« 2025年12月 | トップページ

2026年1月の1件の記事

2026/01/10

YouTube台本 委員会に付託されなかった 水道局における三六協定破棄闘争(職制麻痺闘争)対応実務に関する陳情 

 本件は、次の陳情は、委員会へ付託せずに関係議員に写し(又はその要約したもの)を送付し、閲覧に供するとされた。「 基本的な人権を否定するなど、違法又は明らかに公序良俗に反する行為を求めるもの」と判断されたことは甚だ不満だが、争わず受忍したが、動画を作成しました。

 

 

 水道局における三六協定破棄闘争(職制麻痺闘争)対応実務に関する陳情

(令和7年162号陳情提出原文)

 

(願意)

一 水道局における全水道東水労の三六協定破棄闘争について、当局は正当な行為とし、管理職も定時退庁を職員に指示し、職員部は組合との保安協議で認められた業務を除き、時間外労働の業務命令をしてはならないと厳命しているが、正常な業務運営を最大限確保していくべきであり、今後は、労基法32条の法内超勤命令(局の1日の所定労働時間は7時間45分なので15分は法内超勤)を行ううえ、当日8時間の法定時間を越えても、経常業務や不可欠な業務と、時間外に年間計画で委託業者と契約している業務の監督、検査などは日程を動かせないのであるから、職務命令を凍結せず、三六協定が破棄されても違法承知で業務命令する方針に是正していただきたい。

 

二 水道局営業所における三六協定破棄闘争で、組合役員により時間外の経常業務(窓口レジのスタンバイ、つり銭準備等の下位職務)代務を管理職に指図する嫌がらせが行われるが、所長が組合役員の下手に立って使われる筋合はなく、職員に業務命令するよう是正していただきたい。

 

(理由)

 水道局と全水道東水労の時間外労働に関する協定(三六協定)は常時締結され1年で更新されるが、「この協約は、あらかじめ乙が指定する日については、保安のために必要な要員に限定して適用する」という組合が一方的に破棄できる条項があり、令和5年度は、1115日、12192021日、123日、31112日を指定して超勤拒否闘争を実施した。近年では年間10日を超えないが、平成16年には9日間連続の超勤拒否闘争を行った。

 組合が職制の指揮権を麻痺させる目的で、信義則に反する三六協定を破棄できる制度が織り込まれている。保安要員は浄水場、水運用センター等水供給に支障なく、突発事故に対応できる人員とされるが、保安要員を置くこと自体正常な業務運営ではない。

 当局は保安協議で組合が認めたケースを除いて、時間外の労務指揮権を凍結し、業務命令を行わないことを厳命し、組合役員による管理職の下位職代務の指図も認容している。

 しかし三六協定未締結闘争について内閣法制局意見昭3299法制局一発22号は、「もっぱら他の争議行為目的のための争議手段として三六協定の締結、更新を拒否するときは争議行為にあたり、そうではなく、超勤に関する労働条件そのものを改めることを目的として協定の締結、更新を拒否する場合には争議行為に当たらない‥‥特定の事業場において時間外又は休日の労働の行なわれることが常態であり‥‥当該事業場における業務の運営が経常・普通の状態にあると客観的に判断しうる事情の存するときは、「業務の正常な運営」が阻害されたことになる」と説示している。

 北九州市交通局事件・最一小判昭63128が法制局意見に近似した見解をとり三六協定未締結闘争を争議行為と認定したことから、都水道局の三六協定破棄闘争も争議行為と認定される可能性は高いと考えるが、当局の見解は、北九州市バスでは平常ダイヤ9勤務に超勤が組み込まれているので争議行為とされたのであって、水道局の三六破棄は争議行為でないと言っている。

 仮にそうだとしても、最高裁は仙台鉄道管理局事件・最二小判昭48525で、職務命令に労基法強行規定の違反があつたとしても就労を拘束的に義務付ける部分の効力に影響を及ぼし得るにとどまり、職務執行の権限を付与する性質の部分についての効力にまで消長をきたすべき理由はないと述べ、倉敷駅信号所事件・岡山地判昭50117(信号所代務を助役に命じた)は、業務命令が労基法上違法であるからといって、それに基づく業務が刑法234条の業務に該当しないというものではない。刑法上保護される業務としては業務主体がその地位において行なう業務であれば足りると判示。

 国鉄荒尾駅事件・福岡高判昭3787は三六未締結で助役に機関士の職務代行を命じたことは、公労法1条、労基法33条の法意に照らし正当とする。

 国鉄八代駅事件・熊本地判昭40319は三六未締結で退社後の助役に駅構内の警戒取締りを命じたことは、抽象的職務権限が時間的に拡張するにすぎず、公務の執行として刑法第951項によって保護されるとし、福岡高判昭4149は、労基法33条、日本国有鉄道法332項により容認されると説示している。

 国鉄は三六未締結でも業務命令していた。先例を総合的に判断して、この種の労働事件は、具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、法秩序全体の見地から判断されるので、労基法の罰則規定が絶対とはいえないから、三六未締結でも職務命令し、正常な業務運営を確保すべく、最大限の努力をすべきで、違法承知で職務命令する方針に是正されるべきである。

 

(理由-AIの要約を補正)

 

 水道局と全水道東水労の三六協定(時間外労働に関する協定)は常時締結され、毎年更新されています。しかし、「保安のため必要な要員に限定して適用する」という条項により、組合は特定の日を指定して一方的に協定を破棄し、超過勤務拒否闘争が行われます。令和5年度には指定日として7日間にわたり実施され、過去には最大9日連続で行われたこともあります。この仕組みにより職制の指揮権に影響が及び、通常の業務運営とは言えない状況が生じています。

 当局は組合が認めた場合を除き、時間外の業務命令を厳しく制限し、組合役員の指図による管理職代務も認めています。一方で、三六協定未締結闘争が争議行為に当たるかどうかについて、内閣法制局意見や最高裁判例があり、過去の事件では状況により争議行為と認定されたケースもあります。ただし、当局は水道局の場合は争議行為ではないと言っています。

 また、最高裁などの判例から、労基法違反があっても職務執行それ自体違法とはならず、刑法上保護されるの「業務」に該当すると判断されています。国鉄の過去事例では、三六協定が未締結でも職務命令が正当とされたケースもありました。これら先例を踏まえると、三六協定未締結でも職務命令を行い、業務運営の維持に努めるべきだと考えられます。

 

8三六協定破棄闘争(職制麻痺闘争)-違法でも業務命令する方針に改革すべし  

81 問題点の提起

労働基準法の三六協定が締結されている場合、労働者は定めるところに従い、時間外労働義務があるということは、日立武蔵工場事件・最一小平31128(三六協定が締結されている状況の残業拒否等を理由とする懲戒解雇を是認)で確定した事柄である。

水道局ではそうでなく、年中行事のようにやっている超過勤務拒否闘争は「三六協定一方的破棄闘争」である。当局は全面的に適法であるとして、組合との保安協議で合意がない限り、管理職の業務命令を凍結する対応をし、争議行為の疑いの強い行為を実質支援している。

昭和20年代から国労、全逓が多用した遵法闘争の一つが、三六協定未締結闘争であった。職制を麻痺させ、ストライキと同じ効果があるがストライキでないと偽装する闘争といえる。時間外の下位職務を助役に押し付けるようなことも行われていたが、水道局の場合は未締結闘争ではなく、もともと協約が期間満了でなくてもいつでも一方的に破棄できるものとして超勤拒否闘争が組み込まれているものである。

そもそも三六協定は、近代市民法の契約の相対効に反する異様な制度であり、世界的にも類例はない。労働基準法の母法であるアメリカの1938年公正労働基準法は、長時間労働抑止が立法目的ではない。30年代の大恐慌を背景として追加的な賃金の支払を避けるために雇用を拡大することに向けて財務上の圧力を加えることにより、ワークシエアリング、失業者救済、雇用創出が目的だった。大恐慌時代の産物で恒久的制度としては疑問なのである。又、米国では排他団体交渉制度であり少数組合はないのであって、我が国のような過半数組合や過半数代表との協定の義務付けはなく(労働協約を政府が強要すると違憲になると考えられる)、たんに超過労働時間の割増賃金支払いの義務があるだけである。私は新自由主義的労働政策(サッチャー・メジャー政権、年少者以外労働時間規制なし、豪州自由党のオーストラリア職場協定やニュージーランド国民党政権1991年雇用契約法の政策は時間外労働の賃率は個別交渉で契約自由とし、労働組合の関与を否定するものである)を支持するので労働基準法はオーバーホールが必要だと思っていたが、安倍政権の政策はホワイトカラーエグゼンプションではなく、真反対に争点潰し政策として、労働時間規制強化という著しく左傾化した政策が実施されことは非常に遺憾である。これは主題から脱線するので論点を戻すが、三六協定が官公労の闘争に利用されてきたことも大きな問題だったといえるのである。

1)三六協定破棄闘争とは

労働基準法は、原則として一週間について40時間、一日について8時間を超えて労働させてはならないとし(321項)、この法定労働時間を超えて適法に労働させるには、事業主が、事業場ごとに、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合、労働組合がない場合は従業員の過半数代表者と書面による協定を所轄労働基準監督署長に届け出た場合(36条)に、その効果を発生するとされ、これは使用者を規制の対象とする強行規定で、相手方労働者の同意・承諾があっても違反が許容されないとされており、悪質な場合は罰金が科される可能性がある。

水道局と過半数組合である全水道東水労の時間外に関する協定(三六協定)では1年おきに更新されるが、第10条で「この協約は、あらかじめ乙が指定する日については、保安のために必要な要員に限定して適用する」という組合が一方的に破棄できる条項があり、令和5年度は、1115日、1219.20.21日、123日、311.12日を指定して超過勤務拒否闘争を実施した。近年では年間10日を超えることはまずないが、毎年恒例であるほか、業務手当闘争のあった平成16年には9日間連続の破棄闘争などがあって、かなりの日数超勤拒否闘争を行った。

保安要員は浄水場、水運用センターなどで水供給に支障なく、突発事故に対応できる最低限の人員である。しかし保安要員を置くことを自体がすでに正常な業務運営ではない(なお、保安要員の範囲は、私が水道特別作業隊に在籍していた当時、庶務係や企画担当も含めて保安要員だったものが、平成20年の給水部の部署と合併して水道緊急隊に組織改正されたが、技術系職員と事務職員もいる工務係が保安要員から外れている)。

つまり、争議行為が組みこまれている時間外協定なのである。当局は三六協定の現場締結や、短期間で更新するような在り方より安定的と判断して現在の協約の形式になったのかもしれないが、信義則に反していつでも破棄できる。

いつでも組合側の都合で職制の労務指揮権を麻痺させる悪意のある目的で、三六協定を破棄できると制度が織り込まれていることは、1300万都民のライフラインを預かる企業としてはリスクを抱えているように思える。

ところで労働基準法33条は、災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合に、使用者が行政官庁の許可を得て、法定労働時間を超えて労働させたり、休日に労働させたりできることを定めているが、災害時には三六協定破棄状況でも所定の参集事業所、応急給水施設等に出務せよということを局は職員に周知していない。

周知せずとも問題ないというかもしれない。この点は平成16年の業務手当闘争時など9日連続の協定破棄闘争がなされた時を別として、災害発生の多い土日に破棄闘争を行うことはなく(例えば平成1610
23
の新潟県中越地震は土曜日、平成20614岩手・宮城内陸地震も土曜日)、平成5年度が年9日間といってもそれは、平日の1715分から830分までの時間外労働をさせない闘争なので、これは全体の0.016%にすぎず、確率的にいって大災害に遭遇するのはきわめて稀にしかありえないとはいえる。

とはいえ想定外のリスクではないからきちんと対処すべきではないのか。

2)三六協定破棄闘争の問題点の要旨

水道局の三六協定破棄闘争の問題点は多岐に及ぶが要約すれば以下のとおりである。

〇そもそも三六協定(超過勤務及び週休日の変更に関する協定)を一方的に破棄できる協約は事実上職制麻痺闘争を当局が是認しているので問題はないのか

〇当局は適法と言っているが昭和32年内閣法制局意見によれば争議行為ではないのか

〇組合は三六協定破棄により、時間外労働に関して労務指揮権が消滅するという見解をとっているが法秩序全体の見地から妥当とはいえないのではないか。

〇組合が時間外の経常業務を管理職に押し付ける(下位職代務)いやがらせに問題はないか

〇必ずストの前日は三六協定を必ず破棄した状況におく狙いは、非組合員の就労阻止、締め出して事故欠勤にさせる狙いである。組合側の論理では、就業時間前は、所長の労務指揮権は消滅しているので、カードリーダに電磁的に出勤記録を入力させないものとし、よって事故欠勤を強要するものだが、出勤時限前の出勤記録の入力は服務上の基本的義務で、水道局長が建前として服務規律の確保を示達しているにもかかわらず、実際には違法行為に全面協力し、組合と管理職が共謀して事故欠勤を強要しているあり方は違法性が強いと判断する。

組合と管理職共謀による非組合員の締め出し、出勤停止指示は違法と考えるが、非組合員を締め出してむりやり全員参加でストを成功させる。これが三六協定破棄闘争の最大の目的と考える。

