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カテゴリー「経営・労働・人事管理」の13件の記事

2013/08/13

そんなばかな 優良企業なのに

 「ブラック企業大賞」http://otakei.otakuma.net/archives/2013081203.htmlが12日発売の夕刊紙の一面だが、ふざけているし、非常に偏向した企業の評価である。
 こんな企画を宣伝するメディアも偏向しているといわなければならない。
 賞を受けた企業のなかに「ベネッセコーポレーション」があるが人事制度や福利厚生で先進企業として知られる優良企業というのが一般の評価のはずだ。
 奥林康司・平野光俊『フラット型組織の人事制度』中央経済社2004年という本を持ってますが、「ベネッセコーポレーション」もとりあげられてます。
 管理職の年俸制導入、定期昇給・ベースアップの廃止、ポイント制度退職金は先進的な制度で「企業への貢献度と報酬を連動させる、およびチームへの貢献を考え努力する人を大切にする」施策として評価されている。個人の主体的行動を引き出す能力開発も重視され、希望する仕事わ申告すると40~50%実現し、ポイント制能力開発、経営ユニバーシティ、キャリアピジョン申告もあるということである。福利厚生ではカフェテリアプランを導入した先進企業としても有名でしょ。
 「東北大学」が特別賞ということだが、一流大学でしょ。OBのノーベル賞受賞者田中耕一フェローはおとなしい人だが、いくらなんでもこれは怒ると思います。 

2011/06/19

ニューヨーク郊外の「ターゲット」従業員、組合にノー

  6月17日にディスカウントストア大手の「ターゲット」(本社ミネアポリス、全米売上げ第5位の組合不在企業)の、ニューヨーク郊外ロングアイランドにあるバレーストリーム店における、国際食品商業労働組合(UFCW)の申請による組合代表選挙が実施されたが、85対135で組合が敗北したとスタートリビューンなどが伝えている。http://www.startribune.com/business/124120324.html http://la-consulting.com/wordpress/?p=7438 http://newyork.cbslocal.com/2011/06/18/valley-stream-target-store-workers-reject-unionization/ターゲットの従業員は組合のない環境で働くことを選択した。
 アメリカでは排他的交渉代表制がとられ、適正な交渉単位において3 割以上の署名を得て全国労働関係委員会(NLRB)が監督する組合代表選挙により過半数の労働者の支持を得た労働組合のみが団体交渉権を得るシステムである。代表選挙で否決されれば組合不在のままである。
 UFCWはグローサリーストアから発展したスーパーマーケットの一部を組織化しているが、労働統計局によると、小売業界の組合組織率は2010年4.7%にすぎない。アメリカでは非食品小売で労働組合が組織化されることはまずないといわれている。シアーズやウォルマートが組合不在企業として著名だが、ホームデポ、コストコみなそうなのである。
 ターゲットはファッション系の自社ブランドが強いのが特徴で、全米で1755店舗を展開している。スタートリビューン記事によるとターゲットにおいても過去1990年にデトロイト近くで、5年後コロラドで、さらにジョージアで1997年にやカリフォルニアで組合代表選挙が実施されたが、いずれも従業員が組合を拒否しており、組織化を阻止している。組合がなくてあたりまえの業界で、1店舗でも組織化される影響は大きく、、経営環境の悪化を招くので従業員の選択は賢明である。
 UFCWは反ウォルマート運動を展開してきた。南カリフォルニアで8年前、スーパー大手3社との協約交渉がこじれ、ラルフスなど852店舗、59000人の労働者約850店を巻き込んだ大規模ストライキに突入した、141日間のストライキは、アメリカスーパーマーケット業界史上、最も長期に及ぶものとなったが、このストライキ自体、ウォルマート等進出による競争で労務コスト縮減の提案が発端になっており、反ウォルマートの宣伝も兼ねていた訳である。http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2004_4/america_01.htm 2011年6月現在も大手3社(ラルフズを経営するクローガー、ボンズ・バビリオンズを経営するセーフウェイ、アルバソンズを傘下に持つスーパーバリュー)の協約交渉が長引き、ストライキを警告している状況にある。http://blog.livedoor.jp/usretail/archives/51693397.html
 

