東京都水道局の争議行為対応等労務管理を是正を求める意見具申 その2
(承前)
令和6年12月18日
東京都水道局は、4類型の違法行為・外形上犯罪構成要件該当行為、職場の秩序を乱す行為を広範に許容し、平成16年3月後藤都議の質問の対応として行った東岡職員部長通知による頭上報告の警告以外、いっさい職務命令を行わない。最高裁が否認しているプロレイバー学説による脱法的不適切な労務管理・庁舎管理がなされており、抜本的是正を求める意見具申 その2
(公開用・簡略版-実際に知事等に送ったものから実名や固有名詞等の一部等を省略したうえ、文章をやや簡略化したもの)
東京都水道局は事実上、全水道東水労の違法争議行為と外形上犯罪構成要件該当行為を正当業務として扱い就業命令.中止解散命令等の職務命令を行わず、規律ある業務の運営体制を確立することを放棄し、違法行為を助長していることが、コンプライアンス経営宣言に反し、地公労法11条1項の保護法益である住民全体の利益を侵害しているので是正されるべきでありその改善策を提案するというのが意見書の基本的趣旨です。
八 パラダイムチェンジの手法について(正当でない組合活動は規制する).. 4
(二)行政財産の目的外使用(地方自治法238条の4第7項)の判例法理について.. 7
(三)財産管理法制とは無関係な管理作用の発動としての庁舎管理権判例法理の活用.. 9
(二)闘争指令下の昼休み集会、勤務時間内支所構内等の動員決起集会の中止・解散命令を強く要求する。 10
1 国と同様、ストライキを配置した時点で組合への便宜供与は禁止すべき... 10
◆ 実況見分記録(「昼休み集会」平成23年12月9日(金)中野営業所)... 13
🔶全水道東水労の「昼休み集会」等と類似した事例の司法の判断... 14
◎スト当日の集会の挨拶、演説等が懲戒処分理由とされたケース.. 14
◎闘争指令下の決起集会の演説、鯨波の音頭とり等が懲戒処分の理由とされたケース.. 16
4 他の職員の職務専念妨害抑制義務等の規則の明文化は絶対必要... 18
5 勤務時間内3割動員集会と2割動員集会は解散・退去命令し、集会の外来者は建造物侵入罪が成立するようにせよ... 18
6「通常随伴行為不罰論」に沿った東京都の労務管理は違法行為を助長... 19
7 休憩時間の集会について誤った法解釈をしている東京都の管理職... 21
(三) 三六協定破棄闘争の対応は法の解釈に疑問が多く見直す必要がある. 23
(四) 組合役員のスト待機、セキュリティ破りの容認、保険の勧誘の要認.. 24
(一) ストライキ時就業命令をやらない組織ぐるみの方針を是正すべし. 24
1 国の省庁はスト当日の就業命令を重視するが東京都は一切やらない... 24
運輸省 全運輸近畿陸運支部事件・最二小判昭60.11.8(一審大阪地判昭54.8.30民集39ー7ー1408) 25
厚生省 全日本国立医療労組事件・最三小判平14.11.26労判840(一審東京地判平11.4.15判時1724 25
大蔵省 神戸税関事件・最三小判昭52.12.20(一審神戸地判昭44.9.24民集317-1164)... 26
北九州市清掃事業局小倉西清掃事務所事件・最二小判昭63.12.9民集42-10-880(一審福岡地判昭51.7.22民集42-10-940). 26
2 最大の悪弊は東京都がストライキに対抗して操業行為をしないこと(組合に従い労務指揮権を放棄する) 26
3 労務指揮権を組合に奪われた平成26年の中野営業所監理団体業務移転阻止闘争... 28
(1)当局が争議行為と絶対に認定しない拠点だけの争議行為... 28
(2)本庁の方針は各事業所で捻じ曲げられるのはしばしばある... 28
(二)違法争議行為の内部統制権は否定されているのに統制権を事実上認めている重大問題.. 28
(三)組合と共謀し、非組合員の就労を阻止しストを防衛する慣例を是正すべし. 30
(四)最高裁が否定しているプロレイバー学説(組合の主張)に従って懲戒処分を本部中央闘争委員のごく少数に限定している在り方を是正すべき. 31
2 全逓勝利の都城郵便局判決の組合側の主張がいまだにまかりとおっている不思議... 31
(1)籾井常喜1962「使用者による争議責任追及の限界」季刊労働法45号... 33
(2)片岡曻「懲戒権の根拠と限界」『菊池勇夫教授六十年祝賀記念 労働法と経済法の理論』有斐閣1960所収469頁以下... 33
(3)片岡曻1969「公務員の争議行為と不利益処分」季刊労働法73号14頁... 33
3 プロレイバー学説の批判と同学説を否認する下級審判例と国の見解... 33
(1)菅野和夫1971「違法争議行為における団体責任と個人責任(一)ー損害賠償責任の帰属の問題として」『法学協会雑誌』88巻2号... 33
(3)三井化学染料事件福岡地判昭32.7.20労民集8巻4号503頁... 34
(4)日本専売公社山形工場事件.昭53.3.31仙台高判民集35-3-565. 34
4 最高裁判例は、争議行為時に職務命令はできる。組織の義務として指令に従っている個別組合員も懲戒処分できる。... 35
- 神戸税関懲戒免職事件・最三小判昭52.12.20民集31-7-1101. 35
- 北九州市小倉西清掃事務所事件・最二小判昭63.12.9民集42-10-880. 35
- 全逓東北地本懲戒免職事件.最三小判昭53.7.18民集32-5-1030. 35
5 1時間半以下の同盟罷業の処分例との対比。水道局の処分は妥当か。... 36
(五)外形上犯罪構成要件該当行為、積極的な業務妨害が行われている重大問題.. 39
(2)札幌市労連事件(札幌市電ピケット事件)最三小決昭45.6.23. 42
(3)札幌市労連事件の今日的観点での評価(補足)... 45
B 久留米駅事件方式により可罰的違法性論は事実上排除される.. 45
C 名古屋中郵事件方式により諸般の事情は違法性を肯定する方向で考慮される.. 46
1 反論としては当局に争議行為対応に広範な裁量権があり懲戒処分前提の警告.就業命令しなくてよい。取り締まらないこと自体違法ではないと言うはず... 46
2 ストライキ時の非組合員の事故欠勤強要の不当性... 47
3 三公社五現業は18条解雇か服務規律違反として懲戒処分を行うのが国の基本方針... 48
一 非組合員の就労する権利を侵害する管理職の行為について.. 50
🔶英米におけるストに参加しないで就労する権利について(補遺). 51
二 「服務規律確保の周知(服務の示達)」の訓示は廃止して「警告及び職務命令書」に切りかえるべき 53
(五) 東京都の「服務の示達」で「違法行為」とは絶対言わない理由.. 56
三 三六協定一方的破棄闘争を適法と認め、組合のいいなりになって労務指揮権を放棄している在り方の是正 58
(三)当局は適法としているが争議行為である疑いが非常に濃い.. 61
(6)中村博(労働省大臣官房秘書課長、中労委次長、人事院公平局長)... 63
3 三六協定締結拒否が争議行為に当たるかが争点の判例... 63
(1)東京都水道局事件・東京高判昭43.4.26労民集19-2-623. 63
(2)北九州市交通局事件.最一小判昭63.12.8民集42-10-73. 64
B 二審福岡高判昭55.12.22労民31巻 5号1033頁... 65
C 上告審.最一小判昭63.12.8民集42-10-73. 66
(四)労働基準法所定の労働時間の制限を超える公務の執行の正当性に関する判例.. 67
1 仙台鉄道管理局事件.最二小判昭48.5.25刑集27-5-1115. 67
2 動労糸崎駅事件.広島高判昭和48.8.30判タ300(上告審.最一小決昭50.4.1刑事裁判資料230棄却) 68
3 第二名古屋中郵事件・最二小判昭53.3.3民集32-2-97. 69
4 労働基準法上違法でも就労は刑法上保護される意義... 69
(五)ストライキ決行時の非組合員を締め出す目的で三六協定破棄している問題点.. 71
(六)ストライキ決行時の非組合員を締め出す目的で三六協定破棄の対抗策.. 71
八 パラダイムチェンジの手法について(正当でない組合活動は規制する)
労務管理の基本は、労組法7条1号で保護される正当な組合活動か否かの見極めになる。何が正当な行為かは法律に書かれておらず、労働委員会の命令、裁判例、学説で判断していくことになるが、ビラ貼り、ビラ配り、組合旗掲出、無許可集会、集会利用拒否、リボン闘争、組合バッジ、腕章着用、ピケッティング、争議行為など組合活動類型の大多数は、未解決の分野があるにせよ、判例の蓄積があり、今日では、正当でない行為、あるいは微妙かはおよそ判断できるものといえる。
ところが東京都は、概ね昭和50年代以降最高裁により明示的に否定されたプロレイバー学説に依拠し、不当労働行為に絶対ならない違法行為や風紀秩序を乱す行為を中止命令せず容認しておりノーマルでない。
正当でない組合活動を野放図に容認し労務指揮権や施設管理権を組合に奪われ、管理意思が示されない実態は、規律のある能率的で適正な職場環境でなく、ガバナンス・コンプライアンス上是正してしかるべき。
平時の組合会議等での会議室の使用許可は業務に影響がない限り最小限の使用は労務管理に厳しい旧郵政省でも許可していることであり、本意見書は平成24年大阪市労使関係条例12条のような徹底した便宜供与を認めない政策を求めてはいない。
しかし業務に影響を及ぼすおそれ、他の職員の職務専念妨害となるおそれ、違法行為の慫慂の想定できる集会、違法行為、外形上犯罪構成要件該当行為は、中止・解散・退去命令をしてしかるべきなのである。労務指揮権、施設管理権を放棄して、労務管理を組合によって業務管理される姿は東京都では管理職の処世術として認められているが、世間一般の常識では正常な業務運営と認識されない。
郵政省は昭和36年に『新しい管理者』というテキストで現場管理職に対し訓練を行ったうえ、全逓の非合法な組合活動に対して徹底した労務管理を行ってきた。正常な業務運営の確保を管理職の任務の第一義として、荒れる職場には機動的に特別考査、監視するチーム(通称トラック部隊)を派遣し労務管理業務支援を行っていたし、国鉄の場合は、スト対策本部に非組合員等召集するなどし、マスピケに対しては代務となる職員の業務命令、鉄道公安員や警察官も動員して対策している。東京都においては初めから降伏して、組合に労務指揮権や施設管理権(庁舎管理権)に掣肘されてよいことになっており、異常なのである。
たぶん正常な業務運営の確保を管理職の任務の第一義という郵政省型の労務管理には東京都の管理職は強く反対するむだろう。組合を刺激せず、言い分を聴いて屈従するのが、管理職のならいであるから。従って、政治的に解決していくしかないが訓練期間が必要とあれば猶予することにやぶさかではない。
組合に労務指揮権、施設管理権を奪取、掣肘される在り方をパラダイムチェンジするために私は、JRグループのように、最高裁が昭和50年代に案出した企業秩序論の判例法理、企業秩序維持権にもとづく労務管理を徹底することを提案するものである。なお、JRグループは、就業規則に加えて労働協約でも無許可の業務以外の施設構内利用を禁止しているがそこまでやれば完璧である(●JR東海(懲戒解雇)事件・大阪地判平12.3.労判790)。
企業秩序論とは昭和52年以降最高裁が案出した判例法理で、企業秩序の維持確保のために、企業は従業員に対し(1)規則制定権(2)業務命令権(3)企業秩序回復指示・命令権(4)懲戒権等を有するとし、労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることにより、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務を負うとするものである。(◯富士重工業原水禁運動調査事件・最三小昭52.12.13民集31-7-103)。
また労働者は、企業の所有し管理する物的施設の利用をあらかじめ許容されていても、雇用契約の趣旨に従って労務を提供するために必要な範囲において、 企業秩序に服する態様において利用するという限度にとどまる。一般的に規則をもつて定め、又は具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができる(●国労札幌地本ビラ貼り戒告事件最三小判・昭54.10.30民集33-6-676)。但し最高裁は、使用者が労働者に懲戒を行うためには、あくまでも就業規則の記載(国労札幌地本事件最三小判昭54.10.30)とその周知(フジ興産事件・最二小判15.10.10労判861号5頁)を必要としているので、水道局の就業規則は組合に配慮してスカスカで無許可演説.集会を禁止すすべしるなど明文規定がないところが問題なのではある。
もっとも地方公務員法は32条で、地方公共団体の機関の定める規程に従う義務があり、懲戒処分の適条となるから、企業秩序論の判旨と大きな隔たりはない。
ところで国鉄の判例が一般私企業の先例になっているのは、最高裁が国鉄の懲戒処分の法的性質を私法上の行為と判示(国鉄中国支社事件.最一小判昭45.2.28民集28-1-66)し、電電公社においても労働関係を私法上の行為と判示したためである(目黒電報電話局反戦プレート事件・最三小判昭52.12.13民集31-7-974)。
したがって、企業秩序論は原則として官公庁の労務指揮権、庁舎管理権とは一線を画しているとはいえる。
一方、現業国家公務員について、郵政省の郵便局職員につき、長野郵政局長事件・最二小判昭49.7.19民集28-5-897 が、勤務関係は公法関係と判示している。
地方公営企業については、名古屋市水道局事件・最一小判昭56.6.4労判367号57頁が勤務関係を公法関係と判示しており、懲戒処分は行政処分であって、私法上の行為とはされていないので、三公社の先例が直ちに適用されるのかという疑問が生じるところではある。
しかしながら●全逓新宿郵便局事件・最三小判昭58.12.30判時1102号140頁(郵便局局舎内の無許可組合集会に対する解散の通告、監視等を不当労働行為に当たらないと判示)が国労札幌地本事件・最三小判昭54.10.30を引用していることから、企業秩序論は勤務関係が公法関係である職場でも準拠できるのである。
ちなみに最高裁が維持した原判決●東京高判昭55.4.30労民31-2-544は「企業主体が国のような行政主体である場合と、また私人である場合とで異なるものではない」と述べ企業秩序論が汎用できることを説示している。
加えて、近年の◯●大阪市組合事務所使用不許可処分事件・大阪高判平27.6.2判時2282号28頁が、労働組合等が当然に行政財産を組合事務所として利用する権利を保障されてはいないと説示し、これは、企業の物的施設を行政財産に言い換えただけで、その先例として、●国労札幌地本事件・最三小判昭54.10.30民集33-6-676、●済生会中央病院事件・最二小判平元.1.12.11民集43-12-1786、●オリエンタルモーター事件・最二小判平7.9.8判時1546号130頁を参照指示していることから、私企業判例に準拠した判断をとることはできる。
企業秩序論が優れているといえるのは法益権衡論(労働基本権と使用者の所有権・財産権)の調整的アプローチを否定していることである。国労札幌地本ビラ貼り判決は、「労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設であって定立された企業秩序のもとに事業の運営の用に供されているものを使用者の許諾を得ることなく組合活動のために利用することは許されないもの」であり許諾を得ない施設利用は「使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであって、正当な組合活動として許容され」ないとする。
これに対して「特段の事情」に法益権衡論を持ち込んで風穴を開けようという試みがあったが、最高裁は排斥している。
組合集会の従業員食堂無許可利用事案で「特段の事情」について、当該施設を利用する目的(とくにその必要性)等を総合考慮して判断する法益権衡論を主張した●池上通信機事件・最三小判昭63.7.19判時1293の伊藤正巳補足意見(結果的同意意見)がそうだが、伊藤補足意見は少数意見にすぎず、多数意見はこの見解を退けている。
また、最高裁は●日本チバガイギー事件・最小一判平元.1.19労働判例533号177頁でも工場は勤務時間外だか事務棟は勤務時間中での施設内集会不許可事案で中労委は、上告趣意において「権利の濫用」を広く解釈し「労働者の団結権、団体行動権保障の趣旨からする施設利用の組合活動の必要性と、その施設利用により使用者が蒙る支障の程度との比較衡量により、両者の権利の調和を図ることが要請される。そして、使用者の施設管理権行使が右の調和を破るときには、権利の濫用があるといわなければならない」と述べ、「業務上ないし施設管理上の支障に藉口」するもので不当労働行為にあたるとしたが、この中労委の見解を退けている。
判例法理を変質させようとする意図のある、当該施設を利用する目的等を総合考慮して判断する法益権衡論を再度、明確に退けたものであって、指導判例の趣旨に沿った純法理的な判断をとったものとして評価できる。
🔶施設構内の無許可組合集会が正当な組合活動とされることは、国労札幌地本判決を引用した以下5つの最高裁判例が否定している以上ありえない。中止・解散命令・監視・警告書交付は適法なので躊躇する理由は全くないのである。
(●全逓新宿郵便局事件・最三小判昭58.12.20、●池上通信機事件・最三小判昭63.7.19、●日本チバガイギー事件・最小一判平元.1.19、●済生会中央病院事件・最二小判平元.1.29民集43巻12号1786頁、●オリエンタルモーター事件・最二小判平7.9.8判時1546号130頁)
水道局の「昼休み集会」「支所・拠点2割動員決起集会」などは、「あおり」そのものであるから文句なしに拒否、中止命令ができると言ってよい。
🔶プロレイバー学説の受忍義務説は明示的に否定されているから、組合に主導権をとられることは絶対ない。
🔶私企業では懲戒処分とするには就業規則を具備していること(無許可組合活動.集会の禁止)+その周知+「実質的に秩序風紀を乱すおそれ」目黒電報電話局反戦プレート事件・最三小判昭52.12.13民集31-7-974、という抽象的危険説にもとづく説明ができれば不当労働行為とされることはまずない。他の職員の職務の集中を妨げるおそれ、作業能率を低下させるおそれ、違法行為の慫慂がなされるおそれで十分である。
つまり目黒電報電話局判決の「形式的に右規定に違反するようにみえる場合であっても、実質的に局所内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときには、右規定の違反になるとはいえないと解する」と言う判断枠組があるが、そのクリアは容易なことである。
目黒電報電話局事件は政治活動の事案だが、組合活動でも引用されており先例として重要である。水道局の違法行為慫慂の事務室内「昼休み集会」にもそのままあてはまる。
「他の職員の注意力を散漫にし、あるいは職場内に特殊な雰囲気をかもし出し、よって他の職員がその注意力を職務に集中することを妨げるおそれのある」「局所内において演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を行うことは、休憩時間中であっても、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあって、その内容いかんによっては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがある」
このような理屈が示されれば、文句なしに勤務時間外であれ休憩時間でも組合活動は取り締まることができる。
🔶例外的に、過度に重い不利益処分の事例で不当労働行為とする判例もあるが(◯光仁会病院事件・東京高裁平21.8.19停職三月.病院敷地内立入禁止という懲戒処分は、懲戒事由の本件組合旗設置に比して著しく過重であって相当性を欠く◯金融経済新聞社事件・東京地判平15.5.19は昼休みの無許可集会だけで次長心得から5段階降格し月額二万八千円の役付手当剥奪処分は過重な処分)、また〇総合花巻病院事件・最一小判昭60. 5.2は、従来許可していた組合の施設利用拒否事案で、院長が組合三役に対し上部団体である医労協への加盟を断念しこれを阻止するよう働きかけた経緯から、上部団体加入を嫌悪、牽制、阻止することが理由として支配介入とされたもので、あくまでも企業秩序風紀の維持を理由とするもので、過重な量定でなれれば懲戒処分が無効とされることはない。
但し私は、中止・解散命令は必要だが、たんに無許可集会強行それだけでは懲戒処分とせず、必ず現認・監視・記録しておいて、実際ストライキが決行された場合に懲戒処分とする安全運転の方針を提案する。
無許可ビラ貼りは争議前であれ、争議中であれ正当な行為とされることはない[河上和雄1980企業の施設管理権と組合活動--昭和54年10月30日最高裁第三小法廷判決について(最近の判例から)]法律のひろば33(1)]。ビラ貼りを正当な組合活動とした下級審判例は大阪高判昭58.3.30以降見当たらず、1980年代以降、国労札幌地本判列の判断枠組に従って懲戒処分は是認され、撤去費用の損害賠償請求、ビラ貼り禁止の仮処分申請の認容が通例となっており。完全に決着した事柄といえる。
ただし、懲戒処分の要件は形式的ではなく実質的な規則違反という目黒電報電話局反戦プレート事件・最三小判昭52.12.13の判断枠組みがある、「形式的にこれに違反するようにみえる場合でも、ビラの配布が局所内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右規定の違反になるとはいえないと解するのを相当とする」という部分を引用して、休憩時間もしくは就業時間外におけるビラ配布を理由とする懲戒処分を無効とした判例が少なからずある(〇明治乳業福岡工場事件・最高裁第三小法廷昭和58.11.1労判417号は日本共産党法定ビラ等の配布事案だが、政治活動禁止の就業規則がなかったため。〇倉田学園事件・最三最高裁第三小法廷平成6年12.20民集48-8-1496は就業時間前に二つ折りにして机上においたケースで規律が乱すおそれがないと判断された。
つまり無許可ビラ貼りの取締を司法が否定することはないが、無許可ビラ配りは取締を支持する判例と、態様によっては形式的な規則違反であった場合に懲戒処分を無効とする判例があって、ケースバイケースともいえる。先例に即した判断が求められる事案である。しかし、水道局の闘争期間中の「朝ビラ情宣」は、3割動員集会やストの日程、闘争課題を掲げてストで戦うぞとの趣旨であり、地公労法11条1項の「そそのかし」「あおり」や争議行為目的の活動であるうえ、組合員が左右に並び半強制的に受け取らせる態様など、規律に反し施設管理権の観点からも、取り締まったとしても不当労働行為にはならないはず。
(二)行政財産の目的外使用(地方自治法238条の4第7項)の判例法理について
これとは別に行政財産の目的外使用(地方自治法238条の4第7項)の判例法理により、組合活動の規制も可能とはいえる。
指導判例である〇呉市立二河中学校事件・最三小判平18.2.7民集60-2-401(教研集会使用不許可を違法とする)の判旨が、学校施設以外でも多く引用されていて、判断枠組として定着しているが、受忍義務説を明示的に否定しているので有益だからである[i]。
広島県教組が広島県教研集会会場として呉市立二河中学校の施設の使用を申し出、校長いったんは口頭で使用を許可する意思を表示した後に、市教委が、過去の右翼団体の妨害行動を例に挙げて使用させない方向に指導し、不許可処分をするに至ったものだが、組合側が不当に使用を拒否されたとして損害賠償を求めた事案で、一審、二審とも県教組が勝訴、上告審は不許可処分を裁量権の濫用と認定し上告を棄却したというものだが、最高裁が初めて、学校施設の目的外使用の諾否の判断の性質、司法審査のありかたを明らかにした。
同判決は裁量処分の権利濫用の有無について、従来の重大な事実誤認や社会通念からの顕著な逸脱という社会通念審査(最小限審査)に加えて、「判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くことがないかを検討」する判断過程合理性審査[本多滝夫2007]を採用し、審査密度を濃くした審査方法を示したことで特徴的といえる。
しかも同判決の判断過程審査方式は、学校施設のみならず、公立の福祉施設や、市庁舎の職員組合に対する便宜供与にいたるまで判断枠組として引用されているので影響力が大きい。
というのも学校施設は地方自治法238条の4第7項(旧4項)にいう行政財産であり、したがって、公立学校施設をその設置目的である学校教育の目的に使用する場合には、同法244条の規律に服することになるが、これを設置目的外に使用するためには、同法238条の4第7項(旧4項)に基づく許可が必要であるが、これは、これは地方自治体及び地方公営企業の庁舎も同じことだからである。
本件の決め手は「教育研究集会は、被上告人の労働運動としての側面も強く有するもの‥‥教員らによる自主的研修としての側面をも有しているところ、その側面に関する限りは、自主的で自律的な研修を奨励する教育公務員特例法19条、20条[平成15年改正で21条・22条]の趣旨にかなうものであり‥‥使用目的が相当なものである」という判断をとったことにあり、目的内使用に近い認識といえる。
この判例により、教研集会の学校施設利用拒否は不可能になった。ただし組合活動で教研集会以外、便宜供与拒否を違法としたのは、呉市立学校事件以前の〇福岡県教職員組合鞍手直方支部事件・福岡高判平16.1.20判例タイムズ1159号146頁(組合加入勧誘のオルグ活動を目的とした分会会議の施設利用の拒否)ぐらいしかないので、司法が組合活動に好意的になったというわけではない。
以下のとおり、呉中学校判決以前のものだが、組合の闘争や争議行為に絡む施設利用の拒否適法とされているほか、平成24年制定大阪市労使関係に関する条例第12条「労働組合等の組合活動に関する便宜の供与は、行わないものとする。」を適法として市役所や公立学校の施設の利用不許可を適法とする判例が数例ある。大阪市のような条例が制定された場合と、争議行為に絡む施設利用については不許可が違法とされることはありえないと考える。
- 鹿児島県立大島高校等6カ所の学校施設目的外使用不許可事件・福岡高裁宮崎支部判昭60.3.29判タ574(鹿高教組主催ミュージカル公演不許可-適法)
広島県高教組「人事委員会報告説明会」県立高校体育館使用拒否事件・広島地判平14.3.28裁判所ウェブサイト (広島県高教組が毎年 開催している「人事委員会の報告」集会を県立高校で開催しようとして、同校体育館の使用を申し入れが拒否された事案。
当該集会では、組合員にストライキの実施の賛否を問う批准投票が実施されることになっており、集会の内容に一部、争議行為を禁止する公務員法37条1項の規定に抵触するものが存在することが明らかで、施設管理上、学校教育上の支障に該当するとして、不許可行為は適法であるとしたが、不許可を文書で通知する義務に違反した点を違法とし、教育長の責任を認め10万円の賠償を命令した。
- 広島県高教組定期総会学校施設使用不許可事件・広島地判平17.2.9-裁判所ウェブサイト(不許可-適法)
○●大阪市労連、市職、市従、学給労等組合事務所使用不許可事件・大阪高判27.6.2判時2228号28頁(一審判断を一部変更。平成24年の目的外使用申請不許可では、前年度の許可満了の3ヶ月前に、何らの前触れもなく不許可の方針を表明した処分として違法とするが、平成24年大阪市労使関係に関する条例の規定及び行政事務スペースの欠如を理由としてなされた平成25年、26年の不許可処分を適法とする。同条例12条を労働組合等に対する便宜供与はほぼ例外なく行われないものと解したうえ、条例制定には十分に理由があり、支配介入には当たらず、憲法28条にも違反しない。又労組法上は、最小限の広さの事務所の供与を許容しているが使用者の義務ではなく奨励するものでもないとし、被控訴人らは、本件事務室部分を権原なく占有しているというべきであって明渡請求は理由がある、この間の相当使用料額は1か月17万6830円となることが認められ、明渡済みまでの使用料相当損害金を支払う義務を負うと判示した。)
○● 大阪市労組・大阪市労働組合総連合組合事務所使用不許可事件.大阪高判27.6.26判時2278号32頁(前掲判例と同じ)
- 枚方市組合事務所使用料徴収処分取消請求事件・大阪地判平28.3.28掲載TKC
(職員会館における組合事務所の使用料の徴収を適法とする。「公有財産の使用に関する受益者負担の要請が強まっており‥‥市議会等において、組合事務所の無償使用についての質疑がなされ、住民監査請求もなされるなど‥‥関心が高まり、大阪府下においても組合事務所の使用料を徴収する自治体が増加しつつあったことなどといった‥‥状況下において、市長が、原告による組合事務所の‥‥使用料の減免申請に対し、組合事務所が収益を目的としない使用に当たるものの、「市長が特に必要と認めるもの」に当たらないとした判断は‥‥相応の合理性が認められる。」)
- 大阪市教職員組合分会会議使用不許可事件・大阪地判平29.12.20判タ1452号131頁(教職員組合が、延べ44回にわたり学校施設の目的外使用許可を申請したところ、各校長は、大阪市労使関係に関する条例第12条「労働組合等の組合活動に関する便宜の供与は、行わないものとする。」にもとづき、同申請をいずれも不許可処分とした事案で、適法とした。(●国労札幌地本事件・最三小判昭54.10.30、●済生会中央病院事件・最二小判平元.1.12.11、オリエンタルモーター事件・最二小判平7.9.8を引用する。)
公用財産としての水道局の庁舎は行政財産であり、公有財産であり、企業用資産でもある。
地方公営企業は、地方公共団体と別個の独立した法人格を有さないので、企業用資産も地方公共団体に帰属し、地方自治法上の行政財産として規制を受けるのは、企業用資産の範疇も同じことであるから、地方自治法238条の4第7項(旧4項)の目的外使用「行政財産はその用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる」の判例法も適用される。
この条項の趣旨については●大阪市立人権センター事件・大阪地判平20.3.27判タ1300の説示がわかりやすいので引用する。
平成12年の人権文化センター開設以来、原告部落解放同盟大阪府連合会各支部は、大阪市長(磯村隆文市長)の行政財産目的外使用許可により大阪市立生江人権文化センター、同住吉人権文化センター、同平野人権文化センター、同西成人権文化センター内に支部事務所を設置し、平成19年3月31日まで目的外使用許可の更新(継続)がされていたが、大阪市(関淳一市長)は、各人権文化センター(現在は他の公共施設と統合されている)の平成19年4月1日以降の行政財産使用許可申請を不許可処分とした、原告が違法無効であるとして取消請求を行ったものであるが、大阪地裁は裁量権の逸脱濫用はないとして、請求を棄却した。
「地方自治法2 3 8条の4第1項は、行政財産は、原則として、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し,出資の目的とし、若しくは信託し又はこれに私権を設定することができないとし、同条6項は、これに違反する行為を無効とする。その一方、同条7項は、行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができるとし、行政財産の目的外使用許可の制度を定めている。
目的外使用許可の制度が定められた趣旨は、行政財産が、本来、公益を増進するという行政目的を達成するために用いられるべきものであることから、その使用による行政目的の達成を確保するとともに、他方で、行政財産によっては、本来の用途又は目的外に使用させても、その用途又は目的を妨げないばかりか、場合によっては、行政財産自体の効用を高めることもあることから、当該目的以外の使用に供しても本来の使用目的が阻害されない例外的な場合に、当該行政財産の効率的な利用を可能にしようとした点にあると解される。
このような目的外使用許可の制度が定められた趣旨に加えて、行政財産が、本来、行政目的達成のために使用されるものであり、地方自治法も目的外使用許可について具体的な要件を定めることなく「その使用を許可することができる。」(同法238条の4第7項)とし、同条9項は、行政財産の目的外使用許可をした場合において、公用若しくは公共用に供 するため必要を生じたときは、これを取り消すことができるとしていることからすれば、普通地方公共団体の長は、当該行政財産につき目的外使用許可の申請があったとしても、これを許可すべき義務を負うものではなく、当該行政財産の性質、これにより達成しようとする行政目的の内容、公用又は公共用に供する必要の生ずる見込み、当該許可をした場合に予想される支障の程度及び当該許可の相手方が享受する利益の性質など諸般の事情を総合的に考慮してその可否を判断することが予定されていると解すべきである。そして,これを判断するに当たり、普通地方公共団体の長には要件及び効果の双方において広い裁量があるというべきであり、目的外使用の不許可処分が違法となるのは、普通地方公共団体の長がかかる裁量権を逸脱濫用した場合に限られ、裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として違法となると解すべきである。原告らは、本件各事務室部分を原告らの支部事務所として利用することが本件各センターの設置目的に適合していることから、本件各不許可処分の処分庁の裁量は地方自治法 244条2項(普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない)の規定に準じて収縮され,正当な理由のない限り行政財産の使用の不許可処分をすることはできないと主張する。しかし‥‥同条項の趣旨は,住民の利用が予定された施設について、住民の自由な利用を保障した点にあると解されるのであり、このような施設ではない本件各事務室部分の利用には妥当しない」と説示している。
水道局事業所の各庁舎は水道事業という目的に供された財産であるから、244条2項の一般住民の利用が予定されている施設ではない。住民の利用に開かれた施設ではない。むろん、事業所の所轄業務に所用のある給水契約者、水道関連業者等が多人数開庁時間に出入りしており、長椅子などもおかれているが、それは所轄業務に所用のある方々の一時滞留のためであって、所轄業務と無関係な滞留や、面会の強要など秩序を乱す行為は当然庁舎管理権で規制できる。組合活動は全て目的外使用となるが、闘争指令下の集会は、違法行為を慫慂する内容であり、これを認めることは違法行為を助長し、業務運営に支障をきたす目的であるので、不許可としても、違法とされることも不当労働行為とされることはありえないということになるから、活用してよいと考える。また、他の事業所に勤務する組合員が支所決起集会の動員指令し令に参集する場合も、業務命令その他業務上の参集、要件で訪問するものではないうえ、違法行為目的のものであるから、集会開催自体拒否できるはずだし、退去命令すべきである。
なお東京都水道局の場合、地方自治法238条の4第7項の行政財産の目的外使用は、東京都公有財産規則ではなく、東京都水道局固有資産規程で運用がなされている。
具体的には、全水道東水労の分会が電気メータをつけて電気代を支払うことを条件として、無償でコーヒー、清涼飲料等の自動販売機の設置を許可している。使用許可自体は問題がないと思うが、組合に収益をもたらすのであれば、無償の便宜供与は議論があってもよいが、本意見書の中心的課題ではないので、さしあたり是認することとしたい。
一般論として行政財産の目的外使用は売店や記者クラブ、長期にわたって庁舎を占有する形態か、ロケーションボックスや災害時の帰宅困難者滞在施設といった事案が対象のようで、都や水道局の庁舎管理規程は、地方自治法の財産管理上の規定ではなく目的外使用についての言及がないことから、当局が全面的に許容している施設構内駐車場等での決起集会や執務室内を占拠する集会、庁舎内デモ行進、示威行為、スト待機者のセキュリティ破りの深夜立ち入り行為など本意見書が問題とする組合活動の多くは地方自治法238条の4第7項とは無関係な庁舎管理権の問題として取り上げてよいように思える。ただ、行政財産の目的外使用の不許可という形で、組合活動の規制もできるので活用の余地はあると申し上げた。
(三)財産管理法制とは無関係な管理作用の発動としての庁舎管理権判例法理の活用
庁舎管理権とは国有財産法や地方自治法の財産管理法制とイコールなのではない。無関係な管理作用の発動も当然ありうる。
- 墨田民商事件・東京高判昭52.5.30判時882は、国有財産管理法制を全く問題とせず、端的に向島税務署の庁舎管理者が秩序維持のために集団陳情者に対し人数を規制したり、立ち入り自体を阻止することが適法とされている。水道局当局が許容しているオルグやピケッティングなど当該事業所の職員ではない組合役員の建造物侵入も同じことである。
また、最高裁は郵便局の組合掲示板設置は、国有財産法18条の行政財産の目的外使用許可によるものではない。組合に壁面の使用権、利用権を付与したものではないと判示している(●昭和郵便局事件・最二小判昭57.10.7民集36-10-2091)ことから、掲示板の撤去も財産管理法制と無関係の管理作用の発動である。●全国税東京足立分会事件・最二小判昭59.1.27労判425(争議行為をそそのかす掲示物の自力撤去)も同様の例。
昭和48年を潮目として、昭和50年代以降の判例は総じて組合に厳しくなっており、管理者側が有利なので多いに活用すべきだが、にもかかわらず、東京都の管理職は組合のいいなりになって、労務指揮権や庁舎管理権を掣肘、奪取されて当然というばかげたことをやっているので、抜本的な改革が必要とかんがえる。
問題点を大きく二つに分け、一はいわゆる庁舎の目的外使用等、施設管理権と闘争体制で大衆行動とされる組合活動、超過勤務拒否闘争の問題で、二は同盟罷業(ストライキ本番)そのものの問題
(要旨)
「平成16年3月東岡職員部長通知」は勤務時間内の頭上報告と所属長要請行動につき職務専念義務違反に当たる場合のみ賃金カットの警告対象とするが、それ以外の違法行為、秩序を乱す行為、他の職員の業務を阻害する、職務専念を妨げる行為、正当な行為でない組合活動は放置している。欠陥が大きいので撤回し、企業秩序論の判例法理にもとづき勤務時間内外いかんを問わず、無許可演説行為、無許可集会、秩序を乱す行為、違法行為、犯罪構成要件該当行為を規制できる就業規則の整備を強く求める。
東京都水道局は少なくとも昭和60年代以降、組織ぐるみで管理職が違法であるのに争議目的の正当性を認め、闘争期間において、勤務時間内の執務室内において広範な職務離脱を是認し、執務室内での執務妨害行為、逆らう管理職の吊るし上げ、勤務している職員の職務専念を妨げる演説行為、地公労法11条1項後段所定の「そそのかし」「あおり」の演説、示威行為等、一切中止・解散命令はなく容認してきた。大衆行動と称される闘争期間の違法行為にはいっさい職務命令は一切なされず、事実上、労務指揮権と施設管理権が組合に奪取されていた。
しかし職員のリークで、平成16年3月17日公営企業委員会において後藤雄一都議(無所属)が、勤務時間中の所属長要請行動で机に穴を開けた事件や、頭上報告について職務専念義務違反ではないか等の質問があり、場当たり的対応で当時の東岡創示職員部長(後に局長、故人)が「原則として勤務時間外に行うように求めるということと、勤務時間中に行う場合については、やめるように警告をすると。やめない場合については、その事実を確認して賃金カットをするというふうに通知をしました」と答弁したため、以降この「通知」による「警告」をするようになったことは事実である。
これは都議の質問をかわすためのもので、抜本的な改革ではない。「東岡通知」は頭上報告等「職務専念義務違反」にしぼって警告の対象としていて、本部中執や休暇をとっての本部委員の建造物侵入、勤務時間内のオルグ演説やピケッティングは警告の対象外なので全面的に容認されるほか、昼休み等には地公労法11条1項後段に違反する違法行為を慫慂する集会、示威行為が全面的に認められているという点で著しくコンプライアンスに反し、見直しが絶対必要である。
就業規則に、勤務時間内外いかんを問わず無許可集会、演説行為と無許可組合活動を禁止する明文規定を加えて、規則に基づく労務管理を徹底すべき。
頭上報告が内容的にも違法行為の慫慂、「あおり」「そそのかし」に相当するアジ演説があり、地公労法11条1項後段の違反行為でもある。休憩時間であれ、始業時間前であれ、違法性は変わらない。
営業所では休憩時間を午後1時以降にずらして勤務を命令することは労働協約で認められ、勤務している職員がいるが、休憩時間の執務室内での演説や集会は、職務の集中を妨げ、職務専念を妨害するという点でも勤務時間内と同じなのである。
違法な集会活動により職務専念が妨げられるのは、適正良好な職場環境とはいえず、許可してならない性質のものであるが、東京都には人事院規則17-2 第7条2項「職員は、職員団体のためその業務を行ない、又は活動することによって、他の職員の職務の遂行を妨げ、又は国の事務の正常な運営を阻害してはならない。」とか、公社時代の郵政事業庁就業規則13条6項に「職員は、職場において、他の職員の執務を妨げ、その他秩序を乱す言動をしてはならない。」等の規則がないため他の職員の業務妨害は許容されるのである。
始業時間前の頭上報告、あるいは勤務している人がいない昼休みのケースであっても、アジ演説を聴かされた余韻で作業能率に影響するおそれがあり、能率的、適正良好な職場環境、規律のある業務運営とはいえないという観点から規制してしかるべきである。要するに、職務専念違反にならない時間帯の、集会、演説は庁舎執務室の目的外使用としてすべて規制対象とすべきなのに、「東岡通知」は認めてしまっているので欠陥が大きすぎるということである。
「東岡職員部長通知」の、警告がはねつけられた例として、勤務時間内の本部委員によるオルグ演説がある。中野営業所の平成26年2月5日本部委員の○○(現在は退職と聴いている)が勤務時間中9時25分より32分まで、事務室内で業務移転拒否闘争のオルグ演説がなされたがその時、○○が「平成16年3月東岡職員部長通知」による賃金カットの警告をやったが、○○は「なんだおまえは有給休暇を取っているんだ」と罵倒、所長が引き下がって黙り込んだ。さらに10時からはじまる、人事課の派遣説明会を妨害するため、会議室近くでピケを張りそれも排除していない。
休暇中だからといって地公労法11条1項後段所定の違反行為をしてよいものではない(全運輸近畿陸運支部事件.大阪地判昭54.8.30)、「東岡通知」では警告すらできないのは重大な欠陥であるわけである。
さらに同月20日、猪瀬知事辞任による都知事選挙中の2月5日発令の停職処分で、停職中の渡邉洋書記長が勤務時間中にオルグ演説した。出入禁止にしないことが問題だが、26日スト決行の後も、業務移転拒否の争議が継続しているのに、処分の範囲、量定など注文されないよう議会が始まる前に処分をすましておく事情のためか、たった10日のスピード処分してしまったことが問題と言えるが、職務専念義務違反ではないので所長は警告していない。
解決策として、平成16年東岡通知を撤回し、局所内で勤務時間内外を問わず、無許可演説.集会、無許可組合活動、他の職員の職務中の業務妨害を禁止する就業規則を設け、企業秩序論の判例法理にもとづき職場環境を適正良好に保持し規律ある運営態勢を確保するよう建議する。
(二)闘争指令下の昼休み集会、勤務時間内支所構内等の動員決起集会の中止・解散命令を強く要求する
1 国と同様、ストライキを配置した時点で組合への便宜供与は禁止すべき
表記の集会は、闘争課題を確認し組合員の意思統一を図り、ストライキ態勢の志気を鼓舞する目的でなされ、地公労法11条1条後段の違法行為そのものだが、東京都の管理職は違法性を認識すらしていない。「昼休み集会」は執務室内でなされることが多く、休憩時間をずらして、所長の命令で窓口対応や電話をとっている「昼休み当番」勤務者の職務専念も妨害している。
国の省庁では組合がストライキを配置した時点で、組合集会に庁舎構内の便宜供与を禁止し、強行した場合の中止命令を徹底している。東京都はなんでも容認し、事実上違法行為の強度の慫慂に加担している。
旧郵政省では、日常的な組合活動については、会議室等利用を許可している。しかし全逓が、物だめ闘争やストライキを配置し闘争体制に入った時点で、地方郵政局が各郵便局に指示して、局所内の組合活動の便宜供与を停止し、集会を強行した場合は、監視・中止解散命令を徹底している。
それは、組合が闘争態勢での便宜供与は当局が違法行為を助長することになるので、目的外使用である組合集会を規制する正当な理由があるものとして不許可とする方針で、裁判所もこの方針を是認している(ストライキ配置で闘争体制となった時点で便宜供与しない方針を示している例として●東京城東郵便局事件・東京地判昭59.9.6労判442号は、国労札幌地本判決を引用して、全逓本部によるスト決行体制確立、業務規制闘争突入指令発令後の、郵便局内での組合集会開催のための施設の利用を許諾することは、公労法17条1項違反の違法行為を助長する結果となるおそれが大きいと当局側が判断したことについては、相当な理由があるとして、会議室使用不許可に権利濫用と認めるべき特段の事情はないと判示した。●熊本貯金局事件・熊本地判昭63.7.18、労判523、●郵政省下関局事件・山口地判昭60.3.19判タ566、●仙台管区気象台(全気象東北支部仙台分会)事件・仙台地判昭60.9.25労判464)。東京都でも国の省庁と同方針をとるべき。
都の管理職が違法行為を強度に慫慂する趣旨の集会を認めている理由は、管理職が中止・退去命令等、いわゆる施設管理権の発動にきわめて消極的で、事実上、受忍義務説(労働基本権は、事業場内での組合活動につき使用者の労務指揮権、施設管理権を制約し、業務運営や施設管理に多少の支障が生じても、組合活動の正当性が否定されないとする説。法益互譲論ともいわれる)という組合側の論理を承服し、正当な組合活動とはいえない秩序を乱す行為、違法行為、犯罪行為を許容するのが筋という左翼的な立場をとっているからである。
「受忍義務説」は、私企業の企業秩序維持権を確立した●国労札幌地本ビラ貼り事件・最三小判昭54.10.30で明示的に否定されたほか、地方自治法238条の4第7項の行政財産の目的外使用不許可の判断枠組を示した○呉市立二河中学校事件・.最三小判平18.2.7も同じく労働組合.職員団体の使用の必要性が大きいからといって管理者に受忍義務はないことを明示しているので、組合に従う理由は全くない。東京都では庁舎管理権は組合に掣肘されて当然という左翼体質の職場風土が蔓延し、私にとっては不愉快で敵対的な職場環境となっている。
前記平成16年東岡職員部長通知により勤務時間内の頭上報告については、平成20年代は私が知る限り警告が行われるようになったが、「昼休み集会」という違法行為を承認されるものと解釈され、職員部監察指導課は「昼休み集会」には全く関心がなく、黙認しているし、現場の管理職も指示がないので是認している。
地公労法11条1項は「職員及び組合は、地方公営企業等に対して同盟罷業、怠業その他の業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。また、職員並びに組合の組合員及び役員は、このような禁止された行為を共謀し、唆し、又はあおってはならない。」
同盟罷業それ自体だけが違法行為でなく、同盟罷業等を唆し、あおる行為も違法行為なのであるが東京都は後段について取り締まることをしないし、本番も就業命令しない。
後段の「そそのかし」「あおり」を違法行為として、中止命令するよう職員部監察指導課が指示しておらず、東京都の管理職が違法行為の強度の慫慂を違法行為と認識しないのは、いわゆる「通常随伴行為不罰論」に沿った左翼思想に凝り固まっているためと考えられるが、この論点は後段で説明する。
旧郵政省並みに闘争体制での組合活動の便宜供与の禁止を強く求める。根拠となる判例として以下のとおり。
旧郵政省では無許可職場集会の監視、中止.解散命令は徹底的に行っていた(●全逓新宿郵便局事件.最三小判昭58.12.20判時1102、理論的説示は全逓新宿郵便局事件 東京高裁判決昭55.4.30労判340、●全逓長崎中央郵便局事件・長崎地判昭59.2.29労判441号カード)不当労働行為とされることはなく、無許可集会強行や中止命令の抗議行動は懲戒処分の理由の一つになっています。
水道局ではオルグ活動やピケティング、動員集会での外部の職員の構内立ち入りは自由です。一般論として郵便局はオルグや点検での立ち入りに厳しく、国鉄は緩く温度差があるとされるが、JRの就業規則は勤務時間内であれ時間外であれ無許可組合活動を就業規則により明文で禁止しているので、徹底して取り締まっています(●JR鳥飼基地無許可入構(懲戒解雇)事件・.大阪地判平12.3.19、●JR東海新幹線支部国労バッジ事件・東京高判平9.10.30判時1626など)。
参考までに、旧郵政省は就業規則による管理は徹底していて、正常な業務運営の維持を第一義としている点で模範的であると考えている。以下のような規則である。
