地方公営企業に適用できる施設管理権(庁舎管理権)や行政財産の目的外使用許可の裁量等の判例法理(その8
(承前)
四 組合旗掲出、掲揚・横断幕・立看板設置・タクシーバレード等
(一)総論
1.国労札幌地本判決の判断枠組による判例
旗上げ行為、組合旗設置について私企業の判例として●平和第一交通事件・福岡地判平3・1・16や、●社団法人全国社会保険協会連合会(鳴和病院)事件があるが、国労札幌地本事件・最三小判昭54・10・3の判断枠組が引用され、組合旗設置を正当な組合活動ということはできず、組合旗の撤去、処分警告書の交付等を不当労働行為にあたらないとする。
しかし、懲戒処分については、●全国一般労働組合長崎地本・支部(光仁会病院・組合旗)事件(損害賠償請求訴訟)長崎地判平18・11・16が、組合が抗議活動として組合旗を病院正門の左右と公道に面した位置に計5本を設置した行為に対して、病院は撤去を求めたが、組合は約3ヶ月半にわたり設置しつづけたために、施設管理権及び所有権を侵害する違法行為として分会長に対して停職3か月(その間、賃金不支給、本件病院敷地内立入禁止)の懲戒処分を科したという事案で、組合旗設置行為による信用毀損の損害を認めたうえ、停職3ヶ月の量定も重すぎることはないと判示したが、控訴審福岡高判平20・6・25は信用毀損の損害は認めつつ懲戒処分は権利の濫用として無効とした
一方、同事案の救済命令取消請求訴訟である国・中労委(医療法人光仁会)事件東京地裁平21・2・18は、懲戒処分を行うこと自体は不相当とはいえないとしながら、懲戒事由である本件組合旗設置に比して、著しく過重なものであるということができ、組合活動に対する嫌悪を主たる動機として、その下部組織の分会長に対し、懲戒事由に比して過重な処分を科したものと認め、労組法7条3号の不当労働行為に当たると判示し、控訴審東京高判平21・8・19も原審の判断を維持している。
従って著しく過重な量定の懲戒処分であると、組合活動に対する嫌悪が主たる動機と認定されたときに、支配介入とみなされるから、処分の量定が重すぎるのは安全運転といえない。
2.官庁の庁舎管理権判例
●北見郵便局懲戒免職事件・札幌高判昭54・3・29は、 郵政省庁舎管理規程によると、庁舎管理者の許可なく広告物またはビラ、ポスター、旗、幕その他これに類するものを掲示、掲揚または掲出したときは、その撤去を命じ、これに応じないときは庁舎管理者はみずから撤去することができる旨規定されていて、当局が全逓旗、横断幕および立看板の撤去を正当な業務とし、撤去作業を妨害した行為が国家公務員法99条に違反し、同法82条1号、3号に該当するとした。従って郵政省庁舎管理規程のような明文規定があることが望ましい。
(二)主な組合旗・横断幕等に関する判例
○北見郵便局事件・札幌地判昭50・2・26判時771号3頁
本件は庁内デモ行進中に管理者をデモに巻き込み傷害を与えたことを理由とする懲戒免職処分が、過酷に失し懲戒権の濫用として違法としたが、組合旗等の撤去については、正当な職務行為であり、撤去作業を妨害した行為は、これを違法なものと評価せざるを得ないとする。
北見郵便局の庁舎管理者である同郵便局長の許可を受けることなく、通用門の両側の鉄柵に全逓旗が各2本ずつ計4本、入口に立看板が1枚立てられ、図書室前の鉄柵に横断幕2枚張られた。郵便局長は組合書記局に撤去するよう命じたが応じず、管理職により撤去作業を始めたところ、原告ら組合員が妨害行為をしたことが懲戒事由の一つとされておりそれ自体は違法であるとしている。 郵政省庁舎管理規程によると、庁舎管理者の許可なく広告物またはビラ、ポスター、旗、幕その他これに類するものを掲示、掲揚または掲出したときは、その撤去を命じ、これに応じないときは庁舎管理者はみずから撤去することができる旨規定されている(六条、一二条)。全逓旗、横断幕および立看板はいずれも北見郵便局長の事前の許可を得ないで掲出されたものであり、原告はその撤去命令に従なかったのであるから、同局長はみずからこれを撤去することができると説示する。
●北見郵便局懲戒免職事件・札幌高判昭54・3・29判時940号114頁