2010/02/14

自由主義と自由放任主義は違うと説明したブログ

森政稔「経済的自由主義の政治的意味―政治思想からの経済(学)入門」『現代思想2009年8月号』を紹介したブログを読んだ。「レッセフェールとモラル」http://d.hatena.ne.jp/hirokim21/20090805/1249483687
「アダム・スミスの古典的な時代の自由主義は、市場に対する外在的な介入としてではなく、その内在的な制約として、自由放任とは逆に「自由であることを強制すること」が必要とされた。それゆえ、スミスにおいては、労働の団結(労働組合)のみならず資本の団結(株式会社)もまた、原則的に自由主義に反する独占として排除されていた。一九世紀以後、自由主義から自由放任主義への転換が徐々に行われ、株式会社とともに労働組合も黙認を経て承認へと進むようになる。」と説明され1825~1875年が自由放任時代なのだという。1880年以降が規制の時代とされている。
なるほど団結禁止は個別雇用契約主義であるから、他者からの干渉を強要されない自由であることを強制するという言い方も理解できないわけではない。しかしそれが真の自由という言い方もできるはずである。また私は株式会社を認めるから、労働組合も法認しなければならないという論理には疑問がある。株式会社が営業制限に該当するのか、他者の取引自由の権利を侵害するものなのだろうか。
また1825年法は原則的に団結権を否定し、賃金・労働時間に関する団結が例外的に認められていたにすぎないのし、1875年の共謀罪・財産保護法によるスト刑事免責が実質的な労働組合法認、争議権の確立とするならば、若干時代認識には問題がある。

2010/01/18

ソニー人事経理業務の一部をIBMに委託とのニュース

 毎日新聞などで報道されてますがhttp://mainichi.jp/select/biz/news/20100116k0000m020052000c.html、既に2003年にIBMはP&G全世界9万8千人の社員の給与計算/福利厚生業務/報奨プランニング/海外赴任・転勤者支援/出張・精算業務/人事データ管理を4億ドルで受託しており、驚くほどのことではない。http://www-06.ibm.com/jp/press/2003/09102.html?cntxt=b1327432
 ソニーはオープンショップ制で電機連合に加盟しない会社組合らしい。だから比較的容易なのだろう。ソニーと電機労連の争いについては電機連合のこの頁http://202.229.28.238/history/1961/にある。

2009/03/03

感想 P・オスターマン『アメリカ・新たなる繁栄へのシナリオ』(1)

 伊藤・佐藤・田中・橋場訳ミネルヴァ書房2003年

 オスターマンMIT教授が内部労働市場の分析からアメリカの非組合セクターと日本の大企業の経営が類似していることを指摘した学者である。
 つまり日本的経営といわれるものは特殊なものではない。我が国固有の文化でも全くない。
 このことは序文で述べているとおりである。「例えば50年代から80年代半ばまではアメリカの労働市場は多くの点で日本の労働市場によく似ていた。経済の中核をなす企業では、従業員は終身雇用といわゆる内部労働市場のルールを享受していたとする考え方が有力」しかしこのシステムは80年代半ばに崩壊していくのである。

 池田信夫ブログ「19世紀には労働者は派遣だった」http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/78d36ac0e6fa382a3cdfa1e4cfd43669によると---「終身雇用は日本の文化や伝統に根ざしたものだ」という御手洗富士夫氏の主張は、論理的にも歴史的にも根拠がない。長期雇用は、垂直統合という20世紀に固有の企業統治システムの副産物にすぎない。----としているとおりである。
 アメリカにおいては1920年代に労働組合の組織化運動を挫折させるために指導的なノンユニオン企業がウェルフェアキャピタリズムとして知られている、温情主義的な企業ベースの企業年金、医療保険の給付制度を創設している。その基本思想は「経営者は労使の一方を擁護する存在ではなく、事業全体の受託者である。経営者の責任には、経済的責任と同時に労働者の雇用、安全、賃金を保障する責任がある。」PDF(百田義治より引用)http://www.jalm.jp/yoko08/05.pdfアメリカの会社法が株主の利益のためにあるとしても80年代以前の実態はそうではなかった。ある意味で日本企業とそう変わりなかった。この理念に見られるように、経営者は制度の受託者として従業員の生活に責任を持つと考え方は実はアメリカ起源なのである。
 ウェルフェアキャピタリズムは大恐慌で崩壊するが、ベストプラクティスとしての会社イメージを確立し、コダックなど大恐慌でも組合の組織化を許さなかったノンユニオン企業に継承された。コダックが暗黙の前提としてのノーレイオフ、オープンドアーポリシーや有給休暇などで先進的であり、レクリエーション活動を重視する在り方は日本の経営家族主義に類似しているように思える。
 アメリカでは組合セクターより、IBM、デジタルエキップメント、プロクター&ギャンブルといった典型的な組合不在企業がノーレイオフポリシーで雇用保障が前提の経営を行っていた。日本の大企業の終身雇用と基本的におなじである。
 しかしコダックなどは90年代にウォール街からの圧力で大規模なリストラをせざるをえなくなったのである。
 デジタルエキップメントが気前の良い給料、従業員に充実した福祉を提供する企業として有名であり、まさにウェルフェアキャピタリズムの継承者のようであったが、結果的にはコンパックに買収される羽目となった。

