所使用不許可処分事件・大阪地裁平26910)が存在する。

 しかしこの判断は、控訴審の大阪高判平2762により否定されている。同判決は、組合が無許諾で行政財産を利用する権限がないことを明示し、私企業の施設管理権の指導判例である国労札幌地本事件最三小判昭541030

の判例法理とのアナロジーで、行政裁量を論じているのだ[武井寛2015]。

 同判決が判断枠組として引用しているのは呉市立二河中学校事件・最三小判平1827であるが、国労札幌地本事件最三小判昭541030、済生会中央病院事件最二小判平元・11211、オリエンタルモーター事件最二小判平798といった私企業の先例も参照指示され、それに準拠した判断をとっている。

 この趣旨からすると行政財産の目的外使用(地方自治法23847項)としての組合活動も、一般私企業の施設管理権の判断枠組と著しく乖離するようなことにはならない。

 もっとも大阪高判平2762においても原審と同様、団結権等の支障の有無・程度をも考慮すべき要素としているが、その意味するところは、オリエンタルモーター事件最二小判平798が説示する「使用者が労働組合による企業施設の利用を拒否する行為を通して労働組合の弱体化を図ろうとする場合に不当労働行為が成立し得る」という趣旨と概ね同じと考えられる。使用許可の判断過程で団結権等の支障を考慮するということは、配慮義務をさすものではない。

 

 

(三)財産管理法制とは無関係な管理作用の発動としての庁舎管理権の判例法理

 

 主なものとして昭和郵便局(全逓昭和瑞穂支部)事件・最一小判昭57107 民集36102091(掲示板撤去を適法とする)、全国税足立分会事件・最二小判昭59127労判425号30頁(掲示紙撤去を適法とする)、墨田民商(向島税務署)事件・東京高判昭525・30刑事裁判月報956291頁(集団陳情者等の立入阻止を適法とする)など。

 

 昭和郵便局(全逓昭和瑞穂支部)事件・最一小判昭57107は組合掲示板一部撤去を適法としたものだが、掲示板の利用関係につき、庁舎管理権に基づく掲示物の使用許可によって事実上使用を許可されたものであり、その許可の性質は講学上の「許可」、すなわち一般的禁止の解除であって、これにより「「当該場所を使用するなんらかの公法上又は私法上の権利を設定、付与する意味ないし効果を帯有するものではなく‥‥国有財産法一八条三項にいう行政財産の目的外使用の許可にも当たらない‥‥本件掲示板ないし庁舎壁面についての使用権ないし利用権を取得するものではない‥‥庁舎管理者は、庁舎等の維持管理又は秩序維持上の必要又は理由があるときは、右許可を撤回することができる‥‥」と説示し、組合側に占有利用の権利性がない以上、原状回復請求及び債務の不履行を理由とする損害賠償請求は理由がないと判示した。

 

 墨田民商(向島税務署)事件・東京高判昭525・30は下級審判例だが、その理論的説示は明解である

「‥‥税務署の庁舎は、右のように公用物であるから、道路や公園のように公共の用に供される行政財産と異なり、一般公衆が自由に出入りしたりすることのできるものではないが、納税義務者、徴収義務者その他税務署の所掌事務に関し用件のある者は、その用件に関して税務署内へ平穏に立入る自由が認められていることはいうまでもない。‥‥‥‥しかし‥‥税務署長は、税務署の業務が円滑かつ能率的に遂行されるための措置を講ずる権能と責務を有するものであり、外来者の税務署庁舎内への立入りを認めることによって執務に支障をきたすような事態の発生が客観的にも予測されるなど、税務署長において同庁舎内の秩序を維持するために必要があると認めるときは、庁舎管理権に基づき、外来者の庁舎内立入りを禁止することができるものと解するのが相当である。‥‥庁舎管理権は、単に公物である庁舎の物的状態を保持する権能のほか、庁舎内における業務の遂行を確保し、秩序を維持する権能を含み、その権利行使の結果、庁舎の出入りに関して対人的規制が生ずることも許容されるものと解すべきである。」

 

三 3つの判例法理がいずれも地方公営企業に適用されると判断する根拠

 