スト指導その他を理由とする懲戒免職を違法とした一審を破棄し適法とする。庁舎管理者の許可を得ないで掲出された組合旗、横断幕及び立看板を管理者側が撤去しようとするのは正当な職務行為であり、右撤去作業を妨害した行為が国家公務員法99条(信用失墜行為の禁止)に違反し、同法82条1号、3号に該当するとした。
○国鉄松山電気区・松山地判昭61・12・17労判488号25頁
組合旗を撤去した電気支区長に対して暴言、暴行に及んだ国労愛媛支部書記長の懲戒免職を解雇権の濫用として無効とする
●ミツミ電機事件・東京高判昭63・3・31判タ682号132頁
争議中の集会、デモ、泊込み、ビラ貼付、赤旗掲揚等を理由として組合役員になされた懲戒解雇を是認。
●ミツミ電機事件・東京高判昭63・3・31判タ682号132頁
争議中の集会、デモ、泊込み、ビラ貼付、赤旗掲揚等を理由として組合役員になされた懲戒解雇を是認。
○国鉄松山電気区事件・高松高判平元・5・17労判540号52頁
棄却、組合旗を撤去した電気支区長に対して暴言、暴行に及んだ国労愛媛支部書記長の懲戒免職を解雇権の濫用として無効とした原審を支持。
●平和第一交通事件・福岡地判平3・1・16労経速1423号3頁
組合旗の撤去、処分警告書の交付等を不当労働行為とした労委命令を取消し、施設管理権の行使として是認された例であるが、国労札幌地本事件最高裁判決を引用したうえ「組合が掲揚した組合旗は、昭和六一年六月一〇日ころにはその数が二〇本に及び、原告事務所の美観を著しく損ない、通行人や乗客に奇異な印象を与えるものであることが認められ、、‥‥、組合が依然として組合旗等の掲揚を中止しないために、やむをえず掲揚されていた組合旗等を自力で撤去し、無断で組合旗を掲揚していた組合員に対し、再発防止のための責任追及及び処分の警告を発したものであって‥‥必要な施設管理権の行使であって、組合が企業内組合として団結を示すために掲揚することが必要であることを十分考慮に入れても、それゆえに組合が原告の施設を使用できる当然の権利を有するものではなく、原告が組合の組合旗掲揚を受忍する義務もないというべきである。」と説示。
●ミツミ電機事件・東京地八王子地判平6・10・6・24労働判例674号45頁
組合の行った座り込み・デモ・ビラ貼付・赤旗掲揚・立て看板等を理由とする、組合委員長の解雇を是認。
●社団法人全国社会保険協会連合会(鳴和病院)事件 東京地判平8・3・6労判69381頁号
組合旗撤去は不当労働行為に当たらないとする中労委命令を支持。
「本件組合旗は、縦約数十センチメートル、横約一メートルで、掲揚場所も正面玄関のほぼ真上に当たる屋上であり、歩道から鳴和病院構内に入る地点からも、また、道路を隔てた向かい側からも見通せる非常に目につきやすい位置に掲揚されたことを認めることができる。‥‥使用者は、施設管理権を有しているのであるから、施設の使用を制限することは、これが施設管理権の濫用と認められる特段の事情がない限り適法であって、施設の使用」と説示。と到底認めることができない。」
●大和交通事件・大阪高判平11・6・29労働判例773号50頁
(タクシーパレード事案)
労働組合が違法な争議行為を行ったことを理由とする組合執行委員長の懲戒解雇の効力が争われた事案において、原判決を取り消し、組合執行委員長の懲戒解雇を有効とする。ストの規模、本件ピケの態様に照らせば、その違法性が強いとしたうえで、タクシーパレード(平成八年四月一九日午後四時に奈良市内の猿沢池に集合した上、被告のタクシー10台、他のタクシー会社13台、その他他宣伝カー等4台で、使用者の許可なく、タクシーの後部窓に「‥‥賃金改善せよ」等の文字を記載した布をテープで張り付け、同日四時一〇分ころから四時五〇分ころまでの間、猿沢池から奈良陸運支局までの奈良市内を走行するパレードを行った)についてもその間、乗客の利用を拒否して足を奪い、公共交通機関として業務を妨害し、タクシー事業者においてもっとも重要な財産である営業車両を業務と関係のないことに持ち出したことに鑑みれば、料金を納入したからとしいって違法性が阻却されるとはいえないと述べ、施設管理権を侵害し、従業員の就業時間中の職務専念義務、組合活動禁止義務に違反し、控訴人の名誉、信用を害する違法な組合活動と断じた。