- 東京城東郵便局事件(東京地裁判決昭59.9.6労判442から引用)
「‥‥郵政省庁舎管理規程七条は、『庁舎管理者は、庁舎等において、演説、ビラ等の配布、その他これに類する行為をさせてはならない。ただし、庁舎等における秩序維持等に支障がないと認める場合に限り、これを許可することができる。』と定め、また同第三条は、『職員は、庁舎管理者が、庁舎管理上必要な事項を指示したときは、その指示に従わなければならない』と定められている」
- 全逓新宿郵便局事件 東京高裁判決昭55.4.30『労働判例』340号から引用
郵政省就業規則及びその運用通達は、国有財産の使用に関する取扱いにつき、「組合から組合事務室以外の庁舎の一時的な使用を申し出たときは、庁舎使用許可願を提出させ、業務に支障のない限り、必要最小限度において認めてさしつかえないこと。」と規定している。
○ 郵政事業庁就業規則
第13条 (職場の秩序維持)
1 職員は、上司の許可を受けないで、ほしいままに勤務を離れてはならない。
2 職員は、休憩時間中であっても、職場を離れる場合には上司に届け出なければならない。
3 職員は、みだりに勤務を欠いてはならない。
4 職員は、みだりに他人を職場に立ち入らせてはならない。
5 職員は、職場において、みだりに飲酒し、又はめいていしてはならない。
6 職員は、職場において、他の職員の執務を妨げ、その他秩序を乱す言動をしてはならない。
7 職員は、庁舎その他国の施設において、演説若しくは集会を行い、又はビラ等のちょう付、配布その他これに類する行為をしてはならない。ただし、これらを管理する者の事前の許可を受けた場合は、その限りではない。
8 職員は、庁舎その他の国の施設において、みだりに危険な火器その他の危険物を所持してはならない。
9 職員は、庁舎その他国の施設における秩序維持等について郵政省庁舎管理規程に基づく庁舎管理者の指示に従わなければならない。
「昼休み集会」とは、本部指令により各事業所の支部・分会役員の主宰で、闘争課題を確認しストライキに向けて組合員の意思統一を図り、ストライキ参加予定者の志気を昂揚、鼓舞し、参加意思を強固にしてストライキ態勢を確立する目的の集会をいう。事務室内を占拠して行われることが多く昼の休憩時間に実施される。
通例ではスケジュール化された闘争期間中、午後に都庁構内や支所構内等でなされる勤務時間内職場離脱決起集会(3割または2割動員)が予定されている当日、朝ビラ情宣行動とセットで実施されている。
平成16年以前は、勤務時間内の職務離脱を慣行として広範に許容していたので、職員を囚われの聴衆の状況においた「頭上報告」でオルグ演説、闘争課題の説明、大衆行動の戦術、職場離脱決起集会のよびかけ、全面的に認められていたので、職員を争議行為に巻き込みやすく「昼休み集会」もあったが、勤務時間内の活動で事足りていたが、平成16年の後藤都議の質問以来、勤務時間内活動が自粛傾向となったため、代わって「昼休み集会」が重視されるようになったのである。
例外的には当局の提案や処分等に対して突発的な抗議集会として実施される場合もある。
令和元年12月局内闘争では、私が勤務していた新宿営業所においては、12月4日と、同月17日に、給水課新宿分室事務室内にて、新宿営業所組合員と、給水課組合員との合同集会が行われた。
令和元年の例では、事前に庁舎管理者である○○新宿営業所長(総務部調整担当課長を経て現サービス推進部業務課長)に職場の秩序を乱し、違法行為を助長するとして、中止.解散命令、監視すべきと要請したが、所長は、職場秩序を乱すものではない。ハンドマイクなら別だがとの話で、黙認する方針を明確に述べた。なお、集会開催について組合からの事前通告はないとも聴いた。
また、平成23年~26年3月まで私が勤務していた中野営業所では7回の集会がなされ、いずれも事務室内だったが、当時の○○○○営業所長(のち経理部管理課長.職員部監察指導課長.労務課長、現在は退職)に組合役員の申し出に応じ許諾、労働基準法第34条第3項の規定により、休憩時間を自由に利用させる義務があるので、組合活動を規制できないと言っているがこの法解釈は後段で述べる通り誤りである。○○所長は黙認だった。
但し、筆者が平成26年4月~31年3月まで在籍していた世田谷営業所太子堂分室では昼休み集会を実施してない。頭上報告の分会役員の発言によれば、本部指令でも職場の実態に合わせて対応できるようで、理由は不明だが管理職による規制ではなく、集会を開催しなくても組合員がスト指令に忠実なのであえて必要ないという判断などの理由が考えられる。
新宿営業所(四谷区民センターという区の施設との合同庁舎)では、3階の営業所内でなく、4階の給水課分室で行われたこともあり、私は実況見分してないので具体的内容は記録していないけれども、中野営業所の7回は営業所事務室内でなされ実況見分の記録があるが、それにもとづくと「昼休み集会」とは大筋で以下のような内容といえる。
まず司会の挨拶、基調報告もしくは交渉経過報告、決議文または抗議文朗読、組合員代表の決意表明、拍手の要請、頑張ろう三唱の鯨波(シュプレヒコール)その他日程などの連絡。決意表明があったのは7回中1回、鯨波をやらない簡略化したケースも少なくないが、いずれにせよ集会における演説者の発言そのものが、地公労法11条1項が禁止する「あおり」(オルグあおり、演説あおり)ないし「そそのかし」にあたる。
なお私が記録している事務室内の昼休み集会は以下のとおり、カッコ内主な演説者
1)中野営業所事務室内 平成23年7月7日 (分会役員)
2)中野営業所事務室内 平成23年11月2日 (分会役員)
3)中野営業所事務室内 平成23年12月9日 (分会役員)
4)中野営業所事務室内 平成24年3月8日 (分会役員)
5)中野営業所事務室内 平成25年11月2日 (支部.分会役員)
6)中野営業所事務室 平成26年1月28日 (本部委員)
7)中野営業所事務室内 平成26年2月12日(支部.分会役員)
上記は実況見分記録あり。なお、これ以外に勤務時間内の頭上報告多数、勤務時間内オルグ演説、抗議演説もあるが、上記は純然たる昼休み集会をピックアップしたもの。
8)西部支所給水課新宿分室 令和元年12月4日
9)西部支所給水課新宿分室 令和元年12月17日
◆ 実況見分記録(「昼休み集会」平成23年12月9日(金)中野営業所)
同日15時より全水道東水労の都庁第二本庁舎前で勤務時間離脱3割動員の決起集会(当時は半地下の新宿NSビルとの間の空間で行われていたが近年は地上のふれあいモールに移行している)、夜には書記長会議がある日だが、通常昼休み集会と早朝ビラ配りは、3割動員集会のある日にセットで設定されるので容易に予測できる。
【始業時前朝ビラ情宣行動】構内通用口ドア前
構内の狭い入口の通路の左に二人、右に一人が立ち、通路を挟むかたちで配られる。小さな営業所なので、3人しか立ってないが、支所だと構内入り口前右に5人左に5人といった規模になる。挟まれた間を通行し半強制的にビラを受け取らせる。人数が多い場合は特に威圧感がある。人を挟んだり、包囲する組合活動は押しつけになるので、規制すべきである。ビラの内容も違法行為を慫慂する内容であるから、ビラ配布自体が違法行為にあたり中止命令すべき態様と内容といえる。
【昼休み組合決起集会】事務室内ほぼ中央に演説者
12時28分に分会書記長が赤腕章をつけ基調報告の紙を配りだしたので、自席で昼食をとっていた○○所長(のち経理部管理課長、職員部監察指導課長、労務課長)に昼休み集会を組合がやることを知っているのかと問い合わせたところ知らないと言う。
その後分会書記長がこれから集会をやると所長に通告、所長は休憩している人に配慮云々と言っただけで、中止命令せず、集会自体を許諾。
昼休みはこの年の東日本大震災による電力不足のため消灯していたが電気がつけられ31分頃から集会が始まった。
なお、過去の例では所長は離席し監視しないように組合に配慮するが、この時は一部始終を管理職が見ている。
集会の態様は、営業所事務室ほぼ中央(所長席の向かい)に組合役員、演説者等、多くの職員は自席。昼休み当番として2名が休憩時間を午後1時以降にずらして、窓口のレジと電話当番として勤務中、演説者との距離は近く10mも離れていない。従って、折り畳み式の衝立が立っているので、来客からは覗かれないが、演説や鯨波などは当然雑音として入るので、職務への集中を散漫にさせ、電話の相手方の声が聞き取りにくくなるなど職務専念を妨げるおそれがある状況でなされる。
- 31分から37分頃 司会の組合分会長挨拶
まず集会時間を20分、目的について闘争課題を確認し意思統一を図ることと述べ、国政の状況、国家公務員の労働基本権付与の法改正は、国会が本日閉会したので、見通しが立ってない現状をまず報告したうえ、今回の闘争目的を説明。
- 38分から43分頃 分会書記長基調報告
事前に配られた内容を読み上げた。前半は14日1時間ストを設定して監理団体業務委託を見直し、直営職場を残す闘いをやる云々と述べ、後半は21日1時間を設定しその他の職場要求と反合理化課題の解決を目指す。震災復興が進まないのは被災自治体の人員削減が要因などと言い、人員削減計画を見直す契機とすべきだといった趣旨を述べていた。演説が終わってぱらぱらと拍手があり、司会の分会長が確認のため拍手を催促し、比較的大きな拍手となった。
- 44分から46分 組合員代表の決意表明
組合委員代表一人(元中央委員)が矢先漏水調査業務見直しは営業所業務にも影響がある云々と述べたうえ、闘争の決意表明を読み、拍手が求められた。
- 47分から49分頃 分会長の音頭で頑張ろう三唱等(組合分会長)
事務連絡の後、大声で「14日、21日ストライキに向け闘争課題を確認し、決意表明を受けました、最後に頑張ろう三唱で締めたいと思います」といったことを述べ、「団結用意」とかけ声があり、頑張ろう三唱が行われた。
以上、これは一例だが、組合員代表の決意表明があったのは中野ではこのケースのみなので掲載した。昼休み集会の流れの大筋は上記のとおりである。
上記の内容は、地公労法11条1項後段が禁止する「あおり」(演説あおり.オルグあおり)そのものであるから、同様の集会での司会者、演説者、頑張ろう三唱の音頭とりについては、公務員の判例で懲戒処分事由として認められた多数の先例があるが、「そそのかし」「あおり」に当たると断言できる。東京都の管理職は違法行為の強度の慫慂する組合活動に施設管理権の発動をしないので、違法行為に加担、助長しているのである。
「そそのかし」とは「違法行為を実行させる目的をもつて、公務員に対し、その行為を実行する決意を新に生じさせるに足りる慫慂行為をすること」(外務省秘密漏えい事件・最一小判昭53.5.31刑集32-3-457)と定義される。
「あおり」とは「違法行為を実行させる目的をもって、他人に対し、その行為を実行する決意を生じさせるような、又は、すでに生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与えること」(全農林警職法事件・最大判昭48.4.25刑集27-4-54、岩教組学力調査事件.最大判昭51.5.21刑集30-5-1178 )と定義される。
全農林警職法判決は、公務員の勤務条件法定主義、公務員の争議行為に対する市場の抑制力の欠如を強調して、公務員法のあおり等処罰規定は、字義どおり、すべての公務員の一切の争議行為を一律全面的に禁止するものであり、その違反行為について、争議行為に通常随伴する組合役員の指令発出等を含めてすべてのあおり行為を処罰できるものとしている。
平たくいえば 行動指令の発出伝達、スト実施体制確立のための説得慫慂活動、闘争指令下での演説、集会は「そそのかし」「あおり」になる。狭く解釈する必要はない。
というのは、「そそのかし」「あおり」の違法性を限定的に解釈する争議行為「通常随伴行為不可罰論」は●全農林警職法事件最大判昭48.4.25刑集27-4-547は、●岩教組学力テスト事件最大判昭51.5.21刑集30-5-1178という最高裁大法廷判決で明示的に否定されており、その後の下級審判例で「原動力論」、「統括・指導者責任論」「具体的危険論」「高度の危険性」「組織的統制力を背景とした指令」といった限定解釈の試みがあるが、「あおり」の構成要件該当性が争点になった●日教組スト事件.最一小平成元.12.18刑集43-13-88、●埼教組事件.最三小判平2.4.17刑集44-3-1においては、前記大法廷判決を引用するのみで、下級審の試みに対し明確は答えていない。
ということは、最高裁は「あおり」の限定解釈は認めていないということである。日教組事件の永井敏雄調査官判解によれば「あおり」の訴因の内容について、過去の例では、会議あおり、議案の提出そのもの及び趣旨説明をあおりとした例、激励のあいさつ、指令あおり、オルグあおり、現場(演説)あおりがあったことを類型的に説明している。
従って、これまで判例が「そそのかし」「あおり」と認定し、懲戒処分事由となったものは全て「そそのかし」「あおり」と断言してよいのである。
以下の判例は、昼休み集会の主宰者、演説者司会者、基調演説者、経過報告者、決議文朗読、決意表明、「頑張ろう三唱」の音頭とりが「そそのかし」「あおり」に当たる根拠として示すものである。これは2割動員・3割動員集会、スト当日の集会も同じことである。
「そそのかし」「あおり」は公労法と地公労法には国家公務員法や地方公務員法の罰則規定はないが、明文で禁止しており、公労法適用の郵便局の判例で「そそのかし」「あおり」を理由として懲戒処分例が多数あり、水道局職員に適用される地公労法11条1項違反者は、12条により解雇できるが、地公労法11条1項後段(あおり、そそのかし)違反として解雇された事例として●北九州市交通局解雇事件.福岡高判・昭55.11.1判タ435がある。「あおり」「そそのかし」を理由として12条解雇も懲戒処分はできることはいうまでもない。
- 全運輸近畿陸運支部(大阪陸運局)事件.大阪地判昭54.8.30民集39ー7ー1408●大阪高判昭57.2.25民集39-7-1478●最二小判昭60.11.8民集39-1-1375
最高裁第二小法廷は職場大会の「あいさつ」「職場大会の意義についての演説」「所長交渉の経過報告」「決議文の朗読」は「そそのかし」又は「あおり」と認定している。
昭和44年11月13日15分ないし20分勤務時間(いわゆる出勤簿整理時間)に食い込む各職場大会
処分理由たる原告らの所為(戒告)
(一)原告A
本件ストライキ当時全運輸近陸支部和歌山分会分会長の地位にあったところ、右分会が昭和44年11月13日和歌山県陸運事務所宿直室前の中庭において、給与に関する人事院勧告の完全実施などの要求貫徹を目的として行なつた勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このため当日の勤務時間中、午前8時30分から同45分までの約15分間にわたり職務を放棄し、その際分会長としての「あいさつ」を行い主たる役割を果した。
(二)原告B
本件ストライキ当時全運輸近陸支部奈良分会分会長の地位にあつたところ、右分会が右同日奈良県陸運事務所宿直室において、右要求貫徹を目的として行なつた勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このため当日の勤務時間中午前8時30分から同50分までの約20分間にわたり職務を放棄し、その際分会長として「所長交渉の経過報告」を行い主たる役割を果した。
(三)原告C
本件ストライキ当時全運輸近陸支部兵庫分会副分会長の地位にあつたところ、右分会が右同日午前8時33分から同50分までの約17分間にわたり兵庫県陸運事務所姫路支所構内入口横の広場において、右要求貫徹を目的として行なつた勤務時間にくい込む職場大会に参加し、その際副分会長として「所長交渉の経過報告及び決議文の朗読」を行い主たる役割を果した。
(四)原告D
本件ストライキ当時全運輸近陸支部兵庫分会分会長の地位にあつたところ、右分会が右同日兵庫県陸運事務所庁舎玄関前横において、右要求貫徹を目的として行なつた勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このため当日の勤務時間中午前8時30分から同42分までの約12分間にわたり職務を放棄し、その際分会長として「あいさつ及び職場大会の意義」について演説を行い主たる役割を果した。
(五)原告E
本件ストライキ当時全運輸近陸支部京都分会分会長の地位にあつたところ、右分会が右同日京都府陸運事務所庁舎玄関前広場において、右要求貫徹を目的として行なつた勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このため当日の勤務時間中午前8時30分から同49分までの約19分間にわたり職務を放棄し、その際分会長としてがんばろう三唱の音頭とりを行い主たる役割を果した。
(六)原告F
本件ストライキ当時全運輸近陸支部大阪分会分会長の地位にあつたところ、右分会が右同日大阪府陸運事務所庁舎玄関前広場において、右要求貫徹を目的として行なつた勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このため当日の勤務時間中午前8時30分から同50分までの約20分間にわたり職務を放棄し、その際分会長として「あいさつ及び人事院勧告関係の報告」を行い主たる役割を果した。
(七)原告G
本件ストライキ当時全運輸近陸支部支部長の地位にあつたところ、右支部本局分会が右同日大阪陸運局自動車部事務室において、右要求貫徹を目的として行なつた勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このため当日の勤務時間中午前9時5分から同17分までの約12分間にわたり職務を放棄し、その際支部長として「あいさつ及び人事院勧告関係の報告」を行い主たる役割を果した。
適条
原告らの各行為は、組合役員として他の者と共に勤務時間にくい込む各職場大会に参加した点において国公法九八条二項前段所定の争議行為に該当し、右大会において組合役員として参加者に対し、あいさつ、経過報告、決議の朗読、演説、がんばろう三唱の音頭とりなどを行なつた点において同法九八条二項後段所定の「そそのかし」、「あおり」行為に該当するので、同法条項に違反し、同法八二条一号に該当する。そして、原告らは、事前に上司から勤務時間にくい込む職場大会は明らかに違法であるから参加しないよう警告されたにもかかわらず、右各行為を行なつたことは情状重いものである。(一審より引用)
一審は、「国公法九八条二項後段所定の「あおり」「そそのかし」とは、国公法九八条二項前段に定める違法行為を実行させる目的をもつて、他人に対し、その行為をなさしめるよう仕向ける行為を総称し、必ずしもこれによって現実に相手方が影響を受けること及び業務の正常な運営を阻害する行為が行われることを要しないものと解すべきである。」としたうえで、本件職場大会において、あいさつをした行為、メッセージと祝電を朗読した行為、あいさつと職場大会の意義について演説した行為、所長交渉の経過について演説し、決議文を朗読した行為、団結がんばろう三唱の音頭をとつた行為、あいさつをした行為、人事院勧告に対する閣議決定の不当性を説明した行為は、いずれも国公法九八条二項後段所定の争議行為の「あおり」或いは「そそのかし」行為に該当するものということができると述べた。
二審は本件職場大会において控訴人らが参加者らに対して行なつた「あいさつ」「職場大会の意義についての演説」「所長交渉の経過報告」「決議文の朗読」メッセージは「そそのかし」「あおり」に該当し、とりわけ「あおり」のうち「既に生じている決意を助長させる勢いのある刺激を与える」ことに該当するものであるとした。
上告審は本件職場大会における上告人らの行為が国公法九八条二項後段に規定する「そそのかし」又は「あおり」に該当するとした原審の判断は正当であると判示している。
- 北海道開発局.網走開発建設部事件・札幌地判昭54.10.9判時964
昭和46年7月15日早朝29分(いわゆる出勤簿整理時間内)職場大会
全開発中央執行委員長、書記長(停職一月)、全開発副執行委員長、会計長、中央執行委員2名(一月ないし六月減給十分の一)全開発本局支部書記長、全開発函館支部執行委員長、全開発函館支部副支部執行委員長、全開発室蘭支部執行委員長、全開発旭川支部書記長ら(1)~(32)まで(一月ないし二か月減給十分の一)
(1)全開発書記長は、全開発本局支部の当該集会において、集会に参加した職員を激励する挨拶を行った。
(2)全開発本局支部書記長は、全開発本局支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告、決議文の読み上げ.提案及び閉会宣言を行った。
(3)全開発函館支部執行委員長は、全開発函館支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶及び団結がんばろうの音頭取りを行った。
(4)全開発函館支部書記長は、全開発函館支部の当該集会において、開会宣言、争議行為に至る経過の報告、激励電文の読み上げ、決議文の読み上げ.提案、団結がんばろうの司会及び閉会宣言を行った。
(5)全開発函館支部副支部執行委員長は、全開発函館支部の当該集会を実施させるための被告ら主張のごとき監視を玄関ホール附近で行った。
(6)全開発室蘭支部書記長は、全開発室蘭支部の当該集会において、開会挨拶、争議行為に至る経過の報告、団結がんばろうの司会及び閉会宣言を行った。
(7)全開発室蘭支部執行委員長は、全開発室蘭支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、決議文の読み上げ及び団結がんばろうの音頭取りを行った。
(8)全開発旭川支部書記長は、全開発旭川支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告を行った。
(9)全開発旭川支部執行委員長は、全開発旭川支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、決議文の提案.採択の司会、団結がんばろうの音頭取り及び閉会宣言を行った。
(10)全開発留萌支部書記長は、全開発留萌支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告及び決議文の読み上げを行った。
(11)全開発留萌支部副支部執行委員長は、全開発留萌支部幌延分会の当該集会において、争議行為に至る経過の報告、決議文の読み上げ.提案及び閉会挨拶を行った。
(12)全開発留萌支部執行委員長は、全開発留萌支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶を行った。
(13)全開発稚内支部執行委員長は、全開発稚内支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶を行った。
(14)全開発稚内支部書記長は、全開発稚内支部の当該集会において、争議行為に至る経過報告及び決議文の読み上げを行った。
(15)全開発稚内支部副支部執行委員長は、全開発稚内支部浜頓別出張所分会の当該集会において、争議行為に至る経過の報告を行った。
(16)全開発網走支部執行委員長、全開発網走支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶及び団結がんばろうの音頭取りを行った。
(17)全開発網走支部副支部執行委員長は、全開発網走支部の当該集会を実施させるための前同様の監視を庁舎玄関附近及び集会場入口附近で行った。
(18)全開発帯広支部執行委員長は、全開発帯広支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、閉会挨拶、団結がんばろうの音頭取り及び閉会宣言を行った。
(19)全開発帯広支部副支部執行委員長は、全開発帯広支部の当該集会において、閉会の挨拶及び議事の進行を行った。
(20)全開発帯広支部書記長告加藤昌明は、全開発帯広支部の当該集会において、争議行為に至る経過の報告、激励電文の読み上げ及び決議文の読み上げ・提案を行った。
(21)全開発釧路支部書記長は、全開発釧路支部の当該集会において、開会の挨拶、社会党釧路総支部役員及び釧路地区労働組合協議会役員の紹介、激励電文の読み上げ並びに当局に対する決意を述べる演説をして議事の進行を行つた。
(22)全開発釧路支部執行委員長は、全開発釧路支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、閉会の挨拶及び団結がんばろうの音頭取りを行った。
(23)全開発釧路支部執行委員長は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会において、集会をもり上げるため、団結がんばろうの音頭取りを行った。
(24)全開発石狩川支部書記長は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会において、争議行為に至る経過の報告を行つた。
(25)全開発土試支部書記長は、全開発土試支部の当該集会において、集会スローガン及び決議文の読み上げ等を行つた。
(26)全開発土試支部執行委員長は、全開発土試支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶及び団結がんばろうの音頭取りを行つた。
(27)全開発土試支部副支部執行委員長は、全開発土試支部の当該集会において、開会の挨拶及び議事の進行を行つた。
(28)全開発建機支部執行委員長は、全開発建機支部の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、賃金要求内容の説明、勤務届表の記入方法の指示、団結がんばろうの音頭取り及び閉会宣言を行った。
(29)全開発建機支部書記長は、全開発建機支部江別工場分会の当該集会において、開会宣言、議長選出の司会、集会をもり上げる挨拶、勤務届表の記入方法の指示及び閉会宣言を行った。
(30)全開発建機支部副支部執行委員長は、全開発建機支部の当該集会において、議長挨拶及び議事の進行を行っつた。
(31)全開発建機支部副支部執行委員長は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会において、集会をもり上げる挨拶、全開発石狩川支部書記長が行った争議行為に至る経過の報告の補足、勤務届表の記入方法の指示及び議事の進行を行った。
(32)原全開発札建支部書記長は、全開発札建支部及び石狩川支部合同の当該集会において、決議文の読み上げ提案を行った。
(33)全開発網走支部書記長は、全開発網走支部の集会において、争議行為に至る経過の報告及び激励電文の読み上げを行った。
上記は同盟罷業当日の職場大会だか、ストの前段階の決起集会等については以下のような判例がある。
◎闘争指令下の決起集会の演説、鯨波の音頭とり等が懲戒処分の理由とされたケース
- 北見郵便局事件・札幌高判昭54.3.29判時940-114
(公労法は、地公労法と同じく「唆し」「あおり」は違法だが罰則規定はない)
昭和44年4月24日11時47分まで半日スト
◇4月23日午後5時5分ころから同6時ころまでの間、同郵便局二階の局長室前廊下において全逓組合員約100名によりストライキ総決起集会が開かれた際、原告Gは北見支部執行委員長としてストライキ参加予定者らに対して激励の演説を行なってあおった。
◇23日夕刻からストライキ参加予定者らを北見労働会館に宿泊待機させ、みずからもこれに加わった。
◇24日午前4時25分ころ、原告Gは道本部書記長Оと連れ立って北見郵便局職員通用門前でピケを張っている組合員らを巡視した。
◇原告Gは同24日午前11時時30分ころ、ストライキ参加者の集合会場である北見労働会館内から姿を見せ、同会館前でストライキに参加した組合員らに対し「行進する。」との号令をかけて四列縦隊に整列させ、かつ、隊列の先頭に立って北見郵便局まで誘導した。
◇原告Gは同24日午前11時38分ころから同局構内において、前記О、全逓中央本部執行委員Kおよび北見支部書記長Hとスクラムを組み、約80名の組合員らの先頭に立ってジグザグデモを行なつた。
◇原告Gは同24日午前11時40分ころから、同局構内において右約80名による集会が開かれた際、「団結、頑張ろう。」の音頭をとり他の者を唱和させた。以上一審札幌地判昭50・2・26からの引用。
控訴審が類型別に「あおり」に該当するか判断をしているので引用する。被控訴人の所為のうち
① ストライキ総決起大会自体ストライキ参加予定者のストライキ参加意思を鼓舞し、その闘争意思を堅固にするための目的で開催されるものであるし、被控訴人の右演説は、ストライキ参加予定者の志気を昂揚、鼓舞し、参加意思を強固にするためのものであつたことが明らかであるから、被控訴人の激励演説は本件ストライキを「あおり」、「そそのかし」たことに該当する‥‥。
② ピケ張りの実践、指導は、「あおり」「そそのかし」
③ スト参加者に対する隊列行進の誘導は「そそのかし」
④ ジグザグデモ行進の指導と実践は「あおり」「そそのかし」
⑤ 集会の際のシュプレヒコールの音頭は「あおり」
と説示し、公労法17条1項後段のあおり、そそのかしに該当する違法行為と認定したうえで、本件昭和44年春闘に行なつた半日ストライキに際して、組合支部執行委員長としてこれを実践指導したこと、無断掲出した組合旗等の撤去作業を妨害したこと、郵便局管理者に加療約27日を要する傷害を負わせたことを理由とする懲戒免職処分を適法としたものである。
- 熊本貯金局事件・熊本地判昭63.7.18労判523
昭和48年4月27日(4時間スト)、昭和50年11月30日から12月1日(8時間スト)
公労法17条1項に違反する争議行為に指導的な役割を果たしたことを理由とする減給3~6月の懲戒処分を有効とした判例であるが、休憩時間の無許可集会での演説やシュプレヒコールの音頭(水道局でも同様のことがなされている)をとったことも懲戒事由とされている。
【処分例1】 全逓熊本地方貯金局支部長(郵政事務官)減給1/10(6か月)
◇ストライキの前日である昭和50年11月29日午後0時35分ころから局玄関前広場において、全逓組合員約500名が無許可集会を行った際‥‥局管理者の解散命令を無視してあいさつを行った後、「それでは解散する。スト権奪還の決意をこめて団結ガンバローを三唱する。」と述べ、シュプレヒコールの音頭をとり、同組合員らに唱和させた。
◇昭和49年4月13日(4時間)、同50年12月1日(8時間)違法ストライキに参加し、みだりに勤務を欠いた。
【処分例2】 全逓熊本地方貯金局副支部長(郵政事務官)減給1/10(5か月)
◇昭和50年11月25日午後0時19分頃から、局第二貯金課事務室において、全逓組合員約60名が無許可集会を行った際‥‥「26日からのストライキは堂々と打抜く。」と述べた後、ストライキの実施日について周知させるとともに、ストライキ突入に際しては組合の指示に従うよう要求し、さらに、スト署名をしていない者については粘り強く説得する旨を述べた。
◇昭和49年4月13日(4時間)、同50年12月1日(8時間)違法ストライキに参加し、みだりに勤務を欠いた
なおこの時期は「段落とし」といって組合側の攻勢で懲戒処分の量定がゆるくなった時期である。40年代前半ならもっと重い処分が考えられる。
- 郵政省下関局事件・山口地判昭60.3.19判タ566
昭和48年4月10日全1日8時間スト
原告H支部長に停職処分について
(二)昭和49年4月9日の行動について
U(局管理長)らは、昼ころ、支部が局の第二貯金課事務室において無許可で集会を開く旨聞知し、Uが原告Hを呼んで、便宜供与は打ち切られており、庁舎の使用は許可されていないので集会を実施しないよう注意したところ、同人はこれを聞き入れず、正午過ぎから約200名の組合員を前記事務所に集め、無届の春闘総決起集会を行なつた。0時25分ころ原告HはKを案内して現われ、マイクを持って、「皆さん、K地区委員長を紹介します。これから委員長の挨拶があります。」と春闘の最高指導責任者として中国地本から派遣されたKを紹介した、‥‥、原告HはUに対し‥‥に激しい口調で出て行くよう迫つたこと、Uの解散要求に抗議した。
Hの一連の行為は‥‥、翌日のストライキ突入に向け組合員を激励し、団結を強め、志気を高めるものというべきであるから、あおり、そそのかしの指導行為に該当するといわざるを得ない。原告らが主張するように、たとえ支部の執行権が停止されていたとしてもこれが支部役員の責任を免れるための便法である‥‥中国地区本部の指示があり、主としてK中国地本委員長が演説をし、翌日のストにつき説明をしたとしても、右認定を何ら左右するものではない。
(二)昭和49年4月10日の行動について
Hがマイクで、ストライキに不参加のYらに対し、参加するよう呼び掛け、支部組合員約220名に対しこれから決起集会を行なう旨挨拶したこと、集会の際シユプレヒコールの音頭をとつたこと、集会終了の挨拶をしたこと等‥‥、右呼掛けは、ストライキ不参加者に参加を強く呼び掛け、同時に参加者の志気を高めるものでもあるから、ストライキをそそのかし、あおったことに該当する。また、右挨拶、シユプレヒコールの音頭をとったことは、ストライキ参加者の志気を昂揚、鼓舞し、その参加意思を堅固にするものであつたこと、‥‥右行為は、いずれもストライキをあおったことに該当する。
(四)昭和50年11月26日の行動について
原告Hが、約150名の支部組合員に対し挨拶したこと、‥‥は、単にストライキの実施方法を指示するに止まらず、ストライキ参加意思を強固にし、鼓舞するものであるから、ストライキをあおり、そそのかしたことに該当するものといわざるを得ない。
(五)昭和50年11月27日の行動について
Hが、U、Мにストライキに参加するよう説得したこと‥‥ストライキをそそのかしたことに該当するといわざるを得ない。
4 原告Hの責任の総合評価
Hは、ストライキ不参加者に対し参加を呼び掛け、また、説得し、決起集会を行なう旨挨拶し、シュプレヒコールの音頭をとったのであるから、公労法一七条一項後段に禁止する同盟罷業その他業務の正常な運営を阻害する行為をあおりそそのかして争議行為そのものの原動力となる指導的行為を行なつた者として問責されるを免れ得ないものというべきである。
東京都水道局では、上記に引用した「あおり」「そそのかし」の行為は闘争シーズンに頻繁になされるが、懲戒処分の対象から外されているので、違法行為が組織ぐるみで保護されている。
監察指導課は、3割動員、勤務時間内職大、同盟罷業において、賃金カットとなる対象者の把握を指示しており、また後藤都議の平成16年の質問以降、ビラ貼りの枚数と写真撮影を指示した時期があったが、昼休み集会は一切監視の指示はない。スト当日の集会については、どの場所で集会をしたのか、スト参加者の人数を報告するが、写真撮影等の監視や、指導者や率先助勢者の現認検書も上申の指示はないから、誰がどういう演説をしたというような記録もないはず。
4 他の職員の職務専念妨害抑制義務等の規則の明文化は絶対必要
「昼休み集会」の問題点は地公労法11条1項後段の違反行為であるという理由にとどまらない。執務室で行われるケースが多いことから、一斉休憩時間でも、所長の命令で休憩時間をずらして勤務中の職員がいる場合(昼休み当番)があり、集会のアジ演説や鯨波等示威行為が職務専念を妨げ、職務遂行の集中、注意力を散漫にするおそれがある。
また集会に巻き込まれたくない職員の休憩時間の自由利用を妨げ、その余韻から午後の作業能率を低下させるおそれなど、演説内容いかんにかかわらず企業秩序をみだすおそれがある態様といえる。勤務中職員の職務への集中を妨げるおそれがあること、勤務中に異様な雰囲気をかもしだすという理由だけでも規制は可能である。
最高裁の企業秩序論判例は「作業能率を低下させるおそれ」「他の従業員の業務遂行をも妨げるおそれ」「局所内の秩序をみだすおそれ」(●目黒電報電話局事件.最三小判昭52.12.13)とか「能率的な運営」(●国労札幌地本事件.最三小判昭54.10.30)といった抽象的理由で、施設経営内の職員の行動を規制できる趣旨なのである。
別の系統の判例法理として、行政財産の目的外使用不許可の裁量処分(地方自治法238条の4第7項)に関する判例も蓄積しており、目的外使用なので不許可とすべき事案ということもできる。
但し、最高裁判例は懲戒処分の前提として私企業において就業規則の記載(国労札幌地本ビラ貼り戒告事件・最三小判昭54.10.30)と周知(フジ興産事件・最二小判平15.10.10判時1840号144頁)が必要としているので就業規則が整備されていることが前提になる。しかるに地公法32条の適条とするために明文の規則が必要に思える。それゆえ、勤務時間内外を問わない無許可組合活動、無許可集会.演説禁止の明文規程を設けることを強く提言する。
先に引用した人事院規則17-2 第7条2項に「職員は、職員団体のためその業務を行ない、又は活動することによって、他の職員の職務の遂行を妨げ、又は国の事務の正常な運営を阻害してはならない。」、公社時代の郵政事業庁就業規則13条6項に「職員は、職場において、他の職員の執務を妨げ、その他秩序を乱す言動をしてはならない。」等の規則の制定も強く求める。
これによって、業務阻害権を主張している組合の積極的執務妨害の抑止にもなるし、企業秩序論の法理による職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保が可能になり、組合に労務指揮権、施設管理権を奪われない抑止にもなるので、他の職員の職務専念妨害抑制義務を課せば、職場は正常化の道筋になる。
管理者としては明文の就業規則を根拠として職務命令するほうがやりやすい。現状のように明文規定がないことは職務命令をやらず組合と馴れ合う口実になっている。
5 勤務時間内3割動員集会と2割動員集会は解散・退去命令し、集会の外来者は建造物侵入罪が成立するようにせよ
毎年、スケジュール化され実施されている大衆行動のうち当局が争議行為と認定し賃金カットしているものとして勤務時間内3割動員決起集会がある。たぶん佐賀県教組事件(最一小判昭63.1.21判時1284)、3日間の3割3割4割休暇闘争を争議行為と認定しているためである。ストライキ態勢を固めるため、闘争課題を確認し組合員を意思統一し、士気を鼓舞、昂揚させる趣旨の集会である。集会・示威行為が都庁本庁構内、支部構内、合理化対象の事業所で行われる。勤務時間内3割動員集会は毎年最低3~4回実施されている。2割動員集会は休暇取得で認めており、平成初期は1回の闘争で必ず1回は動員集会に参加するよう役員が指導していた。2割動員も含めるとかなりの回数になる。
3割動員の場合、少なくとも1回3時間は欠務となる。毎年2回動員に行けば、20年間で累積120時間の欠務となるが、賃金カット(組合が補償する)だけで懲戒されることはにない。
支所及び合理化拠点で行われる集会も(近年は2割動員で、有給休暇の休をとって支所傘下の事業所、その他本部指令で割り当てられた他の事業所の水道局・下水道局職員が集まる)、監視・退去命令等、中止.退去命令を徹底すべきである。理由は昼休み集会と同じく、集会自体が地公労11条1項後段に禁止されている「あおり」「そそのかし」であり違法行為の強度の慫慂を目的とする集会を黙認することは違法行為の助長であり、当局が違法行為に加担しコンプライアンスに反するためである。
平成16年3月17日公営企業委員会で次のようなやりとりがあった。
〇後藤委員 ‥‥この写真なんですけれども、3月8日、これも同じく練馬の北部支所なんですけれども、集会を組合の方たちがやっています。これは水道局の方から確認をとったんですけれども、この集会に関しては事前に届け出があったのかどうか。
○東岡職員部長 北部支所では、3月8日、お客さまセンター設立反対等と称しまして、営配−営業、配水という意味ですけれども、営配庁舎合同集会が本部指令に基づいて行われました。これは17時15分から18時15分ということで、勤務時間外で約90名が参加して駐車場で行いました。事前の許可手続はとっておりませんでした。
今後は、各事業所に対しまして、集会などを持つ場合には、事前に庁舎管理規程に基づく許可申請を行って、了解をとった上で実施するよう指導を徹底していきます。3月9日に、庁舎管理の徹底についてということで周知徹底を図ったところです。
90人集まったということだが、定時退庁時間にピケを張って、強引に職員を集会参加に引き込む闘争だったのか。定時退庁時間後の集会は珍しいケースといえる。
東岡職員部長は、今後許可申請を出させるようにすると都議の質問をかわしている。受忍義務があるとして組合が集会の許可申請など出すはずはないし、私は日常的な組合活動についての便宜供与を否定しないが、組合が庁舎管理規程にもとづく申請をするという例を知らない。管理職は黙認し監視も指示されてない。
問題は手続ではなく、集会の内容が違法な「あおり」「そそのかし」であり、春闘の闘争期間の集会であり、スト参加の志気を鼓舞するものである以上、許可申請を出す出さないにかかわらず、不許可、中止・退去命令すべきなのである。
前節に示した行政財産の目的外使用不許可の裁量処分(地方自治法238条の4第7項)という観点でも不許可ができるし、水道業務と無関係な目的で構内に滞留する他の事業所に勤務する動員組合員は、違法行為目的の建造物侵入として退去命令してよいのである。
水道局事業所は、公共の用に供される行政財産と異なり、一般公衆が自由に出入りしたりすることのできるものではないが、所掌事務に関し用件のある者は、職員であれ住民であれその用件に関して平穏に立入る自由が認められることはいうまでもない。
工事検査、設計審査、管路図の閲覧、諸申請、営業所窓口での料金の支払い、その他水道事業所掌業務に関連して業者が多く、水道局及び東京水道の事業所を訪れており、ベンチが置かれ外来者の一時的な滞留は認められている。
しかし組合活動は目的外使用であり、決起集会の目的・内容が違法行為をあおる違法行為そのものである。庁舎管理者は業務が円滑かつ能率的に遂行されるための措置を講ずる権能と責務を有するものであり、外来者の立入りを認めることによって、違法行為を助長すると予測される場合は、立ち入り不許可、退去命令してしかるべきである。理由のある外来者の立入阻止行為は合法であり、●墨田民商(向島税務署)事件・東京高判昭52.5.30判時882が参考になるだろう。
都庁構内のふれあいモールの決起集会については、「公開空地」という特性により建造物侵入罪の成立が可能なのかという問題だけで、東京都が管理する敷地である以上、庁舎構内の取り締まりとして支所集会と同じ対応でよい。令和2年に庁舎管理規程も改定されているので違反する行為として取り締まるべきであり、組合は違法行為の慫慂、あおり、そそのかしをやりたいならば自らの負担及び利益において、庁舎構内を離れて集会会場を用意して行うべきとすべきである。
昭和50年代以降最高裁が案出した企業秩序論の判例法理にもとづいて取り締まりを徹底しているJRグループの就業規則のように、◇社員は、会社が許可した場合のほか、勤務時間中に又は会社施設内で、組合活動を行ってはならない◇社員は,会社が許可した場合のほか,会社施設内において、演説、集会、貼紙、掲示,ビラの配付その他これに類する行為をしてはならない等、規則の整備をすべきである。
支所内に動員されてくる組合員の構内立ち入りを禁止するために、建造物侵入罪や不退去罪が成立させるためにも必要である。
- 全逓釜石支部大槌郵便局ビラ貼り事件・最二小判昭58.4.8は、全逓岩手地本釜石支部は、大槌郵便局(特定局)にビラ貼りを行うこととし、昭和48年4月16日午後9時半頃、役員ほか8名が、分会長だった宿直員の許諾のもとに立ち入り、一千枚のビラ貼りを行った事案で、「管理権者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、該建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などからみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは」建造物侵入罪は成立するという判断枠組を示し、犯罪の成立を認めた。これは管理者側に有利な判例と評価されているので利用すべきだ。
要するに無許可集会、無許可組合活動を禁止、就業規則違反、違法行為目的の立ち入りを認めない管理意思を規則制定等により明確に示し周知すれば犯罪は成立する。しかし当局は犯罪を成立させたくないので規則化しないし、管理意思も示さない。当局と組合の不透明な癒着というほかない。
6「通常随伴行為不罰論」に沿った東京都の労務管理は違法行為を助長
東京都の管理職は上記地公労法11条1項後段に違反する平成16年以前の勤務時間中の執務室内頭上報告のアジ演説や、平成20年代以降の「昼休み集会」のほか、支所拠点や本庁の決起集会をすべて容認している。「あおり」そのものといえる演説の違法性を認識していないのである。庁舎の目的外使用、秩序を乱す行為を取り締まる規則も意欲もない。
実際、平成12年千代田営業所在籍当時、頭上報告が職務専念を妨げていることで苦情を述べたところ、局幹部である中央支所長は、勤務時間内頭上報告は聴きたい人がいるから認めると言い、職務専念義務よりも組合活動を尊重する方針だった。
副支所長に、組合ビラが目に付いて仕事に集中できないと苦情をいると心を入れ替えろと「郷に入れば郷に従え」と言われ、頭上報告は当然容認なのである。「ストライキで戦うぞ」というビラがあって目につくところにあって、違法法行為慫慂が蔓延した職場環境になじみなさいという。
違法行為蔓延状態になじむことこそ東京都職員の責務という反コンプライアンス的職場であった。
局幹部が違法行為全面是認だったのである。知事部局から水道局に異動してくる管理職も体質は同じである。平成16年東岡職員部長の通知も、都議会議員が問題視した以上やむをえず最低限のことをやったというにすぎない。
実際、今日でも組織ぐるみで職員一般に対し同盟罷業は違法行為だとして警告は行ってないことは変わらない。当局が各事業所の組合員を、地方公務員法32条の適条による不利益賦課はさせないという組合幹部の方針に従っていると考えているが、最高裁が左傾化した時期の昭和44年4月2日の二判決の「二重の絞り」や争議行為「通常随伴行為不可罰論」(判例変更されている)の立場に立っているともいえる。
「あおり」の意義を限定する考え方は可罰的違法性論を適用し、後に判例変更された〇都教組勤評事件・最大判昭44.4.2刑集23-5-305や●全司法仙台事件 最大判昭44.4.2刑集23-5-685にみられる争議行為の「通常随伴行為不可罰論」が典型といえる。
昭和44年の両判決は「争議行為そのものが、職員団体本来の目的を逸脱してなされるとか、暴力その他にこれに類する不当な圧力を伴うとか、社会通念に反して不当に長期に及ぶなど国民生活に重大な支障を及ぼす」場合を除いて処罰対象としない。さらに、あおり行為等自体についても、「争議行為に通常随伴して行なわれる行為のごときは、処罰の対象とされるべきものではない。」と言い、争議行為に非常に好意的な判例であるため、官公労がそれまで勤務時間内職場大会と称していたものが公然とストライキと称するようになったのである。
これは〇全逓東京中郵事件・最大判昭41.10.26刑集20-8-901は労働基本権の尊重=争議権をコンセプトとしててることから「刑罰最小限度論」を述べている。この見解を発展させたもので、地方公務員法や国家公務員法が一切の争議行為を禁止し、その遂行のあおり等の行為をすべて処罰する趣旨だとすれば、違憲の疑いを免れないという趣旨に沿ったもので、労働基本権尊重と調和する解釈するときは、あおり行為等の対象となる争議行為について強度の違法性が必要であり、かつ、あおり行為等についても、争議行為に通常随伴する行為を除く、違法性の強いものであることを要すると解すべきであるとした。