 

(一)地方公営企業も私企業一般に適用される企業秩序論の判例法理を適用してよい理由

 

 一般私企業に適用され、利用価値が高いのは、昭和50年代に最高裁が案出したAの企業秩序論であり、なかんずく国労札幌地本事件・最三小判昭541030の判断枠組である。

 企業施設内において使用者が許諾していない組合活動は、権利の濫用が認められる特段の事情がある場合を除いて正当な組合活動に当たらないと判示し、使用者に中止・解散・退去命令権、警告、原状回復指示、懲戒権を認めている。

 この判例法理が卓越している理由を一口で云えば、受忍義務説の明確な否定、法益衡量による調整的アブローチを否定しプロレイバー学説を粉砕したことにある。判例は安定的に維持され今日では法的常識となっている。

 ところで国鉄の判例が一般私企業の先例とされているのは、最高裁が国鉄の懲戒処分の法的性質を私法上の行為と判示(国鉄中国支社事件・最一小判昭45228民集28166)し、電電公社においても労働関係を私法上の行為と判示したためである(目黒電報電話局反戦プレート事件・最三小判昭521213民集317974)。

 したがって、企業秩序論は原則として官公庁の庁舎管理権とは一線を画しているという見方ができる。

 一方、現業国家公務員について、郵政省の郵便局職員につき、長野郵政局長事件・最二小判昭49719民集285897 が、勤務関係は公法関係と判示している。

 地方公営企業については、名古屋市水道局事件・最一小判昭5664労判36757頁が勤務関係を公法関係と判示しており、懲戒処分は行政処分であって、私法上の行為とはされていないので、私法上の労働関係とされている三公社の先例が直ちに適用されるのかという疑問が生じるところではある。

 しかしながら全逓新宿郵便局事件・最三小判昭581230判時1102140頁(郵便局局舎内の無許可組合集会に対する解散の通告、監視等を不当労働行為に当たらないと判示)が国労札幌地本事件・最三小判昭541030の判断枠組を引用していることから、企業秩序論の判例法理は勤務関係が公法関係である職場の判断枠組にも適用されている。

 最高裁が是認した原判決東京高判昭55430労民312544は「企業主体が国のような行政主体である場合と、また私人である場合とで異なるものではない」と述べ企業秩序論が汎用できることを説示しており、この趣旨から地方公営企業にも企業秩序論の判例法理に準拠した判断をとることができるとみてよいだろう。

 加えて、近年の大阪市組合事務所使用不許可処分事件・大阪高判平2762判時228228頁が、労働組合等が当然に行政財産を組合事務所として利用する権利を保障されてはいないと説示し、これは、企業の物的施設を行政財産に言い換えただけで、その論拠となる先例として、国労札幌地本事件最三小判昭541030民集336676、済生会中央病院事件最二小判平元・11211民集43-12-1786、オリエンタルモーター事件最二小判平798判時1546130頁を参照指示していることから、A系統の先例は勤務関係が公法関係の庁舎管理であってもそれに準拠した判断を示しているので、先例としての意義を有していると見なして差支えない。 

 

 

(二)地方自治法23847項(旧4項)の目的外使用許可の裁量処分に関する判例法理は適用範囲が不確定としても地方公営企業にも適用される

 

1 呉市立中学校事件・最三小判平1827の判例法理の影響力

 

 近年、地方自治法238条の4項第7項(旧4項)の目的外使用許可の裁量処分に関する判例が蓄積している。

 例えば20年ほど前の広島県における教職員組合に対して集会等に学校施設の目的外使用許可した慣行を見直したことや、平成25年制定大阪市労使関係条例12条が「労働組合等の組合活動に関する便宜の供与は、行わないものとする」と定めたことによる目的外使用許可処分に対して、組合側が、不当であるとして国家賠償法上の損害賠償を求める訴訟である。

 なかでも呉市立二河中学校教研集会使用不許可事件・最三小判平1827民集602401(使用不許可処分を違法とする)において、最高裁が初めて学校施設の目的外使用許可に裁量があることを認め、裁量処分について従来の社会観念審査と異なる処分の際の考慮事項(判断過程)の審査を行う方式をとったことが注目され、指導的判例の位置づけになっている。