●全国一般労働組合長崎地本・支部(光仁会病院・組合旗)事件長崎地判平18・11・16
全国一般労組長崎地本長崎合同支部(医療法人光仁会)事件とは平成16年、長崎市にある精神科専門の医療法人光仁会病院(精神病床561床、従業員271名=当時)と全国一般労組長崎地本長崎合同支部(長崎地区の中小企業・商店など労働者が職種・企業を越えて組織された組合、組合員数221人、光仁会病院の組合の分会は61名)との間で夏期賞与支給をめぐって4回の団体交渉が行われたが妥結に至らなかったことから、分会長及び組合員らは、抗議行動として、赤地に白抜き文字で「団結」「全国一般」「長崎地本」などと記された組合旗を病院正門の左右両側に及び公道に面した位置に計5本を設置した。これに対して病院は再三にわたり撤去を求めたが組合は正当な組合活動であるとして応じず、約3ヶ月半にわたり設置しつづけたために、病院は、組合旗設置行為が施設管理権及び所有権を侵害する違法行為として分会長に対して停職3ヶ月の懲戒処分を科したという事案で、病院側が組合旗設置行為の違法を前提に、原告医療法人が被告らに対し損害賠償を求めた甲事件及び丙事件と、懲戒処分の無効を前提に、被告が原告医療法人に対し賃金請求をするとともに、被告組合支部及び被告が原告医療法人に対し損害賠償を請求する乙事件の3事件が併合審理され、被告組合支部と分会長の請求を棄却し、医療法人側の損害賠償請求を一部認容した。
判断枠組として昭和54年最判(国労札幌地本事件)が引用され、本件事実関係によれば、本件組合旗設置行為は、約三か月半も継続したものであり、しかも、四本の組合旗は公道に面した場所に掲揚され、残り一本の組合旗も正門を入ってすぐの場所に掲揚されていて、組合旗の大きさ、色彩、記載された文字等に照らすと、これらを見る者の視覚を通じて、組合活動を展開している旨の訴えかけを行う効果を十分に有していたものと認められる。そのため、本件組合旗設置行為により軽視することのできない信用毀損の損害を被ったのであって、被告組合支部はその執行委員会の決定に基づき、違法な本件組合旗設置行為に及んだのであるから、民法七〇九条による不法行為責任を負うものである。また、分会長は、違法な本件組合旗設置行為を実際に実行した主体の一人であり、その個人責任が否定されることにはならず、民法七〇九条による不法行為責任を負うものである。
原告が、病院施設に掲揚された組合旗を目にした医療従事者、患者及びその家族、近隣住民、金融機関、行政機関等から、悪しき評価を受け、本件組合旗設置行為によりその信用を害されたのは明らかである。原告は、精神に障害を負った患者の治療を行うための精神科の病院を経営しているため、その静謐な環境と相反する本件組合旗設置行為に対する一般の評価も厳しくなったものと考えられ、本件組合旗設置行為による信用毀損の損害が認められる。本件組合旗設置行為による原告光仁会の損害額は、合計275万5千円とした。また懲戒処分の内容として、三か月の停職処分が重すぎるということはできないと判示した。
□全国一般労働組合長崎地本・支部(光仁会病院・組合旗)事件・福岡高判平20・6・25労判1004号134頁
本件、組合旗設置行為は違法であるから、不法行為責任を負う。また正当な組合活動とはいえず、就業規則上の懲戒事由に該当するが、使用者の敵対的行動や団体交渉に対する消極的態度に反発したことにも起因し、当該懲戒処分は組合やその活動に対する敵意の発現であったとも考えられ、組合員に対する停職処分は、行為内容と対比してあまりに均衡を失し、社会通念上合理性を欠き無効とする。(TKC参照)
(判文の要所)
「本件のように、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該施設を管理利用する使用者の権利を侵し、企業秩序を乱すものであって、正当な組合活動には当たらないものと解するのが相当である(昭和54年最判参照)。