最高裁は昭和48年石田和外コート末期に、中郵判決反対派が多数を占めるにいたり、「通常随伴行為不罰論」は、以下の2判例で判例変更されている。非現業国家公務員に関して●全農林警職法事件・最大判昭48.4.25刑集27-4-547は「あおり行為等につき、争議行為の企画、共謀、説得、慫慂、指令等を争議行為にいわゆる通常随伴するものとして、国公法上不処罰とされる争議行為自体と同一視し、かかるあおり等の行為自体の違法性の強弱または社会的許容性の有無を論ずることは、いずれも、とうてい是認することができない。‥‥このように不正確な限定解釈は、かえって犯罪構成要件の保障機能を失わせることになり、その明確性を要請する憲法31条に違反する疑いすら存する」と批判し、非現業地方公務員に関して●岩教組学力調査事件・最大判昭51.5.21刑集30-5-1178はより踏み込んで、「原判決は、労働組合が行う争議行為は、組合幹部による闘争方針の企画、立案に始まり‥‥上部機関から下部機関ないしは各組合員に対する指令、指示の発出、伝達となり、その間組合機関や組合員相互間のさまざまな行為が集積した結果として遂行されるのが通常であり、争議遂行過程におけるこれらの一連の行為は、集団的行為としての争議行為に不可欠か又は通常随伴する行為であるところ、これらの行為は多くは争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、又はあおる行為等に該当することとなるから、これらの行為者を罰することは‥‥‥争議行為を全面的かつ一律に禁止することとなって不当であると論じているが‥‥争議行為の遂行の共謀、そそのかし、あおり等の行為は‥‥具体的、現実的な争議行為に直接結びつき、このような争議行為の具体的危険性を生ぜしめるそれを指すのであって、このような共謀、そそのかし、あおり等の行為こそが一般的に法の禁止する争議行為の遂行を現実化させる直接の働きをするものなのであるから、これを刑罰の制裁をもつて阻止することには‥‥不当はないのである。原判決は‥組合大会の決議等に従って指令を発するような行為は、組合規約上の義務の遂行としてされるものにすぎず、争議行為に不可欠か又は通常随伴するものとして一般組合員の争議参加行為とその可罰的評価を異にすべきものではないとも論じているが、組合の内部規約上の義務の履行としてされているかどうかは、当然にはそそのかし、あおり等の行為者の刑事責任の有無に影響すべきものではなく、右の議論は、ひっきよう、労働組合という組織体における通常の意思決定手続に基づいて決定、遂行される違法な争議行為については、実際上、当該組合の何人に対しても個人的な責任を問うことができないということに帰着するのであって、とうてい容認することのできないところといわなければならない。したがって、地公法61条4号(現62条の2)の規定の解釈につき、争議行為に違法性の強いものと弱いものとを区別して、前者のみが‥‥同号にいう争議行為にあたるものとし、更にまた、右争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、又はあおる等の行為についても、いわゆる争議行為に通常随伴する行為は単なる争議参加行為と同じく可罰性を有しないものとして右規定の適用外に置かれるべきであると解しなければならない理由はなく‥いわゆる都教組事件(最大判昭44.4.2刑集23-5-305)は、上記判示と抵触する限度において、変更すべきものである」。
この事件で「そそのかし」「あおり」と認定している行為は、「校長も組合員の一人であるから、組合の方針に従ってテストを実施しないことに協力してくれ。テスト責任者を命ぜられてもこれを返上するようにしてくれ。」等と説得。(そそのかし)40名の小、中学校長に対し、「校長も組合員だから、組織の決定に従ってテスト責任者を返上し、テスト拒否にふみ切って貰いたい。」等と力説強調(あおり)。50名の小、中学校長に対し、「今度の学力テスト阻止闘争は指令六号によってやって貰いたい。テスト責任者を返上しテスト補助員を任命するな。」等と力説強調(あおり)。
この後も最高裁は「あおり」の構成要件該当性について、組合側の限定的解釈の主張を否定している。
- 日教組スト事件・最一小平成元.12.18刑集43-13-88は、日教組の昭和49年春闘4月11日一日ストにつき、地方公務員法61条4号(現62条の2)のあおりの罪により、当時の日教組委員長を懲役六月、また都教組委員長を懲役三月、いずれも執行猶予一年に処した原判決を支持した。
都教組委員長が地方公務員法61条4号の「あおり」と認定された行為は、関係役員らと共謀の上、3月29日ころから4月8日ころまでの間、3月29日に日教組本部名義で発出された指令の趣旨を傘下の小・中学校教職員多数に対し伝達し、4月3日に開催された第一回都教組支部長・書記長会議において、「74春闘一日.半日スト行動規制」及び「‥ストを成功させるための取組みの基本」と題する都教組執行委員会名義の文書を配布して11日の同盟罷業に際し組合員のとるべき行動を指示し、3日ころから10日ころまでの間、右指示の趣旨を傘下の小・中学校教職員多数に対し伝達したということである。
組合側の上告趣意は、あおりはもっぱら感情に訴える慫慂行為を指し、感情に訴える要素のないものはこれに当たらない、「あおり」はそれ自体において、真に右争議の原動力となるものであることを要する等、あおりを限定的に解釈すべきという構成要件該当性を争ったが、最高裁はこの上告趣意を退けた。
なお、本件下級審判例は、「二重の絞り」に代えて「あおり」等の意義を限定する試みを行っており、「原動力論」、「統括・指導者責任論」「具体的危険論」であるが最高裁はこれらについて回答せず、従来の大法廷判例を引用するのみであるから(畑尻剛判批『法学教室』117)、限定的解釈をとる必要はない。
- 埼教組事件・最三小判平2.4.17刑集44-3-1は、埼教組執行委員長の指令及び指示の趣旨の伝達を「あおり」と認定し、あおりの罪が確定した。
本件も下級審で「あおり」を「高度の危険性」「組織的統制力を背景とした指令」に限定する試みがあるが(横坂健治判批『法学教室』119)最高裁は無視して、従来の大法廷判例を引用するのみである。
最高裁が「あおり」の限定解釈を退けている以上、端的に行動指令の発出伝達、スト実施体制確立のための説得慫慂活動、集会などの演説行為、示威行為は、ことごとく「そそのかし」「あおり」である。そして岩教組学力テスト事件が説示するとおり、本部指令には、内部規約により支部分会の執行役員は従う義務があるとしても、内部規約の義務履行であることが、「あおり」「そそのかし」の違法性の評価に影響を与えるものではない。
つまり水道局で毎年恒例となっている中執によるオルグ演説、役員の執拗なスト権一票投票の呼びかけ、勤務時間内職場離脱決起集会動員指令、集会それ自体。示威行為、昼休み集会や頭上報告による、ストライキ配置、戦術の説明、経過報告、指令伝達、職場離脱集会の呼びかけ、超勤拒否闘争の呼びかけ、ストライキ時のピケッティング、スト集会での演説すべてが地公労法11条1項後段違反行為である。
東京都ではやらないが、地方公共団体で「あおり」「そそのかし」を理由にした処分例としては一般職の場合だが、北九州市病院局事件・福岡地判昭55・5・7判時980「原告Wは現地闘争本部闘争委員会の闘争委員であり、その立場から(昭和43年)12月一四日のスト方針の決定に関与したこと、同月12日午前11時ころおよび翌13日午後4時40分ころ市役所本庁衛生局総務課室内で、総務課職員に対していずれも約10分間、病院、水道事業の再建計画に反対しストに参加するよう演説して呼びかけをしたこと、‥‥同月14日のストの際には始業時間である午前9時から職場を離脱してその職務を放棄したことが認められ‥‥右行為は、同盟罷業を企て、その遂行を共謀し、そそのかし、あおり、かつ同盟罷業を行ったものというべきであり、地公法37条1項前段、後段に違反する」。ストライキ参加の呼び掛けは「そそのかし」「あおり」で懲戒事由になる。
地方公営企業で「そそのかし」「あおり」が懲戒事由となった例としては、北九州市交通局(昭和44年11月13日事件・昭53・4・27判タ366だけを引用する。
「被控訴人Nは午前4時頃バス出入口でたき火を準備し、労組の旗を立て、N委員長は一番バスの出庫時間の午前4時30分前に市職労ニユースカーを右出入口を閉鎖する形で駐車させ、組合員らにその位置に集るようよびかけ、もつて右出入口を閉鎖し、被控訴人Nは右出入口で集った組合員らの音頭をとつて労働歌を斉唱させ、集会を司会し開会宣言を行った。その後、N委員長のあいさつ等の間、被控訴人N、同Nは阻止されたバスの前面に立ち、被控訴人Kは集会のためマイクのアンプ操作をし、かくして、右被控訴人らは午前6時まで当局側の退去要請を無視して定期バスの出庫を阻止し、争議行為を指導した。‥‥本件争議行為は威力をもつて業務の遂行を妨害する違法不当なものであつて、このような違法な争議行為をすることを組合内部において決定したとしても、法的拘束力をもつことはなく、‥‥組合役員として従う義務はないものであり、‥‥かかる争議行為をあおり、そそのかしたことを理由に懲戒処分をされたとしても、組合の自主的意思を侵害‥‥を破壊することにはならない。‥‥組合の書記長あるいは執行委員であるといっても‥‥単に組合内部の業務の分掌にすぎず、‥‥責任を云云されるべきいわれはない旨主張するが、本件は‥‥北九州市交通局の業務を威力をもつて妨害した違法な争議行為であり、これを企画、指導した被控訴人らが、組合内部の業務執行を分掌したにすぎないとして責任を免れる理はない‥‥」。
国家公務員の争議行為につき「そそのかし」「あおり」を理由として懲戒処分を適法とした判例は多数あり通例である。
都の管理職が取り締まらないのは、判例変更された都教組勤評事件・最大判昭44.4.2刑集23-5-305や全司法仙台支部事件・最大判昭44.4.2刑集23-5-685の争議行為の「通常随伴行為不処罰論」に依拠する確信的左翼体質か、組合の言いなりになるのが管理職の処世術であるためかいずれかであるが、違法行為を放置している実態は、保護法益の住民全体の利益に背馳しているので、厳正な対処に改革することを提言する。
7 休憩時間の集会について誤った法解釈をしている東京都の管理職
平成16年3月17日の公営企業委員会で、後藤都議が頭上報告は職務専念義務違反ではないかと指摘したことから、東岡職員部長の通知により、頭上報告については警告し、賃金カット(月間累積でせ0分以上の職務離脱)とする方針、消極的ながらも示した。
昼休みや時間外なら問題ないとの方針になっている。そもそも頭上報告の演説内容に、スト批准投票の呼び掛け、指令や闘争課題の説明、大衆行動の呼び掛け、アジ演説もあり「唆し」「あおり」に当たる違法行為であるケースが多く、囚われの聴衆の状況での演説のため、職務専念を妨げる秩序をみだす行為であることを捨象していて、時間外なら組合活動は許されるものとなっている。
それゆえ現場の管理職も闘争指令下の「昼休み集会」を是認する構図になっている。
平成21年水道局中野営業所長[のちに職員監察指導課長、労務課長に栄転、現在は退職]昼休みの組合活動は労働基準法第34条第3項により規制できないと断言した。令和元年新宿営業所長も闘争指令下の二度にわたる給水課分室執務室での集会容認を断言した。
休憩時間の自由利用という労基法の規定は、施設管理権を否定するものではない。都との管理職は、以下の最高裁を含む多数の判例を無視し、庁舎の目的外使用を安易に容認しているが、それは組合側の受認義務説に立っているためで、法の解釈を誤っているのである。
- 米空軍立川基地出勤停止事件・東京高判昭40.4.27労民集16-2-317は、全駐労組合員10名が、米軍の許可なく休憩時間中に基地内の食堂、休憩室等で職場報告会等の組合活動を行ったことを理由とする出勤停止処分を適法とした。使用者は、労働基準法第34条第3項の規定により、労働者に対して休憩時間を自由に利用させる義務を負うが、使用者がその事業施設に対する管理権を有する以上、右権利の行使として施設内における労働者の休憩時間中の行動を規制しても、それが労働による疲労の回復と労働の負担軽減を計ろうとする休憩制度本来の目的を害せず、かつ右管理権の濫用とならないかぎり、違法ということはできないと判示。
- 日本ナショナル金銭登録機懲戒解雇事件・東京地判昭42.10.25労民18-5-1051も同趣旨の判断を示している。
理論的説示のある最高裁判例は2つあり、●米空軍立川基地事件・最三小判昭49.11.29訟務月報21-2-421頁は 「一般に労働者は、休憩時間中といえども、その勤務する事業所又は事務所内における行動については、使用者の有する右事業所等の一般的な管理権に基づく適法な規制に服さなければならない‥‥‥管理権の合理的な行使として是認されうる範囲内における規制であるかぎりは、これにより休憩時間中における労働者の行動の自由が一部制約せられることがあっても、有効な規制として拘束力を有し、労働者がこれに違反した場合には、規律違反として労働関係上の不利益制裁を課せられてもやむをえない」と判示した。
続いて●目黒電報電話局事件・最三小判昭52.12.13民集31-7-974が「休憩時間の自由利用といってもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない‥‥局所内において演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を行うことは、休憩時間中であっても、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあって、その内容いかんによっては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがあるのであるから、これを局所管理者の許可にかからせることは、前記のような観点に照らし、合理的な制約ということができる。」としており、本件は政治活動の事案だが、その判旨は組合活動判例でも引用されており、指導的判例というべきである。
休憩時間の組合活動につき、企業秩序をみだすおそれのある行動を規制したとしても、労働基準法第34条第3項違反とならないことは明白なのである。
くどいようだが、同趣旨の下級審判例として、●国労兵庫支部鷹取分会事件・神戸地決昭63.3.22労判517のほか、●大日本エリオ事件・大阪地判平元.4.13労判538は「本件署名活動はその趣旨説明、説得を伴っていたことが認められる。そして、休憩時間中においては他の労働者が休憩時間を自由に利用する権利を有していることが尊重されなければならないから、これを妨げる行為を当然にはなしえないと解すべき」として譴責処分を是認している。
その他休憩時間.就業時間外等の組合集会等で正当な行為とされなかった事例
- 三菱重工事件・東京地判昭58.4.28労民集34-3-279(昼休み集会は協約違反)
- 全逓新宿郵便局事件・最三小判昭58.12.20判時1102は、無許可の休憩室あるいは予備室を利用した職場集会に対する郵便局次長らによる解散命令及び監視行為は不当労働行為に当たらないとする原審の判断を支持したものだが、理論的詳細は東京高判市昭55.4.30労民集31-2-544にあり、解散命令が行われた集会というのは以下の2件である。
集配課休憩室-休憩時間中の全逓組合員約70~80名が昭和40年5月10日午後0時35分ごろから
年賀区分室-6月7日5時15分ごろから5時45分ごろまで。6月11日午後0時20分~0時55分ごろまで
いずれも、休憩時間か就業時間外の時間帯だが、年賀区分室の集会について職制は勤務時間中の者がいるかを監視しており、勤務時間のシフトで勤務時間中の者もいる時間帯といえる。
- 池上通信機事件・最三小判昭63.7.19判時1293(無許可施設利用集会の強行)
- 日本チバガイギー事件・最小一判平元.11.19労判533(工場は勤務終了後だか事務棟は時間内の施設利用拒否)
- 国鉄清算事業団(東京北等鉄道管理局)事件・東京高判平4.2.9労判617号29頁(無許可非番者集会)
- オリエンタルモーター事件・最二小判平7.9.8判時1546(無許可従業員食堂利用)
このように職務専念義務違反にならない休憩時間の勤務終了後の集会の利用の拒否、中止・解散命令が不当労働行為に当たらないという判例は数多あるのに、都の管理職が労働基準法34条第3項により、違法行為を伴う組合集会でも拒否できないというような判断をとっているのは組合側の勝手な出張に従っているためと言うほかない。
(三) 三六協定破棄闘争の対応は法の解釈に疑問が多く見直す必要がある
各論(Ⅵ)三(七)109頁を結論とする。
地方公営企業は労働基準法が全面適用されるため、36条により法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働や、休日労働を従業員に命じる場合、過半数組合と協定を結んでいる。
水道局と過半数組合である全水道東水労の時間外に関する協定(三六協定)では1年おきに更新されるが、第10条で「この協約は、あらかじめ乙が指定する日については、保安のために必要な要員に限定して適用する」という組合が一方的に破棄できる条項があり、令和6年度は、11月15日、12月19.20.21日、1月23日、3月11.12日を指定して超過勤務拒否闘争を実施した。近年では年間10日を超えることはまずないが、毎年恒例であるほか、業務手当闘争のあった平成16年には9日間連続の破棄闘争など長期の超勤拒否闘争を行った。
ストライキ時と同様、水の供給、突発事故対応に支障がないようにするため保安要員は適用除外といっても、保安要員を置くことを自体がすでに正常な業務運営ではなく、当局は事実上労働協約で地公労法11条1項違反を容認している。
第10条の設けられた経緯は不明だが、現場締結させると未締結で放置されかえって混乱し、組合中央で制御している今の在り方の方が管理しやすいということだろうが、問題はある。
三六協定未締結による超勤拒否は昭和20年代から国労や全逓が得意としていた遵法闘争であるが、実質職制麻痺闘争であることは同じ。
この闘争の最大の目的は、業務を遅滞させることでも、職制に業務を押し付ける嫌がらせでもなく、職制の権限を麻痺させて、ストライキ決行に向けて職務命令をさせない口実にして争議行為を有利に進めていくことにある。スト前日から当日の職制のスト対応を麻痺して職務命令させないためである。組合役員は繰り返ししつこく職制や職員すべてに対し、業務命令権が消滅したとして、超過勤務をしないよう号令をかけている。
局はこの闘争を全面的に適法とし争議行為に当たらないとの見解をとっているが疑問である。組合側のいいなりとなり、職務命令しないこと組合役員と協力して残業させないよう職員を管理することがコンプライアンスとなっている。
また、経常業務で時間外にやる業務を、組合は管理職におしつけ、組合役員の命令で管理職が仕事をやらされている実態もある。これは国労が助役に仕事を押し付けるやり方と同じであり、現場の組合役員を増長させている。
主要な論点は2つある。第一に当局が争議行為ではなく適法としている疑問だが長文になるため各論(Ⅵ)三95 頁で取り上げる、第二に当局が、当局は三六協定未締結の状況では、勤務時間外の管理職の労務指揮権は消滅するという考えを受け入れ、当局は具体的に超勤命令禁止を管理職に指示しているが、判例は、労基法上違法でも管理者の労務指揮権は否定されないものとしているから、対応の見直しが必要である。この論点について概要を述べる。
労働基準法違反の時間外労働であっても職務の執行が違法となるものではなく、刑法234条によって保護される業務に該当することにつき最高裁判例がある。●春闘仙台駅(仙台鉄道管理局)事件最二小判昭48.5.25刑集27-5-1115は昭和39年4月15日、三六協定未締結で春闘対策本部に召集された労務課の非組合員が労働基準法32条に反し1日8時間以上就労の時間帯に列車車体鋼板のビラ剥がし作業をしていたしころ、春闘支援で動員された組合員らに半円状に取り囲まれ激しい抗議を受けたが、ビラ剥がしを続行したため、全電通組合員が、手拳で顔面を強打し全治六日の傷害を負わせた事件につき、上告審は、公務執行妨害罪を無罪とした原判決を破棄自判した。
「労働基準法三二条一項は、就労時間の点で労働者を保護することを目的とし、また、もっぱら使用者対労働者間の労働関係について使用者を規制の対象とする強行規定であるが‥‥労働者とその職務執行の相手方その他の第三者との間の法律関係にただちに影響を及ぼすような性質のものではない。‥‥本件職務命令に右強行規定の違反があつたとしても‥‥就労を拘束的に義務付ける部分の効力に影響を及ぼし得るにとどまり、職務執行の権限を付与する性質の部分についての効力にまで消長をきたすべき理由はない‥‥労働基準法の適用を受ける者に対する職務命令が、同法所定の労働時間の制限を超えて就労することをもその内容としており、かつ、その者の就労が右制限を超えたからといって、そのために職務の執行が具体的権限を欠いて違法となるものではなく、これに対して暴行脅迫を加えたときは公務執行妨害罪の成立を妨げない‥‥」との説示である。
また●動労糸崎駅事件・広島高判昭和48.8.30判タ300(上告審.最一小決昭50.4.1刑事裁判資料230棄却)は、昭和38年12月13日全国7拠点の動労の19時より2時間職場集会決行に際し、当局は三六協定未締結であってもスト参加者の代替要員として指導機関士を糸崎に召集、代替乗務を命令された機関士の糸崎発呉行列車乗務を妨害するため、動労岡山地本津山支部執行委員長が運転室を占拠し、引率した組合員、他の支援組合員百数十名にスクラムを組むマスピケを指揮して列車運行を妨害した事案、●名古屋中郵第二事件・最二小判昭53.3.3民集32-2-97は、昭和34年12月3日名古屋中央郵便局と全逓支部は三六協定未締結で、年末首繁忙期の取決めもなされていない状況で、局長は名古屋郵政局と協議のうえ小包臨時便の滞貨の解袋作業につき全逓組合員とアルバイト学生に業務命令した。被告人、全逓中央本部執行委員、愛知地区本部執行委員長、名古屋中央郵便局支部長は、組合員は臨時便を取り扱う義務がないとして、管理者側の臨時便郵袋搬出作業に対し、組合員20~30名がスクラムを組んで立ち塞がって業務を妨害した事案があるが、双方とも一審は、組合側の主張を認め無罪だったが、糸崎駅事件二審は久留米駅事件方式、第二名古屋中郵事件上告審は、名古屋中郵事件方式の判断枠組みである「法秩序の全体的見地から」業務妨害罪の成立を認めていることから、三六協定未締結でも時間外の業務命令は有効であり、東水労組合役員の主張のように三六未締結では、時間外の職制の労務指揮権が消滅し、組合が職場を支配できるという法解釈は疑問である。
国鉄は三六協定未締結でもストライキ時は業務命令していたし、郵政も法内超勤は違法ではないとの見解で、名古屋中郵第二事件のように、局長が郵政局と協議し警察とも連絡をとったうえで、業務命令することがある。したがって違法であっても必要な業務命令は行うなどの対抗策を講じるべきである。
なお労基法33条により災害時は未締結でも業務命令できるが、それは周知されていない。能登地震被災地派遣には時間外労働協定の労働時間制限を超えて業務命令できることは、国会でも厚労省が答弁していることであるが、能登地震派遣も時間外協定が適用される前提で超過勤務について派遣職員に助言している組合役員がいた。
1400万都民と首都中枢機能のライフラインを担う企業でありながら、職員が組合の思想で洗脳され、いつでも三六協定を破棄して管理職が時間外の労務指揮権を組合に奪われて当然という職場風土は改革が必要で、各論三96頁以下で掘り下げて検討したうえ、対抗案(七)結論109頁を提案する。
(四) 組合役員のスト待機、セキュリティ破りの容認、保険の勧誘の要認
令和2年に緩かった水道局庁舎管理規程が知事部局と横並びで改訂され詳細な規定となったのは、組合対策かオリパラを控えて警備のためか不明だが、都は本庁も含め、庁舎管理は非常に緩かった。平成17年の業務手当闘争期に、たまたま交換便搬送業務の代務で本庁に出張したとき、NSビルとの間の半地下の広場の恒例の職場離脱勤務時間内組合決起集会と遭遇し、鉢巻きをし、組合旗は持った組合員が、庁舎内になだれこんで、練り歩き、示威行進をしているのを目撃しているが、監視も退去命令もいっさいない異常な緩さであった。その後本庁はテロ対策でセキュリティゲートが設置され、本庁の警備は厳重になっているし、組合決起集会も半地下広場からふれあいモールに移されている。
しかし出先の事業所は依然として庁舎管理は緩い。
現在勤務している職場では庁内管理規程第5条の禁止事項に「八 寄附金の募集、物品の販売、保険の勧誘その他これらに類する行為をすること。」があるのに、保険の勧誘・営業活動を昼休み、廊下やエントランスで許可しており、複数の保険会社の勧誘員が廊下に立っており声をかけている。これは私が中野営業所に勤務していた十年前以上から苦情を言っているが、管理者は庁舎の目的外使用許可として不適切という認識は全くない。
ストライキが配置される前日、当局の最終回答に対し、ストを決行するか、中止するかの判断を中央委員会で行うが、ストの前日からスト当日は必ず、三六協定を破棄するのは、出勤時限前の業務命令をさせない口実にするためであるが。深夜より翌日未明にかけて、組合役員が「スト待機」と称し、セキュリティを破ってスト準備のため事務室内の出入りや仮眠を認めている。ストが決行される場合、ビラ貼りや組合旗、横断幕などスト集会の準備をするためでもある。紙ではあるがICカードリーダを封鎖するという工作もなされる。当局は庁舎から非組合員は締め出そうとする一方、組合役員にはスト準備という違法行為目的の建造物侵入を既得権として容認している実態がある。
組合にセキュリティ破りの特権を与えるのは疑問で、先に述べた通り建造物侵入罪を成立させるようにすべきである。
当該事業所勤務でない職員が、争議行為(地公労法違反行為)目的で事業場庁舎内構内に勝手に出入りするケースとして、本部中執、本部委員、支部で他の分会役員によるオルグ、ピケッティング等の活動、または闘争終了後の支援の御礼演説、支所別勤務時間内決起集会参加のため下水道局を含む事業所の職員の動員等があり、これらの業務上の所用で出張しているわけでなく、庁舎構内に立ち入っている職員は、退去命令すべきである。平成26年の入札情報を水道局OBが不正に入手した入札妨害事件の再発防止として、執務室に入場する部外者に対し入室受付簿を設け記入させているが、組合役員のオルグ活動での出入りはフリーパスとなっている。
最高裁判例で否定されたプロレイバー学説に依拠し、争議行為を違法であっても正当業務として扱っている異常な労務管理をやめ、国の省庁の行政実務に准じた対応に改めるべきである。
1 国の省庁はスト当日の就業命令を重視するが東京都は一切やらない
全水道東水労の直近の同盟罷業は令和元年12月20日の1時間ストライキである。新宿営業所で、スト集会は、営業所分会と給水課分会が合同して40名程度で始業時から9時30分近くまで実施され、営業内検針担当エリアに、組合旗を掲出、ビラを壁面に貼り、約40名が占拠し座り込む形でなされ、支部組合役員の○○、○○、○○と給水課一名が、司会、交渉経過報告、ストライキの意義について演説、決議文朗読、頑張ろう三唱などを行った。
新宿営業所長の○○はスト参加の組合員に対し、中止・解散・退去・就労命令はいっさい行っていない。
また役員の○○は、紙で塞いだICカードリーダ前に立ち、非組合員に出勤記録を入力しないようピケを張り、私を所内から出るよう指図して、違法行為を強度に慫慂したが、これらの地公労法11条1項違反行為、外形上威力業務妨害罪の犯罪構成要件該当行為(悪質な大恐慌時代米国のシットダウンストライキの態様に近く、刑事免責がないので当局が職場占拠を容認しなければ犯罪は成立する-指導判例である名古屋中郵事件最大判昭52.5.4の判断枠組み参照)に対して、いっさい中止.退去命令、就労命令等を行っていない。
私は○○所長にスト集会参加者に就労命令すべきと進言したがやらない。集会での演説者など現認検書を上申すべきだと進言したが、やらないと断言し、業務阻害態様の集会を是認した。
平成22年12月10日の1時間ストライキで、中野営業所では駐車場でスト集会(ウォークアウトなので新宿より悪質ではない)をやったが、○○所長は職場復帰命令をしていない。平成26年1月24日の1時間ストライキも、中野営業所は駐車場で集会、○○所長も職務命令なし。
管理職が職務命令をやらない理由は、職員部監察指導課長名での庶務担当課長あての文書の指示では、スト参加者の人数と、集会場所を報告することになっているが、国の省庁のように当日の就業命令を指示されておらず、指導的役割を果たした者、率先助勢者の現認、監視、写真撮影等、懲戒処分の前提となる現認検書の上申も指示されていないためである。
水道局は初めから取り締まる気はさらさらないため、スト対策本部など立ち上げることは全くない。
2通の文書が庶務担当課長宛てに形式的に通知されるだけである。水道局長名で庶務担当課長宛ての文書は建前上、地公法30条を引用して服務規律維持の確保を示達するもので、それを受けるかたちで「服務の示達」について、職員部監察指導課長が、庶務担当課長あての文書で具体的な指示をするが、警告していることが確認できるのは、水道局長名で全水道東水労執行委員長あての中止の申し入れだけであり、各事業所の支部分会役員には中止の申し入れを指示しているが、文言、形式(口頭か文書交付す)も決まっておらず、実際行われていることは確認できない。国の省庁では必ず行っている、職員一般に同盟罷業は違法行為なので必要な措置をとるなどの等の事前警告は行われない。実際はストライキに協力するのが通例である。
なお営業所ではスト当日は外部の管理職が一人派遣されるが、ストの取り締りや監視のためでなく、職員の代務として窓口・電話対応するためである。これも組合が業務は管理職対応とし、職員を使って業務をさせない指図にしたがっているためである。
東京都は公然と組合側の論理に従った実務なので職務命令はやらない主義になっている。
代表的なプロレイバー学説として籾井常喜「使用者による争議責任追及の限界」季刊労働法45号1962があるが、「争議中にあっては、労働者には、使用者の指揮.支配から公然と離脱する権利が保障されているのである。したがって、争議中、組合の統括のもとでおこなった組合員の行為にたいしては、使用者の労務指揮の権限が及ぶいわれはない」とする。
東京都の管理職はこの学説を信奉しているようだが、神戸税関事件最三小判昭52.12.20以降累次の判例で就業命令ができないと言う学説は明示的に否定されていることである。
国の行政実務では同盟罷業(ストライキ)決行当日の就業命令は必須であり徹底的に行っているので、東京都は対応が著しく異なる。例えば以下の判例である。
運輸省 全運輸近畿陸運支部事件・最二小判昭60.11.8(一審大阪地判昭54.8.30民集39ー7ー1408)
昭和44年11月13日に勤務時間に15~20分食い込む職場集会での、経過報告、決議の朗読、演説、がんばろう三唱の音頭とりなどを行なった点において国家公務員法98条2項後段所定の「そそのかし」、「あおり」行為に該当すると原判決の判断を支持し、組合支部・分会役員の戒告処分を適法としているが(戒告処分に処せられた者43名の内訳は、全運輸本部役員1名、支部三役8名、分会三役34名。本件では各分会の集会を指導したもの1名に限定して処分)その前提となる当日の解散命令.職場復帰命令は以下のとおり徹底的にやっている。
〇兵庫県陸運事務所
兵庫分会(本所)における職場集会は、兵庫県陸運事務所玄関前横庭において、午前8時20分頃から同42分頃まで47名の組合員が参加して行なわれた。右大会の進行は、開会宣言から始まり、分会長原告Kがあいさつ及び職場大会の意義について約7分間演説を行い、その後書記長らから経過報告、メッセージの紹介、闘争宣言の朗読がなされ、がんばろう三唱し、労働歌を合唱して終了した。その間O総務課長は、分会長原告Kに対し、午前8時25分ころ「この集会は無許可であるからすぐ解散せよ」との、又、同36分頃「時間内にくい込む大会は違法であるからすぐ解散しなさい。」との解散命令を口頭で伝え、さらに同40分頃、全参加者に対し、プラカードに解散・職場復帰命令を記載して伝達している。
厚生省 全日本国立医療労組事件・最三小判平14.11.26労判840(一審東京地判平11.4.15判時1724
平成3年11月13日、全国の国立病院等(現在は独立行政法人)の支部において、11年ぶりに組合員約2万5,000人が、勤務時間に29分以内食い込む方針で職場大会を開催したが 「西多賀病院(仙台市)の事務部長Sは大会参加者に対し、勤務時間前の同日午前8時18分及び19分に、構内の無許可使用を理由に解散命令を発し、勤務時間に入った午前8時30分、31分及び36分の3回にわたり、本件職場大会は時間内の職場大会で違法であるとの理由による解散命令及び就業命令を発したが、大会参加者らはこれを無視して本件職場大会を敢行した」とあり、国の省庁では就業命令は必須の義務である。
旧郵政省では事前に職員に就労意思を確認し就労意思を表明しない職員に業務命令を発出している(昭和48年4月27日(4時間スト)、昭和50年12.8.1(8時間スト)熊本貯金局事件.熊本地判昭63.7.18、労判523)、国鉄末期の昭和61年2月15日の千葉動労ストでは、津田沼機関区等が乗務員に対し「私は、昭和 年 月 時 分 私の意思で就労することといたします。ついては、組合のストライキ指令に従うことなく、駅(区、所)長の命令する業務に従事いたします。」との確認書を提出させている(国鉄清算事業団事件.千葉地判平5.3.15)。
警告に加えて事前に職員に職務命令書を交付している例として北九州市の昭和43年10月8日1時間スト(北九州市清掃事業局事件.最二小判昭63.12.9民集42-10-850)、北海道釧路支庁昭和41.10.21、昭43.10.8の事案(北海道釧路支庁事件.札幌高判昭56.2..29労民32-5-231)などがあります。
近年では、北教組の平成20年1月20日の1時間ストがあるが、道教委は30分以上職務離脱者全員一律戒告処分としたが、地公労法11条1項が適用される単純労務職員が戒告処分を不当として救済を申立たが、道労委の平成23年6月24日命令書(中労委データベース参照)に「1月29日、 G 養護学校の O 校長は、朝の職員打合せにおいて職員に対してストライキに参加しないよう指導し、所属長訓示を掲示の上、職務命令書を B を含む職員に手交した。」とある。本件は札幌高裁が救済命令取消、処分を適法とし、最高裁棄却。
このように、国の省庁だけでなく、まともな自治体なら職務命令はやっている。東京都はまともじゃない。
郵便局(全逓)や林野庁(全林野)のスト集会では庁舎構内でない会場が通例である。労働会館や公園その他の施設、社会党の議員宅前と神社の社務所などで、スト集会がなされることがあるが、その場合でも管理職は現地にいって職場復帰命令して、監視している。職務命令は当然である。
大蔵省 神戸税関事件・最三小判昭52.12.20(一審神戸地判昭44.9.24民集317-1164)
10月5日午前8時40分頃から本庁舎前で開かれた‥‥当局は、午前9時5分、(職場大会)中の約200名の職員に対して‥‥本庁舎総務課文書係事務室及び別館図書室のいずれも道路に面した窓から、「職場集会に参加中の職員各位に通知します。勤務時間内の職場集会は業務に支障を来たし、かつ、国家公務員法違反になりますから、直ちに職場において執務して下さい。昭和36年10月5日午前9時5分神戸税関長遠藤胖」と記載した懸垂幕を掲出すると同時に、右各窓ぎわに設置した携帯マイクを使用して、文書係事務室から総務係長が午前9時10分頃まで繰り返えし、また図書室から人事係長が数回に亘り、右懸垂幕の記載事項を放送した。
北九州市清掃事業局小倉西清掃事務所事件・最二小判昭63.12.9民集42-10-880(一審福岡地判昭51.7.22民集42-10-940)
地公労法附則5項によって地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される同法11条1項の争議行為禁止規定を合憲とし、昭和43年10月8日1時間ストで勤務時間内職場集会指導し、当局の清掃車借用について抗議行動を行ったことなどを理由として、Y市労支部長、Z支部執行委員に対する停職三月とする処分を適法とした先例である。
Yは右職場集会の主催者の地位にあって同事務所に所属する市労組合員にその参加を呼びかけ、司会をなした。Xは市労青年部が今後組合の先頭に立って活躍しなければならない旨演説しZは職務命令書を集約し一括して返却すること及び組合員に対して職場集会に参加するよう呼びかける。管理職に対する詰所への三回にわたる入室阻止行為(一審は認定せず)。副支所長のマイク放送抗議(Z以外は一審で認定せず)。清掃車を民間業者から借り上げたことへの抗議。Xが抗議の際所長の机上のガラスを叩いて破損した(一審は、元々ガラスはひびが入っていてセロテープが貼られていたと認定)
本件は事前警告のほか職務命令書を交付しており、スト当日就業命令も行っている。職務命令書の一喝返還のよびかけは処分理由になっている。
「10月8日午前8時15分前後にN副所長が事務所からマイク放送により職場集会をやめて職務に就くよう、三回にわたり繰り返し職務命令した。そこで原告Mは詰所二階の入口から事務所に一人で赴き所長に対し「組合が事務所に貸しているマイク放送の器材を使い職場集会を妨害するような放送をするならばマイクを引き揚げる」という趣旨の発言をしたところ所長は「あゝそう云えば組合から借りたものだから妄りに使えんじゃないか」といった。」とされ、組合のマイクを借用しているのは不手際といわざるをえないが、とにかく、マイクで就業命令はやっている。
なお、本件は、X市労本部執行委員兼青年部長の懲戒免職は一審で事実誤認があるうえ過重な処分として取消されているが、小倉支部長と支部執行委員を停職三月は適法としたものである(当日の争議行為につき原告以外は1名減給、90名が戒告)。
東京都の管理職は組合役員に平身低頭するが業務命令するなと言えば受け容れる恥知らずが多く、就業命令を一切やらない。就労命令がタブーという著しい左翼体質の職場である。組織ぐるみで業務命令をやらず違法行為に加担することこそ使命とされている。
正常な業務運営を維持することが管理者の任務とされていないのは異常なことである。
2 最大の悪弊は東京都がストライキに対抗して操業行為をしないこと(組合に従い労務指揮権を放棄する)
当局が業務命令をしない第一の理由は、ストライキに対抗して非組合員や脱落組合員に業務命令して操業の維持を図ることは許されないとする組合の指示に全面的に屈従しているためで、業務命令(職務命令)を一切行わず、全職員の同盟罷業参加によるストライキ完全防衛を組合と共謀して仕切ることこそ管理職の任務とされているためである。
プロレイバー学説に争議時における操業=業務の運営について、操業の自由に否定的な学説(片岡曻、近藤正三、浪花源治、外尾健一、本田淳亮)がある
争議行為は業務の正常な運営を阻害する行為という性格側面を持つから、もし操業の自由が平時におけると同様争議時にも法的保障を受けるとすれば、操業の妨害を通じて要求貫徹を図る争議権の構造を否定し、操業妨害の効果を減殺させる争議対抗行為を、使用者に争議権が保障されていないのに認めることになるという主張をしている。争議中、使用者は単に法的保護を受けない自由放任行為としての「操業の自由」を有するのみであるという。
東京都はこのトンデモな組合側の論理に従って、争議行為に対抗する業務命令を絶対にやらないのである。ここに東京都の左翼体質の極致をみることができる。
しかし最高裁は、私企業の操業の自由につき、山田鋼業事件・最大判昭25.11.15、朝日新聞西部支社事件最大判昭27.10.22といった初期の判例から一貫して認めていることである。
正当なストライキであってもそれに対抗して、使用者が非組合員、スト反対派の組合員、第二組合員、臨時社員等を使って、操業を維持することが正当なことは、羽幌炭礦鉄道事件・最大判33.5.28刑集12-8-1694(争議続行決議に反対して脱退した組合員が結成した第二組合に加わった労働者+非組合員による操業)、横浜駐留軍事件.最二小判昭33.6.20刑集12-10-2250(非組合員+争議に加わらなかった組合員による操業に対する就業の妨害につき威力業務妨害罪の成立を認める)等累次の判例により明らかなことである。
さらに山陽電気軌道事件・最二小決昭53.11.15はバス事業者(現サンデン交通)において、私鉄総連系組合のストに反対する第二組合員の就労によるストライキ対抗措置としての操業行為は、完全に法的保護の対象となり、組合側の計画していた争議行為に対抗するためにとられた措置を理由として業務性を失うことはない旨説示しているとおりである。
水道局ではストライキといっても過去私が知っている限り2時間ストが最大で、過去7回のストライキは1時間ストにすぎないとはいえ、組合が使用者側の操業権を否定しコントロールすることは法外的である。
そもそも、地公労法11条2項により作業場は閉鎖できないのだから、ロックアウトは違法。非組合員やスト反対の組合員は最低限就労させて操業を維持するのが筋であるし、ストに参加したくない職員の就労を拒むことはできないはず。
下記の水道局のプレス発表は、2)の意味が分かりにくいので後段の(Ⅵ)各論二で説明するが、大筋で正直に書かれている。警告しているのは組合だけで、職員一般に警告していないことを明らかにしているといえるまた事務事業の支障防止とは、いわゆる「管理職対応」を組合から命令されていることを意味する。非組合員もふくめ全員がストに参加する前提となっており、就業命令をやっていないことも深読みできる内容といえる。
マスピケで管理職を排除するストは全電通が行っていたが(長岡電報電話局事件.東京高判.昭46.4.19)18条解雇となる極めて悪質なものといえる。東水労はそこまでやらないが、ストライキの完全防衛の管理職の協力を得ている実態にある。
令和5年12月19日付【東京都水道局プレス発表】
12月20日(金)の労働組合ストライキについて
1 組合の行動態様
(略)
2 当局の措置
1)組合に対する警告→(組合執行委員長宛に違法行為・庁舎管理規程違反として警告しているのは事実。本部中央闘争委員が停職処分とする前提になるもの)
2)職員に対する服務規律確保の周知→(局長が各部長宛に服務規律確保の示達をしているのは事実だが、各事業所では行われている訓示放送は、「違法行為なので必要な措置」をとると絶対と言わない偽装の訓示で警告ではない)
3)管理職員による事務事業の支障の防止→(管理職対応とは非組合員も含め就業命令しないことを意味する)
「管理職対応」とは組合用語で、管理職が非組合員等に業務命令させないで、管理職に経常業務等の代務を命令するというものである。この言葉は、平成23年10月31日から4日間の昼休み当番拒否闘争でも分会長が頭上報告で、足立営業所監理団体移転の提案に抗議するため、昼休み当番を引き上げ「管理職対応」にしますと演説しているので、端的に争議行為を意味する。平成24年7月17日に東京都の尖閣啓発ポスター(3つの島と海の写真.キャッチコピーと下部に寄付金口座や問い合わせ先が記載されたもの)が都の施設で6,000枚貼りだすことが報道され、都営地下鉄などでは17日から貼りだされたが水道局では組合が反発し「東水労ニュース」7月30日付によれば。東水労は尖閣ポスターに非協力の方針が記載されており、組合はポスターに協力せず、掲示も管理職が行い、都民からの苦情対応は管理職が対応するよう確認を願いますと書かれていた。組合の頭上報告でも「管理職対応」としている。中野営業所8月初旬エントランスで所長と分会書記長がなにごとか立ち話をしているのを見ている。○○所長は当時震災後の電力危機で蛍光灯を間引きしており、トイレの前で非常灯しかなく暗くて何も見えないところに掲示した。
地公労法で争議行為を禁止する保護法益は、「住民全体の共同利益」と最高裁は判示しているが、東京都水道局は組織ぐるみで住民全体の保護法益を侵害し、操業維持をさせないという組合の不当な既得権を尊重している。「都民ファースト」では全くないのである。水道局長のコンプライアンス経営宣言とも矛盾するゆえ、就業命令を全職員に対して徹底するよう是正すべきである。
東京都水道局はストライキ参加率のきわめて高い職場といえる。それは、当局が職員一般に対して「警告」も「就業命令」もせず、懲戒処分のおそれがなく事実上正当業務のように扱っているためでもあるが、職務命令書の交付などストの取り締まりをきちんとやっている自治体では、参加率はさほど高くない。例えば北九州市職員組合事件.福岡地判.56.8.24労民32-3-513によれば、政治ストの昭和44年11月13日の市労、市職及び市職労1時間30分スト(実際は早く終了)の参加者 門司区880名中330名(38%)、小倉区1760名中500名(28%)、八幡区1710名中340名(20%)、戸畑区2180名中440名(20%)と記載されている。北九州市の判例が多いのは、昭和42年に元国鉄幹部の谷伍平市長が、違法争議行為に厳正に対処することを公約して当選したためだが、その成果は出ているとみてよい。
東京都水道局は左翼人士にとってはホワイト企業といえるが、とんでもプロレイバー学説がルールで最高裁判例無視、イリーガルであってもある実態は、コンプライアンス宣言している企業に相当しない。抜本的に刷新すべきである。
3 労務指揮権を組合に奪われた平成26年の中野営業所監理団体業務移転阻止闘争
業務命令をしない第二の理由は、組合が承認しない非経常業務は、業務命令しないという日常の慣行の悪影響である。
平成26年1月24日ストが打たれ、決裂した後、組合は中野営業所監理団体業務移転阻止闘争のオルグ活動に入り、出向に相当する退職派遣を希望させない。人事課による派遣の説明会には出席させないことを組合員に徹底させたうえ、当局を交渉にひきずりこむという戦略の闘争だが、2月5日には○○本部委員がオルグ演説し、当日の人事課の説明会の入場を阻止するピケを張った。一方で、○○分会書記長が、移転業務の一つである固定資産、備品リストの照合業務のため来所したサービス推進部業務課担当者を、課長補佐に闘争の協力を指図する形で追い返し、事実上、本庁と中野営業所の合同業務を妨害をしたこと。
課長補佐に対し○○は、移転業務に協力するとあなたの立場は悪くなりますよと脅しのようなことを言っていた。
さらに○○は所長の○○に対し移転関連業務の業務命令をしないよう強要したことがある。
移転関連業務が進捗しないから、4月移転は無理ということになり、組合の主張がとおって7月移転に延期したのである。
所長の○○に質問したところ、非経常業務は組合と事前協議することになっており、協議が不調なので業務命令はしないとの趣旨を言っていたが、言い訳としては苦しい。
事前協議の対象であるとしても、それは数か月前から再三やってきたことで、決裂後の対応と業務命令するしかないはず。
組合員である課長補佐の指示に従えとのことだったが、上級部署の指示に従うのがコンプライアンスであるから、組合に屈服してしまうのは問題がある。しかも組合は移転に協力させるためにはサービス推進部担当者に謝罪の文書と、実際に中野営業所にきて頭を下げるよう強要もしている。
本庁業務課では管理職が業務命令できると思っているのかもしれないが、それが通用するのは本庁部局内部のみと思われる。出先の各事業所では、普段から経常業務以外は事前協議で管理職は組合役員にお伺いする立場で、争議行為は労務指揮権・施設管理権凍結が通例なので、上級部署の指示は止まってしまうことがあるのである。
むろん所長も中野営業所が業務移転の対象となっていることは事前に何も知らされておらず、現場との打ち合わせもなく、ストライキ後も闘争は継続しているのに、組合の労務指揮権の干渉をさせないために、管理職を派遣して支援するとか、特別監察チームを派遣してもよいはず、それは何もない。本局は争議行為の取り締まりをしない方針だから現場の管理職も管理意思を示すことができないといえる。
以上、○○本部委員や○○分会書記長の行為は、正常な業務運営でなく地公労法11条1項違反行為であるが、職員部当局は全く問題視していない。1月24日のストは処分を終えており、争議行為は終わったものと認識しているのが大間違いである。本部中闘指令の同盟罷業と動員集会等というスケジュール闘争だけ争議行為と認識し、特定拠点の争議行為は放置が職員部当局である。
こうなってしまうのは、スケジュール化された争議行為でいっさい職務命令をやらない慣行がきいているのである。日頃から違法行為の抑止、職務命令という国の官庁ではあたりまえのことをやってないので、交渉決裂後の業務命令のような修羅場の状況でも組合のいいなりになってしまう。組合によって労務指揮権を凍結されられる状態は、正常な業務運営ではない。本部中闘以外懲戒処分にしない方針から、実際に争議行為を指導している本部委員や分会役員はなにをやっても責任は問われないという方針が、非常に大きな悪影響を及ぼしている。
本件はメインの主題から外れるため註記とする[ii]。
(二)違法争議行為の内部統制権は否定されているのに統制権を事実上認めている重大問題
東京都の管理職が就業命令等をやらない別の理由として、違法ストライキであっても団結統制権で、組合の決議で、組合員を争議行為参加に拘束できるという考え方を事実上受けいれているという問題がある。
全水道東水労スト権一票投票は、毎年11月初めに、11月半ばの都労連闘争と、12月の局内合理化闘争、2月末に3月の春闘につき行われて、いつも95%以上の高率で批准されるのが通例である。投票用紙の裏面は誓約書になっていて、ストライキが批准されたら、団結して本部指令に従って行動しますと言う趣旨の文言がある。
組合側の主張は、団結統制権により組合員をストライキ態勢から離脱しないよう拘束している。組合役員のスト指導は、指令にしたがって組織の義務として行っているもので、個別責任は問われないというものだが、当局は鵜呑みにして、事実上闘争期間組合の支配下にある各職員に業務命令はできないものとしている。
私企業のユニオンショップとは違って、争議行為は違法なので、組合員でも本部指令に服従する義務はない。東京都は非組合員ですら事実上指令に従わせ就労を認めようとしないから異常である。組合に違法行為を強制する強い権力を与えている点で誤っている。
