ロックナー判決再評価論1
安倍内閣の働き方改革関連法の一環で、2024年4月からトラック運転手の残業の上限時間が、年間960時間に制限されされる結果、シンクタンクによると全国の荷物総量のうち2025年には約28%、2030年には約35%が運べなくなるという。
トラック運転手は労働時間規制を望んでもいないのに、給料が減るので離職、人手不足、物流コストが上昇する、消費者にとって不便な社会になる。すでに今年は電気料金の値上げもあるうえ、こんなバカげたことはないのではないか。
この問題の批判は1906年の有名なロックナー判決(後に判例変更)の引用が適切「使用者と労働者の双方が最上と考える就労に関して契約する個人の権利への違法な介入である。 本件起訴の根拠となり、上告人ロックナーが有罪とされた制定法の条項に定められた労働時間の制限‥‥その真の目的は使用者と労働者との間で就労時間を労働者の健康にとって何ら現実的で実質的に有害でない私的ビジネスにおいてただ単に制限することであったように思われる。」
安倍は電通の東大出女子社員の自殺を重視し、男女共同参画での男性の長時間労働敵視の方針からEU並みに労働時間を規制するとぶちあげてやったのが働き方改革である。とんでも政策だった。
経済的自由の規制ならなんでもできるようになったのはアメリカ合衆国において1937年憲法革命(ウェストコーストホテル事件が最低賃金法を合憲として1923アドキンズ判決を判例変更)であり、経済的自由を規制する立法は緩やかな司法審査となり違憲とされることはほとんどなくなったのである。それは他の国でも同じである。近年では我国でも、2020年4月に准ロックダウンがあった。パチンコ屋から本屋から、百貨店からにスポーツジムまで事実上休業していたように記憶している。飲食店はついてはその後の「マンボー」も含めて、事実上の営業時間等規制が長期に行われた。私は小池知事の県境またぎの旅行自粛にしたがって1ミリも県境を越えてないんです。旅行業や鉄道、航空は大打撃でした。経済的自由の規制が非常に安易に行われた、というよりも小池知事がロックダウンもありと発言すると世論は支持し、国民の多くが規制と不自由を望みました。
しかしこれは経験則にない経済活動の規制で、感染症でこれほど大きい規模のものは前例を知らない。
しかし憲法革命以前、契約の自由といった経済的自由に介入する立法に実体的デュープロセスにより歯止めがあったことはよく知られてます。
とりわけ1906年のロックナー判決(パン製造業に週60時間以上の労働時間を規制する州法を違憲)や1923年アドキンズ判決(最低賃金法を違憲)が代表的ですが、Lochner 判決においては、ニュー・ヨーク州法による労働時間規制はポリス・パワーの(一般統治権)の目的である市民の健康や安全とは無関係であるとされ、それゆえに同法は契約の自由を侵害し違憲と判断された
Lochner 判決は法律は立法目的に対する手段として、より直接的な関連を持たなければならなず、且つ目的そのものが適正で正当appropriate and legitimateでなければならないとした。これは中間審査基準といわれるものです。仮にもしこの司法審査を適用すると、緊急事態宣言下やマンボーでの営業規制は、営業規制しなければ国民の保健、公衆衛生で有害である根拠は薄弱なので違憲になると思う。
私の知見によれば、1月の段階ですでに新型コロナウイルスの武漢株は蔓延しており、集団免疫ができていた。もともと、日本人は土着のコロナウイルスの免疫があって、欧米人よりコロナに強く重症化しない。4月の緊急事態宣言より前にピークアウトしていて、人流抑制は必要なく、なにもしなければ、流行は終わっていた。
私はオールドコートの時代のレッセフェール立憲主義がよかったと思ってます。
清水潤「コモン・ロー,憲法,自由(5)」中央ロージャーナル第 15 巻第 1 号(2018)によれば、オールドコートの裁判官は、コモン・ロー上,ニューサンスとなりえない行為に対する制約は違憲であるが,もともとコモン・ロー上ニューサンスとして認定されてきた(あるいは先例との類推から,新しくニューサンスとして認定されうる)行為を立法にてあらためて禁止することは合憲であるとの憲法理論をとってます。
緊急事態宣言下で店舗を営業することがニューサンスとはいえない。続く
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