管理職は、労基法違反になるので、コンプライアンスとして非組合員を締め出すという言い分になるだろうが、しかし三六協定未締結により職制の労務指揮権が消滅するという見解は間違いである。

実際、国鉄は三六協定未締結の時間外労働であれ業務命令は行っている。

〇労基法33条により災害時には三六協定未締結にかかわらず、時間外労働の命令ができるということは周知されていない。たぶん、当局は三六協定破棄闘争を適法と認めているのでいやがるだろうが、防災は東京都の重点政策である以上、東京都の職制麻痺闘争に異様に好意的な立場は問題である。

災害時の緊急対応参集は、第1非常配備要員は震度5弱で発令を受けて参集、震度5強以上で発令を待たず参集。第2.3非常配備要員は震度5強以上で発令を受けて参集するそれ以外の全職員(免除者除く)は震度6弱以上で発令を待たず参集して、それぞれの任務につく。毎年訓練も行っているが、私も応急給水拠点要員を10年以上経験しており、夜間休日の発災時には駆けつけることになっていた。平成23年の大震災では、計画停電対応や323金町浄水場で放射性ヨウ素を検出した時も当局は一部の職員に超過勤務を命令している。

指標値以上の放射性ヨウ素は地震から十日以上たってからの騒ぎで、もし三六協定破棄でも命令できたのかという問題がある。

東日本大震災も春闘の際中でその数日後に三六協定破棄闘争に入る予定があった。この時は闘争を中断し7月に闘争を延期したが、三六協定破棄闘争中止までの機関決定に時間がかかっており、闘争中に災害等があった場合、組合員は三六協定未締結では労務指揮権は消滅するという組合の宣伝で洗脳されているため、本当に出務してくれるのか不透明な面がある。

実際、私の職場では平成6年能登地震支援業務に出張する新人職員に、組合役員が三六協定による月間の労働時間規制があるので、超勤は規制の範囲で申請し、翌月に申請を回すようアドバイスしているのを聴いたが、災害関連業務の超過勤務は一般会計予算であり、33条により時間外労働協定と無関係に時間制限なく超勤させることができるはずである。

国会でもこの質問があり、労働時間規制とは無関係に超勤可能と政府は答弁していた。この点、管理職の認識を問い合わせたが、返答はない。組合役員でも、災害対応は、三六協定の適用外となりうるとの認識がない人がいるのである。

 

3) 所長に「下位職代務」の押し付け

国鉄の職場が荒れたのも元をたどれば三六協定の現場締結が原因だという[升田嘉夫『戦後史のなかの国鉄労使-ストライキのあった時代』明石書店2011]。

 1980年代国鉄における職場規律の乱れが国会でも追及されるようになり、国民・世論の厳しい批判を受けたことは周知のとおりである。国労は三六協定締結拒否で「助役の下位職代務」仕事を押し付けるなどいやがらせを行っていた 。

水道局でも管理職に下位職代務のいやがらせはやっている。実際、窓口を定時にオープンするためには、出勤時限定時830分以前にレジの準備が必要であり、協定未締結時は、組合役員の指図で管理職がレジの準備等をさせている。

実際、令和51115日の三六協定破棄の前に杉並営業所では役員の〇〇〇〇が〇〇所長に、8時半前の経常業務は所長がやるように指示し、所長は従っていた。大抵の管理職は平身低頭して担当者から仕事の段取りを教えてもらい組合役員の唯々諾々従い、本来管理職の仕事ではない下位職業務を代務している。とくに三六協定拒否闘争のない知事部局から異動した管理職、組合に指図されて不快に思っているに違いないが、もくもくと従うのが処世術とされている。

組合の指図で管理職が働く滑稽な姿を見せつけ、職場を支配していのは組合であることを誇示するのである。

 

4) 三六協定破棄の真の目的 (スト当日に就業命令させない口実にする陰謀)

 組合は、三六協定未締結の状況で、出勤時限前の労務指揮権が消滅しているので、スト参加の説得に応じない非組合員などの出勤時限前の入庁とICカードリーダに出勤入力はできないとの見解を示すことがあり、管理職も同調し、非組合員の締め出しに加担する場合がある。

そもそも、当局は、組合側の争議行為は当局の労務指揮権から離脱するものだから、業務命令を行ってはならないという学説にしたがってストライキに対し就業命令等職務命令はいっさいしないことになっているが、争議中であることを理由として、国公法981項の上司の命令に従う義務を免れることはないと明示した神戸税関事件.最三小判52.12.20の判例で就業命令が適法であることは確定していることであるのに東京都は全く無視しているが、それだけでなく三六協定未締結なので、830分以降でないと就業命令は無効という屁理屈で職制の労務指揮権と、非組合員等職員の就労の権利を全面的に否定するのである。

つまりICカードリーダは、82959秒までに入力すれば、出勤と記録されるが、830分に入力すると遅参となる。組合の言い分は82959秒まで、三六協定未締結なので労務指揮権が消滅し、出勤入力を含め業務命令すれば、刑事処分だと脅し、非組合員も出勤入力させないで、スト完全防衛に管理職を加担させるという趣旨。

組合は非組合員に出勤入力をさせないことに注力しており、管理職もそれにしたがって非組合員に出勤入力を否定する言辞が実際にあった。事故欠勤の強制である。

出勤時限前にICカードリーダに出勤記録を自ら入力することは、「勤務時間等規程」、「処務規程」、「事務処理要領」などの規程上、職員の基本的な服務上の義務と東京都水道局長(行政処分取消等請求)事件・東京高判平26.2.12労判1096が説示していることで、三六協定破棄によって、服務上の基本的義務が否定されることはありえないし、それに同調する管理職は就業規則違反を指導することであり許されないことであるにもかかわらず、管理職は就業規則違反と法令違反を職員に強要する。地方公務員法32条違反の服務規律違反をやらせることが、東京都では管理職の努めになっている。

 

82 新方針

  

郵政では全逓の三六協定未締結は全逓の常套手段であったが、法内超勤は業務命令していた。水道局の日勤定時退庁の労働時間7時間45分なので、あと15分は法内超勤できる。15分の超過勤務命令は違法ではなく、よってレジの準備などの下位職の代務を管理職が行うべきでなく、超勤命令すればよいのである。

さらに18時間を超過する違法な超勤も不可欠な業務と予め日程に組まれていて委託業者に影響のある業務は違法であっても業務命令するものとする。

今後はスケジュールで事前に予定されていた時間外の業務、経常業務で時間外のもの、それを中止すれば委託業者等の実務に工事の日程に支障があるもの等、必要不可欠な時間外の業務は、三六協定未締結でも業務命令する方針に変更するものとする。

国鉄は、国労や動労が三六協定未締結でも業務命令することは通例であり、動労とは乗務員の身柄確保の争奪戦をやっていたのである。国労であれ動労であれスト指令でなく国鉄の業務命令に従う職員はそれなりに存在していた。郵政でも名古屋中郵第二事件のようにやむをえない場合は三六協定未締結で業務命令している。

労基法321項所定の一日8時間超え労基法上違法であっても違法を承知で業務命令するということである。

労働基準法の適用を受ける者に対する職務命令が、同法所定の労働時間の制限を超えて就労することをもその内容としており、かつ、その者の就労が右制限を超えたからといって、そのために職務の執行が具体的権限を欠いて違法となるものではない。刑法234条によって保護される業務に該当すると最高裁の判断がある。

  • 仙台鉄道管理局(春闘仙台駅・公務執行妨害罪)事件・最二小判昭48525刑集2751115である。
  • 倉敷駅信号所(威力業務妨害罪)事件岡山地判昭50117刑裁資料228187も同趣旨。
  • 名古屋中郵第二(威力業務妨害罪)事件・最二小判昭5333民集3229は一審・二審で争点になった三六協定について言及せず、名古屋中郵事件方式の「法秩序全体の見地」から一刀両断に業務妨害罪の成立を認めている。

それゆえ労基法違反承知で、経常業務維持の最低限の業務命令を行う方針とする。司法は国鉄久留米駅事件大法廷判決から、争議行為がからむ問題では「法秩序全体の見地」から労働法の市民法に対する優位という判断はとらないはずだ。

83 新方針の理由その1-三六協定破棄闘争は争議行為の疑いが極めて濃い 

1)内閣法制局意見昭32.9.9に従えば、水道局の事例は争議行為である

内閣法制局意見昭32.9.9法制局一発22号(前田正道編『法制意見百選』766頁)がもっぱら他の争議行為目的のための争議手段として三六協定の締結、更新を拒否するときは争議行為にあたり、そうではなく、超勤に関する労働条件そのものを改めることを目的として協定の締結、更新を拒否する場合には争議行為に当たらないとしている。

‥‥『業務の正常な運営』とは、業務の運営であって、経験則に照らし、経常・普通の状態にあると客観的に認められるものというと解されるが、特定の事業場において時間外又は休日の労働の行なわれることが常態であり、また、そういうことが行なわれることによってのみ当該事業場における業務の運営が経常・普通の状態にあると客観的に判断しうる事情の存するときは、労働組合が当該協定の有効期間の満了により、時間外又は休日の労働行なわれなくなった場合は、当該事業場における『業務の正常な運営』が阻害されたことになるといいうるところであろうと考えられる。してみれば、このような事情のもとに労働組合が当該協定の更新を拒否する行為は、争議行為にあたるといいうる‥‥‥労働組合が労働基準法第三六条を引用して協定の更新を拒否しているにかかわらず、労働組合以外の者が当該協定の更新の拒否をもって争議行為にあたると主張するためには、労働組合による当該協定の更新の拒否が、もっぱら時間外労働又は休日労働以外の事項についての労働関係に関してその保持する主張を貫徹するのに有利であるかどうかの判断に基き、ただその目的を達成するがためにのみなされたものであることを立証しなければならない‥‥

 この趣旨によれば、水道局は12月の局内闘争は三六協定の更新は闘争課題ではないから、3月の春闘は、三六協定が交渉事項とはいえ、他の闘争課題による争議行為があるから、いずれも争議行為といいうる。

2)北九州市交通局事件・岩淵正紀判解によれば、水道局のケースも争議行為とされる可能性が高い 

 三六協定未締結闘争について大きく分けて三つの見解がある

〇信義則に反する違法行為である

〇争議行為である

〇労働者側の正当な権利行使である

初期の労働委員会の裁定に三井造船事件岡山地労委の裁定(昭26.4.27命令) 『労働法律旬報』77(1951)がある。会社は時間外労働協定の拒否ないし保留行為に対し造船業と残業の特殊関係、特に造船工程中、残業が計画中に織込まれている点、永年の慣行であった点、従来累次の協定締結の際何らの紛議を生じなかった点等を挙げ右行為はこれ等の現実を無視し、信義則に反するものとして不当なる争議行為と主張したが、このまっとうな主張は認められず、本件は違法不当な争議手段ではないとした。

私は信義則に反するという見解はまっとうなものと思うが初期の議論だけである。

そこで北九州市交通局事件最一小判昭63.12.8民集42-10-73の岩淵正紀判解の分析に沿って検討することとする。

 

  • 北九州市交通局事件・最一小判昭63.12.8民集42-10-73について

本件は、三六協定締結を拒否した超勤拒否闘争が、地公労法111項違反であり、懲戒処分を適法とした原判決を是認したものである。

福岡地労委の救済命令取消訴訟で、一審棄却、二審原判決取消、救済命令を取消す。上告審棄却。

(争議行為の概略)

北九州市の交通事業は西鉄バスと競合関係(但し若松区は独占)にあって赤字が累積し、運賃改訂、給与改定、人員削減、高齢者退職完全実施、ワンマンカーへの移行等による再建計画案を作成し、北九州市交通局労組と協議を重ねたが意見の一致をみず、最終案を昭和42615日市議会に上程し(73日本会議可決)、621日~23日、627日から71日まで及び73日三六協定締結更新拒否による超過勤務拒否闘争(養護学校スクールバスおよび福岡行き定期便を除く)、ディーラー整備員入構拒否、完全点検闘争、五割休暇闘争が行われた。

闘争によるバスの欠行率は、6/21 8.04%6/22 8.55%6/23 4.19% 6/27 8.48%6/28 8.60%6/29 3.90%6/30 6.62%7/1 6.40%7/2 1.47%7.3 36.79%であった。

北九州市交通局長は、12名の行為 が、同市交通事業の業務の正常な運営を阻害する行為であって、地公労法111項に違反し、北九州市交通局就業規程第9011号、地方公務員法第29条第1項第1、第3号に該当するので、前記の如き争議の計画、指導及び実行を行った執行委員長もしくはその他の役員である前記訴外X1ほか12名に対し、昭和四二年八月二日付をもって懲戒処分を行った。

停職6か月3(1、X2、X3バス運転手、うち1人執行委員長、)。停職3か月4(4、X5、X6、X7、X8バス運転手3人と事務1人、うち書記長1人、副執行委員長1)、停職1か月4(9、X10、X11、X12バス運転手2、車掌1、整備士1、うち中央委員1)。  

北九州市交通局においては運行ダイヤの編成にあたっては事業管理者への諮問機関として労使双方の委員によって構成されるダイヤ審議委員会の審議を経て定められていたが、本件紛争当時の公示ダイヤは参加人側の同意のもとに一日約九勤務の超過勤務ダイヤを組み入れており、超過勤務拒否が行われれば正常なダイヤ運行に支障をきたすことは労働組合も充分承知のうえでこれを争議行動の手段として行ったものである。

