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2026/02/15

YouTube台本 都議会宛陳情を提出したが委員会に付託されなかった 都より東京地下鉄乗務員等の 「私鉄総連春闘ワッペン」着用に 関する要請を要望する陳情解説 令和7年168号  シリーズ13 川西正彦

都より東京地下鉄乗務員等の「私鉄総連春闘ワッペン」着用に関する要請を要望する陳情(令和7168号陳情 2月の委員会に付託なし、関係議員に写しを送付閲覧に供されたのみ)

 

(願意)

都において株式を保有する東京地下鉄株式会社宛に、毎年215日頃から3月中旬頃まで乗務員・駅員は、直径約67cm円形の「私鉄総連春闘ワッペン」を胸章として着用するのが恒例となっているが、団結示威を見せつけられるのは旅客公衆にとって不愉快であり、正当な組合活動ではないから、春闘ワッペンの取り外し指導、業務外の胸章等の着用禁止を就業規則に明文化することを会社側に要請していただきたい。

 

 

(理由)

ワッペンの記載は、西暦と「春闘」の文字、PRU(私鉄総連)、民鉄協会と合同して行っている「公共交通利用促進」のスローガンを記載し偽装することもある。

「春闘」とある以上組合活動である。ワッペンは、私鉄総連組合員を顕示し、相互の団結の確認と、使用者に対する団結示威、旅客公衆には春闘への連帯を訴える目的と考えられる。誠実労働義務に反し、勤務中に職務遂行に無関係の行為であるから注意力がそがれるおそれがあり、旅客公衆が不快、不安に思うのは当然のことである。

旅客の安全にかかわる職務として要請される職場規律の保持と服装の整斉という観点でも業務外ワッペン等の着用は規制されるべきである

本件は都が株式を保有する東京メトロにしぼっての陳情にしたが、ワッペン着用が恒例の東急、東武、京急、京成、京王、その他バス会社も、JRグループ規則「第20条3 社員は、勤務時間中に又は会社施設内で会社の認める以外の胸章、腕章等を着用してはならない。」と同様の就業規則を明文化したうえ、度重なる注意、指導にもかかわらず従わない場合厳重注意等とし、不利益賦課(JRの場合は夏季手当5%減額支給)する労務管理を実施すべきだ。

JRグループは発足当初から、縦1.1㎝、横1.3㎝と小さい国労バッヂの取外しを徹底的に指導し、JR東日本では平成15年頃には着用者がいなくなった。それにならった労務管理を会社に求める。

ワッペン着用が争議行為か組合活動かという問題は、その法的性格を異にし、労組法7条1号との関係においても正当性の判断が異なりうるし、学説では労組法8条民事免責を争議行為では認める見解があるので、重要な論点である。

しかし、リボン闘争について最高裁が初めて判断を下した大成観光事件・最三小判昭57413民集36-4-659は、これを就業時間中の組合活動として労働組合の正当な行為にあたらないと判示しているため、類似事案である春闘ワッペンも同じ判断になるだろう。新村正人調査官判解は、原審のいう使用者に対する団結示威の作用、機能を直ちに争議行為とみなす根拠はないとする。

春闘ワッペン着用は私企業の労働契約上の誠実労働義務に職務専念義務論が適用され、それに違反することが企業秩序を乱すという判例法理により確実に禁止できる。

JR東海新幹線支部国労バッヂ事件・東京高判平91030判時162638頁(上告審平10717は原審判断を是認)が典型で、「就業規則三条一項の『社員は‥‥法令・規定等を遵守し、全力をあげてその職務を遂行しなければならない。』という規定は‥‥社員は、勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないという職務専念義務を負うものである‥‥労働契約においては、労務の提供の態様において職務専念義務に違反しないことは労働契約の重要な要素となっているから‥‥違反することは企業秩序を乱すものであるというべきであり、‥‥組合バッヂ着用行為は‥当該組合員であることを顕示して本件組合員等相互間の組合意識を高めるためのものであるから‥‥具体的な宣言文の記載がなくとも、職場の同僚組合員に対し訴えかけようとするものであり‥‥職務の遂行には直接関係のない行動であって、これを勤務時間中に行うことは‥‥職務専念義務に違反し‥‥他の社員に対しても心理的影響を与え、それによって当該社員が注意力を職務に集中することを妨げるおそれがあるものであるから、この面からも企業秩序の維持に反するものであったといわなければならない」と判示されている理論は類似例のワッペンに適用できるからである。

 

 

委員会に付託されなかったのは下記のオに該当すると考えられます。

 

 

2 委員会への付託

(3) 次の陳情は、委員会へ付託せずに関係議員に写し(又はその要約したもの)を送付し、閲 覧に供します。  

ア 基本的な人権を否定するなど、違法又は明らかに公序良俗に反する行為を求めるもの  イ 個人の秘密を暴露するもの  

ウ 係属中の裁判事件に関するものなど、司法権の独立を侵すおそれのあるもの  

エ 都の職員の身分に関し、懲戒、分限等個別の処分を求めるもの

オ 東京都の事務に関係しない事項を願意とするもの  

カ 採択、不採択等の議決のあった請願又は陳情と同一趣旨のもので、その後、特段の状況の変化がないもの  

キ はがき、メモ用紙等で提出されたもので、趣旨、理由等が明確に記載されていないもの

ク 前各号のほか、委員会付託になじまないと認められるもの

 

だいたい215日頃から3月半ば頃

西暦 春闘(近年は大きな文字に)

(電車・バス・タクシーのデザイン

PRU(私鉄総連)

民鉄協会と合同して行っている「公共交通利用促進」

 

 

「公共交通利用促進運動」は毎年実施されている全国規模のキャンペーン・啓発運動で、主催・推進主体は国土交通省を中心に、日本民営鉄道協会(民鉄協)、日本バス協会、全国ハイヤー・タクシー連合会、私鉄総連(日本私鉄労働組合総連合会)などの事業者団体・労働組合が労使共同で推進。

 

使用者に対する団結示威、私鉄総連組合員を顕示し、闘争意思表明、組合員相互の団結の確認、旅客公衆には春闘への連帯を訴える目的

 

 

■改札係員(客面に出る) 目立つ

■客扱終了合図担当駅員  目立つ

(ホーム立ち番・輸送主任・当務駅長 到着放送・ホーム全体を見渡して乗降が終わったと判断笛を吹く + 合図を出す日中・赤い手旗(フライキ)を絞って掲げる。夜間・合図灯の白色を掲げるその他・ブザー、ベル)

■運転手 始発駅などホームを歩くとき目立つ

■着席ライナーの車内改札(座席確認)の車掌 目立つ

(短い時間ですがどうぞお寛ぎくださいというアナウンスがあるが、ワッペンをみると不愉快で血圧が上るくつろげない)

 

服装闘争等(リボン・腕章・鉢巻・ゼッケン・プレート・ワッペン・バッジ等)
不利益処分等を是認する判断がほとんど

 

 

※誠実労働義務(職務専念義務)に反する

国労青函地本リボン闘争事件・ 札幌高判昭48529

大成観光事件・東京地判昭50311(リボン)

全逓灘郵便局事件・大阪高判昭51130(リボン)

目黒電報電話局反戦プレート事件・最三小判昭521213(プレート)

JR東海新幹線支部国労バッヂ事件・東京高判平91030-上告審平10717は原審判断を是認)

 

※正当な組合活動ではない

大成観光事件・最三小判昭57413(リボン)

 

雇用契約上の債務の本旨に従った労務の提供ではない

 

ノースウエスト航空事件・東京高判昭471221(腕章)

沖縄全軍労事件・那覇地判昭51421(鉢巻)

 

※就業規則の服装整正規定や正しくない服装の禁止に違反する

 

国労青函地本リボン闘争事件・ 札幌高判昭48529

全逓灘郵便局事件・大阪高判昭51130(リボン)

JR東海新幹線支部国労バッヂ事件・東京高判平91030

 

※勤務時間中の組合活動を禁止する就業規則、労働協約に違反する

 

三井鉱山賃金カット事件・福岡地判昭46315(ゼッケン)

JR東海新幹線支部国労バッヂ事件・東京高判平91030

 

B ●目黒電報電話局反戦プレート事件.最三小判昭52.12.13民集317974

本件は職員個人の政治活動事案だが、服装闘争判例とみなしてもよい。組合活動でも先例になる重要判例である。

数日間継続して、作業衣左胸に、青地に白字で「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と書いたプレートを勤務時間中に着用した行為と休憩時間のビラ配りを理由とする戒告処分を適法とした。

プレート着用が公社就業規則52項の局所内の政治活動を禁止した規定に違反する行為とした。ただし、この就業規則は局所内の秩序風紀の維持を目的としたものであることにかんがみ、形式的に右規定に違反するようにみえる場合であっても、実質的に局所内の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右規定の違反になるとはいえないという判断枠組を示したうえで、大筋以下の2点で実質的に局所内の秩序を乱すもしくは乱すおそれがあるので、就業規則違反として懲戒処分を適法と結論する。

a)職務と無関係な同僚への訴えかける行動は、職務の遂行と無関係な行動であり、職務に専念すべき局所内の規律秩序を乱している、公社法三四条二項が「職員は、全力を挙げてその職務の遂行に専念しなければならない旨を規定しているのであるが、これは職員がその勤務時間及び勤務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないことを意味するものであり、「右規定の違反が成立するためには現実に職務の遂行が阻害されるなど実害の発生を必ずしも要件とするものではないと解すべきである。」と判示した

b)他の職員の注意力を散漫にし、あるいは職場内に特殊な雰囲気をかもし出し、よって他の職員がその注意力を職務に集中することを妨げるおそれがあることは局所内の秩序維持に反する。

 菊池高志[1983「労働契約・組合活動・企業秩序 『法政研究』49(4)]によれば目黒電報電話局判決は「勤務中は‥‥職務以外のことは行ってはならないのが職務専念義務であると言う。そうである以上、職務専念義務違反の判断は、職務以外の行為があったという事実さえ認められれば目的、態様、行為の及ぼす影響などは改めて吟味を要しないこととなる」とするが、普通の解釈である

国労青函事件札幌高裁判決や、目黒電報電話局事件上告審判決が示した職務専念義務論が、私企業の労働契約上の誠実労働義務と同一内容といえるかについては議論があるが、通説は同一内容とみなす。

「職務専念義務」あるいは「誠意に労務に服すべき義務」というにしても、法的に考えるならば、両者の義務は職場規律を遵守し、就業時間中仕事以外のこといっさいかんがえてはならない義務として使用されており、「誠意に労務を提供する義務」は職務専念義務と同一内容をもつものと考えられる[石橋洋「組合のリボン闘争戦術と実務上の留意点-大成観光(ホテルオークラ)事件」労働判例3911982]

加えて最高裁は、国鉄中国支社事件判決.最一小昭49.2.28民集28166において日本国有鉄道法311項に基づく懲戒処分は、行政処分ではなく、私法上の行為としているから、国鉄職員懲戒処分の判例は、公労法171項の争議行為が禁止されている点は異なるとはいえ、私企業一般の先例なのである。

目黒電報電話局事件判決は直接には公社法所定の職務専念義務に関する判断であるが、判決は「公社と職員との関係は、基本的には一般私企業における使用者と従業員との関係と本質を異にするものではなく、私法上のものである」としており、公社職員の職務専念義務も雇用契約関係における被用者一般の義務とその本質を異にするものではないと捉えられているから。

とすれば、職務専念義務の判断も特殊公社法上の解釈として示されたものではなく、雇用契約関係において労働者が負う義務に関する一般的理解として述べられたものと解するべき[菊池高志前掲1983]という見方が有力なのである。

 

 

誠実労働義務(Grоkの説明 一部引用)

労働契約法第3条第4

労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

この規定が基盤となっており、労働者側にも「信義誠実の原則」に基づく誠実な義務が課されています。誠実労働義務の主な内容(具体例)

  • 上司の合理的な業務命令に従う
  • 勤務時間中は職務に専念する(職務専念義務)
  • 会社の就業規則・服務規律を遵守する
  • 会社の正当な利益を不当に害さないよう配慮する
  • 会社の信用・名誉を傷つける行為をしない
  • 機密情報(守秘義務)や競業行為を避ける など

これらは労働契約に付随する義務(付随義務)として認められています。

 

 

 

 

)予想される反論に対する再反論

 A 大成観光リボン闘争事件最三小判昭57413は当該事案の判断にすぎず、リボン闘争が一般的に違法とは云っていないとの反論

 

 大成観光リボン闘争事件最三小判昭57413民集36-4-659は、「本件リボン闘争は就業時間中に行われた組合活動であって参加人組合の正当な行為にあたらないとした原審の判断は、結論において正当として是認することができる。‥‥」としたが、最高裁としての理由を示さなかったことから、判旨にあらわれた限りでは、この判例を一般違法についての判断まで是認した趣旨と読むことはやや無理で、特別違法の観点からする判断、一流ホテルにおける従業員の接客勤務態度に対する要請からみて正当な行為にあたらないとする見解 (花見忠「リボン闘争の正当性--ホテル・オ-クラ事件最高裁判決」『ジュリスト』 771 1982)がある。

 しかし最高裁は昭和50年代以降企業施設内の無許諾の組合活動は企業秩序をみだすものとして受忍義務がないとする、使用者の企業秩序定立権という判例法理を案出し(国労札幌地本ビラ貼り戒告事件最三小判昭541030民集336676)、この判例法理は、安定的に維持(池上通信機事件最三小判昭63719判時1293、日本チバガイギー事件最一小判平元・119労判53373号、済生会中央病院事件最二小判平元・11211民集43-12-1786、オリエンタルモーター事件最二小判平798判時1546130)されているが、従業員は企業秩序遵守義務があるのであって、これらの判例は使用者の権利と団結権とを法益調整するという考え方はとらないのであって、法益衡量的な諸般の事情を勘案する調整的なアプローチを否定しており、具体的な業務阻害のないことは無許可組合活動を正当化しないことを明確にしている。ケースバイケースの判断はとらないのである。したがってホテル業だからダメでその他の業種なら正当化される余地があるとする根拠はない。

 例外としては、権利の濫用とみなされる特段の事情がある場合だが、この判断枠組で風穴は開けられていない。

 仮に百歩譲って、特別違法性だけを認めた判例とする花見説を認めたとしても、原審のいう特別違法性「リボン闘争は、労使が互いに緊張していることをまあたりに現前させるので、客がホテルサービスに求めている休らい、寛ぎ、そして快適さとはおよそ無縁であるばかりでなく、徒らに違和、緊張、警戒の情感を掻き立てる」という説示は、ホテル業に限らず、従業員が客面に出るサービス提供業務一般に広くいえることで注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないことあって、鉄道事業にもあてはまるのである。

 大手私鉄の主要路線では、通勤客に対し寛ぎや快適さを提供する有料着席ライナーを運行するようになったが、京王ライナーでは、空気清浄機が具えられたうえ、しばしの間お寛ぎください云々とのアナウンスが流れるのである。ところが、2018年2月22日デビュー以降、三週間程度が春闘時期にあたり、車掌は春闘ワッペンを制服の腹の部分に取り付けていた。直径7から8㎝で赤い円形のためかなり目立つ。着席状況を確認するため、車掌が各車両を見回るが、春闘ワッペンをみせつけて、第三者である乗客に春闘との連帯を訴えかける行為は、有料着席ライナーを利用する乗客が求める「休らい、寛ぎ、そして快適さとはおよそ無縁なことといえる」のであって、原審の説示した特別違法性は、鉄道事業にもあてはまるというべきである。したがって大成観光リボン闘争事件最三小判昭57413を逆手にとって、ワッペン着用に有利に解釈する妥当性はないのである。

B 伊藤正己補足意見は、就業時間中の組合活動はすべて違法でなく、具体的な業務阻害のない行為を是認しているという反論

  大成観光リボン闘争事件最三小判昭57413の伊藤正己判事の単独補足意見は、目黒電報電話局反戦プレート事件・最三小判昭521213は事案を異にするので先例とみなさないとし、「就業時間中に‥‥およそ組合活動であるならば、すべて違法の行動であるとまではいえない」とか「業務を具体的に阻害することのない行動は、必ずしも職務専念義務に違背するものではない」としている。

 この補足意見については、「伊藤裁判官の補足意見により‥‥労働委員会が実態に即し、不当労働行為制度の趣旨を生かす判断を行う余地が残されるようになった」(松田保彦「いわゆるリボン闘争の正当性-ホテルオークラ事件」・法学教室221982)と肯定的評価をする批評がある。

 しかしこれは明らかに変である。伊藤補足意見は、リボン闘争が争議行為の類型には当たらないとした以外の主張は、組合活動に好意的な立場で先例を無視した勝手な持論を言っているだけで、最高裁の主流の考え方に異論を示しただけのものである。上記引用した企業秩序論の最高裁判例においても伊藤補足意見の趣旨は完全に否定されていることから、単独の補足意見が影響力を持つ事自体が不当である。

 例えば済生会中央病院事件最二小判平元・1211民集43-12-1786が、「一般に、労働者は、労働契約の本旨に従って、その労務を提供するためにその労働時間を用い、その労務にのみ従事しなければならない。」「労働組合又はその組合員が労働時間中にした組合活動は、原則として、正当なものということはできない」としたうえで、勤務時間中の無許可集会に対する警告書交付はそれが業務に支障をきたさない態様であっても「労働契約上の義務に反し、企業秩序を乱す行為の是正を求めるものにすぎない」ので不当労働行為にあたらないと判示しており、目黒電報電話局反戦プレート事件・最三小判昭521213こそ引用してないが、最高裁は同判決の職務専念義務論を踏襲した判断をとっているとみてよいし、済生会中央病院事件判決によって無許諾の就業時間内組合活動が正当化される余地はなくなったというべきであるし、業務に具体的阻害のない態様であることは正当化する理由にはならないことを重ねて確認した判決といえる。先に引用した伊藤補足意見の趣旨は完全に否定されている。

 

C 大成観光リボン闘争事件最三小判昭57413は目黒電報電話局反戦プレート事件・最三小判昭5212134の厳格な職務専念義務論を引用していないので、組合活動に適用されるかは未解決の問題であるとする反論

  目黒電報電話局判決が引用されてないのは、第三小法廷の4名中2名裁判長環昌一判事と、伊藤正己判事が左派プロレイバーであり、勤務時間中は、注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないとする目黒電報電話局事件判決に批判的な見解をとっていたため小法廷の意見が一致しなかったためと推定できる。伊藤判事は補足意見で同判決を批判しているし、環裁判長は、目黒局判決の結果的同意意見となる補足意見で、反戦プレート着用は懲戒処分理由と認めていないことから明らかなことといえる。

 しかし、左派2判事が先例拘束性を認めなかったことで、目黒電報電話局事件判決の先例としての意義を否定されるものではないし、既にのべたとおり、同判決の判断枠組は、私企業においても組合活動においてもそれが適用されることは判例法理上の必然であり、大成観光事件上告審判決は、当該リボン闘争を組合の正当な行為にあたらないとし、組合幹部への減給、訓告処分を是認するものであるから、引用されずとも同判決を踏襲した判断をとったとみなすのが妥当である。

 

 

つまり職務専念義務は公務員法制の実定法に限られず、私企業の雇用契約でも同じことである。

なお、目黒電報電話局反戦プレート事件.最三小判昭52.12.13民集317974は、ベトナム反戦プレート着用という個人的な政治活動の事案だが、組合活動についても同判決の判断枠組が適用されることは判例法理上当然の帰結といわなければならず、そうでないとする大成観光リボン闘争事件最三小判昭57.4.13伊藤正己補足意見は先例無視の勝手な見解だといわなければならない。

この点については大成観光リボン闘争事件・最三小判昭57.4.13民集36-4-659新村正人調査官判解が目黒電報電話局判決は「‥‥右事案におけるプレートの着用は組合活動として行われたものではないが、その判旨の趣旨を推し及ぼすと、同様に職務専念義務を肯定すべき私企業においてリボン闘争が就業時間中の組合活動としておこなわれたときは、労働組合の正当な行為とはいえないことになる。‥‥本件リボン闘争が組合活動として行われたものとの前提に立つ限り、その正当性を否定することは、判例理論上必然のことといってよい」と解説しており、大成観光リボン闘争事件・最三小判昭57.4.13は理由を示していないが、目黒電報電話局反戦プレート事件・最三小判昭52.12.13の判断を踏襲しているという解釈が法律家の標準的見解といえる。 (菊池高志前掲判批だが、石橋洋前掲判批や西谷敏「リボン闘争と懲戒処分――大成観光事件」ジュリスト臨時増刊7922261983、プロレイバー側の学者も同趣旨を言っている)

 なお目黒局判決に後続する企業秩序論判例である国労札幌地本ビラ貼り戒告事件・最三小判昭54.10.30民集336676とそれを引用する多くの判例が、使用者は無許諾の企業施設内組合活動の受忍義務はないこと、済生会中央病院事件・最二小判平元.1.12.11民集43-12-1786によって就業時間中の無許諾組合活動が正当化されることはないことを明らかにしており、法益衡量の調整的アプローチを明確に否定していることから、職務専念義務は、政治活動を禁止する場合適用されるが、組合活動には適用されないということは、他の判例との整合性からみてありえないことである。

以上のことから私企業の労働契約上の誠実労働義務にも厳格な職務専念義務論が適用されるのであり、東京急行電鉄自動車部淡島営業所事件・東京地判昭60.8.26労民集364.5558では、同社の就業規則八条「従業員は、会社の諸規程および上長の指示にしたがい、……誠実にその義務を遂行しなければならない。」が引用され、「労働者は誠実に職務に従事すべき義務を負うことは、労働契約の性質から当然のことである。したがつて、労働者が勤務時間中にその職務と関係のない行為を行うことは原則として右義務に違反することとなり、この場合に右義務違反が成立するためには必ずしも現実に職務の遂行が阻害されるなどの実害が発生することまでは要しないものというべきである。そして、被告会社の前記就業規則八条の定めも、このことを明らかにしたものと解される。」と判示しているとおりである。

本件は、狭山差別裁判粉砕等、裁判の不当を訴える内容の縦10センチメートル、横14センチメートルの硬質プラスチック製のプレートを制服の左胸部に着用してした就労申入れを拒否した事案で組合活動ではないが、現在の東急電鉄の就業規則は不明だが、民鉄の就業規則を引用して厳格な職務専念義務論を述べた先例としてその意義が認めなければならない。

 

D ●西福岡自動車学校腕章事件 ・福岡地判平7920労判695133

自動車学校の労働組合員らがした腕章着用闘争につき、同闘争は、労働者の団結を示威し、使用者に対し心理的圧迫を加え、労働者の要求ないし主張を貫徹する争議行為的側面と、組合員相互間において連帯感を触発し、団結をより強固にし、使用者との交渉に当たって士気を鼓舞する組合活動的側面の双方を有するものであるが、業務を阻害しなくともその本来的な目的を達することができるから、特別な事情のない限り、本質的には争議行為ではなく組合活動であると解するのが相当であるとした上、就業時間中に組合活動を行うことはその具体的態様にかかわらず職務専念義務に反するもので、正当な組合活動ではないとして、腕章着用闘争を理由とする戒告処分は不当労働行為に当たらないとした「組合活動である本件腕章着用闘争が労働組合の正当な行為であったか否かについて検討すると、一般に、労働者は労働契約に基づき、就業時間中その活動力をもっぱら職務の遂行に集中させるべき職務専念義務を負うものであって、就業時間中に組合活動を行うことはその具体的態様にかかわらず右職務専念義務に反するものであるから、使用者の明示・黙示の承諾や労使慣行が成立しているなど特別の事情がない限り、労働組合の正当な行為にはあたらないものと解するのが相当である」

 

3)国労バッジ事件とはなんだったのか

 

  国労バッジ着用を理由とする、本来業務外し、厳重注意、訓告処分、夏季手当減額が不当労働行為にあたるかが争われた判例が多数あるのは、JR各社が、昭和62年発足以来着用規制を徹底したためである。JRの就業規則はよくできている。

三条(服務の根本基準)

 社員は、原告事業の社会的意義を自覚し、原告の発展に寄与するために、自己の本分を守り、原告の命に服し、法令・規定等を遵守し、全力をあげてその職務を遂行しなければならない(一項)。

二〇条(服装の整装)

 制服等の定めのある社員は、勤務時間中、所定の制服等を着用しなければならない(一項)。

社員は、勤務時間中に又は原告施設内で原告の認める以外の胸章、腕章等を着用してはならない(三項)。

二三条(勤務時間中等の組合活動)

 社員は、原告が許可した場合のほか、勤務時間中に又は原告施設内で、組合活動を行ってはならない。

 組合バッジ着用はたんに上記に違反するだけでなく、期末手当の支給額は、賃金規程一四三条及び一四五条の規定により、成績率により増額又は減額されるが、減額については、懲戒処分(減給、戒告)及び訓告のほか、勤務成績が考慮されるところ、勤務成績については、減率適用者調書が作成され、その中で、厳重注意を含む賞罰、服装違反の注意回数、業績、態度等について具体的に記載されている。

 要するに、服装違反の注意回数はボーナス査定にひびく制度設計にはじめからなっているのである。

 にもかかわらず国労は、JR発足以前から、組織的な組合活動としてバッジ着用行為を指示し,組織としても不当労働行為救済申立てを行ってきたのである。

 国労が方針を転換したのは平成87月以降労使協調路線へ変更してからである。平成11年3月18日の臨時全国大会において国鉄分割民営化による国鉄改革を承認する旨を決議し、平成11年9月に勤務時間中に組合活動を行うことを禁止する旨の労働協約を締結した。
 自由民主党,公明党,保守党及び社会民主党の4党は,国労に対し,平成12年5月30日,四党合意を提示し,国労本部は,同日,その受入れを決定した。もっとも,国労組合員のうちJR各社に不採用とされた国労闘争団のメンバーは,国労本部の四党合意の受入れに反対したものの,国労は,平成12年7月1日以降3回にわたる全国大会を経て,平成13年1月27日,四党合意の受入れを盛り込んだ方針案を採択するに至った。

 国労は、平成14年3月末以降は,組織として不当労働行為救済申立てを行うことはなくなり、平成18年11月には、バッジ事件を含む合計61件の不当労働行為救済申立事件を取り下げている。国労は,組合バッジ着用に関し,機関決定違反として統制処分をするまではしないが、支持はしないこととなった。JR東日本神奈川国労バッチ出勤停止処分事件 東京地判平24・11・7労判1067号18頁によれば平成15年7月以降国労バッジ着用者は1人となった。その者も退職したので、現在では組合バッジの着用規制は完全なものとなっていると考えられる。

 

 

 ここで問題となっている国労バッジとは実は大きさで2種類あるのである通常着用していたのは、縦一・一センチメートル、横一・三センチメートルの四角形で、黒地に金色のレールの断面と「NRU」の文字をデザインしたものであり、「NRU」は「国鉄労働組合」を英訳した「National Railway Union」の頭文字をとったものである。

 これと別にワッペン式大型バッジがあり、通称「くまんばち」と呼ばれ、デザインは本件組合バッジとほぼ同様であるが、縦二・六センチメートル、横二・八センチメートルと大きく、これは主に何らかの闘争時などを中心に着用された。この大型バッジについては、国鉄当局は、本件組合バッジと区別し、ワッペンの一種であるとして、国鉄末期に規制を行った。

 国鉄鹿児島自動車営業所事件 最三小判平5・6・11判時1446号151頁(管理者に準ずる地位にある職員が組合員バッジの取外し命令に従わないため点呼執行業務から外して営業所構内の火山灰の除去作業に従事することを命じた業務命令が違法とはいえないとされた事例 )が昭和60年の事案だが、縦約二六ミリメートル、横約二八ミリメートル布製であり、「くまんばち」の大きさに相当する。

 

 着用規制の経過等については、下記の3判例の判決書から抜粋する。

 

 

国鉄鹿児島自動車営業所事件・鹿児島地判昭63627労民39-23-216

(損害賠償請求事件)

 自動車営業所の管理者に準ずる地位にある職員が、取外し命令を無視して組合員バッジの着用をやめないため、同人を通常業務である点呼執行業務から外し、営業所構内の火山灰の除去作業に従事することを命じた業務命令が違法か適法かが争われた。被告は鹿児島営業所所長、同営業所助役、原告は同営業所運輸管理係、国労門司地本中央支部自動車分会鹿児島地区協議会議長。

 被告Kが組合員バッチの離脱命令に従わなかった国労組合員に対し、昭和六〇年七月の二三日、二四日、八月の五日、六日、一六日、一七日、二三日、二九日及び三〇日の九日間、原告を点呼執行業務から外し、鹿児島営業所構内の降灰除去作業を命じ、これを行わせたことは違法であるとした。

 

 先ず、被告kが原告に対し、組合員バッチの離脱命令を発したことの当否について検討すると、組合員バッチはその着用者が組合員であることを表示するとともに、その着用によって着用者に組合に対する帰属意識を持たせ、ひいては組合の団結心を高める心理的作用を営むものと認められるところ、団結権を保障された労働組合にとって、組合員の団結心を高めて組織の維持強化をはかることは重要な意味を持つものであるから、使用者としてもみだりにその着用を禁止したり、着用者に対して離脱命令を発することは許されないと解されるが、一方、国鉄職員は国家公務員法の適用を受けないものの、公務員とみなされ(日本国有鉄道法三四条)、使用者たる国民に対してその勤務時間中は職務に専念すべき義務があり(同法三二条二項)、その肉体的、精神的活動を職務の遂行にのみ集中しなければならないものであるから、組合員バッチの着用が右職務専念義務に反するものである場合は、使用者としても、組合員に対して勤務中はバッチを外すべきことを命じうるものと解すべきである。

