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2019/07/28

公務員及び公企体職員等の争議行為の合憲性判断の変遷と争議行為及び関連する組合活動の刑事事件主要判例の検討(その1)

 これは地方公営企業を念頭において労務管理において準拠すべき刑事判例の時系列的メモである。一般論をいうだけなので面白味はない。どのようなケースで刑事制裁が可能かを検討するための資料。懲戒処分も重要だが別途テーマとするので、刑事事件が中心である。引用参考文献は文末に示すが、この記述形式のヒントになったのは中村秀次「刑法総論に関する裁判例資料-違法性及び違法性阻却-」『熊本ロージャーナル』4号2010年である。下書きの域を脱していない。
 「一はじめに」は民事事件も含めた総論である。
一. はじめに
(一)正当な行為とはいえない組合活動を放置すべきではない
 
   我が国では労組法1条2項で労働組合の団体交渉その他の行為で正当なものについて刑法35条の適用(刑事免責)を認めている。
 また労組法7条1項は使用者が労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすることを不当労働行為として組合活動を保護している。
 問題は何が正当な行為かである。それは労働委員会命令、救済命令取消訴訟等の判例や学説に委ねられているけれども、様々な組合活動類型、争議戦術につき今日まで膨大な判例の蓄積があり判例法理の安定的維持によって、正当な組合活動の範疇はおよそ想定しうるものとなったといってよい。
 組合活動が正当な行為の範疇になければ受忍する理由はなく、企業秩序を乱す行為を放置する必要はない。放置されるならそれは馴れ合いであり癒着であって、昭和50年代に最高裁によって案出された企業秩序定立維持権等を発動して是正されるべき事柄である

 
(二)判例法理で明確に否定されたプロレイバー学説に依拠した労務管理をすべきではない
1. プロレイバー学説は1973~1979年の最高裁判例で主要な学説が明確に排除された
 わが国では労働法学者の多数が階級的・戦闘的労働運動を支援する目的の有害なプロレイバー学説(労働基本権によって所有権・財産権の侵害は正当化され市民法秩序は超克されるべきとする)という反市民法的ないかがわしい学説を流布してきた。労働組合は受忍義務説に依拠して無許可組合活動や、今日では違法性が阻却されない他者の権利を侵害する行為を行い、職場に顕著に有害な影響を与え続けてきた。
 学説は下級審にも影響を与え、特に東大の藤木英雄教授の可罰的違法性論はプロレイバー刑法学説というべきものだが、東大教授ゆえ司法に甚大な影響を与えた。
 全逓東京中郵事件・最大判昭41・10・26は可罰的違法性論を適用したもので、公労法の争議行為禁止を合憲としながら、公労法違反の争議行為にも刑事免責が適用されるという先例に反する判断を示したうえ、強い違法性のあるもの、相当悪質なものでない限り違法性が阻却され処罰できないとしたため、田中角栄幹事長ら自民党筋より非難され、以降、昭和42年頃から右派ジャーナリズムが労働・公安事件での偏向裁判をとりあげて司法部が非難され、その要因として「容共団体」青法協の影響力が指摘された。
 昭和44年に裁判所非難はピークiに達する。佐藤首相は司法の左傾化是正を意図して、最高裁長官に木村篤太郎元司法大臣の推薦により東京中郵事件で反対意見に回った石田和外を起用した。
 直後の都教組勤評事件・最大判昭44・4・2刑集23-5-305、全司法仙台事件・最大判昭44・4・2刑集23-5-685の判旨は、公務員の争議行為のうち違法とされるものとされを区別し、さらに違法とされる争議行為についても違法性の強いものと弱いものとを区別したうえ、刑事制裁を科されるのはそのうち違法性の強いものに限られるものとし、あるいは、あおり行為等につき、争議行為の企画、共謀、説得、慫慂、指令等を争議行為にいわゆる通常随伴するものとして、これを刑事制裁から除くというものであるが、この争議行為通常随伴行為不可罰論は、争議行為が公務員の組合の正当業務であるのような心証を与えたことにより、公務員のストライキは公然化した。
 この時点で反対意見は奥野健一、草鹿浅之介、石田和外(長官)、下村三郎、松本正雄の5人の裁判官にすぎなかったが、最高裁は次第に秩序重視派の裁判官が増加し、石田長官退官直前の昭和48年に多数派が形成されて潮目が変わった。石田和外長官は退官後も英霊に応える会会長、元号法制化実現国民会議議長(今日の「日本会議」の前身の一つ)として存在感のある人物だったが、最大の功績は労働事件で左傾化した司法判断の是正に道筋をつけたことにある。
 以後の7~10年間がプロレイバー学説を否定する判例のラッシュとなり、司法は正常化していった。とくに昭和50年代に最高裁が案出した企業秩序論により職場の秩序維持が可能になったことは意義がある。この時期の重要判例をあえて4つに絞れば以下のとおり。
 