違法争議行為の内部統制権は最高裁判例によって否定されている。〇国労広島地本組合費請求事件.最三小判昭50.11.28民集29-10-1634は組合の統制権について理論的に説示し「公労法に違反して行われる争議行為とこれに対する組合員の協力義務関係について考察する。同法違反の争議行為に対する直接の効力(争議行為の参加)については、これを組合員に強制することはできないと解すべきである。禁止違反の争議行為の実行に対して刑罰や解雇等の不利益な法的効果が結びつけられている場合に、その不利益を受忍すべきことを強いるのが不当であることはいうまでもなく、また、右のような不利益を受ける可能性がない場合でも、法律は公共の利益のために争議行為を禁止しているのであるから、組合員が一市民として法律の尊重遵守の立場をとることは是認されるべきであり、多数決によって違法行為の実行を強制されるいわれはない。‥‥」
これだけでなく争議行為にも刑事免責を認めた中郵判決が維持されていた時期に、争議行為に可罰的違法なしとしながら、三公社五現業に適用される公労法17条1項違反の争議行為については、組合員であれ、争議行為の勧誘、説得を受忍する義務はなく、違法争議行為参加を団結統制権により拘束されないとして、内部統制権を否定する説示のある昭和47年から下記7判例があり、そもそも統制権の及ばない非組合員も同じことである。
- 全逓横浜中郵前ピケ事件差戻後控訴審.東京高判昭47.10.20
(差戻後上告審最一小決昭49.7.4棄却)
全逓の2時間の同盟罷業それ自体は中郵判決に従って可罰的違法性なしとしながら、全逓の要請で神奈川地評が動員したスト支援者の約200名のマスピケは争議行為に付随する行為として別個の法的評価をとり、機動隊に暴力をふるった2名の公務執行妨害罪の成立を認め以下のとおり説示している。
「公共企業体等の職員および組合は公労法一七条一項により争議行為を禁止されているのであるから、組合自身も組合員もこれを行なつてはならない義務を負っているこというまでもない。それゆえ、組合としては組合員に対して同盟罷業への参加を強制することのできない筋合いのものであり、これを組合員の側からいえば、各組合員は、法に従うべきであるという建て前からも、また自らが解雇等の民事責任を負わないためにも、組合の指令にもかかわらず、同盟罷業に参加することなく就業する義務を負うとともに権利を有するものである。‥‥公共企業体等の組合がたとえ同盟罷業の決議をしても、その決議は違法であって民間企業の組合の場合のように組合員に対し法的拘束力をもつものではなく、組合員としてはその決議に従わずに就業しても、特段の事由のないかぎり組合の統制に対する違反ないしはいわゆる裏切りの問題は生じない‥‥同支部所属の各組合員が原判示当日出勤就業しようとしたことも正当な行為であって、組合側としてその入局を実力を用いてまで阻止することを正当ならしめる特段の事情があったものとは認められない。」
- 動労糸崎駅事件 .広島高判昭48.8.30
(上告審最一小決昭51.4.1棄却)後述
- 国労岡山操車場駅.糸崎駅事件.広島高判昭48.9.13
- 国労尼崎駅事件.大阪高判49.4.24判時734号40頁
(上告審-最一小判昭52.10.20 刑事裁判資料230号812頁 棄却)
- 動労鳥栖駅事件.福岡高判昭49.5.25判時770号113頁
(上告審-最三小決昭50.11.21判時801号101頁 棄却)後述
- 国労東和歌山・和歌山駅事件.大阪高判昭50.9.19
「国労が企てた本件ストライキが違法なものであることは明らかであり、組合がストライキの決議をしたとしても、組合員に対してストライキへの参加を求めることは組合の統制権を理由としても違法であることに変りはなく、組合員は組合の要請に従ってストライキに参加すべき義務はなく、就労の意思をもって出務している場合においては、その受忍義務のないことは一層明白であって、まして組合は、非組合員に対してストライキへの参加を強制すべき権能を有するものではない。‥‥これらの組合においては、争議行為が禁止されていることのために、違法性阻却が認められる範囲も、争議行為が禁ぜられていない民間企業の場合に比較して自ずから限定されたものとなることもやむを得ないものといわなければならないところ、本件におけるピケッティングが、前記のごとく非組合員あるいはもともとスト対象にもなっていなかつた者に対するもので、前述のような相手方の意思の自由を認めないような態度で相当の時間列車あるいは電車の通行を阻止し国民生活上重大な影響を及ぼしたものであることなど諸般の事情を考慮すると、それが労働争議に際して行なわれたものであるという事実を含めて検討しても、到底それが法秩序全体の見地から許容されるものということはできず、刑法上の違法阻却を認める余地はない。」
○ 国労広島地本組合費請求事件.最三小判昭50.11.28民集29-10-1634
- はマスピケ事犯であり刑事事件である。動労糸崎駅事件から国労東和歌山駅事件の5判例は可罰的違法性論を実質否認することになった久留米駅事件方式(国労久留米駅事件最大判昭48.4.25刑集27-3-418)の判断枠組により無罪を有罪としたものである。
いずれも、争議行為と、争議行為に付随する行為を区別して法的評価を行い、「刑罰最小限度論」の刑事免責を認めた全逓東京中郵事件.最大判昭41.10.26刑集20-8-901の判例が維持されている段階(判例変更は昭和52年)で勤務時間内職場大会実施という争議行為そのもの評価は先例のままであっても、これと分離して、マスピケは付随する行為の範疇で法的評価をおこなった点に特徴があり、実力ピケ等は免責されないことを明確にした判例ともいえる。
上記は公労法17条1項違反の争議行為に関する判例だが、同文の地公労法11条1項を別異に解釈する理由はないので先例とみなしてよいのである。
- 動労糸崎駅事件 広島高判昭48.8.30判タ300号363頁 (上告審最一小決昭51.4.1棄却)では、当局が、三六協定未締結の状況で、本件昭和38年12月13日19時全国7拠点の動労の2時間職場大会に備え、代替乗務をする機関士を前日に糸崎駅に召集、折り返し運転の19時20分発651D列車の乗務員が職場大会に参加したため、S指導機関士に代替乗務を業務命令、広島運転本部主任と十数名の鉄道公安職員に護衛されながら運転室に乗り込もうとしたところ,百数十名のピケ隊に押し返され、その後鉄道公安職員を百名に増員、警告に応じないため、ピケ隊と運転室内の被告人を排除し、定刻より40分遅れで発進したという事案で、久留米駅事件方式で業務妨害罪の成立(運転室を占拠しピケ隊を指揮した動労岡山地本津山支部執行委員長に懲役4月、執行猶予2年)を認めた判例だが、以下のとおり説示している。
「争議行為が少なくとも労働法上一般的に違法とされている国鉄においては、組合は組合員に対する統制権の行使を理由として、斯る違法な争議行為に参加することを強制することは許されず、組合員は右職場集会実施の組合本部指令に服従すべき義務はなく、従って、これに参加を促がす勧誘、説得を受忍すべき義務もない‥‥。」「国鉄当局の適法な業務命令を受けてこれに服従し、就労の意思を以て出務している者の場合においては叙上受忍義務のないことは一層明白であるから、同人に本件職場集会への参加を勧誘、説得するに当つては、その時期、場所、手段、影響等において尚更厳しい制約を受け、団結による示威の程度を超えた物理的な力を以て同人の就労を妨害したり、そのため国鉄の施設や車両を占拠する等して国鉄の正常な列車運行業務を妨害することは、その目的の是非に拘らず許されない」と説示している。
- 動労鳥栖事件福岡高判昭49.5.25判タ311号97頁、同日の動労全国7拠点鳥栖機関区2時限職場大会に際し、門司鉄道管理局は運輸部長を現地対策本部長として、管内26名の指導機関士を鳥栖駅に召集、当日鳥栖から乗務する機関士は旅館に軟禁されたため、S指導機関士(動労組合員だが、国鉄の業務命令に従う)に長崎発京都行急行「玄海」の代替乗務を業務命令した。
本部長の陣頭指揮で、鉄道公安職員に護衛させて機留線の機関車に乗り込ませ、進路前方軌条枕木付近でスクラムを組む動労組合員のマスピケにより発進が妨害されたが、警告に応じないため、鉄道公安職員と応援を要請した佐賀県警により引き抜いて排除し、定刻より50分遅れて(但し鳥栖到着の時点で30分遅れ)逆ピケを張って列車を発進させている。
「組合がたとえ同盟罷業を決議しても、それは公労法上違法であり、民間企業の組合の場合のように法的拘束力をもつものではなく、組合員としては組合の決議、指令にかかわらず同盟罷業に参加することなく就業する自由を有するのであって、これに参加を促がす勧誘、説得を受忍すべき義務はないのである」と説示し、久留米駅事件方式により威力業務妨害罪の成立(動労組合員数百名と共に急行「玄海」号前方軌条の枕木の付近に線路に沿ってスクラムを組んで立ちふさがり、同列車の発進を妨害を指揮した動労中央執行委員、動労西部地方評議会議長に懲役8月執行猶予2年)、を認めている。
このように国鉄はストに際し業務命令するし、現地対策本部を設置し、ストの影響を最小限にして列車運行を維持すべく努力をしている。違法行為に東京都のように拱手傍観することはないが、東京都は逆にスト防衛に最大限の協力を行う。スト対策本部も設置しないあまりにも無責任といえる。
国鉄職員はみなし公務員だが、公務員の職場では組合員であれ非組合員であれ、争議行為に参加する受忍義務はないことは郵政の判例もあるので確定していることで、ピケットラインの尊重が労働者の義務というニュアンスで管理職が就労妨害に加担するのは間違っている。
(三)組合と共謀し、非組合員の就労を阻止しストを防衛する慣例を是正すべし
東京都水道局は(一)に述べた理由で、同盟罷業に際し職員部監察指導課と全管理職は組織ぐるみで、組合の説得に応じた非組合員に対し、ピケットラインを通過せず、水道局処務規程55条「事故欠勤」にさせるのが慣例である。組合の説得に応じないケースでも強要しようとする管理職がいる。
組合は昔から、スト当日は組合員であれ非組合員であれ、出勤簿を押させない方針で、スト破りに敵意を示すが、当局の就業規則で服務の基本である出勤時限前にICカードリーダの操作による出勤入力をさせない方針は、職員の就労の権利と義務の重大な侵害である。
一般論として職員は権利侵害の違法行為であれ、審査権がない職員は、職務命令に従うべきものだが、私は上記判例の意義をふまえ組合と共謀する管理職からの説得で職務放棄し違法行為をする義務はないと考える。
なによりも非組合員の就労する権利の否定が悪質で容認できない。水道局長が建前上、服務規律維持の確保を示達していることから、服務の基本的義務であるICカードリーダ出勤入力(出勤簿に相当)を否定するとは解されないこと、命令に反し就労しても地公法29条1項1号、32条の適条による懲戒処分は、困難と考えるので、服従する理由はない。
法律を遵守する職員を叩き、違法行為犯罪を指導する組合役員には平身低頭でいいなりになること管理職の処世術となっているわけである。
現場の管理職が組合に同調し勝手にスト破りだとして敵意を示して出勤停止にする権限はなく、就業規則違反を命令することは権限を逸脱し、違法行為と犯罪行為に著しく加担しているこの方針を撤回することを強く求める。
なお、組合非加入の新人や、組合の違法行為の慫慂に応じない非組合員を管理職が就労阻止することについては、職員部は表向き指示していないが、昔から内々の慣例といえる。
私が平成21年に○○○○営業所長(後に監察指導課長、労務課長)は、ストが決行されたら就労する旨申し出たところ機嫌がわるくなり、分会長と協議のうえ、ストは全員参加の方針でスト破りを認めないので、全員参加してもらうと述べ、8時半より前に入庁は許さない。ICカードリーダの操作で出勤事故欠勤を申請するよう命じた。これは、本庁職員部とすりあわせたうえでの対応であるので、組織的に事故欠勤強要を認めているわけである。
令和元年12月20日のスト当時の新宿営業所は新人のほか非組合員の比較的多い職場であり、当時の○○所長は、前日に○○か○○といった支部分会役員から要請を受けて、私を除く、非組合員複数以上の事故欠勤を承認していると考えられる。○○はその後本局中枢に栄転し、現在本庁サービス推進部業務課長なので、本件の調査のため議員が召喚して、「事故欠勤」は組合の要請で承認したのか、それは職員部の指示のもと組織的方針なのかが、就労命令をしていないことは私が見ていることだが、なぜやらないのか、特に新宿営業所のストは執務室を占拠し、執務を物理的に不可能する業務阻害態様で悪質であり、組合の業務阻害権という主張を認めるのか。現認検書を上申していないことは私が直接聞いたことであり、違法行為を慫慂する地公法11条1項後段違反の「昼休み集会」については、私が中止命令を要請したが、問題なしとして容認。さらにスト当日の窓口の入口にスト決行との貼紙をそのままにして、窓口業務は管理職対応でやっているのに、来客の締め出しに加担したこともあり、それらを尋問すれば、争議行為に好意的な管理職の体質が明らかになります。
むろん令和6年12月20日にストが配置されているので、ストが決行されれば状況を現管理職から聴取すべきです。
「事故欠勤」とは「職員は、交通機関の事故等の不可抗力の原因により勤務できないときは、その旨を速やかに連絡し、出勤後直ちに別記第十二号様式の二による事故簿により届け出なければならない」としているもので、新型コロナウイルス陽性の場合なども対象としているが、通常、交通機関の遅延証明にもとづいて、遅参しても給与が支給される制度である。
○○○○は私に対し、勤務しなくても賃金は払うといっているのに「事故欠勤」に応じない私を非難した。
ストライキ参加の組合員は賃金カットしているが、勤務実態が事実上同盟罷業に参加しているのは組合の説得に応じた非組合員も同じことであり、賃金支給を請求するのは、詐欺行為に近い。
就労実態がなく、ノーワーク・ノーペイ原則に反し、給与を支出しているのは、不正会計支出といえる。
私は過去、包囲型ピケッティングには遭遇しているが、スクラムを組むマスピケに遭遇したことはなく出勤時限前に入庁できないケースはない。仮にマスピケで物理的に入庁できないは、ピケを張って就労妨害した組合員は、威力業務妨害罪に相当し、刑事告発せずとも懲戒処分に付すこととの見合いなら、「事故欠勤」があっても悪くないが、無条件で就労せず給与を受け取る制度は公正とはいえない。
「事故欠勤」にする目的が、非組合員がストに協力しても、賃金カットされも闘争資金から補償できないためであり、そのストライキの完全防衛、違法行為に加担していることからみて、違法性が強く推定されるので、この慣行を中止することを強く求める。
(四)最高裁が否定しているプロレイバー学説(組合の主張)に従って懲戒処分を本部中央闘争委員のごく少数に限定している在り方を是正すべき
2 全逓勝利の都城郵便局判決の組合側の主張がいまだにまかりとおっている不思議
(要旨)東京都水道局の同盟罷業の懲戒処分の方針は、懲戒免職、停職一年、三月、一月を取消し全逓が全面的に勝利した異色の判例である〇都城郵便局懲戒処分取消請求事件東京地判昭46.11.12労民22-6-1030における全逓の主張「争議行為は労働者の団結体である労働組合自体の行為であり、しかも争議行為は多数組合員の集団的、共同的な活動であることを本質とする行為であるから、違法な争議行為が行なわれた場合にも、その責任は団体である労働組合が負担すべきであって、争議行為を個々の参加者の行為に分解して、個別的労働関係の場において、個々の参加者の責任を追求することは許されない‥争議行為は労働者が企業秩序の拘束から集団的に離脱し、使用者の労務指揮権を排除することを目的とする行為であるから‥‥個々の労働者の行為に対し、懲戒をすることを許されない」に大筋で沿うような形である。全水道東水労も同様の見解と推定できるのである。
違法な争議行為でも責任を負うのは組合で、その理屈と大差ないところで水道局は本部中闘を停職にしているが、各事業所でストを指導、慫慂している大多数の組合役員と、ランクアンドファイルは懲戒処分にして責任を問うことをしない。断固として守られるというのは、大筋で組合側の主張に従っているといえる。
しかしこの見解は、●全逓東北地本懲戒免職事件・最三小判昭53.7.18民集32-5-1030において、
「労働者の争議行為は集団的行動であるが、その集団性のゆえに、参加者個人の行為としての面が当然に失われるものではない以上、違法な争議行為に参加して服務上の規律に違反した者が懲戒責任を免れえないことも、多言を要しない」と判示したことにより否定されている。
東京都はこの最高裁先例を全く無視している点で非常に偏った労務管理といえる。
水道局で同盟罷業が違法行為であるとして、中止の申し入れを行っていると確実に言えるのは、組合中央執行委員長あての局長名の文書だけである。この警告にもとづいて、違法争議行為の責任はすべて組合中央の機関にのみ帰せられるべきという組合側の主張に沿って本部中闘に限定し停職処分を行い、当局のメンツを保つのが通例となっているが、それ以外は、組合活動を理由に不利益賦課させないという組合の主張どおり何があっても、実質各事業所でストを指導している本部委員・統制委員・支部分会役員以下を懲戒処分しない方針は、不透明な当局との癒着があると考えている。
もっとも、平成22年12月10日以降、3回の同盟罷業については支部長を訓告としているが、訓告は、人事記録に載るだけで懲戒処分ではなく、痛くない。
職員部監察指導課は各事業所の組合役員にも中止の申し入れをするよう各所の庶務担当課長宛て指示はしてはいるが、文言が決められておらず、各事業所の事情に応じてなされるので、実際に見たことがない。
各事業所の管理職は所長要請行動等で組合の主張である争議目的の正当性を認め、職務命令や警告は後述する「平成16年東岡職員部長通知」を例外としていっさいやらないことになっており、管理職は事実上、組合役員から指示を受け、争議行為対応をする立場になっているからである。
国の省庁なら組合役員と全職員に、同盟罷業は違法行為なので必要な措置をとる旨の警告を行うのが通常だが、東京都では職員一般に違法行為との文言のある事前警告は絶対やらない。
違法行為と言ってしまうと、地方公務員法29条1項1号、32条の適条で懲戒処分に王手がかかってしまうのでやらない。組合が騒ぎ出し収拾がつかなくなると考えられているようである。
しかし他の官庁では警告はきちんとやっていることである。
東京都は、事実上組合側の主張である、争議行為が違法であっても、集団的組織的行動で、スト指令に従って、組合員として組織的義務は果たすべく、ストを指導したり参加する組合員個人の責任は問われないとする以下のような学説を大筋で認めている点で、著しく左翼体質である。
例えば、片岡曻「公務員の争議行為と不利益処分」季刊労働法73号14頁1969「たとい労働組合の争議行為が違法であるとしても、個々の組合員の行為が当該争議行為を組成し、その圏内にある行為と認められるかぎり、これを独立の行為として、使用者との関係における個別契約法的評価にさらし、使用者からの懲戒その他の民事上の責任の追及を許容することはできない」という学説を大筋で認めている。
プロレイバー学説は懲戒処分で幹部責任も問われないとするが、本部中央闘争委員会の機関責任を問うのは、そのバリエーションにすぎず、プロレイバー学説の趣旨は受け容れているものとみるべきである。スト実行行為者で、現地闘争委員会という名称はないが、実質その役割をはたす、組合役員の懲戒責任は問わない。それゆえ違法行為でも違法行為とは言わないのである。
代わりに「服務の示達」と称する、インチキ臭い訓示をマイク放送等で行うが、詳しくは(Ⅵ)各論二で述べるが、マイク放送等の文面は決められておらず、事業所の事情にもとづいて行う。地公法29条1項1号、32条を適条とする懲戒処分の前提とならないよう文面が配慮され、警告として意味をなさないことは、組合員もわかっており、マイク放送があっても嘲笑するだけである。「服務の示達」も不透明な癒着を推定できるいかがわしい慣例といえる。
全水道東水労は水道局内の令和元年の組合員総数は2,778名で組合本部費月例給与の1.7%をチェック.オフで徴収しているので、闘争資金は蓄積しているはず。懲戒処分は本部中闘の3~4名程度だけ。過去最大停職18日(平成26年のスト)、令和元年は最大停職13日の減収を補償するのは痛くありません
ストを指導しているのは組織の指示に従っているだけなので責任は問われないという組合側の論理に当局が従っているのはガバナンス.コンプライアンス上糾弾されるべきです。
既に述べたとおり北海道教委が、北教組の平成20年1月30日終業時刻1時間ストにつき、30分以上職場離脱の単純参加者に対し一律に戒告処分(12,551名)とした救済命令取消訴訟は適法とされたのです(北海道労委事件.最二小判決平28.6.17別冊中央労働時報1502中労委DB)。
昔から文部省は単純参加でも懲戒処分とすべきと指導していたが、処分の範囲量定は自治体により温度差があった。教職員については熊本や大分で全員懲戒処分の前例はあるが、北海道では初めてであった。
戒告は最も軽い懲戒処分だが、北海道の給与制度上、懲戒処分を受けていない者に比べて勤勉手当が約10パーセント減額されるほか、定期昇給において1号俸昇給が抑制される。申立人は平成20年6月期の勤勉手当を2万8300円減額給され,平成21年1月に、定期昇給が1号俸抑制されたことにより,同年1月及び2月の給与について554円の不利益を受けた。
北教組は被処分者の減収を負担したが、少なくとも9億4388万の支出を余儀なくされたという(札幌地判平7.11.13労判691中労委DB)。終業時1時間のストで自宅待機、ウォークアウトだけで、悪質な争議行為ではないが、組合にとってはそれなりに厳しく、抑止効果のある大量処分とはいえる。
しかし東京都水道局のストは積極的な業務妨害など悪質な態様なのにたった3~4名の停職の補償はたやすいことで、組合にとっては、実際に各事業所でストを指導している実行行為者、本部委員、支部分役員以下が大量に処分されない限り、抑止効果はないように思える。
令和元年の1時間ストで本部中闘の最大13日の停職はそれなりに重いと言う人がいるかもしれないが、すでに述べたとおり、国の省庁の処分例と比較しても決して重くない。
職場離脱は11年間に4回ある同盟罷業だけではない。毎年最低でも3~4回はある3割動員勤務時間離脱決起集会は変動はあるが午後3時半ころからなされることが多いので、本庁以外は1回につき組合員3割の職員が3時間以上の欠務となる。かつては動員職員を引率するなどさかんだったし、平成16年度スケジュール闘争の前に4か月に及ぶ業務手当闘争があり、年間6回以上の3割もしくは4割動員集会がなされた。当局も争議行為と認定しており、賃金カットとなる。たぶん、佐教組事件.最判昭46.3.23刑集2-5-2-110が3割.3割.4割休暇闘争を争議行為としているためだろう。
したがって、年間少なくとも2回は動員集会で職場離脱する組合員はざらにいるので、年輩の組合員なら通算して100時間以上職務離脱している人はざらにいる。
しかし、東京都の方針は、指令を受けて組織の義務として違法行為の慫慂、職務離脱をする組合員は懲戒処分の対象外なので、安心して違法行為を慫慂、あおり、そそのかしという地公労法後段の違法行為ができ、通算何百時間職務離脱しても処分されない体制なので、実質争議行為を正当業務として扱っているといえる。
2割動員集会は、年次有給休暇の時間給の取得を認めて全面的に容認されている。
全水道東水労の公式の見解は不明だが、平成26年2月の中野営業所業務移転拒否闘争の折、○○分会書記長が争議行為は本部指令を受けて争議行為を指導し、実行しているのは組織の義務であり、争議行為が集団組織的行動で、指令に従っているだけの組合役員の責任は問われず懲戒処分されることはないと言っていた。組合の考え方である。
また、当時の○○全水道東水労書記長は、停職中であるにもかかわらず、オルグ演説のため、営業所に勝手に出入りし組合員に組合活動で不利益処分はさせない。それだけの実力があると誇示していた。
組合側が主張している論理は、下記の、全運輸近畿陸運支部事件.大阪地判昭54.8.30民集39-7-1408(二審棄却、最二小判昭60.11.8民集39-7-1375棄却)に組合側の主張と大筋で同じと考えられる。事案は昭和44.11.13の15分ないし20分勤務時間(いわゆる出勤簿整理時間)に食い込む各職場大会。本件闘争においては、戒告処分に処せられた者43名の内訳は、全運輸本部役員1名、支部三役8名、分会三役34名であること、本件闘争において、全運輸中央本部の責任者らについては企画指導の立証を十分にする資料を収集できなかったので、右企画指導者に対する処分をなさず、職場大会毎に実行行為者をとらえ、主たる役割を果した者を各職場大会に原則一人として戒告に、従たる役割を果した者を訓告に、参加者を厳重注意に処するとの基本方針をたて、本件各処分がなされた。
(全運輸側の主張)
①就業命令等は組織敵視、組合の集会をつぶし、組合の団結を破壊することにある。
②本件職場大会の行為は、労働組合としての団体行動であるから、組合員個人として、或いは組合幹部としての懲戒責任を問えない。団体的違法争議行為についていかなる個人責任も生じ得ない。
③原告らの各行為は、全運輸近畿支部の支部長または分会責任者とし組合中央からの方針、指令を忠実に実行したものであり、組合中央によって勤務時間のくいこみ時間、集会の態様まですべて定められ‥‥これに反した行動をとれば、原告らは組合の団結を破壊したことになり、組合の統制処分を受けることになる。従って原告ら、中央闘争本部などからの指令に基づく組合員としての当然の義務を果たしただけであって、使用者たる国との関係で、原告らを特別に選択して懲戒処分に付する合理的な理由はない。
上記の主張に対して運輸省側は長文の反論を行っている。東京都は組合の主張を呑む左翼体質で国の対応とは大きな違いがある。
組合側の主張の根拠となっているプロレイバー学説の主たるものとして以下のとおりである。
(1)籾井常喜1962「使用者による争議責任追及の限界」季刊労働法45号
「争議中にあっては、労働者には、使用者の指揮.支配から公然と離脱する権利が保障されているのである。したがって、争議中、組合の統括のもとでおこなった組合員の行為にたいしては、使用者の労務指揮の権限が及ぶいわれはない‥‥組合員の行為は、単に個々の組合員の行為おこなう組合員の集積というべきものではなく、団結意思に基づく団体行動なのである。それは個人的行為に還元できない、質の全くちがった行動様式であり‥‥この団体行動の性質は、それが違法だからといって個人的行為に分解されるべき筋合のものではない‥‥‥」
(2)片岡曻「懲戒権の根拠と限界」『菊池勇夫教授六十年祝賀記念 労働法と経済法の理論』有斐閣1960所収469頁以下
「‥‥服務規律の維持を目的とする就業規則の規定を争議中の労働者の行為に適用して懲戒処分を行うことは許されない‥。‥‥‥争議時に当然適用を排除せらるべき服務規律については、労働者側に個人としても団体たる労働組合としても懲戒その他の責任を生じる余地がない。‥‥団体たる労働組合の行為としての争議行為のように、本来個別労働関係の主体としての地位をはなれた行為であり、従って個別労働者としての地位において責任を問いえないものについて懲戒の責任を問題とする余地がないものと考える。‥‥個々の労働者につき懲戒の責任を問うことは許されない」
(3)片岡曻1969「公務員の争議行為と不利益処分」季刊労働法73号14頁
「たとい労働組合の争議行為が違法であるとしても、個々の組合員の行為が当該争議行為を組成し、その圏内にある行為と認められるかぎり、これを独立の行為として、使用者との関係における個別契約法的評価にさらし、使用者からの懲戒その他の民事上の責任の追及を許容することはできない‥‥」
プロレイバー学説等に依拠し懲戒処分を取消した下級審判例としては。七十七銀行事件・.仙台地判昭45.5.29労民集21-3-689、全逓都城郵便局懲戒処分取消請求事件・東京地判昭46.11.12労民22-6-1030、都教組勤評懲戒処分取消請求事件.東京地判昭46.10.15判時645があります。
東京都(水道局)は、大筋で上記の学説にもとづいて、職務命令をやらないし、各事業所の職員は地方公務員法32条適条した懲戒処分もできないこととなり、安心して争議行為の慫慂、違法行為、犯罪行為もやっていだだくとことになっています。
3 プロレイバー学説の批判と同学説を否認する下級審判例と国の見解
一方、争議行為に組合員個人の責任は問われないとする説に批判的が学説と主な下級審判例は以下のとおり。
(1)菅野和夫1971「違法争議行為における団体責任と個人責任(一)ー損害賠償責任の帰属の問題として」『法学協会雑誌』88巻2号
「‥‥違法行為者は自己を拘束する他人の命令に従ったことをもってその責任を免れる一般的根拠となしえないこと責任法の基本原則である‥‥争議行為の「二面集団的本質」は、「個人の埋没」ばかりでなく、個人の「実行行為性」をも意味しうる‥‥団体法的見解の個人責任否定論は、まず、不法行為法や契約法の基本原則からその当否が疑われるようなあまりにも広範な無責任の結論を導いており、しかもその十分な理由づけを行っていない‥‥」
「‥‥労務提供の拒否などを「誘致」することが争議行為の本質だという考えに立ってみますと、‥‥多くの組合員相互の誘致、さらにこれによって生ずる共同の労務放棄行為というものから成りたっている。そういう非常に緊密な精神的.有機的な共同活動である。これは株主が年に一度総会に来て、ごく形式的に会社の運営に関与するのとは根本的に違っていまして、組合員がこれに関与している程度がきわめて高いのであります。‥‥やはり組合と争議を指導した組合幹部から、さらに参加した組合員の全部にまで、理論上は一応責任が及ぶという結論になるのではないか。‥‥ドイツの学説でも‥‥‥結局一般に認められるには至らなかったのであります。違法な命令に従ったからといって、やはり責任は免れないというのが一般の刑法なり不法行為の考え方‥‥」
(3)三井化学染料事件福岡地判昭32.7.20労民集8巻4号503頁
「組合の決定に基く組合活動といってもそれが違法な争議行為であるときは組合自身の責任(例えば損害賠償責任)を生ずることは勿論、当該違法行為者自身においても個人責任を負うべきものだと言わなければならない。けだし組合の決定に基き、組合のためにする行為だからといってこの行為に基く結果の責任をすべて組合に転嫁することを認めるにおいては、行為が行為者の判断、意欲、決意に基づく価値行為たる本質をないがしろにし、近代法の基本理念に背馳するそしりを免れないばかりでなく、組合の名のもとに違法行為を敢えてする組合員の行為を阻止し得ない事態を招来するからである。‥‥違法組合活動をなした者はその行為によって生ずることのある組合の責任とは別個に違法行為者としての個人責任を免れない‥‥」
(4)日本専売公社山形工場事件.昭53.3.31仙台高判民集35-3-565
「被控訴人らは‥平常時の個別的労働関係を規律する個別的制裁である懲戒処分は争議行為に親しまないから、かりに争議行為が違法であるとしても争議行為に参加したことを懲戒処分の対象とすることはできないと主張するが‥‥本件争議行為のように違法な争議行為の場合は、これを組成した個々の労働者の行為が個別的労働関係上の規制を受けることは当然と考えられる」として、包装課職員の3時間10分職務離脱(単純参加)に対する戒告処分を適法とした(上告審.最一小判昭56.4.9棄却)。
(全運輸近畿陸運支部事件.大阪地判昭54.8.30民集39-7-1408(二審棄却、最二小判昭60.11.8民集39-7-1375棄却 運輸省大阪陸運局の再抗弁)
原告らの主張は、要するに、争議行為は、労働組合という一個独立の団体行動であるから、それが違法な場合でもすべて団体が責任を負うべきで、その構成員個人の行為は、組合の行為に吸収され、独立の評価を受ける余地がないということにあるが、その団体性をいかに強調しようとも、そのことから、直ちに個々の参加者が責任を負担しないという結論を導き出すことはできない。
争議行為が、一般的に、労働者の団結体たる労働組合の統一的、集団的行為であることは原告の主張のとおりであるが、他面において、争議行為は団体構成員たる組合員の共同に意欲された個別行為の集合であることも事実である。‥‥争議行為は労働組合の行為であると同時に、個々の組合員の行為でもある。そして、個々の組合員は労働組合と別個独立の法的主体であり、従って、違法な争議行為については、労働組合が団体としての責任を負うのとは別に、個々の組合員が責任を負うのは当然である。
違法争議行為の責任はすべて労働組合にのみ帰せられるべきであるという見解からすれば、違法争議行為が刑罰法規に触れるときも、刑事責任を負うべきは組合のみとなってしまう。このような帰結が、個々の違法行為者がなした行為について刑事責任を負わなければならないという刑事法の一般原則に背馳するものであることは論ずるまでもない。又、不法行為責任について、近代法の下においては、人は自己の行為についてのみ責任を負うという自己責任又は個人責任の原則が確立されている。違法な争議行為が不法行為を構成するとき、第一次的にその責任をおうべきは行為者個人であり、その行為者が組成する団体が責任を負うのは別個の法理によらなければならず、決してその逆はありえない。違法な争議行為が労働契約上の債務不履行を構成するとき、その責任は契約当事者たる個々の労働者について生ずるものであり、組合がかかる風紀の履行責任を負うことはない。原告の主張は‥‥近代法の建前を立論で何ら根拠のないものといわなければならない。
‥‥争議権の保障は正当な争議行為に限られており、争議行為が不当、違法なときには、それは労働法上もはや団体行動として保障されず‥‥正当な争議行為に与えられる免責的利益を享受できないのである。換言すれば、違法争議行為は労働法上の団体行為ではなく、法的に個々の労働者の個別行為として契約秩序や服務規律に服することになる。もちろん、争議行為が労働組合の行為であるという側面から、組合としても責任を負うべきことが生じ得るが、‥組合の責任と個々の労働者の責任とは独立別個のものとして併存するのである。
正当な争議行為の民事免責を定める労組法八条は、「労働組合又はその組合員」に対し賠償を請求することができない旨規定し、本来免責なき場合に組合個々人が使用者に対し債務不履行ないし不法行為による責任を負うことあるべきを当然予定している。又、同法12条は、法人の不法行為能力に関する民法44条の規定、法人たる労働組合に準用するものとしているが、民法の右規定の解釈上、法人と共に機関個人の責任が生ずるものと解されている。そして、労組法12条は、同法8条に規定する組合の正当な争議行為については、右準用を除外する旨明らかにしている」
4 最高裁判例は、争議行為時に職務命令はできる。組織の義務として指令に従っている個別組合員も懲戒処分できる。
東京都では管理職が組合に抑えつけられていて就業命令しない、指令に従って組織の義務を果たしているだけの組合員は懲戒処分しない方針は異常である。就業命令を適法とする基本的な判例のみ引用する。
「争議行為中は職務命令できない」「争議行為に対し個別職務秩序違反者として懲戒処分できない」という学説は●神戸税関懲戒免職事件最三小判昭52.12.20民集31-7-1101により明示的に否定され、最高裁は、争議行為時に就業命令を指示している国の争議対応実務を適法とした。
争議行為禁止規定違反と、服務規律違反規程とが競合的重畳的に成立するというもので、懲戒責任を問えないとする都城郵便局事件・東京地判昭46.11.12のような組合寄りの下級審判例や、前記①②等のプロレイバー学説は否定されたのである。
事案は、昭和36年10月2回の勤務時間に食い込む職場大会の指導のほか、10月3Ⅰ日から3日間、輸出為替業務担当職員に対し処理件数を低下させるよう提案、輸出事務繁忙期における通関業務の処理を妨げようと企てた。12月2日輸出関係業務担当職員に、一斉に超過勤務命令撤回願を提出するよう勧奨し、撤回願を一括して、当関業務及び鑑査両部長にそれぞれ提出し、午後1時30分から2時5分超過勤務に服すべき約45名を三階講堂に集結させて、通関業務の処理を妨げた等の争議行為で、全国税関労働組合神戸支部役員3名の懲戒免職を適法とした判例である。
すなわち国家公務員法98条5項(現98条2項争議行為禁止)の保護法益は国民全体の共同利益であり、‥‥国家公務員は、私企業における労働者と異なつて争議行為を禁止され、争議行為中であることを理由として、当然に、上司の命令に従う義務(国公法98条1項)、職務に専念すべき義務(同法101条1項)、勤務時間中に組合活動を行つてはならない義務(人事院規則14-1第3項.現17-2第7条2項)等を免れないとしているが、国の各省庁では事前の警告のほか、争議行為(職場大会)当日の職務命令というものを非常に重視しています。神戸税関事件では懸垂幕や携帯マイクで就業命令していることはすでに述べたとおりである。
地公労法附則5項によって地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される同法11条1項の争議行為禁止規定を合憲とし、昭和43年10月8日1時間ストで勤務時間内職場集会指導し、当局の清掃車借用について抗議行動を行ったことなどを理由として地公労法第11条1項違反として、市労支部長、支部執行委員に対する地方公務員法29条1項1号(‥‥法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合)、2号(職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合)、3号(全体の奉仕者たるにふさわしくない非行)第32条(法令等及び、上司の職務上の命令に従う義務違反)、第33条(信用失墜避止義務違反)、第33条(職務専念義務違反)の適条により停職三月とする処分を適法とした先例である。
なおX市労本部執行委員兼青年部長の懲戒免職は事実誤認その他の理由で控訴審にて取消されているが、Y小倉支部長とZ支部執行委員の停職三月を適法としたもので、当日の争議行為につき原告以外は1名減給、90名を戒告処分であった。
なお小倉西清掃事務所において、10月4日事務所及び作業員詰所に市長名による警告文を掲示するとともに同月7日各職員に対し前記警告書及び職務命令書を交付している。当日も就業命令している。
昭和44年春闘で全逓中央の指令に従って酒田局、横手局、仙台局の拠点局闘争を指導した全逓東北地本委員長の懲戒免職を適法とした判例だが、「労働者の争議行為は集団的行動であるが、その集団性のゆえに、参加者個人の行為としての面が当然に失われるものではない以上、違法な争議行為に参加して服務上の規律に違反した者が懲戒責任を免れえないことも、多言を要しない」と判示している。
昭和44年春闘では全逓組合員約3,600名の懲戒処分。全逓中央執行委員11名(いずれも4月23日実施された半日スト全国各拠点局における指導責任者)を公労法18条による解雇。地方本部委員長は東北地本委員長が懲戒免職、他は停職十月~停職一年であった。
都議の先生方に糾問していただきたいのは、第一に当局が組合側の学説に従い、争議中、争議行為時に職務命令(中止・解散・退去・職場復帰.就労命令)をやらない方針は(但し例外として後藤都議の質問対応とし消極的ながら実施するようになった、平成16年東岡職員部長通知による職務専念義務違反の頭上報告への警告は平成21~26年に行っていたことは現認している)、職員部監察指導課の一貫した方針であり、組織ぐるみの服務規律確保の職務放棄といえます。国の省庁の争議行為の行政実務と全く違うものである。
国の省庁やまともな自治体では全職員に対し違法行為には厳正に対処するとか、必要な措置をとる等の事前警告、あるいは職務命令書交付、スト当日も職場復帰命令、就労命令は当然行っているが、東京都ではやらない理由は組合との不透明な癒着ではないかと糾問していただきたい。
①②の組合側の学説は神戸税関懲戒免職事件最三小判昭52.12.20以降累次の判例で否認されていることなので、攻めやすい。
知事部局がそういう方針だから、それに沿っていると言うかもしれない。その場合は総務局人事部長を召喚してください。
反論してきても、北九州市交通局事件.最一小判昭63.12.8が、地公労法11条1項の争議行為禁止の制約原理を「住民全体ひいては国民全体の共同利益」と説示した以上、就業命令をやらないのは、職員に違法行為を自覚させず増長させ、違法行為を助長し、「住民全体の共同利益」より組合の不当な既得権を重んじている。そもそも労務指揮権を組合に掣肘されている実態は、管理職が債務の本旨を履行していない状況といえる。違法行為を抑止しないだけでなく、助長、加担していることは水道局長のコンプライアンス経営宣言とどう整合するのかと攻めることができ、苦しい答弁になるはず。
第二に、各事業所勤務の本部委員・統制委員・支部分会役員以下を懲戒処分しないのは、争議行為が集団組織的行動で、指令に従っているだけの組合役員の責任は問われないという組合側の論理を当局が容認しているためだが、水道局では当局が争議行為と認定している3割動員勤務時間内決起集会を3~4回毎年行い、かつてはもっと回数があったうえ、平成26年以前はほぼ3年おきに同盟罷業も行っていたので、ベテランの職員になると職場離脱時間の累計が百時間以上ある職員もいるはずで、違法行為の慫慂、業務妨害行為を何回、何十回やろうが懲戒処分をくらう恐れがなく、安心して違法行為ができるという問題は、全逓東北地本懲戒免職事件.最三小判昭53.7.18という決定的な判例があるので、容易に攻めることができる。
5 1時間半以下の同盟罷業の処分例との対比-水道局の処分は妥当か
東京都水道局の全水道東水労の令和元年12月20日1時間ストの処分(令和2年2月6日発令)全水道東水労の処分は、本部中闘停職13日1人、停職10日1人、停職7日1人もう一人停職3日は全水道東水労なのか少数組合の自治労連東水労の未確認なので3~4人と支部長26名の訓告処分。スト集会組合員は賃金カットである。
1時間程度のストで本部中闘委員の最大13日3~4人という懲戒の範囲と量定について判例に出てくる実例と対比してみたいと思います。実際には3割職場離脱集会や超過勤務拒否闘争もやっていますから、たんに1時間ストだけというべきではないかもしれません。
東水労のスト指導は、本部中闘の下に本部委員と統制委員という本部役員がいて、横並びで支部.分会がある。支部長は訓告としているが、各事業所のスト指導に重要な役割を果たしている本部委員.統制委員.支部.分会役員は、懲戒処分の対象としていない。訓告は懲戒でないので痛くないのである。責任は本部中闘に全て転嫁される。
当然停職に伴う経済的損失は組合が闘争資金から補填することになるが、停職13日、10日、7日だから、3人合わせても30日にすぎない。それほど大きな金額といえる。打撃はほとんどないといってよい。ゆえにストは繰り返される。既に述べたとおり北教組の平成20年1月20日の1時間ストでは戒告処分(12,551名)で組合は被処分者の減収を負担したが、少なくとも9億4388万の支出を余儀なくされたという(札幌地判平7.11.13労判691中労委DB)。これは道教委の処分だけで、市町村教委の処分もあるだろうから、1時間ストだけで、組合財政から10億以上吹っ飛んでいることから比較すると。東京都は大甘と認識してよい。
処分の相場に言及している論文として山口浩一郎(上智大助教授=当時) 「公務員の争議行為と懲戒処分-現業国家公務員の場合を中心に」『ジュリスト』472号1971.2.15があるが、客観化することは難しいとしつつも次の程度のものが多かったとしている。
○半日スト 組合本部の責任者 解雇又は免職
地本役員 停職
支部役員 減給(ただし停職の場合もある)
一般組合員 減給(一~三か月)
○二~三時間のスト 一般組合員 戒告
○三〇分程度の場合 一般組合員 訓告
2 昭和44年11月13日統一スト
総評を中心とする日教組など67単産による史上最大の政治スト(佐藤首相の訪米抗議に人事院勧告完全実施などの要求を絡める70年安保闘争のスタート)といわれる昭和44年の11.17統一ストだが、国公共闘では勤務時間外集会に切り替える組合が続出し、大きな混乱はなかったと報道されているが、前記山口論文に処分一覧表があり、毎日新聞夕刊に実施状況の一覧表がある。
2-1昭和44年11/13統一スト 全農林 46都道府県本部で1時間半のスト
本部 3人 停職6か月
11人 停職 10ヶ月
県本分会役員 361人 減給1/10(1~5か月)
県本.分会役員400人 戒告
分会役員.組合員 1013人 訓告
その他 2455人 厳重注意
2-2昭和44年11/13統一スト 全開発 始業時から1時間スト
本部支部役員 42人 減給1/10(1~4か月)
中執.支部役員 61人 戒告
分会役員 220人 訓告
その他 503人 厳重注意
2-3昭和44年11/13統一スト 全労働 勤務時間内29分
本部三役 3人 減給1/10(1か月)
本部6人.支部33人 戒告
支部.分会役員143人 訓告
その他 1668人厳重注意
2-4 昭和44年11/13統一スト 全港建 勤務時間内29分
本部3人.支部41人 戒告
支部書記長21人 訓告
その他2215人 厳重注意
2-5昭和44年11/13統一スト 全運輸 勤務時間内20分
本部1人.支部分会役員42人 戒告
支部書記長50人 訓告
その他 1493 厳重注意
(判例に現れる処分例)
★鳥取県智頭町役場、平21.11.20、勤務時間に20分食い込む抗議集会。組合執行委員長減給1/10一月、組合三役は戒告。(智頭町事件.鳥取地判平255.9.25TKC)
★北海道教委 平成20年1月30日、北教組の授業時間修了後,終業時刻1時間ストにつき、道教委は職場離脱30分以上の者(12,551名)を一律戒告処分とし、職場離脱の時間が29分以下の者(41人)については文書訓告、札幌市教委の北教組1時間ストの対応は、支部分会役員の幹部責任に重点をおき、単純参加者の戒告は授業に影響を与えた場合に限定している(道労委命令に記載)(北海道.道労委(北教組)事件.札幌地判平26.3.31労判1136中労委DB、札幌高裁平27.2.26労判1136中労委DB、最二小判平28.6.17中労委DB)
★国立病院、平成3年11月13日の全医労の最大27分勤務時間に食い込む集会に対し本部役員と地方協議会専従者(26名)支部長(147名)を戒告、支部副支部長及び書記長(399名)に対しては文書訓告、単純参加者(2518名)は厳重注意(全日本国立医療労組事件.東京高判平12.11.29労判840)。
★国鉄直方自動車営業所における昭和60年8月5日、自動車運転者を除く組合員1時間スト。国労門司地本中央支部自動車分会直方班三役3名を戒告、(国労直方自動車営業所事件.福岡地判直方支部平2.3.30労判561、最二小判平9.9.13労判712)
★北海道開発局、昭46.7.15、午前8時30分から29分間以内の職場集会 在庁職員約8500名中77%の約6600名が参加。本部執行委員長.書記長を停職一月、本部副委員長を六月間俸給の月額の10分の1、本部会計長.支部役員(Ⅰ9名)を同じく二月間の減給処分、本部執行委員(3名)支部役員(14名)同じく一月間の減給処分(北海道開発局事件.札幌地判昭54.10.9判時964、札幌高判58.3.15訴務月報299)
★仙台管区気象台 昭46.7.15 勤務時間に18分食い込む職場集会 戒告が東北支部書記長、仙台分会執行委員長 気象庁全体では、懲戒処分13名(中央執行委員長、本庁支部執行委員長、東管支部執行委員長、気研支部執行委員長、清瀬支部執行委員長、北海道支部執行委員長、同札幌分会長、東北支部書記長、同仙台分会長、関西支部執行委員長、同大阪分会長、西部支部執行委員長、同福岡分会長)、訓告23名(北海道支部四名、東北支部二名、本庁支部一名、関西支部四名、西部支部六名気、研支部二名、清瀬支部二名、函館支部一名、中央執行委員一名)、厳重注意21名.分会の参加者全員)(仙台管区気象台(全気象東北支部仙台分会)事件.仙台地判昭60.9.25労判464、仙台高判.平2.3.30、最三小判平5.3.2判時1457.判タ817)、
★北海道開発局 昭44.11.13 29分くい込む職場集会。本部委員長を四月間俸給の月額10分の1の減給処分、本部副委員長(2名)及び本部書記長を同じく各三月間の減給処分に、本部会計長、本部執行委員(2名)及び支部組合員(35名)を同じく一月間の減給処分 (北海道開発局事件.札幌高判58.3.15訴務月報299)
★通産省、昭44.11.13 7分から29分勤務時間に食い込む職場集会、全商工本部、支部、分会役員を戒告処分(全商工事件.東京地判昭61.3.25 判時1189)
★運輸省近畿陸運事務所 昭和44.11.13 15~20分勤務時間に食い込む職場集会 戒告処分43名、全運輸本部役員1名、支部三役8名、分会三役34名。全運輸中央本部の責任者らについては企画指導の立証を十分にする資料を収集できなかったので、職場大会毎に実行行為者をとらえ、主たる役割を果した者を各職場大会に原則一人として戒告に、従たる役割を果した者を訓告に、参加者を厳重注意に処するとの基本方針とした。昭和48年以降の闘争については、職場大会が構内で行わなかつたため実行行為を現認できず、全運輸中央本部及び支部の役員を処分の対象者とし、分会役員らは対象者としなかつた。組合側の主張「支部長または分会責任者とし組合中央からの方針、指令を忠実に実行したものであり、組合中央によって勤務時間のくいこみ時間、集会の態様まですべて定められ‥‥これに反した行動をとれば、‥‥‥‥組合の団結を破壊したことになり、組合の統制処分を受けることになる。‥‥中央闘争本部などからの指令に基づく組合員としての当然の義務を果たしただけであって、使用者たる国との関係で、原告らを特別に選択して懲戒処分に付する合理的な理由はない。」は退けられた。