 原告が着用していた組合員バッチは、昭和五九年夏から使用され始めた縦約二六ミリメートル、横約二八ミリメートルの大きさのいわゆる夏季用国労バッチ(布製)であって、その表面は黒地に金色のレールマークをあしらい金色でNRUとローマ字が表示されているものであることが認められ‥‥右バッチは着用者が組合員であることを表示しているのみであって,他に何らかの具体的な主義主張を表示しているものではなく、その点において、具体的な主義主張を外部に表示するワッペンや人目を引き業務の円滑な遂行に支障をきたす虞れのある赤腕章などとは業務阻害性の程度を異にする着用物であると認められる。

  

 以上の本件当時国鉄が置かれていた状況、ことに労働者、使用者が一体となって経営の再建に取り組むべき状況にあったことを考えると、使用者が労働者に対して、これまで以上に職務に専念すべきことを要求することは当然許されることであるし、そのため従来は労使慣行として行われてきたことについても見直しをはかることにも合理的理由があり、前記のようにワッペンや赤腕章とは業務阻害性の程度が異なるものの、組合員バッチを着用して勤務することは勤務時間中の組合活動に外ならないから組合員バッチの着用を禁止する措置に出ることにも一応の合理性が認められるものと言うべきである。ことに、本件の場合、当時国鉄が経営の合理化のために打ち出す種々の施策に対して、原告の所属する国労が反対する方針をとり、そのため労使間は恒常的に対立した状況にあったことは公知の事実であり、前掲各証拠によれば、鹿児島営業所においても、ワッペン、赤腕章の着用などの斗争が行われ、被告らはじめ管理職と原告をはじめとする組合員とは対立した状況にあったことに照らせば、そのような状況のもとでの組合員バッチの着用は組合員であることを勤務時間中に積極的に誇示する意味と作用を有するものであって、労使間の対立を勤務時間中にも意識化して、職場規律を乱す虞れを生じさせるものであり、職務専念義務に違反するところがあると言わざるを得ない。

 そうすると、結局、被告らが原告に対して組合員バッチの離脱命令を発したことには合理的理由があると言うべきである。

(中略)

 使用者が労働者に対し労働契約に基づき命じ得る業務命令の内容には、労働契約上明記された本来的業務ばかりでなく、労働者の労務の提供が円滑かつ効果的に行われるために必要な付随的業務も含まれるが、使用者は右付随的業務を無制限に労働者に命じ得るものではなく、命令の内容は、労働者の人格、権利を不当に侵害することのない合理的と認められる範囲のものでなければならず、その合理性の判断については、業務の内容、必要性の程度などとともに、その業務命令が発せられた目的、経緯なども総合的に考慮して決せられる必要があると。国鉄労働組合の組合員に対し、7、8月という暑さの中、10日間もの間長時間にわたり広さ1200平方メートルの営業所構内の降灰除去作業を1人で行わせたことにつき、右降灰除去作業命令は、右組合員が組合員バッチの離脱命令に従わなかったことに対して懲罰的に発せられたものと認められるから、業務命令権行使の濫用であって違法であり、不法行為が成立するとされた。

 

二審・福岡高等裁判所宮崎支部判・平成元年918労民40-45-505 棄却

上告審 最二判・平5611判例時報1466-151

 

破棄自判

 

 引用は一部のみ

二 原審は、右事実関係の下において、次のとおり判断した。

1 降灰除去作業は、被上告人の労働契約上の義務の範囲内に含まれるから、本件各業務命令を労働契約に根拠のない作業を命じたものとはいえない。

2 また、本件バッジの着用は、職場規律を乱し、職務専念義務に違反するものであるから、上告人Kがした前記取外し命令及びこれに従わなかった被上告人を点呼執行業務から外した措置には、いずれも合理的な理由があり、これが違法なものとはいえない。

3 しかし、本件各業務命令は、被上告人には運輸管理係としての日常の業務があり、殊更降灰除去作業を命ずべき必然性はなかったのに、本件バッジの取外し命令に従わなかったことに対し、懲罰的に発せられたものである。このように、かなりの肉体的、精神的苦痛を伴う作業を懲罰的に行わせることは、業務命令権の濫用であって違法である。したがって、本件各業務命令は、被上告人に対する不法行為に当たり、上告人らは、これにより被上告人の被った精神的損害を賠償すべき義務がある。

三 しかしながら、原審の前項3の、本件各業務命令が違法であって被上告人に対する不法行為に当たるとする判断は、是認することができない。

 前記の事実関係からすると、降灰除去作業は、鹿児島営業所の職場環境を整備して、労務の円滑化、効率化を図るために必要な作業であり、また、その作業内容、作業方法等からしても、社会通念上相当な程度を超える過酷な業務に当たるものともいえず、これが被上告人の労働契約上の義務の範囲内に含まれるものであることは、原判決も判示するとおりである。しかも、本件各業務命令は、被上告人が、上告人Kの取外し命令を無視して、本件バッジを着用したまま点呼執行業務に就くという違反行為を行おうとしたことから、自動車部からの指示に従って被上告人をその本来の業務から外すこととし、職場規律維持の上で支障が少ないものと考えられる屋外作業である降灰除去作業に従事させることとしたものであり、職場管理上やむを得ない措置ということができ、これが殊更に被上告人に対して不利益を課するという違法、不当な目的でされたものであるとは認められない。なお、上告人ら管理職が被上告人による作業の状況を監視し、勤務中の他の職員が被上告人に清涼飲料水を渡そうとするのを制止した等の行為も、その管理職としての職責等からして、特に違法あるいは不当視すべきものとも考えられない。そうすると、本件各業務命令を違法なものとすることは、到底困難なものといわなければならない。

 

組合バッジ取り締まりの経緯について(下級審判例から引用)

 

〇JR東日本神奈川国労バッチ事件 東京地判平987判タ957114

 

一部引用

 

 

(一)原告は、昭和六二年四月七日、関係各機関の勤務(担当)課長に対し、各現業機関の社員を対象に、同月一日から七日までにおける社章、氏名札及び組合バッジの常態的な着用状況についての調査・報告を指示した。

 右調査結果によると、組合バッジ着用者は五六四五名(全体の八・八パーセント)で、そのうち五六三四名は国労組合員であった。

(二)原告は、同月二〇日、関係各機関の勤労(担当)課長に対し、組合バッジ着用者に対しては服装違反である旨注意を喚起して取り外すよう注意・指導すること、その際の注意に対する言動を含めた状況を克明に記録しておくこと、繰り返し注意・指導を行ったにもかかわらず、これに従わない社員に対しては、『就業規則』・『社員証、社章及び氏名札規程』に違反するとして厳しく対処することとし、人事考課等に厳正に反映させることとされたいこと、等を内容とする指示をした。

 これを受け、翌二一日、東京圏運行本部の総務部人事課長及び勤労課長は、関係現業機関の長に対して同旨の指示をした。

(三)原告は、同月二三日、関係各機関の勤労(担当)課長に対し、同年五月七日から一三日までの間における社員の社章、氏名札及び組合バッジの着用状況の第二次調査・報告を指示した。

 右調査結果によると、組合バッジ着用者は二七九八名(全体の四・四パーセント)で、そのうち二七九〇名は国労組合員であった。

(四)東京圏運行本部の人事課長及び勤労課長は、同年四月二八日、各現業機関の長に対し、組合バッジを着用するなど決められた服装をしていない社員について個人別に把握するよう指示した。

(五)原告は、同年五月二一日、関係各機関の勤労(担当)課長に対し、依然として管理者の注意・指導に従わず服装違反を繰り返す社員が見受けられるとして、更に強力にこれら服装違反の社員に対して注意・指導の徹底を図り、直ちに改善に取り組むよう指示した。

(六)原告は、同月二八日、関係各機関の総務部長等あてに、服装違反者に対する方針を示し、その中で、当該方針を翌二九日から点呼、掲示等により社員に対し周知徹底を図る上での参考として警告文を示し、現場の実態について完全に把握し、厳正な対処の準備を図るよう指示した。

(七)原告は、同年六月一二日、別紙組合員目録1記載の国労組合員に対し、同年四月一日から六月四日の間において本件組合バッジ等を着用し度重なる注意・指導に従わなかったことを理由として厳重注意の処分を、また、その際に不必要な発言により職場規律を乱したことを理由として訓告の処分をそれぞれ発した。

 なお、原告は、全社で四六二〇名の社員に対し厳重注意、二一〇名の社員に対し訓告の処分を行ったが、そのうち厳重注意の四名以外はすべて国労組合員であった。

(八)原告は、同年七月三日支給の夏季手当に関し、別紙組合員目録1記載の国労組合員及び処分の発令はなかったものの、本件組合バッジ等を着用していた別紙組合員目録2記載の国労組合員に対し、同年四月一日から五月三一日までにおける勤務成績が良好でないとして、賃金規程一四五条一項、三項に基づき、支給額の五パーセントを減額した。

 

 

国鉄は、昭和六〇年九月までに計八次にわたる職場規律の総点検を行ったが、いずれの総点検においても組合バッジの着用状況についての調査項目はなかった。(〈証拠略〉)

(3)国労、動労、全施労及び全国鉄動力車労働組合連合会(以下「全動労」という。)の四組合は、昭和五七年三月九日、国鉄再建問題四組合共闘会議を発足させ、「国鉄の分割民営化、二〇万人体制等に反対し、真の国鉄再建を目指し四組合の統一要求実現のため諸行動を強化する」等の闘争方針を確認し、総点検についての前記昭和五七年三月五日付け総裁通達に対して抗議を行った(〈証拠略〉)。

(4)国鉄は、同年七月一九日、国労、鉄労、動労、全施労及び全動労の五組合に対し、従来から組合分会と現場責任者との間で職場単位で行われてきた現場協議制度が悪しき労使関係を生んできたとして、「現場協議に関する協約」の改訂案を提示し、同年一一月三〇日までに交渉がまとまらなければ現行協約を破棄する旨通告した。これについて、鉄労、動労及び全施労は国鉄との間で改訂案どおりの協約を締結したが、国労及び全動労と国鉄との交渉は決裂し、同年一二月一日以降、国労及び全動労について「現場協議に関する協約」は失効した。

 なお、この頃以降、国労及び全動労を除く各組合は、争議行為を行わなくなった。(〈証拠略〉)

(5)国労は、昭和六〇年に分割民営化反対のキャンペーンとしてワッペン着用闘争を行った。これに対して国鉄は、同年九月一一日、闘争に参加した約五万九二〇〇名の組合員に対して戒告、訓告等の処分をした。(〈証拠略〉)

(6)国鉄は、昭和六〇年一一月三〇日、国労に対し、同日期限切れとなる雇用安定協約について、国労が派遣や休職などいわゆる余剰人員対策に対し非協力の態度をとっていることを理由に、再締結できない旨通告し、翌一二月一日から無協約の状態となった。一方、

国鉄は、動労、鉄労及び全施労との間で同日、雇用安定協約を昭和六二年三月三一日までの期限で再締結した。(〈証拠略〉)

(7)国鉄は、昭和六一年一月一三日、「労使共同宣言」(第一次労使共同宣言)の締結を各組合に提案した。同宣言の案は、「雇用安定の基盤を守るという立場から、国鉄改革が成し遂げられるまでの間、労使は、信頼関係を基礎として、以下の項目について一致協力して取り組むことを宣言する。」というものであり、諸法規の遵守、リボン・ワッペンの不着用、氏名札の着用等の服装の整正、点呼妨害等の根絶などの課題への最善の努力、労使一致協力による必要な合理化の積極的推進、余剰人員対策についての具体的取組み、等の項目が掲げられていた。

 この提案に対し、鉄労、動労及び全施労は受諾したが、国労は拒否した。(〈証拠略〉)

 

(8)同年二月二五日に国鉄総裁公館で行われた鉄労、動労及び全施労の共同宣言三組合と国鉄幹部との労使懇親会において、S常務理事は「お互い同志的団結を固めたい」と挨拶し、S総裁は「総領の甚六というが、体の大きいのはなかなか言うことを聞かない。

その点、二男、三男、四男は目から鼻に抜ける賢さを持っている。」「皆さん、親の手に負えなくなった兄貴を、ひとつ導いてほしい。……三兄弟のますますの発展を……」などと述べた(〈証拠略〉)。

 なお、同年五月当時の各組合の組合員数は、国労が約一六万三〇〇〇名(組織率六八・三パーセント)、動労が約三万一三五〇名(組織率一三・一パーセント)、鉄労が約二万八八七〇名(組織率一二・一パーセント)、全施労が約一五九〇名(組織率〇・七パーセント)であって、杉浦総裁の右発言における「総領の甚六」「親の手に負えなくなった兄貴」が国労を指すことは明らかであった(〈証拠略〉)。

(中略)

 

(10)国鉄総裁は、同年三月五日、各機関の長に対し、職場規律の総点検の集大成として、個々の職員の実態把握を統一的に行うため職員管理調書を作成するよう通達を発した。

 この職員管理調書は、同年四月二日現在の職員について、昭和五八年四月一日から昭和六一年三月三一日までを調査対象期間として作成されたが、そこには一般処分、労働処分等七項目の特記事項のほか、評定事項として業務知識、責任感、協調性、職場の秩序維持、服装の乱れ、勤務時間中の組合活動等二一項目について記入することとされていた(労働処分については、昭和五八年七月二日に処分通知を行った「五八・三闘争」から記入することとされたが、動労は昭和五七年一二月以降争議行為を行わなくなり、動労組合員に対する最後の処分通告は昭和五八年三月二六日であるため、動労組合員の労働処分歴は右調書から除かれることになった。)。その中の「服装の乱れ」の項目は、「リボン・ワッペン、氏名札、安全帽、安全靴、あご紐、ネクタイ等について、指導された通りの服装をしているか」というものであり、組合バッジについては言及されていなかった(なお、「勤務時間中の組合活動」の項には、ワッペン着用、氏名札未着用については「服装の乱れ」の項で回答することとの注意書がある。)。(〈証拠略〉)

(11)国労は、昭和六一年四月一〇日から一二日まで、国鉄の分割民営化方針等に抗議して、ワッペン着用闘争を行った。これに対して国鉄は、同年五月三〇日、右闘争に参加した約二万九〇〇〇名の組合員に対し戒告及び訓告の処分をした。

 

 

(中略)

 

(〈証拠略〉)

(15)S総裁は、同年七、八月に開催された鉄労、動労及び全施労の各定期大会に出席し、鉄労大会では「この苦難のなかで終始一貫した信念と勇気と行動力の鉄労の存在は画期的であり、絶賛称賛したい。ほめてもほめすぎることはない。」と述べ、動労大会では「動労の皆さんの『知性と勇気』に心から御礼を申し上げます。国鉄の組合のなかにも『体は大きいが、非常に対応が遅い組合』があります。この組合と仮に、昔『鬼の動労』といわれたままの動労さんが、今ここで手を結んだといたしますと、これは国鉄改革どころではない。そのことを想像するたびに、私は背筋が寒くなるような感じがします。……あらためて動労の皆さんに絶大なる敬意と賞賛の言葉を申し上げます。」と述べ、全施労大会でも「全施労の皆様方の今日の国鉄改革への協力につきまして心から感謝申し上げます。」と述べて、右各組合を高く評価し、その取組みに感謝する旨の挨拶をした(〈証拠略〉)。

 更に、同年八月二八日、国鉄は「総裁談話」を発表し、その中で、昭和五〇年一一月から一二月にかけて行われたいわゆる「スト権スト」に関し、国鉄が昭和五一年二月に国労及び動労に対して提起した約二〇二億円の損害賠償請求訴訟のうち、動労に対するものを取り下げ、「これまで動労がとってきた労使協調路線を将来にわたって定着させる礎としたい。」などと述べ、昭和六一年九月三日に動労に対する右訴えを取り下げた(〈証拠略〉

)。

(16)動労、鉄労及び全施労の右各定期大会に、各組合の代表者はそれぞれ相互に来賓として挨拶し、動労の定期大会において、S鉄労書記長は「新事業体における新しい労働運動を創りあげてみたい。その共通理念は、国鉄労働運動を形骸化し、しかも多くの労働者に雇用不安をかもし出した国労運動を打倒する闘いを追求していきたいと考えているわけです。」などと述べ、鉄労の定期大会でS全施労委員長は「国鉄改革に反対する国労は今や崩壊寸前であり、我々は力を合わせて国労解体を更に促進しよう。」などと述べ、更に、全施労の定期大会では、М動労委員長が「どんどん組織を伸ばし、駄目な労働組合には消えてもらうより方法がありません。駄目な組織はイジメ抜く。そういう決意でいます。」などと述べ、ともに国労への激しい敵意をあらわにしている

 

(〈証拠略〉)。

(17)一方、国労は、昭和六一年一〇月九日・一〇日の両日、伊豆修善寺で臨時大会を開催したが、分割民営化反対の旗を下ろして労使共同宣言を締結するという国鉄当局との「大胆な妥協」を目指す執行部方針は否決され、引き続き国鉄の分割民営化に反対していく方針が確認された。同大会以降、国労は分裂し、その後各地域に鉄道産業労働組合が結成された。

 

 

 

(二)動労組合員は、昭和六二年三月頃までは組合バッジを着用していたが、原告会社が発足した頃は、国労以外のほとんどの他組合員は組合バッジを外しており、同年四月下旬頃には、組合バッジを着用していたのは国労組合員のみというに等しい状況であった(〈証拠・人証略〉)。

(三)鉄道労連は、昭和六二年四月一日付け機関紙で組合員に対し「着けよう鉄道労連バッジ」との呼びかけをしたが、鉄道労連下部組織の東鉄労組合員は着用しなかった(〈証拠・人証略〉)。

 東鉄労としては、所属組合員が就業時間中組合バッジを着用するようなことがあれば、強力に指導して外させる方針である(〈証拠略〉)。

 

(中略)

 

5 労使関係に関する原告会社幹部の発言等

(一)原告のМ常務取締役は、昭和六二年五月二五日、昭和六二年度経営計画の考え方等の説明会において、労務管理について触れ、「職場管理も労務管理も三月までと同じ考えであり、手を抜くとか卒業したとかいう考えは毛頭持っていない。とくに東日本の場合は従来と中身は少しも変わっていないのだから。二か月経ったから遠慮なく申すが、もう我慢できない。非常に危険な状態になっている。当分は立ち上がって闘う必要がある。闘争心、競争心を忘れないように。……会社にとって必要な社員、必要でない社員のしゅん別は絶対に必要なのだ。会社の方針派と反対派が存在する限り、とくに東日本は別格だが、おだやかな労務政策をとる考えはない。反対派はしゅん別し断固として排除する。等距離外交など考えてもいない。処分、注意、処分、注意をくりかえし、それでも直らない場合は解雇する。」などと述べた(〈証拠略〉)。

(二)М常務取締役は、昭和六二年六月二〇日、鉄道労連高崎地方本部主催の学習会において、組合バッジ着用について触れ、「何も、共・協連合と皆さんが手を結べと言っているのではない。会社を破壊しようとする者がいれば、私が先頭に立って闘う。……組合バッジは、労働運動の現れである。現れでも何でもいい。……就業規則で認めていないことが何で労働運動なのか。従って、今度は、人事部長名であらゆる所に掲示して、宣戦布告し、個人説得をする等をしてそれでもいう事を聞かない者には処分という形で警告を与えた。しかし、これで終わりではない。どしどしやっていかなければならない。どうしても一緒にやっていけない者は解雇するしかない。」などと述べた(〈証拠略〉)。

(三)S社長は、昭和六二年八月六日、東鉄労の第二回定期大会の挨拶において、「今後も皆さん方と手を携えてやっていきたいと思いますが、そのための形としては一企業一組合というのが望ましいということはいうまでもありません。残念なことは今一企業一組合という姿でなく、東鉄労以外にも二つの組合があり、その中には今なお民営分割反対を叫んでいる時代錯誤の組合もあります。民営分割反対ということは、おそらくJR東日本がつぶれて昔の国鉄に戻ったら良いと思っているのではないかと思います。……このような人達がまだ残っているということは会社の将来にとって非常に残念なことですが、この人たちはいわば迷える小羊だと思います。皆さんにお願いしたいのは、このような迷える小羊を救ってやって頂きたい。皆さんがこういう人達に呼び掛け、話合い、説得し、皆さんの仲間に迎え入れて頂きたいということで、名実共に東鉄労が当社における一企業一組合になるようご援助頂くことを期待し、……」などと述べた(〈証拠略〉)。

 

(中略)

 

6 現場における本件組合バッジの取り外し指導等の状況について

(一)鎌倉駅

(1)原告の鎌倉駅は社員数が三五名であり、うち国労組合員は本件命令申立時二五名であったが、後に一名減じ、二四名となった。

 鎌倉駅では、昭和六二年初め、国労組合員二五名中二四名が本件組合バッジを着用して勤務していたが、その後、点呼、巡回時等にI駅長、K助役らが組合バッジを取り外すよう指導した結果、翌五月初めには本件組合バッジの着用者はО国労組合員ら九名に減少した。

 しかし、本件訓告又は厳重注意の処分は、この九名の国労組合員だけでなく、当初本件組合バッジを着用していて、のちに外した者を含めた二四名の国労組合員に対してなされた。(〈証拠略〉)

(2)鎌倉駅のI駅長、K助役らは、同年五月になっても本件組合バッジを外さないО組合員ら国労組合員に対し、同月六日以降、それらの者を勤務中個別に駅長室に呼び、組合バッジを外すよう強く指導し、その時間は半時間以上に及ぶこともあった。I駅長、K助役らが右指導の際に述べた組合バッジ規制の理由は、就業規則に定めてあるからということであった。(〈証拠略〉)

 I駅長らは、同駅駅長室で本件組合バッジの取り外しを指導する際に、国労組合員に対して次のような発言をした。

(a)「袖をまくって、バッジ着けて生意気やっているんじゃないぞ。俺は、羽沢(駅)でY(当時横浜支部青年部書記長)とかIと喧嘩してきたんだ。……俺は、専門の教育を受けてきたんだ。なめるな。」、「山梨のほうに転勤希望を持っているんだろう。だったらバッジとらなくては駄目だ。」(同月六日午前一〇時から一〇時四五分までの間におけるО組合員に対するI駅長の発言)(〈証拠略〉)

(b)「助役が勝手に言っているんじゃないんだよ。会社の方針に基づいて言っているんだからな。これだけは理解してもらわないとまずいよ。鎌倉駅だけ独自にやってるんじゃないからな。会社の方針に基づいてやってるんだから。そこんところを理解しなきゃ駄目だよ。勝手にやったんじゃ。かってに行動したんじゃ。今すぐはずせ。」(同月一三日午前九時一〇分から九時四〇分までの間におけるО組合員に対するI駅長の発言)、「それについて何だかんだの処分があっても、それは覚悟してるわけだね。」、「私が処分するわけじゃないから、上の人の見解だからね。上でも名前あげろと言ってんだから。それについてどういう形でくるか分かんないけどもね。就業規則だって読んだと思うけど、こういう規則、こういうものに違反した者については懲戒するって文面、見たはずだけど。あすこにでかいの貼ってあるでしょう。見ているでしょう。」(同K助役の発言)(〈証拠略〉)

(c)「今日はすぐ外して。自分のためだ。おかあちゃんや子供に高い給料持って行ったほうがいいんじゃないの、処分もらって給料下げられるより。」、「出札やりたいと言えば、出札入れてやってもいいよ。……ちゃんとバッジとって、言うことを聞いてくれりゃ。」(同月一六日午前一〇時から一〇時三〇分までの間におけるT国労組合員に対するK助役の発言)(〈証拠略〉)

(d)ほかにも、「今後は、会社だから試験制度になる。その時は一切推薦しないぞ。担務変更するぞ。配転するぞ。君は小山から出てきているが、通勤が大変だろう。通勤できない所に飛ばされてもいいのか。」(K組合員に対するK助役の発言)、「分会から圧力があるのか。誰が指示している。出札でバッジを取れなかったら他にまわそうか。改札に行くか。」(K組合員に対するI駅長の発言)、「君は以前、改札へまわされた経緯があるが、また行くか。」(同K助役の発言)、「誰の指示か。誰に言われてやっているか。今の会社は親方日の丸ではない、今すぐ外せ。バッジに対するお客の判断などは関係ない。担務変更、転勤もありえるぞ。IYが言ってきたら俺の所に言いに来い。」(О組合員に対するI駅長の発言)、「処分されても組合はかばってくれない。」(同K助役の発言)、等の発言があった(〈証拠略〉)。

(3)K助役らは、同年七月二八日午前九時五分ころ、改札口で改札業務遂行中のО組合員に対し、利用客がいるにもかかわらず、強い口調で本件組合バッジの取り外しを求めている(〈証拠略〉)。

(二)横浜駅

(1)原告の横浜駅は、本件命令申立時、社員数が二〇〇名弱、うち国労組合員が五七名であった。

 同駅に勤務する国労組合員約二五名は、昭和六二年四月一日に原告会社が発足してからも、本件組合バッジを着用して勤務していた。同駅のK駅長らは、本件組合バッジを取り外すよう指導を繰り返し、これらの者は、同月一一日までに同バッジを取り外した。

 しかし、これらの国労組合員のうち、一九名に対して本件訓告又は厳重注意の処分がなされた。

 横浜駅の管理者は、同年五月ころから、国労マーク入りのネクタイ、ネクタイピンについても取り外しを指導するようになった。この時期、助役代理のN営業主任は、連日のように国労組合員が業務中の改札ラッチに来て、「国労マークの入ったものはすべてとれ」「おめえなんかやめちまえ、手続は俺がとってやる」「(黒のマジックを持って)これで(ネクタイの国労マークを)消せ」「消さないとくびだ」等と大声を出した。(〈証拠略〉

(2)S国労組合員は、昭和五〇年四月に国鉄に採用され、北海道の函館電気区で電気設備の保守、検査等の業務に従事していたが、国鉄の分割民営化に伴い、昭和六二年五月二八日に原告横浜駅の営業係勤務となった(〈証拠略〉)。

(キ)同年一〇月一日午前九時ころの始業点呼の際、U助役がS組合員に「国労バッジを外しなさい。」と指導したのに対し、同人が「憲法で認められた権利であり、外しません。」と答えたところ、同助役は、「現認する。業務命令違反だ。」と通告し、S組合員に就業規則の書き写しを命じた。

 午前九時一〇分ころ、就業規則の書き写し作業を行おうとしたS組合員に対し、木内駅長は、「国労バッジを外しなさい。まだそんなものを着けているのか。業務命令だ。」と言った。これに対してS組合員は、「外せない。」と答えたところ、同駅長は、「従えないのなら家へ帰れ。業務を否認する。五分時間をやる。考えなさい。」と言った。

 午前九時一五分ころ、U助役は、S組合員に対して「(国労バッジを)外さないのなら九時一五分、業務否認。家へ帰れ。」と命じた。

 なお、その後、原告は右業務否認の措置を撤回している。(〈証拠略〉)

 

(1)利用者の面前での注意・指導

 駅の出札、改札、ホーム職員、売店などの事業部で働いている者など旅客に接する部署の国労組合員に対し、仕事中に旅客のいる前で組合バッジを外せと何回も注意する(〈証拠略〉)。

(2)不利益処遇の示唆

 本件組合バッジ着用によって、解雇、出向・配転、担務変更や、昇給・昇格、宿舎入居等における不利益処遇のあることを示唆する(〈証拠略〉)。

(3)就業規則の朗読・書き写しの業務命令

 国労組合員が「なぜバッジがいけないのか」と質問したところ、翌日から一か月間にわたり再教育と称して勤務から外され、就業規則の書き写しなどをさせられたり(〈証拠略〉

)、「就業規則を知らないならこれを読みなさい」と就業規則二〇条を大きくコピーした用紙を渡して読まされた(〈証拠略〉)。

(4)駅長室等における長時間の取り外し指導

 駅長室に呼び出し、または複数の管理職で取り囲んで組合バッジを外せと怒鳴る等して威嚇することもあった。田浦駅では、駅長室で、取り外さなければ配転もありうると大声で約二〇分間、執拗に本件組合バッジの取り外しを指導した(〈証拠略〉)。戸塚駅では、駅長室で一人一〇分ないし三〇分間組合バッジの取り外しを指導した(〈証拠略〉)。桜木町駅でも、業務中に駅長室に呼びつけられて服務規定の条文を読まされたり、一日中会議室で条文を読まされて、感想文を書かされた(〈証拠略〉)。

(5)ネクタイ・ネクタイピン・ボールペン等の国労マークに対する指導(略)

 

7 神奈川県近辺の私鉄のうち、箱根登山鉄道、江ノ島観光電鉄、臨港バス交通、東武交通、帝都高速度交通営団、東京急行、京成電鉄、京浜急行、京王帝都、小田急及び相模鉄道の各労働組合の組合員らは、いずれも就業時間中に当該組合所属を表示する組合バッジや私鉄総連の定めた統一組合バッジ(横一・三センチメートル、縦〇・八センチメートル、緑と赤地又は黒地にPRUの文字が入ったもの)を着用していることがあり、これに対して各使用者はその着用を禁止しておらず、右着用を理由に懲戒処分等の不利益取扱いもしていない(〈証拠略〉)。

国労バッジ判例の類型

20260215-172354  

20260215-172424

20260215-172522_20260215181901 

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第1類型

  • JR東海新幹線支部国労バッジ事件・東京高判平91030判時1626388

 

 要旨

(棄却。勤務時間中に組合バッヂを着用する行為は、それが労働組合員であることを顕示して組合員相互間の組合意識を高め、使用者及び他の労働組合に所属する社員との対立を意識させ、注意力を職務に集中することを妨げるおそれがあるものであったと認められる等判示の事実関係の下においては、当該行為により職務の遂行が阻害される等の具体的な実害が発生しないとしても、企業秩序の維持に反するものであり、職務専念義務、勤務時間中の組合活動の禁止、服装の整正義務を定める就業規則の各規定に違反するとし、厳重注意や夏期手当の減額支給等の措置は不当労働行為に当たらないとした。上告)

