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カテゴリー「英米法」の77件の記事

2024/06/29

連邦最高裁  ホワイトハウスがソーシャルメディア企業に「偽情報」を削除するよう圧力をかけることを容認

  6月26日Murthy v. Missouri判決について簡単にコメントする。連邦最高裁は、6対3(バレット法廷意見)をCOVID-19、特にワクチン誤情報を含むと考える投稿について、ホワイのトハウスがソーシャルメディア企業に投稿の制限に圧力をかけることが修正一条に反するとして、将来の政府の圧力に対する差し止め命令という形で救済を求める訴えを却下した。極右的とされる第5巡回区控訴裁判所の判断は覆された。
スタンディングの法理、当事者適格がないという、手続上の理由で、憲法判断には踏み込まなかった。ガーディアンはバイデン政権の勝利であり、コンテンツモデレーションを検閲と同一視しようとする共和党の取組に打撃と報じている。
アリート判事(トーマス、ゴーサッチが賛同)の反対意見は、判決は国民の言動、聞き取り、思考をコントロールしたい将来の当局者にとって魅力的なモデルとなると非難している。
会期末で残っている大きな事件はTrump v. United Statesトランプ前大統領が訴追を免れるかどうか、NetChoice, LLC v. Paxton and Moody v. NetChoice, LLCソーシャルメディア企業が政治的な投稿やアカウントを削除するのを州が阻止できるかのケース。Check out this article:

2023/10/04

旧統一教会の解散命令請求に反対します

 イタリアの宗教社会学者 マッシモ・イントロヴィニエ氏は「刑事事件で有罪判決を受けていない旧統一教会を解散させれば、日本はこれを行う最初の民主主義国となる。これは中露のプロパガンダを助ける一方、日本の国際的イメージに深刻な悪影響を及ぼすだろう」(世界日報2023104記事)と言ってます。 死後の安寧を願わない人はいない。信教の自由は核心的に重要な価値、特に良心的なアメリカ人から軽蔑されるでしょう。

 米国には1993年の信教の自由回復法があります。1990 年のEmploymentDivision, Department of Human Resources v. Smith判決がネイティブアメリカンが宗教的儀式にペヨーテという違法薬物(幻覚剤)を用いたことによる不利益処分を合憲とし、従来の厳格司法審査と違う基準で判断を行ったことが非難され、この判例を覆すためにわざわざ制定法をつくったものなのである。

 スミス判決のテストは「宗教を狙い撃ちする法律(law that targets religion)は、「最も厳格な審査(the most exacting scrutiny)」に服せしめられ、およそ違憲とされるけれども、「宗教的行為」を付随的に規制する「宗教に中立的な法律(religion-neutral law)」は、いかなる合憲性審査にも服せしめられるというものでした。これはゆるい審査基準です。

 ぬるい司法審査基準に判例変更したことに対し、アメリカ合衆国の国是ともいうべき宗教上の権利の行使をおとしめるものとして議会が強く反発し、それ以前の最高裁が修正第一条「宗教の自由な実践」条項(Free Exercise Clause)にとっていた司法審査基準である「やむにやまれぬ政府利益(compelling governmentalinterest)を促進する最も制限的でない手段(the least restrictive means)」でない限り、「宗教的行為」に「実質的負担(substantial burden)」を課することを許されないという厳格司法審査と同じ効果をもたらすための制定法である「信教の自由回復法(Religious Freedom Restoration Act of 1993RFRA)を制定したのである。

 よほどのことでない限り、宗教的権利の行使に負担を課してはいけないということです。。

 ロジャー・ウィリアムスとかウイリアム・ペンとか宗教の自由については古い歴史があり、良心的兵役拒否に理解のあったストーン主席判事や、アーミッシュなど少数派の権利を擁護したバーガー主席判事とか米国には連綿として宗教の自由を擁護するしきたりがあります。政治的な理由でマスコミなどに不人気な宗教だから消滅させてしまったほうが政権浮揚になるというばかげた思惑で、解散命令請求などやらないでください。

 

