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カテゴリー「鉄道」の25件の記事

2018/06/03

私鉄総連春闘ワッペン闘争の法的評価(下書きその3)

承前
3.最高裁は抽象的危険説を採用した
〔具体的な業務阻害がなくても企業秩序維持のために禁止できる〕



 日テレ報道番組コメンテーターとしても活躍された河上和雄氏(故人)による国労札幌地本ビラ貼り事件・最三小判昭54・10・30判批[河上和雄1980]は、「本判決が、具体的企業の能率阻害を判示せず、抽象的な企業秩序の侵害のおそれのみをもって、施設管理権の発動を認めている点は‥‥目黒電報電話局事件に関する最高裁判決(昭和五二・一二・一三)の延長線上にある判示として、あらためていわゆる抽象的危険説を確立したもの」と評されているが重要な論点である。
 目黒電報電話局事件・最三小法判昭52・12・13で決着をみるまで、企業施設内の政治活動に関して具体的危険説をとるものと抽象的危険説をとるものに下級審判例が分かれていた。
 
(1)具体的危険説
 具体的危険説とは「現実かつ具体的に経営秩序が紊され経営活動に支障を生じる行為」でなければ禁止できないというもの。
 ナショナル金銭登録機事件東京高判昭44・3・3労民集20-2-227、東洋ガラス事件横浜地川崎支決昭43・2・27労民集19-1-161、日本パルプ工業事件鳥取地米子支判昭50・4・22判時796-98、明治乳業事件福岡地判昭51・12・7判時855-110がそうした判例である[高木紘一1978]。
 例えば日本パルプ工業事件鳥取地裁米子支部判昭50・4・22は「ただ抽象的にそのような危険性があることのみを理由として企業内における政治活動の自由(表現の自由)を無条件、一般的に禁止することは、私的自治の許容限界を超越するものであり、民法九〇条の公序良俗に違反して無効であると解さざるをえず、私的自治の名のもとに右政治活動が禁止される範囲は、現実かつ具体的に会社業務が阻害される場合に限られるといわなければならない」と判示する。 
 具体的危険説が、事業所・職場という場所を公共に開かれた表現活動が可能なパブリックフォーラムのように解するのは適切でない。企業施設内に従業員が出入りが許されているのは、労務提供のためであり、表現する場所としての権利性はないというべきである。来客にしても事業所に用事があるため一時的に施設内の滞留が許されているにすぎない。具体的危険説は異様に政治活動をしたい労働者に有利な判断といえる。
 
(2)抽象的危険説


 これに対して、抽象的危険説とは作業能率の低下等の「おそれ」、すなわち、経営秩序の侵害に対する抽象的な危険が存すれば禁止しうるとするもので、この立場に立脚する判例として間谷製作所事件東京地決昭42・7・28労民集18-4-846、ナショナル金銭登録機事件東京地判昭42・10・25労民集18巻5号、横浜ゴム事件東京高判昭48・9・27判時733号104頁。目黒電報電話局事件・最三小法判昭52・12・13民集31-7-974である[高木紘一1978]。
 横浜ゴム事件東京高判昭48・9・27は「「企業と雇傭契約を締結した者(従業員)は職場の規律を守り、誠実に労務を提供すべき契約上の義務を負うものであり、企業の施設又は構内において労務の提供と無関係な政治活動を自由に行い得るものとすれば、もともと高度の社会的利害の対立、イデオロギーの反目を内包する政治活動の性質上、従業員の間に軋轢を生じせしめ、職場の規律を乱し、作業能率を低下させ、労務の提供に支障をきたす結果を招くおそれが多分にあるから、使用者が企業の施設又は構内に限ってこれらの場所における従業員の政治活動を禁止することには合理的な理由があるというべきであり、これをもって従業員の思想や信条の自由を侵し、又は思想、信条を理由として差別的取扱いをいい得ないことは勿論、言論その他の表現の自由に対する不当な制限ということもできないと解される。‥‥」と判示しており、これが目黒電報電話局事件・最三小法判昭52・12・13の基礎となった下級審判例と評価できる。
 目黒電報電話局最高第三小法廷判決は次のように判示した。
 「一般私企業においては、元来、職場は業務遂行のための場であつて政治活動その他従業員の私的活動のための場所ではないから、従業員は職場内において当然には政治活動をする権利を有するというわけのものでないばかりでなく、職場内における従業員の政治活動は、従業員相互間の政治的対立ないし抗争を生じさせるおそれがあり、また、それが使用者の管理する企業施設を利用して行われるものである以上その管理を妨げるおそれがあり、しかも、それを就業時間中に行う従業員がある場合にはその労務提供業務に違反するにとどまらず他の従業員の業務遂行をも妨げるおそれがあり、また、就業時間外であつても休憩時間中に行われる場合には他の従業員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後における作業能率を低下させるおそれのあることがあるなど、企業秩序の維持に支障をきたすおそれが強いものといわなければならない。したがつて、一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべきであり‥‥‥‥局所内において演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を行うことは、休憩時間中であつても、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあつて、その内容いかんによつては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがあるのであるから、これを局所管理者の許可にかからせることは、前記のような観点に照らし、合理的な制約ということができる。」と判示し抽象的危険説をとったものと評価されているが、表現者自身の職務専念義務違反というだけでなく、他の職員の職務専念義務履行妨害となるおそれがあることは企業秩序を乱すこととなると判示した点で新味といえる。
(3)政治活動も組合活動も同列に抽象的危険説を採用


 上記はいずれも政治活動に関する判例だが、国労札幌地本ビラ貼り事件・最三小判昭54・10・30は企業施設内の組合活動についても、目黒電報電話局事件・最三小法判昭52・12・13と同様の抽象的危険説を支持する判断をとったものといえる。
 したがって、政治活動と組合活動は表現活動であるとしても性質の異なる問題であるが、企業秩序論の観点では同列に論じてよいと考える。
 国労札幌地本事件でビラが貼られたロッカーとは国鉄札幌駅の小荷物、出札、駅務、改札、旅客などの各係事務室内、同駅輸送本部操連詰所および点呼場に、札幌運転区検修詰所に備え付けのロッカーであるが、ビラは貼付されている限り視覚を通じ常時職員等に対しいわゆる春闘に際しての組合活動に関する訴えかけを行う効果を及ぼすものである、最高裁判決はそれは直接かつ具象的に業務を阻害するものではないが、禁止できるとした。
 国鉄は鉄道事業等の事業を経営し能率的な運営によりこれを発展させ、もつて公共の福祉を増進するとの目的にかなうように、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するという抽象的な理由でビラ貼付を禁止できると判示したのである。
 すなわち国労札幌地本ビラ貼り事件・控訴審判決札幌高裁昭49・8・28は「控訴人らが右ロッカーに本件ビラを貼付したことにより被控訴人の業務が直接阻害されあるいは施設の維持管理上特別に差し支えが生じたとは認めがたい等の諸般の事情を考え合わすと‥‥本件ビラ貼付行為は、正当な組合活動として許容されるべき」と判示し、具体的危険説をとってといるがこの判断は上告審判決で覆されたのである。
 上告審判決最三小判昭54・10・30民集33巻6号647頁は、「貼付されたビラは当該部屋を使用する職員等の目に直ちに触れる状態にあり、かつ、これらのビラは貼付されている限り視覚を通じ常時右職員等に対しいわゆる春闘に際しての組合活動に関する訴えかけを行う効果を及ぼすものとみられるのであつて、このような点を考慮するときは、上告人が所有・管理しその事業の用に供している物的施設の一部を構成している本件ロツカーに本件ビラの貼付を許さないこととしても、それは、鉄道事業等の事業を経営し能率的な運営によりこれを発展させ、もつて公共の福祉を増進するとの上告人の目的にかなうように、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保する、という上告人の企業秩序維持の観点からみてやむを得ないところであると考えられ、貼付を許さないことを目してその物的施設についての上告人の権利の濫用であるとすることはできない。‥‥‥剥離後に痕跡が残らないように紙粘着テープを使用して貼付され、貼付されたロツカーの所在する部屋は旅客その他の一般の公衆が出入りしない場所であり、被上告人らの本件ビラ貼付により上告人の本来の業務自体が直接かつ具象的に阻害されるものでなかつた等の事情のあることは‥‥‥うかがい得ないわけではないがこれらの事情は、いまだもつて上記の判断を左右するものとは解されないところである。従って被告人のらのビラ貼付行為は‥‥‥上告人の企業秩序を乱すものとして、正当な組合活動であるとすることはできず」上司が「中止等を命じたことを不法不当なものとすることはできない」と判示した。
(4)抽象的危険説は確実に維持されている