二審・福岡高判昭55.10.22労民3151033(救済命令取消)は、労働組合が超過勤務の正当性を是認しながら超過勤務に関する労働条件自体ではなく、労使間の他の紛争について自己の要求を貫徹する手段として三六協定の締結ないし更新を拒否することは、同盟罷業に該当する(後述内閣法制局意見と同じ)。

②に労働組合の参加しているダイヤ編成審議会の審議を経て定められたダイヤ編成において、超勤が恒常化され、それを拒否すれば平常のダイヤ運行に支障を来す状況の下で労働組合が三六協定の締結ないし更新拒否により超勤拒否闘争を行ったことが地方公営企業労働関係法111項に禁止する争議行為に当ると判示する。

上告審(棄却)

「被上告人経営のバスの運行ダイヤは、労使の委員によって構成されるダイヤ編成審議会の議を経て定められていたが、当時の公示ダイヤは、上告参加人の同意のもとに一日9勤務が時間外勤務ダイヤとして編成されており、被上告人の交通局においては、このダイヤを実施するために超過勤務が恒常化していて、超過勤務拒否があれば、平常のダイヤ運行に支障を来す状況にあつた、‥‥上告参加人は、本件財政再建計画についての労使の交渉が難航することが予想されるようになった同年4月ころから、同協定を1日ないし数日の期間を定めて締結、更新しつつ事態の推移をみていたところ、同年615日本件財政再建計画案が市議会に上程されるや、前記戦術委員会の決定どおり超勤拒否闘争を行うこととし、バスの正常な運行のための同協定の締結、更新方の当局の要望を拒否して、右決定に係る期間各部門において組合員に時間外勤務を拒否させた、というのである。

‥‥交通局においては、従来から上告参加人同意のもとに三六協定の締結、更新を前提とした超過勤務が平常勤務として組み入れられてきたところ、上告参加人は、当該超過勤務自体に関する勤務条件については格別の要求を有していた事情は認められないのに、本件財政再建計画の実施阻止という要求を貫徹するための手段として、三六協定の締結、更新を拒否し、組合員に時間外勤務を拒否させて本件超勤拒否闘争を実施したということになるから、右超勤拒否闘争は、地公労法111項の禁止する争議行為に当たるものといわなければならない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。‥‥」と説示する。

 

 岩渕正紀調査官判解によれば三六協定締結拒否闘争は大きく分けて3つの見解があると説明している。

A説(吾妻昭俊「遵法闘争の法理」『季刊労働法』15号)

争議行為とは使用者の業務の正常な運営を阻害する、右の「業務の運営」とは法令に従った業務の運営に限られるものではなく、現に行われている通常の業務をいうものと解されるから、三六協定を締結するか否かは本来労働者側の自由に属すること事柄ではあっても、超勤自体が通常の業務に含まれている場合には、右協定の締結、更新を拒否することは業務の正常な運営を阻害するものであり争議行為にあたる。

B説(内閣法制局意見昭32.9.9法制局一発22号(前田正道編『法制意見百選』766頁)

もっぱら他の争議行為目的のための争議手段として三六協定の締結、更新を拒否するときは争議行為にあたり、そうではなく、超勤に関する労働条件そのものを改めることを目的として協定の締結、更新を拒否する場合には争議行為に当たらない。

C説(松岡三郎『條解労働基準法上』443頁、西村信雄ほか『労働基準法論』187頁、野村平爾『労働関係調整法(法律学全集)』106頁)

法外超勤は三六協定が締結されてはじめて可能であるから、協定の成立前に右超勤を前提とする正常な業務の運営というものは存在しえない。従前三六協定が結ばれていたからといって、直ちにその終了後、それを更新する義務が労働者側に課せられているとはいえないから、右期限経過後は新たに労使双方の意見の合致により協定の締結されることが法外超勤の前提になる。したがって、労働者側が新協定の締結を拒否したからといって業務の正常な運営を阻害したことにはならない。

 

岩渕正紀判解は、「本判決は、一般論としては右三説のうちどの立場をとるのか明らかにせず、本件の事案のもとにおいて、参加人組合が三六協定の締結、更新を拒否した超過勤務拒否闘争は争議行為にあたると判断したものであるが、三六協定の締結更新を前提とした残業が恒常化している職場において、労働者が、三六協定の締結、更新を拒否することを、他の要求を貫徹するための手段として用いたと認められる場合に、争議行為の成立を認めたものであるから、基本的には、B説かそれに近い立場を前提としている‥‥」と述べる。

 

岩渕判解がB説に近いと解説していることからみて、三六協定の締結更新を前提とした残業が恒常化している職場であることは、交通局と水道局に大きな差異はなく、同じ結論になるとみるのがふつうに思える。

平成15年に管理職を通じて、職員部当局に尋ねたのですが、北九州市交通局はバス運行で超過勤務が平常勤務に組み込まれていたが、水道局はそういう事情はないので適法との見解であり、過半数組合の正当な権利行使とするが、私は異論をもつ。

つまり東京都水道局当局は、本判決から超勤しなければバスの平常ダイヤが運行できなくなるような特殊なケースに限って争議行為と認定した事例と狭く解釈している。

なるほど、水道局職員は一日九勤務のバス運転手と違って常に超過勤務が義務付けられている勤務形態ではない。しかし実際に営業所では平時は一般職員が始業時前に超過勤務しており実際手当も払われ、闘争時は管理職に窓口を開けてレジのつり銭の準備などを押し付けているだけでなく、年数回であるが、年間計画で時間外に指定している、ワックスがけなどの庁舎内清掃の監督、検査業務に超勤手当が予算化され実施されていて、広い意味で、経常業務は時間外労働に組み込まれているのである。ノーマルな業務で超勤があることに大きなへだたりはない。また闘争のある年末や年度末は繁忙期であり、残業する職員は少なくなく、給水部で配水管の取替、敷設替え等水道工事の夜間工事は頻繁にあり、近年は業者への委託が多いとはいえ、職員と合同の作業、少なくとも監督業務はあるので、時間外労働がなければ水道局の業務は成り立たないことはいうまでもない。

内閣法制局意見昭32.9.9法制局一発22号(前田正道編『法制意見百選』766頁)の趣旨に沿ってみてみると、水道局は12月の局内闘争は三六協定の更新は闘争課題ではないから、3月の春闘は、三六協定が交渉事項とはいえ、他の闘争課題による争議行為があるから、いずれも争議行為といいうる。

交通局と水道局の違いは、バス運転手19勤務(毎日超過勤務)の職場か、超過勤務は頻繁にあり、それなくして業務は成り立たないが職員が毎日超過勤務を義務づけられてはいないという違いだけである。また水道局当局が三六協定破棄闘争は争議行為に当たらず、適法な組合の権利としている根拠は薄弱といえる。

また水道局の1日の所定労働時間は、7時間45分だから法内超勤であと15分は労基法上違法とはならない。レジの準備や金庫にしまう下位職務は管理職ではなく業務命令すべきではないか。

 またB説(内閣法制局意見)は「業務の正常な運営」とは必ずしも厳格な法律的意味において「適法な業務の運営」と解すべきでなく、労使関係における慣行的事実も考慮において、慣行的に期待される「通常の業務運営」をさすという石井照久『新版労働法』367頁の考え方に近く、慣行的事実としては平常において超勤がない職場はないという点は、交通局と水道局も同じであって、組合は超勤が必要な職場であることは一年間の有効期限で三六協定を締結していることでも明らかであつて、北九州市交通局の三六協定締結拒否が争議行為であっても、東京都水道局がそうではないと確信できる材料などない。水道局の三六協定破棄闘争も争議行為と認定される可能性は高く、少なくともB説と、北九州市交通局判決と先例がある以上、違法な争議行為の疑いが強い行為といえる。

 補足して、他の学説も引用する。プロレイバー学説は労基上の原則(一日8時間)を越える慣行的事実が正常などいうのはありえないという立場だが、それは一部の学説にすぎないのであって、参考までに、岩淵判解が引用していない学説も引用するが、慣行的に期待される通常の業務運営を阻害すれば、それは正常な業務運営とはいえないという説が有力なのである。

 

( 争議行為であると言う説)

イ 吾妻光俊

 争議を有利に解決する手段としておこなわれる順法闘争は「ノーマルな業務」を阻害しているかぎり争議行為となる。法律の評価としては実質的な争議行為として価値評価する観点から、時間外労働拒否は正真正銘の争議行為とする。「遵法闘争の法理」『季刊労働法』151955

 三六協定拒否については「協定拒否を行った労働組合または争議団の主たる意図が、その拒否を他の争議目的のためにする争議手段とするにあった場合には、労調法、公労法にいう「労働争議」の定義ないしその関連においてはこれを「争議行為」とみるべきであり、したがって協定拒否に対して争議目的になっている係争問題につき当事者は労委.公労委に調整を申請し、また労委・公労委は法律の規定に従い調整に乗り出すことができると解される(‥‥)。協定拒否の主たる意図が、これを他の争議目的のためにする手段とするにあった場合には、労調法の争議行為禁止との関連においても、協定拒否をこれら法条にいう争議行為と解すべきである(公益事業での争議手段としての協定拒否には労調法三七条の予告義務が課せられ、労調法三六条との関連においても同条にいう争議行為と解すべきである)。」とする。

 さらに「公労法、公務員法等の争議行為禁止との関連において、協定拒否がこれらの規定にいう「業務の正常な運営を阻害する行為」、「争議行為」または「政府(ないし地方公共団体の機関)の活動能率を低下させる行為」に該当するかどうかは、協定拒否がもっぱら他の争議行為目的のためにする争議行為のためにする争議手段として用いられた場合にかぎり、右規定にいう争議行為と解し、当事者の意図がかような点にあったと認められるかどうかは、拒否を右規定にいう争議行為と主張する側において立証する責を負うと解すべきだろう。副次的にも協定拒否が法律上非正常な時間外(休日)労働の常態化をあらためようとする意図に発するものであるかぎり、争議行為の禁止規定に触れると解することは時間外労働の常態化を法律が保障する結果になるからである。」と述べているが、時間外労働が副次的な闘争課題とされることよくあることであり、この点プロレイバー学説に接近しているといえる。『註解労働基準法』青林書院新社1960

 

ロ 石井照久

労使関係においては慣行的事実が尊重さるべく、期待された業務の通常の運営が阻害される限り」順法闘争は争議行為となる。『労働法』1954

 

ハ 三橋正

「通常順法斗争と呼ばれる一連の斗争手段は、組合も争議戦術と呼び、社会通念的に又社会事実的に争議行為と考えられている通りに「業務の正常な運営を阻害し」「争議目的の貫徹のためになされ」る限り、労調法七条、従って公労法一七条の云う争議行為であると考えられる。」『不当労働行為の諸問題』勁草書房1955256

 

ニ 大野雄一郎

三六協定締結拒否でなく、たんに超勤拒否戦術について言及し、一斉休暇戦術、勤務時間内職場大会、いわゆる定時出勤戦術と同じく、時限ストの類型に属する。公務員・公企体の職員の場合争議行為に合法の衣を装わせるためにストライキと呼ばない工夫をした名称をつけたにつぎないとする。『争議行為法総論』日刊労働通信社1967

 

ホ 林迪広

 「怠業・順法闘争」『労働争議論 浅井淸信教授還暦記念』法律文化社1965は、

 「順法そのものを目的とする順法闘争はともかく、他の争議目的達成のための手段たる順法闘争においては、それを労使間に生じている紛争を全体的に直視して位置づけるならば、結局は「労働関係における意見の不一致」を原因として順法闘争が行われていることは明らかである。したがって‥‥法的意味での争議行為たる一定要件を満たす」 ‥‥結論的にいえば「労調法第七条にいう『正常』な業務の運営とは使用者の労働者使用に関する指揮・支配権能が他のものに阻害を受けずに事実上円滑に行為されている状態をさすのであって、この場合においては、使用者の指揮・支配の内容が個別的契約関係の権利義務にてらして適法なりやいなやを価値的に判断することを前提とせず、ただ雇用関係を有する労働者に対する使用者の事実としての指揮権限が、労働組合の事実行為による阻害によらず貫徹されている状態をいう‥‥ 

 

へ 中村博(労働省大臣官房秘書課長、中労委次長、人事院公平局長)

 この場合の残業命令については残業義務が発生を認めるという説と、その場合でも個別の合意が必要とする説があるが、仮に後者をとるとしても、組合の意思に基づいて、個々の労働者の合意による残業義務の発生を抑制することになるので、正常な業務運営を阻害するので争議行為となるとする。昭和32法制局一発第22号の法制意見を妥当とする。『公務員の争議行為と処分』中央経済社1971108頁以下

 