 神尾将紀「アメリカにおける「信教の自由」の展望--Smithテストの理論と実際」 (43回 宗教法学会)宗教法 (21) を参照、引用した。

2019/07/18

ジョン・ポール・スティーブンス元合衆国最高裁判事死去

 2010年に連邦最高裁を引退したジョン・ポール・スティーブンス が99歳で死去したとのニュースに接しました。https://abcnews.go.com/US/retired-supreme-court-justice-john-paul-stevens-died/story?id=64379900
 ザ・タイガースやスパイダース、テンプターズは覚えてますがジャニーズはほとんど記憶がない。ジャニーさんはよく知りませんがスティーブンス判事は知ってますので故人の業績を回顧したいと思います。というか引退したときにブログに書いてますので再掲します。
 就任時は穏健な中道派でしたが晩年は左派でした。政教分離で最左派ですが、平等保護条項にこだわりのある人でした。最大の業績はバッキ訴訟(白人逆差別事件)の意見です。憲法問題は回避しましたが黒人等minorityの優先処遇、人種を考慮した大学入試自体が公民権法違反との見解だと思います。公民法関係では男性差別事件ですがニューポートニュース判決(1983年)NEWPORT NEWS SHIPBUILDING & DRY DOCK v. EEOC, 462 U.S. 669 (1983) 「‥‥健康保険その他の特別給付の給付は、賃金その他の雇用条件に当る。女子従業員も男子従業員も差別から保護されている。ゆえに女子従業員の扶養家族に対しては全額健康保険を支給し、男子従業員の扶養家族に対しては全く支給はないような制度はTitle VIIに反する。」では男性差別を公民権法違反とした。http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_f943.html
以下9年前の4月11日のブログを再掲します。
 スティーブンス判事は1975年共和党フォード任命、在任35年に及び89歳と高齢であリ、予測されていたことですが、今開廷期が終了する6月下旬か7月上旬をもって引退すると土曜日から一斉に報道されてます。蝶ネクタイで知られ、ノースウエスタン大学出身でシカゴカブスのファンでした。http://abcnews.go.com/WN/justice-john-paul-stevens-announces-resignation/story?id=10335098
 同判事の司法判断について回顧する記事が書かれてますが私も書きます。
http://www.humanevents.com/article.php?id=36447
  バーガーコート時代は、典型的な争点次第で揺れる中道派の裁判官でした。ひねった変化球的見解が持ち味であり、それなりに注目されてました。しかし前世紀末より今日までの評価はリベラル(左)派のリーダーというもので、陪席裁判官の長老格として存在感を示したと言える。オバマはスーター引退に伴うソトマイヨルに続いて最高裁判事の指名の機会を得たが、穏健な保守のケネディ判事が決定票を握る構図に大きな変化はないとみられる。
 スティーブンスの司法判断で一貫しているのは国教樹立禁止条項(政教分離)を争点とする判例でもっとも厳格な分離主義者であるということ。代表的なのが1985年ジャフリー判決です。アラバマ州の公立学校における自発的なの祈りか思索のための一分間の沈黙の時間を違憲とした法廷意見をスティーブンス判事が書きました。Wallace v. Jaffree, 1985 http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.pl?court=US&vol=472&invol=38教師がお祈りを強制するわけでもないのに「自発的な祈り」のための時間としているのが不適当と云うのです。レーガン大統領とアメリカの保守派はこの判決に怒りました。
 私が特に印象に残っているのが平等保護条項を争点とする事件で同一行為同一処罰と云うような形式的判断で割り切る同判事の姿勢です。例えばMichael M. v. Superior Court判決(1981)は、
http://www.law.cornell.edu/supct/html/historics/USSC_CR_0450_0464_ZO.html
 18歳未満の女子と性交した男子を、同意の有無に関わらず処罰するカリフォルニア州の法定強姦罪の男性のみ処罰が平等保護条項に反する性差別かが争われた事件で、レーンキスト相対多数意見は、未成年者の妊娠を防止するという州の正当な利益に奉仕するものであり、また女子には望まない妊娠という自然の罰があるのに、男子にはそれがないので均衡を取るために男子のみを処罰することは合理的であるとして合憲判断を下したが(コーラ割のウィスキーを飲んだ男子が、初対面の女子と野外にて接吻し性行為に及んだところ、処罰されたというもの)、スティーブンス反対意見は、性行為という同一行為を行ったのだから、男子も女子も罰せられなければ平等保護条項に反すると述べた。この見解は「男性は攻撃的で女性は受動的でありに若い女性は弱いので保護されるべき」とか「性の場において男は加害者で女は被害者」というステレオ・タイプを受容することを否定した点でそれなりに意味のある反対意見と評価できる。
 (参考 宮園久栄「フェミニスト犯罪学の意味するもの」『法学新報』100巻3.4号) 
 類似した見解はBowers v. Hardwick, 478U.S. 186(1986)http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.pl?court=US&vol=478&invol=186ジョージア州の ソドミー禁止法を合憲した反対意見にも現れる。口腔性交つまりフェラチオやクリニングスですが、スティーブンス判事は、異性愛者のそれはよくて、男子同性愛者のそれは禁止されると言うのは平等でないと云うのである。私はこの見解は形式的すぎると思います。異性愛者の口腔性交は生殖行為の前戯として、相手の性的欲求を満たすという夫婦倫理に基づく行為で、憲法上保護すべき価値があると考えますが、男子同性愛者のそれは何の価値も見いだす事ができないからです。 