 

 要所・抜粋

 本件就業規則は、企業経営の必要上従業員の労働条件を明らかにするとともに、企業秩序を維持・確立することを目的とするものであるが、その解釈・適用に当たっては、前記憲法の趣旨に従い、団結権と財産権との調和と均衡が確保されるようにされなければならないところ、右各規定の目的に鑑みれば、形式的に右各規定に違反するように見える場合であっても、実質的に企業秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右諸規定の違反になるとはいえないと解するのが相当である(最高裁判所昭和四七年(オ)第七七七号、同五二年一二月一三日第三小法廷判決・民集三一七号九七四頁参照)〔引用者註目黒電報電話局事件〕。

 したがって、本件組合員等の本件組合バッヂ着用行為が、文言上形式的には本件就業規則三条一項、二〇条三項、二三条に違反するように見える場合であっても、実質的に企業秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右各規定の違反になるとはいえないと解するのが相当であるが、そのような特別の事情が認められない限り、右各規定違反になるものといわなければならない。

(二)(1)そこで、次に、本件において、実質的に企業秩序を乱すおそれのない特別の事情があると認められるか否かについて検討するに、一般私企業において、従業員は、労働契約を締結して、労務提供のために企業に入ることを許されたものであるから、労働契約の趣旨に従って労務を提供するために必要な範囲において、かつ、企業秩序に服する態様において、勤務時間中行動することが認められているものであるところ、被控訴人の場合‥‥国鉄時代には、職場規律が弛緩し、ヤミ協定、悪慣行が存在していたことから、新会社においては、同じ轍を踏まないため、設立までには、これらを是正し、違法行為に対しては厳正な処分を行い、職務専念義務を徹底させることが求められていたのであり、このような是正措置の上に立って、新会社の運営が行われることが要請されていたものである‥‥。

(2)したがって、本件就業規則三条一項の「社員は、被控訴人事業の社会的意義を自覚し、被控訴人の発展に寄与するために、自己の本分を守り、被控訴人の命に服し、法令・規定等を遵守し、全力をあげてその職務を遂行しなければならない。」という規定は、社員の職務専念義務という観点からは、社員は、勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないという職務専念義務を負うものであることを明らかにしたものであると解するのが相当である。

 そして、労働契約においては、労務の提供の態様において職務専念義務に違反しないことは労働契約の重要な要素となっているから、職務専念義務に違反することは企業秩序を乱すものであるというべきであり、その行為が服装の整正に反するものであれば、本件就業規則二〇条三項に違反するといわなければならないし、また、それが組合活動としてされた場合には、そのような勤務時間中の組合活動は本件就業規則二三条、労働協約六条に違反するものといわなければならず、また、右規定違反が成立するためには、現実に職務の遂行が阻害されるなどの具体的な実害の発生を必ずしも要件とするものではないと解するのが相当である。

(三)(1)本件についてこれをみるに‥‥本件組合バッヂの形状は、縦一・一センチメートル、横一・三センチメートルで、黒字の金属板に、金色の線路の断面図が描かれたものに「NRU」の文字(国鉄労働組合を英訳した「NATIONAL RAILWAY UNION」のイニシャル)がデザインされたものであり‥‥本件組合バッヂは、国労に加入した際、国労手帳とともに組合員に無償で支給され、国鉄時代には、国労の指令等がなくとも、国労所属組合員は、自発的にこれを制服等の胸や襟に着用していたことが認められる。

 このように本件組合バッヂは,そこに「NRU」の文字がデザインされているにすぎず、具体的な主義主張が表示されているわけではない。しかし、本件組合員等の本件組合バッヂ着用行為は、前示のとおり、組合員が当該組合員であることを顕示して本件組合員等相互間の組合意識を高めるためのものであるから、本件組合バッヂに具体的な宣言文の記載がなくとも、職場の同僚組合員に対し訴えかけようとするものであり、被控訴人の社員としての職務の遂行には直接関係のない行動であって、これを勤務時間中に行うことは、身体的活動による労務の提供という面だけをみれば、たとえ職務の遂行に特段の支障を生じなかったとしても、労務の提供の態様においては、勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い、職務にのみ従事しなければならないという被控訴人社員としての職務専念義務に違反し、企業秩序を乱すものであるといわざるを得ない。また、同時に、勤務時間中に本件組合バッヂを着用して職場の同僚組合員に対して訴えかけるという行為は、国労に所属していても自らの自由意思により本件組合バッヂを着用していない同僚組合員である他の社員に対しても心理的影響を与え、それによって当該社員が注意力を職務に集中することを妨げるおそれがあるものであるから、この面からも企業秩序の維持に反するものであったといわなければならない。 

 また、本件組合バッヂの着用行為は、国鉄の分割民営化に反対する東京地本が昭和六二年三月三一日に出した「国労バッヂは全員が完全に着用するよう再度徹底を期することとする。」などを内容とする指示第一六〇号に従ってされたものであることに照らせば、使用者及び分割民営化に賛成した他の労働組合の組合員に対して、国労の団結を示そうとする意味があるものというべきであり、これにより、国鉄改革法に従って新会社の運営を推進しようとする使用者及び分割民営化に賛成した他の労働組合の組合員との対立を意識させ、そのことによってこれらの者が注意力を職務に集中することを妨げるおそれのあるものであるから、この面からも企業秩序の維持に反するものであったというべきである。

 このような次第であるから‥‥、前記各規定に違反するというためには、現実に職務遂行が害されるなどの具体的な実害の発生を必ずしも要件とするものではないのであって、本件組合バッヂを着用した者が、顧客と接触の多い車掌であるか、あるいは、運転所、保線所、電気所など接客頻度の低い部署に所属する者であるかによっては、その違反の情状に差異が生じ得ることはあっても、前記各規定の違反の成否に差異を生じるものではないといわなければならない。本件組合バッヂの着用により現実の職務遂行に支障を生じるものではないから、本件組合バッヂの着用は前記各規定に違反するものではない旨の控訴人及び控訴人補助参加人等の主張は採用することができない。

 ‥‥本件就業規則は、従来の国鉄とは異なる新しい企業秩序の維持・確立に向けて、すべての社員を対象として制定されたものであって、‥‥本件就業規則及び右事務連絡が国労及び国労所属組合員にねらいを定めたものであったと認めることはできないし、他にこれを認めるに足りる証拠はない。控訴人補助参加人等の右主張も採用することはできない。

8‥‥本件措置をもって、被控訴人が国労を嫌忌するがゆえに、国労の組織を弱体化させるために支配介入した不当労働行為であると認めることはできず、他に本件措置が労働組合法七条三号所定の不当労働行為に該当すると認定するに足りる証拠はない。 

 

 

  • JR東海新幹線支部国労バッジ事件・最三小判平10717労判74415

 

(棄却、国労バッジ着用に対する厳重注意および夏期手当の5%減額の措置を支配介入の不当労働行為に該当するという都労委の救済命令を取り消した原審判断を維持する)

 

 

 

第1類型

  • JR東日本神奈川国労バッチ出勤停止処分事件・東京地判平24117労判106718

 

要旨

(救済命令取消請求訴訟。中労委は国労バッジ着用を続けたことを理由とする(1〕平成20年1月26日付けで5日間の,〔2〕同年10月31日付け及び〔3〕平成21年9月29日付けで各10日間の各出勤停止処分を不当労働行為にあたるとして救済命令を発令したが、一部取り消す。就業規則違反行為は約15年にもおよんで再三反復継続していたことからすれば業務に対する支障がない行為ではあるがそれに対する処分の加重性には合理的理由があり,さらに国労は昭和62年の会社発足以来組織的な組合活動としてバッジ着用行為を指示し,組織としても不当労働行為救済申立てを行うなどしてきたが,平成14年3月末以降は,組織として不当労働行為救済申立てを行うことはなくなり,平成18年11月には,バッジ事件を含む合計61件の不当労働行為救済申立事件を取り下げているのであって、平成15年7月以降は国労バッジ着用者が○○のみとなり,本件各処分の対象となった平成19年ころには,既にその組合活動としての色彩が後退し,個人的行為の側面が強いなどとして不当労働行為には当たらないとした。)

 

 要所抜粋

 ‥‥JR東日本の就業規則3条において,「社員は,会社事業の社会的意義を自覚し,会社の発展に寄与するために,自己の本分を守り,会社の命に服し,法令,規程等を遵守し,全力をあげてその職務の遂行に専念しなければならない。」‥‥社員は,勤務時間中,その注意力のすべてをその職務遂行のために用い,職務にのみ従事するという厳格な職務専念義務を負うことを定めたものであると解され,上記のような国鉄時代の職場規律の状況や国鉄改革の経緯等にかんがみれば,このような厳格な職務専念義務を定めることにも合理的な理由があるというべきである。

 なるほど,本件バッジは,そこに「NRU」と国労を示す文字がデザインされているにすぎず,その大きさは約1センチ四方のものであって,具体的な主義主張が記載されているわけでもない。しかし,前記のとおり,国労バッジは,国労東京地本が昭和62年に全組合員に着用の徹底を指示していたものであり‥‥‥国労組合員であることを顕示して組合員相互の団結・連帯の意識を高めるものである。そして,国労バッジには,これを着用していない他の国労組合員に対しても,当該着用者が国労組合員であることを顕示して訴えかける心理的効果を有する側面があるのは否定できないことからすれば,同バッジの着用は,実質的に組合活動としての意味を有し,上記の意味での職務専念義務に違反するものであって,それが身体的活動としての労務提供に格別支障を生じさせないことを考慮しても,企業秩序を乱すおそれがない特段の事情があるとはいえない。

ウ 以上の点に加えて,本件各処分の対象となった時期(平成19年4月16日以降)には,既に,就業規則で定められたもの以外は組合バッジに限らず着用しないという服装整正に関する職場規律が確立していたといい得ること,それにもかかわらず,P10は,平成22年2月の退職時まで国労バッジの着用を継続したこと等の諸事情にかんがみれば,本件において,P10の国労バッジ着用を正当な組合活動と認めることはできない。

 

(3)支配介入の成否について

ア 以上のとおり,P10の国労バッジ着用は,就業規則3条1項,20条3項及び23条に違反するものであるから,原告JR東日本が,P10の国労バッジ着用について就業規則等に則り懲戒その他の不利益処分を行い得ることは明らかである。

 しかし,使用者の行為が従業員の就業規則違反を理由としてされたもので,一見合理的かつ正当といえる面があるとしても,当該組合活動に対して行われた懲戒処分が同活動の態様等に比して著しく過重なものであって,当該処分が使用者の当該組合に対する嫌悪の念に発していると認められるなど,それが労働組合に対する団結権の否認又は労働組合に対する嫌悪の意図を決定的な動機として行われたものと認められるときは,その使用者の行為は,これを全体的にみて,当該労働組合に対する支配介入に当たる場合があり得るというべきである。

 (中略)

ア ‥‥本件各処分(出勤停止5日または10日であって,賃金等の減額のみならず夏季手当15%の減額を伴う重い処分である。)が,原告JR東日本の国労に対する嫌悪の念に発したものであるとする見方も成り立ち得る余地はあろう。

イ しかし,原告JR東日本は,国労組合員等の組合バッジの着用について,昭和62年4月の設立当初から一貫して厳正に処分する姿勢を示し,実際に違反者に対し訓告等の処分を繰り返し行っていたものであり,平成14年3月28日の本件警告文の掲出は,時期的に四党合意に関し与党からの三党声明が出された時期(平成14年4月26日)と近接しているものの,設立当初からの基本的な方針に沿う,その延長線上の行動であったということができる。原告JR東日本設立以降,本件警告書掲出までの間でみても,P10らの国労バッジ着用による就業規則違反行為は約15年間にわたり多数回に及ぶもので,かつ,同人らが何ら態度を変える様子もなく違反行為を反復,継続していたことからすれば,その処分量定を加重していくこと自体には合理的な理由があるものであって,過重な処分がなされたことのみを理由に,直ちに,本件各処分が不当労働行為意思の発現であると認めることはできない。

 また,P10や原告P1ら8名が,国労内部において四党合意に反対し,これを受諾する国労執行部の姿勢を批判していたことは事実であるが,国労バッジの着用と四党合意に対する反対姿勢との間には直接の関連性はなく(国労バッジが四党合意反対運動の象徴となっていたわけでもなく,本件全証拠に照らしても,両者の結び付きを窺わせる事情は認められない。),‥‥四党合意に反対するP10らの存在を嫌悪して国労バッジ着用に関しあえて過重な処分を行ったとする被告国の主張に直ちに左袒することは困難である。

 そして‥‥P10の違反行為自体が軽微であるとはいい難いし,原告JR東日本には,他にも再三の注意指導にもかかわらず出勤遅延を繰り返した従業員に対し,順次量定を加重し,出勤停止処分をするに至った事例もあること‥‥に照らしても,重い処分を受けたからといって,それが直ちに不当労働行為意思の発現であると認めることはできない。

エ さらに,当初は組織的な組合活動としてバッジ着用行為を指示し,組織としても不当労働行為救済申立てを行うなどしてきた国労が,平成14年3月末以降は,組織として不当労働行為救済申立てを行うことはなくなり,平成18年11月には,バッジ事件を含む合計61件の不当労働行為救済申立事件を取り下げていること‥‥,国労は,組合バッジ着用に関し,機関決定違反として統制処分をするまではしないが,支持はしないという態度であること,平成15年7月以降は国労バッジ着用者がP10のみとなり,P10が再就職して国労バッジの着用を止めた後,その活動を引き継いで行おうとする動きもなかったこと等にかんがみれば,P10のバッジ着用行為に組合活動としての保護が与えられるのは前記のとおりであるとしても,遅くとも本件各処分の対象となった平成19年ころには,既にその組合活動としての色彩が後退し,P10の個人的行為の側面が強くなっていたことは否定できないところである。

オ 以上の諸事情を考慮すれば,前記ア記載の事情を考慮しても,本件各処分から原告JR東日本の支配介入の意思が推認されるとはいえず,本件各処分が支配介入に当たるということはできない。

 



氏名    バッジ取外し日    最後の処分時期及び処分内容
原告P6  平成14年4月12日 平成14年7月/訓告
同P5 平成14年5月19日 平成14年7月/訓告
同P7  平成14年6月 5日 平成14年7月/訓告
同P8   平成14年8月 3日 平成14年7月/減給
同P4   平成15年1月 9日 平成14年12月/減給
同P1   平成15年4月 3日 平成15年3月/出勤停止1日
同P3   平成15年4月 3日 平成15年3月/出勤停止1日
同P2   平成15年4月15日 平成15年3月/出勤停止1日

 

 

 

 また,P10や原告P1ら8名が,国労内部において四党合意に反対し,これを受諾する国労執行部の姿勢を批判していたことは事実であるが,国労バッジの着用と四党合意に対する反対姿勢との間には直接の関連性はなく(国労バッジが四党合意反対運動の象徴となっていたわけでもなく,本件全証拠に照らしても,両者の結び付きを窺わせる事情は認められない。),前記のとおり,原告JR東日本としては,四党合意がなる以前の同社設立当初から国労バッジの着用を一貫して禁じていたものであることに照らすと,四党合意に反対するP10らの存在を嫌悪して国労バッジ着用に関しあえて過重な処分を行ったとする被告国の主張に直ちに左袒することは困難である。
 そして,本件各処分が重い処分であることは否めないが,前記のとおり,就業規則違反行為を反復,継続することによりそれに対する処分が加重されること自体には合理的な理由があるところ,P10は,原告JR東日本からの再三の制止を受け入れることなく,本件警告文掲出以降5年以上もの間,原告JR東日本設立時からみれば約20年以上もの間,国労バッジの着用を続けたものであるから,職務に与える影響がごく軽微であることを考慮しても,P10の違反行為自体が軽微であるとはいい難いし,原告JR東日本には,他にも再三の注意指導にもかかわらず出勤遅延を繰り返した従業員に対し,順次量定を加重し,出勤停止処分をするに至った事例もあること(証人P11)に照らしても,重い処分を受けたからといって,それが直ちに不当労働行為意思の発現であると認めることはできない。

 

 

第2類型

△JR東日本神奈川国労バッチ事件・東京高判平11224判時1665130頁裁判所ウェブサイト

 

 要旨

(棄却、国労バッジ着用を理由とする863名に対し厳重注意、訓告、55名に対し夏季手当5%減額の措置を不当労働行為とする。国労バッジの着用は、就業規則の服装整正規定違反、就業時間中の組合活動禁止規定違反、職務専念義務規定違反であり企業秩序を乱すものであるとし、取外し命令、懲戒、不利益処分を禁止するものではない。しかしながら「使用者の行為が従業員の就業規則違反を理由としてされたもので,一見合理的かつ正当といい得るような面があるとしても,それが労働組合に対する団結権の否認ないし労働組合に対する嫌悪の意図を決定的な動機として行われたものと認められるときには,その使用者の行為は,これを全体的にみて,当該労働組合に対する支配介入に当たるものというべきである」と述べ、「敵意と嫌悪感を露骨に示す言動を繰り返し」バッジ取外しの指示・指導等は「執拗かつ臓烈なもので,平和的な説得の域を大きく逸脱するものであり」「就業規則の書き写しの作業などは,嫌がらせ」であり、「厳しい対決姿勢で臨んでいた国労を嫌悪し,組合から組合員を脱退させて,国労を弱体化し,ひいては‥‥排除しようとの意図の下にこれを決定的な動機として行われたもの」として不当労働行為(支配介入)に該当するとした。)

 

 要所・抜粋

  参加人らは、就業規則の秩序維持条項による組合活動規制に関しては、就業規則の文言の形式的該当性とは別に、企業秩序を現実に阻害するなど、当該規則の達成すべき目的に実質的に違反するような行為かどうかという基準によって合理的判断を行うべきであるとし、本件就業規則二〇条三項は、同条一項の規定とあいまって、労務提供のために必要かつ合理的な服装整正を目的とする条項であるから、着用した際に目立たず、所属組合を抽象的な線路のマークと組合名の頭文字の組合せで示すのみの本件組合バッジは、右規則の趣旨に実質的に反するものではなく、また、本件組合バッジの着用は、伝統的な言葉の意味からすれば、組合活動とはいえず、仮にこれを組合活動と呼んだとしても、業務に支障を生じさせたり、職場の秩序を乱すものではないので、本件就業規則二三条に実質的に違反するものではなく、さらに、本件組合バッジは着用者にとって組合に所属する自己の同一性を表すものにすぎず、その着用は職務への専念を妨げるものではないので、本件就業規則三条一項に違反するものでもないと主張するので、以下これらの点について検討する。

(一)本件就業規則二〇条は、社員の服装の整正について定め、同条三項は、「社員は、勤務時間中に又は会社施設内で会社の認める以外の胸章、腕章等を着用してはならない。」と規定しているところ、本件組合バッジが右の「会社の認める以外の胸章、腕章等」に該当することは明らかである。

 もっとも、右規定は、服装の整正によって職場内の秩序風紀の維持を目的としたものであるから、形式的にこれに違反するようにみえる場合でも、職場内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右規定の違反になるとはいえないと解するのが相当である。そして、前記認定のとおり、本件組合バッジは、縦一・一センチメートル、横一・三センチメートルの四角形で、この中にレールの断面と国労の頭文字である「NRU」の文字が表示されているというものであり、具体的な主義主張が直接表示されているわけではない。しかし、前記認定の事実によれば、国鉄の分割民営化の過程で、国労は、一貫してこれに反対する方針を採り、控訴人及び分割民営化に賛成する他の組合と対立する状況にあり、本件組合員らによる本件組合バッジの着用は、国労から多くの組合員が脱退し、国労が弱体化、孤立化していく中で、東京地本から繰り返し出される着用の指示の下でされたものであるから、本件組合バッジ自体に具体的な主義主張の記載ないし表示がされていなくても、本件組合員らは、これを着用することによって、その着用者が国労の組合員であることを顕示して同僚の国労組合員との結束を高めるとともに、国労組合員であっても自らの意思で本件組合バッジを着用していない他の社員に心理的影響を与え、さらに、国労組合員以外の者に対して国労の団結を示そうとして、本件組合バッジを着用したものと認められるのであって、このような事情を考慮すると、本件組合バッジの着用につき職場内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるとは到底いえない。

(二)本件就業規則二三条は、「社員は、会社が許可した場合のほか、勤務時間中に又は会社施設内で、組合活動を行ってはならない。」と規定しているところ、前記認定の事実によれば、本件組合員らの本件組合バッジの着用は、国鉄の分割民営化の過程で国労から多くの組合員が脱退していく中で、国労がその組織と団結の維持のために組合員に着用を指示するという状況の下で行われたものであって、国労の組合員であることを積極的に誇示することで、国労の組合員間の連帯感の昂揚、団結強化への士気の鼓舞という意味と作用を有するものと考えられるのであるから、組合活動というべきであり、右規定に違反するというべきである。

 また、前記(一)で述べたところと同様に、職場内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるとはいえない。

(三)本件就業規則三条は、服務の根本基準について定め、同条一項は、「社員は、会社事業の社会的意義を自覚し、会社の発展に寄与するために、自己の本分を守り、会社の命に服し、法令、規程等を遵守し、全力をあげてその職務の遂行に専念しなければならない。」と規定している。これは、社員がその就業時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い、職務にのみ従事しなければならないこと、すなわち職務以外のことを就業時間中に行ってはならないことを意味するものである。ところで、前記認定の事実によれば、本件組合員らの本件組合バッジの着用は‥‥国労がその組織と団結の維持のために組合員に着用を指示するという状況の下で行われたものであって、国労の組合員であることを積極的に誇示することで、国労の組合員間の連帯感の昂揚、団結強化への士気の鼓舞という意味と作用を有するものと考えられるのであるから、それ自体職務の遂行に直接関係のない行動を就業時間中に行ったもので、たとえ職務の遂行に特段の支障を生じなかったとしても、労務の提供の態様においては、職務上の注意力のすべてを職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないという控訴人の社員としての職務専念義務に違反し、企業秩序を乱すものであるといわざるを得ない。

 なお、参加人らは、本件組合バッジの着用によって現実の職務遂行に支障を生じないので、本件組合バッジの着用は右規定に違反するものではないと主張するが、右規定の違反が成立するためには現実に職務の遂行が阻害されるなど具体的な実害の発生を必ずしも要件とするものではないと解すべきであり、参加人らの右主張は、採用することができない。

 以上のとおりであるから、参加人らの主張は採用することができず、本件組合員らの本件組合バッジの着用行為は、本件就業規則二〇条三項、二三条及び三条一項にそれぞれ違反するものであるというべきである。

三 不当労働行為の成否について

 ‥‥労働組合の多くが労働協約の改訂や再締結、更には労使共同宣言の締結を行って労使協調関係を強めていく中で、国労は、これらを拒否し、国鉄当局との対立関係を強めていたこと、(三)このような姿勢をとる国労に対し、国鉄ないし控訴人の幹部は、敵意と嫌悪感を露骨に示す言動を繰り返し、特に‥‥М常務取締役においては、会社に対する反対派(国労)を断固として排除する旨発言し、また、控訴人のS社長においては、東鉄労との一企業一組合が望ましいとして、国労を攻撃し、このような迷える子羊を救って東鉄労の仲間に迎え入れていただきたいとして、東鉄労の組合員らに対し、国労組合員の国労からの脱退、東鉄労への加入を促す働き掛けを期待する発言もしていたこと、(四)‥‥国鉄は、職員管理調書の作成に当たり、動労組合員の労働処分歴は記載されないような取扱いをし、人材活用センターへ主に国労組合員を配置し、国労及び動労に対して提起されていた前記二〇二億円の損害賠償請求訴訟について動労に対する訴えのみを取り下げるなど、国労を孤立化させることになる施策を進め、分割民営化に当たっての国鉄の承継法人への採用に当たっても、不採用者の多くが国労組合員であったこと、(五)‥‥本件組合バッジ取り外しの指示・指導等は、組織的に行われ、その具体的な方法・態様も‥‥(三)‥‥執拗かつ熾烈なもので、平和的な説得の域を大きく逸脱するものであり、特に、本件組合バッジの取り外しを拒否した国労組合員に対して命じた本件就業規則の書き写しの作業などは、嫌がらせ以外の何物でもないといわざるを得ないものであり‥‥(六)しかも‥‥国労組合員に対し、上司等から、組織的と思われる態様で、国労からの脱退の勧奨がされたこと‥‥。

 そして、これらの事実を合わせ考えるならば、控訴人が本件組合員らに対して本件組合バッジの取り外しを指示・指導等した行為及び本件組合バッジを着用していたことを理由に本件組合員らに対してした本件措置は、控訴人が‥‥国労を嫌悪し、国労から組合員を脱退させて、国労を弱体化し、ひいてはこれを控訴人内から排除しようとの意図の下に、これを決定的な動機として行われたものと認めざるを得ず、したがって、控訴人の右一連の行為は、国労(参加人ら)に対する労働組合法七条三号にいう不当労働行為(支配介入)に該当するものといわなければならない。

 

 

△JR東日本神奈川国労バッチ事件・最一小決平111111労働判例77032頁  

 本件は、民訴法三一八条一項の事件に当たらないとして不受理

 

 

 第2類型

△JR東日本神奈川国労バッチ減給処分等事件・東京地判平25328別冊中央労働時報144317

 

 要旨

(救済命令取り消し訴訟、棄却。平成12年5月30日になされた四党合意について,国労は,平成13年1月27日,これを受諾し,さらに,平成14年3月末ころ,国労バッジ着用処分について,組織として救済申立てをしない方針に転換した。国労の上記方針の転換の時期と相前後する平成14年3月28日,原告は本件警告書の掲出を行い,国労バッジ着用行為に対し,従前行っていた1年度2回の訓告よりも処分を加重する旨を通告した。 6名はその後の調査期間(平成14年4月から同年6月まで)経過後も国労バッジ着用行為を続けたため,これを止めるまで減給以上の処分を受けた。

 本件警告書掲出前にされていた処分と,掲出後にされた処分は,後者の方が格段に大きな経済的不利益をもたらすものと認められるが,この極端な厳罰化は,組合バッジ着用を継続する国労内少数派が組合活動を行うことを嫌悪していた会社が,組合執行部の方針転換を認識するに至り,これを機に,組合内少数派の組合活動を一掃しようとの意図に基づき行ったものであると推認することができることから,組合内少数派の勢力を減殺し,組合執行部の方針に加担したものと認められ,支配介入を構成し不当労働行為が成立するとした)。

 

 要所抜粋。

 

 原告は,昭和62年4月7日,各機関に対し,各現業機関の社員を対象に同月1日から7日までにおける社章,氏名札及び組合バッジの常態的な着用状況についての調査・報告を指示した。上記調査結果によると,1303か所の現業機関の6万4105名中,正規の服装をしていた者が5万8376名(91.1%),組合バッジ着用者が5645名(8.8%)であり,そのうち国労組合員が5634名を占めていた。

 原告は,昭和62年4月20日,各機関に対し,組合バッジ着用者に対し,服装整正違反であることの注意喚起をし,繰り返し注意・指導を行ったにもかかわらず,組合バッジを外さない社員に対しては,人事考課等に厳正に反映するなど厳しい対象を行うことを指示した。また,同年5月28日,原告は各機関に対し,服装違反者に対する方針を示し,現場の実態について完全に把握し,厳正な対処の準備を図るよう指示し,この後も,一貫して組合バッジ着用について,その取り外しを指導,注意し続けていた。

 そして,昭和62年6月,原告は組合バッジ着用者に対し,初めて服装整正違反を理由として4883名に対して厳重注意処分ないし訓告処分を発令して以降,本件警告書掲出前の平成13年9月まで,概ね年2回,組合バッジ着用行為に対する処分を行った。被処分者数は,平成3年9月には2000名を割り込み,平成9年3月には1000名を割り込み,平成13年9月には345名(全体の0.5%)となっていた。

(2)本件警告書について

ア 本件警告書の内容等

 平成14年3月28日に掲出された本件警告書は,「例外的一部の社員」が,「(中略)組合バッジを着用するなどの就業規則違反を繰り返し,中には数十回の訓告を受けながらなお是正することのない社員も見受けられる」とし,今後,なおこのような違反行為をあえてする社員に対しては,「さらに厳正な処分を行わざるを得ない」ことを警告している。4 争点(4)本件警告書の掲出後,P1ら9名に対し服装整正違反を理由に訓告,減給処分及び出勤停止処分をしたことは不当労働行為(労組法7条1号,3号)に該当するか。)について

(1)国労バッジ着用行為は,労働組合の組合活動といえるか

ア 国労による国労バッジ着用指示等

 国労の東京地方本部は,昭和62年3月31日,国労バッジ着用指示をし,昭和62年以降,原告による国労バッジ着用行為に対する処分につき,組合として,第1次ないし第4次国労バッジ事件にかかる救済申立てを東京都労委や神奈川県労委等に行うなどした。

 第1次国労バッジ事件は,神奈川県労委が救済申立てを認容する救済命令を発し,平成11年11月11日に,最高裁判所の上告不受理決定により確定した。

イ 国労の,国労バッジ着用行為についての方針転換

 平成12年5月30日に四党合意がなされた後,国労内では,四党合意の受入れを巡って議論がなされたが,平成13年1月27日,四党合意を受諾するに至った。

 国労は,さらに,国労バッジ着用に関する集会を開き,これ以上国労バッジ着用で不利益を被ることを避けたいと意見表明し,国労バッジを外そうという議論が行われ,本件警告書掲出時である平成14年3月末ころ,国労は,国労バッジ着用行為に対する処分について,組織として救済申立てをしない方針に転換した。