 抽象的危険説はその後の国労札幌地本判決を引用した判例で確実に維持されている。いずれも集会等無許可施設利用に関する事案だか゜゛、以下のような判例を挙げることができる。
イ..日本チバガイギー事件 最一小判平1・1・19労判533号7頁が容認した原判決である東京地判昭60・4・25労働判例452号27頁  http://web.churoi.go.jp/han/h00308.html
 組合の食堂利用の集会及び屋外集会の申し出の拒否を不当労働行為とした中労委の判断を否定したもので「‥‥本件食堂の使用や屋外集会を参加人の希望どおり許可したことによる現実の業務上の支障は必ずしも大きくなかったものと推認されなくもないが、他方工場部門とは別に本部の従業員の就業時間は午後五時四五分までであってその間に集会が行われるとすれば就業中の従業員が集会に気をとられ、職務に専念することができないなどの事態も予想しえないだけでなく‥‥そして参加人が集会の開催を午後五時に固執した理由は専ら組合員の帰宅時間の遅れを防ぐといった自らの結束力の弱さからくる事由であり、これに固執する合理性に乏しいこと‥‥、原告が参加人からの午後五時からの本件食堂の使用申出あるいは屋外集会を許可しなかったことについて、原告の権利濫用と認められるような特段の事情があったとはいえ‥‥ない」と判示。
 「就業中の従業員が集会に気をとられ、職務に専念することができないなどの事態も予想しえないだけでなく‥‥」というたんに抽象的なおそれがあるという理由で不許可が正当化されている。
ロ..済生会中央病院事件 最二小判平1・12・11 民集43-12-1796http://web.churoi.go.jp/han/h00554.html
 勤務時間内であるが事実上の休憩時間、業務に支障のない態事実上の休憩時間業務に支障のない態様様でなされた無許可組合集会に対する警告書交付は不当労働行為当たるとした、原判決を破棄自判。原判決の控訴審が是認している東京地判昭61・1・29労判467号18頁は「その開催された時間帯も事実上休憩時間と目される時間帯であり、業務や急患に対応しうるように配慮された方法で行われ、現実に業務に支障が生じていないこと、‥‥これら事情は、本件集会が就業時間後に開催しなかったのが外来看護婦の中に保育の必要性がいた者がいたにすぎないものであったとしても、‥‥特段の事由に該当するものというべきであり、本件職場集会をもって違法ということはできない。」と判示した。
対して最高裁判決は「一般に、労働者は、労働契約の本旨に従って、その労務を提供するためにその労働時間を用い、その労務にのみ従事しなければならない。したがって、労働組合又はその組合員が労働時間中にした組合活動は、原則として、正当なものということはできない。‥‥、本件職場集会(一)、(二)は、労働時間中に、病院の管理する物的施設(元空腹時血糖室、テニス・コート)を利用して開かれたものである。‥‥、労働時間中に職場集会を開く必要性を重視して、それが許されるとすることができないことも‥‥当然である。‥‥結局、病院が本件職場集会(一)、(二)に対して本件警告書を交付したとしても、それは、ひっきょう支部組合又はその組合員の労働契約上の義務に反し、企業秩序を乱す行為の是正を求めるものにすぎない‥‥」と判示しているが、業務を阻害しない態様であることは組合活動は勤務時間内の組合活動を正当化することできないことを明確にした判例ともいえる。
ハ. オリエンタルモーター事件 最二小判平7・9・8判時1546-130http://web.churoi.go.jp/han/h00640.html
組合に対する食堂利用拒否が不当労働行為とした原判決を破棄自判。「本件で問題となっている施設が食堂であって、組合がそれを使用することによる上告人の業務上の支障が一般的には大きいといえないこと。組合事務所を認められていないことから食堂の使用を認められないと企業内での組合活動が困難となること。上告人が労働委員会の勧告を拒否したことの事情を考慮してもなお、条件が折り合わないまま、上告人が組合又はその組合員に食堂の使用を許諾しない状況が続いていることをもって、上告人の権利の濫用であると認められるべき特段の事情があるとはいえず、組合の食堂利用拒否が上告人の食堂使用拒否が不当労働行為に当たるということはできない。」と判示し、やはり業務上の支障が一般的には大きいといえないことが組合活動を正当化する理由にはならないことを明らかにしている・
 業務に具たて意的な支障がないことは、特別の事情として組合活動を正当化する根拠にはならないことは、済生会中央病院事件判決で、オリエンタルモーター事件判決で重ねて示されているのであって。札幌地本判決の判例法理は変質することなく安定的に維持されていると理解してよい。
 必ずしも業務上の支障があったとはいえないということは企業施設内の無許可組合活動を正当化することにはならないという判断は一貫しているのである。
引用
河上和雄
1980企業の施設管理権と組合活動」「法律のひろば33巻1号
高木紘一
1978ジュリスト臨時増刊666号202頁 政治活動の禁止と反戦プレートの着用――目黒電報電話局事件

2018/05/13

私鉄総連春闘ワッペン闘争の法的評価(下書きその2)

承前
 (3)国労札幌地本ビラ貼り事件昭和54・10・30民集33-6-647について
 事案は大略して次のとおりである。国労は昭和44年春闘に際して各地方本部に対してビラ貼付活動を指令した。原告らは支部・分会の決定を受けて「合理化反対」「大幅賃上げ」等を内容とする春闘ビラ(ステッカー)を勤務時間外に職員詰所等ににある自己又は同僚組合員の使用するロッカーに、セロテープ、紙粘着テープによって少ない者は2枚、最も多い者は32枚貼付した(原告以外の組合員も含めて総計310個のロッカーに五百数十枚のビラを貼った)。原告らは貼付行動の際、これを現認した助役ら職制と応酬、制止をはねのけた。
 この行為が掲示板以外での掲示類を禁止した通達に違反し、就業規則に定めた「上司の命令に服従しないとき」等の懲戒事由に該当するとして、戒告処分に付し、翌年度の定期昇給一号俸分の延伸という制裁を課したため、原告らは戒告処分の無効確認を請求して訴えたものである。
 一審(札幌地判昭47・12・22判時709)は被告国鉄勝訴、原審(札幌高裁昭49・12・28は一転して原告国労札幌支部組合員の請求を全面的に認めたが、最高裁第三小法廷は全員一致で原判決破棄自判して、原告の請求を終局的に斥けた。
 企業秩序論の3つめの最高裁判例である。富士重工事件は企業秩序違反行為の社内調査協力拒否に関して、目黒電報電話局事件は施設内での政治活動事案であったが、国労札幌事件は企業施設内での組合活動事案で、本件はロッカーのビラ貼りであるが、集会・演説その他企業施設を利用する組合活動全般の判断枠組みを示しており、多くの判例で引用される指導判例の位置づけにある。
 判旨は労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが、使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであつて、正当な組合活動にはあたらないとするものである。
 
 
A 国労札幌地本事件判決の意義
 
1. プロレイバー学説「受忍義務説」の否定
 
 判決は「労働組合が当然に当該企業の物的施設を利用する権利を保障されていると解すべき理由はなんら存しないから‥‥‥使用者の許諾なしに右物的施設を利用する権限をもっているということはできない。‥‥‥利用の必要性が大きいことのゆえに、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために利用しうる権限を取得し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない」と判示し明確に受忍義務説を否定した。
 学説多数説であった受忍義務説とは、組合活動の場合は、施設利用について使用者に受忍義務があるとするものである(たとえば籾井常喜1965 183頁 片岡曻・大沼邦博1991 321頁)。立論の基礎は憲法28条の団結権、団体行動権をプロ・レ-バー的に広く解釈し、それは私人間効力の及ぶもので使用者の権利や自由(その中心は財産権、具体的には労務指揮権や施設管理権)を一定の制約の契機が含まれていると解する。その根底にある思想は、憲法28条を、近代市民法秩序の核心である財産権、所有権、営業の自由を制約する契機として理解し、市民法秩序を超克し階級闘争としての労働運動を支援するというイデオロギー的背景を持つ学説である。
 受忍義務説を採用した下級審判例としては、刑事事件で全電通東海電通局ビラ貼事件名古屋地判昭38・9・28判時359があり「使用者の施設管理権も労働者の団結権保障とのかねあいから、‥‥権利の本質的な意味で制約をうけ、そこから生じる使用者の不利益は使用者において受忍すべき場合がある。」と受忍義務を団結権保障のコロラリーとして承認する判断をとつている。
 事案は昭和34年年3月全電通役員が中心となって東海電気通信局庁舎の正面玄関やガラス窓等に、不当処分撤回、大巾賃上げ等を求める趣旨のビラ約四千枚を糊で貼付した行為が、庁舎の外観を著しく汚したものとして刑法260条の建造物損壊罪に問われたものであるが、同条の構成要件に至ってないとし、軽犯罪1条33号も労使の紛争状態の組合活動については同法は適用されないと断じ、仮に本件ビラ貼りが形式上建造物損壊に当たるとしても、それは組合活動の一環として合法的であり、違法性を欠き無罪であるとした(控訴審名古屋高判昭39・12・28判時407では破棄自判有罪)。
 しかしプロレイバー側でも、受忍義務説の論理に批判があって、団結権は施設管理権を当然に制約する明確な内容は与えられていない(小西国友1975)、使用者の団交応諾義務(労組法7条2項)や組合活動の妨害・介入の禁止(労組法7条3項)みと無関係に受忍義務を課す実定法上の根拠はなく、受忍義務とはすなわち便宜供与義務になるから、経費援助の肯定は経費援助禁止の原則((労組法2条但書3号、7条3号)と矛盾する(下井隆史1980)との指摘がある。(なお小西、下井が主張する違法性阻却説も、後述するがこの判決の判断枠組みでは排除するものであることが判例の蓄積によって明らかになっている)
 また下級審判例で受忍義務説を否定した判例としては、動労甲府支部ビラ貼り事件東京地判昭50・7・15判時784(中川幹郎チーム)が、「助士廃止粉砕」などと記載したビラ約三千五百枚を鉄道管理局庁舎内に貼った行為は、使用者の所有権や施設管理権「管理及び運営の目的に背馳し、業務の能率的正常な運営を一切排除する権能」を強調する一方、たとえ企業内組合の場合であっても組合活動のために企業施設を利用する「権限」を当然有するものではないとし、それが認められない以上、使用者が無断ビラ貼りを「受忍」すべきいわれはなく、当該のビラ貼りは使用者の所有権ないし施設管理権の侵害にあたるとして、ビラ貼り事件で初めて、労働組合や組合員に損害賠償責任を認め、ビラはがし代142,300円の支払いを動労側に命じ、明確に受忍義務を否定したリーディングケースである。
 ビラ配布事案であるが日本エヌ・シー・アール事件東京高判裁昭52・7・14判時86881は組合活動は原則として就業時間外に事業場外においてなすべきことを明確に述べ、受忍義務説を排除した判例と評価できる。
 「一般に事業場は、当然に使用者の管理に属し、労働者は、自己の労働力を使用者に委ねるために事業場に出入りを許され、就業時間中は使用者の指揮命令に従い労務に服する義務を負うものであり、労働組合は労働者が団結により経済的地位の向上を図ることを目的として自主的に結成加入した団体であって、使用者から独立した別個の存在である。従って、労働者の労働組合活動は原則として就業時間外にしかも事業所外においてなすべきであって、労働者が事業上内で労働組合活動をすることは使用者の承認のない限り当然には許されず、この理は労働組合運動が就業時間中の休憩時間に行われても、就業時間外に行われても変わりがないと解すべきである」と説いた。こうした下級審判例の説示を企業秩序論として構成しなおしたのが国労札幌地本判決といえるだろう。
 企業施設は使用者の所有管理に属し、市民法(私法)理論からすれば、労働組合の利用権は当然には認められないものである。したがって受忍義務説の否定は、労働組合に実定法で与えられたもの以上の、市民法秩序を超える権利を付与されるものではないことを示した判決と評価してもよい。
2 施設管理権の脆弱性の解消
 判決は、次のように企業秩序論を説示する。
「思うに、企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、それを構成する人的要素及びその所有し管理する物的施設の両者を総合し合理的・合目的的に配備組織して企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであつて、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めうべく、その一環として、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもつて定め、又は具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができるもの、と解するのが相当である」
 この企業秩序論の判例法理が最高裁によってが案出された最大の理由は「施設管理権」の脆弱さと空隙を埋める必要性があったと解する。
 すなわち、終戦直後、経営者が直面した生産管理闘争のようなきわめて悪質な争議行為や経営内での団結示威その他無許可組合活動に対し、組合規制力を強化するための使用者は「経営権」を確立する必要があった。
 当初経営者は企業内組合活動を規制する根拠を、労働規律から施設利用までカバーする「経営権」に求めていたが、包括的な経営権の観念を裁判所が必ずしも受け入れなかったために根拠は「労務指揮権」+「施設管理権」であるとされるようになった。
 しかし、「労務指揮権」はその法的根拠を労務当事者の契約に求めざるをえず、「施設管理権」の主張も脆弱性を有していた。その根拠を所有権・占有権という物権的権利に求める限り、所有権の一部をなし、建物、敷地等の会社施設を維持、保全、改良する具体的機能として内容づけられることとなり、妨害排除の物権的請求権か、無権利者による無断利用、毀損行為をとらえて行う不法行為にともなう賠償請求という、民法上の主張にとどまり従業員懲戒の根拠としては難点があったのである。
 また労務指揮権+物的維持管理権限に限定された施設管理権の主張は、直接労務指揮権限をもって規律しえない時間帯である、休憩時間、就業時間前、就業後の組合活動について空隙を残すことになった(菊地高志1973)
 このことはプロレイバー労働法学につけ込む隙を与えた。受忍義務説の論理構成は「施設管理権」とは元来法律用語ではなく、昭和28・9年頃使用者側から主張された政策概念としたうえ、所有権・占有権の一つの機能として位置づけ、物的管理権に限定して承認するというものであった(西谷敏1980})。それゆえ「物的管理権である以上、施設管理権は組合活動に対して直接向けられるべきものではない」とされる。(峯村光郎1969 161頁、本多淳亮1964 21頁)。
 つまり受忍義務説に潰すには、施設管理権を侵害するような行為を懲戒するには理由づけが必要であり、それには施設管理権を企業秩序と関連づける必要があった。懲戒処分は企業秩序の維持の目的をもって制定されるからである。
  以下時岡肇調査官の判解をそのまま引用する。―ー本判決が「施設管理権」  という用語を用いずに  「職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該物的施設を管理利用する使用者の権限」と判示したのは。以上のようにな理由から物的施設の管理運用を施設の所有権(物的管理権)のみから理論づけないで使用者の企業秩序維持のため必要な措置をとりうる機能も含む趣旨、すなわち人的・物的両面を含む使用者の権限として構成したことを明らかにしたものーーである。
 