 スティーブンス判事が書いた意見で評価されるべきものの一つとしてカリフォルニア州立大学理事会対バッキ事件(逆差訴訟)の一部反対一部結果的同意意見がある。UNIVERSITY OF CALIFORNIA REGENTS v. BAKKE, 438 U.S. 265 (1978) http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.pl?court=US&vol=438&invol=265の結果的同意意見がある。
 事案は大略して次のとおりでした。白人男性アラン・バッキはカリフォルニア州立大学デイビス医学校の選考制度に出願し、マイノリティグルーブ(黒人・メキシコ系・アジア系・アメリカインディアン)の特別入学者選考制度による入学者の評価点より高かったにもかかわらず入学できなかった。このために、黒人等優先処遇の特別入学選考制度を合衆国憲法修正14条平等保護条項、カリフォルニア州法第1条21項および1964年公民権法タイトル6(連邦政府から資金援助を得る公的・私的事業における人種・肌の色・元の国籍にもとづく差別を禁ずる)に違反するとして(1)医学校は入学者選考に当たって彼および他の出願者の人種を考慮してはならないとの差止命令(2)原告バッキを入学させる作為命令を求めて出訴し、大学側は(3)特別入学者選考制度を適法・合憲とする宣言判決を求めて反訴を提起した。
 州最高裁判所はバッキの勝訴させ、(1)、(2)を認め(3)を認めなかった。そこで大学側が連邦最高裁にサーシオレーライの申し立てをなし受理された。
 本件は人種問題であるため大きな社会的反響が予測された。連邦最高裁は原判決をすべて容認して黒人等優先処遇を公民権法タイトル6に違反した人種差別とするスティーブス判事ら4判事と、黒人等の優先処遇を容認し原判決の破棄を立場をとったブレナン判事ら4判事が真っ二つに割れて対立したが、中間派のパウエル判事が決定票を握って、(2)と(3)について原判決を容認し、本件は白人バッキに対する差別して、割当制についてそれが人種のみを理由に異なる扱いをしており、合衆国憲法修正第14に違反していると述べたが、(1)の「いかなる出願者の人種を考慮してはなにらない」という部分のみ原判決を破棄するという「大岡裁き的玉虫色」判決となった。
 その理由が多様性をもった学生を確保するという目的は憲法上、学問の自由に含まれるというのである。人種やエスニシティといった背景が入学者選考において一つのプラス要素として考慮することを認めた。本件の特別選考制度は人種差別で違憲だが、ハーバード大学のような人種を考慮しつつも人種差別の意図はない方法は認められる。つまり別枠としてマイノリティに当てる割り当て制は違憲だが、下駄を履かせるやりかたはよいという。
 つまり、私の解釈ではそれは多様な背景をもつ学生を確保する教育学的意義というような事柄に、司法部は謙抑的姿勢をとるべきであるという一つの司法自制主義的判断があるものと考える。逆差別も人種差別としたにもかかわらず、世論の反発をかわすという意味でマイノリティにも配慮し含みを残した大岡裁き的判決であった。
 しかし、理屈としてはすっきりしない司法判断であり、この点、スティーブンス判事ら4判事の見解がわかりやすかったと考える。つまりスティーブンスは憲法判断を回避して、公民権法タイトル6の立法趣旨がカラーブラインドを理念としており、つまり人を人種や体色で区別しないというものだから、人種を考慮した選考は人種差別そのものであり単純に公民権法違反であるとした。
 参考 高橋一修 「最近の判例-州立大学医学校入学者選考制度におけるいわゆる逆差別」『アメリカ法』1980-1、宮田智之「ミシガン州立大学訴訟への連邦最高裁判所判決」pdfhttp://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/218/021807.pdf
 スティーブンスが逆差別を違法とした点で好意的な見解をもつ。男性差別事件ととしてはニューポートニュース判決(1983年)
NEWPORT NEWS SHIPBUILDING & DRY DOCK v. EEOC, 462 U.S. 669 (1983) http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.dj.pl?court=us&vol=462&invol=669について当プログででも取りあげたとおりである。
 ところが、バッキ事件と類似した逆差別事件でて2003年にグルッター対ボリンジャー事件Grutter v. Bollinger .http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.pl?court=US&vol=000&invol=02-241という重要判決があります。ミシガン州立大学ロースクールの逆差別事件ですが、バッキ事件のパウエル判事の意見に依拠した、オコーナー法廷意見にスティーブンス判事は加わっている。カラーブラインドの理念にもとづき厳格な平等主義者かと思っていたのに、態度を変更してしまっているのである。バッキ事件では保守派と組んでいたのにこの事件では左派と組むものであって思想的首尾一貫性と云う点で釈然としないのである。
 しかしながら惜しまれる事があります。かつては最高裁判事はプロテスタントが圧倒的多数でしたが、現在の構成がカトリックに偏ってます。ニューヨークタイムズなどは唯一のプロテスタントと云っています。
参考 高橋一修 「最近の判例-州立大学医学校入学者選考制度におけるいわゆる逆差別」『アメリカ法』1980-1、宮田智之「ミシガン州立大学訴訟への連邦最高裁判所判決」pdf   http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/218/021807.pdf
 