 そして,従前国労が労働委員会に申し立てていた国労バッジ着用行為に対する処分についての救済命令申立事件については,P1ら9

(ア)‥‥国労は,国労バッジ着用について,昭和62年当初に着用を指示し,原告が国労バッジ着用行為に対する処分を行ったことについて神奈川県労委等に救済申立てを行うなどしたものの,その後,平成11年には第1次国労バッジ事件が終局を迎え,平成13年ころには,国労の集会で国労バッジを外そうという議論がなされ,平成14年の本件警告書掲出後の国労バッジ着用処分については,組織として救済申立てを行っておらず,平成18年包括和解に至っているのであるが,これを全体としてみると,国労としては,遅くとも平成14年ころには,国労バッジ着用について積極的に支持をすることはなく,原告との係争についても,これを回避する方針に転換したものと認められる。

(ウ)‥‥平成14年から平成20年ころまでの,国労バッジ着用に対する国労の方針としては,これを積極的には支持しないものの,組合としての統制処分を行うこともなく,昭和62年当初の指示を撤回することもなく,結局,個人の判断に委ねる状況であったと認められる。

(エ)そして,P1ら9名は,上記のとおり国労内少数派として四党合意,三党声明に対し救済申立てを行うなどの活動をしていたのであるが,国労バッジ着用に関する国労の方針が,個人の判断に委ねられるという状況のもとで,P1ら9名としては,昭和62年当初の国労の着用指示に従い,一貫して国労バッジ着用を継続し,国労内少数派組合員として,少数派同志の仲間意識を高め,国労内執行部に対する批判的な行動として,また,国労の自主的,民主的運営を志向するものとして国労バッジ着用行為を継続したものと認められる。

(オ)したがって,P1ら9名の国労バッジ着用行為は,国労の組合内少数派の組合活動として行われたものと認められる。 

オ 小括

 したがって,P1ら9名の国労バッジ着用行為は,不当労働行為制度の保護の対象となる組合活動に該当する。

 

(2)不利益取扱い(労組法7条1号)の成否(正当性の有無)

 労組法7条1号の不当労働行為は,組合活動のうち,「正当な行為」について成立するので,以下,その正当性について検討する。

ア 就業規則との関係

 国鉄では,職場規律の乱れや巨額の赤字が問題となり,職場規律の乱れを是正するための措置が講じられるとともに,分割民営化による改革が進められることになる中で,原告は,その国鉄の事業の一部を引き継いだのであるから,原告が,かかる設立の経緯を踏まえ,職場規律を確立して企業秩序を維持するために,職務専念義務,服装の整正,勤務時間中の組合活動の禁止等を定める就業規則を制定したことには,十分な合理性が認められる。

 そして,P1ら9名の国労バッジ着用行為は,職務専念義務について定める就業規則3条1項,社員の服装の整正について定める同20条3項,勤務時間中の組合活動を禁止する同23条にそれぞれ違反し,原則として,その正当性が否定されるものであると認められる。

イ 正当性に関する補助参加人らの主張について

 補助参加人らは,〔1〕国労バッジ着用は労務提供義務と矛盾なく両立し,業務阻害性はなく,職務専念義務,服装整正義務に違反するとはいえない,〔2〕国労バッジ着用の組合活動としての必要性等を考慮すれば,国労バッジ着用行為には正当性があると主張するので,以下検討する。

(ア)補助参加人らの主張〔1〕について

 本件就業規則3条1項に定める職務専念義務は,社員は,勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないという職務専念義務を負うものであることを明らかにしたものであると解するのが相当である。

 そして,労働契約においては,労務の提供の態様において職務専念義務に違反しないことは労務契約の重要な要素となっているから,職務専念義務に違反することは企業秩序を乱すものであるというべきであり,その行為が服装の整正に反するものであれば,就業規則20条3項に違反するといわなければならないし,また,それが組合活動としてされた場合には,そのような勤務時間中の組合活動は就業規則23条に違反するものといわなければならない。

 P1ら9名の国労バッジ着用行為は,国労組合員の中でも国労バッジ着用を止める者が大多数となっていく中で,国労内少数派として着用を継続したものと認められるが,国労執行部ないしは原告に対し,国労内少数派としての意思を表明し,また国労内における多数派に対し,少数派との対立を意識させるものといえ,また同時に,国労組合員のうち,自らの意思により国労バッジを着用していない者に対しても心理的影響を与え,当該組合員が職務に精神的に集中することを妨げるおそれがあるものであるから,かかる行為は,勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い,職務にのみ従事しなければならないという従業員としての職務専念義務に違反し,また服装整正にも反するものとして,企業秩序を乱すものといわざるを得ない。

 補助参加人らは,国労バッジ着用に業務阻害性はないと主張するが,上記就業規則違反が成立するためには,現実に職務の遂行が阻害されるなどの具体的な実害の発生を必ずしも要件とするものではないと解するのが相当であり,補助参加人らの主張は採用することができない。

ウ 小括

 以上により,補助参加人らによる国労バッジ着用行為は,就業規則3条1項,20条3項,23条に反し,実質的に企業秩序を乱すおそれのない事情も認めることができず,正当性を認めることができない。

 よって,本件各処分等について,労組法7条1号の不当労働行為は認められない。

(3)支配介入(労組法7条3号)の成否

ア 支配介入の成否の判断基準

 使用者の行為が従業員の就業規則違反を理由としてされたもので,一見合理的かつ正当といい得るような面があるとしても,それが労働組合の結成に対する嫌悪の意図や労働組合の団結権ないしその自主的運営を否定する意図を決定的な動機として行われたと認められるときには,その使用者の行為は,これを全体的にみて,当該労働組合に対する支配介入(労組法7条3号)に該当するというべきである。そこで,以下,本件における支配介入の成否を検討する。

イ 原告と国労との間の国労バッジ着用処分をめぐる係争の推移

 国労が,国労バッジ着用処分に対する救済申立てを,東京都労委,神奈川県労委,埼玉県労委及び千葉県労委等に行い,このうち,第1次国労バッジ事件については,平成11年11月11日,最高裁判所の上告不受理決定により確定し,その余の事件については,平成18年包括和解により終了した。

ウ P1ら9名の組合活動,国労内での位置づけ等

 そして,P1ら4名等は,四党合意及び三党声明に対して,不当労働行為救済申立てを行い,本件警告書掲出後の国労バッジ着用処分について,国労が組織として救済申立てをしない中,個人として救済申立てを行い,また,平成18年包括和解の際も,和解に反対し,当事者としてP1ら9名を追加するよう申し立てるなど,P1ら9名の組合活動は,一貫して国労執行部に反対するものであった。

エ 原告発足後の組合バッジ着用行為に対する処分の推移

 原告は,原告発足時から,組合バッジ着用について調査し,服装整正違反であることを注意喚起し,取り外すよう注意,指導してきた。原告は,昭和62年6月,組合バッジ着用者4883名(原告の全従業員の5.9%)に対して,服装整正違反として初めて厳重注意処分ないし訓告処分を発令した。その後,処分内容が訓告処分に加重された後も,平成3年3月の処分時までは被処分者が2000名を上回っていたが,同年9月の処分時には2000名を下回り,平成8年9月の処分時には1000名を,平成12年3月の処分時には500名をそれぞれ下回るなど,被処分者数(すなわち,それぞれの処分時まで組合バッジ着用行為を継続していた者)は減少を続け,本件警告書掲出直前の平成14年3月の被処分者数は314名(原告の全社員比率0.4%)まで減少していた。

 本件警告書掲出後の平成14年4月1日以降も,127名(対全社員比0.2%)が組合バッジ着用を継続したが,そのうち101名は同年6月までに組合バッジ着用を止めたため,平成14年7月の,上記警告書掲出後初めての処分の際も,処分内容を訓告のまま据え置かれ,この際に,処分内容を減給に加重された者は,同年7月1日以降も組合バッジ着用を継続した26名(対全社員比0.04%)にとどまった。

オ 本件警告書掲出前後の処分の均衡

 ここで,減給処分や出勤停止処分の不利益の程度について検討する。

 本件警告書掲出前にされていた同一年度2回の訓告処分では,期末手当において成績率各5/100減,定期昇給において昇給号俸1/4減となるものの,月額給与の不利益はなかった。これに対して,本件警告書掲出以後にされた減給処分は,期末手当(夏季又は年末)において成績率10/100減,定期昇給において1回の処分で昇給号俸1/4減,月額給与は1回の処分につき平均賃金日額の1/2減となった。さらに,出勤停止処分では,期末手当(夏季又は年末)において成績率15/100減,定期昇給において1回の処分で昇給号俸2/4減,月額給与は出勤停止処分の日数分の減となった。なお,定期昇給は,同一年度内に減給処分4回又は出勤停止処分2回以上の処分を受ければ昇給されないこととなる。

 以上のとおり,本件警告書掲出前にされていた処分と,掲出後にされた処分は,後者の方が格段に大きな経済的不利益をもたらすものと認められ,組合バッジ着用行為を継続したことによる処分の加重であることを考慮してもなお,本件警告書掲出以前の処分と比較して量定,頻度において極端に加重されており,均衡を欠くものと認められる。

カ 他の処分との不均衡等

 原告では,本件警告書掲出後に,氏名札を着用しない現業の従業員に対し,1度訓告処分にし,その後再度氏名札不着用が認められたため,戒告処分を2度行った例があると認められるがが,本件警告書掲出後であるにもかかわらず,初回の戒告後の氏名札不着用に対して,処分量定を加重することなく再度戒告処分にしており,同時期の組合バッジ着用処分との均衡を欠いているといえる。

 さらに,原告と同様,国鉄の分割・民営化により発足したJR西日本は,原告と概ね同内容の就業規則等を定め,昭和62年から組合バッジ着用行為に対する処分を行ってきたところ,平成9年度から平成18年度まで,各年度内1回のみの訓告処分にとどめ,処分量定の加重も行わなかったと認められ‥‥,  組合バッジ着用行為は,その行為態様に大きな差がでることは考えにくいことを考慮すると,他社の処分であるとはいえ,同じ組合バッジ着用行為に対する処分としては,差が大きいというべきであり,この点でも,均衡を欠いているといえる。

キ 国労執行部による国労バッジ着用行為についての方針転換との時期的附合性

 ‥‥国労執行部は,平成14年3月末ころ,国労バッジ着用処分については,以後,組織として救済申立てをしないとの方針に転換したが,本件警告書の掲出がなされたのは,かかる国労執行部の方針転換の時期と極めて近接していることが認められる。

ク 評価

 

(中略)

 そうであるにもかかわらず,上記時期に本件警告書の掲出を行い,以後の国労バッジ着用継続者に対して,経済的不利益が大きい量定,頻度で処分を行っており,かかる処分の加重は,当時のP1ら9名の国労バッジ着用継続の態様だけでは合理的に説明することができないといわざるを得ない。

(中略)

(ウ)そうすると,原告の平成14年3月以降の国労バッジ着用行為に対する極端な厳罰化は,国労バッジ着用を継続する国労内少数派が組合活動を行うことを嫌悪していた原告が,国労執行部の方針転換を認識するに至り,これを機に,国労内少数派の組合活動を一掃しようとの意図に基づき行ったものであると推認することができるというべきである。

(エ)そして,原告による本件各処分は,国労内少数派の勢力を減殺し,国労執行部の方針に加担したものと認められるのであり,国労内における国労バッジ着用についての方針等について,支配介入があったものと認められ,不当労働行為(労組法7条3号)が成立する。

 

2026/02/04

YouTube台本 都議会議長あて陳情 令和7年167号水道局営業所における勤務時間内のシャワー利用を認める労務管理の是正に関する陳情の解説 陳情解説シリーズ12 川西正彦

令和7年167号陳情

 

(件名)

水道局営業所における勤務時間内のシャワー利用を認める労務管理の是正に関する陳情

 

(願意)

 都において、水道局の営業所で、事務職は身体や被服の汚染を伴う業務がないにもかかわらず、当局と組合との合意により、勤務時間中に浴室のシャワーで洗身することが認められているが、勤務時間中の利用を離脱時間の累計で賃金減額の対象とし、単に汗を流す頭髪・頭皮の洗浄は労働衛生上の理由がある場合に限定するなど、洗身施設利用の内規と運用を見直すよう是正していただきたい。

 

(理由)

 水道局では、給水課・配水課で管工事作業があり、作業後の洗身については、労働安全衛生規則第625条で、使用者に、身体又は被服の汚染を伴う業務に関し、洗身等の設備の設置を義務付けていることから、多くの事業所で浴室を備えている。事務職のみの職場でも、洗身施設を備えている事業所がある。少なくとも千代田・新宿・杉並の各営業所では、当局と組合の合意により、浴室のシャワー利用が、勤務時間の内外を問わず容認されていた。

 しかし、営業所は事務職のみであり、重筋労働や身体の汚染を伴う業務はない。内規では、シャワーは身体の汚染があったときに上司の許可が条件であるが、許可を得てはいない。職員によっては、連日、ドライヤーで整髪の時間も含め離脱時間が長かったり、始業時前にシャワー利用し、自宅での水道・ガス代の節約のためと思われる利用も見られる。

 洗身入浴については、三菱重工業長崎造船所事件(最高裁第一小法廷判決、平成12年3月9日)が、労働基準法上の労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」とした上で、「実作業の終了後に事業所内の施設において洗身等を行うことを義務付けられてはおらず、特に洗身等をしなければ通勤が著しく困難であるとまではいえなかったというのであるから、上告人らの洗身等は、これに引き続いてされた通勤服の着用を含めて、被上告人の指揮命令下に置かれたものと評価することができず(中略)洗身等に要した時間は、労働基準法上の労働時間に該当しない」と判示した。

 国鉄池袋・蒲田電車区事件(東京地裁判決、昭和63年2月24日)は、蒲田電車区において、終業時刻の30分前から洗身施設で身体汚染を洗身して退区することが慣行とされ、池袋電車区でも、日勤の勤務者が勤務時間中に洗身入浴する慣行があった。国鉄当局は、昭和58年に就業規則違反として禁止し、指揮監督を離脱したものとして賃金基準規定に基づき賃金をカットした事案で、電車区長は就業規則で定められた勤務時間を短縮する権限を付与されておらず、また、身体汚染の除去は、顔、手足の洗浄及び衣服の更衣等によって可能であり、勤務時間内の洗身入浴が必要不可欠なものであったとは認められず、賃金減額の措置は不当でないとされ、結果、国鉄労働組合は勤務時間内洗身入浴の要求を取り下げている。

 勤務時間内のシャワー利用の疑義について、水道局管理職の返答は、シャワーは浴槽に漬からないので入浴に当たらない。汗は生理現象なので、トイレ利用と同じこと。客面に出る仕事なので、身だしなみ、清潔である必要があるとして職務離脱を容認し奨励すべきとしているが、き弁に思える。全裸となる以上、シャワーも洗身入浴も同義と考える。また、水道局の環境計画では、水道の使用量を減らすことになっている。

 水道局がコンプライアンス経営宣言をしている以上、最高裁等の先例からすれば、勤務時間中のシャワー利用等による職務離脱は、警告した上、離脱時間の累計で賃金減額措置とすべきである。地方公務員法第35条違反や、東京都水道局処務規程第58条第1項「みだりに執務の場所を離れてはならない」に違反するとはいえ、懲戒責任まで問わなくてもよいが、洗身施設利用の内規と運用を見直すべきである。身体又は被服の汚染を伴わない業務には基本的に施設利用は望ましくない。単に汗を流す頭髪・頭皮の洗浄は、労働衛生上の理由がある場合に限定し、時間管理を行うべきである。

 

 

AIによる要約を補正)

水道局では、多くの事業所が法令に基づき浴室を備えていますが、事務職だけの職場でもシャワー利用が勤務時間内でも認められていました。実際には、身体汚染がないにもかかわらず、自宅での水道ガス代節約目的で利用する例も見受けられます。判例では、洗身入浴は労働時間に含まれない。国鉄事件でも勤務時間内の洗身入浴は不可欠と認められませんでした。しかし、水道局管理職は時間内のシャワー利用を容認しています。全裸となるだから入浴ではないとはいえない。環境計画にも反します。最高裁の先例に従い、適切な運用と時間管理、原則として身体汚染がない業務での施設利用を控えるべきです。

 

 311 千代田営業所の事例について

 平成15年当時千代田営業所では〇〇という職員が宿直以外ほとんど毎日16時半前後20分程度、就業時間中にシャワーのために離席していた。ドライヤーで髪もセットしていた。私はこれを禁止するよう管理職に訴えたが、所長、接客業務として身だしなみを整える行為としてシャワー利用は当然のように認められなくてはならないとし、上司の許可など必要ないと断言、小便等の生理現象でトイレを利用するのと同様勤務時間中に離脱もさしつかえないといたぶん組合側が用意した見解を述べ、むしろあなたのように汗臭くお客に不快さを与えてけしからんとし、職務専念義務違反といえる勤務時間中のシャワー利用をそそのかされたばかりでなく、これについて賃金カットすべき強く抗議したことなどを理由として、勤務不良として昇給延伸の処分の理由の一つとなり異動希望も出していない部署に転勤させられた。

 もちろん、上司の命令が違法行為であったとしても、職員に違法か否かの審査権はないので従わなければならないし、集団的労働関係にあって、職員個人は労働条件について交渉対象ではないので、質問しても当局の回答は義務付けられてない。不服でも従うのが筋といわれるかもしれないが、私の見解自体は以下のとおり間違ってないと思う。

〇洗身入浴は労働時間に含まれないということは上記引用した平成12年の最高裁判例により確定している。労働安全衛生規則六二五条は、使用者に対し、身体又は被服の汚染を伴う業務に関し、洗身等の設備の設置を義務付けしているだけで、労働者に洗身入浴させることまでも義務付けるものではないからである。しかし平成15年に千代田営業所で閲覧した入浴に関する内規によると、入浴とは浴槽につかった入湯のことでシャワー利用のみでは入浴とは定義されないとし、汚れたときは上司の許可があれば就業時間中であってもシャワーを浴びてよいと記載されており、無許可で認めるというのは、内規にも違反しているし、シャワーは入浴じゃないから、勤務時間中の利用可能にしている内規自体もおかしい。

〇勤務時間中の洗身入浴は債務の本旨を履行したものとはいえないし、職務専念義務違反、みだりに離席してならないとする就業規則に反する行為の慫慂であり、営業所長には規則にない職免を付与し労働時間を短縮させる職権はないはずで、所長は管理職しての裁量権を逸脱するものと考えるし、そもそも浴室は汚染を伴う業務に就いた者の労働衛生上の施設で、身だしなみやさっばり汗を流して帰宅したり、自宅でガスや水道を節約するために、職員の福利厚生施設として利用されるべきものではないのである。

〇昭和15年当時千代田営業所で組合支部長が毎日、就業時間の後に洗身入浴していた。しかし就業時間外だからよいとは考えない。なぜなら、同人は営業係でデスクワークだけで、身体が汚染する仕事はしていないのである。シャワー利用は身体又は被服の汚染を伴う業務についている者に限定されるべきである。

〇別の部署の内規(水道特別作業隊)をみたが、営業所とは違い勤務時間内に入浴できるのは、管工事等現場作業で著しく汚れがあった場合、16時半以降に上司の許可があった場合に認めると書かれていた。したがって、筋肉労働もしていない、たんに外勤があるというだけのケースでは就業時間中は認める必要はない。営業所の対応を疑問に思う。

〇管理職の説明に常識にも反している。私は判例にもあるとおり通勤に際し支障となるほどの著しい汚染がない限り、シャワーは必要がないとの考えであり、組合に業務指揮権、施設管理権を掣肘されている状況があるといえる。

〇住民に対して渇水時は節水を呼びかけ、環境計画でも水使用量は削減する目標なのに、職員のシャワーはじゃんじゃん使えと言っているに等しい管理職の見解が当然視される企業風土はおかしい。

 

 昭和40年代の北九州市の清掃事業局では退庁定時前の勤務時間内に洗身入浴がなされ当局も認めていた慣行があったことが判例で記載されている。当時はゴミだけでなく屎尿の汲み取りもやっていたので、洗身入浴しなければ通勤が著しく困難といった特段の事情に当たると解釈してもいいだろう。

 賃金カットを上司に要望したところ管理職(〇〇所長)に逆襲され、非違行為ではなく、むしろ奨励されるべきとしで、おまえこそシャワーを浴びて身だしなみを整えよと、管理職がやっていることは組合分会役員の主張の受け売りいいなりで地方公務員法35条違反をそそのかしていると反発すると、勤務不良職員とされ、強制配転、昇給延伸の不利益処分の理由の一つになっており、組合の既得権優先思考の東京都の管理職には悪者扱いされているので、遺恨がある。

 〇〇は私よりずっと年下で、活動家ではないが分会役員ではあった。その後まもなく主任に昇進した。わたしは組合が主任制度反対とさかんに頭上報告で言っていたこともあり、主任試験を申し出ることも悪という職場の雰囲気があったから主任にもなっていないわけである。

 

 

31 営業所における勤務時間内浴室のシャワー利用(洗身入浴)の問題

 

(総論)

 水道局では、給水課・配水課などの管工事作業の労務も多かったし、作業後の洗身については、労働安全衛生規則625条が、使用者に対し、身体又は被服の汚染を伴う業務に関し、洗身等の設備の設置を義務付けていることもあり、また緊急隊などの年中無休の職場などを別として、宿直制度は廃止しているが、かつてはどこでも宿直があり夜間作業もあるので大抵の事業場では浴室(浴槽とシャワー設備)を備えている。

 ただし、新宿営業所では、身体又は被服の汚染を伴う業務はないが、たぶん組合要求で浴槽はないが、シャワー室が備えつけられ、私は平成31年に新宿営業所に転勤し営業担当の〇〇〇〇、転勤者に庁舎内の案内をしていたが、洗濯機とシャワー室を案内し、いつでもいいから利用せよとしきりに利用をすすめて不審に思った。そして〇〇自身は出勤時限前の8時頃、シャワーをよく浴びていた、通勤電車で汗をかいたので流すということのようだが、当時の〇〇はデスクワークで外回りの仕事はない。これは労働安全衛生法の趣旨とは違い、身体が汚染しているわけでもないのに、水道代とガス代を浮かすために、自宅でなく職場のシャワー室を利用しているせこい行為のように見えた。

 令和6年度まで和泉庁舎の杉並営業所勤務で組合役員の〇〇〇〇がグループウェアをつかって営業所職員全員に、地下にある洗濯室とシャワー(浴室)を積極的に利用してくださいと通知していて、利用の仕方の詳細はご相談くださいと書かれている浴室のシャワー利用を、当局との合意があるので勤務時間中でも自由にできることを推奨しているのだが、主として管工事の夜間作業のある配水課などが利用している浴室である。〇〇自身も外回りの仕事から帰ると、勤務時間内に浴室に入っていた。

 ただ職員の中には職務専念義務との兼ね合いでグレイゾーンだという人もいて、当局組合合意の方針に疑問を持っている職員もいるのである。

私はシャワー利用の在り方は見直し、最高裁判例により洗身入浴は労働時間とはみなされないことが確定しているのだからおり、賃金カットの対象として管理されるべきであると考える。

コンプライアンス経営宣言しているのだから、最高裁判例に沿う処置をすべきである。

 水道局の営業所は事務職だけで、原則として管工事作業等のように作業衣や身体が汚れる仕事はない。もっとも検針で、メータが泥に埋まっている場所もあるので、泥を掻き出したり汚れる作業はあるといっても、それは手を洗えば済むことで、全裸になって入浴する必要はない。労働安全衛生法において特に注意が必要とされる重筋労働の作業はないわけである。

 しかし営業所では事務職だけなのにシャワーは浴槽につかる(入湯)ので入浴ではないという理屈で、トイレ利用とおなじように勤務時間中職務離脱してOKという考え方をとっている。このことは、平成15年に千代田営業所で聴いた。汗を流すのも小便と同様生理現象であり、汗臭いことは接客で不快な思いをさせるからという口実で、当時の〇〇所長より、勤務時間内にシャワーしなければならないと、汗臭く働いている私はけしからんとしてなじられもした。

しかし国鉄池袋電車区蒲田電車区事件・東京地判昭63.2.24労民集39121は国鉄蒲田電車区において、終業時刻の30分前から洗身施設で身体汚染を洗身して退区することが慣行とされ、池袋電車区でも、作業内容にかかわらず日勤勤務者が勤務時間中に洗身入浴する慣行があった。国鉄の職場規律の乱れが政治問題となった昭和58年に就業規則違反として禁止され、指揮監督を離脱したものとして職員賃金基準規定にもとづき賃金カットした事案で、勤務時間内の洗身入浴が電車区長の承認の下に長期間反覆継続されて行われてきたとしても、電車区長は就業規則で定められた勤務時間を短縮する権限を付与されておらず、また、身体汚染の除去は顔、手足の洗浄及び衣服の更衣等によって可能であり、勤務時間内の洗身入浴が必要不可欠なものであったとは認められず労使慣行として成立していたとはいえない。賃金減額の措置が、不当でないとされ、確認書が取り交わされたとしても、電車区長は就業規則の改正をもたらすことになる労働協約を締結する権限を有しないから、洗身時間についての有効な労働協約は成立しないとした。 それゆえ国労は、国鉄末期に勤務時間内の入浴の要求を取下げている。

  •  三菱重工長崎造船所事件・一審長崎地判平元.2.10労判534は、昭和484月三菱重工長崎造船所が完全週休二日制実施に伴い勤怠把握方法を変更し、洗身入浴等について所定時間外にするよう命じた事案で、少数組合が労働基準法上の労働時間に該当すると主張し、賃金の支払を請求したものである。

「作業後の洗身については、労働安全衛生規則625条が、使用者に対し、身体又は被服の汚染を伴う業務に関し、洗身等の設備の設置を義務付けしているだけで、労働者に洗身入浴させることまでも義務付けるものではなく、また洗身入浴は一般に本来の作業を遂行するうえで密接不可分な行為ともいえないので、洗身入浴しなければ通勤が著しく困難といった特段の事情がない限り原則として洗身入浴は使用者の指揮監督下における労務の提供と解されず、これに要する時間は労働基準法上の労働時間には該当しないというべきである‥‥」として請求を棄却した。

 控訴審一審の判断を維持。三菱重工業長崎造船所(一次訴訟・組合側上告)事件・最一小判平12.3.9判時1709126も棄却。

 最高裁は、労働基準法上の労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。」としたうえで、「実作業の終了後に事業所内の施設において洗身等を行うことを義務付けられてはおらず、特に洗身等をしなければ通勤が著しく困難であるとまではいえなかったというのであるから、上告人らの洗身等は、これに引き続いてされた通勤服の着用を含めて、被上告人の指揮命令下に置かれたものと評価することができず‥‥洗身等に要した時間は、労働基準法上の労働時間に該当しない」と判示した。

 洗身入浴とシャワーは同じと考える、全裸になって洗うのだから。コンプライアンス上、最高裁判例により労働時間とはみなされないのだから、賃金カットの対象として管理されるべきである。

 私は入浴やシャワーというのはガス代と水道代を払って自宅で帰宅後すべきものという認識なので、職場で入浴したことは宿直で泊まった時以外はない。重筋労働や鉄工所など風呂を備えているところもあるが、オフィスビルのテナントで入っている職場では給湯室はあるだろうが、浴室まで備えている事務所は少ないのではないか。それは給水管工事事務所で給水装置の図面があるから一番よく知っているのは、水道局と東京水道さんだろうけれども、私は主として営業所勤務なので詳しくは知らないけれども、しかし、労働安全衛生規則625条の身体が汚染する労働のないオフィスでは、水道代やガス代のコストがかかる浴室を備え付ける理由はない。

 浴室は労働衛生施設として時間外であっても利用の仕方は規制すべきである。百歩譲っても事務職員は重筋労働をやっているわけでなく、ごみやバキュームカーの作業員で臭いがつく作業でもない以上、洗身入浴を積極的に奨励する理由はない。

 浴室利用の内規を見直し、コンプライアンス上問題がないようにすべき。

 直営の時の杉並営業所(令和7年度からTW移管)のことだが〇〇と親しい〇〇も外回りの仕事をしているが、〇〇に勧められ、時間外に長時間洗身入浴していることがよくある。その時間に超過勤務手当を受給しているかは調べてないが、勤務時間内であれ超勤時間であれ、時間管理はされていない。

 令和6年に夜間待機が、水道緊急隊の業務となったため、これまで夜間待機当番やっていた人が、当番制で浴室の清掃をしていたが、夜間待機業務が廃止されたので浴室の清掃は、配水課などと、営業所で回り持ちとなり、しかし実際には利用者は少なく、風呂掃除をする人が少なくなって困っているために〇〇は〇〇に組合要求として委託業務で風呂清掃をさせよと言っていた。

 じっさいには〇〇が勧めても、勤務時間中のシャワー(洗身入浴)は問題があると認識している職員も多く、〇〇が吹聴しているわりには、利用者はすくないのだが、洗身入浴問題をつっつくことはタブーであり、管理職が管理しようと言う考えは全くないのである。

 いずれにせよ、造船所のような重筋労働でも洗身入浴は労働時間に含めないことになっている。国労は昭和時代に勤務時間内の要求をやめたのである。でも水道局は今でも勤務時間内に事務職でもシャワーは勤務時間内自由とされ、労働時間に含めている。水道局だからいいじゃないかと言われるかもしれないが、都内の電力消費の1%は水道局施設で局の環境計画では電気や紙と同じく、水道使用量を減らすことになっているのである。

 だからといって勤務時間外だからによいというものではなく、あくまで労働衛生上の施設という位置づけであるなら、水道代やガス代を節約するために職場で風呂をすますという利用の仕方には問題がある。