  (つづく)
 
引用・参考
片岡曻・大沼邦宏
1991『労働団体法』青林書院
菊地高志
1973「組合のビラ配布と施設管理権-日本ナショナル金銭登録事件を中心として-ー」日本ナショナル金銭登録機事件横浜地裁昭43・2・9判決 労判172号
小西国友
1975「ビラ貼付と施設管理権」季刊労働法95号
下井隆史
1980「労働組合のビラ貼り活動に関する再論」判タ406号
時岡肇『最高裁判所判例解説民事篇昭和54年度』 339頁
西谷敏
1980「施設管理権の法的性格とその限界」『法学雑誌』大阪市立大学法学会26(3・4)
本多淳亮
1964『業務命令施設管理権と組合活動』労働法学出版 
峯村光郎
1969『経営秩序と団結活動』総合労働研究所
籾井常喜
1965『経営秩序と組合活動-不当労働行為の法理経営秩序と組合活動』総合労働研究所 

2018/05/06

私鉄総連春闘ワッペン闘争の法的評価(下書きその1)

 毎年恒例となっている2月中旬より3月中旬の私鉄総連春闘ワッペン着用闘争であるが、この行為は、私鉄労連組合員として春闘に参加していることを示す自己表示であり、団結内部で組合員相互の連帯感や、闘争意識を高める目的を有し、使用者に対しての団結示威である。のみならず、乗客に春闘への連帯を訴えかける教宣活動として絶大な宣伝効果をもち、私は春闘に連帯したくもない一利用客であるから、みせつけられるのは非常に不快であり、業務外の徽章の着用、勤務をしながら駅員や乗務員が団結示威ないし誇示する組合活動は、職務に専念せず債務の本旨を履行しない勤務態度として強い不快感をもつのであって、これを放置しているかにみえる各社の労務管理の緩いことにも強い不信感をもつ。
  会社側や国会議員等にこのことの苦情を出すための準備として服装戦術(リボン、プレート、腕章、ゼッケン、鉢巻、バッジの着用による訴えかけや団結示威)判例を検討する。
 このまま既成事実として放置してよいものではないからである。
 ここで問題とするのは民鉄の労務管理である。東京メトロ、東急、京浜急行、京成、東武、京王の各社である、上記の六社はいずれも駅員・乗務員の春闘ワッペン着用を私自身がこの目で見ている。関西その他の地方は現場を見てないので特に言及しないこととする。(なお組合が私鉄総連に加盟していない西武[コーポレートメッセージのワッペン着用を見たが会社の宣伝なのでもちろん問題ない]や新ダイヤを宣伝するプレート着用を見たが春闘ワッペンは見ていない小田急は対象外である。)
 むろん労務管理は経営者の裁量によるものであり、株主でもないのに文句をいう筋合いはないし、私鉄は国鉄のように公共の福祉を目的とする公法人ではない。
しかし鉄道事業は,国民の社会経済生活に不可欠の公共性の極めて高い事業であるとともに,乗務員、駅員の職務は不特定多数の利用客の生命、身体及び財産の安全に深くかかわるものであるから、職務規律が強く求められ、その労務の提供のあり方と企業秩序の乱れについては関心をもたれて当然なのであって、利用者の立場から従業員の職務専念義務の履行、服装の整正について相応の労務管理が求めてよいと考える。
とくに東京メトロは国と東京都が株主の公的資本会社でもあるから、国会や都議会で問題提議してよい事柄と考える。
 
一、判例法理では正当な行為とみなされる余地はかなり小さいが、実際に取り締まるには、就業規則や労働協約で会社が認めた腕章、胸章等の着用の禁止等を明示する必要があり、会社が事実上容認している慣行をあらためるには政治家の働きが必要に思われる
一) リボン闘争それ自体の判例法理は未解決な部分を残しているが、企業秩序定立維持権に関する判例の判断枠組、判断基準は安定して維持されており、勤務時間中の組合活動や企業秩序侵害の違反を、具体的な業務阻害から判断することを排除していることから、勤務時間中のワッペン着用闘争が正当な行為とされる余地はかなり小さい
 
 労働組合法第7条は、労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な扱いをすること、 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入することなどを禁止しており、労働組合は労働委員会に救済申立を行うことができ、労働委員会は救済命令を発し、使用者側がそれに不服な場合は救済命令取消訴訟を起こすことができる。
 問題はワッペン闘争等の服装戦術が労働組合の正当な行為か否かであるか、これは労働委員会命令、多数蓄積している救済命令取消し訴訟等の判例及び学説で判断していくことになる。
 結論を先にいうと、ワッペン着用を勤務時間中の組合活動ととらえると正当な行為と評価される余地は小さいといえる。企業秩序論の観点からJRのようにしかるべき就業規則や労働協約があることを前提とすれば文句ないが、私は各社の状況を具体的に知らず民鉄では例えば会社で認めた胸章、腕章等以外の着用を禁止する規定がないとなると、企業秩序の定立のために規則から見直す必要がある。
 とはいえ将棋に譬えると、取締まる側のほうが初めから評価値で千点有利な形勢、積極的に攻めていけば負けることはない。ただやる気のなさだけの問題とさえいえるのである。
 
1.昭和57年大成観光リボン闘争事件最高裁第3小法廷判決までの判例の推移
 
(1)判例法理転換期の下級審判例について
 
 大局的見地から判例法理の推移を概観しておく。
  我が国では昭和40年代まで、階級闘争としての戦闘的な労働運動を支援する立場から労働基本権によって財産権や所有権という市民法秩序の侵害を正当化させようとする赤い思想にもとづいて、労働組合に通常なら犯罪とされる行為でも処罰されない特権を付与する可罰的違法論、企業内組合活動では、受忍義務説(法益権衡、法益調整論により使用者の権限の侵害を正当化)や施設管理権を物的管理権に限定する悪質なプロレイバー学説が司法にも影響力を持っていたため職場秩序の混乱をもたらしていた。
 リボン闘争についても、全逓灘郵便局事件・ 神戸地判昭42・4・6労民集18-2-302、国労青函地本事件・函館地判昭47・5・19労民集23-3-347が正当な組合活動としている。
  しかし、昭和48年石田和外コート末期の最高裁の構成の変化等で司法の左傾化に歯止めがかかったことにより、住居侵入罪、公務執行妨害に問われたマスピケ事犯で可罰的違法論を適用して無罪とした原判決を覆した国労久留米駅事件大法廷判決昭48・4・25刑集27-3-418を決定的なターニングポイントとしてプロレーバー学説は明確に否認の方向に舵がきられ、企業内組合活動についていえば、受忍義務説より許諾説に転換していった。
   服装戦術では、●ノースウエスト航空事件・東京高判昭47・12・21労判速805-9が初めて腕章着用の就労を職務専念義務違反と判示した。
三井鉱山賃金カット事件・福岡地判昭46・3・15労民集22-2-268は「不当処分反対、三川通勤イヤ!」「抵抗なくして安全なし」等と書きつけた組合員のゼッケンの着用が、就業時間中の会社構内における情宣等を禁止する労働協約の条項に違反し、正当な組合活動とはいえないと判示した。
●国労青函地本リボン闘争事件・ 札幌高判昭48・5・29
労民集24-3-257は、判断枠組みを提示し、理論的説示をしていることで、リーディングケースとなっている。
 国鉄職員が勤務時間中に職務の遂行に関係のない行為または活動をするときは、具体的な業務阻害がなくても、職務に対する精神的・肉体的活動の集中を妨げない特別の事情がある場合を除いて国鉄法32条2項の職務専念義務に違反するとしたうえで、本件リボンを着用することにより、勤務に従事しながら、青函地本の指令に従い、国労の組合員として意思表示をし、相互の団結と使用者に対する示威、国民に対する教宣活動をしていたものであり、組合活動を実行していることを意識しながら、その職務に従事していたものであるから、その精神的活動力のすべてを職務の遂行にのみ集中していたものでないことは明らかであり、職務専念義務違反とした。
 また服制及び被服類取扱基準規程の「被服類には、腕章、キ章及び服飾類であって、この規程に定めるもの及び別に定めるもの以外のものを着用してはならない」とする規定にも違反するとした。
 さらに国鉄職員がこれを着用して勤務していることに対し旅客公衆の中には不快感を抱く者があることは十分予想されると述べ、被控訴人らは、そのような不快感は反組合的感情で保護するに値しないと主張するが、しかし、その不快感が、本件リボンの内容である国労の要求内容に対する不満にあるのではなく、被控訴人らが職務に従事しながら本件リボンを着用して組合活動をしているその勤務の仕方に対する不信、不安によるものであるときは、国鉄が公共の福祉の増進を目的とする公法人で、その資本は全額政府が出資していることを考えると、右の趣旨の旅客公衆の不快感は十分理由があるものであつて、これを単なる反組合的感情にすぎないものということはできない。さらに、国鉄内には、国労のほか、これと対立関係にある鉄道労働組合があることは顕著な事実であり、本件リボンの着用が鉄労組合員その他組合未加入者に心理的な動揺を与え、国労の組合員の中にも指令に反し本件リボンを着用しなかつた者が相当数あったことが認められるが、これらの者にも精神的な重圧となったことも十分考えられ、勤務時間中の本件リボンの着用は、その勤務の場において、不要に職場の規律、秩序を乱すおそれのあるものというべきであると述べ、原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
神田郵便局事件・東京地判昭49・5・27労民集25-3-236も「全逓神田支部」と染め抜いた腕章を着用した行為は就業規則に違反し、職務専念義務に違反するとした。二審東京高判昭51・2・25訴務月報22-3-740も一審を支持。
大成観光事件・東京地判昭50・3・11労民集26-2-125は、中川幹郎チームの著名な判決である。リボン闘争はそれが争議行為であれ、その他の組合活動と評価されるものであれ違法と断じた。勤務時間の場で労働者がリボン闘争による組合活動に従事することは、人の褌で相撲を取る類の便乗行為であるというべく、誠意に労務に服すべき労働者の義務に違背し違法であり、使用者はそれを受忍する理由はないなどとして、労組の正当な行為とした東京都地労委の救済命令を取消す強烈な判決である。二審東京高判昭52・8・9労民集28-4-362もこの判断枠組を支持した。
全逓灘郵便局事件・大阪高判昭51・1・30労民集27-1-18は、一審判決の被告敗訴部分を取消し、本件リボン等の着用は、上司の取外し命令を拒否する決意の下に組合活動目的を客観的持続的に表明し、組合員が互いにこれを確認し、当局および第三者に示威する趣旨の精神的活動を継続したものにほかならないから、これによって具体的にどのような業務遂行上の支障を生じたかを問うまでもなく、右は、それ自体本来の職務遂行に属しないのはもちろん、郵便業務の秩序ある正常な運営と相容れぬところの積極的な職場秩序攪乱行為であつたと断ずるを相当とし、勤務時間内における組合活動禁止と職務専念義務を定めた就業規則の趣旨に抵触する。さらに「正しくない服装」を禁止する規則にも違反するとした。郵政省ではこれまで業務成績の向上を計る目的で職員に対し本件リボンとほとんど同形同色のリボンで「簡易保険新加入運動」「郵便貯金五千億円突破」等と記載したものを着用させたことがある。しかし、リボン等の着用が正しい服装であるかどうかは、単にその外形のみによって判断すべきものではなく、記載文字等によってその着用が一定の目的を持った意味ある行為であることを考えて綜合判断する必要があると判示した。
●沖縄全軍労事件・那覇地判昭51・4・2
1労民集27-2-228は在日米軍基地の従業員が赤布の鉢巻を着用して労務の提供することは、雇用契約上の債務の本旨に従った履行の提供とはいえないとして賃金カットを適法と認めた。二審福岡高那覇支判昭53・4・13労民集29-2-253も一審を支持。
全建労事件・東京地判昭52・7・25行裁集28-67-680 は、本件建設省職員のリボン闘争が職務専念を欠く結果を招く蓋然性の高い行為であり、職場全体においては違和感を生ぜしめ、国民に対しては国家公務員の信用を失墜するおそれを生み出す。リボン闘争に参加した原告らは全体の奉仕者たる国家公務員として規律保持に欠けるところがあつたものといわざるを得ないなどとして、リボン闘争の指導、着用を勤務成績評価のマイナス評価とすることを認めている。
 