上記と同様、平成26年2月の中野営業所業務移転拒否闘争の折、○○分会書記長が争議行為は本部指令を受けて争議行為を指導し、実行しているのは組織の義務であり、争議が集団組織的行動で、指令に従う立場の組合役員は懲戒処分されることはないと言っていた。東水労も同じ考え方とみてよい。
(全運輸近畿陸運支部(大阪陸運局)事件.大阪地判昭54.8.30民集39ー7ー1408、大阪高判昭57.2.25民集39-7-1478、最二小判昭60.11.8民集39-1-1375)
★北九州市交通局 昭和44.11.13 始発から約1時間30分(午前6時)までのスト 北九交通労組執行委員長を12条解雇。運休となったバスは22本(全体の4%)であり約500人の利用者に影響を与えた。職場放棄の争議形態でなく、組合員にはバス乗務の勤務につかせ、バス出入口で集会を開き、その出庫を阻止するという形態で、出庫を阻止されたバスの乗務員には争議不参加の別組合員2名も含まれていた。執行委員長は二島営業所に赴き4時30分ころ市職労ニュースカーを車庫出入口に横向けに駐車させるよう指示して車庫出入口をふさぎ、さらに動員された組合員ら約120名により集会を開き、挨拶をするなどして所長の退去要請を無視した。原告は争議行為に関して解雇一回を含む停職等の懲戒処分を数回受けていた(北九州市交通局12条解雇事件福岡地裁昭49.11.19判時766、福岡高裁昭55.11.11判タ435、最二小判昭55.2.8 労判335)当日の争議行為につき原告3名以外は1名減給、90名が戒告。
★昭和43年1時間スト北九州市小倉西.門司.八幡西清掃事務所事件昭56.2.26判時1011、 本件10月8日争議(小倉西清掃事務所関係者については10月8日争議及び10月26日争議)において、違法行為のあった者に対し、原告らを含めて免職、停職、減給、戒告の計107名の懲戒処分を行うとともに、比較的短時間の集会参加者1456名について訓告を行う。前記のとおり免職は取り消された。
★昭和43年4月25日 江戸川.昭島郵便局事件 東京地判昭48.6.28 判タ297
就労命令を無視し46分ないし1時間20分の欠務行為 戒告
就労命令を無視し3時間15分ないし3時間50分の欠務行為 減給1/10(1ヶ月)
★長崎県庁、昭41.10.21 1時間スト 停職三月が県職組本部執行委員長、停職一月が県職組本部書記長、本部特別執行委員兼自治労長崎県本部執行委員長、減給1/10(2か月)が本部執行委員兼長崎支部長、減給1/10(1か月)が他の本部執行委員、支部三役(支部長、副支部長、書記長)、戒告が 支部執行委員、本庁職員の単純参加者、出先機関在勤者でピケッティングに参加した者、訓告が出先機関在勤者の単純参加者。(長崎県職組事件.長崎地判昭55.9.8判時998、福岡高判昭60.9.26労判461、最一小判平元.9.28判時13499)
上記引用したとおり、東京都側はⅠ時間程度のストライキは下部組織の役員は懲戒処分しないのが普通と反論するかもしれませんが、そんなことはないです。国の懲戒処分の実例は、1時間以下の職務放棄でも支部.分会役員レベルの処分例は普通に多数あります。なお、国の各省庁では、たとえ29分未満の職場大会でも、組合役員ではない参加者は最低「厳重注意」としており、違法行為を自覚させるようにしているが、東京都は抗議活動で荒れることを恐れているのか、不利益賦課とはいえない厳重注意すらやらない。違法行為と自覚させることも遠慮している。
なお単純参加者の処分の雛型と思えるのは、昭和46年の林野庁の半日ストの処分例では2時間程度職務放棄で戒告、4時間以上で減給が通例である(全林野旭川地本事件.旭川地判昭50.7.17労民33-5-900 ストの指導を理由として旭川地本役員停職十日~三月、単純参加4時間の職務放棄 減給1/10 1カ月美瑛営林署分会50人、名寄営林署分会組合員34人、1時間45分~2時間40分の職務放棄 戒告 羽幌営林署分会組合員48人)。
近年の判例では、平成3年11月13日の国立病院における全医労による最大27分勤務時間に喰込む職場大会(全日本国立医療労組事件.東京地判平11.4.15判タ1040)の厚生省の処分は本部役員及び地方協議会専従者(26)並びに支部長(147)に戒告、支部副支部長及び書記長(399名)に対しては文書訓告、単純参加者(2518名)は厳重注意としており、支部長以下は東京都より厳しい処分である。
判例に現れている処分例を見るかぎり、懲戒処分を本部中闘に局限してお茶を濁し、圧倒的大多数の組合員は免責している東京都の方針は、著しく組合に忖度し異常で当局と組合で不透明な癒着があるとみてよい。
郵便局は昭和46年まで懲戒処分は厳しかったが、昭和48年以降、段落としといって処分が軽減され、分会役員クラスは、停職はなくなった。電電公社でも段落としで、懲戒処分が軽減化されたのである。しかし、全農林が、1時間のストライキを実施したことにつき、昭和55年に中央執行委員が停職一月の懲戒処分を受けたこと、1時間29分間のストライキを実施したことにつき、昭和56年に中央執行委員が停職二月の懲戒処分を受け、1時間29分間のストライキを実施したことにつき、昭和57年中央執行委員が停職二月の懲戒処分を受け、1時間29分間のストライキを実施したことにつき、昭和59年4月26日に副中央執行委員長らが停職三月等の懲戒処分を受け、2時間のストライキを実施したことにつき、昭和60年に副中央執行委員長らが停職四月等の懲戒処分を受けたこと及び29分間のストライキを実施したことにつき、同年に副中央執行委員長が停職一月の懲戒処分を受けた。全農林は昭和50年代毎年のようにストを決行していた。水道局でも3年おきにストをしていたことから最大18日の停職があるが、農林省との対比では水道局の本部中闘の量定が特に重いということはない(全農林82秋季年末闘争事件.東京地判平3.10.31判時1331)。
(五)外形上犯罪構成要件該当行為、積極的な業務妨害が行われている重大問題
全水道東水労の直近の同盟罷業は令和元年12月20日の1時間ストライキである。新宿営業所で、スト集会は、営業所分会と給水課分会が合同して40名程度で始業時から9時30分近くまで実施され、営業内検針担当エリアに、組合旗を掲出、ビラを貼り、約40名が占拠し座り込む形でなされ、支部組合役員の○○、○○、○○[3名とも現杉並営業所勤務]と給水課一名が、司会、交渉経過報告等の演説、決議文朗読、頑張ろう三唱の音頭取りなどを行った。
新宿営業所長の○○(現サービス推進部業務課長)はスト参加の組合員に対し、中止・解散・退去・就労命令はいっさい行っていない。
また○○は、紙で塞いだICカードリーダ前に立ち、非組合員に出勤記録を入力しないようピケを張り、私を所内から出るよう指図して、違法行為を強度に慫慂したが、これらの地公労法11条1項違反行為、外形上威力業務妨害罪の犯罪構成要件該当行為(シットダウンストライキの態様に近く、刑事免責がないので当局が職場占拠を容認しなければ犯罪は成立する-指導判例である名古屋中郵事件最大判昭52.5.4の判断枠組み参照)に対して、いっさい中止.退去命令、就労命令等を行っていない。
ちなみに、ストで指導的な役割を果たした○○は翌年3月に主任に昇進した。
非常に深刻な問題として、東京都では職員一般に争議行為が違法行為と警告もしないので、水道局職員は争議行為の限界を知らないので、業務遂行を妨害することを平の組合員まで率先しておこなっている
座り込みストライキというのは、大恐慌の1937年にアメリカで流行った悪質な態様です。ウォークアウト(単純不作為の職務離脱)と違って、私企業でも正当な行為ではありません。
執務場所を占拠するのはマスピケに類似していますが、外形的には威力業務妨害罪の構成要件該当行為に当たります。
最高裁先例によれば、争議行為は労務提供拒否としいう不作為を本質とし、これに随伴する行為も消極的限度にとどまるべきであるとする(●朝日新聞西部本社事件.最大判昭27.10.22刑集6-9-27、●羽幌炭礦鉄道事件大法廷判決昭33.5.28刑集12-8-16)。プロレイバー学説のように、争議権に積極的な業務阻害行為を含めないのである。組合は業務阻害権があると主張するかもしれないがそれに従う理由はない。
要するに新宿営業所は積極的な業務妨害をやっているので悪質です。スト当日の集会場所は、監察指導課に報告することになっており、当局は把握しているはずなので、積極的業務妨害は組織的に容認されているといってよい。
職場占拠や座り込みについて、例えば国鉄が業務命令した指導機関士の乗務を阻止するため、機関車運転室に乗り込み占拠しマスピケを指導した事案につき●動労糸崎駅事件・広島高判昭48.8.30判タ300号363頁 (上告審最一小決昭51.4.1棄却)では
「国鉄当局の適法な業務命令を受けてこれに服従し、就労の意思を以て出務している者の場合においては叙上受忍義務のないことは一層明白であるから、同人に本件職場集会への参加を勧誘、説得するに当つては、その時期、場所、手段、影響等において尚更厳しい制約を受け、団結による示威の程度を超えた物理的な力を以て同人の就労を妨害したり、そのため国鉄の施設や車両を占拠する等して国鉄の正常な列車運行業務を妨害することは、その目的の是非に拘らず許されない」として威力業務妨害罪の成立を認めた。
新聞社の争議に際して、組合が行なった工務局作業場の占拠が、説得の範囲をこえた違法なものと認められた●東京新聞争議事件・東京地判昭44.10.18労民20-5-1346は企業施設の重要な部分で滞留による業務運営の阻止行為が行なわれた場合において、使用者側が労働者側の説得をきき入れず、あくまでも業務を遂行させるように要求しているにかかわらず、依然として滞留を続け、使用者側が業務を遂行するためには、滞留者を実力をもって排除する以外に方法がないような情況にたち至ったときには、右滞留はもはや説得の範囲をこえて業務運営を阻害しているものというべきであり、違法たるを免れないと判示ししている。
新宿営業所のストでは業務用機器の隠匿もありました。会社の管理する生産手段等財産等を組合の支配下において積極的な業務妨害をすることが正当な争議行為ではないことは、以下の判例で明らかです。
- さつきタクシー事件・最二小判昭和45.12.17判タ257はタクシー会社の労働争議において組合側が会社のタクシーの車検およびキーを抑留保管しあるいはタクシーの車輪を取りはずすなどする行為の正当性が争われ、組合員の多数の者が暴力によって会社のタクシーの車検およびキーを奪取し、あるいは多衆共同してその車輪を取りはずすなどする行為、ならびに会社社長の返還要求にもかかわらず、人の意思を制圧する勢力を示して、非組合員の乗務する車両を含め会社のタクシーの車検およびキーの返還を拒絶し組合側において抑留保管する行為は、正当な争議行為の範囲を超えるものであつて、威力業務妨害罪および暴力行為等処罰に関する法律違反の罪を構成するとした。
バス車両確保の争奪戦となった●山陽電軌(現サンデン交通)事件・最二小決昭53.11.15が威力業務妨害罪の成立を認めていることで明白なことです。
本件はストライキに対抗する性格を有するストライキ中の操業が法的に保護されるか否かが直接の争点となり、ストライキ中の操業が法的に保護されること。組合側の計画していた争議行為に対抗するためにとられた措置であるという理由で業務性を失うことはないことを明らかにした決定的な意義のある裁判例である。先例として、上記の三判例(朝日新聞西部本社事件、羽幌炭礦事件、進駐軍横浜事件)を引用したうえ、違法性阻却判断基準として久留米駅事件方式をとり、建造物侵入罪、威力業務妨害罪、傷害罪の成立を認めた原判決を認容する決定である。
事案は昭和36年春闘に際し団体交渉が難航し、私鉄中国地方山陽電軌支部組合(約500名)のストライキが必至の情勢になったところから、会社側は第二組合員(山陽電軌労働組合約800名)によるバス運行を図り、予め車両の分散をはじめ、支部組合がストライキに入った日以降は、第三者の管理する建物等を選び、営業の終わった貸し切り車等から順次回送する方法で数カ所に車両を分散し、保全管理していたところ、(1)支部組合員Aらは多数の威力を示して会社が取引先の甲整備工場に、またDらは系列下の乙自動車学校に預託中のバスをそれぞれ多数の組合員ととも搬出しようとして建造物に立ち入った。建造物侵入罪、共同正犯(130条60条)。(2)支部組合員らBは、組合員多数による威力を用いて会社が運行させていたバスを停車させ、運転手を強いて立ち退かせそのバスを確保した。威力業務妨害罪、共同正犯(234条233条60条)。棄却。[中村秀次2010「刑法総論に関する裁判例資料-違法性及び違法性阻却-」『熊本ロージャーナル』4号126頁]
決旨は「使用者は、労働者側がストライキを行っている期間中であっても、操業を継続することができることは、当裁判所の判例の趣旨とするところである(略)。使用者は、労働者側の正当な争議行為によって業務の正常な運営が阻害されることは受忍しなければならないが、ストライキ中であっても業務の遂行自体を停止しなければならないものではなく、操業阻止を目的とする労働者側の争議手段に対しては操業を継続するために必要とする対抗措置をとることができると解すべきであり、このように解しても所論の指摘する労使対等の原則に違背するものではない。(中略)
ストライキに際し、使用者の継続しようとする操業を阻止するために行われた行為が犯罪構成要件に該当する場合において、その刑法上の違法性阻却事由の有無を判断するにあたっては、当該行為の動機目的、態様、周囲の客観的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判定しなければならない(略)。
‥‥本件の車両確保行為は、いずれも相手方の納得を前提とすることなく一方的に、営業運転中、回送中又は会社駐車場に駐車中の会社バスを奪って支部組合側の支配下に置いたものであって、旅客運送業を営む会社にとり最も重要な生産手段に対する会社の支配管理権を侵害するもの‥‥諸般の事情並びに所論の指摘する交通産業における特殊性をすべて考慮に入れ,法秩序全体の見地から考察するとき、本件車両確保行為は到底許容されるべきものとは認められない。 そうすると、威力業務妨害罪又は住居侵入罪に該当する本件車両確保行為には刑法上の違法性に欠けるところはない。」
したがってストライキ時に非組合員やストに反対の組合員を使って操業することは許されないという法解釈は間違いである。争議行為の刑民免責のある私企業でも正当とされる使用者の権利が公営企業で否定されることはありえないのに東京都は否定し組合のいいなりになっているのである。
○○○○は組合員だが課長代理という職制でもあり、職制が業務妨害に関与している点で深刻な問題である。隠匿したと考えられるセキュリティカードは機密性のある重要なもので、これがないと業務遂行は不能になる。公務員の職場でも機密性のある文書を組合の支配下に置くことは悪質と考えられている。
- 四国財務局(全財務四国地本勤評闘争)事件・最三小判昭52.12.20民集31巻72号1225頁は、組合執行委員会で勤務状況報告書を組合で保管することを決定し、在庁執行委員は手分けして第一次評定者(係長)の席をまわって、説得して収集したが、Xは他の役員数名とともに四人をまわり説得したが、その際経理係長が経理課長に提出しようとした報告を引っ張り合い、同課長の制止を妨害して、収集した。組合の保管は約1日程度で、その他の懲戒事由も加わっているが、職制が保管すべき機密文書を組合が一時的にせよ確保した行為は悪質と判断され、懲戒免職を適法としている。
地公労法11条1項違反者は、12条により解雇できるが、罰則規定はない。しかし地方公営企業の争議行為に刑事免責はなく、争議行為及びそれに付随する行為は全逓名古屋中郵事件最大判最大判昭52.5.4刑集31-3-18の判断枠組に適用されるはずで、業務妨害罪、建造物侵入罪等は比較的容易に成立すると考える。
当局は管理意思を明確に示すことがないので、業務阻害を認め、組合オルグ等の外来者の侵入やストライキ待機のセキュリティ破りを許容し、犯罪が成立しないようにしている。犯罪の協力が管理職と任務となっているのは本末転倒している。
私は執務室内に深夜・未明に出入りするセキュリティ破りのスト待機を建造物侵入とみなしこれは、私は西部支所管内の事例を知っているが、どこでもやっていることです。
刑事の名古屋中郵判決の判断枠組は以下のとおりで(香城敏麿・国労松山駅事件.最二小判昭53.3.3刑集32-2-159判解.公労法17条1項と地公労法11条1項は別異に解釈する必要はない)
(イ)公労法17条1項違反の争議行為が罰則の構成要件にあたる場合には、労組法1条2項の適用はなく、他の特段の違法性阻却理由がない限り、刑事法上これを違法とすべきである。
(ロ)但し、右の争議行為が単なる労務不提供のような不作為を内容とするものであって、公労法17条1項が存在しなければ正当な争議行為として処罰を受けないようなものである場合には、その単純参加者に限り、当該罰則による処罰を阻却される。
(ハ)これに対し、公労法17条違反の争議行為にあたらず、これに付随して行われた犯罪構成要件該当行為の場合には、その行為が同条項違反の争議行為に際して行われたものである事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、法秩序全体の見地から許容されるべきか否かを考察してその違法性阻却事由の有無を判断しなければならない。
少なくとも外形的には新宿営業所の職場占拠と、業務用機器の隠匿は(イ)業務妨害罪、オルグやピケッティング目的の無許可侵入、スト待機の深夜の無許可庁舎侵入は(ハ)建造物侵入罪の犯罪構成要件該当行為に当たり、退去命令をすれば不退去罪、組合側は当局が業務阻害を容認しているから犯罪にならないと主張するだろうが、この判断枠組みは、違法行為目的の建造物侵入は違法性が強く推定されるというものである。仮に犯罪が成立しなくてもコンプライアンスは反すると糾弾されてもやむをえないものといえる。
水道局職員は、恒常的に争議行為があり、管理職が警告も就業命令も何もしないから、何でもありのような状況になっていて、管理職も取り締まらないし組合のいいなりで、各事業所の組合員は懲戒処分しないことになっているため、課長代理クラスの活動家でもない組合員がセキュリティカードの隠匿のような外形上業務妨害罪を平然と行うのである。「争議行為の限界」を知らない。
そもそも公務員はウォークアウト(不作為の職場離脱)も違法である。積極的業務妨害は争議権のある私企業の組合にも認められてないのに、ライフラインを預かる水道局には認めるという東京都の職員は二重に違法を重ねているのである。
ここでは、「争議行為の限界」について主として名古屋中郵判決上告審を担当した臼井茂夫最高検検事の論文に依拠して説示することとする。
リーディングケースは●山田鋼業事件最大判昭25.11.15刑集4-11-2257と●朝日新聞西部支社事件最大判昭27.10.22民集6-9-8である
争議行為は労務提供拒否という不作為を本質とし、したがって、これに随伴する行為も消極的行為の限度にとどまるべきであり、それを越えて使用者側の業務を妨害するような意図及び方法での積極的な行為は許されないとの見解が確立したものであって、この点についてプロレイバーが主張するように労働法は市民法個人法秩序を超克するものと解する余地はない。
そしてピケッティングと犯罪の成否についての画期的判例が●羽幌炭礦事件・最大判昭33.5.28刑集12-8-1694であり、事案は、争議続行と組合指導部に反発して組合を脱退し第二組合の結成に加わった労働者と非組合員による出炭を阻止するためのマスピケッティングであるが、「同盟罷業は必然的に業務の正常な運営を阻害するものではあるが、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであって、これに対し使用者側がその対抗手段の一種として自らなさんとする業務の遂行行為に対し暴行脅迫をもつてこれを妨害するがごとき行為はもちろん、不法に、使用者側の自由意思を抑圧し或はその財産に対する支配を阻止するような行為をすることは許されないものといわなければならない‥‥。されば労働争議に際し、使用者側の遂行しようとする業務行為を阻止するため執られた労働者側の威力行使の手段が、諸般の事情からみて正当な範囲を逸脱したものと認められる場合には刑法上の威力による業務妨害罪の成立を妨げるものではない。」と判示した。
問題は、「諸般の事情」の解釈だが、臼井検事は、「基本となる基準はあくまで労働力の提供拒否にとどまるか否かであり」労働力の提供拒否にとどまるか否かという基準では割り切らないことを意味するというプロレイバー解釈は誤りと指摘している[臼井滋夫1977「ピケッティングの正当性の限界」『法律のひろば』30巻4号 ]。
プロレイバー労働法学では、争議権とは本質的に「業務妨害権」であり、同盟罷業による業務妨害状態を有効に維持するためにピケッティングは争議行為の範囲にあるとし、一定程度の実力行使も許されるというものであるが、最高裁はもちろん認めていないが、東京都は業務妨害権を容認している。
同判決以外でも最高裁は物理的に就労阻止する実力ピケ、大量動員ピケについて多くの事件で有罪と判決している。●ホテル.ラクヨー事件最一小判昭和32.4.25暴力行為等処罰ニ関スル法律違反 ●第二港湾司令部駐留軍横浜事件最二小判昭33.6.20威力業務妨害、 ●東北電力大谷発電所事件最一小判昭33.12.15威力業務妨害、水利妨害、●四国電力財田発電所事件最一小昭33.12.25威力業務妨害、●嘉穂砿業事件最一小判昭35.5.26威力業務妨害.暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、●長万部駅事件.最一小判昭45.7.16建造物侵入●浜松動労事件.最一小判昭45.7.16 威力業務妨害●全逓横浜中郵前ピケ事件差戻後上告審最一小決昭49.7.4 公務執行妨害、●国労久留米駅事件.最大判昭48.4.25 建造物侵入、公務執行妨害●動労尾久駅事件最三小決昭49.7.16威力業務妨害●光文社事件最三小判昭50.5.8逮捕罪●動労糸崎駅事件.最一小決昭51.4.1威力業務妨害●国労尼崎駅事件.最一小判昭52.10.20公務執行妨害● 動労鳥栖駅事件.最三小決昭50.11.21?威力業務妨害.公務執行妨害●春闘松山駅事件.最小二判昭53.3.3威力業務妨害●動労南延岡機関事件.最一小判昭53.6.29威力業務妨害●山陽電軌(現サンデン交通)事件.最二小決昭53.11.15威力業務妨害
ただし最高裁は羽幌炭礦判決より前に例外的に〇三友炭鉱事件最三小判昭31.12.11刑集10-2-1605において物理力を行使したピケットを正当と判決している。〇札幌市労連事件(札幌市電ピケット事件)最三小決昭45.6.23刑集24-6-311 それに続く二つめの例外的判例である。羽幌炭礦判決以降では唯一の例外である。それゆえプロレイバー-学者は、ピケット権の確立を前進させた意義があるものとして本決定を評価している[佐藤昭夫1970「札幌市労連最高裁決定とピケット権の展開」『労働法律旬報』756号 ]。従って組合側がこの判例に依拠して積極的業務妨害やピケット権を主張することはありうるので、検討する。
三友炭鉱事件判決とは可罰的違法性論の典型とみなされるものである。罷業から脱退して生産業務に従事する者に対し「口頭又は文書による平和的説得の方法で就業中止を要求しうることはいうまでもないが、これらの者に対して、暴行、脅迫もしくは威力をもって就業を中止させることは、一般的には違法と解すべきである。」としたうえで、しかしながら違法性を阻却することがあることを認め、「諸般の状況を考慮して慎重に判断されなければならない」とし「炭鉱労働組合が同盟罷業中一部組合員が罷業から脱退して会社の石炭運搬業務に従事し石炭を積載した炭車を連結したガソリン車の運転を開始した際、組合婦人部長たる被告人が、右一部組合員の就業は経営者側との不純な動機に出たもので罷業を妨害する裏切行為であり、これにより罷業が目的を達し得なくなると考え、既に多数組合員等がガソリン車の前方線路上に立ち塞がり、座り込みまたは横臥してその進行を阻止しているところに参加して『ここを通るなら自分たちを轢き殺して通れ』と怒号して就業組合員のガソリン車の運転を妨害したというのであって、被告人の右行為はいわば同組合内部の出来事であり、しかもすでに多数組合員が運転行為を阻止している際、あとからこれに参加したというに止まるから」本件の具体的事情ではまだ違法ということはできないとしたものである。
最高裁判決では触れられてないが、「諸般の状況」には三友炭鉱の出炭成績は悪くなかったにもかかわらず、社宅の飲料水の如きは山麓に一間半の水槽をつくり、その溜まり水を手押しポンプで汲出すという粗悪な設備で消毒もなく、平素も行列をつくって汲み水を待つ状況に放任されており、浴場も山間部にわずかに屋根があるだけで脱衣所なく濁った構内の腐水を使用し混浴であったが、経営者側が改善に着手する模様がなかったこと、被告人は経営者と縁故のある元組合長らが突然就業を開始した裏切り行為に極度に憤激したといった格別の事情を斟酌したものと考えられる。したがって、あくまでも同情的な例外的判例とみなす。
(2)札幌市労連事件(札幌市電ピケット事件)最三小決昭45.6.23
ここが本意見書の勘所になる。
昭和45年の札幌市労連事件最高裁決定はピケッティングの犯罪の成否につき先例の判断基準を変更していないが、原判決が威力業務妨害罪の構成要件に該当することを認め「このような行為は、それが争議行為として行なわれた場合においても、一般には許容されるべきものとは認められない。」と説示しておきながら、具体的事情を斟酌して可罰的違法性にいたらないものとした。三友炭鉱事件に続いて例外的裁判例といえるのであって、最高裁の判例法理の骨格自体を変えるものではない。
事案は昭和37年6月15日札幌市労連による市電と市バス乗務拒否を主眼とする争議行為において、地公労法適用の札幌市職員である被告人3人が他の40名の組合員とともに交通局中央車庫門扉付近において、当局の業務命令によって乗車した罷業脱落組合員の運転する市電の前にスクラムを組むなどして立ち塞がり、「降りろ」「下がれ」等と怒号しながら電車を揺さぶる等したため、当局側ともみ合い、約30分電車の運行を阻止したことが、威力業務妨害罪として起訴されたが、無罪とする原判決を維持した。
一審札幌地判昭41.5.22判時449は、威力業務妨害罪の構成要件に該当するが、労働組合法1条2項の正当な争議行為にあたるとして無罪。原判決札幌高判昭42.4.27でも、業務妨害罪の構成要件に一応該当するものと認めながら、正当な争議行為と認められるから、実質的違法性を欠き、罪とならないとして控訴を棄却。
最高裁第三小法廷決定は多数意見3、反対意見2の僅差で、本件ピケッティングは正当な行為として上告を棄却した。なお反対意見の下村、松本裁判官は、地公労法11条1項違反の争議行為に労組法1条2項は適用されないとの見解を示した。
坂本武志判解によれば多数意見は、地公労法11条1項違反の争議行為に労組法1条2項(刑事免責)の適用があると明示していないが、東京中郵判決・最大判昭41.10.26刑集20-8-901により公労法17条1項 違反の争議行為にも労組法1条2項の適用があるとされたので、当然の前提としている。
後に判例変更された昭41年東京中郵判決の刑罰最小限度論に沿った判例である。同判例は、公労法17条1項に違反して争議行為をした場合、なんらかの刑罰法規に触れても違法性を阻却すると解すべきだとした。これは藤木英雄東大教授が説いた行為の違法性の相対性の考え方によっている。
つまり刑事制裁の対象となる争議行為を三つの場合①政治スト、②暴力を伴う、③長期に及ぶなど国民生活に重大な支障をもたらす場合に限定しているのであり、違法性の強弱.程度で違法性阻却される枠組みで刑事上違法とできないとされた。
但し多数意見は本件ピケのように、多数が市電の前に立ち塞がって進行を阻止する行為は、一般には許容されないというピケッティングの限界に関する原則的見解をとっている。にもかかわらず無罪というのは、本件における具体的事情のもとで、正当な行為ということができるとしているのである。
①本件ピケッティングは、市当局が、組合側の正当な団体交渉の要求を一年有余の長期間にわたって引き延ばしたりして誠意のない態度をとったため、やむなく踏み切られた市電への乗務拒否を主眼とする同盟罷業がその実効性を失うのを防ぐためになされた。
②本件ピケッティングは、罷業から脱落した組合員が、当局の業務命令に従って市電の運転を始めたので、組合の団結が乱され、同盟罷業がその実効性を失うのを防ぐため、翻意を促す目的でなされたものであること。
③進行を阻止した時間が短く、暴力に訴えることはなく、しかも実質的に私企業とあまり変わらない市電の乗客のいない車庫内でのできごとだったこと。
2判事の反対意見
◇下村三郎裁判官の反対意見の要約(昭41中郵判決.昭44都教組判決いずれも反対意見に加わる)
地公労法11条1項は、争議行為を禁止しているのであるから、これに違反してなされた争議行為は、すべて違法であって、正当な争議行為というものはありえない。‥‥原判決が、地公労法11条1項に違反してなされた本件争議行為を威力業務妨害罪の構成要件にあたるものとしたうえ、労働組合法1条2項を準用して、被告人らの本件所為を正当な行為として罪とならないとしたのは、法令の解釈を誤り‥‥」
◇松本正雄裁判官の長文の反対意見の要約(昭44都教組判決で反対意見に加わる)
地方公営企業労働関係法11条1項はその前段中において、「職員及び組合は、地方公営企業に対して同盟罷業、怠業その他の業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。」と規定している。そして右の規定は‥‥合憲であることに異論がないであろう。もし、右の規定が違憲であるとするならば問題は別であるが、合憲の規定であると当裁判所が認めるからには、地方公営企業に対する争議行為等が禁止せられていることは明白であり、違法性があることすなわち正当でないことをも意味し、労組法1条二項の適用を排除する趣旨と解すべきものである。この意味で、右の争議行為禁止違反が、単なる民事的違法に過ぎないという解釈にはとうていくみすることができない。
しかも、労組法1条2項において、刑法35条の適用があるとされているのは、「労働組合の団体交渉その他の行為」であつて、労働者の地位向上、団結権の擁護等の目的を達成するためにした「正当なもの」についてであるが、地方公営企業においては、「その他の行為」のうちには争議行為は含まれないと解釈すべきであり、また、争議行為は解雇原因ともなりうる違法な行為であるから、「正当なもの」ともいえないわけである。(これは昭52名古屋中郵判決の判旨と大筋で同じ)
〇仮に、労組法1条2項の適用があるとしても、被告人らの本件行為は、次に述べる理由により、正当性の範囲を逸脱したものである。
A 被告人らのした本件行為は、かの中郵事件にみられるような単純な不作為ではなく、積極的な実力または威力による業務妨害行為であって、このような、このような行為は、当裁判所が昭和25年11月一五日の大法廷判決(山田鋼業事件)以来、累次の判例により違法としているものである。
B Yが争議から脱落した組合員であるとしても、もともと職員の争議行為は禁止されており、これに違反した職員は解雇されることがある。(地公労法11条、12条参照)
‥‥業務に従事しようとする組合員個人の自由意思は特に尊重されるべきであり、これを実力で阻止することは、組合といえども許されない。(この趣旨は全逓横浜中郵ピケ事件差戻後控訴審.東京高判昭47.10.20等内部統制権引否定の判例により少数意見ではなくなった)
C ピケの正当性は、口頭または文書による、いわゆる平和的説得の程度のみに限られるべきだとは必ずしも思わないが、本件のごとく有形力を行使し、脱落者の就労を事実上不可能にすることまでも(たとい、それが説得の手段であったとしても)許されるべきとは考えない。かかる行為を許容することは、健全な労働運動の発展の障害にこそなれ、正しい方向とはいえない。
◇ 札幌市労連事件(札幌市電ピケット事件)最三小決昭45.6.23刑集24-6-311物理力を行使したピケットを正当としたきわめて例外的な裁判例をどう評価すべきか
結論を先に言えば
地公労法違反の争議行為で、組合の物理的就労阻止を認める根拠として組合側が利用できるのは、札幌市労連事件(札幌市電ピケット事件)最三小決昭45.6.23刑集24-6-311だけであるが、先例としての意義を持たないというのが結論である。
明示的に判例変更されていないと言うかもしれないが、それは地方公営企業の労働刑事事件が稀少なため、この場合、判例が蓄積している公労法判例に依拠してよいのである。
争議行為に付随する行為としてのマスピケの違法性阻却判断基準は、私企業の先例にもなっている国労久留米駅事件最大判昭48.4.25刑集27-3-418の久留米事件方式により明確になった。公務員のストの先例である全逓名古屋中郵事件.最大判昭52.5.4刑集31-3-182は、久留米駅事件方式を継承した判断枠組にとっている。
東京中郵判決が争議行為にも刑事免責があるとされたが、名古屋中郵事件により判例変更され、争議行為には労組法1条2項の刑事免責は適用されないうえ、同種のマスピケが昭和50年代以降久留米駅事件以降、無罪とされることはなくなった経緯から、今日では無罪が成立する余地はなくなったというべきで、先例としての意義は認められない。今日の判断枠組み(名古屋中郵事件方式)では、久留米駅事件方式を踏襲し違法性推定機能を強化した「行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、法秩序全体の見地から許容されるべきか否かを考察してその違法性阻却事由の有無を判断しなければならない」という違法性阻却の判断基準となっている。したがって本件のような市電車庫発進を物理的に阻止するのピケが、犯罪構成要件該当行為であり、違法争議行為防衛の目的でなされる以上違法性を阻却されることはありえない。業務妨害は正当化されない。威力業務妨害罪は成立する。
実際、類似したマスピケ事犯の多数が昭和50年代以降、久留米駅事件方式や、名古屋中郵事件方式により有罪とされている。特に類似した事案として業務命令された機関士が機関区内の機関車に乗務することを妨害する動労の500名のマスピケ事犯である、南延岡機関区事件・最判昭53.6.29刑集32-4-759が、名古屋中郵事件方式により無罪とした原判決を破棄し有罪としており、札幌市電ストもそれと同じことである。
加えて、本件は当局が組合の団結を切り崩して、脱落組合員が市電に乗務し、その出庫を阻止した事案であるが、動労鳥栖駅事件・福岡高判昭49.5.25判時770号113頁(上告審-最三小決昭50.11.21判時801号101頁 棄却)のケースは動労のストで、国鉄の業務命令で、スト参加の機関士の代務となる同じ動労の指導機関士の急行列車への乗務を阻止するマスピケの事案で「組合がたとえ同盟罷業を決議しても、それは公労法上違法であり、民間企業の組合の場合のように法的拘束力をもつものではなく、組合員としては組合の決議、指令にかかわらず同盟罷業に参加することなく就業する自由を有するのであって、これに参加を促がす勧誘、説得を受忍すべき義務はないのである」と説示していることから、脱落組合員がスト参加の慫慂に応じる必要はなく就労の権利があるので、脱落組合員の就労阻止だから大目にみるということは今日ではありえない。
地方公営企業の労働刑事事件が僅少なため、明示的に判例変更されていないとはいえるが、札幌市電事件は、特殊な事情が強調されているが、羽幌炭鉱事件の判断枠組みを変更したものではないし、公労法17条1項と、地公労法11条1項は同文同趣旨の立法のため、公労法の先例と別異に解釈する理由はないのである。
今日では、この判例ではなく指導的な位置づけにある名古屋中郵事件最大判昭52.5.4方式に依拠することになるのは必定。また違法争議行為の参加を強要する統制権を否定する判例があることは既にのべたとおりであり、札幌市労連事件を根拠に、就業の物理的阻害を正当化することはできない。
3対2で無罪とされた札幌市電ピケット事件の評価を誤らないことが重要である。最高裁は昭和48年を潮目として石田和外長官派が多数を占めるようになる、本件は最高裁が左派優勢、中郵判決維持派が多数を占めていた昭和45年の決定である。刑罰最小限度論をとっていた時期の判例である。のちに反対意見側の見解が多数派になるのである。
池田首相に近い弁護士で最高裁判事に就任した松本正雄裁判官は、この反対意見だけでも名裁判官と評価してよい。反対意見のBの見解(違法争議行為の内部統制権の否定)は、将来の中郵判決の判例変更を見越したうえで、全逓横浜中郵ピケ事件差戻後控訴審.東京高判昭47.10.20判時689号51頁(差戻後上告審最一小決昭49.7.4判時748号26頁棄却)において中郵判決の調査官だった中野次雄裁判長が採用し、マスピケ事犯を、争議行為に付随した行為として、争議行為の評価の切り離すテクニックにより、2時間ストされ自体は可罰的違法性なしとしつつも、本件郵便局員神奈川地評に動員され機動隊に暴行を働いたピケ隊2名の公務執行妨害罪の成立を認めた。組合員であれ「組合の指令にもかかわらず、同盟罷業に参加することなく就業する義務を負うとともに権利を有するものである」として内部統制の否定は、国労広島地本組合費請求事件.最三小判昭50.11.28民集29-10-1634でも説示されたものであるから、実質判例変更されたものとみてよいのである。したがって今日の判断では、当局の業務命令により同盟罷業から脱落した組合員による業務遂行は、正当な業務であり、刑法上保護される。
昭和40年代労働事件や公安事件で司法が左傾化した要因として、可罰的違法性論の影響がある。
藤木教授は労働刑法での違法性概念について「労働権の保障の結果それと矛盾する限度で財産権に対する保障が後退するのは当然のこと」「通常の一般市民間でなされた場合に威力ないし脅迫にあたる行為であっても、労働争議という実力闘争の場において常態を逸脱しない‥‥程度の行為については‥‥威力あるいは脅迫にあたらないとして構成要件該当性を否認することにより問題を処理することが許されよう」と述べたわけである。[藤木英雄1967 81頁]市民法秩序を軽視する理論である。争議行為の限界を消極的限度にとどまるとしている最高裁判例を突破し、市民法と労働法のぶつかり合う矛盾を労働法優位に改変していこうとする志向性を有している。
また藤木教授はピケッティングについて、「組合員であって争議から脱落した者は‥‥統制力の行使として、緊急の場合、スクラムによる絶対阻止が許される」「組合の組織の防衛をはかる目的で、会社のために就労しようとする者を‥‥強力な威力行使によって、その通行の最終的な阻止を試みることは‥‥場合によっては合法」としてスクラム阻止を容認している[藤木1967 181頁以下]。
この学説と中郵判決の刑事免責適用を根拠に、争議行為を明文で禁止されているはずの公労法適用職場において、積極的業務阻害であっても、可罰的違法性を欠くとして無罪とする下級審判例が相次ぎ、大きな混乱をもたらした。例えば〇国労尼崎駅事件神戸地判昭41.12.16判決逆ピケを張った鉄道公安職員に体当たりし負傷者を出したにもかかわらず、正当防衛、渦巻きデモや坐り込みにより電車の発進を阻止した行為を正当な争議行為として無罪、実力ピケを無罪としたものとして、マスピケ事犯の多くが無罪となったほか、私企業で、典型的可罰的違法性論の判例として一例をあげると、〇光文社事件東京高判昭48.4.26判時708である。これは第二組合員が通勤途上の路上で第一組合員と支援者6人に包囲され両腕をつかまえられ、引っ張り、押されるなどして腰を低く落として抵抗するのもかまわず、約30メートル引きずられたあと、さらに両脇下に手をさしいれたまま、200メートル余り自由を拘束され連行された事案で、「‥‥身体に殴打、足げり等の暴行を加えてないのはもちろん、その着衣その他に対しても何ら損傷を与えていない程度のものである」と述べ、「なお外形的には、逮捕罪にあたる」ことを認めつつ結局本件は「犯罪として処罰するに足りる実質的違法性をいまだ備えていない」として逮捕罪の成立を認めた一審を破棄して無罪判決を下した。
要するに労働争議においては、ある程度の有形力行使を認めるというというのが藤木学説であったし、刑罰最小限度論の41年中郵判決も、藤木学説の影響である。しかし最高裁は昭和48年に石田長官派が多数を占めることとなり、潮目が変わるのである。
本決定は、藤木英雄東大教授の可罰的違法性論の影響力の大きかった時代の所産であり、諸般の状況によっては一定程度の実力行使も許容される余地があるピケット権を是認した先例とみなす評価は正しくない。先例として意義は以下の理由で認められない。
第一に、本決定は昭和41年の中郵判決の公労法17条1項違反の争議行為であっても労組法1条2項(刑事免責)の適用があるとの判断に従って、地公労法11条1項違反の争議行為にも適用があるとの前提に立っているが、52年の名古屋中郵判決で明示的に判例変更されていることである。
同じく、41年中郵判決では刑事処罰の対象となりうる争議行為は、強い違法性のある争議行為、「三つの場合」に限定されるとしたが、この基準も52年の名古屋中郵判決で判例変更されていることである。
第二に●国労久留米駅事件最大判昭48.4.25刑集27-3-418は、藤木英雄東大教授の可罰的違法性論を事実上排除するために、違法性推定機能を重視する、次のような違法性阻却判断基準を示したことで時代のターニングポイントとなる判例といえる。
【久留米駅事件方式】
「勤労者の組織的集団行動としての争議行為に際して行われた犯罪構成要件該当行為について、刑法上の違法性阻却事由の有無を判断するに当っては、その行為が争議行為に際して行われたものであるという事実をも含めて、当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に容れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判定しなければならない。」との判断方式を打ち出した。
臼井最高検検事は、久留米駅事件方式確立の結果、結論的に「最高裁判例においてはピケッティングの正当性の限界につき,消極的性格の行為の限度にとどまるべきであるという見解が堅持され、いわゆる平和的説得の限度を越えたピケッティングが犯罪構成要件に該当するときは、犯罪の成立を阻却するごく特殊な事情が存在する場合は格別、原則として違法性が阻却されないものとされている」[臼井滋夫1977「ピケッティングの正当性の限界」『法律のひろば』30巻4号]
国鉄が私法上の勤務関係のため、私企業を含めた先例であり、久留米駅事件の意義は大きい。
実際、藤木学説を根拠として可罰的違法性を欠くとして無罪とした判例は130件あったが、久留米駅事件方式による違法性阻却判断基準により、他組合員への断続的暴行、逮捕行為を無罪とした原判決を破棄した日本鉄工所事件最二小判昭50.8.27 以降ほぼ完全に姿を消し、実務上可罰的違法論は消え去った[前田雅英1984「労働組合役員の他組合員に対する暴行,逮捕行為と実質的違法阻却事由(最判昭和50.8.27) 」『警察研究』55巻1号 ]。
C 名古屋中郵事件方式により諸般の事情は違法性を肯定する方向で考慮される
久留米駅事件方式は争議行為そのものと、争議行為に際して行われる行為とを区別した私企業を含めた判断基準として画期的であった。その後公労法違反の争議行為、および付随行為については、中郵判決を判例変更した全逓名古屋中郵判決において久留米駅事件方式を継承したうえで発展させた判断方式が示されるに至っている。
名古屋中郵事件は公労法違反の事案だが、地公労法11条1項と、公労法17条1項とは同文であるから別異に解釈する理由はない。
札幌市労連事件(札幌市電ピケット事件)最三小決昭45.6.23は原判決が威力業務妨害罪の構成要件に該当することを認めているのであるから、久留米駅事件方式を踏襲した名古屋中郵事件の判断枠組みでは、先述の香城敏麿国鉄松山駅事件調査官解説は名古屋中郵事件最大判昭52.5.4刑集31-3-182判決の要点を3点にまとめているが、(イ)に相当し、違法性は阻却されない。
したがって、昭和45年の札幌市労連事件は先例たりえない。地方公営企業の類似事件としては、○北九州市交通局12条解雇事件福岡地裁昭49.11.19判時766、●福岡高裁昭55.11.11判タ435、●最二小判昭55.2.8 労判335があり、バスの出庫に対し、バスを横付けして発進を妨害した例がある。この事案は指導した組合執行委員長を12条解雇としたため、刑事事件になっていない。地方公営企業の威力妨害罪の判例がその後ないから、判例変更になっていないだけの話であると説明できる。
組合側は札幌市労連事件(札幌市電ピケット事件)を先例として、業務妨害権、ピケット権を主張してくるかもかもしれないが、以上の理由で先例にならないことは明らかであるから、業務妨害を擁護する余地は全くないのに、東京都は容認している。全く法解釈を誤った労務管理として糾弾したい。
以上のことから全水道東水労の西部支所新宿分会のストの態様は、時効だが、威力業務妨害罪が成立する悪質な態様と断じることができる。
令和6年12月20日に配置されているストが決行され同じことが繰り返されるかもしれない。
1 反論としては当局に争議行為対応に広範な裁量権があり懲戒処分前提の警告.就業命令しなくてよい。取り締まらないこと自体違法ではないと言うはず
争議行為時に、国の行政実務のように就業命令やらないのはなぜだと、それは争議行為が労務指揮命令系統から離脱する行為だからか、あるいは組合敵視と非難されるためだからかと都議が質問した場合、当局は就業命令しないこと自体違法ではないとして次のような反論をすると想定します。
就業命令が適法で、就業命令できないとする学説は、神戸税関判決で否定していることは認めざるをえないが、国の争議対応実務に倣うことは義務とされていないと答えると思う、そのうえで、懲戒処分の範囲や量定は指導判例である神戸税関判決が、「懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか‥‥広範な事情を総合的に考慮してされるものである以上、平素から庁内の事情に通暁し、部下職員の指揮監督の衝にあたる者の裁量に任せるのでなければ、とうてい適切な結果を期待することができないものといわなければならない。それ故‥‥懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである」としており、違法行為をしても懲戒処分しないで部下を守るという裁量もあってよい。
そもそも、地公労法11条1項違反は、12条で「‥解雇することができる」としているだけで、判例により、懲戒処分もできるが、懲戒権者の広範な裁量権があるので、違法行為に不利益賦課しなければ違法となるものではない以上、コンプライアンスに反しないと言うだろう。
コンプライアンスとは組織のルールです。国の方針と同じくすることではないともいうだろう。就業命令すると抗議活動で収拾がつかなくなる。殴られてもいいから職務命令しろなどいうのはパワハラというかもしれない。
しかし、管理職は違法行為や犯罪行為を制止し、正常な業務運営を維持するために、懲戒処分するしないは別問題としても、職場秩序維持のため中止・解散・退去命令、就業命令等、職務命令をすることは、違法行為は認めない管理意思を示すことは必要である。なにもしないのは労務指揮権の放棄で怠慢。少なくとも水道局長が庶務担当課長あてに服務規律の確保を通知している以上、管理職の債務の本旨と言うべきであり、組織的に職務命令をやらない方針が異常なのである
争議行為に職務命令をしなくてもそれは当局の政策判断と反論しても、管理意思を示さず、職務命令の凍結することが違法行為を助長することはいうまでもなく、住民全体の共同利益の侵害の放置と非難されても仕方がないように思える。
少なくとも40年以上、事業所においては地公労法11条違反行為と外形上威力業務妨害罪構成要件該当行為に対して職務命令等せず、拱手傍観もしくは積極的に協力している実態、組合に労務指揮権・施設管理権を掣肘されている状況は異常である。
都の管理職が違法争議の慫慂を承認し、事実上管理職と組合役員が共謀.共同統治で職員全員を組合の方針に従って争議行為に巻き込んでいく体制は改めなければならない。
事故欠勤にすると命令した管理職は令和2Ⅰ年の○○○○中野営業所長の例のほか平成初期の東部第一支所の庶務課長が、就労した私を非難したケースだけですが、組合に入ってない新人を、庁舎から締め出すことを見ていますし、かなり前から当局が組合と共謀して出勤簿は押させない方針に加担しているのは非公式であれ組織的方針であることは間違いありません。