ト 恒藤武二 

我が国では一般的ではないが、争議行為とは同盟罷業、怠業、業務管理の三種類に大別して概念を整理すべきと云い、「怠業とは、団結した労働者が、使用者に対抗するため、その労働契約の履行を部分的に拒否すること=労働契約の不完全履行」「怠業とは能率低下(スローダウン)による典型的な怠業のみでなく、定時出勤、順法闘争、上部遮断スト、納金スト、などのようなやや変則的な争議行為を包括し、さらに残業拒否、時限ストのような労働契約に基づくその日その日の労働義務の一部分を履行しない形でなされる争議行為を包括し」と述べ、「怠業」は争議行為の範疇なので残業拒否=争議行為説である。

「サボタージュ」日本労働法学会編『新労働法講座4』労働争議 有斐閣1967年所収

 

( 労働者側の正当な権利行使とする説)

チ 沼田稲次郎

三六協定が有効要件を欠くか有効期限が切れた場合「組合としても、個々の労働者としてもいつでも時間外労働を拒否できる。権利濫用などというトンデモナイ議論の生じる余地はない。」また時間外労働拒否だけの争議行為もできるとしている。労基法36条は32条の例外であるとして「争議状態においては、労使は対立状態に在るわけであって、かゝる場合においてまで、使用者のための恩典的例外を労働者に受忍せよというのは労働良識上認めがたいことである」と反市民法的見解を述べ「労働者側が第32条の原則に遵うという態度(遵法斗争)を以て36条の例外を拒否することは当然である」とする。

「遵法斗争と権利濫用-三井造船事件に関連して-」『労働法律旬報』77(1951)

したがって、争議行為という認識を示しているが、順法闘争は権利の行使であるから、争議権の濫用にあたらず、争議禁止規定にも該当しないとする。プロレイバー学説。

 

3)東京都水道局事件・東京高判昭43.4.26労民集192623は先例にならない

本件は、実質「三六協定」なしに各支所・部局単位でその都度時間外労働の条件を組合支部と交渉して時間外労働が行われている状況で、公務のために臨時の就労があったとしても、その時間外勤務命令を拒否する行為が地公労法111項に当たるものと解することはできないとして、地公労法12条解雇を無効とした事例である。

三六協定だけの交渉過程で勤務命令拒否が争議行為にあたるかと言う事案で、内閣法制局見解が争議行為としないケースに近いとはいえるが、現在の在り方とかなり違うのである。

つまり三六協定が各事業所とも一年間で更新する形で締結され、夜間作業や残業が常態としてあり、組合も時間外労働がふだんは認めている状況で、ストライキ前段の戦術として協定が一方的に破棄されるというのが今日の在り方なのであるから、これを先例とみなすことはできない。

なお本件では水道局と東水労本部と昭和368月に「三六協定」とされるものは締結されており、超勤時間の最高限度と有効期間を定め、さらに具体的な協定は支所、部局単位で締結することになっていたが、控訴審は本部との協定を「三六協定」とみなしていないのである。

北一支所長と北一支部長は三六協定について合意が得られず協定を届け出ていなかったのであり、その都度組合支部と時間外労働の条件を交渉して時間外勤務を行う慣行であった。

組合員は、昭和37416日から勤務時間外の午後10時と午前5時の二回制水弁を操作する作業の要請を受けこれを行った。北一支部は北一支所長に対し、組合員に14時間15分相当の超勤手当と翌日の完全休養を要求し、支所長は420日まで認めたが、421日以降の作業は支部要求を認めなかったので、時間外労働を拒否し、その理由として三六協定が締結されていないということを言い出した事案で、局は組合の就労阻止行動が地公労法111項に違反するとして、同法12条によりXら4名(中央委員・青年婦人部長、支部書記長、中央委員・支部長、支部執行委員・組織部長)を解雇したものである。一審東京地判昭40.12.27労民166121は、水道局が主張した「業務の正常な運営」とは日常的慣行的に行われている現実の業務形態であるという主張を否定し、慣行化、状態化を正常な運営視できないとし、労働法規侵犯としたうえで、法の趣旨は事業場毎の協定であるとし、12条解雇を無効とした。

控訴審も棄却し解雇を無効としたが、東水労本部との協約は労基法36条が要求している協定の内容ではなく、各支部を拘束しないとして、三六協定は成立していないとしている。

 

4)小括 違法承知で業務命令すべき

結論は争議行為である疑いがきわめて強い。しかし東京都労務管理当局は組合寄りなのであくまでも争議行為とされた北九州市交通局事件は特殊なケースとする。私は水道局もこの事件と大きな隔たりはなく内閣法制局意見に近い判断をとっていることから、水道局でも争議行為といえると言う見解だが、けっきょく水かけ論になり1本調子の議論になってしまうので、このさい、仮に争議行為でないとしても労働基準法では違法だとしても、次節で詳細に検討するとおり労働基準法の適用を受ける者に対する職務命令が、同法所定の労働時間の制限を超えて就労することをもその内容としており、かつ、その者の就労が右制限を超えたからといつて、そのために職務の執行が具体的権限を欠いて違法となるものではなく、これに対して暴行脅迫を加えたときは公務執行妨害罪の成立を妨げないと解するのが相当であるとの最高裁判例があるのだから、労基法上違反の職務執行は権限を欠いて、それ自体違法になるわけでなく、刑法上も保護されるという見地に立ち、労基法違反を承知で職務命令する在り方に切り換えるべきだと思う。

つまり職務の遂行は刑法234条により保護されることは最高裁判例で明らかである(仙台鉄道管理局事件)。調査官解説によれば「労働基準法違反がどの程度に法律上の効果を及ぼすかについては、労働者の保護と関係ない事項について、労基法違反があってもただちに当該事項を無効としなくてはならないものではない。」、組合がいうように労基法の強行規定だから、絶対的だということではないのであって、組合からみて違法でも、地公労法1条と111項の趣旨に従うなら、正常な業務運営とは労基法321項の原則どおりの勤務をさすのではなく、慣行的事実(通常は三六協定が締結され経常業務も含め、超過勤務は全職員でないとしてもふつうのことである)期待された業務の通常の運営が阻害されることだという説が内閣法制局の見解で、時間外労働でも必要不可欠な業務と年間計画でスケジュールが決まっている業務、業者に委託しているが職員が監督する業務は、日程を動かせば委託業者に迷惑がかかるから、違法を承知でそれらの業務は業務命令する方針に変えるということである。

 

やむをえざる特段の事情があるから、あるいは法秩序全体の見地からみて局側が一方的に非難されることはありえない。久留米駅事件方式、名古屋中郵事件方式の「法秩序の全体的見地」とは市民法・公法と労働法が衝突する場合、労働法を優位とみる考え方をしないのである。国鉄では国労や動労が三六協定未締結で、マス・ピケによる説得連行や列車運行阻止する争議行為をやるとき、国鉄は乗務員を確保するため業務命令や、乗務員争奪戦をやり、実際に国労でも動労でも国鉄の業務命令に従う組合員がいたし、それが悪いということではないので、違法承知で業務命令するべき。

 

84 新方針の理由その2-労基法違反の時間外労働でも職務の執行は違法にならないとする先例

組合は、労働基準法36条の協定未締結で、時間外の、職制の労務指揮権と職員の職務遂行を無効にできると考えているようだが、三六協定未締結で、労基法321項所定の労働時間に違反する業務命令に基づく業務であっても、刑法上の保護を失うものではないことについては、以下のような判例がある。ひととおり概要を述べたうえで判例法理の分析を行うものとする。

1)国鉄荒尾駅事件・福岡高判昭3787下級裁判所刑事裁判例集478644

三六協定未締結で助役にストで運転室から離脱した機関士の職務代行を命じることは、公労法1条、労基法33条の法意に照らし正当とする。

公務執行妨害、建造物侵入被告事件

一審熊本地裁判決(掲載誌不詳)を破棄自判

被告人懲役六月執行行猶予2年 以下抜粋一部要約

国労熊本地本大牟田支部が昭和三一年七月一八日午前八時頃から国鉄荒尾駅職員休憩室において職場大会を開催し被告人等がその指導監督に当つたこと、上り1186貨物列車が同日午前八時二〇分三〇秒に荒尾駅通過の予定となっていたこと、Y駅長が同月一七日М助役に対し、運転係の職場大会参加を想定して、職務の代行を命じ、翌十八日を迎え職場大会出席のため運転室の職場から離脱したことを聞知するや、再び運転係の代務を命じた。М助役は一八日当日は非番日であつたが業務命令に従って急遽運転室に赴いて閉塞器の操作をなさんとしたところ、被告人等は閉塞器の前に立ちはだかって、その上半身や腰を用いてМ助役の身体を押しのけたり等して暴行を加えたためМ助役は遂に閉塞器の操作をなすことを得なかつた事実を認めることができる。

М助役は公労法第四条に基き非組合員に指定され、運輸従事員制及び職務規定により、助役の服務は駅長の服務に関する規定による旨、及び駅長を補佐し又は代理する旨定められているとはいえ、出退社について厳格な制限を受けない者に該当するとは解し得ないので、労基法第四一条第二号所定の「監督若しくは管理の職にある者」とは認められないから、労基法第三六条の協定が締結されていなければ、駅長といえども、М助役に対して業務命令により時間外勤務に就かせることは、同法に違反するものというべきであり、国鉄当局と国労との間に当時三六協定が破棄された状態にあったことから、業務命令は一見同法に違反するもののごとくでもある。 

しかしながら、列車事故の防止又は公企業たる列車の正常な運営を確保する必要がある場合、たとえば、天災、交通事故の発生、その他正常な運転に支障を来たす異常な事態に直面する等、避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合には、その必要な限度において、労基法所定の労働時間を延長し、又は休日に労働させ得ることは、公労法第一条、労基法第三三条の法意に照し、当然の事理といわねばならない。

‥‥列車の正常な運営に支障を来たす異常な事態に直面したものというべく、かかる緊急事態に対処して、М助役をして閉塞器を操作するため、その職務に就かしめることは‥‥避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合に該当するものと解するを相当とする。それ故М助役が非番の者であつたとしても、同人に運転係の職務の代行を命じ、労働時間の制限を超えることは、その必要な限度を逸脱したものとは到底考えられず、且つ同助役は運転考査を経ている‥‥業務命令は毫も違法の点なく、従ってМ助役の右閉塞器操作の職務執行は適法性に欠くるところはない。

 

なお公労法1条の法意とは「正常な運営を最大限に確保し、もつて公共の福祉を増進し、擁護することを目的とする。」これは地公労法も同じである。労基法331項は「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。」

2)威力業務妨害事件・名古屋高裁金沢支部第二部判決・昭401020

「就労が労働基準法違反の就労であるとして、‥‥同法が労働者の労働時間を制限した趣旨は労働者の保護にあるから、労働者が自ら就労し業務を遂行しようとする場合、右就労が同法所定の労働時間の制限に違反するものであつても、労働者の業務遂行そのものまでを違法視して右業務を威力業務妨害罪の保護対象から除外すべき理由はない」とした。(掲載誌不詳・引用は仙台鉄道管理局事件の検察官上告趣意書)

 

3)国鉄八代駅事件・熊本地判昭40319高等裁判所刑集193292

三六協定未締結で退社後の助役に駅構内の警戒、取締り業務を命じたことは、抽象的職務権限が時間的に拡張するにすぎず、公務の執行として刑法第九五条第一項によって保護される

ホーム上のデモ行進 一審 建造物侵入公務執行妨害傷害 被告人を懲役六月、執行猶予二年 以下抜粋一部要約

被告人は国労城南支部執行委員長として、昭和三九年二月二七日午後五時過頃より、国鉄八代保線区前広場で行なわれた春闘要求貫徹総決起大会を指導した後、午後五時四〇分頃組合員約百名を三列縦隊のデモ隊に編成し、自らその先頭に位置し同隊を指揮、誘導し、隊員の一人に命じて八代駅貨物室横出入口の扉の止め金を外して扉を開かしめたうえ、ワッショイ、ワッショイと喚声をあげながら行進する右デモ隊員を従えて、同駅一番ホームに故なく侵入し、ホーム上をデモ行進中、駅構内の警戒取締に従事中の、助役Оが、被告人等の進路前方からデモ隊を退去させるべくその行進を制止しようとしたのに対し、行進を続けて右Оに肉迫し、左手で同人を強く横に押し払い、よって、〇、七一メートル下の鉄道線路敷上に転落させて、治療約六ケ月を要する右大腿骨骨折の傷害を負うに至らせ、公務の執行を妨害したものである。

判断

一、職務に関係のない者が、多数で隊伍を組み、喚声をあげ、然も、管理者の意に反してかかる場所に侵入、行進することをもつて、労働組合法第一条第二項にいう正当な行為となすことはできない。