  以上のリボン闘争等を違法ないし正当な行為とみなさない下級審判例を類型化すれば以下のとおりである。
●雇用契約上の債務の本旨に従った労務の提供ではない 
ノースウエスト航空事件・東京高判昭47・12・21
  沖縄全軍労事件・那覇地判昭51・4・21
誠意に労務に服すべき労働者の義務に違背する
  大成観光事件・東京地判昭50・3・11
職務専念義務に違反する
国労青函地本リボン闘争事件・ 札幌高判昭48・5・29
全逓灘郵便局事件・大阪高判昭51・1・30
(いずれも具体的にどのような業務遂行上の支障を生じたかを問わず職務専念義務違反とする)
●就業規則の服装整正規定や正しくない服装の禁止に違反する

 国労青函地本リボン闘争事件・ 札幌高判昭48・5・29
全逓灘郵便局事件・大阪高判昭51・1・30
●勤務時間中の組合活動を禁止する就業規則、労働協約に違反する

三井鉱山賃金カット事件・福岡地判昭46・3・15
全逓灘郵便局事件・大阪高判昭51・1・30
 
(2)昭和52年目黒電報電話局反戦プレート事件判決について
(要旨のみ)
  本件勤務時間中の反戦プレート着用行為に絞って就業規則違反か否かについて概略を述べれば、公社法三四条二項の職務専念義務規定について「規定の違反が成立するためには現実に職務の遂行が阻害されるなど実害の発生を必ずしも要件とするものではない」と述べているが、実はプレート着用は政治行為禁止の規則に違反したので戒告処分とされており、職務専念義務違反が直接の理由にはなっていない。
 この判決では、まず形式的な就業規則違反、実質的に局所内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは規則違反にならないとする判断基準を示した。
  (これは、政治活動に関する下級審判例の具体的危険説を排除し抽象的危険説を採用した意味が含まれている。具体的危険説とは学説多数が支持した現実且つ具体的な経営秩序紊乱の結果を招来する場合のみ禁止できるとする立場だが、そうではなく何々のおそれというような抽象的危険であっても合理的理由とするのである)。
  そのうえで、本件は、就業規則の政治活動禁止規定違反とされるプレート着用行為が、同僚に訴えかける行動が職務専念に専念すべき規律秩序を乱しているだけでなく、他の職員の職務への集中を妨げるおそれがあるものとして、実質的に企業秩序を乱すおそれがない特別の事情があるものとはいえないから、就業規則違反とされた。  
  要するに抽象的危険、秩序を乱すおそれかがあるという理由づけで、就業規則違反-懲戒事由となりうることを示している。
  問題は、本件が職員単独の政治活動事案であり、組合活動ではない。このため組合活動としての団結示威であるリボン・ワッペン闘争の先例となりうるか、この点については大成観光リボン闘争事件・最三小判昭57・4・1の法的評価(理論的説示がないため評価が割れている)の項目で検討することだが、若干重複しても触れておく。
  目黒電報電話局判決は、ビラ配りも含めた本件政治活動禁止の合理性を説くにあたって、「企業施設‥‥管理を妨げるおそれ」「他の従業員の業務遂行‥‥妨げるおそれ」「他の従業員の休憩時間の利用を妨げ‥‥るおそれ」「企業秩序の維持に支障をはたすおそれが強い」と結論づけているが、これは政治活動に限ったことではなく、労働組合による無許可集会、演説行為、署名、募金活動等にもいいうるのであって、組合活動をも射程範囲とした判示と推測できる。
 加えて目黒電報電話局判決の職務専念義務の説示は、国労青函地本リボン闘争事件・ 札幌高判昭48・5・29の説示と同じであり、同判決の判断枠組みを大筋で支持していることとを推測できる。
 理論的な説示がなく、当該事案のリボン闘争を正当な行為ではないとした大成観光リボン闘争事件・最三小判昭57・4・1について、新村正人調査官解説(判解)は目黒電報電話局反戦プレート事件最高裁判決の先例としての意義につき次のように述べている。
「‥‥右事案におけるプレートの着用は組合活動として行われたものではないが、その判旨の趣旨を推し及ぼすと、同様に職務専念義務を肯定すべき私企業においてリボン闘争が就業時間中の組合活動としておこなわれたときは、労働組合の正当な行為とはいえないことになる。‥‥本件リボン闘争が組合活動として行われたものとの前提に立つ限り、その正当性を否定することは、判例理論上必然のことといってよい」
  調査官解説(判解)は公式注釈ではない。あくまでも私的見解にすぎないが、とはいえ判解は事情に通じている法律家の標準的な解釈とみてよい。調査官は暗に目黒電信電話局判決を引用することもなく、判決理由のないことで混迷を招いた多数意見を批判しているのだ。
  これは、当時この判決に関与した4裁判官のうち2人が目黒電報電話局判決に批判的だった特殊事情による。
(本文)
 
  プレート着用行為で最高裁判例では目黒電報電話局事件・最三小判昭52・12・13民集31-7-974がある。
先例として引用されることが多く、指導的判例といえる。
  事案は電電公社職員が、昭和42年6月16日から22日まで継続して左胸に青地に白色で「ベトナム侵略反対 米軍立川基地拡張阻止」と書かれたプラスチック製のプレートを着用して勤務した。その間目黒局の管理職により取り外すよう注意を受けたが従わず、6月23日の休憩時間に、管理職の態度に抗議し、ワッペン、ブレートの着用を呼びかけるビラ数十枚を配布した。
電電公社は、プレート着用行為が就業規則5条7項「職員は、局所内において選挙活動その他の政治活動をしてはならない」らに違反し、ビラ配布行為は5条6項「職員は、局所内において、演説、集会、貼紙、掲示、ビラの配布その他これに類する行為をしようとするときは、事前に別に定めるその局所の管理責任者の許可を受けなければならない」に違反し懲戒事由に該当するとして、戒告処分に付したが、被処分職員が戒告処分の無効確認を請求した訴訟である。
一審東京地判昭45・4・13労民集21-2-574は、公社就業規則の「政治活動」とは「政治目的の政治活動」のことであり一般職公務員の政治活動の制限と同趣旨と解釈し、本件プレート着用行為は懲戒事由として規定する「政治活動」に当たらないなどとして、戒告処分を無効とした。二審東京高判昭47・3・10労判速781-3一審の判断正当として控訴を棄却。
上告審は、原判決を破棄し、一審判決を取消して原告の請求を棄却(戒告処分を有効と)した。
多数意見はまず、電電公社の使用者と労働者の関係は私法上のものであるとして、就業規則制定の目的を論じ、本件政治活動禁止の就業規則は、私企業と同様に、企業秩序の維持を主眼とするものして、一般公務員と同趣旨とした一審の解釈を退けたうえで、次のように企業秩序論を展開し、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、当然許されるとする。
「一般私企業においては、元来、職場は業務遂行のための場であって政治活動その他従業員の私的活動のための場所ではないから、従業員は職場内において当然には政治活動をする権利を有するというわけのものでないばかりでなく、職場内における従業員の政治活動は、従業員相互間の政治的対立ないし抗争を生じさせるおそれがあり、また、それが使用者の管理する企業施設を利用して行われるものである以上その管理を妨げるおそれがあり、しかも、それを就業時間中に行う従業員がある場合にはその労務提供業務に違反するにとどまらず他の従業員の業務遂行をも妨げるおそれがあり、また、就業時間外であっても休憩時間中に行われる場合には他の従業員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後における作業能率を低下させるおそれのあることがあるなど、企業秩序の維持に支障をきたすおそれが強いものといわなければならない。したがって、一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許される‥‥」
  そして、次のように形式的就業規則違反では懲戒処分に付すことはできない。実質的に秩序を乱すおそれのない特別の事情の認められるときは違反にはならないという、先例としてよく引用される判断基準が示される。
「それは社会通念上政治的な活動にあたり、しかもそれが目黒局の局所内で行われたものである以上、公社就業規則五条七項に違反することは、明らかである。もつとも、公社就業規則五条七項の規定は、前記のように局所内の秩序風紀の維持を目的としたものであることにかんがみ、形式的に右規定に違反するようにみえる場合であっても、実質的に局所内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときには、右規定の違反になるとはいえないと解するのが、相当である」
  そのうえで、勤務時間中におけるプレート着用行為が局所内の規律秩序を乱すおそれがあるか判断しているが、大筋以下の2点で実質的に局所内の秩序を乱すもしくは乱すおそれがあるので、就業規則違反として懲戒事由となると結論する。
 