他の管理職はピケットラインを通過するなと命令せずとも、江東営業所勤務時、包囲型のピケッティングを振り切って就労しても、歓迎は絶対しません。管理職が就労を促すことは組合に対する裏切りになるのでやりません。組合を刺激して吊るしあげられることを怖れていますし、私が就業規則どおり出勤簿(現在いICカードリーダ)を押しての就労は非違行為扱いに等しい異常な職場です。
抗議活動で荒れるから、職務命令できないと言うかもしれなすが、郵政は全逓、国鉄は国労や動労と対峙してひるんでいない。特別査察チーム派遣とか、それなりの対策をすればよい話で理由にはならない。
平成21年当時中野営業所長だった○○氏は組合役員と共謀し、私に出勤停止を命じた人です。実際本局部署と連絡をとったうえで、自信をもって私の就労の権利を否定し事故欠勤を強要しようとしました。
ストが決行された場合私に対し、8時半より前に入庁は許さない。事故欠勤にします。賃金はやるといっているのに従わないのは非常識と言いました。都労連に頑張ってもらいたいと言っていたし、争議行為を正当業務と認識していました。法解釈がおかしいです。
又、○○所長は、私の執務室内昼休み集会の中止命令の進言も拒否、組合役員の申し出に応じ演説「あおり」そのものの違法行為を許諾しています。労働基準法第34条第3項により組合活動を規制できないと言っていましたが、そんなばかなことはありません。米軍立川基地事件・最三小判昭49.11.29訟務月報21-2-421は 「一般に労働者は、休憩時間中といえども、その勤務する事業所又は事務所内における行動については、使用者の有する右事業所等の一般的な管理権に基づく適法な規制に服さなければならない‥‥‥休憩時間中における労働者の行動の自由が一部制約せられることがあっても、有効な規制として拘束力を有し、労働者がこれに違反した場合には、規律違反として労働関係上の不利益制裁を課せられてもやむをえない」とされ以降累次の、昭和50年代以降企業秩序論(目黒電報電話局事件・最三小判昭52.12.13)などの多数の判例があるので、勤務時間外の組合活動も当然規制できます。
たぶん○○氏のように組合側の論理プロレイバー学説が法律だと思っている誤った法解釈をしている人でも、本局中枢の重要ポストに就けるという東京都の人事は異常です
また○○所長は平成23年10月31日~4日の1週間(祝日をはさむ)昼当番拒否闘争で就労拒否.は不完全就労なのに、賃金カットはしていないことも聴きました。平成23年10月31日~4日の1週間(祝日をはさむ)○○所長は、粛々と昼休み当番下位職業務を組合の指図に従ってやっていました。組合の指図には従順です。
○○所長が、事実上ピケットラインを尊重しなればならず、就労の権利を否定したので、私が局幹部に抗議するグループウェアメールをしたところ非違行為とされ、私を「愉快犯」となじったわけです。実際には平成21年にストはなく、平成22年12月10日1時間ストは組合がピケットを張らなかったので、私は就労していますが、○○所長は、駐車場での組合集会に対して職場復帰命令、解散命令、就労命令はしていません。職員部の指示がないからやらないということでした。
違法行為に対して、制止、中止命令せず、違法行為、犯罪の実行がそこで行われているのに拱手傍観する。それが東京都では一番良い管理職ということになっています。組織的な方針としては、○○氏の言動や行動のとおりですし、○○氏のような水道局プロパーに限らず、知事部局から転任した管理職であれ総じて東京都は違法行為に好意的といえます。
服務規律として基本的義務である就業規則に反する行為を部下に強要するのは権限を逸脱し、水道局長の服務規律確保の通知の趣旨にも反します。非組合員の就労締め出しは、地公労法11条2条に反しており、違法行為と評価される可能性が高い。コンプライアンス経営宣言に反している。
なお、ストに参加する組合員は懲戒処分を受けないが、賃金カットはされます。組合の説得によってピケットラインを突破せず就労しない非組合員は、ノーワーク.ノーペイ原則に反し、「事故欠勤」としても賃金が支給されているのは、不平等であります。
東京都は、管理職も、組合員も、非組合員も総ぐるみで悪いと私は思っています。
事故欠勤とは水道局処務規程55条の「交通機関の事故等の不可抗力の原因により勤務できないときは、その旨を速やかに連絡」すれば遅延証明を根拠として、遅刻しても賃金カットされず、実質出勤扱いにする制度であり、それを違法行為であるストライキの防衛のために適用しているのは、職権を逸脱し、コンプライアンスに反しているし、就労実態もないのに賃金を受け取っている非組合員も腐りきっています。
不当な給与支出であり、都議に追及していただきたいと思います。
3 三公社五現業は18条解雇か服務規律違反として懲戒処分を行うのが国の基本方針
国の争議行為対応の方針は、 岸内閣昭和32年9月27日公共企業体等の職員の労働組合の争議行為についての閣議了解に示されているとおりです。公労法17条1項違反者は服務規律違反として免職その他の懲戒処分を免れない。組合が「合法的な実力行使」と称している勤務時間内職場集会、休暇闘争、遅刻戦術、早退戦術、定時出勤、超過勤務拒否、遵法闘争、担務変更拒否、滞留業務処理拒否等も、名目如何を問わず17条1項違反の争議行為であり、刑事上、民事上の免責を受けず、不当労働行為の救済を受けることはできず、公労法18条により解雇されることになるとしたうえで、「職員は‥‥法令及び業務上の諸規定に従うべきことはもちろん、上司の職務上の命令に従って誠実に職務を遂行する義務を負うものであるから以上あげたところに該当する行為は、一般に服務規律違反の行為ともなるもので、それが組合の指令において行われた場合であっても、同様である。従って、右の如き服務規律違反の行為をした職員は、各公社法、又は国家公務員法に定めるところにより、免職その他の懲戒処分を免れないことはいうまでもない。」とする[峯村光郎1971 144頁以下]。
争議行為実行者は、公社法や国家公務員法が法令遵守義務違反や、上司の職務上の命令に従う義務を服務規律違反と当たるので、公労法違反だけなく、公社法や国家公務員法の服務規律違反として懲戒処分ができるという理屈であるが、国の争議行為対応実務は神戸税関懲戒免職事件最三小判昭52.12.20民集31-7-1101と全逓東北地本懲戒免職事件.最三小判昭53.7.18民集32-5-1030により適法として是認された。
註)地公法の61条4号は近年削除して62条の2に移された
都はこの方針とは全く違う。大多数の組合員はストを指導しても懲戒処分されず、賃金カットされるだけで、当局はひたすら、組合活動で不利益賦課させないと言う組合の方針に従うので、違法行為やりたい放題。左翼にとってはホワイト企業といえる。
なお、地公労法12条(地方公共団体及び特定地方独立行政法人は、前条の規定に違反する行為をした職員を解雇することができる)。は11条1項違反者に任意解雇、公労法18条は17条1項違反者は原則解雇(前条の規定に違反する行為をした職員は、解雇されるものとする)とする文言であるが、政府の見解は「解雇されるのが建前であることを規定したものであるが、現実に解雇するかどうかは、公共企業体等が決定し得る」(昭34.7.8労働省法規課長内翰、東京都交通局労働部長宛)とされ、公労法18条と地公労法12条は同義とされている[峯村光郎1971]。
また地方公営企業においても昭和34年7月8日労働省労政局労働法規課長発.東京都交通局労働部長宛回答における労働省の見解は「一二条の規定による解雇をなしうることはもちろん、地公法第二十九条の規定により懲戒免職その他の懲戒処分をなしうるが、そのいずれかによるかは、当該職員について任命権を有するものが決定しうるものである。‥‥」とする。
参考までに企業局職員には適用されないが、地方公務員法37条1号違反の争議行為違反のつき政府側の見解としては自治省公務員一課長の菅野悠紀夫[『教育委員会月報』197年1号数失念]は「地方公務員法第三七条一項の規定は、職員の争議行為を禁止しているのであって、この規定の趣旨は、団体的に行われる争議行為を組成する個々の職員の行為を違法のものと評価して、これを禁じていると解せざるをえないからである。この場合において、争議行為が事実上集団的性格を有するとしても、その集団的な行為を組成する職員の行為が存在するのであるから、争議行為が集団的性格をもつということを理由に、個々の職員の行為について、法律の規定に基づいて懲戒責任を問うことを妨げるべき理由は全くない。」とする。
既に述べたとおり、国の方針は、昭和52年以降の判例で最高裁が追認しているが、東京都は方針が違う。と。国の省庁に準拠した方針にあらためるべきである。
既に述べたとおり違法争議行為の内部統制権を最高裁1判例と6つの高裁判例(国鉄6.郵政1)が否定する説示をしている。例えば国労東和歌山和歌山駅事件・.大阪高判昭50.9.19は「国労が企てた本件ストライキが違法なものであることは明らかであり、組合がストライキの決議をしたとしても、組合員に対してストライキへの参加を求めることは組合の統制権を理由としても違法であることに変りはなく、組合員は組合の要請に従ってストライキに参加すべき義務はなく、就労の意思をもつて出務している場合においては、その受忍義務のないことは一層明白であって、まして組合は、非組合員に対してストライキへの参加を強制すべき権能を有するものではない」と述べ、公労法違反の違法争議行為も、地公労法違反も同じことであり、地方公営企業においては、私企業のユニオンショップの組合とは違って、組合員も非組合員も就労の権利と義務があるというべきである。
私が一番怒り心頭にきていることは、都の管理職が組合のピケットを補強する役割を果たそうとし、ピケットラインを越えてはならず、服務上もっとも基本的な義務である出勤時限前にICカードリーダに出勤記録を電磁的に入力することと(昔の出勤簿の押印)を許さず、就労する権利の侵害に躍起になっていることである。
管理職はストに対抗して、業務を継続してはならないという組合の言いつけを守ることに責務になっている。
事故欠勤で給与は補償するので言うことをきけと、当時中野営業所長、○○○○は事故欠勤を強要しようとしましたが、欠務して勤務実態がなく実質ストに参加し賃金を受け取る詐欺的なことは、良心に誓ってできないです。これは詐欺的行為の強要です。
違法行為に実質参加させるためにインセンティブを与える都の方針が間違っています。
都水道局の管理職は、庁内管理規程で門扉を閉めた後の入庁を拒否できる(12条)こととなっているがセキュリティ破りをしてスト突入指令を組合員に伝達する地公労法11条1項後段違反行為とスト準備のため庁舎を深夜.未明に出入りする組合役員のスト待機は全面的に認め、非組合員は締め出すことが仕事となっていて、違法行為参加の受忍義務を強調しそれに従わない職員に敵意が向けられてくる。実際○○は、グループウェアで局長に○○の就労させない命令に抗議したところ、私を非常識、グループウェアの不正利用、「愉快犯」よばわりしたのです。ストに参加しないこと非違行為といわんばかりである。
その後、経理部管理課長、職員部監察指導課長、令和元年ストライキ時の労務課長と本庁要職に○○は出世しています。私を攻撃してきた管理職が出世する職場風土が不愉快だ。
しかしストライキの期間中であっても業務を停止しなければならないというものではなく、プロレイバー学説にもとづいてストライキは一糸乱れず非組合員もストライキ時に全員参加で防衛させなければならないという組合の主張に管理職が与する理由など全くない。
実際判例に現れている、昭和40年代の福岡県庁や北九州市役所のストでは、事前警告のうえ職務命令書を交付していることもあり、ストに参加せず就労する職員もけっこう多い。全逓組合員でも、国労やとくに動労組合員では、組合による職場離脱しスト集会に参加せよという指示に従わず、当局の業務命令に従う乗務員が少なくないことはこれまで述べてきたとおりである。
全水道東水労は11月初めと2月末恒例のスト権一票投票で。毎回92%以上という圧倒的多数でストを批准するのが通例であり、ストに賛成の職員が大多数であることを頻りに強調するが、多数決で就労の権利が奪われるものでないことは、国労広島地本組合費請求事件・最三小判昭50.11.28の説示「争議行為に対する直接の協力については、これを組合員に強制することはできないと解すべきである。禁止違反の争議行為の実行に対して刑罰や解雇等の不利益な法的効果が結びつけられている場合に、その不利益を受忍すべきことを強いるのが不当であることはいうまでもなく、また、右のような不利益を受ける可能性がない場合でも、法律は公共の利益のために争議行為を禁止しているのであるから、組合員が一市民として法律の尊重遵守の立場をとることは、是認されるべきであり、多数決によって違法行為の実行を強制されるべきいわれはない」とするとおりである。
非組合員の就労権の行政解釈は「労働組合の統制力は、原則として労働組合の組合員以外には及ばないから、‥‥正当な就労を妨げることはできない。なお、労働協約等において代替要員雇入禁止の条項が規定されていない限り使用者が争議中必要な業務維持のための代替要員を雇い入れ、その業務を続けることは、労働組合の争議行為に対する使用者の対抗手段であって、そのことが妥当かどうかについては状況によって異なるが、それ自体は違法とはいえない」(昭和29年11月6日労働省発労第41号各都道府県知事あて労働事務次官通牒。)である。
先述のとおり地方公営企業の場合は、非組合員であれ、組合員であれ、スト参加の勧誘.説得に応ずる義務もないし、就労する権利と義務があるというべきであるから、事故欠勤のような特殊な制度を適用すべきではない。
非組合員と統制権が及ばない組合員(脱退した組合員、争議に反対する第二組合員、組合執行部が争議中止を決定したが執行部に反対する争議続行派が就業派に対して行なうケース等)に対する物理力を行使して就業を阻止するピケットについて、最高裁は、特殊な事情や可罰的違法論の適用により無罪とした例外的二例を除きすべて有罪の判断を下しているので、当然就労権を主張できると結論する。以下はいずれも争議行為が合法である私企業等の判例である。
例えばホテル.ラクヨー事件最判昭32.4.25刑集11-4-1431(就労しようとする非組合員に体当たりするピケ)、羽幌炭礦鉄道事件最大判昭33.5.28刑集12-8-8-1694(争議続行決議に反対して脱退した組合員が結成した第二組合に加わった労働者+非組合員に対する実力ピケ)、進駐軍横浜事件最判昭33.6.23.刑集12-10-2250(非組合員+争議に加わらなかった組合員に対する実力ピケ)。東北電力大谷電所事件最判昭33.12.25刑集12-16-1255(臨時雇用の非組合員に対するピケ)、嘉穂砿業事件最判昭35.5.26刑集14-7-868(嘉穂労組執行部は上部団体の炭労の指導による争議の中止と炭労からの脱退も決定したが、上部団体支持の争議続行派が、就労派砿員+争議に加わってない職員に対してピケットを行った例)が挙げられる。
上記の判例は使用者が、ストライキ中であっても、非組合員、反対派ないし脱落組合員、第二組合員を使って操業する自由を是認するものでもある。
また、下級審判例においては、非組合員の就労権と組合員の争議権は対等であり、非組合員の就労権を明示するものがある。
例えば横浜第二港湾司令部駐留軍要員労組事件.東京高裁判昭33.3.31『別冊労働法律旬報』№204.1955であるが
「労働組合は、その所属構成員に対してのみ、労働力のコントロールを加えうるものであって、構成員以外にまでこれを強制しえないことは、労働法上の基本理論であるから労働組合が組合員の労働力を統制してストライキを継続することが、当然の権利行使であると同時に、非組合員が右ストライキに同調しないで就業することも、また当然の権利行使であり、右の争議権と就業権とは対等の立場に立ち、互いに並行する関係にあるものと解すべき‥‥非組合員らは、いずれも自己の自由意思によって‥‥労働組合に加入せず、原判示ストライキにも参加しなかったものである上に、就労しようとしたのは、ストライキに同調して就労しないでおれば、その間賃金による収入が中絶するばかりでなく、職場を馘首されるおそれがあったため、‥‥非組合員ら就労しようとしたことは、正当な権利の行使というべきであり、従って、かかる権利の行使に対しては、ストライキ参加者において、これを積極的に妨害することは許されないものといわなければならない。‥‥、組合の構成員以外の非組合員に対する関係においては、その就業を拒否する根拠がないものであり、特に、いわゆる「スト破り」の雇い入れ等のように、ストライキの効果を減殺することを目的としたものではなくて、真に生活のために就労しようとする非組合員に対しては、平和的で穏和な説得行為であるならば格別、右限度をこえてその就労を拒否することは許されないものと解すべき‥‥」と判示している
いずれにせよ私は、法令を遵守する趣旨でストには参加しませんから管理職から歓迎されなくても、服務規律の基本的義務と東京高裁が示した、出勤記録を就業時刻前に行い通常どおり就労する。
🔶英米におけるストに参加しないで就労する権利について(補遺)
ピケットに対する基本的な考え方は19世紀のアール卿やプラムウェル判事といった良識的な裁判官の認識が基本的に正しいと考える。つまり労働組合主義は個人の自由に反し、ピケッティング(監視)は恐喝の一形式という認識である。(A.V.ダイシー 清水金二郎訳『法律と世論』法律文化社1972年210 頁) アール卿は「労働者が団結し他の労働者をその労務から去らしめる場合は、たとえ平和的説得もしくは金銭の供与によってなされたとしても、そして何ら契約違反を生じせしめないとしても、使用者に対する害意をもってなされる限り犯罪である」(片岡曻『英国労働法理論史』有斐閣1952 198頁) と述べている。つまりピケッティングの外形的行為いかんにかかわらず相手方の取引行為や労働力処分を妨害するという害意に基づく共謀でなされている以上犯罪とされるべきなのである。
現行法制は、契約違反誘致はコモンロー上犯罪であるが起訴できないようになっているが、従って、1980年雇用法(Employment Act 1980)6人以下でのピースフルピケッティングを是認していること自体、最善のものとは考えてないが、サッチャー政権でのEmployment Act 1980の意義は大きい。
同法はピケット自身の就労場所またはその付近にピケッティングの対象を制限し、その行為規範(施行規則Code of Practice)において、ピケッティングの区域は、ピケット自身の通常使用出入り口付近に限定し、それ以外の出入り口でのピケッティングや事業所施設の無許可立入は禁止され、民事責任を負うと定め、さらに脅迫的侮辱的言動、暴力的行動、脅迫行為、交通妨害、凶器所持を伴うピケッティングは、刑事上の犯罪とされ、警察官はピケットの人数を制限できるとした。(家田愛子「ワッピング争議と法的諸問題の検討(1) 一九八六年タイムズ新聞社争議にもたらした,イギリス八〇年代改正労使関係法の効果の一考察」『名古屋大學法政論集』. v.168, 1997, 14 141頁)またピケットの人数については6人以下と明記し、制限されるものとしたが、決定的には、交通妨害を犯罪としたことである。我が国の労働組合法では暴力の行使を違法としているが、脅迫.妨害については言及がない。イギリスの1980年法の行為準則は、脅迫と妨害を違法とし、大量動員ピケッティングは警察で排除できる内容である点で、就労したい労働者に権利性が示されたこということである。
交通妨害を犯罪とし、行為規範(施行規則Code of Practice)において他人に干渉されることなく、合理的日常の事業を行う権利の保護。全ての者にピケットラインを越える権利を有すると記されていることで、個人の就労の権利を擁護する方針が明確に示したからである。(小島弘信「海外労働事情 イギリス 雇用法の成立とその周辺-二つの行為準則と労働界の反応を中心として」『日本労働協会雑誌』22巻11号1980.11)
実際、炭鉱ストでは、法の趣旨に沿ってサッチャー首相は1984年5月30日のバンバリ-で演説を行った。
「‥‥法律の順守を望み、威嚇には屈しません。ピケラインを突破して戦場に赴く人々の勇気には、心からの賛辞を贈ります。」(山崎勇治「サッチャー元首相の『回顧録』に見る炭鉱ストライキ(1984年-85年)」『商経論集』北九州市立大学第42巻2.3.4合併号(2007年3月)73~74頁)労働組合主義者からは「スト破り」と悪罵が投げつけられる、就労派組合員であるが、サッチャー首相は最大級の賛辞を贈ったのである。
このサッチャー演説はコレクティビズムの終焉を意味し、個人の自由と権利が尊重されるパラダイム転換と評価できる。
英国ではスト指令が制定法上、労組規約上、あるいはコモンロー上違法とされる場合にはそのストライキに参加したことを理由に制裁できないことは1971年労使関係法以来確立されていた法理であるが、サッチャー政権の1988年雇用法はストライキがあらゆる点で適法であっても、それへの参加、不参加は個人の自由な決定に委ねられるものとした。のみならず①ストライキ指令のみだけでなく、②ストライキの支援、支持行動の指示に従わないこと、③ストライキに反対の表明をしたこと、④ストライキに対する不支持を表明すること、⑤労組役員が労組規約に違反していると主張し続けること、⑥労働協約に違反したストライキであると主張すること、⑦執行部が法定の投票要件に従ってないと主張することなど19種類の行為を揚げて制裁理由としてはいけないこととした[渡辺章「イギリスの労働法制とその変遷(講苑)」『中央労働時報』804号 1990]。つまり、指令に反しストライキを途中でやめてスト脱落者を励まし支援しても組合の統制権により制裁の対象とならないというものである。
米国では全米製造業者協会、共和党、南部民主党、組合不在企業により推進され、トルーマン大統領の拒否権行使を覆して成立した1947年タフト.ハートレー法が、1935年ワグナー法の「団結する権利、労働団体を結成.加入.支援する権利、自ら選んだ代表者を通じて団体交渉を行う権利、および、団体交渉またはその他の相互扶助ないし相互保護のために、その他の団体行動を行う権利」に対し、「それらの行動のいずれかを、またはいずれも行わない権利を有する」(7条) と定め消極的団結権、団体行動を行わない権利を労働者に付与して、労働組合主義奨励ではなく、中立立法としたのである。
かつて米国はレイバーインジャンクションが多用された時代があった。財産権を無体のものに拡大し、財産権の回復不可能な侵害のために差止命令が下されることにより、労働組合の組織化と労働争議を効果的に抑止した。1917年のヒッチマン判決Hitchman Coal & Coke Co. v. Mitchell, 245 U.S. 229組合の勧誘行為の差止命令を認め、オルグ活動は労働者の「非組合員的地位」に対して有する経営者の財産権(炭坑を非組合員によって操業する権利)を侵害し、非組合員労働者の契約上の権利を侵害するとの判断を下した。
タフトコート1921年の労働争議差止命令を支持した判例、デュプレックス印刷機製造会社判決、アメリカ鉄鋼会社判決、ツルアックス対コリガン判決は反労働組合判決であり、クレイトン法6条、20条を骨抜きにしてピケッティングを規制し、労働争議差止命令を支持、営業行為を財産権として憲法上保護されることを明らかにした名判決である。
ところが1929年の大恐慌に端を発する著しい経済的混乱と社会不安は労働問題に新時代を画し、財産権侵害として司法の判断により禁止されるべきものであったのが、逆に特定の勢力を利する1932年ノリスラガーディア法(反インジャンクション法)のような階級立法を是認し、アメリカ社会左傾化の流れはこの時から始まった。1935年ワグナー法等のように産業平和のために労働組合活動を支援する国策に転換してしまったのである。ピースフルピケッティングは1940年のソーンヒル対アラバマ判決が合法的な業務を妨害し、干渉し、損害を与える目的で、当該業務場所をピケッティングすることを違法とした州法を言論の自由に反し違憲としたことにより、合法化したとされている。ピースフルピケッティングの合法化は比較的近年のことである。
アメリカ合衆国の「主権理論」(統治論)とは、公務員の使用者は主権者たる全人民であり、公務員の勤務条件の決定は人民を代表する立法機関によってなされるべきとするもので、従ってアメリカでは伝統的に勤務条件法定主義であった。
州や自治体のなかには公務員の団結権を認める立法を持つものもあったが、交渉の多くは書面交渉を伴わず、集団陳情の域にとどまっていた。
ところが1960年代AFL.CIO系を中心とする各種公務員組合による団交獲得 の運動が活発に展開され、この動きはウィスコンシン州の自治体雇用関係法の制定に開始したが、とくに1962年のケネディによる大統領命令10988号の制定(連邦被用者に一定の団交権を初めて保障)により、一部の州や自治体で団結権.団体交渉権(協議権)を保障する立法が相次いで制定されていくようになった。
1970年の郵便ストを契機としてニクソンが独立の公社の設立と完全な団体交渉制度保障を定めた郵便再組織法が制定された。カーター政権の1978連邦公務員改革では、団結権と団体交渉権を定めたが、ストライキの参加や主張は欠格事項に該当し解雇される。ただし団体交渉範囲がきわめて限定されており、給与は法定主義が維持されており、民間企業との均衡達成は大統領の手に委ねられている。団体交渉になりえない事項も多い。
州公務員については、反労働組合的気風の南部の各州のように勤務条件法定主義を墨守し団体交渉を制度化してない州も少なくない。ノースカロライナ、サウスカロライナ、ウェストバージニア、ルイジアナ、ミシシッピ、アーカンソー、コロラド州は全ての公務員がそうであり、消防士のみ団交立法を設けているのがジョージア、アラバマ、ユタ、ワイオミング州、消防士と警官のみ団交を認めるテキサス、ケンタッキー州、教員のみ団交を認めるノースダコタ、メリーランド州、教員と消防士のみ認めるアイダホ州、ネバダ州は州被用者のみ団交を認めてない(菅野和夫「公務員団体交渉の法律政策」アメリカ(一)」『法学協会雑誌』98巻1号 1981参照)。
なお、上記の州においても任意的で法的拘束力のない団体交渉を認めている州がありますが、ノースカロライナ州は徹底していて、州、自治体政府と組合の全ての協定は州の公の政策に反し無効であり違反者の処罰を州法で定めている。
もともと主権理論により公務員ストを主権者に対する反逆と位置づけていた米国との比較でいえば、我が国の公務員法制の争議行為禁止が格別遅れたものだというような認識は過ちである。
我が国では英米のように実定法上、ストに参加しない権利、消極的団結権、団体行動を行わない権利をが定められていないけれども、争議行為が禁止されている公務員については、非組合員はもちろん組合員であれ、スト参加の勧誘や説得を受忍する義務などないことは判例法理により明らかであり、組織の義務としてストライキを指導する組合役員が免責されることはない。
ストが決行された場合は非組合員はピケットラインを尊重するのが労働者のモラルという見解は、左翼のプロパガンダで、1960年代の労働運動の高揚期の古い価値観にすぎません。
サッチャーの新自由主義的改革では個人の選択の自由が強調された。
そもそもイギリスでは「積極的ストライキ権」がない。それは1906年労働争議法とそれを確認した1974年労働組合労使関係法による不法行為の免責(起訴されない)という「消極的権利」にすぎないわけである。コモンロー上ストライキは「拒絶的契約違反」とされ[家田愛子「ワッピング争議と法的諸問題の検討(2)完 : 一九八六年タイムズ新聞社争議にもたらした,イギリス八〇年代改正労使関係法の効果の一考察」Wapping Dispute and British Labor Laws in 1980's (2)名古屋大學法政論集 169]、雇用契約を終了させるという断絶理論が支配的であり、停止理論をとらない。したがってイギリス法上は、予告期間を遵守せずにストライキに参加することが重大な契約違反であり、即時解雇事由になる[山田省三「イギリスにおける一九八二年雇用法の成立」『法学新報』90巻2号]。つまりスト参加は「自己解雇」である。だからイギリスでは争議中にストライキ参加者が解雇されることは決して珍しいことではなく、スト参加はリスクがある。争議収拾後職場に復帰することは正確に言うと再雇用である。
1986年のワッピング争議(タイムズ、サンを発行する新聞社)では印刷工の労働組合を排除する目的でストライキ中の組合員の6000人を解雇。1982年雇用法は、労働党政権の1978年雇用保護(統合)法の次の規定「使用者はストライキ参加者の全員を仕事に戻っている労働者とストを継続している者の全員を解雇できるが、選択的解雇は労働審判所の管轄権とする」を廃止し、ストライキ中の選択的解雇をも可能にしていた
家田氏が重要な指摘をしている「マスピケッティングやデモ隊の群衆の罵倒を振り切ってピケラインを越える労働者が多数いたことも見逃せない。ストライキの代替要員として雇い入れたにしろ、組合のストライキ決定に反して戦列から外れたにせよ、彼らにとっては伝統的な労働組合主義は通用しないものであった。そこにはサッチャー政権下で、「個人の自由」、「選択の自由」を全面に押し出してなされた法改革の必然性がうかがえる」[前掲2 181頁]
1986年には「ピケットラインの尊重」のような価値観は消えうせているといってよいだろう。昔は宿直時に酒を飲んだものだなどなつかしむ、○○○○労務課長のような組合の既得権を尊重する組合員あがりの管理職に、ピケットラインの尊重を説教されるいわれなど全くない。
東京都はピケットラインの尊重政策で、非組合員の就労の権利を奪うのをやめろ。
もとより我国では、地公労法が争議行為と「そそのかし」「あおり」が禁止されているから、ピースフルピケッイングであっても、違法行為の慫慂であるから地公労法11条1項後段の違法行為であり、庁舎管理規程の通行妨害としても取り締まることはできるし、名古屋中郵判決の判断枠組みに従えば、争議行為もしくはそれに付随する行為として、逮捕行為、強制連行、拉致、職場占拠、業務用機器とくに機密性のある機器の隠匿し組合の支配下におくこと、物理的に就労阻止、業務遂行阻止は業務妨害罪、スト指令伝達、スト準備等の庁舎立ち入りと部外者のオルグ、ピケは建造物侵入罪、暴力をふるった場合は公務執行妨害罪が成立する。
管理意思を示し、犯罪を成立させるよう方針を転換すべきことを強く訴えたい。
二 「服務規律確保の周知(服務の示達)」の訓示は廃止して「警告及び職務命令書」に切りかえるべき
東京都は、組合側の指図通り、最高裁判例が明示的に否認したプロレイバー学説に依拠した、職務命令をやらない等の脱法的労務管理をしており、実質、争議行為を助長、協力していることは正常な業務運営ではなく、組合に業務管理されていること自体が地公労法11条1項に反しています。
国の各省庁や三公社五現業、まともな自治体なら、懲戒処分の前提として、違法行為に対して厳正に対処する旨の事前警告と、ストライキ当日の集会に対して、中止、職場復帰命令、就労命令、監視や現認検書の上申は徹底して行っているが、東京都は全く違います。
年間最低3回以上あるストライキを配置した闘争期間の水道局のストライキ対策はきわめて簡素で、対策本部は設置されず、2通の文書を流して終わりである。
事前警告は、繰り返しになりますが、事実上局長名義で組合執行委員長宛だけです。これは本部中闘に限定して責任をとらせる前提になるものです。地公労法違反と書かれているから意味のある警告であり、本部中闘は処分する。
各事業所においては職員部監察指導課の指示では下部組織(支部.分会)役員にストの中止の申し入れをすることになっているが、書面の手交を義務付けておらず、文言も決まっていない、実際に見たことがないので口頭で行われているかも不明。不透明なのである。
職員一般には「警告」ではなく、違法行為とかストに参加した場合不利益賦課の措置をとか、権限を留保するという文言はタブーで、あたりさわりない訓示をマイク放送、口頭で行う。最近の例ではグループウェアで通知が多くなっている。
これが「服務の示達」という慣行ですが、後段で実例を示しますが、事業所勤務の組合役員以下は懲戒処分の対象にしないことを示す示唆する文書なので、「警告」ではない。
当該組織行動が違法であり、実行したときは違反者に対し懲戒等を辞さない等の警告書や職務命令書を交付するのが普通の対応だが、東京都は故意に地方公務員法29条1項、32条を適条とした懲戒処分に結びつかない文言の訓示を行っている。インチキ臭いこと、少なくとも片八百長と言ってもよいでしょう。手加減していることは見え透いていますからプレス発表は以下のとおり。
令和5年12月19日付【東京都水道局プレス発表】
12月20日(金)の労働組合ストライキについて
1 組合の行動態様
(略)
2 当局の措置
1)組合に対する警告
2)職員に対する服務規律確保の周知
3)管理職員による事務事業の支障の防止
職員一般に「警告」していないことは上記のプレス発表で、組合に対する警告と職員とでは別の対応としていると公表しているとおりです。国の省庁の警告は全職員対象なので東京都は違うことをやっている。
プレス発表の「服務規律確保の周知」とは外部の人にはわかりにくいが、東水労が争議行為、3割動員決起集会やストを配置すると、職員部監察指導課で、局長名義で各部(所)長あての「職員の服務について」いう文書Aと、職員部監察指導課長から庶務担当課長あての「服務の示達等について」という文書Bの2通が流され、この文書に具体的な争議行為対応の指示があり、各課長も、概ねこれに沿った行動をとり、それ以上のことはやらない。これは私が知る限り、平成10年代以降は同じである。
重要なことは、これらの通知文書に同盟罷業が地公労法11条1項違反の違法行為ということは一言も言わないのである。
「服務規律確保の周知」「服務の示達」とは各部(所)長といった幹部あてに、服務規律を確保せよという局長名は形式的な文書が毎回発出される。このコピーは管理職が受け取っていることを指します。
「示達」とは官庁用語で、上級部署から下級部署に指図するもので、例えば予算要求後の査定が終わると「予算の示達」があります。各予算科目につき範囲で執行してくださいという趣旨のものです。
「服務の示達」は各職員に直接「警告」していることを意味しないのでプレス発表は虚偽ではない。
実効ある服務規律の確保する措置は行われないが、訓示があるので、局長が服務規律の確保を管理職に求めているということはなんとなく知らされているので、「服務規律確保の周知」は虚偽ではないとはいえる。正直に書かれてます。
北九州市などは事前に職務命令書を交付していますが、東京都はストライキ当日の就労命令もいっさいしません。
また、一般論としてに当局側は争議行為に際して、対策本部を設け、非組合員を動員して写真撮影、実況見分等により参加者の状況を記録し、現認検書を作成し、所属長が上申のうえ、処分権者が現認検書にもとづき一方的に行う[山口浩一郎1971]。
東京都は初めから事業所勤務の組合員は懲戒処分しない方針なのでやらない。職員一般に実効のある警告や職務命令はなされておらず、ごまかしの行為がなされている。
国の省庁やまともな自治体は、組合幹部に対しても、職員一般に対しても同盟罷業は違法行為なのでストに参加した場合は関係法令に照らして措置をとる等の「警告」をする。しかし東京都では職員一般は、初めから懲戒処分の対象としない方針のために、地方公務員法29条1項、32条(法令等遵守義務.上司の職務上の命令に従う義務)の適条を避けるためにあえて「警告」をしていないという非常に怪しい慣行なのである。
文書Aは、形式的な指示で、昭和30年12月11日の文書は以下のとおり
多摩水道改革推進部長 各部(所)長殿
職員の服務について
「全水道東京水道労働組合は、「2018秋季年末闘争勝利」等と称し、12月17日(月)午後3時15分から都庁ふれあいモールで3割動員決起集会を12月20日(木)午前8時30分から2時間のストライキを計画している模様である。
また、東京水道労働組合も(略)‥‥
集会等の行動に参加するために、多数の職員が職場を離れ、かつ、権限ある上司の承認なく勤務しない等の行為に及ぶことは、当局業務の正常な運営に支障を生じさせるばかりでなく、都民の信頼に背くことは明らかであり、これを放置することはできない。
よって貴職におかれては、所属職員に対し、全体の奉仕者として公共の利益のために全力を挙げて職務を遂行することを命ずるとともに、管理体制の厳正を期する等、服務規律の確保について特段の配慮をされたい。」
終りの方の「全体の奉仕者として‥‥」云々は、地方公務員法30条の引用で、平時の服務規律の基本原則を言っているにすぎない。ストライキ対応で普通使わない。
違法行為の抑止のため警告せよとは言ってない、「職務規律の確保」をせよというのは一般論にすぎない。
「業務の正常な運営に支障を生じさせる」とは言っている。それは地公労法11条1項違反と推測できる文章であるが、違法行為とは一言も言っていないのである。地方公務員29条1項32条の適条で懲戒責任は問わない方針を暗に示唆している。それを示唆することは違法行為を助長することだから、職員部監察指導課起案の文書であっても、局長名の文書である以上、違法行為の助長は組織ぐるみの合意事項とみなしてよい。
「放置することはできない」はストを決行すれば従来どおり、本部中闘を停職としてお茶を濁す意味と受け取ることができるので強い言葉と受け取れないのである。
文書Bに具体的指示がある。「服務の示達」を3割動員の前に行うことと、スト前日に「職員の皆さんへ」を掲示することになっており、「服務の示達」とは、文言は指定しておらず、現場の実態に応じた対応ができるもので、概ねA文書に書かれている文言か、後述のストの前日に掲示するよう指示されている「職員の皆さんへ」文書をなぞったあたりさわりのない形式的文言を読み上げるのが通例である。
通称「服務の示達」というマイク放送、もしく口頭、グループウェア内のメールで行う管理職も近年では少なくないが、管理職による訓示を3割動員の前に行うのがルーチンとなっている。
「職員の皆さんへ」は令和4年のケースでは杉並営業所では貼り出されない。庶務課長から指示がないからということで実際にはなおざりとされている。
過去のグループウェアメールでの「服務の示達」の一例を引用する。内容はA文書をなぞったものである。
2015/12/01付
職員の服務について
世田谷営業所のみなさま
全水道東京水道労働組合は、「2015年春闘勝利」等と称し、
3月10日(木)午後3時30分から都庁ふれあいモールで3割動員決起集会を、
3月16日(水)午前8時30分から1時間のストライキをそれぞれ計画している模様です ストライキ等の行動に参加するために、多数の職員が職場を離れ、かつ権限ある上司の承認なく勤務しない等の行為に及ぶことは、当局業務の正常な運営に支障を生じさせるばかりでなく、都民の信頼に背く結果となることは明らかであり、これを放置することはできません。よって職員のみなさんは.全休の奉仕者として公共の利益のために全力を挙げて職務を遂行していただきますようお願いします
○○(当時世田谷営業所長)
違法行為とはいってないので、地方公務員法29条1項1号、32条の適条はしませんとあえて示唆していることはA文書と同じことで事実上、違法行為を助長する内容である。
しかし違法行為の助長は現場の管理職だけでなく、違法行為として対応せよと言っていない局長以下の指図にもとづくものと言ってよいのである。
ストの前日まで貼りだすよう指示されているが、形骸化し管理職も熱心さは全くない貼りださない事業所もある。。貼りだしても「警告」でないので実質意味がない。
職員の皆さんへ(平成20年頃の例-現在もフォーマットは同じと考えられる)一例)
東京都水道局長
皆さんは、都民全体の奉仕者として、公共の利益のために全力を挙げて職務を行う立場にあります。とりわけ、今日都民が都政によせる関心と期待にこたえるため、皆さん一人ひとりの自覚と職務への精励が従来にも増して必要な時期にあります。
とりわけ、今日都民が都政によせる関心と期待はさらに高まりつつあり、この期待に応えるため、皆さん一人ひとりの自覚と職務への精励が従来にも増して必要な時期にあります。
ところで、全水道東京水道労働組合は、明日3月18日に始業時から2時間のストライキを予定している模様です。
皆さんが一斉に職場を離れることは、都民の生活に大きな影響を与えるばかりでなく、都政に対する信頼を都政に対する信頼を裏切ることになります。
皆さんが、公務員の本分を十分にわきまえ、都民の批判を招くことのないように良識のある行動をとられることを求めます。
能書きだけ長くて肝心なことが書かれてない。同盟罷業が違法行為とは一言も言っていない。ゆえにごまかしである。これでは地方公務員法29条1項1号と、32条の適条により懲戒責任は問いませんよと示唆しているのも同じで、短時間のストで、管理職は締め出さないし、良識のある行動だと反論の余地をあたえている。
それでも、上記の文面は同盟罷業が違法であることを示唆している文章と好意的に理解すると痛い目にあうことになっています。実際には管理職はストに参加したくない職員に敵対的で、就労を申し出ても、管理職はスト破りをゆるさず、ピケットラインを尊重し、出勤時限前に登庁し、カードリーダに電磁的に出勤記録を入力する服務上の基本的義務行為をしないよう組合と同じことを言って、非組合員を締め出し、事故欠勤を強要しようとするし、それは組織的方針なので、この文書が「みせかけ」にすぎないことは明白なのである。「服務の示達」が、「警告」にあたらないごまかし「偽装」の訓示と評価できるので是正されなければならない。
国の省庁の事前警告では、同盟罷業は違法行為なので厳正に対処するとか必要な措置をとらざるをえないという文言が通例であり、国家公務員法82条1項(地公法29条1項と同じ)、同98条1項(地公法32条と同じ)の適条により懲戒処分の前提として欠かせないからである。
比較的最近の国家公務員の争議行為としては、全日本国立医療労組事件.東京高判平12.11.29労判840があるが、平成3年11月13日、全国の国立病院等の支部において、11年ぶりに組合員約2万5,000人が、勤務時間に約29分以内食い込む方針で職場大会を開催したケースは以下のとおりである。
国立西多賀病院(仙台市)で、「同病院長名義の西多賀支部支部長あての『貴支部は11月13日に勤務時間内職場大会を計画している模様であるが、国家公務員はいかなる場合においても争議行為を行うことは許されず、このような違法行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし若しくはあおってはならないこととされている。当局は、貴支部が違法な争議行為を行った場合には、厳正な措置をとらざるを得ないので、違法行為が行われないよう貴支部の自重を強く要望する。」旨の警告書を用意して、庶務課長及び会計課長両名が、同月8日、西多賀支部副支部長に同警告書を交付しようとしたが、同人は右警告書の受領を拒否した。
東京都水道局では、各事業場の支部分会組合役員に対してストの中止申し入れをすることはB文書いで支持されているが、見たことがないし、文面も決められておらず、現場の自由裁量なので、国のようにきちっと警告はしていないと考えてよい。
また西多賀病院は、12日、同病院長名義の職員あての「全医労西多賀支部の時間内職場大会について」と題する書面において、「伝えられるところによれば、全医労西多賀支部は来る11月13日早朝時間内職場大会を計画している模様であります。すでに承知のとおり、勤務時間内職場大会は国家公務員法で禁止された争議行為でありますから、このような違法行為には、絶対に参加しないようにして下さい。もしこれに参加した場合には、関係法令に照らし、必要な措置をとらざるをえないので、皆さんの良識ある行動を望んでやみません。」と記載し、この書面を、西多賀病院内の四か所の掲示板に掲出して、職員に対し、違法な時間内職場大会への参加を辞めるよう警告を発した。
厚生省では全職員に違法行為だから必要な措置をとると警告しますが、東京都の「服務の示達」ではその文言はなく、は例えていうなら「王手をかけない詰将棋」見え透いた「片八百長」といえるだろう。「無気力相撲」と言ってもいい。やる気があれば違法行為には必要な措置をとると言うはずで、それは口が裂けても言わないのだから、片八百長そのものである。
事実上地方公務員法29条1項1号2号3号、32条適条はさせないという、組合側の管理意思にしたがったものであり、むしろ各事業所勤務の組合員個人の懲戒責任を問わないことを暗号のように示し、躊躇なしに争議行為に参加できるようにするためのうさん臭い慣行である。
実際、組合員はマイク放送の際、せせら笑っており、偽装、警告としては贋物であることは知られているのである。
(五) 東京都の「服務の示達」で「違法行為」とは絶対言わない理由
職員一般向けの「服務の示達」の慣行や組合の機関責任だけを問うのは、東京都水道局だけでなく、確認していませんが知事部局も同じだと思います。これはオール都庁の問題になると思います。
同盟罷業が地公労法11条1項前段違反であり、それを「そそのかし」「あおる」行為も同条項後段違反だが、「服務の示達」の実施としての訓示、あるは「職員のみなさまへ」の掲示では、同盟罷業が違法行為と絶対に言いません。
その理由はこれまで組合側の次の見解を東京都が受け入れているためだと推測しています。
「争議行為は労働者の団結体である労働組合自体の行為であり、しかも争議行為は多数組合員の集団的、共同的な活動であることを本質とする行為であるから、違法な争議行為が行なわれた場合にも、その責任は団体である労働組合が負担すべきであって、争議行為を個々の参加者の行為に分解して、個別的労働関係の場において、個々の参加者の責任を追求することは許されない‥争議行為は労働者が企業秩序の拘束から集団的に離脱し、使用者の労務指揮権を排除することを目的とする行為であるから‥‥個々の労働者の行為に対し、懲戒をすることを許されない」
○都城郵便局懲戒処分取消請求事件東京地判昭46.11.12労民22-6-1030における全逓の主張で、同判決は懲戒処分が取り消され、全逓の勝利となった下級審判例ですが、同様の見解を全水道東水労の分会書記長が言っていたのを聴いており当時から官公労は定番でなされていた主張であるからです。
この趣旨に大筋で沿うかたちで、争議行為の違法行為責任は組合だけが負い、個々の参加者の責任は問うことは許されないのだから、争議行為が違法であっても職員一般に対しては違法行為として警告する必要はないということなります。
ただし都側のメンツもあるため、組合中央執行委員長に対しては、違法行為である旨警告し、本部中闘の機関責任を問うということで懲戒処分するが、職員一般に対しては、組合の言い分通りとするということです。組合と職員一般は別々の対応にするというやり方です。
都城郵便局判決は、中郵判決や都教組判決が維持されていた時代の判例で、違法性の弱い争議行為は、公務員法制で禁止される争議行為に当たらないとした神戸税関事件の第一審判決神戸地裁昭和44.9.24等の懲戒処分を取消した判決が相次いだ時期でもありますが、昭和48年以降累次の最高裁判例により、違法性の強い争議行為でなければ争議行為は禁止されないと言う見解は否定され、組合側の違法行為の責任は組合だけが負い、ストに参加した個々の組合員の懲戒処分は許されないという見解は、再三のべてきたように、神戸税関事件.最三小判52.12.20ととりわけ全逓東北地本懲戒免職事件.最三小判昭53.7.18民集32-5-1030「労働者の争議行為は集団的行動であるが、その集団性のゆえに、参加者個人の行為としての面が当然に失われるものではない以上、違法な争議行為に参加して服務上の規律に違反した者が懲戒責任を免れえないことも、多言を要しない」という判示により、最高裁が明示的に否定しているので、35年前に決着がついている問題である。
昭和40年代の雰囲気のある労務管理をいまだに続けている東京都は全く時代錯誤だといわなければならない。
職員一般に違法行為と警告しない東京都の方針は争議行為を違法行為と職員に自覚させないことになり、違法行為を増長させる要因になっているので、シットダウンストライキのような物理的業務遂行妨害も業務用機器の隠匿もなんでもありということになってしまっており、何でも許される状況になっていしまっている。この点は都議会議員に是非質問し是正を勧告してもらいたい。
そこで私の提案は、「服務の示達」と、現行の「職員の皆様へ」の掲示をやめて、新しい警告書兼職務命令書の交付に切り換える。マイク放送と掲示のほか、文書で手交を義務づける。
ペーパーレスが至上命令なので避けたいというかもしれないが、最低限組合役員には手交する。職務命令書を突き返したり、一括返還を指図したりした場合は非違行為として記録します。
東京都水道局職員に対する警告兼就業命令書(案)
東京都水道局長 〇〇〇〇
所属長 〇〇〇〇
全水道東京水道労働組合は、〇月〇日勤務時間職場離脱3割動員集会、〇月〇日に8時30分より2時間のストライキ、また自治労連東水労は1時間のストライキを予定していますが、上記の行動は、「職員及び組合は、地方公営企業等に対して同盟罷業、怠業その他の業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。また、職員並びに組合の組合員及び役員は、このような禁止された行為を共謀し、唆し、又はあおってはならない」と定める地方公営企業等の労働関係に関する法律11条1項に違反し、庁内管理規程に違反する行為でもあります(この文言に対応して庁舎管理規程に無許可演説.集会の禁止の改正要)。