なお、この問題は、内規の見直しと、勤務時間内のシャワーについては、賃金カットの対象として労務管理すべきと提言するのみとして具体的に規則で明文化する提案はしていない、今回の提案が盛りだくさんなことも踏まえ見送ることとした。

 

ITなど先進企業での従業員サービスをやってますが、水道局でできますか

 

健康センター(医療・メンタルヘルス)

フィットネスセンター・ジム

カフェテリア・食事(無料提供)

シャトルバス

マッサージやアクプンクトゥアなど

 

 

マイクロソフト

コーヒー、ティー、ソーダ、コーラ、エナジードリンク、ジュース、フルーツフレーバーウォーター、インフューズドウォーターなどがキッチンettes(休憩スペース)やカフェエリアで常時無料提供。

  

一般論として、事務職だけの一般的なオフィス(コールセンターやバックオフィス、経理・総務中心の事務所など)の場合、浴室やシャワー設備はほぼ付いていないのが普通ですが、シャワー施設つきのオフィスも少数ですがあります。

 

GRОKで 公開情報や過去の事例に基づく「シャワー設備のあるオフィス」について尋ねた答えは

 Amazon Japan

目黒などのオフィスにオールジェンダー対応シャワールームを完備。エクササイズスペースやヨガスペースと併設されていて、出社後の運動後や出張帰りに使う社員が多いです。

伊藤忠商事

東京本社にシャワーラウンジ+シャワー室を設置。出張帰りや運動後の利用を想定してアメニティも完備されています。

オン・ジャパン(On Running 日本法人)

ランニングブランドだけあってオフィスにシャワー設備が完備。「いつでもラン&シャワー」が福利厚生の目玉の一つです。

グリー株式会社

六本木ヒルズのオフィスにジム・シャワールームを備え、リフレッシュ目的で利用されています。

NHN JAPAN

自社ビルにジム+シャワールームを完備。朝夕のトレーニング後に利用する社員が多いです。

TIS株式会社

豊洲オフィスなどでシャワー設備を備えた事例があります

 

 しかし、水道局では以下のコンプライアンス経営宣言しているので、洗身入浴の時間が労働時間に含まれず、賃金を支払わなくてよいという判例が確立し、裁量労働制なら話は別かもしれないが、勤務時間内は賃金カットすべきです。

 

コンプライアンス経営宣言

東京都水道局の公営企業管理者として、「東京都コンプライアンス基本方針」 に従い、以下の6つの原則を基本とする「コンプライアンス」を最重要視した 事業運営を行い、都民から信頼される企業の実現に努めることを、ここに宣言します。

 1 法令遵守と組織風土づくり

〇 「東京都コンプライアンス基本方針」に従い、法令遵守はもとより、社会的要請にも 迅速に対応することができる組織風土づくりに努めます。

 〇 コンプライアンス重視の組織をつくるためには、職員間、部門間のコミュニケーショ ンが重要であるとの認識に基づき、現場の意見を方針決定に反映させる仕組みを構築す るなど、風通しの良い職場づくりに努めます。

2 都民目線の事業運営

 〇 コンプライアンスは全ての業務の土台であり、都民が期待する局の使命を果たしてい るか、都民に対して誠実な対応となっているか、社会規範に適合しているかどうか、常 に考え、行動します。

 〇 コンプライアンス重視の事業運営のためには、外部の視点が重要であるとの認識に基 づき、外部有識者の意見を事業運営に反映させるなど、外部の知見の積極的活用に努め ます。

3 不正行為の排除

〇 独占禁止法、入札談合等関与行為防止法を遵守し、入札談合、入札談合等関与行為な どの不当な取引制限に関わる行為は一切行いません。これらの不正行為を排除するため にあらゆる手段を尽くします。

 〇 業者からの不当な働きかけが確認された場合には、警告書の送付、指名停止を含む制 裁、関係取締機関への通報など、断固たる措置を取ります。 4 内部通報制度の適正な運用

 〇 法令違反行為又はそのおそれが認められた場合には、職員はその事実を局に報告(通 報)する責任があります。コンプライアンス経営の達成のためには、内部通報制度の適 正な運用が不可欠であるとの認識に基づき、通報者の保護を徹底します。 5 コンプライアンス違反への厳正・迅速な対応

 〇 重大なコンプライアンス違反事例に適切に対応するために、事故発生時の情報の連絡 体制、調査体制、損害拡大防止のための措置、迅速な情報公開など、信頼回復のための 体制を整備します。 〇 こうした違反事例が発生した場合には、厳正に対処するとともに、根本的原因の解明、 実効性の高い再発防止策を策定し、迅速に実行に移します。 6 コンプライアンス違反を発生させない体制の構築

〇 コンプライアンス違反について常に高い危機意識を持ち、コンプライアンスリスクの 適切な評価を行い、それに対する対応が可能な体制の整備・運用に努めます。

〇 コンプライアンス重視の組織運営に当たっては、外部有識者による継続的なモニタリ ングを受けることによって、適正な事業運営を行います。

 令和7年4月 東京都水道局長 山口 真

 

最後のまとめ

基本的に時間内は禁止もしくは、申告させて月間累積時間を賃金カットとすべきだが

シャワーの勤怠管理妥協案

 

日勤所定労働時間

 8時30分~1715分 7時間45

(休憩・12時から13時)

1630分~1650分シャワーの場合は、休憩時間を40分に圧縮する。

 

 

残業時間 1745分~1825分浴室へ

     1920~55分浴室へ といったケースもある

超勤時間に含めないようにする。

 

 

2026/02/02

YouTube台本 都議会議長あて陳情 令和7年166号 水道局における外形上犯罪構成要件該当行為を取り締まらない実務の是正に関する陳情の解説 陳情解説シリーズ11 

令和7年166号陳情 文書表

 

(件名)

水道局における外形上犯罪構成要件該当行為を取り締まらない実務の是正に関する陳情

 

(願意)

 都において、水道局の職務命令と懲戒の根拠を明確にするため、勤務時間内外を問わず局施設内における無許可演説行為・集会、無許可組合活動、他の職員の職務遂行を妨害する行為を禁止する就業規則を追加して整備していただきたい。

 

(理由)

 水道局は、全水道東水労の争議行為及び付随する行為である、以下の外形上犯罪構成要件該当行為を一切取り締まっていない。

1 多衆が執務室を占拠して集会し、物理的に非組合員等の就労を阻止するシットダウンストライキ(威力業務妨害罪)

2 事業所外に勤務する組合役員による、事務室に侵入してのオルグ活動や、庁舎構内に侵 入し違法行為を慫慂(しょうよう)し、あおる集会の開催(住居侵入罪)

3 ストライキの前夜から当日未明に、セキュリティを破り事務室に勝手に出入りし、組合員への指令伝達、ストライキ集会準備、ビラ貼りなどを行う組合役員の任務(住居侵入罪)

 1は、争議権のある私企業でも刑事免責されない悪質な態様である。管理職が解散退去命令や就業命令をせず、現認検書も上申しないので懲戒処分にもならないが、地方自治法第238条の4第7項の目的外使用に当たらないものとして不許可とし、職務命令を徹底し、強行した場合は懲戒責任を問うだけでなく、刑事告訴も検討すべきである。

 2及び3は、立入拒否の管理意思を明確に示せば犯罪が成立する。不許可や中止・解散・退去命令を徹底し、ストを決行した場合は懲戒処分事由とすべきである。

 争議行為は労務提供拒否という不作為を本質とし、これに随伴する行為も消極的行為の限度にとどまるべきであり、それを越えて使用者側の業務を妨害するような意図及び方法での積極的な行為は許されないと最高裁は判示している。

 公共企業体の争議行為に刑事免責があるとした東京中郵判決の枠組みにおいても、マス・ピケが業務妨害罪により有罪とされている。

 全逓名古屋中郵事件(最高裁大法廷判決、昭和52年5月4日)は、公共企業体に争議行為の刑事免責はないと判例変更した。全逓名古屋中郵第二事件(最高裁第二小法廷判決、昭和53年3月3日)の香城敏麿判解は、判決を次のように要約した。

イ 公共企業体等労働関係法(以下「公労法」という。)第17条第1項違反の争議行為が罰則の構成要件に当たる場合には、労働組合法第1条第2項の適用はなく、他の 特段の違法性阻却理由がない限り、刑事法上これを違法とすべきである。

ロ ただし、争議行為が単なる労務不提供のような不作為を内容とするものであって、公労法第17条第1項が存在しなければ正当な争議行為として処罰を受けないような ものである場合には、その単純参加者に限り、当該罰則による処罰を阻却される。

ハ これに対し、公労法第17条第1項の争議行為に当たらず、これに付随して行われた犯罪構成要件該当行為の場合には、その行為が同条項違反の争議行為に際して行われたものである事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、法秩序全体の見地から許容されるべきか否かを考察してその違法性阻却事由の有無を判断しなければならない。

 公労法第17条第1項と地方公営企業等の労働関係に関する法律第11条第1項違反の争議行為は、違法であり解雇事由となるが、罰則規定はない。しかし、刑法上その他の罰則の構成要件に当たる場合に免責はない。

 水道局の事例に当てはめれば、1は、イに該当し、業務妨害罪の構成要件該当行為で違法性阻却事由はないから、刑事法上違法と判断される。2及び3は、ハに該当し、違法行為目的の立入りのため、違法性が強く推定される。

 全逓釜石支部事件(差戻後控訴審仙台高裁判決、昭和61年2月3日)では、管理権者があらかじめ立入拒否の意思を積極的に明示していない場合でも、立入行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、犯罪の成立を阻却しないとしている。就業規則で無許可組合活動を禁止し周知するなど、管理意思を示せば住居侵入罪が成立するため、そうすべきである。

 

水道局における外形上犯罪構成要件該当行為を取り締まらない実務の是正に関する陳情

166号提出原文)

(願意)

水道局において全水道東水労の争議行為及び付随する行為として以下の外形上犯罪要件該当行為がなされているが、当局はいっさい取り締まっていない。

1)多衆が執務室内を占拠して集会し、物理的に非組合員等の就労を阻止する態様のシットダウンストライキ(威力業務妨害罪)

令和元年1220日新宿営業所では、事務所検針担当の執務場所で、営業所と給水課分室合同で40名程度が集合して座り込む1時間のスト集会がなされた。

2)当該事業所外に勤務する組合役員が、事務室に勝手に侵入しオルグ活動するまたは、構内に侵入し違法行為を慫慂、あおる集会(支所・合理化拠点決起集会)を開催する。(住居侵入罪)

3)ストライキ配置日の前夜から当日未明にかけて「スト待機」と称し、セキュリティを破って事務室内に勝手に出入りし組合員への指令伝達、ストライキ集会準備、ビラ貼りなどを行う組合役員の任務(住居侵入罪)

1)は争議権のある私企業でも刑事免責されない悪質な態様である。管理職は、解散退去命令や就業命令せず許容し、現認検書も上申しないので懲戒処分にもならないが、今後は地方自治法238条の47項の目的外使用として不許可とし、職務命令を徹底し、強行した場合は懲戒責任を問うだけでなく、刑事処分も検討すべき。

2)(3)は毎年恒例でなされる行為だが、立入拒否の管理意思を明確に示せば犯罪が成立する事案である。不許可、中止・解散・退去命令を徹底し、ストを決行した場合は懲戒処分事由とする。

職務命令と懲戒の根拠を明確にするために、勤務時間内外如何を問わず無許可演説行為・集会、無許可組合活動、他の職員の職務遂行を妨害する行為を禁止する就業規則を追加して整備していただきたい。

(理由)

争議行為は労務提供拒否という不作為を本質とし、これに随伴する行為も消極的行為の限度にとどまるべきであり、それを越えて使用者側の業務を妨害するような意図及び方法での積極的な行為は許されないと最高裁は判示している(羽幌炭礦事件・最大判昭33528刑集1281694等多数)。

従って、公共企業体の争議行為に刑事免責があるとの東京中郵判決の枠組においても、摩周丸事件・最大判昭411130(タラップを取外し、舷門扉を閉鎖)、動労糸崎駅事件・広島高判昭48830判タ300号(運転室に乗り込んで占拠し、代務の機関士の乗務を阻止)、 動労鳥栖駅事件・福岡高判昭49525(軌条枕木付近でスクラムを組み列車発進を妨害)等でマス・ピケ事犯が業務妨害罪により有罪とされている。

全逓名古屋中郵事件・最大判昭5254刑集31318は公共企業体では争議行為の刑事免責はないと判例変更した。名古屋中郵第二事件・最二小判昭5333の香城敏麿判解は名古屋中郵判決を次のように要約した。

(イ)公労法171項違反の争議行為が罰則の構成要件にあたる場合には、労組法12項(刑事免責)の適用はなく、他の特段の違法性阻却理由がない限り、刑事法上これを違法とすべきである。

(ロ)但し、右の争議行為が単なる労務不提供のような不作為を内容とするものであって、公労法171項が存在しなければ正当な争議行為として処罰を受けないようなものである場合には、その単純参加者に限り、当該罰則による処罰を阻却される。

(ハ)これに対し、公労法171項の争議行為にあたらず、これに付随して行われた犯罪構成要件該当行為の場合には、その行為が同条項違反の争議行為に際して行われたものである事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、法秩序全体の見地から許容されるべきか否かを考察してその違法性阻却事由の有無を判断しなければならない。

公労法171項と地公労法111項違反の争議行為実践は違法であり解雇事由となるが、罰則規定はない。しかし刑法上その他の罰則の構成要件にあたる場合に免責はない。

上記指導判例の判断枠組を都水道局の事例にあてはめれば、争議行為がたんに単純不作為のウォークアウトであるならば、懲戒責任を問えるが、刑事事件にはならない。しかし(1)の多衆による職場占拠による就労妨害は、(イ)に該当し、実力を伴うマス・ピケと同様、業務妨害罪の構成要件該当行為なので、特段の違法性阻却事由はないから、刑事法上違法と判断される。 

2)の中執や本部委員のオルグ活動、動員集会等の立入りや(3)の深夜未明のスト待機(指令伝達の任務)は争議行為でなく、これに付随する行為として(ハ)に該当し、全逓中執と地本役員が「あおり」行為を行うため立入禁止の名古屋中郵地下食堂に建造物侵入したことは、目的が違法行為の立入なので、違法性は阻却されず、罰金刑とされたと同じように、(2)(3)が違法行為目的の立入なので、違法性が強く推定される事案になる。   

組合側は当局が業務妨害も庁舎構内立入も認容しているので犯罪は成立しないと反論するだろうが、全逓釜石支部事件・差戻後控訴審仙台高判昭6123判時1194では、管理権者が予め立入拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、犯罪の成立を阻却しないとしているから、就業規則で無許可組合活動を禁止し周知する等、管理意思を示せば住居侵入罪は成立するのでそうすべきである。

 

 

(AIによる要約を補正)

 

争議行為は原則として労務提供拒否の不作為にとどまるべきであり、積極的に業務妨害を目的とした行為は許されません。最高裁判例では、公共企業体の争議行為は刑事免責が認められない。争議に伴う占拠や物理的業務妨害などは業務妨害罪等で有罪となります。  単純な労務不提供の場合は懲戒対象ですが、刑事事件には該当しません。一方、争議行為ではないがそれに付随する行為について、管理権者が組合活動の立入禁止を明示していれば違法目的の立入などは違法性阻却事由がなく刑事責任を問われ住居侵入罪が成立する可能性があります。

 

令和元年年末闘争と春闘(新宿営業所)の日程 

令和元年 123日(月)

5波決起集会16時から各支部3割動員)都庁ふれあいモール 賃金カット

12月4日(火)

昼休み集会 給水課分室執務室(闘争課題を確認し組合員の意思統一を図る集会)

12月5日(水)

三六協定破棄闘争17時15分~24時

12月6日(木)

早朝1時間ストライキ配置(延期)、三六協定破棄闘争0時~24

12月17日(月)

昼休み集会 給水課分室執務室

 6波決起集会1515分~各支部3割動員)都庁ふれあいモール 賃金カット

12月18日(火)

三六協定破棄闘争17時15分~24時

12月19日(水)

三六協定破棄闘争0時~24時    

午後、組合役員の〇〇らが非組合員をオルグ、出勤入力せずとも所長に事故欠勤を要請すると述べる。       

12月20日(木)

早朝1時間ストライキ決行 スト集会は執務室内 演説者 〇〇・〇〇・〇〇ともう一人  シットダウンストライキ  組合員は賃金カット、非組合員でスト参加は事故欠勤で局が給与付与  三六協定破棄闘争0時~24

令和2 114日(火)

7波決起集会1615分~各支部3割動員 都庁ふれあいモール 賃金カット

1月17日(金)

早朝1時間統一行動配置日 中止

2月28日(金)

スト権一票投票 批准率9435

3月6日(金)

決起集会16時から各支部3割動員)都庁ふれあいモール 賃金カット

3月10日(火)

三六協定破棄闘争17時15分~24時

3月11日(水)

三六協定破棄闘争0時~24時

3月12日(木)

早朝1時間ストライキ中止

 

16 積極的業務妨害(職場占拠・シットダウンストライキ)-刑事処分も検討

  • 地方公営企業において単純不作為の職場離脱(ウォークアウト)も違法行為であるが、全水道東水労のストは争議権のある私企業のストでも免責されない積極的な業務妨害を行う点でより悪質であり、当局はそれを許容し犯罪を助長することに邁進している。

既に威力業務妨害罪は時効であるが、令和元年1220日の1時間ストで、新宿営業所では事務室の検針担当執務エリアを給水課分室職員もふくめ40人程度で占拠して集会する態様で、執務場所の占拠(非組合員もいる)物理的に業務遂行を不可能にするシットダウンストライキである。

ところが〇〇〇〇所長は、積極的業務妨害を全面容認し、中止・解散・就労命令は一切やらない。スト指導者といえる集会の演説者、〇〇〇〇、〇〇〇〇、〇〇〇〇(支部・分会役員)について現認検書は上申はやらないと言っていた。そればかりか〇〇〇〇所長は、ピケッティングに立って私を出ていけと指図し、集会でも演説してストを指導した〇〇〇〇を主任に昇進させている。違法行為を指導して処分されないどころか昇進するのが東京都の倣いである。

犯罪構成要件該当行為の是認は当然という認識のようであるが、それは刑事免責を肯定した中郵判決が判例を維持していた昭和40年代の考え方で、先例は、刑事免責を否定した名古屋中郵判決方式の判断枠組になるから、違法性が阻却されることはありえない。

職員部から就労命令等の指示はないため、職員部の指示どおり動き、犯構成要件該当行為容認がコンプライアンスとなっている。管理意思を示すことを義務づけ犯罪を成立させるべき。

シットダウンストライキは悪質な態様であり許しがたい。産業別組合が台頭した合衆国1937年大恐慌のときに流行したもので、1932年ノリスラガーディア(反インジャンクション法)により、裁判所がストライキに差し止め命令を出しにくくなり組合活動を活発化させた結果である。

ストライキ時の職場占拠は大量動員ピケッティングによる物理的に、就労、作業を阻害することと基本的には同じ論理によって違法性が判断されるので、争議権のある私企業でも正当な争議行為とはみなされない。

16-1 新方針

職場占拠は、悪質な態様、業務妨害罪の構成要件行為なので、事前に認めないことを警告し、勿論違法なので推奨しにくいとはいえるが、よりましなウォークアウトにせざるをえないようにもっていってよいものとする。予想される事業所には特別査察チームを増援し逆ピケを張る。強行する場合は、中止・解散・退去・就業命令を徹底する。責任者の相応の懲戒処分か、刑事処分も検討する。短時間なので引き抜きなどは行わないとしても、現認・監視体制は徹底する。むろんこのようなことが起こるのは管理者が就業命令をせずストに協力する態勢だからである。

16-2 根拠

地公労法111項に違反する私企業でも正当とされない争議行為であり、地公法291号、2号、3号、32条、33条、35条の適条の服務規律違反

庁内管理規程五条4号、13号に該当

地方自治法238条の47項の行政財産の目的外使用により不許可

新規則1 職員は、許可なく、局所施設内で、業務外の集会、演説、講習、放送、示威行為又はこれらに類する行為を行ってはならない。

2 職員は、局が許可した場合のほか、勤務時間中に又は局所施設内で、組合活動を行ってはならない

3 職員は、職場において、他の職員の職務遂行を妨げ、もしくは職務専念を妨げる行為をしてはならない。

刑法234条威力業務妨害罪の犯罪構成要件該当行為

(ただし、現状では管理職が業務妨害、職場占拠を認めていることにより、犯罪の成立が微妙)

 

 

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20260202-143554

🔶争議行為違反に罰則がなくても他の罰則の構成要件を充足している場合にその罰則を適用できる

全逓名古屋中郵事件.最大判昭52.5.4刑集313182

同法(公労法)には禁止違反の争議行為に対する刑事制裁の規定が欠けているが、その故をもつて、その争議行為についても原則として刑事法上の違法性阻却を認めるのが同法の趣旨であると解することは、合理的でない。由来、争議行為に関して適用が問題となる罰則には、争議行為の禁止規定の実効性を確保するためにその違反に対し制裁として刑罰を科することを定めるものと、その適用対象を争議行為に限定することなく、ある類型の行為に対し一般的に刑罰を科することを定め、その結果として、争議行為におけるその類型の行為に対しても適用されることになるものとがある。本件で問題とされる郵便法791項は、「郵便の業務に従事する者がことさらに郵便の取扱をせず、又はこれを遅延させたときは、これを一年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。」と規定しており‥‥公労法171項違反の争議行為に‥‥刑事制裁の規定がないことは、その違反を理由としては刑罰を科さないことを意味するにとどまるのであって郵便法791項など‥‥罰則に該当する争議行為に対しても刑事法上の違法性阻却を認める趣旨であると解することは、合理性を欠き、他に特段の事情のない限り、許されないのである‥‥およそ争議行為として行われたときは公労法171項に違反する行為であっても刑事法上の違法性を帯びることがないと断定するのは、相当でない。特に、この条項は、‥‥その禁止に違反する争議行為は、国民全体の共同利益を損なうおそれのあるものというほかないのであるから‥‥してみると、公労法において禁止された争議行為が合理的に定められた他の罰則の構成要件を充足している場合にその罰則を適用するにあたり、かかる争議行為とは無関係に行われた同種の違法行為を処罰する通常の場合に比して、より強度の違法性が存在することを要求するのは、当をえないものといわなければならない。」

これは公労法違反の争議行為の事案だが、公労法3条は、地公労法4条と同じで、公労法171項は地公労法111項と同じなので、この理論は、地公労法適用の職場を別異とする理由はない。

但し、名古屋中郵判決は、争議行為の単純参加者については、立法の変遷とその底流にある法の理念を根拠として、処罰阻却の法理により単純参加者を処罰の範囲外と結論した。非現業公務員はあおり等積極的に争議行為を指導した者に罰則があるが、単純参加者にはないため均衡をかくうらみがあるためであるが、立法的解釈であり法理論的には疑問なしとしない。下田判事の反対意見がある。

🔶「久留米駅事件方式」の総括明確化

可罰的違法性論が採用されなくなったターニングポイントは、私企業も含め勤労者の争議行為に際して行なわれた犯罪構成要件該当行為について違法性阻却事由の有無を判断する一般的基準を示した国鉄久留米駅事件・最大判昭48.4.25刑集273419である。

マス・ピケ事犯、原審無罪破棄差戻。国労役員が、信号所の勤務員三名の勤務を放棄させ、勤務時間内職場集会に参加させる意図をもつて、あえて同駅長の禁止に反して同信号所に侵入する行為、労働組合員ら多数が同信号所を占拠した際にこれに加わったこと。同信号所で鉄道公安職員に数十回バケツで水を浴びせた(パンツが濡れるほどだった)事案での刑法上違法性を欠くものでないことが明らかであり、刑事責任を問うことは、なんら憲法28条に違反するものではないとした。

同盟罷業自体の労働法上の合法・違法の評価と付随的ないし補助的な行為についての刑法上の違法性判断とを意識的に区別して、違法性阻却事由の有無についての刑法的評価の判断方式を確立した(久留米駅事件方式)。

「勤労者の組織的集団行動としての争議行為に際して行なわれた犯罪構成要件該当行為について刑法上の違法性阻却事由の有無を判断するにあたっては、その行為が争議行為に際して行なわれたものであるという事実をも含めて、当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判定しなければならない」という判断方式である。

臼井滋夫最高検検事の判例批評が参考になるだろう。「久留米駅事件方式」の特色として「実質的違法性論に立脚して違法性阻却事由の有無を判断すべきものとしつつ、労働争議においても、一般原則のとおり犯罪構成要件該当性に刑法上の違法性を推定する機能を認め、しかも、この判断が講学上「いわゆる開かれた構成要件」に属するものとして、違法性推定機能が弱いとされている建造物侵入の成否に関してなされたものであることは注目に値するとしている[臼井滋夫1977「ピケッティングの正当性の限界」『法律のひろば』304号、1977「「可罰的違法性論」に対する批判的検討」『警察学論集』307号]

久留米駅事件方式の「法秩序全体の見地」に深い意味があって、犯罪構成要件該当行為は労働基本権尊重だとして安易に無罪としてはならないという含意があるとみてよい。

久留米駅事件方式のように争議行為とそれに付随する行為を分けて法的評価する考え方は、最高裁先例が争議行為は労務提供拒否としいう不作為を本質とし、これに随伴する行為も消極的限度にとどまるべきであるとする前提(朝日新聞西部本社事件.最大判昭27.10.22刑集6927羽幌炭礦鉄道事件大法廷判決昭33.5.28刑集12816)にもとづくもので、プロレイバー学説のように、争議権に積極的な業務阻害行為を含めないのである

我国には、英国のようにピケッティングを6人以下とし、当該事業所以外の外部支援組合員らによるピケットを違法としていないし、組合員であれストライキに参加しない権利(消極的団結権)が立法化されておらず(米国ではタフト・ハートレー法で立法化されている)、大量動員ピケを規制する立法はないが、最高裁が「久留米駅事件方式」を案出したことにより、ピケッティングの正当性の限界につき、消極的性格の行為の限度にとどまるべきであるという見解が堅持され、いわゆる平和的説得の限度を越えたピケッティングが犯罪構成要件に該当するときは、犯罪の成立を阻却するごく特殊な事情が存在する場合は格別、原則として違法性が阻却されないものとされている臼井滋夫1977 「五.四名古屋中郵事件大法廷判決について-公企体職員の違法争議行為と刑事罰」『警察学論集』307号]

包囲型ピケッティングの逮捕行為では、着衣に損傷がなく殴る蹴るもしていない逮捕行為(〇光文社事件東京高判昭48.4.26判時708)、その他マス・ピケにおいて物理的就労妨害、業務阻害行為につき、昭和40年代に席捲した藤木英雄ピケッティング違法性論を採用して、組合活動だから労働基本権尊重の趣旨で無罪にしてしまう下級審の傾向は久留米駅判決で完全に是正されることになった。

国鉄が私法上の勤務関係のため、私企業を含めた先例になった久留米駅判決の意義は大きい。

  実際、藤木学説を根拠として可罰的違法性を欠くとして無罪とした判例は130件あったが、久留米駅事件方式による違法性阻却判断基準により、他組合員への断続的暴行、逮捕行為を無罪とした原判決を破棄した。ロ日本鉄工所事件最二小判昭50.8.27 以降ほぼ完全に姿を消し、実務上可罰的違法論は消え去ったのである[前田雅英1984「労働組合役員の他組合員に対する暴行、逮捕行為と実質的違法阻却事由(最判昭和50.8.27) 」『警察研究』5514]。

3 藤木英雄東大教授の刑法学説は国鉄久留米駅事件判決で粉砕された

昭和40年代労働事件で司法が左傾化した要因は、藤木英雄東大刑法教授の可罰的違法性論の悪影響が大きい。

藤木教授は労働刑法での違法性概念について「労働権の保障の結果それと矛盾する限度で財産権に対する保障が後退するのは当然のこと」「通常の一般市民間でなされた場合に威力ないし脅迫にあたる行為であっても、労働争議という実力闘争の場において常態を逸脱しない‥‥程度の行為については‥‥威力あるいは脅迫にあたらないとして構成要件該当性を否認することにより問題を処理することが許されよう」と述べたわけである。[藤木英雄『可罰的違法性の理論』有信堂高文社1967 81頁]市民法秩序を軽視する理論である。争議行為の限界を消極的限度にとどまるとしている最高裁判例を突破し、市民法と労働法のぶつかり合う矛盾を労働法優位に改変していこうとする志向性を有している。

また藤木教授はピケッティングについて、「組合員であって争議から脱落した者は‥‥統制力の行使として、緊急の場合、スクラムによる絶対阻止が許される」「組合の組織の防衛をはかる目的で、会社のために就労しようとする者を‥‥強力な威力行使によって、その通行の最終的な阻止を試みることは‥‥場合によっては合法」としてスクラム阻止を容認している[藤木英雄1967『可罰的違法性の理論』有信堂高文社 181頁以下]

この学説と中郵判決の刑事免責適用を根拠に、争議行為を明文で禁止されているはずの公労法適用職場において、積極的業務阻害であっても、可罰的違法性を欠くとして無罪とする下級審判例が相次ぎ、大きな混乱をもたらした。昭和30年代から40年代にはプロレイバー労働法学に影響を受けた、実力行使を容認する下級審判例も少なくないからである。裁判所がプロレイバー法学の影響から脱する傾向が明確になったのは石田和外コート末期の国鉄久留米駅事件・最大判昭48.4.25刑集273419以降である。実際、藤木学説を根拠として可罰的違法性を欠くとして無罪とした判例は130件あったが、久留米駅事件方式による違法性阻却判断基準により、他組合員への断続的暴行、逮捕行為を無罪とした原判決を破棄した日本鉄工所事件最二小判昭50.8.27 以降ほぼ完全に姿を消し、実務上可罰的違法論は消え去った[前田雅英1984「労働組合役員の他組合員に対する暴行,逮捕行為と実質的違法阻却事由(最判昭和50.8.27) 」『警察研究』551号 ]。