 同判決の判断過程審査方式は、学校施設のみならず、公立の福祉施設や、市庁舎の職員組合に対する便宜供与にいたるまで、下記のとおり特許使用とは思われない、一次的使用の事例まで、広範囲にわたって判断枠組として引用され影響力が大きいのである。

 

 

***呉市立中学校事件・最三小判平1827を引用する判例***

 

○都立王子養護学校事件・東京地判平18.6.23判タ1239169頁(都障労組の教研集会の使用不許可処分を違法とする)

●大阪市立人権センター事件大阪地判平203.27判タ1300177頁(部落解放同盟支部事務所の目的外使用不許可処分を適法とする)

●杉並区立和田中「夜スペシャル」目的外使用許可処分違法確認等請求事件・東京地判平22・3・30判時208729頁(私塾連携有料補習授業の目的外使用許可及び使用料免除を適法とする)

●渋谷区行政財産目的外使用許可取消請求等事件 東京地判平25611判例地方自治383号22頁(在日トルコ人子弟のための教育事業に対する、学校施設の一部の目的外使用許可及び使用料免除を適法とする)

◯大阪市労組組合事務所使用不許可事件・大阪地判平26910判時2261128

(組合事務所使用不許可を違法と目的外使用許可処分の義務付けと国家賠償請求を認める)◯大阪市立西九条小学校等教研集会使用不許可処分事件・大阪地判平261126判時2259114頁(使用不許可処分を違法と国家賠償法上の違法も認める)

○●大阪市労連、市職、市従、学給労等組合事務所使用不許可事件・大阪高判2762判時228228頁(原判決変更。平成24年の使用不許可処分のみ違法、平成2526年の不許可処分は適法)

◯●大阪市労組・大阪市労働組合総連合組合事務所使用不許可事件・大阪高判27626判時2278号32頁(原判決変更。平成24年の使用不許可処分のみ違法、平成2526年の不許可処分は適法)

○大阪市立西九条小学校等教研集会使用不許可処分事件・大阪高判平271013判時2296号30頁(大阪市側敗訴部分一部取消、使用不許可処分は違法だが国家賠償法上の違法、過失は認められない)

●枚方市組合事務所使用料徴収処分取消請求事件・大阪地判平28328掲載TKC(市長が組合事務所の使用料減免を認めないことに違法性はない)

●大阪市教職員組合分会会議使用不許可事件・大阪地判平291220判タ145211頁(大阪市労使関係に関する条例第12条にもとづく組合分会会議の施設利用不許可を適法とする)

 

 

2 呉市立中学校事件・最三小判平1827の判例法理の適用範囲の問題

 

1)庁舎管理権は財産管理法制になじまなない部分もあり、庁舎等の目的外使用に当たるすべての場合に適用されるものではない

 

 しかし、問題はこの判例法理の適用範囲である。結論を先にいうと不確定といえるので、どうであっても対応できるようにしておくのが肝要といえる。

 

 通常、地方自治法の解説書で地方自治法28条項47号(旧4号)の目的外使用許可の典型的として例示しているのはまず厚生施設、食堂、売店、理髪室や記者クラブ等広報施設といった占有権を設定する特許使用である。短期間のものとしては講演会、研究会や、災害時の応急施設利用が挙げられている。

 使用許可の範囲は、東京都の場合、東京都公有財産規則の29条の2に列挙されている・水道局の場合は東京都固有資産規定の32条に列挙されている事柄である。石原都知事が推進したロケーションボックスも行政財産の目的外使用とされている。

 しかしながら、官公庁の庁舎管理権は、理論的に財産管理法と公物管理法に区別できるのであり、財産管理法制とは無関係の管理作用としての庁舎管理権の発動も当然あるのだから、地方自治法等の行政財産の管理法制で一元的に把握されるべきものではない。