争議行為は集団的組織的行動でありますが、その集団性のゆえに、参加者個人の行為としての面が当然に失われるものでなく、違法な争議行為に参加して服務上の規律に違反した者は懲戒責任を免れません(全逓東北地本事件.最三小判昭53.7.18民集32-5-1030)。従ってストライキ実行に指導的役割を果たしたり、単純に参加した場合においても関係法令に照らし必要な措置をとらざるをえません。
労働組合は統制権の行使を理由として、かかる違法な争議行為に参加することを強制することは許されず、組合員は上記組合行動の指令に服従すべき義務はなく、これに参加を促がす勧誘、説得を受忍すべき義務はありません(国労広島地本組合費請求事件.最三小判昭50.11.28民集29-10-1634、全逓横浜中郵事件差戻後控訴審.東京高判昭47.10.20判時689、動労糸崎駅事件控訴審 .広島高判昭48.8.30判タ300)。
従って、職員各位は出勤時限前にICカードリーダの所定操作によって出勤記録を自ら入力し、定められた時刻より職務を遂行するとともに、当該組合行動の時間に職務放棄しないことを命令する。
ICカードリーダの出勤記録を自ら入力することは,「勤務時間等規程」、「処務規程」、「事務処理要領」などの規程上、職員の基本的な服務上の義務でありますので妨害は容認しません。
また争議行為に際して、スト参加の慫慂、庁舎構内での集会、組合旗、横断幕、立て看板等工作物の設置及無許可で旗・幟・プラカード・たすき・ゼッケン・はちまき、拡声器等を所持又は着用したままの無断立ち入り、ビラ貼り、ビラ配りを禁止します。
地方公営企業等の労働関係に関する法律11条1項違反の行為については、当局には地方公務員法第29条1項1号、2号、3号、第32条、第33条、第35条の適条により、懲戒処分等に付す権限、もしくは地公労法12条によって解雇する権限があることについて注意を喚起します。
また当該争議行為は違法であり、労組法1条2項は適用されないので、争議行為に際してあるいは付随して積極的な業務遂行妨害、違法行為目的による犯罪構成要件該当行為がなされる場合には、違法性が強く推定され、厳正に対処せざるをえないので注意を喚起します。
上記はくどいかもしれないが、東京都水道局職員は組合に洗脳されてしまい、違法行為を実行しても責任は問われないと認識しており、意識改革が必要です。
ストに参加した組合員は賃金カットされますが、賃金カットされず事故欠勤の非組合員も含めた数がスト参加者ということで、たぶんほとんどすべての職員と予測します。しかしこれも異常なことで、よその職務命令している官公庁では、ストに参加しない職員も少なからずいます。
例えば北九州市である。昭和42年に谷伍平市長が、争議行為には厳正に対処する旨を公約して当選したこともあり。懲戒処分も免職や停職一月以上が少なくなく量定は厳しい心証があるが、昭和44年11.13の1時間半のストの参加率は、門司区880名中330名(38%)、小倉区1760名中500名(28%)、八幡区1710名中340名(20%)、戸畑区2180名中440名(20%)(北九州市職員組合事件.福岡地判.56.8.24労民32-3-513)にとどまっています。ストライキの取り締まりをやっている効果とも考えられ、この点、職員一般に、警告も就業命令も、懲戒処分もしない東京都は、違法行為を助長していることは疑う余地がなく、従来通りの組合の意向に従いストライキ協力を続けたいのなら、コンプライアンス経営宣言を撤回するよう公営企業管理者に迫っていただきたいと思います。
私の警告書案を採用すれば東京都の信用を回復ができます。突き返されたり、抗議で職場が荒れるからできないというかもしれないが特別査察チームを創設して、非組合員の動員などして対策本部を立ち上げて対策すればよいことで、収拾がつかなくなるので馴れ合いの方が無難といって当局が逃げようとするなら、都議会議員は正常な業務運営の維持が管理職員の債務の本旨だと喝を入れてください。
もっとも管理職は組合役員に普段から平身低頭の人も少なくないから、職務命令になれてないので、組合の抗議活動で殴られたくない言う人がいると思う。正常な業務運営維持のため債務の本旨を履行するのは当然だが、ある程度訓練期間をとり、荒れる職場対策としてチームの設置等を準備万端のうえ、実施時期を猶予延期することにやぶさかではない。
三 三六協定一方的破棄闘争を適法と認め、組合のいいなりになって労務指揮権を放棄している在り方の是正
労働基準法36条の三六協定が締結されている場合、労働者は定めるところに従い、時間外労働義務があるということは、日立武蔵工場事件・最一小平3.11.28(三六協定が締結されている状況の残業拒否等を理由とする懲戒解雇を是認)で確定した判例となっている
問題は、三六協定の一方的破棄で締結されていない状況の法的評価である。
労働基準法は、原則として一週間について40時間、一日について8時間を超えて労働させてはならないとし(32条)、この法定労働時間を超えて適法に労働させるには、事業主が、事業場ごとに、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合、労働組合がない場合は従業員の過半数代表者と書面による協定を所轄労働基準監督署長に届け出た場合(36条)に、その効果を発生するとされ、これは使用者を規制の対象とする強行規定で、相手方労働者の同意.承諾があっても違反が許容されないとされており、悪質な場合は罰金が科される可能性がある。
地方公営企業は労働基準法が全面適用される。
但し「災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合」(33条1項)と、公務のために臨時の必要がある場合と、第一項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第一に掲げる事業を除く。)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる(33条3項)という例外規定があるが、「公務のために」以下例外規定は知事部局で適用されるが、水道局は適用されないので私企業と同様である。
全水道東水労と水道局で時間外労働に関する協定(三六協定)は、1年おきに更新され、私は平成19年まで水道特別作業隊で庶務係に勤務し、年度末の3月に新宿労基署に届け出たことがあるが、事業所ごとに締結するのでなく、組合中央と当局が協定したものをコピーするだけである。
問題は現在の協約では第10条で「この協約は、あらかじめ乙が指定する日については、保安のために必要な要員に限定して適用する」とあり、保安要員を除いて、組合が一方的に破棄することができるものとしていること(保安要員配置は、労働関係調整法36条「工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない」との趣旨と考えられる)。
月日を指定して、三六協定を破棄することが勝手にできる規定があり、これにもとづいて三六協定破棄闘争と称する、超勤拒否闘争を行う。
一方的に協定を破棄するのは信義則に反し、異常なことであるが、それを当局は許容している。この条項の設けられた経緯は不明だが、三六協定を事業所ごとに現場締結させると、国鉄のようにかえって混乱し、組合中央でコントロールしてもらうほうが、当局としては悪くないという判断なのかもしれないが、問題があるとはいえる。
これは悪質な職制麻痺闘争で、毎年、特に大きな闘争がないかぎり、ストライキ配置日前に最低でも年間6~7日、当局との交渉が妥結しストが回避された時点で三六協定は再締結される。
毎年恒常的に行われており、令和5年は11月15日、12月19~22日、1月に22日が営業所関係支部のみ、23日が水道局全支部、3月11.12日と9日間実施された。
近年は年間10日未満程度に留まるので抑制的とはいえるが、平成16年では業務手当完全防衛闘争という大きな闘争では、10月13日(水)から3時間ストライキを配置した10月22日(金)に10日連続という、一時間ストライキよりも影響の大きい、事実上の争議行為を行っている。
当時私は、水道特別作業隊という保安要員の職場にいたので、この闘争には巻き込まれていないが、この間の水道管の敷設替え、分岐、その他の夜間工事が中止されたとすると業務にかなり影響があったと考えられるのである。
都民と首都中枢のライフラインを預かる企業としては組合の意向次第で時間外労働の業務命令が麻痺してしまう在り方は問題がある。
通常はほぼ時期が決まっており、長くても3日連続程度である。スケジュール闘争の時期には夜間作業を予定しない慣例となっているが、私が平成に平成20年に勤務していた水道緊急隊では初年度だったので、担当者が破棄闘争時に夜間作業を予定し、慌てて共同で作業する水道業者にキャンセルしていたのを記憶しているか、突然のキャンセルは業者にも迷惑がかかっているといえるだろう。
三六協定破棄闘争から除外される保安要員とは、水供給にかかわる浄水場や水運用センター等であるが、平成19年までの水道特別作業隊は全職場だったが、平成20年度の水道緊急隊は工務係が保安要員から外された。
当局は保安要員を置いているから問題ないと言うだろうが、それ自体が「平常」ではない。正常な業務運営を阻害しているといえるのである。
しかし三六協定拒否闘争の狙いは、業務を遅滞させることや、管理職に仕事をおしつけるいやがらせだけではなく、ストライキの前日は必ず、未締結の状態にしているので、職制に業務命令をさせない口実をつくること。全員参加のストとして成功させるためストライキ実行を有利に進めることが最大の目的といえる。
実際私は平成初期に江東営業所のスト決行時に、組合活動家から八時半以前は、庁舎内に立ち入るな、庁舎外に出ろと恫喝された。職制に時間外労働を業務命令の権限が消滅しているので業務命令できないからだと言っていた。就労すると管理職が刑罰に処されやばいことになると脅してきた。この見解は多くの管理職が同意しており、非組合員は、組合役員と管理職の双方から庁舎への入所は認めない。出勤簿、現在はICカードリーダに電磁的な出勤記録の入力だが、してはならないとの指図を受けることになるのである。
組合に違法争議行為の統制権はないのに、ユニオンショップの私企業のように全員参加の同盟罷業にこだわっており出勤記録は絶対させない構えなのである。
私は組合と管理職共謀による非組合員の締め出し、ロックアウト、出勤停止指示は違法と考えるが、非組合員を締め出してむりやり全員参加でストを成功させる。これが三六協定破棄闘争の最大の目的なのだ。
管理職は、労基法違反になるので、ロックアウトするという言い分になるだろうが、しかし三六協定未締結により職制の労務指揮権が消滅するという見解は間違いであるということを次節以下述べたい。
そもそも三六協定のように、近代市民法の契約の相対効に反する異様な制度であり、世界的にも類例はない。労働基準法の母法であるアメリカの1938年公正労働基準法は、長時間労働抑止が立法目的ではない。30年代の大恐慌を背景として追加的な賃金の支払を避けるために雇用を拡大することに向けて財務上の圧力が加えることにより、提供可能な仕事を分配するのに有効な効果をもたらすことが期待された立法である。つまりワークシエアリング、失業者救済、雇用創出が目的だった。非常時といえる大恐慌時代の産物で恒久的制度としては疑問なのである。又、米国では過半数組合や過半数代表との協定の義務付けはなく(それをやると違憲になる)、たんに超過労働時間の割増賃金支払いの義務があるだけである。私は新自由主義を支持するので労働基準法はオーバーホールが必要だとおもっていたが、安倍政権の政策はホワイトカラーエグゼンプションではなく、真反対に労働時間規制強化という左傾化した政策が実施されことに不満が強くある。それは一般論であり、主題からそれるから、ここまでとするが、三六協定が官公労の闘争に利用されてきたことも大きな問題だったのである。
全水道東水労の三六協定破棄闘争は毎年恒常的になされ、当局が適法と容認していることからスト前段階の戦術として重要な位置付けとなっている。
当局は、三六協定未締結時は保安要員と事前協議で組合と合意した業務(私が知る範囲では平成19年以前の水道特別作業隊の定例の隊長会議)以外は超過勤務命令をするなと公式の文書を流しているが、この運用は妥当かという問題である。
水道局の三六協定闘争時には組合役員は大声で定時退庁を促し、管理職も呼応して退庁を促す。この闘争の目的は、ストライキ前段の闘争として超過勤務拒否による怠業だけでなく、管理職の時間外の労務指揮命令権を消滅させ職制の機能を麻痺(あくまで組合側の解釈だが)させることにある。
ストライキ予定前日には必ず、三六協定を破棄する。これは、セキュリティ破りのスト待機、ストの準備行為やビケッティングの制止、中止命令をさせない、非組合員を就業させないため、職制に業務命令させない口実に利用するといういやらしい目的がある。
職制麻痺とは管理職に業務命令しないことこそコンプライアンスという立場に追い込むことであり、それが最大の目的なのである。
しかし、労働基準法32条に違反する1日8時間以上の勤務であっても、そのために職務の執行が具体的権限を欠いて違法となるものではなく、刑法234条によって保護される業務に該当することは、春闘仙台駅(仙台鉄道管理局)事件・最二小判昭48.5.25刑集27-5-1115に理論的説示があるほか、マスピケ事犯の動労糸崎駅事件・広島高判昭和48.8.30判タ300(上告審.最一小決昭50.4.1刑事裁判資料230棄却)と小包袋運搬の業務阻害行為である第二名古屋中郵事件最二小判昭53.3.3民集32-2-97が三六協定未締結の状況で業務命令がなされた事案である。一審において管理者側の行為は、違法な業務を強いるものであって、刑法234条の保護する業務に該当しないといいう組合側の主張が認められたが、糸崎駅事件控訴審は久留米事件方式、第二名古屋中郵事件上告審は名古屋中郵事件方式の「法秩序の全体的見地から」一刀両断に業務妨害罪の成立を認めていることから、組合の主張のように一方的協定破棄によって、時間外の職制の労務指揮権が消滅し組合が職場を支配できるというものではないといえる。
国労や全逓は戦後早い時期から、三六協定未締結により、時間外の職制の労務指揮命令権を否定するかたちで遵法闘争として、事実上、争議行為と同様の効果のある超過勤務拒否闘争を行ってきた経緯がある。国鉄の職場が荒れたのも元をたどれば三六協定の現場締結が原因である[升田嘉夫『戦後史のなかの国鉄労使-ストライキのあった時代』明石書店2011]。
1980年代国鉄における職場規律の乱れが国会でも追及されるようになり、国民・世論の厳しい批判を受けたことは周知のとおりである。国労は三六協定締結拒否で「助役の下位職代務」仕事を押し付けるなどいやがらせを行っていた[iii]。
水道局でも管理職に下位職代務のいやがらせはある。実際、窓口を定時にオープンするためには、出勤時限定時8時30分以前にレジの準備が必要であり、協定未締結時は、組合役員の指図で管理職がレジの準備等をさせているケースが多い。
実際、令和5年11月15日の三六協定破棄の前に○○営業所では役員の○○○○が所長に、8時半前の経常業務は所長がやるように指示し、所長は従っていた。大抵の管理職は平身低頭して担当者から仕事の段取りを教えてもらい組合役員の唯々諾々従い、本来管理職の仕事ではない下位職業務を代務している。
管理職の下位職代務という滑稽な姿は、職場を支配していのは組合であることを誇示するのである。
知事部局では三六協定拒否闘争はないので、組合役員の指図に転任してきた管理職はむっとくるはずだが、組合の指図に従うのが東京都の倣いとなっています。
遵法闘争を一口で言えば、ストライキと同じ効果を狙いつつ、ストライキではないと偽装した闘争である。
安全闘争(国鉄で行なわれた運転取扱基準規定関係の遵法闘争などを含む)、定時出勤、定時退庁、一斉休暇取得、時間外労働拒否をひと括りにして、遵法闘争と称される。国家法、自主法、規則等を厳格に順守することによりノーマルな業務運営を阻害する逆説的な闘争戦術といえる。三六協定未締結による定時退庁もその一種とみなされる。
特に評判が悪かったのが、国労の順法闘争である、運転安全規範などの諸規則を厳格に遵守するとかえって列車の運行が遅延することを逆手に取り、「順法」を口実としてダイヤを著しく混乱させ闘争の手段としていた。
三六協定締結拒否をスケジュール闘争に組込むことにより職場での組織強化に巧みに利用したのが官公労であったといえる。全逓や国労は戦後早い時期から三六協定締結拒否による時間外労働拒否闘争を行っていた。
郵政省人事局『新しい管理者』昭和41年5月第六章によると「特に全逓の場合は春、夏、秋、冬、スケジュール闘争を行い、三六協定もこれを戦術に利用し、一年の相当部分の期間を超勤拒否している状態である。これは日本だけに見られる現象であり、全逓がいまだに闘争至上主義から脱脚しきれないでいる」[新しい管理者(昭和41年5月.郵政省人事局編)-2- 『労働法律旬報』646 1967]と組合運動のありかたを批判しているのである。
政府は昭和31年の公労法の改正により、同法35条で「政府は仲裁裁定が実施できるようにできるだけ努力しなければならない」ことを法文で明確にしたうえで、昭和32年9月27日の公共企業体等の職員の労働組合の争議行為についての閣議了解において、公労法17条1項違反者は服務規律違反として免職その他の懲戒処分を免れないことを明確に示した(第一次岸内閣)、「合法的な実力行使」と称されている勤務時間内職場集会、休暇闘争、遅刻戦術、早退戦術、定時出勤、超過勤務拒否、遵法闘争、担務変更拒否、滞留業務処理拒否等も、名目いかんをとわず17条1項違反の争議行為であるとしている。
三六協定締結拒否闘争については内閣法制局意見昭32.9.9法制局一発22号(前田正道編『法制意見百選』766頁)がもっぱら他の争議行為目的のための争議手段として三六協定の締結、更新を拒否するときは争議行為にあたり、そうではなく、超勤に関する労働条件そのものを改めることを目的として協定の締結、更新を拒否する場合には争議行為に当たらないとしているが、総じて政府は遵法闘争に否定的である。ところが東京都はそうではない。
なお私は民法1条2項の信義誠実の原則に反する、コモンローでいう黙示的誠実労働義務に反しているという見解に賛同したいのが労働法学者はこういう考えをとらないのである。
水道局の三六協定破棄闘争の問題点は多岐に及ぶが要約すれば以下のとおりである。
〇そもそも三六協定(超過勤務及び週休日の変更に関する協定)を一方的に破棄できる協約は事実上職制麻痺闘争を当局が是認していることなり問題はないのか
〇当局は適法と言っているが争議行為ではないのか
〇組合は三六協定破棄により、時間外労働に関して労務指揮権が消滅するという見解をとっているが法秩序全体の見地から妥当とはいえないのではないか
〇組合が時間外の経常業務を管理職に押し付けるいやがらせに問題はないか
〇必ずストの前日は三六協定を必ず破棄した状況におく狙いは、非組合員をロックアウトする狙いである。組合側の論理では、就業時間前は、所長の労務指揮権は消滅しているので、カードリーダに電磁的に出勤記録を入力させないものとし、よって事故欠勤を強要するものだが、出勤記録の入力は服務上の基本的義務で、建前として服務規律の確保を通知しているという状況で、管理職と共謀して事故欠勤を強要しているあり方は違法性が強いと判断する。
組合と管理職共謀による非組合員の締め出し、出勤停止指示は違法と考えるが、非組合員を締め出してむりやり全員参加でストを成功させる。これが三六協定破棄闘争の最大の目的と考える。
管理職は、労基法違反になるので、非組合員を締め出すという言い分になるだろうが、しかし三六協定未締結により職制の労務指揮権が消滅するという見解は間違いである。
実際、国鉄は動労が拠点ストを構え三六協定未締結でも時間外労働の業務命令は行っている。例えば昭和38年12月14日の動労の全国7拠点2時間ストでは代務となる指導機関士を現地に召集して業務命令し、鉄道公安職員により実力ピケを排除して代務の機関士を乗車させ、列車を運行させている(動労糸崎駅事件.広島地判尾道支部昭43.2.26)。国労のストのケースでも運転士にピケ隊に説得されずに運転を続けろと当局が指示する。
〇労基法33条により災害時には三六協定の内容、未締結いかんにかかわらず、時間外労働の命令ができるということは周知されていない。たぶん、当局は三六協定破棄闘争を適法と認めてるので、組合を刺激するから口が腐ってもいえないと言うだろうが、防災は東京都の重点政策なので周知すべき。予算ゼロでできる防災対策だ。
災害時の緊急対応参集は、第1非常配備要員は震度5弱で発令を受けて参集、震度5強以上で発令を待たず参集。第2.第3非常配備要員は震度5強以上で発令を受けて参集するそれ以外の全職員(免除者除く)は震度6弱以上で発令を待たず参集して、それぞれの任務につく。毎年訓練も行っているが、私も応急給水拠点要員を10年以上経験しており、夜間休日の発災時には駆けつけることになっていた。平成23年の大震災では、計画停電対応や金町浄水場で放射性ヨウ素を検出した時も当局は一部の職員に超過勤務を命令している。
東日本大震災も春闘の際中でその数日後に三六協定破棄闘争に入る予定だった。この時は闘争を中断し7月に闘争を延期したが、もし闘争中に災害等があった場合、組合員は三六協定未締結では労務指揮権は消滅するという組合の宣伝で洗脳されているため、本当に出務してくれるのか不透明な面がある。
実際、私の職場では今年の能登地震支援業務に出張する新人職員に、組合役員が三六協定による月間の労働時間規制があるので、超勤は規制の範囲で申請し、翌月に申請を回すようアドバイスしているのを聴いたが、災害関連業務の超過勤務は一般会計予算だと思うし、33条により時間外労働協定と無関係に時間制限なく超勤させることができるはずである。
国会でもこの質問があり、労働時間規制とは無関係に超勤可能と政府は答弁していた。この点、管理職の認識を問い合わせたが、返答はない。組合役員でも、災害対応は、三六協定の適用外との認識がない人がいるのである。
三六協定未締結闘争について大きく分けて三つの見解がある
(1) 信義則に反する違法行為である
(2) 争議行為である
(3) 労働者側の正当な権利行使である
初期の労働委員会の裁定とである三井造船事件岡山地労委の裁定(昭26.4.27命令) 『労働法律旬報』77号(1951)では、会社は申立人のなした時間外労働協定の拒否ないし保留行為に対し造船業と残業の特殊関係、特に造船工程中、残業が計画中に織込まれている点、永年の慣行であった点、従来累次の協定締結の際何らの紛議を生じなかった点等を挙げ右行為はこれ等の現実を無視し、信義則に反するものとして不当なる争議行為と主張したが、このまっとうな主張は認められず、本件は違法不当な争議手段ではないとした。
したがって学説は、基本的に争議行為かとするか、正当な権利行使とするかで見解が分かれているだけである。
内閣法制局意見昭32.9.9法制局一発22号(前田正道編『法制意見百選』766頁)がもっぱら他の争議行為目的のための争議手段として三六協定の締結、更新を拒否するときは争議行為にあたり、そうではなく、超勤に関する労働条件そのものを改めることを目的として協定の締結、更新を拒否する場合には争議行為に当たらないとしている。
「‥‥『業務の正常な運営』とは、業務の運営であって、経験則に照らし、経常.普通の状態にあると客観的に認められるものというと解されるが、特定の事業場において時間外又は休日の労働の行なわれることが常態であり、また、そういうことが行なわれることによってのみ当該事業場における業務の運営が経常.普通の状態にあると客観的に判断しうる事情の存するときは、労働組合が当該協定の有効期間の満了により、時間外又は休日の労働行なわれなくなった場合は、当該事業場における『業務の正常な運営』が阻害されたことになるといいうるところであろうと考えられる。してみれば、このような事情のもとに労働組合が当該協定の更新を拒否する行為は、争議行為にあたるといいうる‥‥‥労働組合が労働基準法第三六条を引用して協定の更新を拒否しているにかかわらず、労働組合以外の者が当該協定の更新の拒否をもって争議行為にあたると主張するためには、労働組合による当該協定の更新の拒否が、もっぱら時間外労働又は休日労働以外の事項についての労働関係に関してその保持する主張を貫徹するのに有利であるかどうかの判断に基き、ただその目的を達成するがためにのみむなされたものであることを立証しなければならない‥‥」
この趣旨によれば、水道局は12月の局内闘争は三六協定の更新は闘争課題ではないから、3月の春闘は、三六協定が交渉事項とはいえ、他の闘争課題による争議行為があるから、いずれも争議行為といいうる。
一日約九勤務の超過勤務が平常勤務として組み入れられたバス事業の職場において、他の要求を実現するための手段として三六協定の締結.更新を拒否したことが争議行為に当たるとされた最高裁判例として北九州市交通局事件.最一小判昭63.12.8民集42-10-739がある。
平成15年に管理職を通じて、職員部に直接尋ねたのですが、北九州市交通局はバス運行で超過勤務が平常勤務に組み込まれていたが、水道局はそういう事情はないので適法との見解であり、過半数組合の正当な権利行使とするが、私は異論をもつ。
営業所では時間外の経常業務があり超勤手当も支給されているはず。実際、管理職へのいやがらせとして、組合は、窓口のレジの準備等を押し付けていることからも明らかであり、そのほか廊下やエントランスのワックス掛けの清掃が平日の退庁時間後になされるケースがあり、その検査のため、超勤予算は組まれていた。経常業務は超過勤務なしで完結してはいない。「ノーマルな業務」を阻害する。
給水部で配水管の取替、敷設替え等水道工事の夜間工事は頻繁にあり、近年は業者への委託が多いとはいえ、職員と合同の作業、少なくとも監督業務はあるので、時間外労働がなければ水道局の業務は成り立たないことはいうまでもなく、営業所でも超勤は常態的にある。
交通局と水道局の違いは、バス運転手1日9勤務(毎日超過勤務)の職場か、超過勤務は頻繁にあり、それなくして業務は成り立たないが職員が毎日超過勤務を義務づけられてはいないという違いだけである。水道局当局が三六協定破棄闘争は争議行為に当たらず、適法な組合の権利としている根拠は薄弱といえる。
また水道局の1日の所定労働時間は、7時間45分だから法内超勤であと15分は労基法上違法とはならない。レジの準備や金庫にしまう下位職務は管理職がやらず業務命令すべきではないか。
北九州市交通局事件の岩淵正紀判解は、最高裁は明示しなかったが、内閣法制局意見昭32.9.9法制局一発22号(前田正道編『法制意見百選』766頁)に近い判断だと解説しており、これはもっぱら他の争議行為目的のための争議手段として三六協定の締結、更新を拒否するときは争議行為にあたり、そうではなく、超勤に関する労働条件そのものを改めることを目的として協定の締結、更新を拒否する場合には争議行為に当たらないとするものである。
少なくとも時間外労働協定の交渉は年度末の春闘だけなので、下記に引用するやや組合寄りの吾妻説をとるとしても賃金確定闘争の11月の都労連闘争や、局内の合理化反対闘争である12月や1月の闘争は争議行為という結論になる。
参考までに学説をみていくと、争議行為とするのはプロレイバー学者も多い。つまり争議行為を官公労の正当業務としてうえで争議行為と認識しているケースもあり正当な権利という説と同じである。
争議を有利に解決する手段としておこなわれる順法闘争は「ノーマルな業務」を阻害しているかぎり争議行為となる。法律の評価としては実質的な争議行為として価値評価する観点から、時間外労働拒否は正真正銘の争議行為とする。「遵法闘争の法理」『季刊労働法』15号1955年
三六協定拒否については「協定拒否を行った労働組合または争議団の主たる意図が、その拒否を他の争議目的のためにする争議手段とするにあった場合には、労調法、公労法にいう「労働争議」の定義ないしその関連においてはこれを「争議行為」とみるべきであり、したがって協定拒否に対して争議目的になっている係争問題につき当事者は労委.公労委に調整を申請し、また労委.公労委は法律の規定に従い調整に乗り出すことができると解される(‥‥)。協定拒否の主たる意図が、これを他の争議目的のためにする手段とするにあった場合には、労調法の争議行為禁止との関連においても、協定拒否をこれら法条にいう争議行為と解すべきである(公益事業での争議手段としての協定拒否には労調法三七条の予告義務が課せられ、労調法三六条との関連においても同条にいう争議行為と解すべきである)。」とする。
さらに「公労法、公務員法等の争議行為禁止との関連において、協定拒否がこれらの規定にいう「業務の正常な運営を阻害する行為」、「争議行為」または「政府(ないし地方公共団体の機関)の活動能率を低下させる行為」に該当するかどうかは、協定拒否がもっぱら他の争議行為目的のためにする争議行為のためにする争議手段として用いられた場合にかぎり、右規定にいう争議行為と解し、当事者の意図がかような点にあったと認められるかどうかは、拒否を右規定にいう争議行為と主張する側において立証する責を負うと解すべきだろう。副次的にも協定拒否が法律上非正常な時間外(休日)労働の常態化をあらためようとする意図に発するものであるかぎり、争議行為の禁止規定に触れると解することは時間外労働の常態化を法律が保障する結果になるからである。」と述べているが、時間外労働が副次的な闘争課題とされることよくあることであり、この点プロレイバー学説に接近しているといえる。『註解労働基準法』青林書院新社1960年
「労使関係においては慣行的事実が尊重さるべく、期待された業務の通常の運営が阻害される限り」順法闘争は争議行為となる。『労働法』1954年
「通常順法斗争と呼ばれる一連の斗争手段は、組合も争議戦術と呼び、社会通念的に又社会事実的に争議行為と考えられている通りに「業務の正常な運営を阻害し」「争議目的の貫徹のためになされ」る限り、労調法七条、従って公労法一七条の云う争議行為であると考えられる。」『不当労働行為の諸問題』勁草書房1955年256頁
三六協定締結拒否でなく、たんに超勤拒否戦術について言及し、一斉休暇戦術、勤務時間内職場大会、いわゆる定時出勤戦術と同じく、時限ストの類型に属する。公務員.公企体の職員の場合争議行為に合法の衣を装わせるためにストライキと呼ばない工夫をした名称をつけたにつぎないとする。『争議行為法総論』日刊労働通信社1967年
「怠業.順法闘争」『労働争議論 浅井淸信教授還暦記念』法律文化社て1965は、
「順法そのものを目的とする順法闘争はともかく、他の争議目的達成のための手段たる順法闘争においては、それを労使間に生じている紛争を全体的に直視して位置づけるならば、結局は「労働関係における意見の不一致」を原因として順法闘争が行われていることは明らかである。したがって‥‥法的意味での争議行為たる一定要件を満たす」 ‥‥結論的にいえば「労調法第七条にいう『正常』な業務の運営とは使用者の労働者使用に関する指揮.支配権能が他のものに阻害を受けずに事実上円滑に行為されている状態をさすのであって、この場合においては、使用者の指揮.支配の内容が個別的契約関係の権利義務にてらして適法なりやいなやを価値的に判断することを前提とせず、ただ雇用関係を有する労働者に対する使用者の事実としての指揮権限が、労働組合の事実行為による阻害によらず貫徹されている状態をいう‥‥」
(6)中村博(労働省大臣官房秘書課長、中労委次長、人事院公平局長)
この場合の残業命令については残業義務が発生を認めるという説と、その場合でも個別の合意が必要とする説があるが、仮に後者をとるとしても、組合の意思に基づいて、個々の労働者の合意による残業義務の発生を抑制することになるので、正常な業務運営を阻害するので争議行為となるとする。昭和32法制局一発第22号の法制意見を妥当とする。『公務員の争議行為と処分』中央経済社1971年108頁以下
我が国では一般的ではないが、争議行為とは同盟罷業、怠業、業務管理の三種類に大別して概念を整理すべきと云い、「怠業とは、団結した労働者が、使用者に対抗するため、その労働契約の履行を部分的に拒否すること=労働契約の不完全履行」「怠業とは能率低下(スローダウン)による典型的な怠業のみでなく、定時出勤、順法闘争、上部遮断スト、納金スト、などのようなやや変則的な争議行為を包括し、さらに残業拒否、時限ストのような労働契約に基づくその日その日の労働義務の一部分を履行しない形でなされる争議行為を包括し」と述べ、「怠業」は争議行為の範疇なので残業拒否=争議行為説である。
「サボタージュ」日本労働法学会編『新労働法講座4』労働争議 有斐閣1967年所収
三六協定が有効要件を欠くか有効期限が切れた場合「組合としても、個々の労働者としてもいつでも時間外労働を拒否できる。権利濫用などというトンデモナイ議論の生じる余地はない。」また時間外労働拒否だけの争議行為もできるとしている。労基法36条は32条の例外であるとして「争議状態においては、労使は対立状態に在るわけであって、かゝる場合においてまで、使用者のための恩典的例外を労働者に受忍せよというのは労働良識上認めがたいことである」と反市民法的見解を述べ「労働者側が第32条の原則に遵うという態度(遵法斗争)を以て36条の例外を拒否することは当然である」とする。
「遵法斗争と権利濫用-三井造船事件に関連して-」『労働法律旬報』77号(1951)
したがって、争議行為という認識を示しているが、順法闘争は権利の行使であるから、争議権の濫用にあたらず、争議禁止規定にも該当しないとする。プロレイバー学説。
(1)東京都水道局事件・東京高判昭43.4.26労民集19-2-623
本件は、地方公営企業において三六協定なしに時間外勤務をする慣行が行われており、公務のために臨時の就労があったとしても、その時間外勤務命令を拒否する行為が地公労法11条1項に当たるものと解することはできないとして、18条解雇を無効とした事例である。
つまり、三六協定の交渉過程で勤務命令拒否なので内閣法制局見解が争議行為としないケースに近いとはいえるが、三六協定が平時は締結され、夜間作業や残業が常態となっている状況で、ストライキ前段の戦術として協定が一方的に破棄されるという今日の闘争とは性格が違うので、これを先例とみなすことはできない。
なお水道局と東水労本部と昭和36年8月に「三六協定」とされるものは締結されており、超勤時間の最高限度と有効期間を定め、さらに具体的な協定は支所、部局単位で締結することになっていたが、北一支所長と北一支部長は三六協定について合意が得られず協定を届け出ていなかったのであり、その都度組合支部と時間外労働の条件を交渉して時間外勤務を行う慣行であった。なお東水労はこのような作業に、昼夜交替勤務制の職員や、臨時の雇い上げに反対していた事情もある。組合員は、昭和37年4月16日から勤務時間外の午後10時と午前5時の二回制水弁を操作する作業の要請を受けこれを行った。北一支部は北一支部長に対し、組合員に14時間15分相当の超勤手当と翌日の完全休養を要求し、支所長は4月20日まで認めたが、4月21日以降の作業は支部要求を認めなかったので、時間外労働を拒否し、その理由として三六協定が締結されていないということを言い出した事案で、局は組合の就労阻止行動が地公労法11条1項に違反するとして、12条によりXら4名(中央委員.青年婦人部長、支部書記長、中央委員.支部長、支部執行委員.組織部長)を解雇したものである。一審東京地判昭40.12.27労民16-6-121は、水道局が主張した「業務の正常な運営」とは日常的慣行的に行われている現実の業務形態であるという主張を否定し、慣行化、状態化を正常な運営視できないとし、労働法規侵犯としたうえで、法の趣旨は事業場毎の協定であるとし、12条解雇を無効とした。組合寄りの判断である。
控訴審も棄却し解雇を無効としたが、東水労本部との協約は労基法36条が要求している協定の内容ではなく、各支部を拘束しないとして、三六協定は成立していないとしている。
昭和30年代の支所単位では三六協定を締結せずに、その都度組合と交渉するというやり方であった。ライフラインを預かる公営企業であるのに屡々組合要求で業務が左右されてしまうことを意味し、市民法感覚でいえば争議行為そのものといえるのに争議行為でないとした同判例につき疑問が残る。
(2)北九州市交通局事件.最一小判昭63.12.8民集42-10-73
本件は、三六協定締結を拒否した超勤拒否闘争が。地公労法11条1項違反であり、懲戒処分を適法とした原判決を是認したものである。
7月3日の状況
参加人は財政再建計画案が市議会で議決される予定の7月3日に第三派の実力行使、休暇斗争、北九州市の交通事業は独占地域である若松区を除いて、西鉄バスと競合関係にあり、旧五市時代から承継した事業も含め赤字が累積し昭和40年に1億6000万円に達したため、運賃改訂、給与改定、人員削減、高齢者退職完全実施、ワンマンカーへの移行等による財政再建計画案を作成し、北九州市交通局労組と協議を重ねだが意見の一致をみず、自治省の指示に従った最終案を昭和42年6月15日市議会に上程し(7月3日本会議可決)、6月21日~23日、6月27日から7月1日まで及び7月3日三六協定締結、更新拒否による超過勤務拒否闘争、ディーラー整備員入構拒否、完全点検闘争、五割休暇闘争が行われた。一審判決では超勤拒否、安全点検、あるいは年休要求と、いろいろ名目は違っても自らの事業所における業務阻害を目的とした争議行為ないしはそれに付随した争議手段であったとしている。
闘争によるバスの欠行率は、6/21 8.04%、6/22 8.55%、6/23 4.19% 、6/27 8.48%、6/28 8.60%、6/29 3.90%、6/30 6.62%、7/1 6.40%、7/2 1.47%、7.3 36.79%であった。
北九州市交通局長は、12名の行為 が、同市交通事業の業務の正常な運営を阻害する行為であって、地公労法11条1項に違反し、北九州市交通局就業規程第90条11号、地方公務員法第29条第1項第1、第3号に該当するので、前記の如き争議の計画、指導及び実行を行った執行委員長もしくはその他の役員である前記訴外X1ほか一二名に対し、昭和四二年八月二日付をもって懲戒処分を行った。
停職6か月3人(X1、X2、X3バス運転手、うち1人執行委員長、)。停職3か月4人(X4、X5、X6、X7、X8バス運転手3人と事務1人、うち書記長1人、副執行委員長1人)、停職1か月4人(X9、X10、X11、X12バス運転手2、車掌1、整備士1、うち中央委員1人)。
*註 北九州市交通局就業規程
第90条 職員が次の各号の一に該当するときは、免職の処分をする。
(11)同盟罷業、怠業、その他局の正常な運営を阻害する行為をしたとき、もしくはこのような行為を共謀し、そそのかしまたはあおったとき。
争議行為の内容ににつき一審判決で引用される使用者側の説明をピックアップする。
参加人は、昭和42年6月11日頃から本庁舎及び整備工場にある整備課事務所に合理化反対等のビラを多数貼付し、更に同月15日、戦術委員会で同月21日ないし23日の超過勤務拒否闘争、同月27日ないし同年7月1日の超過勤務拒否闘争及び完全点検闘争、同月3日のストライキを決定し、当局の警告を無視してこれを実施した。関係は、以下述べるとおりである。
昭和42年6月21日から同月23日までの間の状況
参加人は6月21日から同月23日までの3日間、第一波実力行使超過勤務拒否闘争と称し労働基準法第36条の規定にもとづく協定(「三六協定」)の締結を拒否し、養護学校スクールバスおよび福岡行き定期便を除く全ての部門で超過勤務を拒否し争議行為を行った。
北九州市交通局においては運行ダイヤの編成にあたっては事業管理者への諮問機関として労使双方の委員によって構成されるダイヤ審議委員会の審議を経て定められていたが、本件紛争当時の公示ダイヤは参加人側の同意のもとに一日約九勤務の超過勤務ダイヤを組み入れており、超過勤務拒否が行われれば正常なダイヤ運行に支障をきたすことは労働組合も充分承知のうえでこれを争議行動の手段として行ったものである。
6月21日前述のとおり参加人が超過勤務を拒否したので整備関係の勤務時間外の整備作業が困難となり、当局としては何とかして業務の正常な運営を維持しようとして、いすず自動車、ニッサン自動車、ふそう自動車の各ディーラーに整備業務を依頼した。またこのことを参加人に申し入れたところX6書記長は「ディーラー整備員の入構は認めない。あえて入構を強行するなら実力を もって阻止せざるをえない。」と答え各営業所においてディーラーの派遣した整備員の入構について次のとおり妨害した。(以下略)
昭和42年6月27日から7月1日までの間の状況
参加人は6月27日から7月1日まで5日間第二波実力行使、超過勤務拒否、車両の完全点検斗争と称する争議行為を行った。
超過勤務拒否斗争は前述のとおりである。完全点検斗争は次のような方法で行われた。 北九州市交通局においては出庫前30分間乗務員を始業点検に従事させることと定めており乗務員は局所定の始業点検表に従い車両を点検し、運行管理者に経果を報告し確認または指示を受けることが義務づけられている。
ところが右期間において参加人は完全点検斗争と称して運転手が行う始業点検にことさら執行委員を加え運行にまったく支障のないささいな欠陷をとりあげ完全に修理整備しなければ運行させないとしつように抗議し出庫を遅らせたりあるいは出庫を不能にしたりしたものである。
昭和42年超過勤務拒否斗争と称して多数の組合員が一斉に休暇をとりダイヤの大幅な欠行を生じる争議行動を行った。
これに対し当局は業務阻害を目的とした休暇申請については承認しない方針を、その申請を拒否したのであるが、参加人はその承認を強要し各営業所等 において次のような紛争を生じさせた。
(小石営業所)
7月2日午後2時すぎ、小石営業所においてY9営業所長は7月3日の同営業所のワンマン五番勤務の乗務員が欠員となることを知り、7月3日が休日の予定となっていた北九州市交通局新労働組合所属のZ1運転手に休日振替による出勤を命じた。
7月3日午前4時40分頃X2、X8両執行委員ら組合員多数がY9営業所長に対し「労働組合が超過勤務拒否斗争として三六協定の締結を拒否しているときであり、Z1運転手の振替勤務を取り消すよう」要求して激しく抗議した。Y9営業所長らは「Z1運転手の振替勤務は休日の振替えによるもので休日出勤でない。三六協定の有無にはかかわりない」旨反論したが組合側の激しい抗議に抗しきれずやむなくZ1運転手の振替勤務を取消した。
(二島営業所)
7月2日午前10時頃X3執行委員外組合員20名が本庁舎二階事務室においてY5職員課長、Y11 自動車課長およびY8営業所長に対し、7月3日の休暇を承認せよと激しくせまり、Y5職員課長が「7月3日は労働組合が休暇斗争を予定しており、業務に支障をきたすので、当日の休暇は承認できない」と 承認を拒否したのに対し激しく抗議を繰り返し、休暇承認を強要し、Y5職員課長らはつるしあげの中で抗しきれずやむなく当日の休暇を承認した。
本件懲戒処分につき組合側は、地労委に救済を申立、福岡地労委は昭和47年 4月26日処分の取消しを命令したので、使用者側が不服として救済命令取消訴訟を提起したが一審福岡地判昭52.11.18判時874号は請求を棄却。
B 二審福岡高判昭55.12.22労民31巻 5号1033頁
原判決を取消し、福岡地労委の救済命令を取り消す。
判示事項概略
○地方公営企業労働関係法11条1項は、憲法28条に違反しない
○労働組合が超過勤務の正当性を是認しながら超過勤務に関する労働条件自体ではなく、労使間の他の紛争について自己の要求を貫徹する手段として三六協定の締結ないし更新を拒否することは、同盟罷業に該当する。
○労働組合の参加しているダイヤ編成審議会の審議を経て定められたダイヤ編成において、超勤が恒常化され、それを拒否すれば平常のダイヤ運行に支障を来す状況の下で労働組合が三六協定の締結ないし更新拒否により超勤拒否闘争を行ったことが地方公営企業労働関係法11条1項に禁止する争議行為に当る。
○地方公営企業におけるピケは、争議行為の適法性を前提とし、争議権保障の範囲内で許されるものであって、地公労法により争議行為が禁止されている以上、本件ピケは正当な組合活動ということはできない。
○地方公営企業における安全点検闘争は、単に交通安全配慮の仕業点検ではなく、組合の要求貫徹の手段としてなすものであるから、業務の正常な運営を阻害する行為に該当する。
○ 地方公営企業における年次有給休暇闘争は、組合の指令に基づき組合員全員が一斉に職場を離脱し、業務の正常な運営の阻害を狙った同盟罷業ということができ、争議行為に該当する。
○地方公営企業における超勤拒否闘争、ピケ、安全点検闘争、年次有給休暇闘争は、地公労法及び市就業規則に違反するものであるから、同闘争を企画、指導、実行させた組合幹部に対する停職等の処分は不当労働行為に該当しない。
○地方公営企業労働関係法4条は争議行為以外の職員の組合活動につき労働組合法7条1号本文を適用しているにとどまり、地方公営企業労働関係法11条1項に禁止する争議行為には、労働組合法の該規定を適用する余地はない。
良性の判決といえる。丁寧にも交通局長が懲戒処分の根拠に挙げていない地公法32条違反でもあるということを説明している。
判決抜粋
「 ‥超過勤務に関する三六協定を締結するか否かは、原則として、労働組合ないし労働者の自由に属するところであるから、労働組合が超過勤務自体の労働条件に関する労使間の意見不一致のため、同協定の締結ないしは更新を拒否したとしても、これをもつて直ちに違法とすることはできないことはいうまでもないところである。しかし、労働組合が、当該事業の運営が超過勤務に依存すること、すなわち、超過勤務の正当性を是認しながら、超過勤務に関する労働条件そのものではなく、労使間の他の紛争についての自己の要求を貫徹する手段として三六協定の締結ないし更新を拒否し、超勤を拒否することは、争議行為(同盟罷業)に該当するものと解するのが相当であるところ、‥‥控訴人の交通事業におけるバスの平常の運行ダイヤは、参加人も加わったダイヤ編成審議会の審議を経て定められたものであり、一日九勤務が超勤ダイヤとして編成されていて超勤が恒常化され、超勤の拒否があれば平常のダイヤ運行に支障を来たす状況にあつたところ、参加人の前記三六協定の締結ないし更新拒否による超勤拒否闘争は、超勤の恒常化(正当性)を認めながら、控訴人の財政再建計画に関する参加人の要求を貫徹するための手段としていたものであり、かつ、控訴人の交通業務の正常な運営を阻害するためにしたものであつて、地公労法一一条一項の禁止する争議行為に該当するものといわざるをえない。」
棄却
「(1)上告参加人は、被上告人の提示する本件財政再建計画の実施を阻止するため、昭和42年6月10日ころ、組合員の投票によってストライキを行うことを決定し、これを受けて、上告参加人の戦術委員会は、同月21日から23日まで超勤拒否闘争を、同月27日から同年7月日まで超勤拒否闘争及び安全点検闘争を、同年7月3日に超勤拒否闘争及び一斉休暇闘争を行うことを決定した、(2)被上告人経営のバスの運行ダイヤは、労使の委員によって構成されるダイヤ編成審議会の議を経て定められていたが、当時の公示ダイヤは、上告参加人の同意のもとに一日9勤務が時間外勤務ダイヤとして編成されており、被上告人の交通局においては、このダイヤを実施するために超過勤務が恒常化していて、超過勤務拒否があれば、平常のダイヤ運行に支障を来す状況にあつた、(3)右運行ダイヤを実施するため、被上告人と上告参加人との間において従来から三六協定が締結、更新されてきたが、上告参加人は、本件財政再建計画についての労使の交渉が難航することが予想されるようになった同年4月ころから、同協定を1日ないし数日の期間を定めて締結、更新しつつ事態の推移をみていたところ、同年6月15日本件財政再建計画案が市議会に上程されるや、前記戦術委員会の決定どおり超勤拒否闘争を行うこととし、バスの正常な運行のための同協定の締結、更新方の当局の要望を拒否して、右決定に係る期間各部門において組合員に時間外勤務を拒否させた、というのである。
‥‥交通局においては、従来から上告参加人同意のもとに三六協定の締結、更新を前提とした超過勤務が平常勤務として組み入れられてきたところ、上告参加人は、当該超過勤務自体に関する勤務条件については格別の要求を有していた事情は認められないのに、本件財政再建計画の実施阻止という要求を貫徹するための手段として、三六協定の締結、更新を拒否し、組合員に時間外勤務を拒否させて本件超勤拒否闘争を実施したということになるから、右超勤拒否闘争は、地公労法11条1項の禁止する争議行為に当たるものといわなければならない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。‥‥」
岩渕調査官はこれについては大きく分けて3つの見解があると説明している。
A説(吾妻昭俊「遵法闘争の法理」『季刊労働法』15号)