 ダウンサイジング、リエンジニアリングが当たり前になったのは80年半ば以降であるが、いかなる経営環境の変化によるものか。76頁に一つの回答がある。一つはレバリッジドバイアウトの増大、二つめは機関投資家ヘの株主所有の集中拡大だった。1965年には個人が会社の株式の84%を保有していたが、90年までに54%に低下し、94年には上場1000社のうち機関投資家は株式の57%を保有することとなった。機関投資家が経営者に高い水準の業績を要求するようになった。いわゆる株主優位、株主主権という流れがあり、投資家からの圧力で雇用保障や従業員福祉がリスクになっていった。経営者の優先順位が変わったのである。80年代半ば以前は経営者の関心がヒューマン・リレーションズ政策であったのが、厳格な財務規律が重んじられるようになったということのようだ。(続く)

 

2009/01/09

年越「派遣村」は偽善と言う池田信夫ブログの感想

 勉強不足でこの人のブログ読んだことなかったんですけど、引用しているダイヤモンドの記事はあまり好きでないですが、大筋で正論でしょう。名誉村長が官製不況の元凶、宇都宮健児弁護士というブラックジョークもさえている。http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/caa6353a3bf77b62c7782d6bd09446a2さらに関心をもったのが「賃金を下げれば失業率は下がる」という記事http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/762afce0f2b08c10bd909dde481a2b73「ルーズベルトが大統領に就任した1933年以降、賃金が上がり、1935年にワグナー法が成立して労働組合が増えてから、さらに賃金が上がったことがわかる。これと失業率には、明らかな相関がある。GDPが底を打った1933年以降も10%以上の失業率が続いた原因は、この実質賃金の上昇と、反トラスト法の凍結による独占の拡大だろう、とCole-Ohanianは推定している。」と言う。この説は、反インジャンクション法のノリスラガーディア法と民間に団結・団体交渉権を認めたワグナー法が悪である私の考えとマッチした経済理論と言える。
 さらに池田氏は派遣規制にも反対してますね。http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/680f94098f884812ddf59d3c32a68a79これも正論でしょう。派遣を正社員にしたら人件費が固定費となって高コスト構造でどうしようもなくなる。単純計算で「派遣を禁止すると派遣労働者の半分は職を失う」。トラックバックにあるブログ「製造業への派遣を中止したら工場は海外に行く」http://jmseul.cocolog-nifty.com/jiji/2009/01/post-f839.htmlも正論でしょう。競争力のある企業は技術開発に投資しなければならない。雇用調整要員だった派遣切りは当然だと思う。