○職務と無関係な同僚への訴えかれける行動は、職務の遂行と無関係な行動であり、職務に専念すべき局所内の規律秩序を乱している
○他の職員の注意力を散漫にし、あるいは職場内に特殊な雰囲気をかもし出し、よって他の職員がその注意力を職務に集中することを妨げるおそれがあることは局所内の秩序維持に反する
 
  公社法三四条二項が「職員は、全力を挙げてその職務の遂行に専念しなければならない旨を規定しているのであるが、これは職員がその勤務時間及び勤務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないことを意味するものであり、右規定の違反が成立するためには現実に職務の遂行が阻害されるなど実害の発生を必ずしも要件とするものではないと解すべきである。本件についてこれをみれば、被上告人の勤務時間中における本件プレート着用行為は、前記のように職場の同僚に対する訴えかけという性質をもち、それ自体、公社職員としての職務の遂行に直接関係のない行動を勤務時間中に行ったものであつて,身体活動の面だけからみれば作業の遂行に特段の支障が生じなかつたとしても、精神的活動の面からみれば注意力のすべてが職務の遂行に向けられなかつたものと解されるから、職務上の注意力のすべてを職務遂行のために用い職務にのみ従事すべき義務に違反し、職務に専念すべき局所内の規律秩序を乱すものであつたといわなければならない。同時にまた、勤務時間中に本件プレートを着用し同僚に訴えかけるという被上告人の行動は、他の職員の注意力を散漫にし、あるいは職場内に特殊な雰囲気をかもし出し、よって他の職員がその注意力を職務に集中することを妨げるおそれのあるものであるから、この面からも局所内の秩序維持に反するものであつたというべきである。すなわち、被上告人の本件プレート着用行為は、実質的にみても、局所内の秩序を乱すものであり、公社就業規則‥‥所定の懲戒事由に該当する」と判示した。
 
A 目黒電信電話局事件最高裁判決の全般的評価
 プロレイバー学者がこぞって特異な判例として非難したため、左翼人士や組織労働者に評判が悪い。しかし私は含蓄の深い意義を肯定的に評価する。
  それは企業秩序論(企業秩序定立維持権ともいう)のリーディングケースとして、政治活動に関する先例としては、下級審判例の具体的危険説を排除し抽象的危険説を採用した意義が大きい。プレート着用に関する先例として、職務専念義務の先例として、いわゆる施設管理権の先例としても重要で、休憩時間自由利用原則は施設管理権の制約原理とならないことを示し「休憩時間中であっても、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあって‥‥企業秩序を乱すおそれがある」行為は「管理者の許可にかからせる」ものであることを明らかにし、施設管理権を物的管理権に限定するプロレイバー学説を明確に否認したといいうる。ここで注意すべきことは、休憩時間の従業員の行動を規制する根拠として「施設管理権」だけではなく「企業秩序を維持するための規律に従うべき義務」を加えていることである。従業員には企業秩序遵守義務があるということは、本件決と同日の富士重工業原水禁事情聴取事件最大小判昭52・12・13民集31-7--1037でも説示している。
  またこの判決は真面目に働く勤労者にとって有益である。他の職員の注意力を散漫にし、他の職員がその注意力を職務に集中することを妨げる勤務時間中の行為は企業秩序を乱すもので排除されるべきとされている。
  なお菊池高志の判例批評は「多数労働者が密接な関連・協力関係にたって業務が遂行される近代的経営の現実に立てば、他の労働者の義務遂行の障害とならないよう配慮すべき義務を負うと考えることにも合理性がある」との評価である。
  本件は政治活動の事案であるしても、私企業一般の企業秩序論の先例でもあるという位置づけにあることから、勤務時間中のそれが政治活動であれ、組合活動であれ、職務専念妨害のおそれのある行為は、リボンやワッペン等の服装戦術のみならず、地声での演説行為いわゆる頭上報告、業務と関係のないマイク放送、署名募金活動、職場離脱を促す行為等、就業規則制定を前提とするが禁止されてしかるべきことを示唆しているとみてよい。企業秩序論判例法理を根拠に勤労者が使用者に職務専念妨害抑止義務の履行を主張しうるというのが私の見解である。
  また就業規則違反は形式的違反では足らず、実質的な違反でなければ懲戒事由にならないという判断基準は、先例として多く引用されており、懲戒処分が無効された例もある。全般的にいえば実はバランスの取れた判例法理であると私は評価する。
B 基本的な性格としては企業秩序論判例といえる。同日の富士重工事件判決とセットで把握する必要がある。
 企業秩序論とは、最高裁第三小法廷が案出した画期的な判例法理であり、企業運営の諸権利を統合する上位概念として形成された判例法理である。今日まで判例は安定的に維持されている
  リーディングケースは富士重工原水禁事情聴取事件最大小判昭52・12・13民集31-7--1037、と同日の目黒電報電話局事件・最三小判昭52・12・13民集31-7-974である。
代表的な判例を挙げるなら、
●国労札幌地本ビラ貼り事件昭和54・10・30民集33-6-647企業が職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、一般的規則を定め又は具体的指示、命令を発し、その違反者に対し、企業秩序を乱す者として所定の措置をとりうる旨を明らかにした。
●関西電力社宅ビラ配布事件・最一小判昭58・9・8
判時1094-21労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、使用者に対して労務提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守すべき義務を負い、使用者は、広く企業秩序を維持し、もって企業の円滑な運営を図るために、その雇用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、当該労働者に対し、一種の制裁罰である懲戒を課することができるとした。
済生会中央病院事件・最一小判平元・12・11民集43-12-1786労働者は、労働契約の本旨に従って、その労務を提供するためにその労働時間を用い、その労務にのみ従事しなければならない。したがって、労働組合又はその組合員が労働時間中にした組合活動は、原則として正当なものということができないとする。
 企業秩序論の案出は要だった。特に施設管理権の問題、ビラ貼り、無許可集会その他の企業施設内の組合活動が戦後状況から解決されておらず、この混乱を収拾する必要があった。あたかも労働組合に労働基本権を根拠として、使用者の所有権・財産権その他の権限を制約して、企業施設無断利用権があるかのようなプロレイバー学説である受忍義務説は駆逐されなければならなかった。
戦後の混乱状況における使用者の経営権確立運動は、企業内組合活動を規制する根拠として、当初は労働規律から施設利用までカバーする「経営権」に求めていたが、包括的な経営権の観念を裁判所が必ずしも受け入れなかった。そのために根拠は「労務指揮権」+「施設管理権」であるとされるようになった。
 しかし、「労務指揮権」はその法的根拠を労務当事者の契約に求めざるをえず、「施設管理権」の主張も脆弱性を有していた。その根拠を所有権・占有権という物権的権利に求める限り、所有権の一部をなし、建物、敷地等の会社施設を維持、保全、改良する具体的機能として内容づけられることとなり、妨害排除の物権的請求権か、無権利者による無断利用、毀損行為をとらえて行う不法行為にともなう賠償請求という、民法上の主張にとどまり、ビラ貼りや無許可集会等に対して、中止命令を行い従わない者を懲戒処分に付す根拠としては弱いという難点があり、プロレイバーにつけこむ隙を与えていた。
また労務指揮権+物的維持管理権限に限定された施設管理権の主張は、直接労務指揮権限をもって規律しえない時間帯である、休憩時間、就業時間前、就業後の組合活動について空隙を残すことになった。(註-このパートの出所が菊池高志だったのか出所が不明になってしまった)
 この空隙を埋めたのが、目黒電報電話局事件・最三小判昭52・12・13以降進展した「企業秩序論」と称される判例法理なのである。
 そのような画期的意義を有する企業秩序、目黒電報電話局事件判決は同日の同じ裁判体による富士重工原水禁調査事件・最三小判昭52・12・13民集31-7-1037とセットにして企業秩序論のリーディングケースとして捉えるのが適切である。
 富士重工原水禁調査事件は、人事課長らによる企業内原水禁実行委員会とはどういうものか。メンバー、資金カンパ、署名の集計状況などの質問に対して、回答せず会社の調査に協力しなかった社員に対する譴責処分を適法とした原判決を破棄し、違法無効とした事案であるが、次のように企業秩序論を説示した。
  「そもそも、企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なものであり、企業は、この企業秩序を維持確保するため、これに必要な諸事項を規則をもつて一般的に定め、あるいは具体的に労働者に指示、命令することができ、また、企業秩序に違反する行為があつた場合には、その違反行為の内容、態様、程度等を明らかにして、乱された企業秩序の回復に必要な業務上の指示、命令を発し、又は違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため、事実関係の調査をすることができる‥‥‥労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負うが、企業の一般的な支配に服するものということはできない」
 この説示を目黒電報電話局事件に当てはめると、企業は企業秩序を維持確保するため、局所内での政治活動、無許可の演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を禁止する規則を定めることができ、違反者に中止命令、懲戒処分ができる。ただし実質的に企業秩序を乱すおそれのない特別な事情がある場合は規則違反にはならないと判示したということである。
(続く)
(引用・参考)
 
池田 恒男「国労札幌ビラ貼り事件」最高裁判決の「画期的」意義--現代日本法の一断面」『社會科學研究』33(5) 1981
石橋洋「企業内政治活動・ビラ配布の自由と企業秩序 : 目黒電報電話局事件・明治乳業事件判決を素材として」『季刊労働法』142 ?1987 http://hdl.handle.net/2298/14089
菊池高志「労働契約・組合活動・企業秩序法政研究 『法政研究』49(4) 1983 http://hdl.handle.net/2324/1792
喜多實 ?公社職員の反戦プレート着用と懲戒処分-目黒電報電話局事件 季刊労働法108号116頁
楠元茂「<論文>いわゆる服装斗争の法的考察 : 人権規定の第三者効力との関連において」『商経論叢』27 1978  http://ci.nii.ac.jp/naid/110000048788
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中嶋士元也「最高裁における『企業秩序論』」『季刊労働法』157号1992年
中嶋士元也 就業時間中の組合活動(1)大成観光事件,(2)JR東日本(神奈川・国労バッジ)事件――別冊ジュリスト165 号200頁
新村正人・最高裁判所判例解説民事篇昭和57年度 373頁
西谷敏「施設管理権の法的性格とその限界」『法学雑誌』大阪市立大学法学会26(3・4), 1980)
西谷敏 リボン闘争と懲戒処分 大成観光事件 ジュリスト臨時増刊792 号226 頁
松田保彦 いわゆるリボン闘争の正当性-ホテルオークラ事件 法学教室22号
花見忠 リボン闘争の正当性-ホテル・オークラ事件最高裁判決 ジュリスト711号
宮本安美 〔労働判例百選 第6版〕 リボン闘争 大成観光事件 別冊ジュリスト134 号 182 頁
山口浩一郎 電電公社職員の反戦プレート着用と懲戒戒告処分(新判例評釈524 )判例タイムズ357号105頁
吉田美喜夫〔労働判例百選 第8版〕就業時間中の組合活動:大成観光別冊ジュリスト197号184頁