二、О助役については始業及び終業の時刻が定められていたこと、時間外就労に対し労働基準法所定の超過賃金の支払がなされていたこと、管理職手当の支給を受けていないこと等が認められる。‥‥О助役は公労法第四条に基づき非組合員に指定されており、営業関係職員の職制及び服務の基準により、助役の職務内容は駅長の補佐又は代理と定められているとはいえ、出退社について厳格な制限を受けない者に該当するとは解しえないので、労働基準法第四一条二号所定の「監督若しくは管理の職にある者」とは認められない。О助役は勤務を終って後、駅長から時間外勤務命令を受けて、その職務についていたこと、当時国労と当局との間には同法第三六条の協定が破棄された状態にあつた‥‥そうすると同駅長のО助役に対する業務命令は同法に違反し、違法たることを免れない、ところで、公務執行妨害罪が成立するためには、公務員が、当該行為につき、事項的、場所的及び時間的に抽象的職務権限を有することを要するが、任命権者その他権限ある機関による任命その他の権限授与行為に、資格要件の欠缺等法律上の瑕疵がある場合でも、その瑕疵が外観上明白でなく、任命権者その他権限授与権者及び被任命者又は権限を与えられた者がその有効を信じ、被任命者又は権限を授与された者が事実上の公務員として行為し、形式上与えられた権限内で権限発動の具体的条件等を充足して行動する限り、これを公務の執行として刑法第九五条第一項によって保護すべき場合があると解するのが相当である。けだし公務執行妨害罪は公務の円滑なる遂行を保護することを意図するのであるが、右の如き場合事実上の公務員の職務執行をも保護しなければ、その本来の目的を達成しえないからである。

ところで、本件О助役の場合の如く、特に厳格に労働基準法による労働時間の制限に服する公務員が、時間外にその職務を執行しうるためには、任命行為と通常の勤務時間を指定する業務命令との両者によって授与された、事項的、場所的及び時間的の抽象的職務権限が、時間外勤務命令によって更に時間的に拡張授与されることが必要である。即ち、О助役の場合においては時間外勤務命令はその抽象的職務権限に関係するものである。而して、本件ではО助役に対する駅長の時間外勤務命令が違法であることは前述のとおりであり、国鉄の他の駅の助役について右同様の判断を示した下級裁判所の裁判例の存することを、国鉄当局において認識していることは証拠によって明らかであるが、右の判断はそのまま凡ての駅の助役に推及しうるものでもなく、未だ最高裁判所の判断の示されたものもないこと、国鉄当局は、助役は労働基準法第四一条第二号の「監督若しくは管理の地位にある者」に該当するとの見解に立って、職員を指導し、H八代駅長及びО助役もこの見解に従って行動していたことが証拠上明らかなこと、前記違法が適法に与えられた抽象的職務権限を時間的に拡張する点に附着するに過ぎないこと等を考慮すると、本件当時О助役は事実上の公務員として行為していた者というべく、その形式上拡張された権限内で、権限発動の具体的条件等を充足して行動する限り、これを公務の執行として刑法第九五条第一項によって保護すべき場合であると解するのが相当である。

被告人が他の組合員と共になした一番ホームへの侵入を、正当な行為となしえない‥‥建造物侵入罪を構成するは勿論、鉄道営業法第三七条に違反するもので、鉄道係員がこれを制止するのは適法な職務の執行といわなければならない。

控訴審は量刑不当により原判決破棄 懲役三月執行猶予一年 三六協定破棄の状況で、理由は異なるが駅長の業務命令、助役の職務執行を適法とするのは一審と同じ。

4)国鉄八代駅事件・福岡高判昭4149判タ191202

三六協定破棄の状況で退社後の助役に駅構内の警戒、取締の業務命令を発したことは、労基法33条、日本国有鉄道法332項により容認される

控訴審は量刑不当により原判決破棄 懲役三月執行猶予一年 三六協定破棄の状況で、理由は異なるが駅長の業務命令、助役の職務執行を適法とするのは一審と同じ

八代駅長Hは、国労合城南支部の春季闘争要求貫徹総決起大会が同日午後五時過から八代駅付近で開催されるとの情報を入手し、同日午前九時頃勤務中のО助役を含む八、九名の助役を駅長室に呼んで駅構内の警戒、取締のため退社時間後も勤務に就くよう業務命令を発したことが認められる。しかして(国鉄当局と国労との間に当時第三六条の協定が破棄されていた)、原判決は右業務命令を違法とするが、О助役の行為は適法な職務執行としての外形を備えており、右違法は同助役に適法に与えられた抽象的職務権限を時間的に拡張する点に付着するに過ぎないから、Оの本件デモ行進の阻止行為は刑法九五条第一項に所謂公務の執行というべきであると判示したこと所論のとおりである。そして、右証拠によって認められるО助役の始業及び終業の時刻が定められていて、時間外の就労に対し労働基準法所定の超過勤務手当の支払がなされていたこと、同助役は管理職手当の支給を受けていないこと、国鉄八代駅の規模、同駅の職員の数、助役の職務内容並びに数等諸般の事情を考察すると、О助役は公共企業体等労働関係法第四条にもとづき非組合員に指定されており、業務関係職員の職制及び服務の基準により助役の服務は駅長の服務に関する規定による旨及び駅長を補佐し又は代理する旨定められているとはいえ、出退社について厳格な制限を受けない者に該当するとは解することができないので、国鉄当局のこの点に関する見解に拘りなく、労働基準法第四一条第二号所定の「監督若しくは管理の地位にある者」とは認められないから、同法第三六条の協定が締結されていなければ、駅長といえどもО助役に対して業務命令により時間外勤務に就かせることは同法に違反するものというべきである。‥‥

しかしながら、国鉄当局は列車事故の防止又は公企業たる列車の正常な運転を確保する必要がある場合、たとえば天災、交通事故の発生その他正常な運転に支障を来たすおそれのある異常な事態のため避けることのできない事由によって、臨時に警戒の必要がある場合には、その必要な限度においてその職員をして労働基準法所定の勤務時間を超え、又は勤務時間外若しくは休日に勤務をさせることは許されて然るべき筋合のものといわねばならず、労働基準法第三三条及び日本国有鉄道法第三三条第二号の諸規定はかかる場合に関して時間外勤務の業務命令を発し得ることを認めた律意と解するを相当とする。 

これを本件についてみるに春季闘争要求貫徹総決起大会を開催し、賃金増額要求等のための団結誇示並びに団体行動をすることが予測せられ、右総決起大会に引き続いて、参加者らによって駅構内でのビラ張りなどが行われることはいうに及ばず、多数の組合員が集合することであるから、勢の赴くところ駅構内での示威行動その他穏やかでない行動に発展し、国鉄駅業務の正常な遂行に支障を来たすのみでなく、構内の平穏と秩序を乱し、列車の正常な運転の妨害にでるなど不測の事態の発生を見るやも知れない危惧があつたことも予想されたので、予めかかる災害の発生に備えてこれを防止し、正常な運転業務の遂行を確保するために警戒取締の態勢を整えておく必要があつたことを認めるに難くない。かくて、前に説示のような災害の発生が予想されて臨時に警戒の必要があるものとして、H駅長はО助役に退社後の警戒勤務を命じたものであることを首肯するに足りるのである。‥‥国労城南支部において、八代駅長及び助役に対し右第三六条の協定破毀後の助役の時間外勤務は違法であることの申入がなされた事跡があつたとしても、H駅長の右命令は不法なものとは認められない。‥‥H駅長からО助役に対する右業務命令にもとづいてなされた‥‥デモ行進の阻止行為は適法な公務の執行というほかはない。しかして‥‥、被被告人が同助役の制止にもかかわらず、これを顧慮することなく、デモ隊を率いて前進を続け同助役に暴行を加えて傷害を与えた行為は公務執行妨害罪の成立を否定すべくもない。

上来説示のとおり原判決が被告人に対して住居侵入、並びに公務執行妨害及び傷害の罪を以て問疑したことは洵に相当であり、原判決には所論のような違法があるというは当らない。論旨はいずれも理由がない。

 ‥‥とはいえ、被告人がデモ隊の先頭に立って進行中、突然被告人の前面に走り出てデモ隊の進行を制止しようとしたО助役の行動自体にも、その職務に忠実の余りとはいえ、いささか注意力に欠くるものがあつたとの謗りを免れない点が窺われ、被告人は、同助役が線路上に転落して原判示のような傷害を負うことを予測せずして前示のように同助役を押し払ったものであり、その結果多分に偶発的な諸条件によって予期しなかつた重大な結果を招来するに至ったものと認められる等の諸事情に鑑みると、原判決の被告人に対する科刑はいささか重きに過ぎ量刑が不当であると認められるので、原判決は破棄を免れない。

 

5)浜松動労事件・東京高判昭42918判タ216

 三六協定未締結で違法な業務命令だとしても刑法上保護される

マス・ピケ事犯 威力業務妨害 控訴審原判決破棄 被告人動労中央執行委員懲役三月、動労中部地区評議会事務局長懲役二月、執行猶予一年( 最判昭45716判時605-95 上告審棄却)

 

「被告人らは、一〇割休暇闘争の名のもとに浜松支部所属の全組合員から休暇届を集約し、当局側の乗務員代替措置その他のあらゆる対策を阻止し列車の運行を停止させるとの方針にもとづき、多数の組合員および支援の労組員を動員し、当局側の再三の警告および立入禁止措置にもかかわらず、浜松駅構内に立入り、昭和36313日夜から乗務員のいわゆる説得連行または発車阻止などの闘争を行った。昭和36315日午前235分宇野発東京行き第24列車急行瀬戸号が浜松駅上りホームに到着したその頃被告両名の指揮する動労側行動隊約200名が七、八列縦隊でスクラムを組み、指揮者の吹くピーピーという笛の音に合わせてワッショイ、ワッショイと掛声を上げながら、右機関車前面に向って前進し、前方約10米の地点に達し公安職員と対峙する態勢となったが、結局午前248分頃から一斉に着手された公安職員の実力行使により53分頃排除されるまで、威力を用い日本国有鉄道の輸送業務を妨害したものである。

駅長らは電気メガホンを以って動労行動隊に対し直ちに退去するよう数回に亘って通告した」「当局側においては、・・・浜松駅で乗継する乗務員として機関士T、機関助士S・・・を予定し、同列車到着前から対策本部に待機中であったが、列車到着後動労側行動隊の出動状況から、・・・右乗務員を動労側に連去られることをおそれ、・・なお数分間右対策本部に待機させたうえ、・・・約10名の当局側護送班の護衛の下に同本部を出て、同列車に向かわせ、同日午前247分頃同列車の機関車に乗込ませて乗継を了した」

国鉄当局は、スト対策として機関士T、機関助士Sを業務命令して急行瀬戸号の代務としたわけだが、三六協定未締結の状況であることにも言及し「違法な業務命令に基づいて機関士等が本件第二四列車に乗務しているという一事によって右列車の輸送業務が刑法第234条によって保護を受くべき『業務』に該当しなくなるということはできない」(この部分の引用は仙台鉄道管理局事件の上告趣意書)としている。

6)仙台鉄道管理局事件・最二小判昭48525刑集2751115

労働基準法所定の労働時間の制限を超える公務の執行が適法とされた最高裁判例。

昭和39415日春闘仙台駅対策本部に仙台鉄道管理局総務部労働課職員全員を含む200余名を早朝から召集し、被害者Aは、駅構内の警戒および情報蒐集、組合員らの行動の監視、確認、組合員らによる違法行為の阻止、排除等の任務にあたるよう命じられていた非組合員であり、国労等の活動に備えていたが、過半を組織する国労・動労との三六協定は未締結だった。

Aが労基法所定の18時間労働を超える時間帯に列車ボディに貼付されたビラを剥がす業務をしていたところ、動員された支援組合員に半円状に取り囲まれ、激しく抗議を受けたが、なお作業を続行したことなどから、支援組合員全電通宮城県支部執行委員がAの顔部を殴りけがを負わせたことから傷害罪と公務執行妨害罪に問われた。

一審(仙台地判昭41.1.8刑集2751148は組合側の三六協定未締結なので、8時間を超えた業務は違法という主張に対し、外形的刑法的に一個と評価されうる継続的行為の中間において、当該公務員につき純客観的には具体的職務権限が消滅したとしても、その瞬間に当該職務行為が「適法」から「違法」に転化してしまうとみるべきではなく、以後の行為部分もなお「適法」なものとして公務執行妨害罪の対象となると解するを相当とするとして有罪(懲役二月、執行猶予一年)。

二審(仙台高判昭44.4.1刑集2751170は、破棄自判し、被害者Aに労働基準法上の休憩時間は与えられておらず、八時間の労働時間は、本件暴行時間の約40分前の午後2時に終了していたと認めるのが相当であるとし、労働基準法321項は、強行規定であり、たとえ相手方の同意、承諾にもとづいても、許容されることはないから、重大な違法性を帯有していたというべき命令部分をもってして、Aの職務行為に対し、公務執行妨害罪の保護法益たるに値する適法性を付与しないとして、公務執行妨害罪の成立を否定し、傷害罪の成立のみを認めた。これに対して検察官が上告した。

上告審第二小法廷(岡原昌男、村上朝一、小川信雄、大塚喜一郎)は原判決を破棄自判して公務執妨害罪の成立を認めた。村上は第6代、岡原は第8代最高裁長官である。

「原判決によれば、右Aに対し発せられた本件職務命令は、昭和39415日午前6時から仙台駅構内において組合員の行動の監視、違法行為の阻止および排除等の任務に従事すべきことを内容とし、執務時間についてはあらかじめ制限を付さない趣旨のものであったというのであり、これによれば、右命令が同人に対し、前記の職務に従事すべき労働関係上の義務を課するものであるとともに、その反面、右職務を執行する権限をも付与する性質のものであることが明らかである。一方、労働基準法321項は、就労時間の点で労働者を保護することを目的とし、また、もっぱら使用者対労働者間の労働関係について使用者を規制の対象とする強行規定であるが、右の目的と関わりのない、労働者とその職務執行の相手方その他の第三者との間の法律関係にただちに影響を及ぼすような性質のものではない。してみると、本件職務命令に右強行規定の違反があったとしても、その法意にかんがみ、その違反は、右命令のうち前記Aに対して就労を拘束的に義務付ける部分の効力に影響を及ぼし得るにとどまり、職務執行の権限を付与する性質の部分についての効力にまで消長をきたすべき理由はないと解するのが相当であって、本件における右Aの職務行為は、その与えられた具体的権限に基づいて行われたものであると認めるのに十分である。