争議行為とは使用者の業務の正常な運営を阻害する、右の「業務の運営」とは法令に従った業務の運営に限られるものではなく、現に行われている通常の業務をいうものと解されるから、三六協定を締結するか否かは本来労働者側の自由に属すること事柄ではあっても、超勤自体が通常の業務に含まれている場合には、右協定の締結、更新を拒否することは業務の正常な運営を阻害するものであり争議行為にあたる。
B説(内閣法制局意見昭32.9.9法制局一発22号(前田正道編『法制意見百選』766頁)
もっぱら他の争議行為目的のための争議手段として三六協定の締結、更新を拒否するときは争議行為にあたり、そうではなく、超勤に関する労働条件そのものを改めることを目的として協定の締結、更新を拒否する場合には争議行為に当たらない。
C説(松岡三郎『條解労働基準法上』443頁、西村信雄ほか『労働基準法論』187頁、野村平爾『労働関係調整法(法律学全集)』106頁)
法外超勤は三六協定が締結されてはじめて可能であるから、協定の成立前に右超勤を前提とする正常な業務の運営というものは存在しえない。従前三六協定が結ばれていたからといって、直ちにその終了後、それを更新する義務が労働者側に課せられているとはいえないから、右期限経過後は新たに労使双方の意見の合致により協定の締結されることが法外超勤の前提になる。したがって、労働者側が新協定の締結を拒否したからといって業務の正常な運営を阻害したことにはならない。
岩渕正紀判解は、「本判決は、一般論としては右三説のうちどの立場をとるのか明らかにせず、本件の事案のもとにおいて、参加人組合が三六協定の締結、更新を拒否した超過勤務拒否闘争は争議行為にあたると判断したものであるが、三六協定の締結更新を前提とした残業が恒常化している職場において、労働者が、三六協定の締結、更新を拒否することを、他の要求を貫徹するめの手段として用いたと認められる場合に、争議行為の成立を認めたものであるから、基本的には、B説かそれに近い立場を前提としている‥‥」と述べる。
岩渕判解がB説に近いと論評していることの意味は重くみてよい。
東京都水道局当局は、本判決から超勤しなければバスの平常ダイヤが運行できなくなるような特殊なケースに限って争議行為と認定した事例と狭く解釈している。
なるほど、水道局職員はバス運転手と違って常に超過勤務が義務付けられているとはいえないかもしれないが、実際に営業所では平時は一般職員が始業時前に超過勤務しており実際手当も払われ、闘争時は管理職に窓口を開けてレジのつり銭の準備などを押し付けているだけでなく、年数回であるが、年間計画で時間外に指定している、先に述べた、ワックスがけなどの庁舎内清掃の監督、検査業務に超勤手当が予算化され実施されていて、広い意味で、経常業務は時間外労働に組み込まれているのである。
B説(法制)は「業務の正常な運営」とは必ずしも厳格な法律的意味において「適法な業務の運営」と解すべきでなく、労使関係における慣行的事実も考慮において、慣行的に期待される「通常の業務運営」をさすという石井照久『新版労働法』367頁の考え方に近く、慣行的事実としては平常において超勤がない職場はないという点は、交通局と水道局も同じであって、組合は超勤が必要な職場であることは一年間の有効期限で三六協定を締結していることでも明らかであつて、交通局の三六協定締結拒否が争議行為であっても、水道局がそうではないと確信できる材料などない。水道局の三六協定破棄闘争も争議行為と認定される可能性は高く、少なくとも疑いが強い行為といえる。
しかし、当局は組合の権利行使として適法の考えを変えないだろうから、この争議行為か否かグレイかという議論は生産的でなく、労働基準法上違法であっても業務命令は可能で、三六協定締結してないことをもって時間外の労務指揮権、管理権は消失せず、労働基準法の強行規定であっても、「法秩序全体の見地から」判断されるので、労務指揮権を発動すべきと言う認識から論じることとする。
(四)労働基準法所定の労働時間の制限を超える公務の執行の正当性に関する判例
組合は、労働基準法を利用して、職制の労務指揮権を奪うことができると考えているようである。しかし労基法違反の業務命令に基づく業務であっても、刑法上の保護を失うものではないことについては、多くの先例があるので間違っている。
まず浜松動労事件・東京高判昭42.9.18判タ216は、三六協定未締結の状況で「違法な業務命令に基づいて機関士等が本件第二四列車に乗務しているという一事によって右列車の輸送業務が刑法第234条によつて保護を受くべき『業務』に該当しなくなるということはできない」とし、威力業務妨害事件.名古屋高等裁判所金沢支部第二部判決・昭40.10.20は「就労が労働基準法違反の就労であるとして、‥‥同法が労働者の労働時間を制限した趣旨は労働者の保護にあるから、労働者が自ら就労し業務を遂行しようとする場合、右就労が同法所定の労働時間の制限に違反するものであつても、労働者の業務遂行そのものまでを違法視して右業務を威力業務妨害罪の保護対象から除外すべき理由はない」とした。(引用は仙台鉄道管理局事務件の上告趣意書)
労働基準法所定の労働時間の制限を超える公務の執行が適法とされた最高裁判例として、仙台鉄道管理局春闘仙台駅ビラ剥がし事件.最二小判昭48.5.25刑集27-5-1115がある。
事案は昭和39年4月15日春闘仙台駅対策本部に仙台鉄道管理局総務部労働課職員全員を含む200余名を早朝から召集し、被害者Aは、駅構内の警戒および情報蒐集、組合員らの行動の監視、確認、組合員らによる違法行為の阻止、排除等の任務にあたるよう命じてられた非組合員であり、国労等の活動に備えていたが、過半を組織する国労.動労との三六協定は未締結だった。
Aが1日8時間労働を超える時間帯に列車ボディに貼付されたビラを剥がす業務をしていたところ、動員された支援組合員に半円状に取り囲まれ、激しく抗議を受けたが、なお作業を続行したことなどから、動員された支援組合員全電通宮城県支部執行委員がAの顔部を殴りけがを負わせたことから傷害罪と公務執行妨害罪に問われた。
一審(仙台地判昭41.1.8刑集27-5-1148)は組合側の三六協定未締結なので、8時間を超えた業務は違法という主張に対し、外形的刑法的に一個と評価されうる継続的行為の中間において、当該公務員につき純客観的には具体的職務権限が消滅したとしても、その瞬間に当該職務行為が「適法」から「違法」に転化してしまうとみるべきではなく、以後の行為部分もなお「適法」なものとして公務執行妨害罪の対象となると解するを相当とするとして有罪(懲役二月、執行猶予)、二審(仙台高判昭44.4.1刑集27-5-1170)は、破棄自判し、被害者Aに労働基準法上の休憩時間は与えられておらず、八時間の労働時間は、本件暴行時間の約40分前の午後2時に終了していたと認めるのが相当であるとし、労働基準法32条1項は、強行規定であり、たとえ相手方の同意、承諾にもとづいても、許容されることはないから、重大な違法性を帯有していたというべき命令部分をもってして、Aの職務行為に対し、公務執行妨害罪の保護法益たるに値する適法性を付与しないとして、公務執行妨害罪の成立を否定し、傷害罪の成立のみを認めた。これに対して検察官が上告した。
第二小法廷(岡原昌男、村上朝一、小川信雄、大塚喜一郎)は原判決を破棄自判して公務執妨害罪の成立を認めた。
村上は最高裁長官であり、岡原は後の最高裁長官である。
「原判決によれば、右Aに対し発せられた本件職務命令は、昭和39年4月15日午前6時から仙台駅構内において組合員の行動の監視、違法行為の阻止および排除等の任務に従事すべきことを内容とし、執務時間についてはあらかじめ制限を付さない趣旨のものであつたというのであり、これによれば、右命令が同人に対し、前記の職務に従事すべき労働関係上の義務を課するものであるとともに、その反面、右職務を執行する権限をも付与する性質のものであることが明らかである。一方、労働基準法32条1項は、就労時間の点で労働者を保護することを目的とし、また、もっぱら使用者対労働者間の労働関係について使用者を規制の対象とする強行規定であるが,右の目的と関わりのない、労働者とその職務執行の相手方その他の第三者との間の法律関係にただちに影響を及ぼすような性質のものではない。してみると、本件職務命令に右強行規定の違反があったとしても、その法意にかんがみ、その違反は、右命令のうち前記Aに対して就労を拘束的に義務付ける部分の効力に影響を及ぼし得るにとどまり、職務執行の権限を付与する性質の部分についての効力にまで消長をきたすべき理由はないと解するのが相当であって、本件における右Aの職務行為は、その与えられた具体的権限に基づいて行われたものであると認めるのに十分である。
そして、右Aの行為自体は、列車車体にほしいままに貼付されたビラを取りはがして原状を回復するというものであつて、もとより日本国有鉄道の本来の正当な事業活動に属し、作業の方法、態様においても特段の違法不当な点は認められないのであるから、右が適法な公務の執行というべきものであることは疑いの余地がない。
すなわち、本件のように、法令により公務に従事する者とみなされる日本国有鉄道職員であって労働基準法の適用を受ける者に対する職務命令が、同法所定の労働時間の制限を超えて就労することをもその内容としており、かつ、その者の就労が右制限を超えたからといつて、そのために職務の執行が具体的権限を欠いて違法となるものではなく、これに対して暴行脅迫を加えたときは公務執行妨害罪の成立を妨げないと解するのが相当である。
そうすると、これと異なる見地に立ち、被告人の本件所為につき公務執行妨害罪の成立を認めなかつた原判決は、法令の解釈適用を誤り、ひいて事実を誤認するにいたつたものであつて、これが判決に影響することはいうまでもなく、かつ、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。」と解するのが相当であると判示している。
柴田孝夫判解は労働基準法違反がどの程度に法律上の効果を及ぼすかについては、労働者の保護と関係ない事項について、労基法違反があってもただちに当該事項を無効としなくてはならないものではない。強行規定であるから、これに違反する労働は保護にあたいせず、超勤手当請求権もないとするのは失当であるとする。
例えば契約担当社員が三六協定未締結の状況で8時間を超える超過時間に顧客と大きな契約をした、それは労基法違反の時間での職務行為だからその効果は会社に帰属しないということはないと云う。
そのようにまともな法曹は労働法の論理一辺倒の偏った考え方はとらない。
労基法違反の超過勤務であっても、職務遂行が刑法上保護されることは、以下の判例によっても補強されている。
動労糸崎駅事件.広島高判昭和48.8.30は、昭和38年12月13日、動労は全国7拠点(函館.盛岡.尾久.田端.稲沢第二.糸崎.鳥栖各機関区)で19時より2時間の 勤務時間内職場集会(事実上の時限スト)を決行した。一審は動労側弁護士の主張を認め、本件スト対策で糸崎発折り返し呉行651D列車に代替乗務したS指導機関士になされた業務命令は、当局と組合との間に三六協定が締結されていないのになされたもので違法であり、同機関士の乗務は刑法第234条の威力業務妨害罪にいう業務に該当しないというべく、威力業務妨害罪を構成しないというものであったが、控訴審は、国労久留米駅事件大法廷判決昭48.4.25刑集27-3-418の判断枠組を引用し、「組合の組織的集団行動としての本件合理化反対闘争に際して行なわれた刑法234条所定の構成要件に該当する有責行為であると原判決が認定した被告人の本件所為について‥‥違法性阻却事由の有無を判断するに当っては、当該所為が争議行為に際して行なわれたものであるという事実をも含めて、叙上行為の具体的諸状況を考慮に容れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判定する」として、闘争に備え前日国鉄当局から代替乗務の業務命令を受けて糸崎駅に待機していたS機関士の就労を妨害する行為につき威力業務妨害罪の成立を求めている。三六協定に関する理論的な説示がなく、端的に久留米事件方式の「法秩序全体の見地」から労基法上違法であっても刑法上保護される業務との結論を出している。
労働法と市民法秩序は矛盾する。労働法と民法等が相いれない場合は、労働法一辺倒の判断をとらず、法秩序全体の見地から判断していくという意味を含んでいるとみてよい。
3 第二名古屋中郵事件・最二小判昭53.3.3民集32-2-97
第二名古屋中郵事件・名古屋地判昭39.2.20判時383は、昭和34年12月3日小包課長の指示により、受入係事務補助員ら数名が年賀予備室に保管中の滞貨小包郵袋約140個を開袋作業室に運搬するため郵袋15~16個を運搬車に積載し搬出せんとするや、被告人全逓中央本部執行委員2名、愛知地本執行委員長、名古屋中郵局支部長は他の組合員と共謀してその前面に立ち塞がり、これを押し返して搬出を不能にし、さらに、小包課長らが自ら郵袋を搬出するため年賀予備室に入室しようとするや、その前面に多数とともにスクラムを組むなどして入室を不能にし、もって威力により臨時小包便の搬出等を不能ならしめたうえ、管理者の数回にわたる退去命令を拒否した事案で、組合側は本件当時において三六協定と年末首緊忙に関する諸取決めがなされていないから、全逓労組員が臨時便の取扱いの労務を提供する義務は存在しないと主張し、管理者側の行為は違法な業務を全逓労組員に押し付けようとするものでという主張し、一審はこれを支持して、右業務は刑法234条にいう「業務」には該当しないものとして無罪。組合側の主張が通った判例である。
控訴審名古屋高判昭45.9.30刑事裁判月報2巻9号は、臨時小包便の搬出は、全逓との団体交渉を経ないままなされたもので不相当ではあるが、やむをえない措置であったから、刑法上保護されるべき業務にあたると述べ、三六協定未締結での業務が正当な業務でないという一審の判断とは違うものとなったが、東京中郵判決.最大判昭41.10.26刑集20-8-901の判旨に従い、約九時間の郵便物処理の遅延であって国民生活に重大な障害を及ぼしたわけではないので、労組法一条二項にいう「正当な行為」として違法性を欠くとして棄却した。
上告審最二小判昭53.3.3民集32-2-97は、東京中郵判決は、全逓名古屋中郵事件.最大判昭52.5.4刑集31-3-182で判例変更されたゆえ、名古屋中郵判決の判断枠組(久留米駅事件方式を踏襲)にもとづいて、三六協定未締結時の業務であって、労働基準法上違法であっても刑法上保護される業務であると説示をせずに端的に以下の理由で、破棄自判し、威力業務妨害罪の成立を認め、各罰金三万円に処している。
「原判決‥‥認定した前記事実は、威力業務妨害罪及び不退去罪の構成要件に該当し、かつ、いずれも公労法一七条一項に違反する争議行為であるから、他に特段の違法性阻却事由が存在しない限り、その刑法上の違法性を肯定すべきものである。原判決が違法性阻却を認めるうえで根拠とした、本件行為の目的、手段、影響のいずれの点も、その根拠となるものではなく、他に法秩序全体の見地からみて本件行為の違法性を否定すべき事由は見当たらない‥‥」
上告審は、本件業務妨害は争議行為そのものとしており、違法性を阻却する特段の事由がないとしており、三六協定未締結なので正当な業務でないという一審の判断に関し理論的な説示はしておらず、名古屋中郵判決の枠組みが古屋中郵事件方式)では、久留米駅事件方式を踏襲し違法性推定機能を強化した「行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、法秩序全体の見地から許容されるべきか否かを考察してその違法性阻却事由の有無を判断しなければならない」というものなので一刀両断に有罪と結論している。
以上、総括すると、労働基準法違反がどの程度に法律上の効果を及ぼすかについては、労働者の保護と関係ない事項について、労基法違反があってもただちに当該事項を無効としなくてはならないものではない。労働基準法の労働時間制限を超えた就労であっても、刑法第234条によって保護される業務であることは確定しているが、その理論的説示は、二つの系統がある。
東京都水道局の現状は、三六協定破棄によって、管理職は組合から、業務命令すると犯罪になるぞと脅し、労働者の保護と関係ない職制麻痺闘争、争議行為目的、特に時間外の職制の労務指揮権を消滅させ業務命令させないという悪意にもとづいており、労働者の保護とは関係ない事項であるから、労基法違反の業務があったとしてもただちに無効となるというものではないことは明らかである。
組合が主張するように、三六協定未締結状態は、所定労働時間外の労務指揮権や施設管理権が組合によって奪い取られることを意味しないし、動労糸崎駅事件や名古屋中郵第二判決で労基上違法な超過勤務に相当する就労になっても職務命令等ができる。仮に春闘仙台駅判決の狭い解釈をとるとしても就労を拘束しないかたちで、職務権限を与えることができるので、少なくとも経常的業務については職務命令すべきと考える。
仙台鉄道管理局事件・.最二小判昭48.5.25の柴田孝夫判解によれは、最高裁のテクニックは、労働者に一定の職務を処理する権限を与える管理職の行為と、一定の職務に従事させる義務とを区別して、職務命令の性質を二分して、権限を与えるだけの使用者の行為を違法.無効とする理由は、労基法32条1項からは出てこないというものである。
春闘仙台事件は、非組合員が春闘対策本部に召集され、組合員の行動の監視、違法行為の阻止および排除等の任務に従事すべきことを内容とし、執務時間についてはあらかじめ制限を付さない趣旨のものであったからであるが、広義に解釈すれば、多くの事務職員は経常的な業務でも特定の職務を処理する権限が与えられており、所定時間で終了しない場合、自発的な残業をすることは普通みられることである。
この理屈が職員課職員の特殊なケースか汎用性のある議論かは判然としないが、少なくとも春闘対策本部の業務が該当する。所定時間外だからできないということになると、争議行為対策ができないことになり、違法争議行為を助長するので当然のことといえる。
狭く解釈するとしても、たとえば三六協定未締結でも災害時の業務命令は労基法33条でできるが、あらかじめ日時が指定されてない災害時の応急給水拠点要員が、給水所に休日.夜間等の所定時間外に立ち入り、応急給水の準備を行う権限が認められているのと同じ理屈になる。
最高裁は車両ボディの「ビラ剥がし行為」を「日本国有鉄道の本来の正当な事業活動」であり、刑法第234条によって保護される業務とし、真面目に任務にあたった非組合員が非難される立場ではないことも明らかにしているのである。春闘仙台駅判決はビラ貼りの使用者の自力撤去の先例としても意義がある。
一方、動労糸崎駅事件・広島高判昭和48.8.30判タ300(上告審.最一小決昭50.4.1刑事裁判資料230棄却)は、昭和38年12月13日全国7拠点の動労の19時より2時間職場集会決行に際し、当局は三六協定未締結であってもスト参加者の代替要員として指導機関士を糸崎に召集、代替乗務を命令された機関士の糸崎発呉行列車乗務を妨害するため、動労岡山地本津山支部執行委員長が運転室を占拠し、引率した組合員、他の支援組合員百数十名にスクラムを組むマスピケを指揮して列車運行を妨害した事案で、名古屋中郵第二事件・最二小判昭53.3.3民集32-2-97は、昭和34年12月3日名古屋中央郵便局と全逓支部が三六協定未締結、年末首繁忙期の取決めもなされていない状況で、局長は約九時間の郵便物処理の遅延に対し、名古屋郵政局と協議のうえ小包臨時便の滞貨の解袋作業につき全逓組合員とアルバイト学生に業務命令した。被告人、全逓中央本部執行委員、愛知地区本部執行委員長、名古屋中央郵便局支部長は、組合員は臨時便を取り扱う義務がないとして、管理者側の臨時便郵袋搬出作業に対し、組合員20~30名がスクラムを組んで立ち塞がって業務を妨害した事案があるが、双方とも一審は、組合側の主張を認め無罪だったが、糸崎駅事件二審は久留米駅事件方式、第二名古屋中郵事件上告審は、名古屋中郵事件方式の判断枠組みである「法秩序の全体的見地から」業務妨害罪の成立を認めている。
両判例とも、仙台鉄道管理局判決は引用されておらず、三六協定の性格について理論的説示もなされていない。仙台鉄道管理局は「就労を拘束的に義務付ける部分の効力に影響を及ぼし」という判断をとっているが、糸崎駅や名古屋中郵第二はそれと違うのである。
理論的説示はないが、動労糸崎控訴審はストライキに対抗して、反対派組合員や非組合員に業務命令し操業を維持するのは使用者の正当な権利であり、スト参加の乗務員の代務となる指導機関士の乗務の業務命令は全く正当だと言う前提にたっているし、名古屋中郵第二最高裁判決も約九時間の郵便物処理の遅延のため、全逓組合員とアルバイトに業務命令により滞貨を処理することは正当との前提に立っている。そうすると三六協定締結されておらず、労働基準法では違法な1日8時間以上の勤務であっても必要な業務命令はできるという前提と推定できる。
要するに労働基準法違反は承知での上での業務命令はありうる。労働法上違法であっても、市民法、公法上、信義則に反する違法争議行為目的の戦術に対抗して操業を維持するための業務命令はあってしかるべきで、法秩序全体の見地から使用者側の罰則はくらわないだろうという推測で業務命令してよいと考える。
実際に国鉄は国労や動労との三六協定未締結でもストライキ(勤務時間内職場集会)も超過勤務となりうる業務命令を行っている、動労糸崎駅事件と同日の動労鳥栖駅事件・福岡高判昭49.5.25判時770においても、二審で三六協定は問題になっていないが、指導機関士26名を門司鉄道管理局管内から召集している。
郵便局は、法内超勤は合法との見解だが、名古屋中郵第二判決のように全逓との三六協定が締結されない場合でも業務命令をすることがあるということであるし、そのような場合、職制側が処罰されたということは聴いたことがない。
労働協約が契約の相対効原則に反するように、市民法と労働法は矛盾し衝突する側面が多いわけだが、労働基準法の強行規程であれ、それを絶対視する考え方を最高裁はとっていない。「法秩序の全体的見地」とは市民法・公法と労働法が衝突する場合、労働法を優位とみる考え方をしないのである。
もちろん上記判例は、組合役員の業務妨害罪や不退去罪だが、使用者に対する罰則にも争議行為でもそれに付随する行為についての本来労働基準法と全く関係ない「名古屋中郵事件」の判断枠組みがとられるとは限らないといえる。
しかし名古屋中郵判決の汎用性は大きいのではないか。
違法争議行為目的の争議行為に付随した行為がなされた場合、違法性推定機能を強化した判断基準なのである。
名古屋中郵判決から引用すると「公労法一七条一項に違反する争議行為が刑法その他の罰則の構成要件に該当する場合には、労組法一条二項の適用はなく、他の特段の違法性阻却事由が存在しない限り、刑事法上これを違法と評価すべきものであるが、そのことと、右の争議行為に際しこれに付随して行われた犯罪構成要件該当行為についての違法性阻却事由の有無の判断とは、区別をしなければならない。すなわち、このような付随的な行為は、直接公労法一七条一項に違反するものではないから、その違法性阻却事由の有無の判断は、争議行為そのものについての違法性阻却事由の有無の判断とは別に行うべきであって、これを判断するにあたっては、その行為が同条項違反の争議行為に際し付随して行われたものであるという事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを考察しなければならない」とする。
つまり三六協定破棄闘争が争議行為と確定できないとしても、ストライキ配置の前日に必ず配置される戦術で、これは、ストライキ指令時に職制の業務命令をさせない、職制の機能を麻痺させて違法ストライキを有利にすすめるためのものである。職制麻痺闘争が悪質であり、使用者側が一方的に違法行為をしているとみなし、労働基準法に罰則があるぞと管理職を脅して、労務指揮権、管理意思を制圧する違法争議行為目的なのであり、これらに対抗して、操業を維持するため業務命令することは使用者の正当な権利であり、労働基準法の罰則とバッティングする件は、法秩序全体の見地から判断されるのが道理である。
物事を総合的に判断すると、全水道東水労の三六協定破棄闘争は、一方的、違法行為目的のものであるので信義則に反し、組合側が労基法違反といかに糾弾したとても、三六破棄闘争自体が争議行為の疑いが濃いだけでなく、そうでないとしても違法行為目的の行為であり、争議行為に対抗する措置として、違法性は阻却されるという前提でおそれることなく業務命令すべきであり、国鉄のようにそういう方針のもと必要な業務については職務命令すべきである。
(五)ストライキ決行時の非組合員を締め出す目的で三六協定破棄している問題点
組合役員はこの闘争を重視し、繰り返ししつこく職制に業務命令の権利はなく、犯罪になるから、超過勤務をしない号令をかけている。
三六協定未締結の状態では一日八時間を超える労働を命ずる部分は、被用者の同意ないし承諾の有無いかんにかかわりなく労基法に反するので、職務執行を適法ならしめる具体的権限が管理職にはないとするのが組合側の見解である。
三六協定拒否闘争は平成16年の10日間連続、年間17日は越えたはずで、この場合は、時限ストライキよりも業務阻害が大きい。近年は年間10日を越えることはなく、長くて3日連続程度にすぎないが、その本質はいやがらせではなく、ストライキの前日は必ず、未締結の状態にしているので、職制に業務命令をさせない口実をつくること全員参加のストとして成功させることが目的と考えている。
実際私は平成6~11年に在籍していた江東営業所のスト決行時(3回あった)に、組合活動家から八時半以前は、庁舎内に立ち入るな、庁舎外に出ろと恫喝された。また江東営業所では包囲型ピケッティングがあり罵声も浴びせられた。職制は傍観し無関心である。労務指揮権ははく奪されることに多くの管理職が同意しているようであり、非組合員は、組合役員と管理職の双方から庁舎への入所は認めないことがある。出勤簿、現在はICカードリーダに電磁的に出勤記録の入力だが、してはならないとの指図を受けることになるのである。
組合に違法争議行為の統制権はないのに、全員参加の同盟罷業にこだわっており出勤記録は絶対させない構えなのである。
私は組合と管理職共謀による非組合員の締め出し、出勤停止指示は違法と考えるが、就労したい職員をも締め出して全員参加でストを成功させる。三六協定破棄闘争の重要な目的である。
地公労法11条2項は事業場の閉鎖を認めていない。当局は、ストライキに対抗して、非組合員や反対派組合員等に業務命令して操業を維持するのが筋で、それは正当な権利であり義務でもあるのに放棄し、組合のいいなりになっているストライキ完全防衛に協力している。
水道局三六協定破棄で、就業時間以前の業務命令ができないので、ピケの取り締まりも、横断幕、立て看板、ビラ貼りなどのスト準備、セキュリティ破りのスト待機、中止.解散命令ができないとするのは組合側の立場だが、管理職もこの立場をとっているので、労務指揮命令権を放棄し、違法行為や犯罪構成要件該当行為をいっさい認めていくことこそ、コンプライアンスになってしまっているという、異常な現実は変えなければならないのである。
遵法精神から就労したい職員の権利と義務の否定であり容認しがたい。全水道東水労は常に高率の、スト権一票投票の批准を誇示しており、当局に圧力になっていることを宣伝している。裏面に闘争課題が書かれており、多数により批准された場合は、組合の指令に従い団結して行動する旨誓約するとの文章がある。しかし国労広島地本組合費請求事件.最三小判昭50.11.28民集29-10-16等のとおり、争議行為は違法なので組合員に対する内部統制権は否定されている。組合員の圧倒的多数がストに賛成しても、その違法性が減殺されるわけではない。非組合員はもちろん組合員においても違法争議行為の勧誘.説得に応じる義務はないことは確定している事柄である。
したがって、公務員の職場においては管理職が職務命令を発出して、スト参加者を切崩したとしても、支配介入には当たらない。にもかかわらず、当局は、口が腐っても組合の意向に従っているか、あるいは忖度し職務命令をやらないのである。
東京都は、組合を刺激する職務命令は凍結状態で、組合に下手に出るのが管理職の処世術としてまかりとおっている。しかしまともな官公庁や自治体、公共企業体は、職務命令をきちんとやっているので改めなければならないということである
(六)ストライキ決行時の非組合員を締め出す目的で三六協定破棄の対抗策
組合と当局が共謀して非組合員を締め出す口実として用いられている点については、それなりの対策が可能なので、この闘争の対応策は抜本的に改める必要があると考える。
私の提案は、三六協定未締結時の業務命令について理論的説示のある仙台鉄道管理局事件.最二小判昭48.5.25の判旨に沿って、非組合員に時間制限のない職務権限を与えた場合、たとえ労基法上違反であっても、時間外の職務遂行は正当であり刑法上保護される業務であると判示した論理を利用すべきだと思う。
本件は、労務課に所属する非組合員がビラ剥がし作業中、国労.動労の春闘支援に動員された全電通組合員によって顔面を殴られたので傷害罪だけでなく公務執行妨害罪が成立したものである。
被害者Aに対し発せられた「本件職務命令は、昭和三九年四月一五日午前六時から仙台駅構内において組合員の行動の監視、違法行為の阻止および排除等の任務に従事すべきことを内容とし、執務時間についてはあらかじめ制限を付さない趣旨のもの」であつたというのであり、最高裁は時間制限のない命令を認めている。ただし三六協定未締結なので「就労を拘束的に義務付ける部分の効力に影響を及ぼし」うるとも説示している。
水道局では組合が出勤時限以前に非組合員がICカードリーダにより電磁的に出勤記録を入力することを許さないことを方針とし、当局も就業規則違反と違法行為は承知でその方針に従っている。出勤時限以前の登庁から締め出すのが組織ぐるみの方針であるゆえ、逆にストライキ対策本部を立ち上げ、労務担当職員だけでなく、名目的であっても非組合員全員を召集し、春闘仙台事件の被害者と全く同じ権限を付与することを提案する。
状況としては仙台駅事件の被害者と同じ状況にすることにより、最高裁判例により労基法上違法な業務であっても、刑法第234条によって保護される業務であるは、確定した判例だからである。
これにより、三六協定が締結されていようがいまいが、時間の定めのない権限(組合員の監視等)を付与されている以上、出勤時限前の登庁は正当な行為になる。
「使用者を規制の対象とする強行規定であるが,右の目的と関わりのない、労働者とその職務執行の相手方その他の第三者との間の法律関係にただちに影響を及ぼすような性質のものではない」とした仙台鉄道管理局事件・.最二小判昭48.5.25は相当な重みがあるというべきで、組合が文句いっても粉砕できるのである。
そんなことをしなくても、出勤時限前の登庁は服務上の基本的義務履行なので全く合法だが、組合が三六協定破棄を口実に管理職の意思を制圧して、基本的義務履行を妨げ業務命令をさせない違法行為をやる以上、その対抗措置をとるということである。
もっとも、仙台駅事件判決が、就労を拘束的に義務付けることには影響及ぼすとの見解があるため、三六協定未締結の時間外では、非組合員全員が監視、記録、写真撮影などに協力するとは限らないし、やってくれればそれにこしたことはないが、抗議活動で管理職に暴力をふるった場合はその証人にもなってくれるだけでもよい。たんに名目的な権限付与により、組合側のスト当日の出勤入力阻止について三六協定未締結を口実にさせないことだけでもよいのだ。
組合の論理を否定して、ストライキ時就労命令することができるようにできれば、目的は半分以上達成していることになるのである。
非組合員にこの任務を与えるのは、スト当日組合員の立て看板等工作物の設営、ビラ貼り、ピケットなどの組合員の行動の監視、抑止だけでなく、就労命令、中止解散命令、職場復帰命令をしないで組合となれあっている管理職も監視してもらうという趣旨である。
スト対策本部に上申し事実と確認できれば、管理職も違法行為に加担したとして処分する。
この提案は組合と非組合員を対立することになるので、呑めないと当局はいうだろうが、現状の就労命令をしないで、違法行為と犯罪構成要件該当行為を是認している在り方は改革しなければならないのであり、攻勢に出ることは必要である。
当局が本気で取り締まる。従来の本部中闘だけに絞るやり方でなく、事業所勤務の組合員も懲戒処分の対象となりうる。違法争議行為に内部統制権がないことがわかれば、組合員でも良識的な部分はストから離反していくはず、正常化のために必要である。
内閣法制局意見昭32.9.9法制局一発22号(前田正道編『法制意見百選』766頁従来更新を重ねてきた三六協定の更新拒否が、超過勤務自体の条件改善のためではなく、労使間の他の要求貫徹の手段としてなされるときには、禁止された争議行為にあたるという趣旨)とこれに近似した見解をとっている北九州市交通局事件・最一小判昭63.12.8民集42-10-7、三六協定締結拒否を争議行為と認定しているので、全水道東水労の三六協定破棄闘争は、争議行為と判断される可能性が高いとみてよい。
とはいえ当局は適法としている。組合の権利行使と言うだろうから、仮にそうだとしても、ストライキ配置の前日と当日は必ず三六協定破棄をしているので、この戦術は、事実上、職制麻痺闘争であり、管理職の時間外の労務指揮権を消滅させることによりスト突入を有利にすすめる争議行為に付随する行為とみなしてよいと思う。そしてその目的の一つが、非組合員の出勤時限前に入庁してICカードリーダに出勤入力させない。管理職、職制にストライキ準備行為の抑止や就業命令等をさせないことにある。
三六協定破棄じたいがグレイだとしても、争議行為目的という点ではクロ、違法行為目的の行為であるから、この場合、労働基準法違反だとしても、法秩序全体の見地から、一方的に労働法優位、組合に有利な結論にはならないと判断する。国鉄や郵政では三六協定未締結でも業務命令していた。
今後は、経常業務で不可欠な業務と、あらかじめ時間外にされていた時間外に委託業者発注の監督、検査業務などは日程を動かせないので、三六協定破棄の時間外でも業務命令することを提案する。
また組合が管理職に下位職を押し付ける、管理職を組合が顎でこき使う滑稽ないやがらせはやめさせ、業務命令する。
くわえて非組合員の出勤時限前に入庁してICカードリーダに出勤入力することを妨害させないため仙台鉄道管理局事件・最二小判昭48.5.25の判例法理をそのまま活用する。非組合員全員をスト対策本部に召集し、時間制限のない組合員の行動の監視、違法行為の阻止および排除等の権限を付与するものとする。権限を付与する業務命令なら、就労が労働基準法の制限を超えたからといつて、そのために職務の執行が具体的権限を欠いて違法となるものではないと最高裁は言っているので、三六協定破棄でも、出勤時限前の入庁が正当化され、職制はこれにもとづき、出勤入力して就労命令を堂々とできることになるからである。
三六協定を争議行為目的に利用させないための対抗措置であり、非組合員の就労する権利と義務の侵害をなくすためである。この対抗策を提案する。
[i] 呉市立中学校教研集会学校施設使用不許可事件最三小判平18.2.7
判批[本多滝夫2007]は判旨を6項目に分けているが、学校教育特有の項目を除くと以下の5項目とみなすことができる。
判旨1 学校教育上支障がなくても不許可とする管理者の裁量を認める
目的外使用の許可は「学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。」
判旨2 裁量権の濫用として違法となるかどうかは、社会通念審査+判断過程合理性審査による
「管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時、場所、目的及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である。」
判旨3 職員団体の使用の必要性が大きいからといって管理者に受忍義務はないとする国労札幌地本ビラ貼り事件・最三小判昭54・10・3と類似の説示。
「教職員の職員団体は、教職員を構成員とするとはいえ、その勤務条件の維持改善を図ることを目的とするものであって、学校における教育活動を直接目的とするものではないから、職員団体にとって使用の必要性が大きいからといって、管理者において職員団体の活動のためにする学校施設の使用を受忍し、許容しなければならない義務を負うものではないし、使用を許さないことが学校施設につき管理者が有する裁量権の逸脱又は濫用であると認められるような場合を除いては、その使用不許可が違法となるものでもない。」
厳密に言えば地方自治法238条の4第7項(旧4項)の目的外使用許可の判断枠組みは一般私企業の指導判例である国労札幌地本判決とはかなり違う。同判決は「当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては‥‥正当な組合活動として許容されるところであるということはできない。」という特段の事情論であるが、風穴は開けられていないし、行政裁量のような、判断過程合理性審査はとらないのであるから、一般私企業の施設管理権とは一線を画しているが、受忍義務はないという趣旨は同じということである。
判旨4 従前の運用と異なる取扱についての判断枠組
「従前、同一目的での使用許可申請を物理的支障のない限り許可してきたという運用があったとしても、そのことから直ちに、従前と異なる取扱いをすることが裁量権の濫用となるものではない。もっとも、従前の許可の運用は、使用目的の相当性やこれと異なる取扱いの動機の不当性を推認させることがあったり、比例原則ないし平等原則の観点から、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となったりすることは否定できない。」
判旨5 事実関係に過大考慮・過小考慮定式を当てはめる判断枠組
「本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。」
本件使用不許可が裁量権の濫用という結論に導いたのが以下のように、判断過程合理性審査における過大考慮・過小考慮定式を当てはめたことにある。
(1)当然考慮すべき事項を十分考慮していない
A 教研集会は教育特例法19条、20条(平成15年改正で21条・22条)の趣旨にかなう自主研修であることを考慮してない
「教育研究集会は、被上告人の労働運動としての側面も強く有するもの‥‥教員らによる自主的研修としての側面をも有しているところ、その側面に関する限りは、自主的で自律的な研修を奨励する教育公務員特例法19条、20条[平成15年改正で21条・22条・引用)の趣旨にかなうものであり‥‥使用目的が相当なものである」
コメント-これが本件を裁量権の濫用とする決め手ともいえる。一審広島地判平14.3.28民集60巻2号443号は、市教委に積極的に研修の場として学校施設を確保すべき配慮義務があるとし、本件を、目的外使用の問題ではなく、設置目的に沿った使用の問題と捉えているような行論を展開している[安藤高行2010]。こまの、最高裁も教研集会に好意的だった一審の論理構成に引きずられた感がしないでもない。
行政法学者の仲野武志[2007]は、教研集会には教職員の人事、労働条件等の分科会もあり、純粋に労働運動として性格が表れており、自主的研修としての性格と、労働運動としての性格を別個の対象事実として捉え、労働運動としての性格を重視したとしても適正な考慮であるはずと批判的な見解を示している。
B 学校施設でなく他の公共施設を利用する場合利便性に大きな差違があることを考慮してない。
「教育研究集会の中でも学校教科項目の研究討議を行う分科会の場として、実験台、作業台等の教育設備や実験器具、体育用具等、多くの教科に関する教育用具及び備品が備わっている学校施設を利用することの必要性が高いことは明らかであり、学校施設を利用する場合と他の公共施設を利用する場合とで、本件集会の分科会活動にとっての利便性に大きな差違があることは否定できない。」
(2)重視すべきでない考慮要素を重視している(過大考慮)
A 右翼団体の妨害行動は過大考慮である
「過去‥‥学校に右翼団体の街宣車が来て街宣活動を行ったことがあったという‥‥しかしながら、本件不許可処分の時点で、本件集会について具体的な妨害の動きがあったことは認められず(‥‥実際には右翼団体等による妨害行動は行われなかった‥‥)、本件集会の予定された日は、休校日である土曜日と日曜日であり、生徒の登校は予定されていなかったことからすると、仮に妨害行動がされても、生徒に対する影響は間接的なものにとどまる可能性が高かった」
B 教研集会の政治的性格は過大考慮である
「教育研究集会の要綱などの刊行物に学習指導要領や文部省の是正指導に対して批判的な内容の記載が存在することは認められるが、いずれも抽象的な表現にとどまり、本件集会において具体的にどのような討議がされるかは不明であるし、また、それらが本件集会において自主的研修の側面を排除し、又はこれを大きくしのぐほどに中心的な討議対象となるものとまでは認められないのであって、本件集会をもって人事院規則14-7所定の政治的行為に当たるものということはできず、また、これまでの教育研究集会の経緯からしても、上記の点から、本件集会を学校施設で開催することにより教育上の悪影響が生ずるとする評価を合理的なものということはできない。」
コメント-仲野武志[2007]はこの説示についても、人事院規則14-7第6項の犯罪構成要件にならない限り使用目的の相当性の考慮対象事項になせないと解されるが、そのような絞り込みの根拠は必ずしも明確でないと疑問を呈し、全体として過大考慮・過小考慮の判定の根拠は脆弱だとする。最高裁は不許可処分を違法とする論理の脆弱性を補強するために、従前の運用と異なる取扱から「推認」された「動機の不当性」(処分は、県教委等の教育委員会と被上告人との緊張関係と対立の激化を背景として行われたことを指すものと思われる)を補強論理としているが、これがなければこの判例は批判を免れることができなかったと述べているが同感である。
私は、最高裁が行政財産の目的外使用不許可の司法審査で、過大考慮・過小考慮定式を加えたことに批判的な見方をとる。
なぜならば、この審査方式の先例が神戸市立工業高等専門学校においてエホバの証人の剣道実技履修の拒否のため原級留置となったため退学処分とされた事案で、処分は、裁量権の範囲を超える違法なものした最二小判平8・3・8民集50-3-469なのである。これは信教の自由や教育を受ける権利という人権にかかわる深刻な問題で、違憲判断にしてもよさそうな事案、密度の濃い司法審査であるのは当然であってそれに対して本件は管理者が広範な裁量権を有する庁舎管理権の事案で同列の問題とはいえないからである。
とはいえ、最高裁の先例として確立している以上、行政財産の目的外使用不許可は、過大考慮・過小考慮定式による判断過程の合理性審査に耐えられる判断でなければならない。しかし過大考慮・過小考慮定式による判断過程審査が、教研集会以外で組合側に有利に働くことはあまりないと考えられる。
[ii] 冒頭に述べたように、全水道東水労の争議行為の特徴は、組合側の大衆行動、多衆の威圧によって業務命令をさせないことにある。
闘争シーズンでない平時においても組合側は、非経常業務や土日の勤務、新しいОAの導入などについて全て組合と事前協議と言い、組合が承認しないと、非経常業務やОA機器の導入が難しいという職場の慣行がある。問題は組合が強く抵抗するものについて業務命令しないことである
古い話、平成13年頃ですが、既に1人1台パソコンが設置されているのに使わないで共用パソコンだけ使わせるとか、電磁的な記録では信用できないので、電話で受け付けたことすべてハードコピーをとって、ファイルにつづる業務確立闘争をしていたので紙であふれていた時期があった。ジョブコントロールをする。当局と本庁の方針は、一人一台で事前協議があってパソコンを導入しているので、現場まで徹底していないのは業務命令をさせていないということで、争議行為とみてよいと思う。
組合の方針で非能率的で仕事のさせ方になってしまったケースはほかにも重要な例があるが今回は触れないこととする。
自己申告制度(МBО)は1990年代民間企業で成果主義の導入として流行し、都では平成15年頃から始まったものだが、東水労は、自己申告制度を形骸化させる闘争として、数値目標は絶対に書くな、組合が記載例のひな形を示しそれをなぞった記述とするよう指導しているから、毎年同じことを書いている人が多い。組合員にコピーの提出を求めているので検閲されている。
○○課長代理は令和元年に、非組合員の新人2年目の職員に数値目標は絶対書くな、書くとあなたのためにならないと指導していた。
しかも面談は強要しないといる勝手なルールが分会レベルの管理職との協議でまかり通っており、目標管理制度でふりながら目標成果の進行管理はなく実質、異動希望者に異動先をきくことだけの制度になっている。
当局の公式の方針は、分会と現場管理職の協議で捻じ曲げられる、職務命令をさせないで組合が業務管理しているという点で争議行為といってもいい。
イベントでの広報活動、防災訓練、保健所支援、コロナ感染者の宿泊療養ホテル業務、国体やオリパラの動員、被災地支援などの業務については組合との事前協議したうえでのことで、これらは総じて協力的。
令和2年の4月初め新型ウイルスの緊急事態宣言より少し前、知事部局でスピーカー付きの広報車が足りないということで、水道局に支援を頼んできた事例で、広報車の巡回のような広報活動も、組合との事前協議があり、管理職対応などの注文をつけていたように記憶している。
私が平成20年水道緊急隊工務係の庶務経理担当の時、応急給水時に水を入れるリックサック型の袋を購入し、緊急隊だけでなく各支所にも配布したところ、組合から事前協議がないから受け入れられないとして、庶務課長のほうから苦情があった怒られたことがあるが、
組合対応は係長の役目だが、新しい仕事を持ち込むときは全て事前協議と言ってくる。
組合活動や組合が認めない非経常業務に職務命令をしないという慣例は、ガバナンス上改めなければならないと思います。
なお、非経常業務はОA導入が事前協議というのは、以下の労働協約が根拠と思われる。
労働条件に関する重要事項に関する取扱い等に関する協約
東京都水道局(以下「甲」という。)と全水道東京水道組合(以下「乙」という。)は職員の労働条件に関係する重要な事項の取り扱い等について、次のとおり協約を締結する。
(事前協議)
第1条 甲は、業務能率の向上等のため職制の改廃又は事務の改善等を行うに当たり、職員の労働条件の原則に著しい変更を生じることなる場合、その変更を生じる部分について事前に乙と協議することとする。
(福利厚生)
第2条 甲は、職員の福利及び厚生のための事業及び施設の改善に努めるものとし、その実施については乙と協議する。
(安全衛生)
第3条 甲は、安全及び衛生に関する事項について職員の意見を聞くため、安全及び衛生に関する委員会を設置するものとする。
以下略
終戦の日の戦没者追悼や震災犠牲者追悼の日の黙祷などもそうで、組合は強制を認めてないので、私は全て出先勤務なので黙とうしたことは一度もない。
本庁勤務したことがないので知らないが、たぶん政府から通知があるので黙祷していると思う。夏は28度、冬は20度という空調の設定温度はと本庁ではそのとおりやっているはずだが、出先の事業所では全然そうではない。
組合のいいなりになった事例としては、少し古いが、香淳皇后の斂葬の儀(平成12年7月25日)である。当時千代田営業所勤務だったが都税事務所との合同庁舎で弔旗が掲出されないだけでなく、政府より午前10時の黙祷時刻が要請されていたが、組合役員が仕切って、庁内放送を切り、黙祷すべき時間の前後、赤腕章をした分会役員が空席の所長席前に立って、組合の反天皇制の趣旨から黙祷の強制に反対の演説を行い黙祷をさせないようにした。管理職は演説をみないことにして責任を逃れようとする、組合と示し合わせていたとみるほかない。
平成21年11月12日陛下の御即位二十年奉祝記念日ももちろん国旗掲出なし(当時中野営業所勤務)。消防署や筆者が勤務する杉並区は革新系の区長だか区の施設などは、終戦の日など戦没者追悼のため弔旗を掲揚している。水道局は、そもそも国旗が倉庫にないのでやらない。都税事務所と同居していた千代田営業所も同じです。
平成24年8月都の政策に協力するため尖閣募金啓発ポスターが水道局庁舎にも貼り出されたときも、お客様から尋ねられても職員は対応せず、管理職対応にするということになっていた。というより当時震災のため蛍光灯を間引きしていて、暗いトイレの前の廊下の全く見えないところに貼付されていた(中野営業所の例)。
[iii] 鈴木善幸首相時代の昭和56年10月・11月に開かれた第95回国会の衆議院及び参議院の行財政改革における特別委員会においては、国鉄におけるヤミ慣行、ヤミ協定、ヤミ休暇、ポカ休等の問題がとり上げられ、職場規律の乱れが指摘された。また昭和57年3月頃から一部の新聞、月刊誌等において鉄労の内部告発をもとに、国鉄労使悪慣行の実態「ヤミ手当」「カラ超勤」「ブラ日勤」「突発休」「時間内洗身入浴」「時間内の食事の仕度」「現場協議における管理職のつるし上げ」等の職場規律の乱れについて厳しい批判が展開されたのである。報道は、国鉄の現場管理者の弱腰・軟弱とそれを制度的に保障する現場協議制を諸悪の根源とみなしていた。
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