2018/04/02

鉄道会社等への苦情下準備 服装戦術(リボン・腕章・プレート・組合バッジ等)判例

最近はじめたTwitter https://twitter.com/kawanishimasahiで最も反応があったのが私鉄総連春闘ワッペン不快だとのメッセージであった。わたしの把握している範囲では2月の後半頃から東京メトロ・東武・京成・京急・東急が、少し遅れて2月下旬から京王でワッペン着用を見ている。各社とも3月15日の大手私鉄回答日あたりまで、乗務員・駅係員が着用していたとみられる。

これは例年のことだが、慣例化は望ましくない。今年は官製春闘ということもあり、赤色(直径7~8センチ目測)の目立つものだったのでより不快だった。 花粉症よりも不快だ。

もっともワッペンには「春闘」とはあるが「公共交通利用促進」という会社ぐるみと一見思わせる偽装的標語があるだけで、賃上げ等の要求項目が記されてないというのが巧妙だが、「春闘」が賃上げ要求を主とする闘争を意味することは間違いないから、組合活動を実行していることを意識しながら、その職務に従事していたものというべきであり、職務に専念せず職務と関係ない組合活動を行うことは、旅客公衆から不信感をもたれても仕方ないのである。

むろん私企業の労使関係に株主でもない住民が関与すべき事柄ではないが、ワッペンに書かれているようにまさしく公共交通事業だから旅客公衆の側から苦情をしてもよいはずである。

乗務員や駅係員は、その職務が旅客公衆の身体、財産の安全にかかわるものとして、特に強く要請される職場規律の保持を確保するためにも、業務と無関係な、徽章・腕章・服飾を禁止すべきであるし、特に東京メトロは、国と東京都が株主となっている特殊会社であるから、議会でとりあげてもよい問題なのである。

  ワッペン等の服装戦術は一般に労働者の団結を示威し、使用者に対し心理的圧迫を加え、労働者の要求ないし主張を貫徹する争議行為的側面と、組合員相互間において連帯感を触発し、団結をより強固にし、使用者との交渉に当たって士気を鼓舞する組合活動的側面の双方を有するものと考えられるが、私鉄総連のそれは、旅客公衆の多くの人々に目に触れるので春闘への連帯呼びかけの宣伝効果は絶大だといえる。

むろん春闘に連帯する組織労働者の乗客はワッペンに賛同するかもしれないが、連合の組織率をみても組織労働者が乗客の大多数であるうるはずはなく、春闘に連帯したくない乗客にとっては、目障りで血圧の上がるものをみせつけられて、受忍を強いられている状況にある。この状況をなんとか打開したいと思う。

  (なお、私鉄総連に加盟していない西武はコーポレ―トメッセージのワッペン、小田急は新ダイヤを宣伝するプレートを着用していたが、これは業務用だからもちろん問題はない)

いずれにせよ、Twitterで公言しているので、会社や議員に苦情は必ず出します。

そのための服装戦術判例研究ですが、以下の通りかなりの蓄積があります。ざっと要点だけ見ましたが、私の立場が有利であり、反論にあっても耐えられる準備は可能。将棋の評価値でいうと初めから1000点有利で、あとはどう詰めろをかけていくかを考えていくだけのように思えます。

もちろんその他の重要問題は山積しているが、できることから1つ1つやっていく。

明らかに私の立場が有利とはこういうことです。企業秩序論判例は抽象的危険説をとっているので、具体的に業務が阻害されていないから許容されるという考え方はとらないのである。それを禁止する理由として、例えば、業務を遂行しながら組合活動を意識して行っているのであり、職務に専念しない勤務態度は、旅客公衆の安全にかかわる職務遂行のあり方として不適切とみられ、会社に対して不信感をもたれるおそれがあるとか、業務と無関係な徽章や腕章等の着用を禁止するのは、能率的業務遂行のために必要であるとかそういう抽象的な理由で禁止を正当化できるのである。したがってそれができないということはない。

なおプロレーバーがよく引用する、大成観光リボン闘争事件最三小判昭57・4・13の伊藤正己補足意見の調整的アプローチ、使用者の業務を具体的に阻害しない行動は職務専念義務に違背しないという組合寄りの見解は、あくまでも伊藤判事単独の少数意見にすぎず、中川チームの一審判決の論理構成を批判するものとして重宝されているにすぎず、先例となる多数意見ではないのだから、ワッペン闘争を擁護する決め手にはならないと考える。

服装戦術判例

〇服装戦術許容

●服装戦術を正当な組合活動と認めない

△服装戦術を正当な組合活動と認めないが処分を無効とする

 または服装戦術は違法だが違法性を軽微なものとする

〇全逓灘郵便局事件 神戸地判昭42・4・6

(勤務時間中に「さあ!団結で大巾賃上げをかちとろう」と記載したリボン及び「全逓、灘郵便局支部」と記載した腕章を着用することは、就業規則に違反せず、訓告処分を違法無効とし、慰謝料請求も許容する。控訴)

●青葉学園事件 東京地判昭44・6・5

(私立中・高等学校の教師による授業中のリボン着用、生徒あての文書配布等を理由としてした懲戒免職を有効とする)

〇ノースウエスト航空事件 東京地判昭44・11・11

(スト終了就労申入れの際組合員らが腕章を着用し、使用者の取りはずし要求に応じなかったとしても、特段の事情が認められないかぎり、右就労申入れが債務の本旨に従わない履行の提供とはならないと判示)

〇目黒電報電話局事件 東京地判昭45・4・13

(勤務時間中に「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と記載したプレートを着用したことは就業規則で禁止する政治活動には当たらず、取外し命令不服従を理由とする戒告処分を無効とする。控訴)。

〇目黒電報電話局事件 東京高判昭47・5・10

(控訴棄却、「ベトナム侵略反対・米軍立川基地拡張阻止」なるプレートを着用して執務することは禁止された政治活動にあたらないと判示、控訴人上告)

〇国労青函地本リボン闘争事件 函館地判昭47年・5・19

(制服の左胸に「大巾賃上げを斗いとろう、16万5千人合理化粉砕」と書いたリボンを着用することは、職務専念義務・服務規程に違反しないとし、訓告処分を無効とし、慰藉料請求も許容。控訴)

●ノースウエスト航空事件 東京高判昭47・12・21

(腕章着用が職務専念義務違反と判示)

△中部日本放送リボン闘争解雇事件 名古屋地判昭47・12・22

(就業時間中、社内及び取引先において、リボン、腕章、はちまき等を着用したことは、懲戒事由に該当するが、懲戒解雇は苛酷にすぎ解雇権の濫用とした。控訴)

●国労青函地本リボン闘争事件 札幌高判昭48・.5・29

(制服の左胸に「大巾賃上げを斗いとろう、16万5千人合理化粉砕」と書いたリボンを着用したことは、職務専念義務に違反し、鉄道営業法第22条及び国鉄の服装に関する定めに違反し違法であり、取り外し命令に従わない職員の訓告処分を適法と判示。上告)

●神田郵便局腕章事件 東京地判昭49・5・27

(勤務中に赤地に白く「全逓神田支部」と染め抜いた腕章を着用した行為は就業規則に違反し、職務専念義務に違反する。取外し命令を拒否したことを理由としてされた郵便課窓口係から同課通常係への担務変更命令が適法としたうえで、担務変更命令を無視して職務放棄をしたことによる減給処分を適法と判示)

● 大成観光リボン闘争事件 東京地判昭50・3・11

(中川幹郎チームの判決として著名。花形から垂らした幅約2.5センチメートル、長さ約6ないし11センチメートルの白の布地に「要求貫徹」等の文字を記載したリボンを上衣の左胸部に着用した行為は、争議行為としても、その他の組合活動としても正当な行為に当たらないとして救済命令を取り消し、組合幹部に対する減給・けん責処分を是認。被告控訴。)

△中部日本放送リボン闘争解雇事件 名古屋高判昭50・10・2

(就業時間中、社内及び取引先において、リボン、腕章、はちまき等を着用したことは、懲戒事由に該当するが、懲戒解雇は合理的裁量の限度を超えて、過酷な処分であり無効とした。上告)

●全逓灘郵便局事件 大阪高判昭51・1・30

(勤務時間中に「さあ!団結で大巾賃上げをかちとろう」と記載したリボン及び「全逓、灘郵便局支部」と記載した腕章を着用したことは就業規則に違反し、取外し命令に対する不服従を理由とする訓告処分を適法と判示。確定)

●神田郵便局腕章事件 東京高判昭51・2・25

(棄却。腕章取りはずし命令に従わないことを理由とした郵便課窓口係から通常係への担務変更命令に従わず職務を放棄した郵便局職員に対する減給処分が適法とする。確定)

●大成観光リボン闘争事件 東京高判昭52・8・9

(棄却。花形から垂らした幅約2.5センチメートル、長さ6ないし11センチメートルの白の布地に「要求貫徹」等の文字を記載したリボンを就業時間中に上衣の左胸部に着用した行為がいわゆる組合活動の面においても、争議行為の面においても違法とする。控訴人上告)

●目黒電報電話局事件 最三小判昭52・12・13

(破棄自判、日本電信電話公社の職員が勤務時間中に「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と記載したプレートを着用してこれを職場の同僚に訴えかけることは、日本電信電話公社法34条2項所定の職務専念義務に違反し、局所内の秩序風紀の維持を目的とする日本電信電話公社の就業規則の政治活動禁止規定に違反する。)。

●大成観光リボン闘争事件 最三小判昭57・4・13

(ホテル内において就業時間中に組合員たる従業員が各自「要求貫徹」等と記入したリボンを着用するというリボン闘争を実施した場合において‥‥判示のような事情があるときは、右リボン闘争は、就業時間中の組合活動であって、労働組合の正当な行為にあたらない。

●東急電鉄自動車部淡島営業所事件 東京地判昭60・8・26

(「狭山差別裁判粉砕」等と記載した縦10センチメートル、横14センチメートルの硬質プラスチック製のプレートを制服の左胸部に着用してした就労申入れを拒否した会社の措置につき、右就労申入れは、債務の本旨に従った労務の提供であると解することはできず、不就労時間中の賃金請求を棄却)