2008/07/02

エコならウォルマートですよね

 ウォルマートの「店舗で消費するエネルギーは、通常の小売店の約半分で済んでいる。これは一般家庭200世帯のエネルギー消費量を節約している」http://www.gpn.jp/torikumi/overseas/wm.htmlことになる。「白熱電球を電力消費が4分の1以下の電球型蛍光灯に交換するキャンペーンを展開している。今年のアースデイ(4月22日)では、シカゴ周辺の店舗で43万個の電球型蛍光灯を無料配布した」http://greenerw.exblog.jp/5332119/とあります。「2005年に、自社の運送用トラックの燃料効率を25%改善するという目標を立て、現実には2005年以降に15%の改善を達成」http://www.eco-online.org/ab-eco-news/2007/11/19-120146.php「4年以内には、店舗の冷暖房効率を現在より25-30%高くし、排気放出量を30%減少させたい意向。太陽熱や風力発電、排気オイルを燃料にするボイラー、断熱性の高いフロア、布製ダクトを利用した高効率エアコン・システム」http://hci.blog.ocn.ne.jp/hciweb/2006/12/post_2b3e.html。「2007年9月、同社は衣料用洗剤に関しては、濃縮型しか取り扱わないことを決定、今年5月までに、ウォルマートと系列のサムズ全店で実現する予定になっている。同社ではこれにより、4億ガロン以上の水、9500万ポンド以上のプラスチック樹脂、1億2500万ポンド以上の段ボールを節約できるとしている。ウォルマートが販売する衣料用洗剤のシェアは全米の25%を占めており、この決断が業界に与える影響は大きいと見られている」http://socal-innovation.net/index.php/Other/Other-0803-1.html
 ウォルマートがエコに力を入れているのは、反ウォルマート勢力の攻撃をかわす意図もたぶんにあると思われますが、ウォルマートは24時間営業やってますよ。
24時間営業のなにが悪いのか、上田、松沢、石原といった連中が、みみっちい一斉電気消灯みたいなばかげたことやってなんの意味があるんだといいたい。

2007/06/23

高業績業務システムと90年代以降の仕事遂行方法

 アメリカでは、90年代にドラマチックなダウンサイジングを続け、目立ったレイオフやリストラクチュアリングがあった。仕事の遂行方法も50~60年代のありようとは変化した。
 MITのポール・オスターマン教授(註1)によると、アメリカの企業が80年代から90年代の競争的課題に対応した重要な方法のひとつが、高業績業務システムであるという。つまり従来のシステムは、職場は厳密な分業と狭い範囲で設計された専門的な職務で編成され、意思決定や評価は監督者の手中にあったが、品質を改善し、顧客のニーズ応えることができないため、権限、裁量を下層部の従業員に移し、官僚的な階層を排除し、仕事の定義をフレキシブルにするのが高業績業務システムである。
オスターマンは具体的には、QCサークル/ラインを離れた問題解決グループ、ジョブ・ローテーション、自己管理型業務チーム、総合的品質管理、2つ以上(多数)の業務活動、具体的な企業名では、サウスウエスト航空(パイロットでも時には手荷物業務を行う)、ベルサウスのチーム方式、NUMMI、GMのフリモント工場を挙げているが、オスターマン教授の全米事業所調査によると1997年の調査では基幹従業員の半数が高業績業務活動のある企業の割合はQCサークル/ラインを離れた問題解決グループが57.4%、2つ以上の業務活動が70.7%に達していることからみて、アメリカでは高業績業務システムは90年代のリストラクチュアリングで相当に浸透しているのである。

 佐藤健司(註2)は高業績業務システムとヒューマンリソースマネジメントを結びつけた議論を展開し、新しいスキル獲得のための教育訓練、メール・グループウェア・ネットワークによる組織横断的で十分な情報共有・社内コミュニケーション、クロスファンクショナルチーム、エンパワーメントの組み入れ、煩わしいプロセスの簡素化、水平的な組織、節約型賃金分配制度、従業員持株制度、利益分配制度、チーム別業績給、能力給、インセンティブ報酬システム、雇用保障、献身的で生産性の高い従業員層を確保するための業務環境支援といったことも高業績業務システムだとしている。

ただ佐藤の議論は資源ベース型の企業の特徴とごっちゃになっている感がないでもないが、オスターマン教授と同じく、従業員のアイディアや創造性の活用がコミットメントを強めること。管理監督者が減ってコスト削減となること、ピーアプレッシャーが生産性向上となることを経営者は肯定的に評価していることを述べている。