そして、右Aの行為自体は、列車車体にほしいままに貼付されたビラを取りはがして原状を回復するというものであつて、もとより日本国有鉄道の本来の正当な事業活動に属し、作業の方法、態様においても特段の違法不当な点は認められないのであるから、右が適法な公務の執行というべきものであることは疑いの余地がない。 

すなわち、本件のように、法令により公務に従事する者とみなされる日本国有鉄道職員であって労働基準法の適用を受ける者に対する職務命令が、同法所定の労働時間の制限を超えて就労することをもその内容としており、かつ、その者の就労が右制限を超えたからといつて、そのために職務の執行が具体的権限を欠いて違法となるものではなく、これに対して暴行脅迫を加えたときは公務執行妨害罪の成立を妨げないと解するのが相当である。

そうすると、これと異なる見地に立ち、被告人の本件所為につき公務執行妨害罪の成立を認めなかつた原判決は、法令の解釈適用を誤り、ひいて事実を誤認するにいたつたものであつて、これが判決に影響することはいうまでもなく、かつ、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。」と解するのが相当であると判示している。

柴田孝夫判解は労働基準法違反がどの程度に法律上の効果を及ぼすかについては、労働者の保護と関係ない事項について、労基法違反があってもただちに当該事項を無効としなくてはならないものではない。強行規定であるから、これに違反する労働は保護にあたいせず、超勤手当請求権もないとするのは失当であるとする。

例えば契約担当社員が三六協定未締結の状況で8時間を超える超過時間に顧客と大きな契約をした、それは労基法違反の時間での職務行為だからその効果は会社に帰属しないということはないと云う。

そのようにまともな法曹は労働法の論理一辺倒の偏った考え方はとらない。

労基法違反の超過勤務であっても、職務遂行が刑法上保護されることは、以下の判例によっても補強されている。

 

7) 倉敷駅信号所事件・岡山地判昭50117刑裁資料228187

マス・ピケ事犯、三六協定未締結の状況で、信号掛が職場を放棄したため、代務として駅長から転てつ信号業務を命じられた助役2名に対し、スクラムを組んで立ち塞がり、信号所への立入を阻止し、列車32本を最高154分、最低11分間に亘って停止遅延させた事案で、久留米駅事件方式により威力業務妨害罪の成立を認める。

国労岡山地方本部副執行委員長S懲役五月、同書記長H懲役六月、執行猶予2年

 

国労は昭和40428日もしく30日全国27地方本部各一ケ所以上で3時間以上のストライキ突入の指令を発し、岡山地本は拠点駅の信号掛等当日の勤務者全員を対象とすること、地本各支部・分会から合計1,500 名程度の組合員を動員することなどを決め、429日午後10時に倉敷駅をスト拠点駅に選び、昭和40430030分より三時間ストに突入した。

 被告人Sは午前038分ころ、西信号所信号掛N他二名が右職場を放棄したため、駅長から転てつ信号業務を命じられた助役Fが就労のため同信号所に立入ろうとするや、糸崎支部組合員ほか岡山地本の組合員ら約500名と共謀のうえ、スクラムを組むなどして信号所階段前付近に10列ぐらいの人垣をつくって立ち塞がり、同人の意思を制圧して、信号所への立入を阻止するなどし、同日午前137分ころまでの間約1時間にわたり転てつ信号操作を不能ならしめた。

 被告人Hは、同日午前033分ころ、東信号所信号掛K他二名が右職場を放棄したため、午前040分すぎころ駅長から転てつ信号業務を命じられた助役Hが8名の公安職員に守られて同信号所に向うや、Tら約60名の組合員と共謀のうえ、立錐の余地もなく立ち塞がり、あるいはスクラムを組むなどして同人の信号所への立入を三回にわたって阻止し、午前140分ころまでの間、同信号所の転てつ信号操作を不能ならしめ、よって、午前039分発予定下り207号急行列車「天草」ほか山陽本線、伯備線列車合計32本を最高154分、最低11分間に亘って停止遅延させ、もって威力を用いて日本国有鉄道の輸送業務を妨害した‥‥

 

 弁護人は、FH両助役は三六協定無締結の効果をうけるから、両助役の就労は、違法と主張する。

 たしかに三六協定の締結されていない状態で時間外労働の業務命令がなされた場合右命令は明らかに労基法三六条に違反し違法なものといわなければならないが、右業務命令が労基法上違法であるからといって、直ちに、それに基づく業務が刑法二三四条の業務に該当しないというものではない。同法二三四条の業務としては業務主体がその地位において行なう業務であれば足りるものである。

 とすれば、本件においては前記のとおり両助役は倉敷駅の助役として信号業務に就労しようとしたものであり、右業務は刑法二三四条により保護される業務に該当する。また、本件ピケッティングは、いずれも右両助役の就労に対してなされた違法のものである。

本件は、職場放棄又はそのあおり・そそのかし行為自体が問題とされているわけではなく、それに付随して生じた行為が威力業務妨害の構成要件に該当するとして起訴されたものであるところ、およそ勤労者の組織的集団行動としての争議行為に際して行なわれた犯罪構成要件該当行為について、刑法上の違法性阻却事由の有無を判断するにあたっては、その行為が争議行為に際して行なわれたものであるという事実をも含めて、当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判断しなければならないものであることは、最高裁判所昭和四八年四月二五日大法廷判決(註-国鉄久留米駅事件)の示すところである。従って、威力業務妨害の構成要件に該当する本件各ピケッティング行為の違法性の判断は、基本たる争議行為(ストライキ)とは別に行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮してピケッティングとして相当性の範囲内にあるか否かが検討されなければならない。

使用者は、争議中であるからといってその操業を中断しなければならない業務を負うものではなく、争議行為によって制約されない範囲において、操業を継続することができるのである。

 労働組合の争議の相手方としての使用者による自己労働力の利用として、本来争議行為による制約をうけないものであるから、ストライキに際し行なわれたピケッティングは、単に言論の自由の範囲内のものとしての平和的説得の範囲内においてのみ許されるものである。

 両助役は倉敷駅の助役として信号業務に就労しようとしたものであり、右業務は刑法二三四条により保護される業務に該当する。また、本件ピケッティングは、いずれも両助役の就労に対してなされた違法のものであり、公安職員は、やむを得ずこれを排除しようとしたに過ぎず、ことさら組合側を弾圧あるいは制圧する行為に及んだものと認めるに足る証拠はない。

8)第二名古屋中郵事件・最二小判昭53.3.3民集32297

威力業務妨害罪、不退去罪

被告人HNは全逓の中央執行委員、オルグとして組合活動を指導、被告人Uはその当時全逓愛知地区本部執行委員長で、被告人Оはその当時全逓名古屋中央郵便局支部長。

 

一審(名古屋地判昭39.2.20判時3834は無罪

全逓名古屋中央郵便局支部は臨時大会において、昭和三四年一二月一日以降の時間外労働拒否、年末首繁忙業務(特に臨時小包便)不取扱の態度を決定し、秋季年末闘争に入っていた。

昭和三四年一二月一日午後一時頃名古屋市内集配の小包臨時便79個が同局作業棟一階発着場に到着したが、同局の全逓労組員は闘争に入っていたため、同局小包課長МN、全逓労組員SKらに対し取扱いを要請したが、同被告人らはその取扱いを拒否した。そこでМ課長は副課長に命じて、アルバイト学生数名を使用して年賀予備室へ運搬し、同室に保管し一二月三日朝現在においては同年賀予備室には小包の臨時便142個位が滞貨として残置されていた。

(註-臨時便とは、既設の取集便もしくは運送便によらず、臨時に開設された便によって、市内から名古屋中央郵便局に到達した郵便物を指す)

局長、局次長は同月二日午前、М小包課長から報告を受けたが、局長は三日の日には臨時便の滞貨の解袋処理を全逓労組員に行わせようと決意し、三日午前一〇時頃、局長室に同局の管理者一〇数名を集めて、その決意を伝え、名古屋郵政局の人事課長、管理課長らを含め午後一時頃協議し、同日午後二時から文書による業務命令を発して右臨時便の滞貨142個位の解袋処理を全逓労組員に強行させることを決定し、T次長を現場総指揮者とし、事態が紛糾すれば警察官の出動要請を考慮すると云うことも決定した。

三日午後二時一五分頃、М課長から小包臨時便の滞貨の解袋処理について口頭で作業命令を受けたU主事は、U副課長、Y普通郵便課長及び名古屋郵政局I管理課長らと共に、アルバイト学生SSHを伴って、郵袋運搬用の鉄車を押して、名古屋年賀室内にあつた臨時便の郵袋一四二個位の滞貨中一〇数個を同車に積んで同出入口からこれを作業棟受入作業室へ運搬しようとした。

被告人О、U、Nらは、組合員から連絡を受け、臨時便の郵袋を受入作業室へ搬出しようとしている旨の連絡を受け、急拠全逓労組員約二〇名と共に同年賀予備室前へ集った。そうして全逓労組員約四、五名が同室北出入口附近で同出入口から半分位出かかつていた鉄車の前に立ふさがって、右鉄車を同出入口の外側から押し返し、他の組合員約二〇名はその後方に立ちふさがり、共に内側から鉄車を押し出そうとする管理者側と二、三分の間にわたって押したり押されたりの状態を繰返した。

同日午後六時四五分頃、S局長の命を受けたK庶務課長は、同局作業棟四階年賀予備室前附近で、被告人Nに対し、口頭で同局からの退去を要求し、退去要求書を差し出したが、同被告人はこれを受取ることを拒否したので、同課長は右要求書を同被告人の足元に置き、一〇時頃迄の間同室前附近に集っていた全逓労組員に対し、携帯マイクを使用して、初めは五ないし一〇分後には一〇ないし一五分位の間隔で「当局職員以外の方は直ちに退去して下さい」「オルグの方は全員退去して下さい」などと断続的にその退去を要求した。

同日午後七時一〇分頃、S局長を含め名古屋中央郵便局及び名古屋郵政局の管理者側約三〇名は、同年賀予備室前に赴き、局長及び庶務課長らが、同所に集っていた組合員らに対し「郵便物を出すからどいてくれ」と申し向けて、М課長ら数名が同室へ入ろうとしたが被告人四名を含む全逓労組員約二〇数名ないし三〇数名は、これを阻止しようとして同室入口附近にスクラムを組んで立ちふさがり「馬鹿野郎」などとののしり同室前附近から立ち退かなかつたため、同課長ら管理者側は入室することが出来なかつた。同七時三〇分頃、制報の警察官一個小隊約三〇名が到着したが、全逓労組員は「ポリ公帰れ、そんなことで年末警戒が出来るか、警官で郵便物を扱え」などと叫んで、警察署次長及び同警備課長らのマイク、携帯メガホン、プラカードなどによる退去をしないときは不退去罪になる旨の警告に応じなかつた。そこで警官側は組合員に反省の機会を与えるため及び一個小隊では組合員を排除することは困難であるとの理由で、同八時二〇分頃同所引揚げたので、管理者側もこれに応じて同所から引揚げた。

同日午後一〇時頃、S局長及び名古屋郵政局K郵務部長から要請を受けた警察側は、計三個小隊約九〇名となって管理者側約三〇名と共に同年賀予備室前附近に赴いた。これに対して、被告人四名を含む全逓労組員は同年賀予備室北出入口前にスクラムを組んで坐り込んだので、S局長ら管理者側と警察側がこもごもマイクで退去を要求したり、退去要求文書を朗読したり、プラカードを表示したりして、同所から退去を求めたが、全逓労組員は労働歌を合唱するなどしてこれに応じなかつた。同一〇時一五分頃、管理者側が一団となって同年賀予備室へ押し入ろうとしたが、全逓労組員に押し返され入室出来なかつた。そこで同一〇時二〇分頃警察側は全逓労組員に対し「今から五分以内に退去しないときは不退去罪の現行犯として逮捕する」旨の警告を発したが、被告人四名を含む全逓労組員は依然として坐り込みを続けたため、同一〇時三〇分頃被告人四名は警察官によって不退去罪の現行犯として逮捕され、他の全逓労組員は、いわゆるごぼう抜きにより強制退去をさせられた。そこで管理者側は同一一時頃までの間に同年賀予備室内の小包臨時便の滞貨全部を同受入作業室へ運搬した。

(無罪の理由)

昭和三四年一二月三日の本件当時においては郵政省と全逓本部、名古屋中央郵便局と全逓名古屋中央郵便局支部との間には労働基準法三六条に基く時間外協定は締結されて居らず、年末首繁忙に関する諸取り決めもなされず全逓労組員に対してはこれらの協定等に基く諸手当は勿論支給されず、年末首結束表に基く勤務指定表、担務表等も作成されていなかつたことが認められる。