 国の省庁においては、地方自治法28条の47項(旧4項)と同様の目的外使用の規定があるのは国有財産法186項(旧3項)である。

組合掲示板の利用関係につき、国有財産法とは無関係の庁舎管理の管理作用ととらえる最高裁の先例がある。

昭和郵便局(全逓昭瑞支部)掲示板撤去事件・最一小判昭5710.7 民集36102091(郵便局長による掲示板の一部撤去を適法とした)であるが、国家公務員の職場における組合掲示板の利用関係について、組合側の主張(使用賃貸契約で行政財産の特許使用であるとして原状回復請求、債務不履行による損害賠償請求)を退け、下級審の国有財産法18条3項(現行では6項)の目的外使用とする見解も退け、掲示物の掲示の一括許可が庁舎管理権の行使として掲示板の許可使用を認めるものすぎず、公法上又はその私法上その使用権又は利用権を設定するものではなく、国有財産法18条3項(現行では6項)所定の行政財産の目的外使用にもあたらないとした。

 郵政省庁舎管理規程の運用通達は「『庁舎等の一部をその目的外に使用を許可する』とは、国有財産法一八条‥‥に定める使用許可ではなく、申出によって庁舎管理者がその権限のわく内で事実上使用することを許可するものであって、権利を設定する行為ではない。‥‥」として、国有財産法18条3項所定の行政財産の目的外使用の許可は、行政財産に占有権を設定するような場合にのみに関わるものに限定しているが、最高裁は郵政省運用通達の枠組を是認したのである。

 村上敬一調査官判解も、国有財産法18条3項の規程が掲示物の掲示や物品の移動販売その他の一切の庁舎等の目的外使用に当たるすべての場合に適用されると解することは到底できないと述べているとおりである。

 この趣旨からすると、一般論として掲示板に限らず一時的短時間無償で集会のために会議室、休憩室等を目的外使用許可すること、外来者の物品移動販売や、保険の勧誘も、財産管理法上の目的外使用許可ではなく、それとは関係ない管理作用としての事実上の許可とみなしてよい。

 墨田民商事件・東京高判昭525・30刑事裁判月報956291頁で適法とされた、税務署における集団陳情者の庁舎内立入阻止も、国有財産法とは直接関係ない庁舎管理権の発動といえる。

 したがって郵政省に限らず、一般に官公庁では財産管理法と公物管理法、あるいは特許使用と許可使用を区別し庁舎管理を行っているとみることができ、東京都についていえば財産管理法に相当するのが東京都公有財産規則、東京都水道局場合は、東京都水道局固有資産規定、公物管理法が各庁舎管理規程ということができるだろう。

 組合が日常活動として行う支部・分解役員会議、あるいは旗開きなど行事、その他組合員の会議等の会議室利用は、許可使用であって特許使用とはいえない。闘争時の庁舎構内、事務室内での示威行為を含む決起集会、旗、幟、横断幕、立看その他の工作物の設置、庁内でも更新、示威行為、ゼッケン、鉢巻、腕章等の着用、物品移動販売、保険の勧誘も含めこれらの許可、不許可についていえば固定資産規程の使用許可申請にはなじまない事柄といえるだろう。

 これを財産管理法制と結びつけて使用権・利用権を設定した行為とみなす必要は必ずしもないといえる。

 ところで東京都庁内管理規則(水道局の規則も若干違いがあるがほぼ同じ)は、第4条に禁止事項が列挙され、庁内管理者が特別の事情があり、かつ、公務の円滑な遂行を妨げるおそれがないと認めた場合、禁止事項を解除して許可することができるとなっているが、この許可が地方自治法28条所定の目的外使用許可にあたるとは特に記載もないので、そのように解する理由はなく、庁舎管理規程にもとづいて、中止命令、解散命令を行う場合(そうした現実の事例を知らないが)、地方自治法の行政財産管理法制とは無関係の管理作用ということになるだろう。

 

2)とはいえ学校施設では組合の施設利用は、例外なく地方自治法238条の47項の目的外使用の事案とされているので無視できない

 

 しかしながら、注目すべきは近年、以下のような学校施設の判例で、教職員組合の定期総会等規模の大きな集会のみならず、組合分会の会議といった日常的な組合活動の会議室利用にいたるまで、地方自治法23847項(旧4項)の目的外使用の事案とされている。