 (1) 国労久留米駅事件・最大判昭48・4・25刑集27-3-418
 
 信号所を占拠し駅長の管理を排除するマスピケ事犯で建造物侵入罪と公務執行妨害罪の成立を認めたものだが、下級審が争議行為に付随する犯罪構成要件該当行為に可罰的違法性論を適用して安易に無罪とする悪しき傾向を否定する判断方式を示したことで、社会史的な転換点となった。
 この久留米駅事件方式の特徴はピケッティングを争議行為そのものと明確に区別し、争議行為に際して行われた行為と位置づけたことで、公労法違反の争議行為に刑事免責を適用されるとした東京中郵判決を争点から外したうえ、あえて判例変更しないことによって私企業一般の先例としたのである。
 久留米駅事件方式の引用により無罪の原判決を破棄自判し有罪とした判例として、他組合員への断続的暴行、逮捕連行行為につき日本鉄工所事件・最二小判50・8・27刑集29-7-442、包囲型ピケッティングの逮捕連行行為につき光文社事件最三小判昭50・11・.25刑集29-10-929、六分間テレビの生放送中に労働歌等の騒音を混入させる業務妨害につき毎日放送事件・最一小判昭51・5・6刑集30-4-519等多数ある(マスピケ事犯で同様に無罪から有罪となった国鉄の判例も多いがここでは省略する)。
 最高裁は、リーディングケースの山田鋼業事件最大判昭25・11・15刑集4-11-2257と朝日新聞西部支社事件・最大判昭27-10-22民集6-9-8において争議行為は労務提供拒否という不作為を本質とし、したがって、これに随伴する行為も消極的行為の限度にとどまるべきであり、それを越えて使用者側の業務を妨害するような意図及び方法での積極的な行為は許されないとの見解を確立し、ピケッティングと犯罪の成否については羽幌炭礦事件・最大判昭33・5・28刑集12-8-169が同趣旨の判断基準を示した。
 したがって最高裁は、プロレイバー学説の争議行為は不作為にとどまるものでなく業務阻害権であるという主張をいっさい認めていないが、下級審は可罰的違法性論を採用することによりピケッティングに物理的阻止や有形力行使を認め、組合に戦闘力を付与していた。
 この矛盾を解消したのが、久留米駅判決で、ここに至って物理的阻止や有形力行使する組合活動を「正当な行為」から概ね除外することを示唆する判断基準を確立したのである。
 臼井滋雄最高検検事[1977a]は、久留米駅事件方式確立の結果、「最高裁判例においてはピケッテイングの正当性の限界につき,消極的性格の行為の限度にとどまるべきであるという見解が堅持され、いわゆる平和的説得の限度を越えたピケッテイングが犯罪構成要件に該当するときは、犯罪の成立を阻却するごく特殊な事情が存在する場合は格別、原則として違法性が阻却されないものとされている」とするが的確な批評だろう。
 