△国鉄鹿児島自動車営業所事件 鹿児島地判昭63・6・27

(勤務中はバッチを外すべきことを命じうるが、7・8月という暑さの中、10日間もの間長時間にわたり広さ1200平方メートルの営業所構内の降灰除去作業を1人で行わせたことにつき、右作業命令は、組合員バッチの離脱命令に従わなかったことに対して懲罰的に発せられたもので、業務命令権行使の濫用であって違法とし慰謝料も認める。控訴)

△国鉄鹿児島自動車営業所事件 福岡高裁宮崎支判平元・9・18

(棄却。上告)。

△延岡学園事件 宮崎地裁延岡支部平元・11・27

(本件リボン闘争は、勤務規定に違反し、組合活動としても違法であるといわざるを得ない。 しかしながら、本件リボンの形状及び記載文言は無用な煽情的・刺激的効果を与えないようにかなり配慮されたものであると認められること、その着用時間は一時間半程度の短時間に過ぎず、職場の秩序規律及び生徒の心情に対する影響の度合いはかなり低かったといえること等総合考慮すると、本件リボン闘争の違法性の程度はかなり低いものであったというべきである。)

○本荘保線区国労ベルト事件 秋田地判平2・12・14

(羽越本線出戸駅信号場構内で作業を行っていた国労組合員が、上着を脱いだ状態で、バックルに国労マークの入ったベルトを着用していたところ、ベルトを取り外すよう命じ就業規則の書き写し等を内容とする教育訓練を命じた事案であるが、本件ベルトの着用は、広い意味における組合活動としての一面があることは否定できないけれども、具体的な主義主張を表示するものではなく、単に国労組合員であることを表示するものに過ぎず、ベルトの着用は、就業規則三条の職務専念義務に違反するものではないとしたうえで、本件教育訓練はしごきであって、正当な業務命令の裁量の範囲を明らかに逸脱した違法があるとし、20万円の慰謝料を認めた)

○本荘保線区国労ベルト事件 仙台高判秋田支部平4・12・25

(棄却。本件ベルトは、社会通念上その形状、意匠等の点で格別一般人に嫌悪感、不快感を与えたり、奇異な感を抱かせるようなものではなく、‥‥被控訴人に対して本件ベルトの着用を禁止する合理的理由は見い出し難い。上告)

●国鉄鹿児島自動車営業所事件 最三小判平5・6・11

(破棄自判。組合バッチ離脱命令に従わなかった労働者を本来の業務から外し、7・8月という暑さの中、10日間もの間長時間にわたり広さ1200平方メートルの営業所構内の火山灰除去作業を1人で行わせた業務命令につき、右作業が職場環境整備等のために必要な作業であり、従来も職員が必要に応じてこれを行うことがあったなどの事情の下においては、違法なものとはいえないとし、業務命令権の濫用に当たるとした原判決を破棄)

〇JR西日本国労広島地本事件 広島地判平5・10・12

(「国労の組合バッジは、縦約一・一センチメートル、横約一・三センチメートルの大きさであり、その表面には、黒地にレールマークが描かれNRUとローマ字が表示されていることが認められる。すると、右組合バッジは、いずれも小さく目立たないものであり、また、具体的な主義主張が表示されているものでもないから、その着用行為は、原告らの労働を誠実に履行すべき義務と支障なく両立し、被告の業務を具体的に阻害することのない行為であって、原告らの職務専念義務に違背するものではなく、更に、就業規則二三条‥‥が禁止する勤務時間中の組合活動にも該当しない」から、組合バッジ着用等を理由として夏季一時金の減率査定(5%カット)を行ったことが考課査定権の濫用に当たる)

△延岡学園事件 福岡高裁宮崎支判平5・10・20

(「本件リボン闘争は、勤務規定に違反するものであり、かつ、組合活動としても違法であるといわざるを得ず‥‥懲戒事由に該当する‥‥しかしながら、本件リボンの形状及び記載文言は無用な煽情的・刺激的効果を与えないようにかなり配慮されたものであると認められること、その着用時間は一時間半程度の短時間に過ぎず、職場の秩序規律及び生徒の心情に対する影響の度合いはかなり低かったといえることを考慮すると、本件リボン闘争の違法性の程度はあまり高くない‥‥」)

〇東洋シート警告書事件 東京地判平昭7・6・8

●西福岡自動車学校腕章事件 福岡地判平7・9・20

(自動車学校の労働組合員らがした腕章着用闘争につき、同闘争は、労働者の団結を示威し、使用者に対し心理的圧迫を加え、労働者の要求ないし主張を貫徹する争議行為的側面と、組合員相互間において連帯感を触発し、団結をより強固にし、使用者との交渉に当たって士気を鼓舞する組合活動的側面の双方を有するものであるが、業務を阻害しなくともその本来的な目的を達することができるから、特別な事情のない限り、本質的には争議行為ではなく組合活動であると解するのが相当であるとした上、就業時間中に組合活動を行うことはその具体的態様にかかわらず職務専念義務に反するもので、正当な組合活動ではないとして、腕章着用闘争を理由とする戒告処分は不当労働行為に当たらないとした)

●JR東海国労東京地本新幹線支部国労バッジ事件 東京地判平7・12・14

(組合バッヂを着用していた労働者に対して厳重注意や夏期手当の減額支給等の措置をしたため、不当労働行為であるとして東京都地労委が救済命令を発したので、原告JR東海がその取り消しを求めた事案において、再三の注意・指導を無視して組合バッヂを着用していた組合員等に対し厳重注意をしたことには何らの問題とされるところはなく、夏期手当の減額支給等の措置は、原告の裁量権の範囲を超えた措置であったということはできず、不当労働行為意思によるものとは認められないとして、救済命令を取り消した。)

〇本荘保線区国労ベルト事件 最二小判平8・2・23

(棄却)

〇JR東日本神奈川国労バッチ事件 東京地判平9・8・7

(組合バッジ着用を理由とする厳重注意、訓告処分、夏季手当減額、業務外し等の不当労働行為とした神奈川県地方労働委員会の救済命令の取れ消し請求訴訟で、本件バッジ着用が、形式的には就業規則に抵触するが、リボン、ワッペンと異なり抗議意思や要求が表示されていたわけではなく、また特段の身体的・精神的活動を必要とするものでないため、労務提供義務の誠実な履行を妨げるおそれがなく、職務専念義務に違反しないこと、及び、本件処分や減額措置は組合員らが受ける不利益がきわめて大きいため国労に対する特別の意図があったとの疑いを払拭できず、原告が嫌悪する国労所属の本件組合員らに対する不利益な取扱いを通じて国労に打撃を与え、その勢力を減殺し、組織を弱体化させることを主たる動機として行ったものであり不当労働行為意思が認められるとして労委命令を相当とする)

〇神戸陸運事件 神戸地判平9・9・30

(本件腕章着用乗務行為は、労務を誠実に遂行する義務に違反するものでなく、正当な組合活動の範囲内の行為とし、腕章着用等を理由に乗務を拒否(労務受領拒否)したことを不当労働行為と認め、バックペイ等を命じた地労委の救済命令を適法とする)

●JR東海新幹線支部国労バッジ事件 東京高判平9・10・30

(棄却。勤務時間中に組合バッヂを着用する行為は、それが労働組合員であることを顕示して組合員相互間の組合意識を高め、使用者及び他の労働組合に所属する社員との対立を意識させ、注意力を職務に集中することを妨げるおそれがあるものであったと認められる等判示の事実関係の下においては、当該行為により職務の遂行が阻害される等の具体的な実害が発生しないとしても、企業秩序の維持に反するものであり、職務専念義務、勤務時間中の組合活動の禁止、服装の整正義務を定める就業規則の各規定に違反するとし、厳重注意や夏期手当の減額支給等の措置は不当労働行為に当たらないとした。上告)

●JR西日本国労広島地本事件 広島高判平10・4・30

(原判決を取消し,一部を除き請求を棄却。組合バッジを着用することは職務専念義務違反とならない例外に該当する場合とはいえないが,組合バッジの着用行為のみを減率の理由とした者以外の減率査定には合理性が認められ,裁量権の濫用とはいえないとした)

●延岡学園事件 宮崎地裁延岡地判平10・6・17

(本件リボン着用、生徒配布文書の配布、本件申入書の県当局への提出及び父兄等配布文書の配布行為を懲戒事由とする解雇は不当労働行為にあたらない)

●JR東海新幹線支部国労バッジ事件 最三小判平10・7・17

(棄却、国労バッジ着用に対する厳重注意および夏期手当の5%減額の措置を支配介入の不当労働行為に該当するという都労委の救済命令を取り消した原審判断を特に説示なしで認める)

△JR東日本神奈川国労バッチ事件 東京高判平11・2・24

(棄却、国労バッジ着用を理由とする863名に対し厳重注意、訓戒、55名に対し夏季手当55%減額の措置を不当労働行為とする。国労バッジの着用は、就業規則の服装整正規定違反、就業時間中の組合活動禁止規定違反、職務専念義務規定違反であり企業秩序を乱すものであるとし、取外し命令、懲戒、不利益処分を禁止するものではない。しかしながら「使用者の行為が従業員の就業規則違反を理由としてされたもので,一見合理的かつ正当といい得るような面があるとしても,それが労働組合に対する団結権の否認ないし労働組合に対する嫌悪の意図を決定的な動機として行われたものと認められるときには,その使用者の行為は,これを全体的にみて,当該労働組合に対する支配介入に当たるものというべきである」と述べ、「敵意と嫌悪感を露骨に示す言動を繰り返し」バッジ取外しの指示・指導等は「執拗かつ臓烈なもので,平和的な説得の域を大きく逸脱するものであり」「就業規則の書き写しの作業などは,嫌がらせ」であり、「厳しい対決姿勢で臨んでいた国労を嫌悪し,組合から組合員を脱退させて,国労を弱体化し,ひいては‥‥排除しようとの意図の下にこれを決定的な動機として行われたもの」として不当労働行為(支配介入)に該当するとした。)」

△JR東日本神奈川国労バッチ事件 最一小決平11・11・11

(不受理)

●JR西日本大阪国労バッチ事件 東京地判平24・10・31

(国労バッチ着用を理由とする平成12年、13年の訓告と同年の夏季手当減額を不当労働行為とした大阪府労働委員会の救済命令につき、会社側は不服として中労委に再審査申し立てしたところ、初審命令を取り消したので、原告側が中労委の処分を取り消しを求めた事案で、東京地裁は本件組合バッジの取外しの注意・指導は,労働組合に対する団結権の否認ないし嫌悪の意図を決定的動機として行われたものであると認めることはできず,の不当労働行為に当たるということはできないとして、原告の請求を棄却)