●広島県高教組「人事委員会報告説明会」県立高校体育館使用拒否事件・広島地判平14328、裁判所ウェブサイト(不許可処分は適法。ただし不許可を文書で通知する義務に違反した点を違法として教育長の責任を認め10万円の賠償を命令)

●広島県高教組定期総会学校施設使用不許可事件 広島地判平1729-裁判所ウェブサイト(高校の体育館で定期総会を開催するための使用許可申請の校長による不許可処分を適法とする)

●大阪市教職員組合分会会議使用不許可事件・大阪地判平291220TKC(大阪市労使間関係条例12条にもとづく不許可を適法とする)

 一連の判例をみると、特許使用と許可使用の違いは議論になっておらず、例えば   大阪地判平291220では大阪市立学校管理規則11条において、「学校の施設及び設備の貸与については、校長の意見を聞いて教育委員会が許可する。ただし、軽易又は定例の事項については校長が許可する。」と定められ、通達(昭和2485日市教育長通ちょう)に基づき、学校施設の1日以内の目的外使用の許可に関する事務については、授業及び管理上支障のないときに限り、各学校長により実施されているが、これを地方自治法23847号の目的外使用としているのである。

 そうすると、短時間の施設利用は財産管理法制と無関係と主張しても、組合側が地方自治法23847号の目的外使用と主張してくることがありうるから、呉市立中学校事件判決の審査方式に対応した論理を当局側が用意しておく必要がある。

 

【註1】例えば池上通信機事件最三小判昭63・7・19判時1293は、 「組合員が無許諾で従業員食堂を組合活動のために使用した場合に組合又はその責任者の責任を追求し処分の警告を発するなどしたのは‥‥施設管理権の正当な行使として十分是認することができる」と判示した控訴審(東京高判昭59・8・30労民集35巻3・4号459頁)の判断を是認しているが、伊藤正巳の結果的同意意見が「特段の事情論」に法益権衡論を組みこんだ評価診断を主張している[渡辺章2011 184頁]。しかしこれは一裁判官の先例に反した勝手な見解にすぎず、多数意見は認めていないことを逆に示すものである。

  日本チバガイギー事件・最一小判平元・1・19労働判例533号7頁は、組合が団体交渉報告集会を本部社屋1 階の食堂を午後5 時から使いたいという申し入れに対し、会社は、工場部門の終業時刻は午後5 時とはいえ、本部の終業時刻は午後5 45 分で、それまでは本部への来客もあり、午後6 時以降の使用しか認められないなどとした事案で一審東京地判昭60・4・25労民集36巻2号237頁は本件食堂の使用の申出に対し許可しないことが権利の濫用と認められるような特段の事情はないとして、これを業務上ないし施設管理上の支障に藉口した不当労働行為とした中労委命令を取り消した。控訴審(東京高判昭60・12・24労民集36巻6号785頁)でも一審の判断を維持し、上告審は原判決を是認しているが、中労委の上告趣意は「労働者の団結権、団体行動権保障の趣旨からする施設利用の組合活動の必要性と、その施設利用により使用者が蒙る支障の程度との比較衡量により、両者の権利の調和を図ることが要請される。そして、使用者の施設管理権行使が右の調和を破るときには、権利の濫用があるといわなければならない」としており、これも法益権衡ないし法益調整論を「特段の事情」に組み込んで、判例法理を変質させ風穴を開けようとする趣旨であるが、最高裁はこれを明確に退けたといえる。

 

 

引用・参考

奥宮京子・高橋哲也

2015「はんれい最前線 余裕教室の活用施策をめぐる対立に司法判断 : 教育委員会が学校法人等に対し行った学校施設目的外使用の使用料免除は適法 : 裁判所[東京地裁平成25.6.11判決]判例地方自治392河上和雄

1980 「企業の施設管理権と組合活動--昭和541030日最高裁第三小法廷判決について(最近の判例から)」法律のひろば331

武井寛

2015「大阪市庁舎内組合事務所不許可処分と労使関係条例-条例制定による「便宜供与」廃止」季刊教育法25115

本多滝夫

2007「平成18年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊1332〕」3940

渡辺章

2011『労働法講義 下 労使関係法・雇用関係法Ⅱ』信山社184

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