 

20260202-145529 

可罰的違法性論の典型的な判例として光文社事件控訴審の判断があげられますが、上告審は久留米駅事件方式で無罪を有罪にしました。

 

光文社事件 最三小判小昭501125 刑集2910928頁 判時796号 判タ330号

(要旨)

 本件は昭和4624日図書・雑誌・週刊誌を出版する東京都文京区に所在する出版社の労働争議に絡み、第一組合員である被告人ら6人がピケッティングを実施中、出勤途上、歩道を歩いていた第二組合員の総務部副部長Sを取り囲み、第一組合員の解雇に反対の意思を表明させるなどのため同人を拉致して追及することを企て、同人の意思に反して身体を拘束したうえ、路上を強制連行した事案である。

 第一審は、

 労働刑事事件では、前掲の日本鉄工所事件に続いて、最高裁が「久留米駅事件方式」により可罰的違法性を否定し無罪とした原判決を破棄した。上告審判決は

本件が、労働争議に際し、不法にも実力をもつて人の身体及び行動の自由を奪い、正当な就労の権利を侵害したものであることの実質を洞察しないで、外形的な手順の現象観察にとらわれたことを示すものであつて、本件所為に対する可罰性の有無を決するに足る契機とすることはできない。原判決は、すでに第一審判決がこれらの点を考慮の上特に周到に当初の逮捕行為とこれに続く連行行為における態様とを区別したのに反して、本件所為の全過程を貫きうる違法性阻却の事由が存するかのように解するのであるが、これは本件における被害法益の評価及び行為の緊急性その他相当性の有無等に対する認識の相違に基づく異見といわざるをえないのである。 

四 結局、本件逮捕行為は、法秩序全体の見地(昭和四三年(あ)第八三七号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻三号四一八頁)からこれを見るとき、原判決の判示する動機目的、所為の具体的態様、周囲の客観的状況、その他諸般の事情に照しても、容認されるべきピケッテイングの合理的限界を超えた攻撃的、威圧的行動として評価するほかなく、刑法上の違法性に欠けるところはない。したがつて、原判決の判断には法令の違反があり、それが判決に影響を及ぼし、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものであることが明らかである。

先にいうと、私の考えはこうである。もし本件逮捕行為を可罰的違法性を欠くとする東京高裁判決を是認するならば、「社会的に常軌を逸した暴行・脅迫 」(足蹴りや殴打等をさすものとみられる-本件では足蹴りや殴打はなされていない)さえなければ労働組合の有形力行使は争議行為において許容されることになる。ピケットにおいても説のため件逮捕行為のような56人の包囲による有形力の行使を認め、足蹴り、殴打等常軌を逸した暴力さえなければ、抵抗する者もかまわず拘束してもかまわないという結論になっている。そうすると争議行為なら逮捕、強制連行、拉致、監禁のある程度のことは許容されるべきということになる。これは市民法秩序、個人の就労の権利、行動の自由の観点から到底容認できるものではなく、原判決を破棄した最高裁の判断は妥当であり、特に「正当な就労の権利の侵害」に言及したことで高く評価したい。

本件労働争議は会社に有利な形勢にあり、第一組合は幹部9名が解雇され、入構も拒否されていた。追い詰められた状況にあったことから、第一審、控訴審とも被告人に同情的な見解が述べられている。また弁護人によればSはかつて第一組合に属し争議に参加していたのに、不明朗な経緯で結成された第二組合に走った者で、内部統制違反者、脱落者と類似ないし判断を下しているが、しかしだからといって、身体拘束、強制連行、就労の権利侵害が許されるべきとものではないと考える。

昭和462月東京都文京区に所在する出版社の労働争議に絡み、第一組合員である被告人ら6名が、午前7時40分ころ出勤のため歩道を歩いていた第二組合員(S総務部副部長)を取り囲み、会社警備員の妨害の及ばないところで説得するため、その者を約30メートル引きずり、 さらに両脇下に手をさし入れたまま引っ張り、押すなどして、小路に入り、約200メートル強制連行した。検察官はさらに約1700メートルにわたる強制連行も含めて逮捕罪に該当するとして公訴を提起したものである。

  • 光文社事件第一審東京地裁昭和47年4月3日判決 刑裁月報4-4-669

  一部無罪、一部有罪(逮捕罪)。懲役三月執行猶予一年

(罪となるべき事実)

 被告人は、昭和四六年二月四日午前七時四〇分ころ、東京都文京区音羽‥‥光文社前付近路上において、前記のとおり出勤してきたSを認めたので、同人が第二組合に加入した理由を問いただし、また会社が‥‥‥および第一組合に解雇者が出ていることに関して話合い、同人から意見を徴するとともにこれらに反対の意思を表明することを求めて同人を説得しようと考えたが、‥‥警備員による妨害を免れるため、ほか五名の労働組合員と共謀のうえ、右Sをその場から他所に連行しようと企て、歩道上を歩いてきた同人に近寄り、いきなり同人を取り囲み、うち二名において両側からそれぞれ同人の腕をつかまえ、被告人において、「実力ピケだぞ、あんたは会社に入れないんだ、どうしてこんなに早く来るのだ」と申し向け、同人が「入れないんだったら帰ればいいんでしよう」といつて引き返そうとするや、前記の二名においてそれぞれ同人の脇下に手をさし入れて同人を抱え上げながら前方に引っ張り、ほか一名において同人を後方から押し、同人が両足を前方につき出し、腰を低く落として連行されまいと抵抗するのも構わず、同所から音羽通りを横切り同区二丁目一一番先金輪マンシヨン工事現場付近歩道上まで約三〇メートルひきずったあと、さらに同人の両脇下に手をさし入れたまま引っ張り、後方から押すなどして同所から小路に入り、お茶の水女子大学裏門前を経て二〇〇メートル余の距離にある同区大塚二丁目八番三号山品建設株式会社前歩道上まで強いて同人を連行し、もつてその間同人の身体の自由を拘束して不法に逮捕したものである。 

○光文社事件控訴審東京高裁昭48・4・26判決 判時708号

  原判決破棄 無罪

 控訴事実は、「被告人は、ほか数名と共謀のうえ、昭和四六年二月四日午前七時四〇分ころ、東京都文京区音羽‥‥光文社前付近路上において、同会社総務部副部長〇〇〇〇に対し、光文社労働組合員らの解雇に反対の意思を表明させるなどのため同人を拉致して追及することを企て、同人を取り囲んで両腕をおさえ、脇下に手を入れてかかえあげ、あるいは、後方から押し、腕を引っ張るなどして、同所から豊島岡墓地前、大塚三丁目交差点、お茶の水女子大前、大塚窪町公園等を経て、午前八時一五分ころ、同区大塚三丁目五番一号前大塚一丁目交差点まで強いて連行し、もつてその間同人の身体の自由を拘束して脱出を不能ならしめて不法に逮捕したものである。」というのである。

 事の経過を見ると、被告人らが突然Sを取り囲み、被告人のうち二名が押すなどして、会社付近歩道上から音羽通りを横切り(その間Sが腰を落としたので、両脇でかかえるようにして多少急ぎめに車道を渡っている。)‥‥と原判示のような行動に出たのは、Sが会社の付近まできながら、被告人らの待機している状況を見て引き返しかけたところから、この機を逃すと、同人を説得する機会が当分失われることを危惧し、どこか警備員の妨害の及ばない場所で同人を説得しようとした結果と考えられる。このように、被告人の有形力の行使は、同人に対する説得を有効に実施するための場所の選定にともなうきわめて短時間のものにすぎず、しかもS身体に殴打、足げり等の暴行を加えてないのはもちろん、その着衣その他に対しても何ら損傷を与えていない程度のものである。逮捕罪とは、人の身体を直接に拘束する手段を講じ、その行動の自由を現実に奪うことで、通常その手段は、社会的に常軌を逸した暴行または脅迫によると解されるが、これまで説いたところから明らかなように、本件が午前七時四〇分ころの公道上のきわめて短時間の、しかも緊迫した特殊な事態のもとでの偶発的な出来事と思われること、被告人らには、右のような暴行脅迫を加える意思も、そのような行動に出る形跡もなかったとみられること等の状況に徴すれば、本件は、-なお外形的には、逮捕罪にあたるようにみえるが、-被告人らの守ろうとした利益とその侵害した法益との権衡、労働組合法、刑法を含む法全体の精神からみて、果たして危険な反社会的行為、特に刑法上の犯罪としなければならないほど常軌を逸したものといえるかどうか頗る疑わしく、‥‥‥結局本件は、同法二二〇条一項の「不法に人を逮捕」したという犯罪として処罰するに足りる実質的違法性をいまだ備えていないと解するのが相当である。

  • 上告審  最三小判小昭501125 刑集2910928

本件が、労働争議に際し、不法にも実力をもつて人の身体及び行動の自由を奪い、正当な就労の権利を侵害したものであることの実質を洞察しないで、外形的な手順の現象観察にとらわれたことを示すものであつて、本件所為に対する可罰性の有無を決するに足る契機とすることはできない。原判決は、すでに第一審判決がこれらの点を考慮の上特に周到に当初の逮捕行為とこれに続く連行行為における態様とを区別したのに反して、本件所為の全過程を貫きうる違法性阻却の事由が存するかのように解するのであるが、これは本件における被害法益の評価及び行為の緊急性その他相当性の有無等に対する認識の相違に基づく異見といわざるをえないのである。 

結局、本件逮捕行為は、法秩序全体の見地(昭和四三年(あ)第八三七号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻三号四一八頁)からこれを見るとき、原判決の判示する動機目的、所為の具体的態様、周囲の客観的状況、その他諸般の事情に照しても、容認されるべきピケツテイングの合理的限界を超えた攻撃的、威圧的行動として評価するほかなく、刑法上の違法性に欠けるところはない。したがつて、原判決の判断には法令の違反があり、それが判決に影響を及ぼし、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものであることが明らかである。

争議行為(労務不提供)と争議行為に付随する行為(ピケッティング等)を意識的に区別するこの久留米駅事件方式は全逓名古屋中郵事件判決.最大判昭52.5.4に踏襲された。

  • 全逓名古屋中郵(第二)事件 最二小判昭53.3.3刑集32297香城敏麿判解は、名古屋中郵事件大法廷判決を次のように要約した。

(イ)公労法一七条一項違反の争議行為が罰則の構成要件にあたる場合には、労組法一条二項の適用はなく、他の特段の違法性阻却理由がない限り、刑事法上これを違法とすべきである。

(ロ)但し、右の争議行為が単なる労務不提供のような不作為を内容とするものであって、公労法一七条一項が存在しなければ正当な争議行為として処罰を受けないようなものである場合には、その単純参加者に限り、当該罰則による処罰を阻却される。

(ハ)これに対し、公労法一七条違反の争議行為にあたらず、これに付随して行われた犯罪構成要件該当行為の場合には、その行為が同条項違反の争議行為に際して行われたものである事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、法秩序全体の見地から許容されるべきか否かを考察してその違法性阻却事由の有無を判断しなければならない。

名古屋中郵事件の建造物侵入の行為は(ハ)にあたる。「被告人らは、公労法171項に違反する争議行為への参加を呼びかけるため、すなわち、それ自体同条項に違反するあおり行為を行うため、立入りを禁止された建造物にあえて立ち入ったものであつて、その目的も、手段も、共に違法というほかないのであるから、右の行為は、結局、法秩序全体の見地からみて許容される余地のないものと解さざるをえない」と結論している。

東京都水道局新宿営業所のストの態様、事務室の検針担当のエリアを40人ほどで占拠し集会を行い、その間非組合員が自席で業務を不能にする在り方、業務用機器の隠匿は(イ)にあたり、本部中闘や本部委員等の外来者のオルグのための侵入、支所等の庁舎構内における決起集会の外来者(下水道局の動員含)やスト待機で深夜・未明のセキュリティ破りの事務室侵入は(ハ)にあたるということになります

この判断枠組(「名古屋中郵事件方式」)により威力業務妨害罪の成立を認めた判例として、全逓名古屋中郵第二事件・最二小判昭53.3.3刑集32297(臨時小包便搬出の業務妨害)、春闘松山駅事件・最二小判昭53.3.3刑集322159(マス・ピケ)動労南延岡機関区事件・最一小判昭53.6.29刑集324759(マス・ピケ)がある。

名古屋中郵判決は公労法17条違反の争議行為だか、地公労11条違反の争議行為を別異に解釈する理由がない。

違法性があり、責任もある行為は、これを処罰するのが刑事法上の原則であるにもかかわらず、東京都の管理職が組織的に是認していることは問題であり、令和元年の事案で私も刑事告訴せず時効にしてしまったことをお詫びしたいと思う。

なお、組合側は物理的に阻止するピケットも合法と主張する可能性がある。地公労法111条違反の争議行為につき〇札幌市労連事件(札幌市電ピケット事件)・最三小決昭45.6.23刑集246311(業務命令を受けて組合員が乗務する市電の車庫から出庫を阻止するための40名ほどのピケ)を無罪とした例がある。この判例は中郵判決や都教組判決が維持され公務員の争議行為にも刑事免責が適用され、可罰的違法性論が実質否定されていない時期の判例で、32の僅差であり、松本正雄裁判官の長文の反対意見がある。

可罰的違法性論は国鉄久留米駅事件・最大判昭48.4.25刑集273419の判断枠組みで採用されなくなった。

松本裁判官の反対意見にある違法争議行為に内部統制権はないという趣旨は、横浜中郵事件差戻後控訴審・東京高判昭47.10.20判時689の中野次雄裁判長が採用し、争議行為に労組法12項刑事免責は適用されないという趣旨は名古屋中郵事件・最大判昭52.5.4に採用されて、今日では松本反対意見が最高裁の先例の見解になっているわけで、地方公営企業で刑事事件が稀少なため判例変更されていないだけで、公労法と地公労法の争議行為禁止の趣旨は同じなので、名古屋中郵判決の判断枠組みが採用され、実力ピケが無罪となることはありえない。例えば、名古屋中郵判決が引用された動労南延岡機関区事件・最一小判昭53.6.29刑集324759は機関士の乗務を約500名のマス・ピケで阻止した事案を有罪としているが、札幌市電事件は40人ほどの自然発生的ピケであるが、大きな違いはない。

  • 争議行為は労務提供拒否という不作為を本質とし、これに随伴する行為も消極的限度にとどまる

ここでは、「争議行為の限界」について主として名古屋中郵判決上告審担当検察官として、理論分析に卓越している臼井茂夫最高検検事の論文に依拠して説示することとする。

リーディングケースは山田鋼業事件・最大判昭25.11.15刑集4112257朝日新聞西部支社事件・最大判昭27.10.22民集69857である。

 争議行為は労務提供拒否という不作為を本質とし、したがって、これに随伴する行為も消極的行為の限度にとどまるべきであり、それを越えて使用者側の業務を妨害するような意図及び方法での積極的な行為は許されないとの見解が確立したものであって、この点についてプロレイバーが主張するように労働法は市民法秩序を超克するものと解する余地はない。

そしてピケッティングと犯罪の成否についての重要判例が羽幌炭礦鉄道事件・最大判昭33.5.28刑集1281694であり、事案は、争議続行と組合指導部に反発して組合を脱退し第二組合の結成に加わった労働者と非組合員による出炭を阻止するためのマスピケッティングであるが、「同盟罷業は必然的に業務の正常な運営を阻害するものではあるが、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであって、これに対し使用者側がその対抗手段の一種として自らなさんとする業務の遂行行為に対し暴行脅迫をもつてこれを妨害するがごとき行為はもちろん、不法に、使用者側の自由意思を抑圧し或はその財産に対する支配を阻止するような行為をすることは許されないものといわなければならない‥‥。されば労働争議に、使用者側の遂行しようとする業務行為を阻止するため執られた労働者側の威力行使の手段が、諸般の事情からみて正当な範囲を逸脱したものと認められる場合には刑法上の威力による業務妨害罪の成立を妨げるものではない。」と判示した。

問題は、「諸般の事情」の解釈だが、臼井検事は、「基本となる基準はあくまで労働力の提供拒否にとどまるか否かであり」労働力の提供拒否にとどまるか否かという基準では割り切らないことを意味するというプロレイバー解釈は誤りと指摘している[臼井滋夫1977「ピケッティングの正当性の限界」『法律のひろば』304号 ]。

プロレイバー労働法学では、争議権とは本質的に「業務妨害権」であり、同盟罷業による業務妨害状態を有効に維持するためにピケッティングは争議行為の範囲にあるとし、一定程度の実力行使も許されるというものであるが、最高裁はもちろん認めていない。しかし東京都はそもそも争議行為が正当業務でないのに業務妨害権をも容認している点で非常に悪質ある。

同判決以外でも最高裁は物理的に就労阻止する実力ピケ、大量動員ピケや逮捕行為について多くの事件で有罪と判決している。ホテル・ラクヨー事件最一小判昭和32.4.25暴力行為等処罰ニ関スル法律違反第二港湾司令部駐留軍横浜事件最二小判昭33.6.20威力業務妨害、東北電力大谷発電所事件最一小判昭33.12.15威力業務妨害、水利妨害、四国電力財田発電所事件最一小昭33.12.25威力業務妨害、嘉穂砿業事件最一小判昭35.5.26威力業務妨害.暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、長万部駅事件.最一小判昭45.7.16建造物侵入浜松動労事件.最一小判昭45.7.16 威力業務妨害全逓横浜中郵前ピケ事件差戻後上告審最一小決昭49.7.4 公務執行妨害、国労久留米駅事件.最大判昭48.4.25 建造物侵入、公務執行妨害動労尾久駅事件最三小決昭49.7.16威力業務妨害光文社事件最三小判昭50.5.8逮捕罪動労糸崎駅事件.最一小決昭51.4.1威力業務妨害国労尼崎駅事件.最一小判昭52.10.20公務執行妨害動労鳥栖駅事件.最三小決昭50.11.21?威力業務妨害.公務執行妨害春闘松山駅事件.最小二判昭53.3.3威力業務妨害動労南延岡機関事件.最一小判昭53.6.29威力業務妨害山陽電軌(現サンデン交通)事件.最二小決昭53.11.15威力業務妨害

なお損害賠償請求では御国ハイヤー事件最判平4102判タ813-191がある。

ただし最高裁は羽幌炭礦判決より前に例外的に〇三友炭鉱事件最三小判昭31.12.11刑集1021605に無罪。〇札幌市労連事件(札幌市電ピケット事件)最三小決昭45.6.23刑集246311 は、40人ほどが車庫から発進する電車に立ち塞がった二つめの例外的判例である。羽幌炭礦判決以降では唯一の例外である。それゆえプロレイバー学者は、ピケット権の確立を前進させた意義があるものとして本決定を評価している[佐藤昭夫1970「札幌市労連最高裁決定とピケット権の展開」『労働法律旬報』756号 ]。従って組合側がこの判例に依拠して積極的業務妨害やピケット権を主張することはありうるが、無罪とされる前提となる労組法12項の適用がなくなったこと、可罰的違法性論は安易に適用しなくなったので、名古屋中郵事件方式では有罪となるものと思われる。先例たりえない。詳しくは註の「例外二判例は先例たりえないその理由」を参照されたい。

2)職場占拠・類似したマス・ピケに関する判例

  • 摩周丸事件・最大判昭411130刑集20-9-1076 (札幌高裁函館支部判昭36221判タ117107●函館地判昭3535判時22532

実力ピケ事犯 威力業務妨害 舷門口付近の甲板通路に組合員が密集し占拠した事案。国労青函地本は、組合員処分の抗議等のため昭和32511950分青森桟橋定時出航の摩周丸において、勤務時間職場大会を行うことした。被告人国労青函地本書記長、船舶支部副委員長、北海道地評常任評議員は、組合員約50名と共謀のうえ、架設中のタラップを取外し、舷門扉を閉鎖し、舷門口付近の幅2メートル甲板通路に密集し占拠したうえ、ロープを張りめぐらした。対して国鉄青函鉄道管理局は、部・課長、労動課員等十数名の応援、非組合員たる職員や、当日非番の組合員等からなる三十数名の助勤者を動員し、午前630分頃から前後4回にわたって、桟橋長、桟橋助役、応援者及び助勤者がタラップ架設作業と舷門口の解放をこころみたが、ピケ隊はこれを妨げ、その間、利用客の乗船を不能ならしめた結果、摩周丸の出航を約1時間29分遅延するに至らしめた。一審有罪、国労青函地本書記長懲役八月、船舶支部副委員長懲役六月、北海道地方評議会常任評議員懲役四月、執行猶予二年、二審棄却、上告審棄却。本件は一審、二審とも公労法171項に労組法12項の適用はないとする国鉄檜山丸事件・最二小判昭38.3.15刑集17223とは違って、17条違反の争議行為に対しては、公労法3条が、労働組合法第8条(民事免責)の適用排除を明言しながら、同法第1条第2項(刑事免責)の適用を排除していないということなどから、12項の適用を受くるという、東京中郵判決と同じ見解をとっている。従って私企業と同様に、犯罪構成要件に該当し、労働組合法所定の正当性の限界を超えるものでなければ処罰できないというものであるが、一審は「桟橋二等送迎場と摩周丸との主要交通路及び二等舷門口付近甲板通路を閉鎖遮断し‥‥タラップ架設措置、摩周丸利用客の乗船意思及び船側並に桟橋側からなされるべきタラップ架設作業員の作業意思に対して終局的になされた拒絶行為で、およそ言論による説得行為ないし団結による示威行為以前の、物理的な拒絶状態を惹起させたものであつて、被告人等三名の所為が労働組合法第一条第二項所定の正当性の限界を逸脱したもの」との判断である。

大法廷は国鉄職員の非権力的現業業務の執行に対する妨害は、その妨害の手段方法の如何によっては、刑法二三三条または二三四条の罪のほか同九五条の罪の成立することもあると解するのが相当であるとする全員一致の意見と、公労法が禁止する争議行為の刑事免責の論点で奥野健一(石田和外、下村三郎同調)とは、五鬼上堅磐の補足意見がある。

 

東京新聞事件・東京地判昭4410・18労民20-5-1346 

違法な争議行為を企画、決定、指導したことを理由としてした組合役員らに対する懲戒解雇および懲戒休職が、いずれも重きに失し懲戒権の濫用として無効であるとされた組合寄りの判決だが、職場占拠の違法性は認めている。昭和四〇年三月一九日午前一〇時頃よりその所属組合員及び部外者計約三〇〇名を会社建物内に会社の制止を排除して侵入させ、会社二階作業場(ローリング機および大刷機)および右作業場に至る通路を占拠して実力を以って物理的封鎖をなし、会社側作業員が作業のため同所に立ち入ろうとするや実力を振ってこれを阻止するの挙にでて‥‥会社の再三、再四に亘る口頭および文書(含む掲示)による退去要求を全く無視して右不法占拠を解かないのみか、逐次不法占拠者を増員し、部外者をも多数導入し、約三〇〇名をもつて右ローリング作業場はもとより、会社一階西側玄関から右作業場に至る階段、通路をも完全に占拠閉塞し、更には藁莚多数を持ち込んで右不法占拠態勢を強化し、またその際、間断なく大声にて労働歌を高唱し、或は携帯マイクで音頭をとりかん声を上げるなど怒号喧騒を極め、ひとりローリング作業場および大刷作業を阻止せしめたのみならず、隣接する文選、組版の作業をも著しく妨害したほか、社内の平穏・秩序を全く攪乱せしめた。

職場占拠とは、ストライキの一環として、使用者の意思に反して一定時間工場などに集団で留まる行為を指す。日本では、排他的・全面的な職場占拠は基本的に認められないが、使用者と共存し、占拠が部分的であれば許容されることもある。ただし、会社側従業員への説得や阻止行為が加わる場合、その正当性は通常のピケティングと同じ基準で判断される。また、重要な企業施設の業務運営を妨げ、使用者が業務継続のために滞留者の排除を余儀なくされる状況では、そのような滞留は違法となる。

  • 港湾労組栗林分会事件・札幌高判昭48319判タ713-129 

本件は違法なピケットに参加するため会社職制の制止に拘らず事業所構内に入構したことも違法であるとして、出勤停止処分を是認したケース。マス・ピケの事案といえるが、埠頭のエプロンと称する本船と直背後上屋又は荷さばき地との間で、貨物を円滑に移動させる場を占拠し、職制とストに加わらない第二組合員による洋紙の積み込み、アラスカ材の荷揚げを妨害するもので職場占拠事案ともいえる。本件は刑事事件でなく、久留米駅事件判決より前、可罰的違法性論が否定されていない段階の判例である。全港湾北海道地方本部指令の統一スト-昭和四〇年四月一七日、断続的或いは継続的にストライキを実施する旨通告していた。

 全港湾労組室蘭支部栗林分会は、五月五日午後一時から時限ストライキを行なって神加丸および瑞雲丸の荷役作業を中止し、両船にピケットを張る、との機関決定をなし、‥‥(第二組合の)栗林商会労働組合員が午後一時からの両船における荷役作業に従事する以前に、右両倉庫前海手エプロン上に分会員を集合させて、ピケットの配置につかせた。

 右一号倉庫前エプロン上(略)

 一一号倉庫前エプロン上においては、分会員約七〇名が、端雲丸と同倉庫の間(同倉庫と同船の接岸していた岸壁までの間隔は約一八メートル)に‥‥ピケットを張り、これを解かないかぎりは同船から右エプロン上に木材を荷揚げすることは不可能である状態を作出した。午後一時すぎ会社職制が栗労員により作業をするからピケットを解除するようにとの要求を受けたが、「地本の指令にもとづくものであり、ここを退去することはできない、荷役はさせない。」等と返事してこれを拒否した。そこで控訴会社側においては、右エプロン上での作業はとうてい不可能であると判断し、同船の海側から木材の艀取荷役作業をすることとし、栗労員約一〇名が同日午後二時三〇分頃艀によって海側から同船に乗船して荷揚げ作業を開始した。ところがこれを知った分会員のうち、約一〇名が同船に乗り込んできて、会社職制から再三下船するように要求されたにも拘らず、「栗労員が降りるなら我々も降りる」とか、「執行部から命令をうけているので下船できない」等と答え、同時頃から午後三時三〇分頃までにわたって、デッキや荷揚げすべき木材(アラスカ材)の上に坐り込む等の行動をとって、右作業を妨害し、結局控訴会社側に対しかかる方法による作業の続行をも断念させた。

 

「ピケット或いはこれに伴う職場占拠は、暴行、脅迫又は威力にわたらない平和的説得の限度においてのみ許容されるものであり、これを超えて右説得に応じない組合員以外の者。就業や使用者の操業を妨害するにいたるような程度、方法にわたることは、争議行為の正当な限界を逸脱し違法である。‥‥違法行為をなす目的で職場内に立入ることは正当な限度を逸脱するものである。

 本件では、会社側と栗労員はピケット解除を求めて待機し、平穏に一部作業を再開したが、分会はこれを拒否してピケットを継続し、木材に座り込むなどして作業を妨害し、職場を占拠した。このような行為は、平和的説得の範囲を逸脱し、不法な威力や有形力の行使として違法というべき。

  • バンク・オブ・インディア事件・東京地判昭421120労民18-6-1160

銀行の組合がストライキ決行と同時に店舗を全面的に占拠し、総支配人および副支配人の入行を阻止するとともに、非組合員および顧客の入行を阻止し、右店舗が所在する第三者所有の建物の外部にビラ類をはりつけたことは、いずれも争議手段として許される正当な範囲を逸脱したものである

 

  • 動労糸崎駅事件最決昭5141刑裁資料230-215 (広島高判昭48830判タ300-363広島地裁尾道支部・下級裁判所刑集10-2-19

マス・ピケ 運転室の占拠 威力業務妨害罪 公訴事実は「被告人は、動労岡山地本津山支部執行委員長であり、中央指令にもとづき、昭381213日、糸崎駅を拠点として実施した時間内職場集会などの闘争に際し、津山支部の組合員約60名を引率指揮してこれに参加したものであるが、同日午後720分糸崎駅発呉行651D列車(折り返し)の発進を阻止することを企て、午後719分頃同列車が同駅五番線に据付を終るや、右組合員らを引率指揮して同列車の前部運転室乗降口に集結させ、自らは同運転室に乗り込んで同室を占拠したうえ、午後736分頃から757分頃までの間前後三回にわたり、(当局から代務として召集、業務命令された)機関士Sらが同列車に乗務するため乗車しようとするや、右組合員および来援した他組合員ら合計百数十名に対し「スクラムを組め」と命じてスクラムを組ませ、同組合員らと共謀のうえ、その都度右Sらの進路に立塞がり「ワツシヨイ、ワツシヨイ」と掛声をかけるなどして気勢をあげつつ同人らを押し返し、あるいは運転室内部から乗降口の扉を閉めるなどして同機関士の乗車を阻止し、もつて威力を用いて国鉄の列車運行業務を妨害したものである。」午後757分頃に至って遂に鉄道公安官等が押し返し、運転室内の被告人を車外に排除して通路を確保し、S機関士を同列車に乗車させ、同列車は定刻より40分遅延して同日午後8時に同駅を発車した。