 上記の事例はいわゆるフルタイム労働者のことをいっている。しかし私が思うには、ウォルマートのパート労働者も高業績業務システムだと思う。ウォルマートが現場主義で時給ワーカーのデパートメントマネージャーの裁量が大きい組織であることは既に述べたとおり。パート労働者はただタイムカードをパンチして箱から商品を出して陳列してといった与えられた作業をやるだけの時給ワーカーでなく、商人でもあるだ。デパートメントマネージャーをヘッドにしたストア・ウィジン・ア・ストアという戦略ユニットがある。これはQCサークルの応用ともいわれているが本部は徹底的にサポートする。数値は時給ワーカーにも公開していて、時給ワーカーでもエンパワーメントの思考をするようになっている。ウォルマートの現場人員は、自らの店舗を自らの頭で考え改善していくのだ(註3)。 
 高業績とはこういうことという見本のようだ。しかも低いレーバーコストで高いパフォーマンスなのである。そういう意味でもやっぱりウォルマートは偉大な企業だと思う。

 高橋俊介によるとアメリカの大企業は80年代から職務等級制度はそのままで、目標管理制度を組み合わせる成果主義を取り入れた。90年代になると職務等級制度の序列構造自体が問題視され、新しい成果主義の潮流となる。大企業は組織のフラット化、MBA取得者が幅をきかせるスタッフ官僚制の打破、顧客満足度の重視から官僚的体質の組織を解体され、職務等級がブロードバンド化され。職務評価を廃止してコンピタンシー(コンピタンシーという概念が多義的で難しいが、成果に結びつく能力全部を含む、行動特性、思考特性などと訳され、主体的ジョブデザイン行動やネットワーキング行動を含む)の重視、市場給与相場の重視、ハイテク企業や金融業界は職務等級なしで市場給与相場比較のみとなった(註4)。
 評価の仕方も行動評価やチームワークを重視し、管理監督者だけでなく、同僚・部下・顧客など360度多面評価を行う企業は97年で、フォーチュン500社の半数まで普及している。これは顧客ロイヤリティ経営、顧客満足度重視によるものである(註5)。もはやジョブコントロールなど時代錯誤、たんなるヒラメ人材は360度評価で生き残れなくなっているというべきだろう。

(註1)P・オスターマン著、伊藤・佐藤・田中・橋場訳『アメリカ・新たなる繁栄へのシナリオ』ミネルヴァ書房(京都)2003年
(註2)佐藤健司「高業績業務システムの展開と人的資源管理」伊藤・田中・中川編著『現代アメリカ企業の人的資源管理』税務経理協会2005年
(註3)鈴木敏仁『誰も書かなかったウォルマートの流通革命』商業界2003年
(註4)高橋俊介『成果主義』 東洋経済新報社、1999
(註5)高橋俊介『ヒューマン・リソース・マネジメント』ダイヤモンド社2004年

2007/06/18

『パブリックスの「奇跡」』について(4)

 パブリックスの特徴のもう一つは、従業員利益分配制度と持ち株制度である。つまりパブリックスはウェルフェア・キャピタリズムの経営手法を採用しているともいえる。ウェルフェア・キャピタリズム(産業温情主義ともいう)とは非組合型労使関係が浸透した1920年代の労務管理手法のひとつであリ、全米製造業協会の反労働組合の保守主義的な政策、レイバーインジャンククションで労働組合を抑え、アメリカンプラン(クローズドショップを雇用機会の自由を妨げる非アメリカ的なものとして徹底的に排除する)のオープンショップ運動とは対照的に、体系的管理運動、福利厚生事業や、雇用安定、内部昇進、労働組合に代わる従業員代表制などで労働組合主義を排除していく経営手法の系譜のことである。
 この点は古い経営手法といってよいと思う。つまり利益分配制とは会社の業績が良ければボーナスで従業員に分配するやり方だが、非組合企業が採用する手法のひとつで、もともと賃金問題から労働者の目をそらすことから始まったともいわれる。持ち株制度は1920年代には資本家と労働者に友好的な関係を構築し、ストライキの脅威をなくし、共産化を阻止する実用的な手段として賞賛されていたものだった。但しパブリックスで従業員持ち株制度をはじめたのが1958年からとされている。現在パブリックスの50~60%は従業員の持ち株といわれている。但し株式を売却する市場はない。会社が買い戻す先買権を有している。著者は従業員のやる気を刺激していると論じているが、会社への忠誠度を高めるための制度のように思える。
 パブリックスの管理職の給与は明らかに高い、従業員の提案についても金銭的報償で応えている、気前の良い給与と充実した福祉で、組合の組織化を阻止する非組合企業の手法は古臭いやり方で感心しないが、それでも非公開企業で株主から文句を言われる筋合いはないし、業績が良いから問題はない。フロリダという購買力のある環境で古い手法でも安泰なのは恵まれているともいえる。
 ウェルフェアキャピタリズムは別名雇用官僚制ともいわれるように、官僚制が肥大化する悪弊も見られるわけである。この点、パプリックスは州外に進出するまで60年もかかっており、本部体制がスリムなフラットな組織で企業哲学を経営者と従業員が共有する企業文化構築に成功したため、悪弊が見られないのだろう。