 

2019/06/18

ケーキショップは宗教的信念により同性婚のウェディングケーキの注文を拒否できる

 2018年6月5日の連邦最高裁判決Masterpiece Cakeshop, Ltd. v. Colorado Civil Rights Commissionは宗教的信念によりゲイカップルを祝うカスタムウェディングケーキの提供を拒否したケーキ屋さんがコロラド州の差別禁止法違反とされ、コロラド市民権委員会は会社の方針の従業員の再教育を要求したうえ、サービスを拒否したケーキ屋さんに対してナチ呼ばわりし、奴隷所有者、同性愛恐怖症、頑固者その他の暴言が吐かれ、利益の大きいウェディングケーキ事業から撤退せざるをえなくなったというものである。
 最高裁は7対2でケーキ屋に有利な判決を下した。判決は市民権委員会の事件の扱いには、彼の異議、誠実な宗教的信念に対して明確で容認できない敵意の要素がいくつかあり、コロラド州法は宗教にもとづく差別を禁止しており、法律の公正な施行でなく不適切な対応としている。なお、この判決は憲法上の権利には踏み込んでいない。
 CNNのブレーキングニュースhttps://us.cnn.com/2019/06/17/politics/supreme-court-lgbtq-religious-liberties-oregon/index.htmlでは、後続する同類の訴訟を連邦最高裁が棄却、オレゴン州の裁判所に差し戻し、Masterpiece Cakeshop事件判決に沿った再考を求めるものと解説してます。
 私は自由企業体制では事業の自治、取引自由が最も重要な価値という立場(古典的自由主義)からこの判断を支持します。社会主義者や人権派は、私的自治、宗教的信念、取引自由、営業活動、雇用判断に干渉し自分たちの都合のように縛ろうとするために政府を利用するがうんざりだ。
 また、スティーブン・パノンのような立場、伝統的なユダヤ・キリスト教的規範・道徳の枠組を死守すべきとする立場にも共感します。社会があまりにも世俗化されすぎた。ここ20年くらいの新奇な考え方より2500年の西洋文明の価値、聖書のほうがずっと安心できます。米国は宗教の自由の最後の砦になるだけでも価値がある。
 