そうだとすれば、その労務を提供する義務は存在しなかつたものであるといわなければならない。そうして臨時便を取り扱う義務のない全逓労組員に対し、これを取り扱わせようとする管理者側の行為は違法な業務を全逓労組員に押しつけようとするものであると認められるから、右業務は刑法二三四条にいう「業務」には該当しないものである。

仮りに本件業務が刑法二三四条の「業務」に該当するとしても、公共企業体等労働関係法一七条によって禁止される諸行為は業務の「正常」な運営を阻害する行為であると解されるところ、本件業務が正常なものであるとは考えられないから、被告人四名の行為は同法条には該当しないものである。従って被告人四名の行為は労働組合法一条二項の適用を受けるものであり、被告人四名の行為はいずれも暴力の行使に出たものでないこと、且つ、被告人らにおいて管理者側の企図する郵袋の搬出を阻止しなければ、管理者側の手により臨時便の小包郵便物が三階小包大区分室に通ずる投入口に投入されそのため必然的に同室勤務の全逓労組員が義務なき労働を押しつけられる結果となる情勢にあったことが認められるから、これらの事情を考えれば、被告人四名の行為は、労働組合法一条二項に云う労働組合の正当な行為に属するものと解すべきであり、従って、仮りに被告人四名の行為が刑法二三四条の構成要件に該当するとしても右行為は違法性を欠くものと云うことができる。

控訴審(名古屋高判昭45.9.30刑事裁判月報29号)棄却、無罪

臨時小包便の搬出は、全逓との団体交渉を経ないままなされたもので不相当ではあるが、やむをえない措置であったから、刑法上保護されるべき業務にあたると述べ、三六協定未締結での業務が正当な業務でないという一審の判断とは違うものとなった。

「全逓労組の要求があつたのにもかかわらず‥‥全く団体交渉を経ないで、同労組員に、本件年末首繁忙事務処理(本件臨時便の処理)を行なわせようとした名古屋中央郵便局管理者側の行為は当を得たものでなかつたということができる。 

しかしながら、一概に年末首繁忙時期といっても、その期間における郵便業務のうち、どこまでが通常事務であり、どれが繁忙事務であるかを明確に区別することは性質上不可能であり、繁忙事務すなわち臨時便、臨時便すなわち年末首繁忙事務と做すことも、速断し難いところであり、また一方既定便と臨時便とが郵便物の性質上の差異でなく、その取集もしくは運送手段による区別である‥‥これを郵便機関を利用しようとする国民の側からみれば、その差出した郵便物がいわゆる既定便として取り扱われるか、臨時便として取り扱われるかについて、全く関知しないところであって、それが不幸にして、臨時便にくみ入れられたがために、既定便に比し、著しく不利に取り扱われるとすることは国民感情として堪え難い事理に属し、郵政省管理者に対し、理由の如何を問わず、年末首繁忙時期における事務処理に関し、団体交渉が行なわれないでいる情勢下であるからとて、拱手して、国民の右不利益を看過すべく期待することは、到底容認し得る限りでない。ここに、公共事業である郵政業務の特性が強調されるべきであり、公労法第一七条第一項の立法の趣旨も亦ここに存すると思われる。上来説明の各観点から検討するとき、全逓労組が本件臨時便を取り扱う義務がないと認めるには躊躇せざるを得ないばかりでなく、本件臨時小包便を、その投入口より投入して、他の郵便物と混在させるに至るべき名古屋中央郵便局管理者側の本件臨時便の搬出行為が、原判決説示のごとく全逓労組員に義務なき労務を押しつけようとする違法な業務であるとまで解することができない。結局名古屋中央郵便局管理者側における本件臨時小包便搬出の業務は年末首繁忙時期における繁忙事務処理に関する三六協定を含む前記各事項について、労働組合側との団体交渉を経ないまま、あえてなされたもので不相当というべきではあるけれども、上記来認定の諸情勢の下においては、やむを得ない措置であって、やはり刑法上、保護されるべき業務にあたるものと認めざるを得ない。」とする。しかし、「被告人らの本件行為によって、右臨時小包便郵袋約142個(小包約800個)の原判示受入作業室への搬入(通常ならば約20分でできる)が、午後二時ごろから午後一一時ごろまで、約九時間遅延したことが明らかであり、一応その程度の郵便物処理の遅延を生ぜしめたものと認めることができる。しかし、この程度の郵便物処理の遅延をもつては、未だ国民生活に重大な障害をおよぼすものと認めるに足りないものと考えられる。‥‥本件行為は、一応、公労法第一七条の禁止する争議行為にはあたるけれども、その目的、手段、その行為の態様、程度、およびその郵便物処理におよぼした影響など、各般の観点からみるとき、労働組合法第一条第二項本文の適用による正当行為として、いわゆる可罰的違法性を欠き、これが未だ違法に刑法二三四条にいう威力を用いて他人の業務を妨害したものとは認め難い。」との述べ、三六協定について一審と違う判断だったが、臨時小包袋運搬阻止は、東京中郵判決・最大判昭41.10.26刑集208901の判旨に従い、約九時間の郵便物処理の遅延であって国民生活に重大な障害を及ぼしたわけではないので、労組法一条二項にいう「正当な行為」として違法性を欠くとして棄却した。

上告審は破棄自判し、威力業務妨害罪と不退去罪の成立を認め、各罰金三万円に処している。

原判決の依拠する東京中郵判決は、労組法一条二項刑事免責を肯定し可罰的違法性論をとるが、全逓名古屋中郵事件.最大判昭52.5.4刑集313182で明示的に判例変更されたゆえ、名古屋中郵判決の判断枠組(久留米駅事件方式を踏襲)にもとづいた判断である。

「原判決‥‥認定した前記事実は、威力業務妨害罪及び不退去罪の構成要件に該当し、かつ、いずれも公労法一七条一項に違反する争議行為であるから、他に特段の違法性阻却事由が存在しない限り、その刑法上の違法性を肯定すべきものである。原判決が違法性阻却を認めるうえで根拠とした、本件行為の目的、手段、影響のいずれの点も、その根拠となるものではなく、他に法秩序全体の見地からみて本件行為の違法性を否定すべき事由は見当たらない‥‥」と一刀両断に有罪と結論している。

一、二審で争点になった三六協定未締結時の業務であって、労働基準法上違法であっても刑法上保護される業務であるか否かについて理論的な説示をすることなく、端的に名古屋中郵事件方式により有罪とする。

 

名古屋中郵判決の判断枠組は以下のとおり(香城敏麿・国労松山駅事件・最二小判昭53.3.3刑集322159判解)

(イ)公労法171項違反の争議行為が罰則の構成要件にあたる場合には、労組法12項の適用はなく、他の特段の違法性阻却理由がない限り、刑事法上これを違法とすべきである。

(ロ)但し、右の争議行為が単なる労務不提供のような不作為を内容とするものであって、公労法171項が存在しなければ正当な争議行為として処罰を受けないようなものである場合には、その単純参加者に限り、当該罰則による処罰を阻却される。

(ハ)これに対し、公労法17条違反の争議行為にあたらず、これに付随して行われた犯罪構成要件該当行為の場合には、その行為が同条項違反の争議行為に際して行われたものである事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、法秩序全体の見地から許容されるべきか否かを考察してその違法性阻却事由の有無を判断しなければなない。

名古屋中郵第二事件は(イ)に当たる

一審の「労働基準法三六条に基づく時間外協定の締結及び年末首繁忙業務処理に関する取決めがなされていなかつたので、全逓組合員には年末首繁忙業務に属する本件臨時小包便を取り扱う義務がなく、これを取り扱わせようとする管理者側の行為は、違法な業務を強いるもの」という判断は、二審で「認定の諸情勢の下においては、やむを得ない措置」と否定されたが、上告審はそれを上書きする理論は特に示されなかった。

しいていえば、名古屋中郵事件方式の「法秩序全体の見地」ということになるが、とにかく、臨時便不取扱闘争は争議行為であり、控訴審の段階では刑事免責があるという前提だったが、名古屋中郵判決で刑事免責がないということになったのであるから、有罪とならざるをえないという判決である。

検察官の上告趣意では臨時便不取扱闘争は、名古屋中郵支部においてのみとられた戦術で、他にその例を全く見ないものであり、原判決は、本件臨時便不取扱闘争の意義性格を十分に顧慮せず、形式的に争議権の行使としてとらえ、その実効性を重視したため、管理者側の業務遂行の重要性を閑却して本件阻止行為を正当とする誤りを犯したものといわなければならないとして、三六協定未締結による超過勤務拒否という全逓中央の戦術を法的評価について言及がなく、また控訴審が昭和45年であるためか、仙台鉄道管理局事件最高裁判決が昭和48年であるので、仙台鉄道管理局判決の判旨が取り入れられてないのでわかりにくい。

これは、臨時便郵袋を投入口に入れるまで作業には一人全逓組合員がいたようだが、主に管理職とバイトで業務していて、その先の作業は時間外労働ではないということなのかもしれない。

要するに臨時便郵袋を投入口に入れてしまえば仕分け作業は既定便と混在するので、臨時便につき時間外での処理を命じているものではなく、定時退庁でも遅くはなるが処理できるものなので臨時便郵袋を受け入れ作業室に運搬することは残業を命令する趣旨ではないから、以下の検察官の上告趣旨では三六協定未締結はさほど重要な問題ではないという認識のようである。

「従来勤務時間内の労働に関しても繁忙手当が支給され、かつ、これについても繁忙手当等繁忙事務処理に関する団体交渉の行なわれる慣行があつたことは認められるが、それが三六協定の交渉締結と併行し、かつ、不可分に行なわれていたことも事実である。すなわち、三六協定と切り離して、勤務時間内労働だけについて団体交渉が行なわれ、繁忙手当が支給された事実はないのである。従って、全逓名古屋中央郵便局支部が中央本部の指令に基づいて時間外労働拒否の戦術をとり、三六協定が締結されていなかつた以上、勤務時間内労働に対する繁忙手当について交渉がなされなかったのは当然であり、繁忙手当不支給の問題だけを切り離し、一方的にその責を当局側にのみ帰すことは誤りといわなければならない。もつとも、三六協定の締結拒否も、当局側が、いわゆる組合三役が職員でないことを理由に団体交渉を拒否したことに端を発しているのであるから、やはり責任は当局側にあるとの主張もあるかもしれないが、本件当時の公労法のたてまえ上当局側の団体交渉拒否はやむを得ないところであり、これを管理者側の搬出行為の不当性に結びつけることは適当でない。また、時間外労働は三六協定がなければ命ずることができないが、勤務時間内における労働密度の変更は管理運営事項に属し、元来、団体交渉を経る必要のない事項である。従って、仮にそれが団体交渉事項にはなり得るとしても、それだからといつて、交渉を経なければ事務量の増減ができないという性質のものではないのである。」

85 新方針の理由その3-労基法上違法就労でも正当な事業活動として刑法上保護される意義

全水道東水労の三六協定破棄闘争によって、管理職は組合から、業務命令すると犯罪になるぞとして、労働者の保護と関係ない職制麻痺闘争、争議行為目的、特に時間外の職制の労務指揮権を消滅させ業務命令させないことを狙いとしている。管理職も組合役員に従い、保安協議で組合が承諾するケースを除き業務命令を一切させない体制となっている。

しかし前記判例を総括すると、労働基準法違反がどの程度に法律上の効果を及ぼすかについては、労働者の保護と関係ない事項について、労働基準法の労働時間制限を超えた就労であっても、仙台鉄道管理局事件判決により刑法第234条によって保護される業務であることは確定しているである。

だから組合のいいなりになる必要はない。司法の理論的説示は、3つの系統があるように思える。

 

1)職務命令を二分して権限を与える使用者の行為は労働基準法で無効にできないとする理論

 

仙台鉄道管理局(春闘仙台駅)事件・最二小判昭48525が最重要であることはいうまでもない。

柴田孝夫判解によれは、最高裁のテクニックは、労働者に一定の職務を処理する権限を与える管理職の行為と、一定の職務に従事させる義務とを区別して、職務命令の性質を二分して、権限を与えるだけの使用者の行為を違法・無効とする理由は、労基法321項からは出てこないというものである。

本件は、非組合員が春闘対策本部に召集され、組合員の行動の監視、違法行為の阻止および排除等の任務に従事すべきことを内容とし、執務時間についてはあらかじめ制限を付さない趣旨のものであったからであるが、広義に解釈すれば、マニュアルワーカー、工場労働者を別として、多くの事務職員は経常的な業務でも特定の職務を処理する権限が与えられており、所定時間で終了しない場合、自発的な残業をすることは普通みられることである(私などは毎日残業で、日が暮れないうちに帰宅することはなく、定時退庁は三六協定破棄時やノー超勤ウィークだけが普通だった)。

この理屈が職員課職員の特殊なケースか汎用性のある議論かは判然としないが、少なくとも春闘対策本部の業務が該当する。所定時間外だからダメということにはならない。

狭く解釈するとしても、たとえば三六協定未締結でも災害時の業務命令は労基法33条でできるが、あらかじめ日時が指定されてない災害時の応急給水拠点要員が、給水所に休日・夜間等の所定時間外に立ち入り、応急給水の準備を行う権限が認められているのと同じ理屈になる。