参考文献

スチュアート・D・ブレンデス、伊藤健市訳『アメリカン・ウェルフェア・キャピタリズム』関西大学出版部2004年

平尾・伊藤・関口・森川編著『アメリカ大企業と労働者-1920年代労務管理史研究』北海道大学出版会
1998年

2007/06/13

『パブリックスの「奇跡」』について(3)

 ということは、たぶんパブリックスには職務記述書はないのだろう。社内的に役職を笠に着た対人関係を構築しない方ということも著者は記しているが、従業員にフレンドリーで官僚主義的でない社風が成功している事例といえるだろう。 もっとも私は、職務記述書による管理を否定するものではない。よくアメリカでは、人に職務をつけるのでなく、職務に人をつけるとよくいわれますが、それ自体は理解できるし公正な在り方のようにも思います。日本的雇用慣行はフレキシブルな面もあるが人に仕事を与えるとかつけるやり方は後述するように恣意的になりがちで良くない面もあるから。
 高橋俊介(註1)によるとアメリカでは「職務記述書」はIT業界では使われなくなったが、古い業界では今でも使われていると言います。これは、それぞれのポストについてこの仕事はこういうことをやる。必要な能力は何である云々といったことが、4~5枚びっしり書かれていて、職務記述書により難易度、部下の数など職務評価していくやり方。特に1964年公民権法タイトル7で人種・民族・宗教・性による差別が禁止されたため、差別リスクが大きくなり、その対応策として、ジョブサイズを科学的に評価したポイントファクター型職務等級制度が普及したのだという。
 この制度では職務記述書の難易度、ジョブサイズからこれは253点とか182点とポイント化し、ポイントにより賃金から、自室の有無、机の大きさ、飛行機のクラス、ホテルのランクまであらゆることが決まる。人事院が昔やろうとした職階制というのも類似したものだろう。
 高橋は、この制度の欠点としてヒラメ人材、官僚的で内向きの組織になる。激しい変化に対応できない。職務分析し記述書を作成する人事課の仕事自体がコストになるといったことを挙げている。
 要するに従来の職務記述書管理のやり方では、ダイナミズムは生まれないし変化に対応できない。それで80年代から目標管理で自発性や意欲を引き出し、目標達成度を賞与や賃金にリンクする成果賃金が広がった。日本では90年代後半から民間から普及していったものである。
 一方、職務記述書とは対極的な業界もある。例えばIT企業で著名なサンマイクロシステムズの社風(註2)ですが、長時間勤務で永遠に終わらない仕事を抱え込むことを耐えられない人間は振るい落とされるハードワーク主義とみなされてますが、「全員がコピーとり、ホチキス留めから高度な判断までなんでもこなす」「ちゃんとしたプロセスを踏むことは反体制的とみなされる」「人を押しのけてもよいオープンな環境」「みんなプロセスを非常に嫌ってほとんどやりたい放題」「何かやる際にほとんど制約はないし、どうやってよいかという指針もない。中心になって影響を及ぼしたい人間にとっては最適の場所」とされている。
 要するに良い意味での放任主義ですが、本当にやる気のある人材はポストやジョブサイズにこだわらず仕事をしたいのであって、細かく職務を規定しないほうが活力になるようである。

(註1)高橋俊介『ヒューマン・リソース・マネジメント』ダイヤモンド社2006年
(註2)カレン・サウスウィック著山崎訳『サン・マイクロシステムズ-世界的ハイテク企業の痛快マネジメント』早川書房2000年

続く

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