2018/06/29

連邦最高裁開廷期末に反労働組合、リバタリアン陣営大勝利 Janus v. AFSCME判決  

 連邦最高裁は6月27日、5対4で公共部門の労働組合が非組合員に対して団体交渉の成果のただ乗りをさせないため団体交渉コスト(いわゆる組合費)の強制徴収(エージェンシーショップ)制度を否定しました。この判決は反労働組合陣営の大勝利です。 https://www.cnbc.com/2018/06/27/supreme-court-rules-in-janus-labor-union-case.html?__source=sharebar|twitter&par=sharebar
 修正1条の言論の自由と結社の自由に反するということをアリート判事は言ってます。
 このところ20年以上、最高裁のキャスティングボードを握って、大きな影響力を行使してきたアンソニー・ケネディ判事引退も大きなニュースになっている。ケネディはレーガン任命で同性婚判決などでリベラルでしたが、それ以外はほぼ保守派陣営でした。トランプは保守派を起用するだろうからまず安心してます。

2014/07/05

ホビー・ロビーストアズ判決について(2)

 今回の判決は、宗教的信念にもとづいて、家業を経営する権利を明らかにしたものとされ、単に宗教の自由というだけでなく、スモールビジネスにとっても良い判決である  自分の信念に従ってビジネスを生き、行うことが自由であるべきことそれはアメリカの価値観です。  http://www.becketfund.org/hobbylobby/

そもそも自由企業体制のもとでは、企業年金、医療保険、社宅、レクリエーション施設、ストックオプトション、労災補償、有給休暇制度(アメリカでは今日でも法定有給休暇制度はない)その他もろもろの従業員福祉制度とは、本来企業の労務対策として行われたものであり、日本的経営といわれる経営家族主義ももとは南部のカロライナなどの繊維産業などの温情主義的経営を模倣したものである。1920年代に洗練されたものとなり、ウェルフェアキャピタリズムといわれる。それは労働組合の組織化から企業を防衛し、忠誠心のある従業員を確保するための戦略だった。企業はそれが自らの利益になると考えやってきたことで、本来、企業の経営方針について政府がおしつける性質のものではないのである。     今日では自由企業体制に反し、例えば公民権タイトル7のように人種、皮膚の色、出身国、宗教、性別で雇用上の差別を禁止するなど、経営者の裁量に制約を課しているが、本来の契約の自由、自由企業体制という観点では、雇用主がどのような人を雇用し、昇進させ、解雇するかは自由であるべきであり、リチャード・A・エプスタインのように、公民権法についても批判的な見解がある。

 そのような自由企業体制を信奉する立場では、オバマケアは違憲にしてたたきつぶすのが最善だったとおもうが、2012年に最高裁は5対4でロバーツ最高裁長官の政治的配慮とも思えるようなばかげた合憲判断(National Federation of Independent Business v. Sebelius)を下したのである。しかし今回は一部を違法としたことで、総じていえばバランスをとったというか、反オバマ派にとって一矢報いたと云うところである。

 ホビー・ ロビーとは、フルタイムの従業員が13000人、全米41州で600近い店舗を展開する。売り場面積がとてつもなく広く、手芸店、服地店、ファンシーショップ、骨董品店、陶器店、DIYなどを一堂に集めたような  http://homepage3.nifty.com/breath-taking/chicago/chicago06.htmカテゴリーキラーという業態と考えられるが、経営者一族は敬虔なクリスチャン (ペンテコステ派の一派アッセンブリーズ・オブ・ゴッド)で、神を称える為、聖書の原則に一致した方法で経営しているということである。なぜか、バーコードスキャナーを使わない、オンライン販売も積極的でないにもかかわらず競争の激しい業界で成功しているのはすごい。