●JR東日本神奈川国労バッチ出勤停止処分事件 東京地判平24・11・7

(救済命令取り消し請求訴訟。中労委は国労バッジ着用を続けたことを理由とする二度にわたる出勤停止処分を不当労働行為にあたるとして救済命令を発令したが、一部取り消す。就業規則違反行為は約15年にもおよんで再三反復継続していたことからすれば業務に対する支障がない行為ではあるがそれに対する処分の加重性には合理的理由があり,さらに国労は昭和62年の会社発足以来組織的な組合活動としてバッジ着用行為を指示し,組織としても不当労働行為救済申立てを行うなどしてきたが,平成14年3月末以降は,組織として不当労働行為救済申立てを行うことはなくなり,平成18年11月には,バッジ事件を含む合計61件の不当労働行為救済申立事件を取り下げているのであって、平成15年7月以降は国労バッジ着用者が○○のみとなり,本件各処分の対象となった平成19年ころには,既にその組合活動としての色彩が後退し,個人的行為の側面が強く不当労働行為には当たらないとした。)

●JR東日本神奈川国労バッチ事件 東京高判25・3・27

(棄却。国労内少数派を嫌悪して本件警告文の掲出や国労バッジの着用に関しあえて過重な処分をしたとは認められない。)

△JR東日本神奈川国労バッチ減給処分等事件 東京地判平25・3・28

(救済命令取り消し訴訟、棄却。平成12年5月30日になされた四党合意について,国労は,平成13年1月27日,これを受諾し,さらに,平成14年3月末ころ,国労バッジ着用処分について,組織として救済申立てをしない方針に転換した。国労の上記方針の転換の時期と相前後する平成14年3月28日,原告は本件警告書の掲出を行い,国労バッジ着用行為に対し,従前行っていた1年度2回の訓告よりも処分を加重する旨を通告した。 6名はその後の調査期間(平成14年4月から同年6月まで)経過後も国労バッジ着用行為を続けたため,これを止めるまで減給以上の処分を受けた。

本件警告書掲出前にされていた処分と,掲出後にされた処分は,後者の方が格段に大きな経済的不利益をもたらすものと認められるが,この極端な厳罰化は,組合バッジ着用を継続する国労内少数派が組合活動を行うことを嫌悪していた会社が,組合執行部の方針転換を認識するに至り,これを機に,組合内少数派の組合活動を一掃しようとの意図に基づき行ったものであると推認することができることから,組合内少数派の勢力を減殺し,組合執行部の方針に加担したものと認められ,支配介入を構成し不当労働行為が成立するとした)。

△JR東日本国労神奈川国労バッチ減給処分等事件 東京高判平25.11.28

(棄却)

△JR東日本国労神奈川国労バッチ減給処分等事件  最一小決平27・1・22

(棄却、不受理)

△東京都立南大沢学園養護学校事件 東京地判平29・5・22

(都立学校教師が、卒業式において、校長の職務命令に違反し、国歌斉唱の際、起立しなかったこと、「強制反対 日の丸 君が代」又は「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」等と印刷されたトレーナーの着用を続けたことによる停職6月の懲戒処分は、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者としての裁量権の範囲を逸脱し違法とした)

2017/03/05

非常に不快だ。私鉄総連の駅員・乗務員の緑色の春闘ワッペン着用、職務専念義務に反し、企業秩序をみだすものとして容認しがたい

東京メトロをはじめとして、私鉄総連加盟の組合のある民鉄の駅員や乗務員が、直径78センチの円形で、緑地に赤で「17春闘 公共交通利用促進 PRU」と書かれているワッペンを胸ポケットの下に着用し勤務しているが、非常に不快である。花粉症よりずっと不快で、それを見るだけで血圧があがってしまう。

これは毎年恒例になっているが、慣行化は好ましくない。今やることが多くて忙しいが、来年はやめさせるように行動をとりたいと思う。

公共交通機関で、非常に多くの人が目に触れ、勤務時間中に春闘の宣伝を行っているわけである。目に触れやすいとい点で宣伝効果は絶大である。

「賃上げ」とか春闘の要求項目が書かれているわけではないが、春闘と大きく書かれている以上組合活動であり、有名な中川判決、リボン闘争の大成観光ホテルオークラ事件東京地裁昭和50年3月11日判決『労働判例』221号が「本来労働組合が自己の負担及び利益においてその時間及び場所を設営しておこなうべきものであつて、このことは負担及び利益の帰属関係からして当然の事理に属する。ところで、勤務時間中であるという場面は、労働者が使用者の業務上の指揮命令に服して労務の給付ないし労働をしなければならない状況下のものであり、まさに使用者の負担及び利益において用意されたものにほかならないから、勤務時間の場で労働者がリボン闘争による組合活動に従事することは、人の褌で相撲を取る類の便乗行為であるというべく、経済的公正を欠く」と批判したとおりのことで、それがワッペンであれ私は同じことだと思う。

ホテルオークラ事件では、客がそれを目に触れることで不快に思われることもこの事件では考慮されているが、鉄道会社でも同じことである。

この点については、国鉄・JRのほうが労務管理はよくやっている。就業規則で業務上認められた徽章以外の着用を就業規則で禁止し春闘ワッペンよりずっと小さい国労バッチの着用を禁止しているわけである。

就業規則で禁止し、着用した者は軽微であれ懲戒処分の対象とすべきであると要求していきたいと思う。

もっともこれは基本的には鉄道会社の労使関係の問題であって、政治的に介入すべきことではないかもしれないが、公共交通機関という公益性の強い事業で、しかも接客対応の駅員もそれをつけているのだから、一般市民や乗客からの非難にこたえるべきである。

私自身の職場の問題がかたずいてないのによそ様に手を出すことはできないが、しかし東京メトロは、国と東京都が株主となっている特殊会社で比留間元東京都総務局長が副会長として天下りしていることは、豊洲問題報道でもよく知られていることであって、都民が批判して当然よいのである。したがって判例を十分検討したうえ、都議会議員にこの問題をとりあげてもらうように今年はかならずやります。

 

 

2016/05/03

日中高速鉄道の弁当比較

 大紀元で日本の新幹線の駅弁と、中国の高速鉄道の弁当を比較していたが、中国のほうが白飯の量が多く腹の足しになるという印象。         http://www.epochtimes.jp/2016/04/25562.html、日本は見栄え重視なので、飯の量が少なく若い人には物足らない

 夢のなかの話だが、最初は仕事をしている夢だったが、なぜか館林に出張となり、美人と風呂に入れるという怪しい店(ソープではない)に吸い込まれ、この美女で一万円なら安いと判断、黒服の男に金を払ったが、なぜか予約先客の男があらわれプレイが終了するまで待合で待つこととなり、着替えた時に財布の中身がすべて盗まれるというところで目が覚めた。ネットで調べると、盗難にあうのは逆夢で、吉夢とのことである。

2015/11/30

外国人観光客に優しくない東京の事例

週刊東洋経済の先週発売号(11/28号)の鉄道特集だが、訪日観光客に優しくない交通アクセスが、槍玉にあげられていたが、なるほどと思えた。
神田駅。観光スポットではないが、最も人気のある浅草に行くための乗換駅である。JRの1階コンコースは柱が多くて地下鉄の入口がみつけにくい、しかも改良工事中で上り専用、下り専用の別々の狭い階段に仕切られている。日頃から通勤で使っている人は別としてとまどうと思う。
都営地下鉄の大門。大江戸線はJR浜松町に非常に近く乗換え駅なのに、観光客にはわかりにくい。車内アナウンスでは「大門(浜松町)」というが「浜松町」の方がメジャーなので、「浜松町-大門」に駅名を変えたほうが親切だと思う。
さらに、女性専用車に知らずに乗って、刺さるような視線を浴びたのも不快だとも書かれていた。女のほうがいばってるからね。このまえも席をつめろと別の女性同伴客を隣り合わせにすわらすためとかで若い女から指図されたが、通勤車両なのによその客の都合のためにかまう必要があるのか。

2013/03/16

東横線渋谷(地上ターミナル駅)最後の日

カマボコ型屋根で親しまれた櫛形プラットフォーム最終日の記録。
現場には行かなかったがyoutubeで盛り上がりを見た。
 終電元住吉行き発車
 http://www.youtube.com/watch?v=wbMA_tLJqWs
 渋谷到着最終列車
 http://www.youtube.com/watch?v=pMwTpE-d7us&list=UUoLiZRtnYK7lmXY0c7j3A4A&index=1
 正面口で営業が終了しても構内に滞留する鉄道ファンを締め出す警備員
 http://www.youtube.com/watch?v=kV9aKnzWL4U
 正面口の警備員と鉄道ファンのにらみあい 日比谷線直通残せ、ダイヤ改悪、不便の野次が飛ぶ
 http://www.youtube.com/watch?v=OHEDGDFC7Lk&NR=1&feature=endscreen
 駅長による地上駅廃止の挨拶
 http://www.youtube.com/watch?v=JLiYRxLVvH4
 シャッター閉めまで見守る徹夜の鉄道ファン
 http://www.youtube.com/watch?v=NEDeegMalMU
 さよなら東横線渋谷駅記念きっぷ
 http://www.youtube.com/watch?v=x7bEuR_jzTo

 東横線は園芸高校通学や都立大事務局に勤務した30年前に通勤で利用したが別にこれが潰されてもなんとも思わないね。日比谷線直通残せ、ダイヤ改悪の野次があったが、六本木・銀座直通をやめて、沿線住民の都心への通勤利便より、池袋・川越方面と結んだほうが乗客が増え、JR湘南新宿ラインと競合でも有利という判断なのか。それとも山手線の混雑緩和という国土交通省の意図が絡んでるのが詳しいことは知らない。

2012/04/21

名阪ノンストップ特急最終運転などの様子

 近鉄の象徴的な存在だった名阪甲特急のノンストップ運転が3月20日のダイヤ改正で終了。全ての列車が津に停車することとなった。
http://www.youtube.com/watch?v=hfhu6GgFZkg
http://www.youtube.com/watch?v=3u5humGTs_o&feature

小田急ロマンスカー20000形最終運転セレモニー
http://www.youtube.com/watch?v=H-G_kge3hFs&feature

10000形最終運転セレモニー
http://www.youtube.com/watch?v=PULsi7sO7TM&feature

沼津行あさぎり号371系最終運転
http://www.youtube.com/watch?v=ZBx1rdd5lJM&feature

2012/03/30

これはついていると思った

年度末の追い込みでくたくたに疲れたが、地下鉄に乗ったところ、途中で川口春奈似のミニスカ美女が乗車してきて、自分のほぼ向かい側の席に座った。パンチラが見れそうな位置なのでおっと思ったところ、いきなり白地に絵柄のパンチラ。普通視線を感じて閉じるものだが、携帯操作に夢中になっていたのか、サービスなのか、なかなか閉じてくれないので、こちらが目をつむってしまったよ。
 こんなラッキーなのは初めてだ。

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