イ そして、控訴人丁原ら組合員は、被控訴人の許諾を受けることなく、光仁会病院の病院施設に本件組合旗を設置したものであるから、被控訴人が本件組合旗の設置を許さないことをもって権利の濫用であるということがいえない限り、本件組合旗設置行為等は、被控訴人の施設管理権を侵害し企業秩序を乱すものであって、正当な組合活動ということはできず、違法というべきである。‥‥‥本件組合旗設置行為等は違法であって、不法行為を構成するというべきである。そして、控訴人丁原は控訴人組合の決定に基づいて本件組合旗を設置したものであるから、同控訴人らが不法行為責任を負うことは明らかであり、また、控訴人組合本部についても、同控訴人は控訴人組合の上部組織であって、実質的にも指揮監督関係にあったものと認められるから、民法715条に基づく責任(使用者責任)を負うというべきである。
本件懲戒処分のような、使用者の懲戒権の行使には裁量が認められているのであるが、これがその原因となった行為との対比においてはなはだしく均衡を失し、社会通念に照らして合理性を欠くなど裁量の範囲を超えてなされた場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である(最高裁昭和49年2月28日判決・民集28巻1号66頁、最高裁昭和50年4月25日判決・民集29巻4号456号参照)。
これを本件についてみると、本件組合旗の設置は正当な組合活動とはいえないのであるから、‥‥約108日間の長期間にわたって本件組合旗を撤去しなかったものであって、‥‥その情状は決して軽くはないというべきである。
しかしながら、控訴人組合が本件組合旗設置を決意したのは、被控訴人の控訴人組合に対する敵対的行動や団体交渉に対する消極的態度に反発したことにも起因するものであったこと、本件組合旗の設置期間が長期に及んだのは、被控訴人が、本件組合旗の設置に対抗して、本件ビラを配布したり本件日の丸等を設置し、さらに、その間に行われた団体交渉にも消極的な態度で臨んだことにも起因していること、本件懲戒処分は、3か月間にわたって賃金を支給せず、かつ光仁会病院の敷地内にも立入りができないという厳しい処分であるにもかかわらず、被控訴人の理事会においては、今まで組合旗が設置してなされた組合活動に懲戒権が行使されたことはないことや、光仁会病院における過去の懲戒権行使の事例について検討した形跡はなく、ただ、本件組合旗の設置期間が108日間であったから3か月の停職にするという薄弱な理由で本件懲戒処分を決定していること、労働協約の一括しての解約通告においても、被控訴人において事前にその必要性の有無等を真摯に検討したことをうかがわせる資料はないこと、被控訴人は、本件ビラに控訴人組合を揶揄するような内容の記載をし、従業員からも組合側が設置したと誤解されるような横断幕を設置し、また、本件懲戒処分直後から光仁会病院の正門にガードマンを配置して控訴人丁原の立入りを阻止しており、これらの行動と本件組合旗設置前からの被控訴人の敵対的態度とを併せると、被控訴人には控訴人組合やその組合活動に対する敵意がうかがわれ、本件懲戒処分はその発現であったとも考えられること、以上の事実を総合して考えると、本件懲戒処分は、本件組合旗設置行為等の行為内容と対比してあまりに均衡を失するものといわざるを得ず、社会通念上合理性を欠くというべきである。したがって、本件懲戒処分は権利の濫用として無効である。‥‥ 」
なお、本件組合旗の設置による信用毀損等の無形の損害として、8月5日に取引銀行の担当課長が、翌6日に医療技術者養成学校の関係者が、9月30日に保健所の担当者が、10月25日に常勤医師が、同月28日には取引銀行の担当者が、それぞれ被控訴人の関係者に苦言を呈したり、被控訴人を敬遠するなどの状況になり、病院の信用が毀損されたことは明らかであるとし、損害は150万円をもって相当と認めた。
◯国・中労委(医療法人光仁会)事件東京地裁平21・2・18労判981号38頁
本件は前掲と同じく、組合旗設置行為が施設管理権及び所有権を侵害する違法行為として分会長に対して停職3ヶ月の懲戒処分を科した事案で、この懲戒処分と平成16年10月12日付け団体交渉の申入れに応じなかったことが、中労委によって、不当労働行為(労組法7条3号、同2号所定のもの)に当たるとされ、救済命令を発せられたことから、医療法人側がこれを不服として取消しを求めた事案である。