 一審は影響も重大ではなく、本件行為は正当な争議行為として無罪。  

 控訴審は、久留米駅事件方式に威力業務妨害罪の成立を認め、被告人を懲役四月執行猶予二年。刑法二三四条、二三三条、六条、一〇条。

 「‥‥案ずるに、労働組合法12項但書は、争議行為における一切の有形力の行使を「暴力の行使」として禁止する趣旨ではなく、当該有形力の行使がその目的、時期、場所、手段、影響等、当該行為の具体的状況に鑑み、争議行為として社会通念上許容される必要最小限度を超えた不法な実力的行動に該らないときは、右条項但書の所謂暴力には該当しないと解すべきであることは、正に原判決の判示するとおりである。そこで、組合の組織的集団行動としての本件合理化反対闘争に際して行なわれた刑法二三四条所定の構成要件に該当する有責行為であると原判決が認定した被告人の本件所為について原判示違法性阻却事由の有無を判断するに当つては、当該所為が争議行為に際して行なわれたものであるという事実をも含めて、叙上行為の具体的諸状況を考慮に容れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判定することとする。

 ‥‥被告人等が時間内職場集会を実施する旨の組合本部指令に基づき、S機関士に本件職場集会への参加を勧誘、説得する機会を作る必要上本件所為に出たものであるとしても‥‥本件職場集会の実施は組合の行なう一種の争議行為であるところ、公共企業体である国鉄の職員及び組合は、公共企業体等労働関係法171項により、一切の争議行為を禁止され、同条項に違反してなされた争議行為は、少なくとも労働法上は一般的に違法であり、違反者は同法18条により解雇の制裁を科せられ、争議行為に際してなされた行為が暴力の行使その他の不当性を伴なう場合には刑事法上においても違法性を阻却されないのであるから(昭和411026日最高裁判所大法廷判決)、被告人等がS機関士に本件職場集会への参加を勧誘、説得すること自体の違法性を指摘しなければならないが‥‥純然たる私企業と異なり、一切の争議行為が少なくとも労働法上一般的に違法とされている国鉄においては、組合は組合員に対する統制権の行使を理由として、斯る違法な争議行為に参加することを強制することは許されず、組合員は右職場集会実施の組合本部指令に服従すべき義務はなく、従って、これに参加を促がす勧誘、説得を受忍すべき義務もないのである

 況して原判示のごとく、S機関士は、予め本件闘争に備え本件の前日国鉄当局から代替乗務の業務命令を受けて糸崎駅に待機していた者であり、右業務指令が適法であること及び被告人にはS機関士が本件列車発進のため代替乗務員として同列車に乗車すべく同駅5番線ホームへ来たことの認識が有ったことは、いずれも原判決の認定するとおりであつて、斯様に既に国鉄当局の適法な業務命令を受けてこれに服従し、就労の意思を以て出務している者の場合においては叙上受忍義務のないことは一層明白であるから、同人に本件職場集会への参加を勧誘、説得するに当つては、その時期、場所、手段、影響等において尚更厳しい制約を受け、団結による示威の程度を超えた物理的な力を以て同人の就労を妨害したり、そのため国鉄の施設や車両を占拠する等して国鉄の正常な列車運行業務を妨害することは、その目的の是非に拘らず許されないものといわなければならない。

 発車した午後8時頃には、三両編成の定員合計240名の約7割に相当する百数十名の乗客が乗車していたことが認められ、しかも原判決認定のごとくS機関士は既に国鉄当局の適法な乗務命令を受けてこれに服従し、就労の意思をもつて出務し、被告人にもその事実の認識はあつたのであるから、斯る段階に立ち至ってなお同機関士に本件職場集会への参加を勧誘、説得しようと試みることは、徒らに同列車の発進を阻害するだけで、国鉄の輸送業務が帯びている高度の公共性と国鉄の職員及び組合の争議行為が少なくとも労働法上は一般的に違法とされていることとに鑑み、時期的に最早許されないものというべきである。

 およそ争議行為への参加を勧誘、説得するには、あくまで相手方に自由行動の余地を残し、相手方が説得に応ずればよし、若しこれに応じないで就労しようとする場合にはその就労場所への進路を開き、何等の妨害を受けることなく就労させなければならず、苟もその進路を塞いだり、就労場所を占拠したり等することは、説得のためのピケッティングの正当な限界を逸脱するものといわなければならないところ、‥‥被告人を含む組合員らが本件651D列車の乗務員に本件職場集会への参加を勧誘、説得しこれを確保するピケ隊要員として配置された場所は、既に本件列車が据え付けられた5番線ホームであり、S機関士が同列車に代替乗務すべく同ホーム陸橋階段下に到着した午後740分頃から午後755分頃組合員らが鉄道公安職員等により排除される迄約15分間引き続き同列車運転室乗降口付近に百数十名が同列車運転室に乗り込んでいた被告人の指揮下にスクラムを組んで同機関士の前進を阻止し、以て同機関士をして同列車運転室に乗り込むことはおろか、これに接近することさえもできない程に、その乗車、就労の自由を失わせたことが認められるから、被告人等の本件所為は場所的にも許容される限度を超えていたものといわなければならない。

 なおこの点につき原判決は、同列車運転室に立ち入ったのは被告人一名だけでそれも乗客説得の任務遂行のためであり、又被告人が同運転室内部から乗降口の扉を閉める等、運転室を占拠する行動に出た形跡は窺われない旨判示しているが、被告人自身同列車の所定乗務員ではないのに擅に同列車運転室に乗り込み、原判示のごとく同運転室内から、その乗降口付近にピケを張っていた百数十名の組合員を指揮してスクラムを組ませ、S機関士の乗車を阻止したものである以上、運転室に立ち入ったのは被告人一名だけであつたとか、被告人に乗客説得の任務も併せ存したとか運転室内部から乗降口の扉を閉めたとか閉めなかったとか等の事実は、前叙認定を左右するものではないと認める。

 そして、争議行為への参加を勧誘、説得するには、あくまで相手方が自由な意思決定に基づき自発的に参加する態度に出るのを待つべきであり、言論による説得又は団結による示威の域を超えた物理的な力によってその自由意思による就労を妨害し又は意思決定の自由を奪う程度の心理的抑圧によって不本意ながら就労を思い止まらせるような事態は厳にこれを慎まなければならないところ、‥‥被告人を含む組合員らがS機関士に本件職場集会への参加を勧誘、説得しこれを確保するために執った手段は、その行為の時期及び場所と相俟って、同機関士が代替乗務しようとする正当な就労行為を物理的な実力を行使して妨害したものに該当し、右説得の場を確保するピケッティングの手段として超えてはならない限度を逸脱していたことは明白であると認められる。

 ‥‥公共の福祉の維持、増進のため列車の正常且つ安全な運行に責任を有する国鉄当局が、S機関士を同列車に乗車させるため、本来の鉄道係員らの他多数の鉄道公安職員を出動させ、以て同機関士の擁護と本件列車運転室への進路の確保に当らせたことは、国鉄当局は争議中であってもなお業務遂行の自由を有し、況して組合側の説得行為に協力し、これを拱手傍観すべき義務を負うものではないこと並びに鉄道係員に対し、鉄道施設内において法規ないし秩序違反の行動に及んだ者を施設外に退去させ得る権限を認めた鉄道営業法四二条一項及び鉄道係員として、国鉄業務の円滑な遂行のため、その業務運営上の障害を除去するという警備的な職務を鉄道公安職員に認めた「鉄道公安職員基本規定」三条、五条、現「鉄道公安職員基本規程(管理規程)」二条、四条の各趣意に照らし、列車の運行業務を維持するための臨時の措置としていささかも違法の廉はなく、これを目して国鉄当局がかたくなに組合側の説得行動を拒否し、積極的にピケ破りのため実力行使一点張りに出たものと解した原判決の判断は失当といわざるを得ない(48425日最高裁判所大法廷判決[註-久留米駅事件]及び昭和3532日福岡高等裁判所判決、高刑集一三巻二号一四九頁以下[門司車掌区事件]各参照)。

 ‥‥、同列車は主として同駅周辺の工場労働者の準通勤列車で、右発車時当時においては三両編成の定員合計240名の約7割に相当する百数十名の乗客が乗車し、乗客中には同列車の発車遅延に苛立っていた者も可成の数あつた‥‥

 上告審は棄却。

  • 国鉄久保田駅事件・福岡高判昭51427刑裁月報8-4・5-212 (佐賀地判昭49330

マス・ピケ事犯 信号所の占拠 建造物侵入、公務執行妨害事件

 久保田駅とは、長崎本線と唐津線との分岐点で一日平均約140本にのぼる列車が通過する。一審は公労法17条1項に違反する職場集会への参加を勧誘、説得するため、組合員が駅信号所に立ち入った行為について、社会的相当行為として無罪を言い渡した。

 控訴審は、久留米駅事件方式により原判決破棄。

 国鉄当局は昭和40423日に職員へ闘争への不参加を局報などで呼びかけた。また、久保田駅では同駅構内および東西両て子扱所の立ち入り禁止を掲示し、担当助役が業務務命令書を手渡すなど、平常勤務の徹底を図った。

 ‥‥被告人ら四名は、いずれも管理者たる久保田駅長Kの禁止を無視して、被告人Uは430日午前220分ころ、被告人Iは同日午前三時三〇分ころ、同駅長管理にかかる同駅東て子扱所二階て子扱室に、被告人N、同Bは同日午前二時二〇分ころ同駅長管理にかかる同駅西て子扱所二階て子扱室にそれぞれ立ち入ったものであり、いずれも人の看守する建造物に看守者の意思に反して侵入したものといわざるをえない。

 ところで、最高裁判所昭和四八年四月二五日大法廷判決(註-久留米駅事件)は、「勤労者の組織的集団行動としての争議行為に際して行なわれた犯罪構成要件該当行為について、刑法上の違法性阻却事由の有無を判断するに当つては、その行為が争議行為に際して行なわれたものであるという事実を含めて、当該行為の具体的状況とその他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判断しなければならない」と述べている。したがつて、建造物侵入罪の構成要件に該当する被告人らの本件各て子扱室立入り行為の違法性についても、その行為の具体的状況、その他諸般の事情を考察して、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを検討して決めなければならない。‥‥被告人U、同N、同Bは、国労門司地方本部の決定した四月三〇日午前零時から正午までの間における勤務時間内三時間の時限ストを実行するため、て子扱所勤務者に勤務時間内職場集会への参加を呼びかける目的でそれぞれ東西両て子扱所に赴き二階て子扱室に立ち入ったものであるが、被告人Uは、D、М両助役、さらにはО総括助役から、被告人N、同Bは、K、N両助役からそれぞれ何回となく退去を要求されたにもかかわらずこれに応ぜず‥‥スト突入指令があるまで各て子扱室に居すわり、間もなくして到着した組合員らと共に在室の助役らを強制的に室外に排除したうえ、勤務者を連れ出しており、さらに、被告人らは、勤務時間内のストライキを実施するため、東西両て子扱室に立ち入り、退去要求に応じず助役らを強制的に排除した。これにより勤務員が職務を放棄し鉄道運行に影響を与える可能性があるにもかかわらず、被告人らは警告を無視して侵入を続けた。立入り行為は建造物への不法侵入にあたり、労働組合活動として正当化できるものではない。

  • 全林野川内営林署事件・東京高判昭61814労判481-27 (東京地判昭55・11・1訴務月報27-4-215

 庁舎内占拠 争議行為をあおり、そそのかし、実行したこと等を理由とする営林署職員らに対する公共企業体等労働関係法18条による解雇(4名)あるいは国家公務員法82条による停職(2か月2名、1か月1名)の懲戒処分が適法とされた事例

  一審抜粋要約

 昭和34620日開催された闘争委員会には、原告Kは書記長として、同KUは副委員長として、その余の原告らはいずれも闘争委員として参加し、組合員らの意向、川内分会のとるべき態度等について討議し、組合員の家族も闘争に参加させること、六月二一日総決起大会を開催すること、同月二二日から営林署本署庁舎内においてすわり込みを行うこと‥‥討議決定した。

 (六)六月二二日の行為

 同日午前820分頃、約30名の作業員がK地本委員とT川内分会執行委員らの指示により庁舎事務室内で机や椅子を壁際に移動し、座り込み用の空間を確保した。玄関前には天幕舎を設置したが、Y経理課長らが中止と原状回復を申し入れるも拒否され、「ばかやろう」と罵声もあった。その後組合員と家族約200名が庁舎内で座り込みを開始し、ビラを掲示。外では組合旗が掲げられ、天幕舎にも座り込みや闘争本部が設けられ、委員が指揮にあたった。

 すわり込みが始まると、H署長らは現場で川内分会執行委員長の原告KUに職場復帰について警告し、組合員が職場へ戻るよう指示した。また、庁舎内外の組合員にも職場復帰命令や庁舎からの退去を求めたが、組合員はこれに従わず、すわり込みを継続した。H署長の指示で業務命令書を掲示しようとしたところ、原告Kがこれを剥がして廃棄しようとした。S経営課長が取り返すと、原告Kら複数の組合員が課長を取り囲み、罵声を浴びせた。また、庁舎玄関付近に業務命令書を掲示した際も、原告KUら約20名が約10分間課長を取り囲み、「業務命令書を外せ」と脅迫した。

 ‥‥ 営林署本署における前示のようなすわり込みの状況が終日続いたため、同所に勤務する営林署管理者及び本件争議行為に参加しなかつた川内職員組合に所属する二七名の職員の登庁執務が不可能となったほか、右すわり込みにはほとんどの組合員らが各自の職場を放棄して参加したため、各作業現場、製品事業所、貯木場事務所等川内営林署のすべての職場の機能は完全に停止し、森林鉄道の運行も停止されるに至った。

(七)六月二三日の行為(略)

(八)六月二四日の行為(略)

(九)六月二五日の行為

 前日から庁舎内で座り込みをしていた約70名の組合員は、警察署長の警告を受け、刑事問題化を避けるため早朝に家族幕舎へ移動した。その後、組合員や家族約300名が引き続き座り込みを行い、管理者側は業務命令や退去・設備の原状回復などを求めたが、組合員らは応じなかった。説得の結果、一部は自主的に退去することになり、事務室の片付けと机・椅子の整頓が行われた。

その間原告Kはマイクで、「警官導入は不当である。」、「我々は退去するけれども断固として最後まで闘う。」などとアジ演説し、また労働歌の合唱指導をし、次いで原告KUが挨拶をした後自ら音頭をとつて組合員らに「川内分会万歳」などと唱和させ、その後午後一時ころから、原告Kの指示に従って組合員及びその家族らが営林署構外へ退去を開始し、午後二時ころ構内天幕舎の撤去とともに退去を完了した。しかし、組合員及びその家族らは、営林署の向いの民有地に新たに天幕舎を設置し、同所においてさらに引き続いてすわり込みを行い、闘争本部も隣接する民有車庫内に移された ‥‥

 また、貯木場事務所は、その一隔が組合事務所として川内分会に貸与されていたが、六月二二日以来、事務所内の至るところにビラが貼付され、屋根には組合旗が掲揚されるなど完全に組合員らの占拠するところとなり、その機能が停止していた。同月二五日午後三時ころ、H署長ら管理者が同事務所へ赴き、その場にいた組合員らに対し、業務命令を発出したが、組合員らはこれを無視し、さらに同月三〇日に至るまで占拠を継続した。

(二)本件争議行為の収拾について

中央本部は626日、川内分会などに対し、現在のすわり込みを中止して生産点へ戻り、今後は日給制を長期的に求めていくよう指令を出した。この指令は当日中にT副委員長から原告Kへ電話で伝えられ、629日、不満が残るものの、最終的にこの指令に従うこととなり、翌30日に当局と協議したうえですわり込みを中止し、団体交渉の再開などについて組合員全員に報告、解散した。622日以来続いたすわり込みはこれで終了した。

公労法第一八条の規定を適用した解雇処分についての判断。

 解雇の判断は、行為の内容や程度、本人の態度など諸事情を総合して決定され、社会的に著しく不当でない限り解雇は違法ではない。本件では、多数の組合員による長期間の職場占拠や機能停止、指揮や粗暴な行動など悪質性が高いため、解雇は裁量権の濫用にあたらず適法とされてよい。

‥‥争議行為が集団的組織的行動であることは原告ら主張のとおりであるとして、その集団性のゆえに争議行為参加者個人の行為としての面が当然失われるものではなく、公労法第一七条第一項違反の争議行為に参加し、服務上の規律に違反した者が、その責任を問われ、懲戒処分の対象とされることを免れないのは当然のことであり(最高裁判所昭和五三年七月一八日第三小法廷判決・民集三二巻五号一〇三〇頁参照-註全逓東北地本事件)、国有林野事業に従事する職員が公労法第一七条第一項違反の争議行為を行った場合には、国公法第九八条第一項、同法第九九条、同法第一〇一条第一項の規定に違反することとなるから、結局同法第八二条第一号に該当することとなり、さらに、行為の態様によっては、同条第三号にも該当する場合があるというべき‥‥

控訴審棄却

 現業公務員の争議行為及び右争議行為をそそのかし、若しくはあおる行為は公労法一七条一項によって禁止されており、右のそそのかし、若しくはあおる行為は、それ自体がたとえ思想の表現たる一面をもつとしても、右条項が憲法二一条に違反しないことは、最高裁判所の判例(最高裁判所昭和四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻四号五四七頁)の趣旨に照らし明らかであるところ、控訴人K、同KU、同ОE、同ОМのデモ行進の指導行為は、単純なデモ行進の指導ではなく、坐込み等の争議行為を開始し継続する目的で、争議行為開始直前又は継続中に行われたものであり、組合員らに対し、その実行、継続を決意させ、又はその決意を助長する勢いのある刺戟を与えるものであるから‥‥のデモ行進指導行為が本件争議の具体的状況のもとにおいては公労法一七条一項で禁止されたそそのかし、あおり行為に該当するというべきであって、かかる行為を問責することは何ら違法ではなく、また、違憲でもない。

 控訴人らは、H署長に対する面会要求行為は、何ら業務の正常な運営を妨げるものではなく、憲法二八条によって保障された団体行動権の範囲のものであると主張する。

 しかし、H署長らは、坐込みの対策を検討していたもので、業務の遂行にあたっていたのであり、事前の連絡もなく多人数の者が面会を強く要求することは業務を妨害するものというべきであり、その態様も六月二二日午前一一時ごろ、同月二三日午後二時ごろ、同月二四日午前一〇時ごろ、同日午前一一時ごろから、それぞれ約三〇分間に及んでおり、公労法一七条一項で禁止された業務阻害行為に該当するものである

163処分 

新宿営業所の態様は威力業務妨害罪の犯罪構成要件該当行為なので、スト実践指導者の懲戒処分は加重されてしかるべき。刑事処分も視野にいれる。検討する。

2 組合中執及び本部委員のオルグ演説-不許可・退去命令

組合中執、本部委員、他の事業所勤務のスト批准投票の呼び掛け、闘争課題とその経緯を説明し組合員の意思統一を目的として、闘争戦術の説明、指令による職場離脱動員集会、三六協定拒否闘争に伴う定時退庁指令、ストライキ配置の日程などの演説であり、勤務時間中になされる(但し昼休み集会のケースもあり)、スト権投票より前の時もあるし、ストを構え闘争期間中もある。演説それ自体が、地公労法111項後段違反行為である。3割動員は当局も違法行為と認めている以上違法行為の教唆指導ともいえる。

従来管理職は、直前の役員の申し出により許諾ないし黙認しており、違法行為を著しく助長している実態にある。平成26年入札妨害事件で水運用センターОBが元職場に自由に出入りし配水管工事の最低制限価格という機密情報を入手していた問題の再発防止策として事務室は関係者以外無断立入禁止として、入室する部外者は、入口に備え付けの来室者名簿に記入することとしているが、しかし組合活動で立入る他事業所勤務や専従の組合役員は記入することはないしフリーパスであることに変わりない。

東京都においては「そそのかし」「あおり」を懲戒事由とすることはないし、管理職は地公労法111項後段を違法と認識していないように思える。昭和48年と昭和51年に判例変更された昭和44年判決の「争議行為通常随伴行為不罰論」に沿った、脱法的な労務管理をしているのは著しく不適切である。

21新方針

違法行為を抑止し、職場環境を適正良好に保持し規律ある業務の運営態勢を確保するため、執務室内勤務時間中になされる組合中執等のオルグ演説は不許可とし、中止・退去命令及び、現認検書の上申を義務づけ・監視対象とする。中止命令に従わず、実際にストが実行された場合、懲戒処分事由に加える。オルグ演説で中執を紹介して司会し、挨拶や闘争の日程を示す支部・分会役員は、職務離脱時間は賃金カットの対象とし、抗議で暴言、暴行を働いた場合は処分の量定を過重する。刑事事件にはしないとしても犯罪を成立させるべく、管理者の許容しない意思を明確に示すことを義務づける。

22根拠

○違法行為-演説そのものが、地公労法111項後段で禁止する「そそのかし」「あおり」に当たり、18条解雇、懲戒処分事由となる行為である。地公法291号、32条の適条による服務規律違反。

○職場の秩序を乱す行為-勤務時間中、事務室内で、囚われの聴衆の状況で演説がなされ職員の職務専念を妨害である。昼休みの場合でも、休憩時間をずらして勤務している職員もいるので同じことである。企業秩序をみだすおそれのある行為は、判例法や庁舎管理権により規則に依拠して規制する。

○新しい就業規則違反-それゆえ以下の規則を新設する

1 職員は、許可なく、局所施設内で、業務外の集会、演説、放送、示威行為又はこれらに類する行為を行ってはならない。

2 職員は、局が許可した場合のほか、勤務時間中に又は局所施設内で、組合活動を行ってはならない

3 職員は、職場において、他の職員の職務遂行を妨げ、もしくは職務専念を妨げる行為をしてはならない

○行政財産の目的外使用なので(地方自治法238条の47項)、不許可にできる

○管理者が許容しない意思を明確にすれば犯罪が成立する-住居侵入罪、退去命令に従わない場合の不退去罪の犯罪構成要件該当行為

 

23 処分

 ストライキが決行された場合は懲戒処分事由とする。抗議のため暴言暴行があった場合は量定を加重する。

24水道局におけるオルグ演説の実例

令和4年の杉並営業所の例(スト批准投票の前)

10月25日朝 83343分 所長が支部役員の〇〇と朝長い話、そのあと中執の〇〇が到着。833分より〇〇オルグ演説、内容は、111日スト権一票投票を告知、まず人事委員会勧告はコロナ渦と物価高で不当だなどと都労連闘争の課題を説明、局内闘争については、砧浄水場と長澤浄水場の業務移転、夜間待機が7か所から2か所にして緊急隊の業務とするのは無茶苦茶で容認できない。また営業所のTS(株式会社東京水道)業務移転も提案される可能性がある。局は全営業所移転を計画しており、警戒が必要。TS‥‥‥最後にスト権投票は高率の批准をとぶちあげて終了。そのあと司会の〇〇が、棄権が絶対ないように、当日休暇をとる人は不在者投票を受付るといったことを伝達し、終了。

 

令和5年の例(闘争期間中)

11月28日 午前83044分、支部役員の〇〇と中執の〇〇が〇〇所長に挨拶、〇〇がそこでやると指差し、〇〇所長は許諾。司会の〇〇が中執の〇〇を紹介し、〇〇が13分間演説。局内闘争の課題、墨田荒川営業所の業務移転に伴う定員削減と、他の営業所の派遣割合の削減、目黒営業所の過員を暫定とするなどの重要な闘争になると説明‥‥‥徴収サイクルの見直しによる業務繁忙の改善に不満があり121日の拡大窓口では交渉打ち切りも辞さずという意気込みで臨むなどとし、1221日にストを構え、8日の支所集会、19日のふれあいモールでの勤務時間内3割動員決起集会の告知と、19日より3日間の三六協定破棄闘争は、局に24時間態勢で業務を行うのに組合の協力がいかに必要かを自覚させるためのものと争議行為意思を表明。闘争への協力をよびかけ。最後に〇〇が125日の昼休み集会と、19日の賃金カットの動員決起集会の呼びかけなどがあり終了。

 

 平成26年の中野営業所の本部委員による業務移転非協力闘争・人事係退職派遣説明会抗議集会と説明会拒否のオルグ、説明会のピケによる妨害

2月5日勤務時間中9時25分より32分まで10時より中野営業所2階会議室で予定されている職員部の退職派遣事務説明会(一時的に民間企業に派遣されるが公務員の身分に戻る制度)抗議集会があり、まず事務室の中央で分会役員の司会でこれから抗議集会をやると宣言、本部委員の〇〇〇〇が5分ほど演説、本日の説明会には出ないよう指図、説明会は12人ほど出ている人がいたが、組合が期間で説明会には出席しないを徹底してから、西部では1人、もうひとつの会場では事務系でない2人の参加にとどまっている。退職派遣には希望しないことを徹底することで、当局を交渉に引きずり込むと言明。その後2分ほど分会役員が演説し、すでに全組合員と個別に面談し派遣に手をあげないことになっている。非協力闘争を呼びかけた。

 その後本部委員〇〇〇〇は、会場の近くの廊下でビラをもって待機、ピケを張り、職員部の業務を妨害した。

(この闘争は中野営業所の監理団体業務移転(当時PUC)の徹底抗戦で業務移転を延期させる目的の争議行為であるが、当局は争議行為と認定していない。本部委員とは本部中央闘争委員の下の活動家の役職で、東京都ではストライキが決行された場合懲戒処分は本部中央闘争委員に限定しているため、処分のおそれが全くなくオルグ、違法行為が可能な役職ともいえる)

 

25取締りの根拠となる主な判例

3)国鉄職員でも不法行為目的の鉄道地内立入は拒否できる

  • 門司車掌区3割休暇事件・福岡高判昭3532判時22110頁(福岡地裁小倉支部昭33820高裁刑集13-2-10)公務執行妨害罪 マス・ピケ。鉄道職員といえども、その職務とは全く関係なく、しかも不法な目的で、鉄道地内等に立入り、その他鉄道営業法42条違反の行為があった場合は、排除すべき必要のあることは、一般旅客公衆と何等異なることはなく、鉄道職員の身分を有する者も一般の「旅客公衆」に当ると解するのが相当であるので、鉄道公安職員が被告人らを退去させようとした行為は適法な公務の執行である(TKCの要旨)。
  • 国鉄久留米駅事件差戻後控訴審・福岡高判昭521025判時884116 

(差戻判決 最大判昭48425刑集27-3-419

建造物侵入 公務執行妨害 (マス・ピケ事犯)

被告人YО国労門司地本長崎支部肥前山口分会委員長とU国労門司地本執行委員は懲役三月執行猶予二年とする。YA国労長崎支部長崎分会委員長は棄却。鉄道公安職員にバケツで水を浴びせた公務執行妨害は事実誤認、無罪としたが、一審の懲役二月執行猶予二年の量定不当の論旨を棄却。

国労門司地方本部は同組合の特別執行委員会の指令に基づき、年度末手当に関する要求実現のため、昭和三七年三月二八日指令職場(八幡駅及び久留米駅)において、同月三一日勤務時間内二時間の職場大会を実施することにし「三月二九日門司鉄道管理局長において、闘争に参加しないよう警告を局報に掲載し‥‥久留米駅においても同月二九日午前中に駅長が列車運行上重要な施設である東、西て子扱所二階の信号所に係員以外の者の入室を禁ずる旨の掲示をするなどの対策を講じたが、組合員らはかかる警告等を無視し、YОは同月三〇日午後六時三〇分頃から多数の組合員らとともに国鉄久留米駅東て子扱所二階の信号所に通ずる階段に立ち並んでピケットの配置についたところ、鉄道公安職員による実力行使が予測されたので、右信号所に立ち入り、YAは同月三〇日午後四時頃、右信号所の勤務者(三名)に対し翌三一日の勤務時間内職場集会に参加することを勧誘等する目的をもつて、右信号所に立ち入り、被告人Uは翌三一日午前零時頃東て子扱所に赴き、組合員らに対してピケットの強化を図るためその配置などについて指導したのち、二階信号所の組合員らに情勢を説明等する目的で、同所に立ち入った‥‥ 差戻判決は、被告人三名の信号所に対する各立ち入り行為はいずれも住居侵入罪の構成要件に該当するものであり、右の争議行為に際して行なわれたものであるという事実を含め当該行為の具体的状況その他諸般の事情を参酌してみても、各所為が刑法上の違法性を欠くものでないことは明らかであるというのであつて、事実関係を同じくする限り、当裁判所も差戻判決が右に示した法律上の見解と判断に同調するものである。(公務執行妨害罪については略す)

 

4)郵政省は全逓のオルグの入局、入室の阻止を行っていた。不当労働行為とはされない

  • 盛岡・大船渡郵便局事件・東京地判昭50318訟務月報21-5-1055 

郵政職員である原告(花巻郵便局貯金課勤務郵政事務官)の行った無断入局・入室、庁内デモの指揮、話合い強要、暴力的振る舞い等の各行為が国家公務員法99条に違反し、同法82条1号、3号に該当するとされ、懲戒免職処分を適法とする。

原告は、昭和三八年一二月「一〇日午前八時すぎ(盛岡郵便局)集配課事務室に無断入室して集配課所属の外勤職員に向かつて何か声をかけていたところ、これを発見した同局庶務課長が原告に対して二、三度退去命令を発したが、これに従わないばかりか、室内にあつた補助椅子の上にあがって「集配課の皆さん」と右職員らに呼びかけ、演説口調で中央の情勢報告を始め、その際同課長が「勤務時間中だ。作業の邪魔になるから出て行って下さい。」と原告に命じたがこれを無視し、「庶務課長がここえ来て何かぶつぶつ言っている…………」といいつつなお右報告を続け、そこで同課長が文書をもつて退去を命じたが、これに対して「管理者はこのようなことをして俺たちの行動を妨害するんだ。闘争はますます長くなるけれどもがんばって下さい。」などといつていわゆる報告演説を午前八時二〇分頃までかかつて続行し、ようやく同四六分頃にいたつて出て行ったが、その間右のようにして同局における業務の執行を妨害した。