 ダラスの店舗を紹介しているブログhttp://chipmonk.blog90.fc2.com/blog-entry-73.htmlを見たが、なるほど品揃えが豊富で整然と陳列された感じのよい店である。                     この判決の影響についてはよくわからない。アリート判事の法廷意見は非公開企業を定義 してないが、タイムの記事   http://time.com/2941323/supreme-court-contraception-ruling-hobby-lobby/によると内国債入庁の定義では5人以下の人々が会社の半分以上を所有する企業を「非公開企業」という。「非公開企業はアメリカのビジネスの90%以上を構成し、労働力のおよそ52%が非公開企業で働いている、ただしオバマケアは、50人以上の社員を有する企業に健康保険を提供するように要求するもので、それより小さい企業は初めから適用除外である。 

 非公開企業として有名なのはDell, Cargill, Mars, Heinz, Dole, Kohler, Hilton, Bloombergなど、こうした企業のうち、宗教的理念を経営方針としている企業がどれほどあるのか不明だが、スモールビジネスでは決して少なくないのではないか。  私は、ロー対ウェード判決支持であり、中絶クリニックのピケに反対であるが信教の自由回復法に好意的で、オバマケアに反対なのでこの判決には好感を持つ。  

フェミニスト団体は今回の判決に怒っていると言うが、皮肉なことに、多くのアメリカ人女性顧客に愛されている手芸用品店が女性の敵であるとは理解しがたいのである。

2014/07/02

ホビー・ロビーストアズ判決について(1)

  2013-14開廷期最後の日 のBurwell v. Hobby Lobby Stores, Inc.判決は5対4でホビー・ロビー・ストアズのような非公開企業に、その企業所有者の宗教的信念に反する避妊対策の保険適用を強制することはできないとした。オバマケアに挑戦したエバンジェリカル(福音派)キリスト教徒の勝利という、劇的な判決だった。アメリカ社会に固有の問題であるがわが国でも産経や読売が報道しています。http://sankei.jp.msn.com/world/news/140702/amr14070201050001-n1.htm

 ホビー・ロビー・ストアズはエバンジェリカル(福音派)の一族が経営するオクラホマを本拠とする手芸品材料のリテーラーで全米に600店舗、1万3千人の正社員を抱える非公開企業である。  本件は宗教の自由の勝利として大きな判決だと思うし、アリート判事の法廷意見の詳細はみていないが、PBSのニュース解説で知った範囲では判決理由は賛同できると考えます。

 この判決は1993年の信教の自由回復法にもとづいてます。5対2(2人は保留)は、宗教を促進する営利企業に宗教的権利を認めたことで勝負あったと考えます。

 1993年の信教の自由回復法とは、1990 年のEmploymentDivision, Department of Human Resources v. Smith判決がネイティブアメリカンが宗教的儀式にペヨーテという違法薬物(幻覚剤)を用いたことによる不利益処分を合憲とし、従来の厳格司法審査と違う基準で判断を行ったことが非難され、この判例を覆すためにわざわざ制定法をつくったものなのである。

 スミス判決のテストは「宗教を狙い撃ちする法律(law that targets religion)は、「最も厳格な審査(the most exacting scrutiny)」に服せしめられ、およそ違憲とされるけれども、「宗教的行為」を付随的に規制する「宗教に中立的な法律(religion-neutral law)」は、いかなる合憲性審査にも服せしめられるというものでした。これはゆるい審査基準です。

 このぬるい司法審査基準に判例変更したことに対し、アメリカ合衆国の国是ともいうべき宗教上の権利の行使をおとしめるものとして議会が強く反発し、それ以前の最高裁が修正第一条「宗教の自由な実践」条項(Free Exercise Clause)にとっていた司法審査基準である「やむにやまれぬ政府利益(compelling governmentalinterest)を促進する最も制限的でない手段(the least restrictive means)」でない限り、「宗教的行為」に「実質的負担(substantial burden)」を課することを許されないという厳格司法審査と同じ効果をもたらすための制定法である「信教の自由回復法(Religious Freedom Restoration Act of 1993(RFRA)を制定したのである。  

 そうするとこの法律はよほどのことでない限り、宗教的権利の行使に負担を課してはいけないとしているので、非公開企業にも宗教上の権利を認めたことにより、オバマケアは避妊薬や避妊器具の保険適用の義務に反する場合罰則を課しており、宗教上の権利行使に対する負担を課すものと判定されるのは道理といえるのである。