昭和54年10月30日最判(国労札幌地本事件)の判断枠組を引用して、本件組合旗設置を正当な組合活動ということはできず、原告がこれにつき懲戒処分を行うこと自体は不相当とはいえないとしながら、原告は団体交渉において、賃金ないし一時金の支払に関する態度を変遷させた上、団体交渉申入れに応じないまま、一方的に組合員の降格処分を公表したばかりか、長崎県労委に対して降格人事に関する救済申立てを行うなど、客観的に労使対立が鮮明になっている状況において、一方的に労働協約を解約し、本件組合旗設置が始まるや、補助参加人を揶揄するようなビラを作成して配布し、組合旗に対抗する形で横断幕及び立看板を設置しており、これに対して補助参加人が反発することは事の成り行き上いわば自然といえる面がある。加えて本件懲戒処分は、3か月間にわたる停職を命じ、相当に重い処分である。しかも停職期間中は、組合活動等のため本件病院の敷地内に立ち入ることも許されないというものであり、組合活動に与える影響も大きいと考えられる。過去にも補助参加人による組合旗設置が行われていたところ、それに対して懲戒処分がされた例はなく、本件懲戒処分は、懲戒事由である本件組合旗設置に比して、著しく過重なものであるということができ、組合活動に対する嫌悪を主たる動機として、その下部組織の分会長に対し、懲戒事由に比して過重な処分を科したものと認め、労組法7条3号の不当労働行為に当たるとする。
また本件事前団体交渉拒否については、特定の組合員に対する懲戒処分に関する事項も、労働者の労働条件その他の労働者の待遇に関する基準についての事項として義務的団交事項に該当すると解されるところ、本件においては、原告における懲戒処分の基準が必ずしも明確でなかったのであって、団体交渉の必要性が高かったこと等誠実に対応したものとはいい難く、本件事前団体交渉拒否は、労組法7条2号の不当労働行為に当たるとして、中労委の救済命令を支持した。
◯国・中労委(医療法人光仁会)事件・東京高判平21・8・19労判1001号94頁
平21・2・18判決の控訴審。 「 当裁判所も、本件組合旗設置を正当な組合活動ということはできず‥‥懲戒処分を行うこと自体は不相当とはいえないが、本件懲戒処分(停職3か月、その間、賃金不支給、本件病院敷地内立入禁止)は、懲戒事由(本件組合旗設置)に比して著しく過重であって相当性を欠くものであり、また‥‥、甲野理事長に交替した後の労使関係においては控訴人の補助参加人(組合)に対する嫌悪を十分に推認できるのであるから、本件懲戒処分は‥‥組合活動に対する嫌悪を主たる動機として、補助参加人の下部組織の分会長であるBに対して著しく過重なものとして科されたものと認めるのが相当であり、本件懲戒処分は労組法7条3号の不当労働行為に当たるものと判断する。」
「(2)本件事前団体交渉拒否が労組法7条2号の不当労働行為に当たるか
組合員に対する懲戒処分の基準及び手続は、労働条件その他の待遇に関する事項であり、義務的団体交渉事項に該当するところ、前記認定の事実関係からすると、本件病院敷地内に組合旗を設置したことを理由とする懲戒処分については、処分の基準が不明確であり、同様の処分の先例もなかったのであるから、懲戒処分に関して事前協議を行う旨の労使協定が存在しなくても、控訴人は補助参加人(組合)からの本件事前団体交渉の申入れに応じなければならない義務があり、いかなる懲戒処分をするかがまだ決定していないことや懲戒処分後に団体交渉に応じることをもって団体交渉拒否を正当化することはできない」
裁
●フジビグループ分会組合員ら(富士美術印刷)事件・東京高判平28・7・4労判1149号16頁は、会社を解雇された控訴人)らが、被控訴人の本社敷地内や周辺、取引先等にビラを配布し、幟を本社周辺に掲示して拡声器で宣伝し、横断幕を本社屋上のフェンスや壁に掲示すするなどした行為により、被控訴人の名誉・信用の法的利益を侵害されたなどとして、控訴人らに対し、損害賠償金の支払いを求め、請求を一部認容した原審の判断を維持。
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