 (2) 神戸税関事件・最三小判昭52・2・20民集31-7-1101
 
 国家公務員が争議行為を行った場合、争議行為を禁止した国公法98条5項(現98条2項)に違反するだけでなく、98条1項(法令又は上司の職務上の命令に従う義務)、101条1項(職務専念義務)、人事院規則14-13(現17-2、7条2項・組合活動により勤務中における他の職員の勤務を妨げてはならない義務)にも違反し、かつ国公法82条1号(法令違反)同3号(国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行)にも該当するものとして懲戒処分できると判示した。
 要するに公務員の争議行為について服務規程違反として懲戒処分できないとするプロレイバー学説を否定した。
 むろんこの判例は、都教組勤評事件・最大判昭44・4・2刑集23-5-305及び全司法仙台事件・最大判昭44・4・2刑集23-5-685の判旨を全面的に否定した、全農林警職法事件・最大判昭48・4・25刑集27-4-547及び岩教組学力調査事件・最大判昭51・5・21刑集30-5-1178を踏まえてのもので、同判例は、争議行為禁止の合憲性を肯定するにあたり、制約原理を「勤労者を含む国民全体の共同利益」とした。これは全逓東京中郵判決・都教組判決・全司法仙台判決が「国民生活全体の利益」の保障という内在的制約論とは明らかに異なるものであり、懲戒処分に抑制的になる理由は何もなくなったということである。
 
 (3) 全逓名古屋中郵事件最大判昭52・5・4刑集31-3-182
 
 全逓中央本部・同愛知地区本部の幹部が名古屋中郵局庁舎内で集配課外務員多数に職場大会参加を説得慫慂した行為に郵便法違反幇助罪と建造物侵入罪の成立を認めた。東京中郵判決を判例変更して公労法違反の争議行為に刑事免責は適用されないとし、混乱した裁判実務を収拾した。
 この判例によって違法争議行為における犯罪の成立範囲が確定(単純参加者を処罰の範囲外とする)し、争議行為に付随する行為の刑事法上の評価の判断方式も確定(久留米駅事件方式の総括・明確化)した[臼井滋雄1977b]。
 