 原告は、一二日午前八時三〇分頃貯金課事務室に無断入室し、その際貯金課長が原告に退去を命じたが、これに従わず、同課長席のそばにある応接椅子に腰を掛け、同課長に対し「きのうの朝、窓口事務室で、大きな声で俺に退去を命じたことについて謝罪しろ」と申し向けて抗議をし、やがて同課職員E、K、Hらが自席を離れて同課長に対し「窓口の欠務がある。その補充をどうするんだ。課長、お前出ろ。」といい、これに対して同課長が「そのことについては、あとで命令するから、今は勤務時間中でもあるし、あなた方は、自分の席へ戻って仕事をしなさい。」と就労を命じたところ、その就労を肯んじない右Eらと一緒になって、同課長に抗議を続け、ついに庶務課長が文書による退去命令を読みあげてこれを原告に手渡そうとするや、これを受け取ることを拒み、さらに労務連絡官から退去をうながされたのにも強く反撥したりして、午前九時すこしすぎまでの間同局における業務の執行を妨害した。

 ‥‥闘争では盛岡郵便局に在籍する支部役員、分会役員を構成員とする闘争委員会が盛岡郵便局における闘争を統括し指導した。そこで、当局は、同年一二月九日仙台郵政局から数名の職員を盛岡郵便局に臨局させ、全逓のいわゆるオルグの入局、入室の阻止等に努めた

 ‥‥原告は、盛岡郵便局において、職員の勤務時間中であるにもかかわらず、その禁を破ってあえて庁舎内事務室等に立ち入った上、勤務に従事している同局職員に対し、いわゆるオルグ活動として、随所に発言し、組合員たる職員に対しては中央の労働状勢を報告し、その士気を鼓舞、激励して闘争意欲を高揚させることなどの闘争活動を執拗、強力かつ活発に展開した。

 これに対し、当局は、一方右闘争によって生ずる郵便業務の乱れに対処し、業務の正常運営を確保するため、業務を指導し局長の相談相手となり、その職務の遂行を補助すべく、仙台郵政局から係官を派遣し、右係官と盛岡郵便局の管理者において、職員の勤務状況を把握するため、随時事務室に立ち入って巡回するとともに、原告の事務室内への立入りを禁止し、これに従わないで事務室に立ち入った場合は、すかさずその退去を命ずる‥‥

 このように郵政では業務の正常運営が第一義の労務管理であるが、東京都はそうでない。

 

5)郵政省において職場放棄の慫慂目的の立入は建造物侵入罪が成立する

  • 全逓名古屋中郵事件・最大判昭5254刑集31-3-182(〇名古屋高判昭441029●名古屋地判昭39220

 郵便法79条1項違反幇助、建造物侵入 一審有罪、被告人4名罰金一万円。二審無罪。上告審原判決破棄。

被告人は全逓中央執行委員、全逓愛知地本執行委員長、執行委員2名。昭和33317日中闘指令第三七号が発せられ、20日午前830分より2時間の勤務時間内職場大会実施が指令され、他方管理者側も同月18日頃から、名古屋中央郵便局長名義で、時間内職場大会参加が郵便法七九条に違反するとの理由で、参加者は刑事処分を受けるおそれがある旨の警告文を同局正面玄関に掲示し、同月一九日には同局正面玄関及び北門入口に立入禁止のビラを貼付するなどして、組合員の職場大会参加を阻止しようとした。

第一、被告人四名は、K、N、Nらと共謀し、昭和三三年三月二〇日午前545分頃、名古屋中央郵便局東側地下第一食堂で、М9名が、それぞれ集配課外務員としての職場を放棄して、全逓名古屋中郵支部の時間内職場大会に参加し‥‥郵便物の配達をしなかった際、被告人Uが「東京中央郵便局でも午前二時職場大会に参加したから皆さんもすぐ職場大会に参加して下さい」「東京中央局では只今脱出に成功したという電話があつたから皆さんも職大に行つて下さい」「組合が責任を持つから出て行って下さい」などと、右Мらに申し向け、被告人Kも同人らに対し「東京中郵でも職場大会が行われて参加しているから職大に出て欲しい」旨を申し向け、被告人I及び同S「出て下さい」「出て下さい」などと申し向け、右Мらの右郵便の不取扱いをいずれも容易にして、もつて、これらを幇助第二、一、被告人四名は‥‥同局東側地下第一食堂へ‥‥被告人U、同K、同Iは同局正面玄関口から、被告人Sは同局北通用門入口からそれぞれ故なく侵入し

二、被告人U、同K、同Iは右同日午前七時三〇分ごろ、宿直勤務者で未だ職場大会に参加していない者を参加させる任務を帯びた約20名の組合員の指導者となって、同局作業棟三階普通郵便課続いて同二階小包郵便課作業室に、同局正面玄関口から故なく侵入したものである。

建造物侵入罪の上告審の判断

本件、建造物侵入は争議行為そのものでなく、久留米駅事件方式と同じく意識的に区別し、争議行為に付随する行為という範疇になる。

「公労法一七条一項に違反する争議行為が刑法その他の罰則の構成要件に該当する場合には、労組法一条二項(刑事免責)の適用はなく、他の特段の違法性阻却事由が存在しない限り、刑事法上これを違法と評価すべきものであるが、そのことと、右の争議行為に際しこれに付随して行われた犯罪構成要件該当行為についての違法性阻却事由の有無の判断とは、区別をしなければならない。すなわち、このような付随的な行為は、直接公労法一七条一項に違反するものではないから、その違法性阻却事由の有無の判断は、争議行為そのものについての違法性阻却事由の有無の判断とは別に行うべきであって、これを判断するにあたっては、その行為が同条項違反の争議行為に際し付随して行われたものであるという事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを考察しなければならないのである。

 これを本件における建造物侵入の行為についてみると、被告人らは、公労法一七条一項に違反する争議行為への参加を呼びかけるため、すなわち、それ自体同条項に違反するあおり行為を行うため、立入りを禁止された建造物にあえて立ち入ったものであつて、その目的も、手段も、共に違法というほかないのであるから、右の行為は、結局、法秩序全体の見地からみて許容される余地のないものと解さざるをえない。」

 

6)郵便局舎に夜間に立入りビラを貼る行為は分会長の宿直が許可しても建造物侵入罪が成立する

  • 仙台高判昭6123判時1194-150 全逓釜石支部(大槌郵便局)事件差戻後控訴審

(差戻判決最判昭5848刑集37-3-215 建造物侵入罪 被告人両名罰金八〇〇〇円

 被告人K(全逓釜石支部書記長)、同S(全逓釜石支部青年部長)の両名は、七三年春闘に際し、組合員Sほか五名と共謀のうえ、昭和四八年四月一八日午後九時三〇分ころ、岩手県上閉伊郡大槌郵便局局舎内に、同組合の情宣活動の一環として、管理権者たる同局長Nの許諾を得ないで、「大巾賃上げ」「スト権奪還」などと記載されたビラ多数を貼付する目的で、同局長の意思に反して土足のまま立ち入り、それぞれ人の看守する建造物に故なく侵入したものである。

  刑法一三〇条前段にいう「侵入シ」とは、他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいうと解すべきである。そして、管理権者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、該建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的、動機、経緯、態様等からみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、他に犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上、同条の罪の成立は免れないと判示している。

 

7)争議権のある私企業でも就業規則や労働協約を整備すれば端的に施設管理権侵害というだけで経営内の行動は規制できる

 

  • JR東海・鳥飼車両基地事件・大阪地判平10331労判742-44 

本件2名JR東海労新幹線地方本部大阪第三車両所分会書記長と副委員長の解雇処分は、会社の許可なく会社施設内に侵入・滞留して会社の施設管理権を侵害し、暴行暴言をなし、管理者に傷害を与え、器物を損壊等し、もって職場秩序を著しく紊乱しており、債務者の懲戒事由に該当し、債権者らは、それに応じた懲戒処分を受けざるを得ず、社会通念上合理性を欠くとはいえず、懲戒権の濫用があったとはいえないと判示する。

 争議権のある私企業でも、労働協約で争議行為中の構内立入禁止、就業規則で無許可会社施設内組合活動が禁止されている場合、違反行為は施設管理権侵害となり、懲戒事由となることを示している。

 

4)福岡中央郵便局長が、春闘総決起集会のため構内に立入る約300名の入構を阻止する措置をとったことは適法かつ正当である

  • 公務執行妨害事件・福岡地判昭50226刑裁月報72116 

被告人 全逓福岡中央支部書記長(事件当時)のち支部長 懲役六月 執行猶予二年

福岡中央郵便局長が、春闘に際し全逓福岡地区本部青年婦人部のデモ隊300名の解散集会が中央郵便局中庭で行われることを予期し、構内に立ち入ることを阻止する措置をとったことは適法で正当としたうえで、デモ隊先頭の宣伝車運転手に向かって入構禁止を叫んだ郵便局次長への暴行であるの第一の犯行については公務執行妨害罪を認めるが、第二の犯行、組合員2名の年休申請不承認をめぐる集団抗議の解散退去命令の発付はその権限を濫用してなされ無効なので公務執行妨害罪の構成要素を欠き、暴行罪の成立を認める。

(第一の犯行に至る経過)

 昭和四四年四月一〇日夕方、全逓福岡地区本部青年婦人部が春闘の一環として福岡市荒戸町の福岡地方簡易保険局前において春斗総決起集会を開き、引き続いて天神四丁目の福岡中央郵便局まで集団示威行進を行うこととなった。これに対し、福岡中央郵便局長Nは、参加者らが許可なく郵便局構内に集団で立入り集会等を行うことを予期し、庁舎管理権に基いてこれを防止する措置をとることとし、同日、「庁舎および敷地内の集会やデモは、許可しておりませんので、直ちに、解散して退去して下さい。」と記載した立看板を郵便局通用門付近に置き、また、郵便局次長Kはじめ各課長らに示威行進の参加者らの同郵便局構内への立入りの制止、現に立入って集会など開いた者への解散退去命令の発付などを指示し、具体的状況に応じて必要な措置をとる権限を与えた。組合側は、同日午後五時半ごろから全逓組合員ら三〇〇名位が福岡地方簡易保険局前に集って予定どおり集会を行い、引き続いて集団示威行進に移ったが、立入りの制止等の措置にあたることとなった郵便局次長Kら同郵便局管理職員二〇数名は、情報を受けて警戒体制に入り、同日午後七時過ぎ、4.8mの通用門の内側に境界柵と平行の一列横隊を作って立ち並び、同所の通行を一時的に遮断する措置をとったが、開閉する引戸は開いたままだった。

被告人は、仲間ら二〇数名とともに通用門に駈けつけ、K郵便局次長の作る横隊の中央部にくさびを打ち込むような形でこれを右中庭奥の方へ押し始め、このため管理職側が後退して二つに分断されたのち、その内側に二列縦隊を作ってこれと相対峙し、管理職員が通用門に近づくのを阻止するため半円形の逆ピケッティングを張った。

(第一の犯行)

午後七時一五分過ぎごろ、全逓組合員ら三〇〇名位の隊列がニュースカーを先頭にして右通用門にやって来て、ニュースカーが通用門から中央郵便局中庭にその車体を乗り入れるや示威行進参加者らの同郵便局構内への立入りの制止、現に立入った者に対する退去命令の発付等の職務に従事していたK郵便局次長が組合側の逆ピケッティングの間を走り抜けてニュースカーの直前に立ち、両手を広げてその進行を制止する姿勢をとるとともに大声で入構を禁止する旨運転手に向って叫ぶに至ったため、被告人は、次長Kに対し、右斜め側面からその体に強く一回体当りし、よろめいたものの立ち直って再び前進行を制止しようとした同人の右側面から再度その体に一回体当りする暴行を加え、もって同人の職務の執行を妨害した。

(第一の事実について)

弁護人は、福岡中央郵便局構内において解散集会を行うことは、正当かつ必要な組合活動であったのであるから、構内立入りを禁止したことは組合の団結権に対する侵害であり、公務執行妨害罪は成立しない旨主張する。

‥‥三〇〇名位の多数が‥‥デモ隊列のまま同郵便局中庭に入って集会をしようとしたものであり、一方、組合側で右解散集会を開くについて庁舎管理者に許可の申請すら行っていないこと、本件時刻は午後七時過ぎごろとはいえ、当時同郵便局内においては他の職員らによって速達業務その他の業務がなお行われていたこと、また同郵便局中庭は昼夜を問わず郵便物逓送用の自動車がひんぱんに出入りする場所であることなどが認められるから、同郵便局局長Nが庁舎管理権に基ずき右庁舎管理規程による全逓組合員らの構内立入り禁止の措置をとったことは、もとより適法かつ正当である。したがって、K次長がN局長の命を受けてした示威行進参加者らの構内立入りの制止等の行為が公務員の適法な職務執行であることはもはや議論の余地なく明らかであり、さらに被告人の第一の暴行行為が右職務の執行の妨害となることもいうまでもないから、本件において公務執行妨害罪の成立が認められるのは当然である。

 

6 闘争指令下の本庁・支所・合理化拠点の動員決起集会-不許可・解散命令

 これは大衆行動と称する戦術で、ストライキ配置以前からなされるが、ここでは闘争指令下でストライキ参加意思を鼓舞し、その闘争意思を堅固にするための目的で開催される決起集会にしぼる。大抵の場合勤務時間中午後に行われる。

当局は2割動員については有給休暇、時間休をとって参加を認め、3割動員は年間34回はあり、大きな闘争のあるときは回数が多くなるが、当局は争議行為そのものと認定し賃金カットする。賃金カット分は組合が闘争資金から補償しているが、もともと組合費として払った金額の一部が戻るだけである。

 内容は昼休み集会と同じ形式と考えられる。基調報告、交渉経過報告、組合員代表決意表明、決議文朗読、採択、鯨波、頑張ろう三唱でしめくくる。平成1213年ごろの千代田営業所では庁内デモ行進も引き続いて行われた。

… 支所集会の場所は、私が知る限り、東一支所(平成初期)が、正面玄関前ロータリー、中央支所(平成中期)は裏手の来客用駐車場、西部支所(近年)は半地下業務用駐車場奥ターンテーブル付近。

 近年私自身が目撃した、支所・合理化拠点集会(2割動員のケース)

西部支所(西部建設事務所や杉並営業所等も同居の和泉庁舎)では令和4年は12月13日午後4時40分頃まで業務用半地下駐車場ターンテーブル周辺で集会があり、20名程が参加し、机を持ち込み演壇として、組合旗やビラ貼りがある状況で、経営プラン云々という最後の部分の演説と、団結用意の掛け声があって頑張ろう三唱の締めくくりの部分を現認した。

令和6年12月6日午後3時30分からの2割動員決起集会は、やはり業務用半地下駐車場ターンテーブル周辺で集会があり、50名程が参加し、机を演壇として、組合旗2つとビラ貼りがある状況でなされてい

東一支所や中央支所のケースではおびただしい数のビラ貼り、立て看板設置、組合旗多数の掲出がみられる。本庁前の集会を監視したことはないが、宣伝車が乗り込み、幟や組合旗が多数みられる。集会参加者は鉢巻きやゼッケンなど着用する。

 来客用や業務用の駐車場を占拠してなされることはそれ自体、業務運営を阻害しているともいいうる。

本庁の集会は以前第二本庁者と新宿NSビルとの間にある半地下空間だった。都庁やNSビルの通行妨害になる形で行われ、ホームレスが雨宿りする処でもある(右写真は平成243231741分都労連退庁時間後の決起集会)。組合集会が特権的に許されていたが、現在はふれあいモールに移動している、移動の経緯は不明である。

平成16年の業務手当闘争では第二本庁者になだれ込み、庁舎内デモや庁舎内座りこみも行われた。監視や警備する管理職も見当たらず無防備であった。たまたま交換便業務で本庁に出張したさい目撃した。現在はテロ対策等でセキュリティゲートもできたため庁舎内を練り歩くことは困難と思われる。

なお、ふれあいモールは公開空地だが、本庁舎の敷地内であるから、東京都主催のイベントで使用されるかもしれないが、政治・市民団体等の街宣や抗議集会は道路占用許可をとって公道上でなされるのであって、ここを使用されることはなく排除されているはずで、労働組合、職員団体が特権的に利用している場所といいうるのである。

平成16317日公営企業委員会で次のようなやりとりがあった。

〇後藤委員 ‥‥この写真なんですけれども、38日、これも同じく練馬の北部支所なんですけれども、集会を組合の方たちがやっています。これは水道局の方から確認をとったんですけれども、この集会に関しては事前に届け出があったのかどうか。

○東岡職員部長 北部支所では、38日、お客さまセンター設立反対等と称しまして、営配営業、配水という意味ですけれども、営配庁舎合同集会が本部指令に基づいて行われました。これは1715分から1815分ということで、勤務時間外で約90名が参加して駐車場で行いました。事前の許可手続はとっておりませんでした。

今後は、各事業所に対しまして、集会などを持つ場合には、事前に庁舎管理規程に基づく許可申請を行って、了解をとった上で実施するよう指導を徹底していきます。39日に、庁舎管理の徹底についてということで周知徹底を図ったところです。

 90人集まったということだが、定時退庁時間にピケを張って、強引に職員を集会参加に引き込む闘争だったのか私はよく知らない。定時退庁時間後の集会は珍しいケースといえる。

東岡職員部長は、今後許可申請を出させるようにすると都議の質問をかわしている。組合は受忍義務があるとして組合が集会の許可申請など出すはずはないし、私は日常的な組合活動についての便宜供与を否定しないが、組合が庁舎管理規程にもとづく申請をするという例を知らない。管理職は黙認し監視も指示されてない。

問題は手続ではなく、春闘の闘争期間の集会であり、集会の内容が地公労法で違法な「あおり」「そそのかし」そのものであり、ストライキ参加の意思を統一し、志気を鼓舞するものである以上、許可申請を出す出さないにかかわらず、不許可、中止・退去命令すべきなのである。

行政財産の目的外使用不許可の裁量処分(地方自治法238条の47項)という観点でも不許可ができる。

61 新方針

勤務時間内外いかんにかかわらず庁舎構内は不許可。中止・退去命令を徹底する。3割動員は職場復帰命令をする。現認・監視対象とし演説者等記録する。国の官庁と同じく、組合がストライキを配置し、闘争態勢をとった時点で、庁舎構内の組合活動の便宜供与はいっさい行わない。その際、スト対策本部の非組合員を動員して監視、写真撮影、録音などにあたらせてよいものとする。

今後、このような集会は労働組合が自己の負担及び利益において開催するものとする。庁舎管理権の及ばない、公園や集会施設の開催も監視の対象としつつも中止命令まではしないが、三割動員やスト集会の場合は職場復帰命令をしてもよいだろう。道路専用許可をとったうえでの街宣デモ行進は、他の市民団体、政治団体と同じ条件なので当局は関与しない。

62 新方針の根拠

 2割動員集会については、演説者について地公労法111項の後段違反(「そそのかし」「あおり」)

 3割動員集会については参加者全員が、地公労法111項が禁止する争議行為、演説者については111項後段違反。地公法291号、3号、32条、33条、3割動員については292号、35条適条の服務規律違反。

 庁内管理規程第五条9号、10号、11号、13号

1)違法行為 当局は3割動員を争議行為として認定している。たぶん、佐教組事件.最判昭46.3.23刑集2521103.3.4割休暇闘争を争議行為としているためと推定している。これは地公労法111項の前段の違法行為である。

しかし、同条項後段の違法行為でもある。争議行為として認定していない2割動員集会を含め、地公労法111項後段に違反する「唆し」「あおり」そのものであり、ストライキに向けて士気を昂揚、鼓舞し、組合員の意思統一を図るべくなされるものであるから、国の官庁と同じく、組合がストライキを配置し、闘争態勢をとった時点で、庁舎構内の組合活動の便宜供与はいっさいやらないのが筋。許可すれば当局が違法行為を助長したことになるからである。これは公物たる庁舎の存立を維持し公務の円滑な遂行を図るため、その庁舎につき合理的・合目的的な秩序を定立し、公務員その他の者に対してこれに服することを求めうべく、その物的施設を許諾された目的外使用を規制する権限(庁舎管理権)にもとづいて、端的に地公労法1111項後段違反の行為がなされるおそれのある行為を不許可、中止・解散・退去命令を行う。

2)地方自治法238条の47項の行政財産の目的外使用により不許可が妥当な事案。

3)建造物侵入罪

支所集会には他の事業所の水道局の組合役員、組合員、下水道局の組合員も動員されるが、このうち演説や鯨波の音頭取りをする組合役員については地公労法111項後段の違反が明白であるから、建造物侵入罪や不退去罪を成立させるよう、管理者の管理意思を明確にし、中止命令、監視を行う。

名古屋中郵判決の判断枠組により犯罪は成立すると考える。全逓名古屋中郵(第二)事件・最二小判昭53.3.3刑集32297香城敏麿判解は、名古屋中郵事件大法廷判決を次のように要約した。

(イ)公労法一七条一項違反の争議行為が罰則の構成要件にあたる場合には、労組法一条二項の適用はなく、他の特段の違法性阻却理由がない限り、刑事法上これを違法とすべきである。

(ロ)但し、右の争議行為が単なる労務不提供のような不作為を内容とするものであって、公労法一七条一項が存在しなければ正当な争議行為として処罰を受けないようなものである場合には、その単純参加者に限り、当該罰則による処罰を阻却される。

(ハ)これに対し、公労法一七条違反の争議行為にあたらず、これに付随して行われた犯罪構成要件該当行為の場合には、その行為が同条項違反の争議行為に際して行われたものである事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、法秩序全体の見地から許容されるべきか否かを考察してその違法性阻却事由の有無を判断しなければならない。水道局は地公労法111項だが公労法171項と別異に解釈する理由はない。

決起集会のため庁舎構内に勝手に侵入してくる組合役員について3割動員は(イ)と(ハ)に該当し、2割動員は(ハ)に該当する。業務上もしくは支所所轄の用務で庁舎構内に入所したものではなく地公労法111項違反行為という違法行為目的のためであるから、違法性が強く推定され、違法性は阻却されないと考える。刑事事件とせずとも犯罪構成要件該当行為にするため管理意思を明確にすることが肝要。ただし、都庁構内ふれあいモールの集会は敷地内だが、外部の者が自由に立ち入れる公開空地のため判断を留保する。

63新規則違反 

1 職員は、許可なく、局所施設内で、業務外の集会、演説、放送、示威行為又はこれらに類する行為を行ってはならない。

2 職員は、局が許可した場合のほか、勤務時間中に又は局所施設内で、組合活動を行ってはならない

4 職員は、勤務時間中に又は局所施設内で上司が認める業務外の徽章、胸章、腕章等を着用してはならない(解釈としては、ゼッケン、鉢巻、プレート、ワッペン、バッジ、政治的文言等のプリントされたTシャツの着用を含める)

5 職員は、庁舎、局施設構内において、許可なく業務外の目的で車両・旗・幟・拡声器・プラカード・横断幕・立看板・テントその他危険物を持込んだり、設営してはならない。又、許可なく業務外の目的で、泊まり込み、座り込み、通行規制、練り歩き、集団行進をしてはならない。

6 職員は、庁舎、局施設のその秩序維持等について庁舎管理規程に基づく庁舎管理者の指示に従わなければならない。

7 職員は、同盟罷業、怠業、その他業務の正常な運営を阻害する一切の行為をしてはならない。また、職員は、このような禁止された行為を共謀し、そそのかし若しくはあおってはならない。

65 処分

 中止・解散・退去命令に従わず、登壇して演説した者、鯨波の音頭をとつた者は、ストライキが決行され場合、「唆し」「あおり」を行った者として、懲戒処分事由とする。監視、写真撮影等を行う。刑事処分については検討課題とし、さしあたり管理意思を明確にして、犯罪を成立させることが肝要と考える。

10 スト待機-深夜未明の滞留不許可

101 スト待機とは

 全水道東水労は年間34回はストライキを配置し闘争する。スト配置というのは組合用語だがその前日を最終回答日として闘争する日程のことである。前回のスト決行が令和元年であるから、ストを回避することが多いのではあるけれども令和五年度は4回、11月、12月、1月、3月に配置された。スト前日は当局の最終回答を受けて、中央委員会が開催され、そこでストライキを回避するか、決行するかの判断がなされるが、早い場合は午後7時、遅いと深夜、未明にまでずれこむことがある。

 組合はスト前日の夜から当日の朝方にかけて、各事業所に役員を待機させ、指令の組合員への伝達、スト集会準備などをさせることになっている。

 スト前日の夜から当日は三六協定を破棄しているので、職員一般は締め出されるが、組合役員はスト待機という任務ゆえ、深夜、未明に事務室内に滞在、ないし出入りをすることが認められている。

  杉並営業所では、次のような事件があった。

令和41222日スト配置日に早朝中央委員会報告があり組合分会長兼中央委員〇〇が演説し、そのあと朝、所長、営業担当課長代理、営業係の庶務担当〇〇、3者で深刻な話をしていたので何かと思ったら、昨日スト待機でセキュリティに不具合、所長と〇〇が1階はいいが234階で不具合との話をしていた。そのあと、別の組合役員と20分ぐらい〇〇が話、その前に、〇〇とも話、四時十分、四時三十分と言っていた。そのころ〇〇が侵入したのが原因らしい。〇〇は警報もならなかったので問題ないと思っていたなどと話していた。

 要するに、〇〇がスト待機で、未明の4時すぎに事務所入り、何をセキュリティ破りの操作をしたので機器に不具合が生じた。

 当局はスト待機を組合の業務として全面的に支持し、セキュリティ破りも認めているのである。

102新方針

深夜未明であれ、業務のため災害時などの召集なら話は別であるが、スト関連組合用務のための事務室深夜未明の立入は庁舎管理権の行使により拒否、刑事処分も検討する

スト待機の主要な目的が指令伝達とストが決行された場合のスト準備であり、地公法111項違反の違法行為を目的とするものゆえ、目的外使用であり、事務室利用の便宜供与を認めることは違法行為の支援、助長であるから、事務室立ち入り拒否すべきである。パトロールをして現認、退去命令する。新規則では無許可組合活動は勤務時間外でも禁止しているので対応できるので、スト待機を禁止する。

むろん24時間稼働している部署では深夜でも出入りできるのであるが、警備会社と契約しセキュリティを稼働している部署のセキュリティ破りは建造物侵入罪を成立させるべきである。

103先例

指令伝達は地公労法111項後段の「そそのかし」「あおり」に当たり、違法行為のためにセキュリティ破りまで認めて許可する理由はなく、スト準備も認める必要もないわけである。

地公労法111項違それ自体には罰則規定はないが、労組法12項の刑事免責が適用されないことは、指導判例である全逓名古屋中郵事件判決・最大判昭52.5.4により明らかなことであり、これは公労法判例だが地公労法違反のストライキを別異に解する理由はない。

全逓名古屋中郵(第二)事件・最二小判昭53.3.3刑集32297香城敏麿判解は、名古屋中郵事件大法廷判決を次のように要約した。

(イ)公労法一七条一項違反の争議行為が罰則の構成要件にあたる場合には、労組法一条二項の適用はなく、他の特段の違法性阻却理由がない限り、刑事法上これを違法とすべきである。

(ロ)但し、右の争議行為が単なる労務不提供のような不作為を内容とするものであって、公労法一七条一項が存在しなければ正当な争議行為として処罰を受けないようなものである場合には、その単純参加者に限り、当該罰則による処罰を阻却される。

(ハ)これに対し、公労法一七条違反の争議行為にあたらず、これに付随して行われた犯罪構成要件該当行為の場合には、その行為が同条項違反の争議行為に際して行われたものである事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、法秩序全体の見地から許容されるべきか否かを考察してその違法性阻却事由の有無を判断しなければならい。

名古屋中郵事件の建造物侵入の行為は(ハ)にあたる。「被告人らは、公労法171項に違反する争議行為への参加を呼びかけるため、すなわち、それ自体同条項に違反するあおり行為を行うため、立入りを禁止された建造物にあえて立ち入ったものであって、その目的も、手段も、共に違法というほかないのであるから、右の行為は、結局、法秩序全体の見地からみて許容される余地のないものと解さざるをえない」と結論している

スト待機は、争議行為そのものではないがそれに付随する行為、争議行為目的なので違法性を阻却する余地はないことなる。

ちなみに、建造物侵入罪については、全逓釜石支部大槌郵便局事件.最二小判昭58.4.8刑集373215が、管理者側に有益な先例といえる。「刑法130条前段にいう「侵入シ」とは、他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいうと解すべきであるから、管理権者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、該建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などからみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、他に犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上、同条の罪の成立を免れないというべきである」とする。

このため、私の提案では新規則に勤務時間外であれ無許可組合活動を禁止事項としているので、規則制定と周知だけでも管理者が容認してないと判断できる。そのうえに、当局が管理意思をアナウンスする。災害時対応等の緊急の場合を除き、深夜未明のセキュリティがかかった時間帯の事務室の無許可出入りを禁止することを職務命令すべきである。現状では、庁舎管理者がスト待機を知っていながら容認しているので犯罪が成立しない。

104根拠 

スト待機の重要な目的が指令の伝達なので違法行為である地公労法111項後段の「唆し」「あおり」の恐れがあるという理由により、規律ある業務運営態勢を維持する当局の施設管理権にもとづく。

地方自治法238条の47項により行政財産の目的外使用として不許可としてもよい。

新規則2 職員は、局が許可した場合のほか、勤務時間中に又は局所施設内で、組合活動を行ってはならない。

105 処分

無許可立ち入りを現認したうえ、ストが実行された場合は懲戒処分事由とする。十分な証拠の確認のもとに刑事処分検討(住居侵入罪)。

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