* ネットで公開されている神尾将紀「アメリカにおける「信教の自由」の展望--Smithテストの理論と実際」 (第43回 宗教法学会)宗教法 (21) を参照、引用した。

2014/07/01

ちょっとがっかり

 30日の5対4のハリス対クイン判決Harris v. Quinn ですが、イリノイの在宅ケアの労働者の組合費の強制徴収に関するものでしたが、判決は強制徴収を認めないというものでした。しかし現在20の州で非組合員にも公務員労組の組合費強制徴収が行われており、1977年のデトロイト教育委員会判決でエージェンシーショップが是認されている。今回の判決理由では1977年の先例を覆すにはいたらなかったということです。ニューヨークタイムズの記事は、労組は敗北したが、壊滅的打撃は免れたと、安堵した内容になっている  したがって今回の判決は非組合員の勝利で、それ自体は称賛してよいと思いますが、先例はそのままなのでインパクトのあるものにはならず、少しがっかりです。  もう一つのホビーロビーストアーズの事件は信教の自由回復法、修正一条、非公開企業オバマケアと論点が複雑で難解なので、ニュースをよく読んでから論評します。

2014/06/30

6月30日開廷期末は公共部門労働組合に関する判決ともう一つ

 連邦最高裁の開廷期間は10月~6月となつているが、レーンキストコートの時代から、6月末の開廷期末に重要判決のラッシュで締めくくることが慣例になっており、まもなく開廷期末の二つの重要判決が下されます。一つは公務員労働組合に関する判決で注目しています。

2014/06/29

連邦最高裁 上院休会中のNLRB委員の大統領任命違憲判断について

25日~26日の連邦最高裁判決では、25日の携帯端末の令状なし捜査違憲判決(Riley v. California)は朝日・読売などが報道していた。エレオの月額8ドルで放送番組の生放送および録画放送を見ることができるというオンラインサービスが違法との判断(Am. Broad. Cos. v. Aereo, Inc.   http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N7QIUK6VDLK601.html もネットを中心に我が国でも報道されている。

26日の中絶クリニック入口の35フィートバァッファーゾーン違憲McCullen v. Coakley (06/26/2014)判決http://www.latimes.com/nation/nationnow/la-na-nn-supreme-court-abortion-20140610-story.htmlは報道を確認していないが、オバマ大統領によるNLRB委員の休会任命は違憲判決Nat'l Labor Relations Bd. v. Canning  http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424127887323355204578264883161590380も多くのメデイアで報道されているが、このニュースの意味がわかりにくいのである。

NLRBとは不当労働行為の禁止や組合代表選挙の監督など1935年制定の全国労使関係法を執行する独立機関であるが日本の労働委員会と大きく違うのはILO原則にのっとった三者構成原則をとっていない。

我が国では今後3年間雇用の集中改革期間と位置づけているが、年収一千万以上のホワイトカラーエグゼンプション導入だけではインパクトはほとんどない。成長のためには抜本的に労働基準法をはじめとする労働者保護法のオーバーホールが必要だと思うが、それを阻んでいるのが政策決定過程での労政審議会などの三者構成原則である。結局労組側の言い分をある程度訊いて妥協したものになるので、政治主導の抜本的な改革ができないのである。

日本の労働組合組織率推定18%に対して、アメリカは11.3%、民間企業では6.7%にすぎないが、組織率が低迷している原因は、ニクソンやレーガンの時代に保守的なNLRB 委員が任命されて、団体交渉に枠をはめ、組合組織化を促進しない方向性での裁定をしてきたことが挙げられる。つまり政治主導で右傾化したのである。

一方、オバマは労働組合寄りでビジネス界には歓迎されないNLRB委員を任命しており、今回の判決で、訴訟当事者だけでなく3人の委員が任命されて以降のNLRB1500件のの裁定が疑問視される事態となったので、アメリカ社会にとっては影響の大きな判決である。

反労働組合団体The National Right to Work Legal Defense Foundationは、自立した労働者の勝利でもあるとしている。  

http://www.nrtw.org/en/press/2014/06/supreme-court-strikes-down-obama-recess-appointments-06262014

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