 (4) 国労札幌地本ビラ貼り事件・最三小判昭54・10・30民集33-6-647
 春闘における、ロッカーへのビラ貼付行為に対する戒告処分を是認した。狭い意味ではいわゆる施設管理権の指導判例だが、集団的労働関係でもっとも重要な判例という評価[大内伸哉]もある。その卓越した意義を要約すれば以下の5点である。
① プロレイバー学説(受忍義務説・違法性阻却説)を明確に排除し、企業施設内における無許諾の組合活動は労働組合の正当な行為に当たらないとした。
② すでに富士重工業原水禁運動調査事件・最三小昭52・12・13民集31-7-103によって最高裁によって案出されていたが、使用者の企業秩序定立維持権という判例法理を確立。企業秩序を侵害する行為について(1)規則制定権(2)業務命令権(中止・解散・退去命令)(3)企業秩序回復指示・命令権(4)懲戒権があることを明確にした。
③ 労働組合に個々の労働者の権利の総和を超える権能を認める団結法理の否認
④ 抽象的危険説の採用。抽象的な企業秩序の侵害のおそれのみで、施設管理権の発動を認めていること(具象的な企業の能率阻害を要件としない)
⑤ 「利用の必要性が大きいことのゆえに‥‥‥労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない」と述べ、「組合活動の必要性」は無許諾の組合活動を正当化する理由にならず、法益権衡論ないし法益調整的アプローチを明確に排除した。一部の左派の最高裁判事や中られるような特段の事情」論に法益権衡論の調整的アプローチに違法性阻却の枠組みを主張することがあったが、最高裁は明確に退けており(池上通信機事件・最三小昭63・7・19判時1293・日本チバガイギー事件・最一小平元・1・19労判533)、今日まで「特別事情論」に風穴を開けられることなく、判例は安定的に維持されている。
 なお、最高裁は国鉄の懲戒処分の法的性質を私法上の行為と判示(国鉄中国支社事件・最一小判昭45・2・28民集28-1-66)しているので、本件は私企業一般の先例なのであり、官公庁の庁舎管理権とは一線を画している。
 一方、現業国家公務員について、長野郵政局長事件・最二小判昭49・7・19民集28-5-897 が、勤務関係は公法関係と判示している。
 地方公営企業については、名古屋市水道局事件・最一小判昭56・6・4労判367号57頁が勤務関係を公法関係と判示しており、懲戒処分は行政処分であって、私法上の労働関係とされている三公社の先例が直ちに適用されるのかという疑問が生じるところではある。
  しかしながら全逓新宿郵便局事件・最三小判昭58・12・30判時1102号140頁(郵便局舎内の無許可組合集会に対する解散の通告、監視等を不当労働行為に当たらないと判示)が是認した原判決東京高判昭55・4・30労民31-2-544は「企業主体が国のような行政主体である場合と、また私人である場合とで異なるものではない」と述べ企業秩序論が汎用できると説示しており、国労札幌地本事件・最三小判昭54・10・30を引用していることから、この判例法理は勤務関係が公法関係である職場の判断枠組にも適用されている。
 この趣旨から地方公営企業にも企業秩序論の判例法理に準拠した判断をとることができるとみてよいだろう。
 加えて、近年、地方自治体の庁舎管理権につき呉市立中学校事件・最三小判平18・2・7の判例法理を引用した地方自治法238条4項7項(旧4項)の目的外使用許可の裁量処分に関する判例が蓄積しているが、大阪市組合事務所使用不許可処分事件・大阪高判平27・6・2判時2282号28頁は、労働組合等が当然に行政財産を組合事務所として利用する権利を保障されてはいないと説示し、これは、企業の物的施設を行政財産に言い換えただけで、その論拠となる先例として、国労札幌地本事件最三小判昭54・10・30民集33-6-676、同判例を引用する済生会中央病院事件最二小判平元・1・12・11民集43-12-1786、オリエンタルモーター事件最二小判平7・9・8判時1546号130頁を参照指示していることから、地方自治法238条4項7項の目的外使用許可の裁量処分においても私企業の施設管理権の先例を無視した判断はとられていないのであって、それに準拠した判断をとることができるのは明らかである。
(つづく)

参考文献
池田恒男
1981「国労札幌ビラ貼り事件」最高裁判決の「画期的」意義--現代日本法の一断面」『社會科學研究』33(5) 1981
臼井滋夫
1976「地方公務員の争議行為禁止と刑事罰-全逓中郵事件判決以降の判例の系譜から見た岩教組事件判決の意義」『法律のひろば』29巻8号
1977a「ピケッティングの正当性の限界」『法律のひろば』30巻4号
1977b 「五・四名古屋中郵事件大法廷判決について-公企体職員の違法争議行為と刑事罰」『警察学論集』30巻7号
1977c 「公務員等の争議行為をめぐる刑事判例の動向--名古屋中郵事件判決までの軌跡 」『法律のひろば」30巻8号
1977d「「可罰的違法性論」に対する批判的検討」『警察学論集』30巻7号 上
大内伸哉
2012「いまさら聞けない!? 雇用のルール(第36話)企業内の組合活動は、どこまで許されるのか」『労働基準』 64(3)
河上和雄
1980 「企業の施設管理権と組合活動--昭和54年10月30日最高裁第三小法廷判決について(最近の判例から)」法律のひろば33(1)1980
中嶋士元也
1992「最高裁における『企業秩序論』」季刊労働法157号
野村二郎
1987『最高裁判所-司法中枢の内側』講談社現代新書
古川陽二
2001「一〇・三〇判決以降の施設管理権と組合活動に関する判例動向」労働法律旬報1517/18 
山口浩一郎
1980 「組合活動としてのビラ貼りと施設管理権--国鉄札幌駅事件を素材として」法曹時報32巻7号

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