最高裁は車両ボディの「ビラ剥がし行為」を「日本国有鉄道の本来の正当な事業活動」であり、刑法第234条によって保護される業務とし、時間外労働の非組合員が非難される立場ではないことも明らかにしているのである。

類似した理屈の判例として国鉄八代駅事件の一審・熊本地判昭40319がある。被任命者又は権限を授与された者が事実上の公務員として行為し、形式上与えられた権限内で権限発動の具体的条件等を充足して行動する限り、これを公務の執行として刑法第九五条第一項によって保護すべき場合があると解するのというのが、国鉄当局は、助役は労働基準法第四一条第二号の「監督若しくは管理の地位にある者」に該当するとの見解に立って、職員を指導し、H八代駅長及びО助役もこの見解に従って行動‥‥違法が適法に与えられた抽象的職務権限を時間的に拡張する点に附着するに過ぎないこと等を考慮すると、本件当時О助役は事実上の公務員として行為していた者というべく、その形式上拡張された権限内で、権限発動の具体的条件等を充足して行動する限り、これを公務の執行として刑法第九五条第一項によって保護すべき場合であると解するのが相当であるとする。

労働法上違法であっても権限授与された者の公務執行は適法なので刑事法上保護されるという理屈である。

そうすると仙台鉄道管理局判決の趣旨からすると、就労を拘束的に義務付ける部分の効力はないとしても、一定の職務を処理する権限を与えられた労働者は、刑法上保護される。

問題は、列車乗務員の説得連行や物理的運行阻止をやるストライキに対抗し、代務の乗務員の召集と、代務の業務命令を行うことは、これは一定の職務に従事させる業務命令の範疇といえる。国鉄でよくあるパターンはこの図式にあてはまらないと思うが、春闘仙台駅判決は「労働基準法の適用を受ける者に対する職務命令が、同法所定の労働時間の制限を超えて就労することをもその内容としており、かつ、その者の就労が右制限を超えたからといつて、そのために職務の執行が具体的権限を欠いて違法となるものではなく」と述べていることから、少なくとも刑法上保護されるものであることは同じだろう。

2)久留米駅事件方式、名古屋中郵事件方式の「法秩序全体の見地」

倉敷駅信号所事件(マス・ピケ事犯)控訴審判決は、久留米駅事件方式によって、第二名古屋中郵事件最判は名古屋中郵事件方式によって、一刀両断に有罪とした判例だが、威力業務妨害罪が成立するということは、三六協定未締結での業務遂行が刑法上保護される職務としているといえるのである。

「法秩序全体の見地」とはたんに可罰的違法性論(藤木英雄東大教授の刑法学説)の採用を排除するだけではない。労働協約が契約の相対効原則に反するように、市民法と労働法は矛盾し衝突する側面が多いわけだが、労働基準法の強行規程であれ、それを絶対視する考え方を最高裁はとっていない。「法秩序の全体的見地」とは市民法・公法と労働法が衝突する場合、労働法を優位とみる考え方をしないのである。違法争議行為を有利にすすめる趣旨の闘争であるから、三六協定破棄闘争が争議行為そのものでないとしても、違法争議行為目的の争議行為付随行為は、違法性が強く推定されるという理論からすれば、職務遂行の権限が消滅するということにはならないといえる

久留米駅事件方式と同じく名古屋中郵判決の汎用性は大きいのではないか。 

違法争議行為目的の争議行為に付随した行為がなされた場合、違法性推定機能を強化した判断基準というところである。

三六協定破棄闘争が争議行為なくても争議行為目的だから違法性が強く推定されるという理屈である。

名古屋中郵判決から引用すると「公労法一七条一項に違反する争議行為が刑法その他の罰則の構成要件に該当する場合には、労組法一条二項の適用はなく、他の特段の違法性阻却事由が存在しない限り、刑事法上これを違法と評価すべきものであるが、そのことと、右の争議行為に際しこれに付随して行われた犯罪構成要件該当行為についての違法性阻却事由の有無の判断とは、区別をしなければならない。すなわち、このような付随的な行為は、直接公労法一七条一項に違反するものではないから、その違法性阻却事由の有無の判断は、争議行為そのものについての違法性阻却事由の有無の判断とは別に行うべきであって、これを判断するにあたっては、その行為が同条項違反の争議行為に際し付随して行われたものであるという事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを考察しなければならない」とする。

つまり三六協定破棄闘争が争議行為と確定できないとしても、ストライキ配置の前日に必ず配置される戦術で、これは、ストライキ指令時に職制の業務命令をさせない、職制の機能を麻痺させて違法ストライキを有利にすすめるためのものである。職制麻痺闘争が悪質であり、使用者側が一方的に違法行為をしているとみなし、労働基準法に罰則があるぞと管理職を脅して、労務指揮権、管理意思を制圧する違法争議行為目的なのであり、これらに対抗して、操業を維持するため業務命令することは使用者の正当な権利であり、労働基準法の罰則とバッティングする件は、法秩序全体の見地から判断されるのが道理である。

春闘仙台駅判決は「労働基準法の適用を受ける者に対する職務命令が、同法所定の労働時間の制限を超えて就労することをもその内容としており、かつ、その者の就労が右制限を超えたからといつて、そのために職務の執行が具体的権限を欠いて違法となるものではなく」と述べていることと合わせて考慮し総合的に判断すると、全水道東水労の三六協定破棄闘争は、一方的、違法行為目的のものであるので信義則に反し、組合側が労基法違反といかに糾弾したとても、三六破棄闘争自体が争議行為の疑いが濃いだけでなく、そうでないとしても違法行為目的の行為であり、争議行為に対抗する措置として、違法性は阻却されるという前提でおそれることなく業務命令すべきであり、国鉄のようにそういう方針のもと必要な業務については職務命令すべきである。

3)公労法1条の趣旨から業務命令を正当化

国鉄荒尾駅事件福岡高判昭3787が三六協定未締結の状況で「臨時の必要がある場合には、その必要な限度において、労基法所定の労働時間を延長し、又は休日に労働させ得ることは、公労法第一条、労基法第三三条の法意に照し、当然の事理といわねばならない。」としてストライキの機関士に代わって代務を命じられた助役の閉塞機の操作を正当化している。公労法1条の法意とは「正常な運営を最大限に確保し、もつて公共の福祉を増進し、擁護することを目的とする。」これは地公労法1条も同文である。

正常な運営を最大限確保しなければならないから、過半数組合の争議行為目的の闘争には、必要不可欠な業務は業務命令すべき。

4)労働基準法33条と日本国有鉄道法332項の適用

国鉄荒尾駅事件福岡高判昭3787と、国鉄八代駅事件福岡高判昭4149いずれも助役に業務命令したケースだが、両控訴審判決は、労働基準法33条が三六協定未締結での業務命令を正当化する理論になっている。

 

労働基準法三十三条 災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。

② 前項ただし書の規定による届出があつた場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる。

③ 公務のために臨時の必要がある場合においては、第一項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第一に掲げる事業を除く。)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。

 

日本国有鉄道法、第三十三条 日本国有鉄道は、左 の各号の一に該当する場合においては、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十二条、第三十五条又は第四十条の規定にかかわらず、その職員をして、勤務時間をこえ、又は勤務時間外若しくは休日に勤務させることができる。

 一 災害その他により事故が発 生したとき。

 二 災害の発生が予想される場 合において、警戒を必要とするとき。

 三 列車(自動車、船舶を含 む。)が遅延したとき。

 

災害発生の予想と労働組合による説得連行や列車運行阻止その他の行為とを同一視する理論である。高等裁判所判例であるから、無視できない。労働基準法33条をこのように解すれば、国鉄だけでなく汎用性の高い理論ではある。

しかし最高裁判決である仙台鉄道管理局事件・最二小判昭48525ではこの理論は言及がなく、検察官の上告趣意にも引用されていない。

荒尾駅事件がストライキ、八代駅事件がホーム上のデモ行進に対して、仙台駅事件はビラはがしということで33条の適用事案と判断しなかったのかどうかは判然としないが、最高裁が明示的に否定しているわけではないので、ひとつの先例とみることはできる。

名古屋中郵第二判決のように全逓との三六協定が締結されない場合でも業務命令をすることがあるということであるし、そのような場合、職制側が処罰されたということは聴いたことがない。組合の脅しなど気にする必要はない。

国鉄は、少なくとも、三六協定未締結で、説得連行や列車運行阻止のストライキの場合、ストで乗務しない、もしくや組合側に身柄を確保されて収容された乗務員の代務となる職員に業務命令するのが通例であり、乗務員の争奪戦もやる。総合的に判断し、違法承知でも必要不可欠な業務は業務命令することが妥当と考える。 

 

 

労基法では違法でも正当化できる

 

三六協定無締結での時間外労働

 

 業務執行は正当とされる

 正当な事業活動 業務主体がその地位において行なう業務であれば足りる

 

刑法上保護される業務とされる

 公務執行妨害

 威力業務妨害

 

(1)国鉄荒尾駅事件・福岡高判昭37・8・7 下級裁判所刑事裁判例集 4-7・8

(2)威力業務妨害事件・名古屋高裁金沢支部第二部判決・昭40・10・20

(3)国鉄八代駅事件・熊本地判昭40・3・19高等裁判所刑集19-3-292

(4)国鉄八代駅事件・福岡高判昭41・4・9判タ191-202

(5)浜松動労事件・東京高判昭42・9・18判タ216

(6)仙台鉄道管理局事件・最二小判昭48・5・25刑集27-5-1115

(7)倉敷駅信号所事件・岡山地判昭50・1・17刑裁資料228-187

参考(8)第二名古屋中郵事件・最二小判昭53.3.3民集32-2-97

 

 三六協定未締結での職務命令

 

やり方次第で正当化できる

 

 仙台鉄道管理局事件の解釈

柴田孝夫調査官判解は「労働者に一定の職務の処理する権限を与える行為と、一定の職務に従事させる義務を負わせる行為は、本来は別個の行動として各別に行うことができるのであり、本件判決は、本件職務命令の内容を性質において二分し、労基法三二条一項違反の意味をそれぞれに分けて検討する方法をとった。これによれば、労働を義務付けるものではない、権限を与えるだけの使用者の行為は、権限を行使しうる時間を限っていようといまいと、これを違法無効とすべき積極的な理由は労基法三二条一項からはでてこない」と解説する

 

 荒尾駅・八代駅事件

 

  職務命令を正当(但し助役への命令)

 

 公労法1条

 労基法33条 

 日本国有鉄道法33条2項

 

石井照久

「労使関係においては慣行的事実が尊重さるべく、期待された業務の通常の運営が阻害される限り」順法闘争は争議行為となる。『労働法』1954年

 

正常な業務運営とは慣行的事実では労基法の8時間労働ではない。

 

時間外の経常業務 不可欠な業務

スケジュール化された外注業務の監督検査 日程を動かせない

 

 

(捕遺)

仙台鉄道管理局事件最高裁第三小法廷判決で「労働基準法三二条一項は、就労時間の点で労働者を保護することを目的とし、また、もっぱら使用者対労働者間の労働関係について使用者を規制の対象とする強行規定であるが‥‥労働者とその職務執行の相手方その他の第三者との間の法律関係にただちに影響を及ぼすような性質のものではない。‥‥本件職務命令に右強行規定の違反があつたとしても‥‥就労を拘束的に義務付ける部分の効力に影響を及ぼし得るにとどまり、職務執行の権限を付与する性質の部分についての効力にまで消長をきたすべき理由はない」の趣旨、その他総合的に考えて、三六協定未締結でも、やむをえない事情があれば、残業したいと考えた。

全水道東水労により杉並営業所では、平成73101715分から、12日三六協定破棄闘争がなされ(11日夜間に妥結三六協定締結)たが、私は杉並営業所任期最後の年で、課長代理から13日迄事務引継ぎ書を作成し提出を指示されていたので、13日に間に合わせるには残業しないととても無理なので、11日に三六協定破棄ではあるが残業したところ、所長の〇〇から許されないただちに帰れと言ったが、スト待機を許していて、そちらのほうこそ違法行為目的の滞留なので退去命令するのが筋というと、組合はこの時はストはやらない雰囲気だったのでスト待機しないこととなり、私だけが残業し、所長は本庁から組合協議を指示されたが、組合は認めないということで、所長は退庁命令して怒り、労働基準法違反で処分されるよと言い、事務室内執務を認めないとして午後7時半頃に施錠して私を閉じこめるかたちで、帰宅した。私は毎日残業しており、できれば10日も残業したかったがもめることはわかっていたが、さすがに11日は残業した。その後午後10時まで仕事をして帰った。

このように管理職職制は、組合のいいなりで、三六協定破棄闘争時は、職場から追い出す任務に徹するのである。

 

 

 

« 2025年12月 | トップページ

最近の記事

公務員に労働基本権付与絶対反対-政府は巨悪と手を結ぶな

無料ブログはココログ

最近のトラックバック

ニュース(豪州・韓国等)

2026年1月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

意見具申 伏見宮御一流(旧皇族)男系男子を当主とする宮家を再興させるべき 伏見宮御一流の皇統上の格別の由緒について(その二)