公務員に労働基本権付与絶対反対-政府は巨悪と手を結ぶな

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カテゴリー「公務員に労働基本権付与反対」の19件の記事

2011/08/11

まぬけなことに

 まぬけなことに、総務省が6月15日からパプリックコメントを求めた地方公務員の労使関係制度に係る基本的な考え方に対する意見募集を見落として出さなかった。

 過半数組合の確認のやり方、東京都水道局がやっているような超過勤務拒否闘争の違法化、非組合員の権利、施設管理権の徹底などの対案を提示する必要がある。いずれにしても菅がやめそうな気配なので、次の臨時国会で国家公務員法改正が審議入りし、地方公務員も日程にのぼる可能性が強くなった。もう時間が短い。9月中旬をめどに対案を提示して国会議員に意見書を送る。
 最善を尽くすべく頑張る予定。まず9月初旬をめどに水道局長への建白書(早くやりたいが平日休みがとれないので遅れている)、つぎに知事部局、さらに議員にも出す。http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei11_01000005.html 田畑智子ヘアヌードを見ている場合でないな。とにかく頑張るつもり。

2011/04/30

人事院勧告を廃止しなくても給与大幅引き下げはできる


本日の日経1面記事が国家公務員給与1割削減の方針とある。本日の官房長官の会見でも引き下げ幅未定としながら検討していると報道されている。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110430-00000525-san-pol日経記事にもあるように人事院勧告は法的拘束力はない。昭和29年から昭和34年まで人事院のベースアップ勧告は留保され、報告のみがなされていた。給与を決定すべき諸条件に幾多の不確定な要因を含んでいる現段階において単なる民間給与との較差をもって俸給表の改正を行うことは当を得た措置ではないとしていたのである。ところが昭和35年に春闘相場を上回る12.4%の給与改定を勧告した。これは調査時点を3月から春闘相場が反映する4月に変更したことと、ラスパイレス方式を採用したことによる。以後の人事院勧告は高率ベア勧告になるが、政策上の理由で昭和45年まで完全実施は見送られていた。従って政策的に勧告を受け容れないで政治判断で給与を引き下げてもよいのである。とくに財政難のときはなおさらである。政治判断で引き下げがあってもよい。
また人事院勧告が代償措置だというのも、昭和29年ごろから、人事院の組織防衛のために国会の審議の過程で出てきた議論にすぎないのであって公式的なものではない。浅井清初代人事院総裁が国家公務員法に関する著作を多く書いているが、代償措置だということはどこにも書かれていない。そもそもアメリカで公務員の団体協約を最初に認めたのが1959年のウィスコンシン州が最初で、ヴァージニアやノースカロライナは今日でも団体交渉を禁止しているように勤務条件法定墨守の州も少なくない。そもそも民間企業の労働基本権を認めたルーズベルト大統領は公務員は団体交渉に強く反対していた。科学的人事行政推進のために人事院の制度を、とくに、フーバー公務員課長の強い指導力で作ったという経緯なのであって、労働基本権とからめる必要はなかったのである。
ただ昭和40年のドライヤー報告で、ILOがそのような意味で人事院勧告に承認したことから、組織防衛の論理となっていた。また社会党議員が、人事院勧告完全実施を迫る口実として、国会で追究してきた経緯と、昭和39年池田・太田会談で史上空前「陸海空統一スト」の脅しに屈した池田首相がストを回避させるため、公企体と民間賃金格差を是正に努力することで合意し、公企体等の春の賃上げについては、まず公労委の調停の中で、民間の春闘の賃上げを反映すべく努力がなされ、その上に立って仲裁裁定が出されることになった。いわゆる民間賃金準拠原則が確立したため、公企体では民間準拠ルールをが確立しているのに、非現業の一般公務員は、勧告を完全実施せず、民間との格差があるのはおかしいではないかという理屈で、人事院勧告を従来よりも重視するようになったということだろう。
いずれにせよ、人事院勧告を廃止するために、団体交渉権を付与する必要はなかったし、財政的にもっともね健全なのは、人事院勧告を廃止し、団体交渉権も付与しないありかたであり、その方向で政策を推進すべきであった

2010/12/18

公務員にスト権問題、新型仲裁制度は中央労働委員会に政治判断をさせるつもりか

 公務員への争議権(スト権)付与について検討してきた政府の有識者会議の報告書で、首相が中央労働委員会に仲裁を依頼、その裁定に労使双方が必ず従い、ストを中止する「新型仲裁(仮称)」などが示されたという。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101217-00000633-san-pol
 報告書は読んでないが、ニュースを読んだ時点で率直な感想をいうと、強制仲裁制度は、組合に有利に設計されやすく問題である。 非現業公務員に団体交渉権付与が既定方針でその上に争議権ということだが、過去の教訓をいえば昭和31年の公労法の改正で同法35条で「政府は仲裁裁定が実施できるようにできるだけ努力しなければならない」ことを法文で明確にしたが、これは明らかにプロレーバーの政策であり労働組合を増長させる要因になったと思う。なぜならば昭和24年公労法制定以後、仲裁裁定は15件に達したが、財政事情から実施されたのは専売の3件のみだった。
 そもそも仲裁裁定を実施するかどうかは政治判断の問題であった。国の財政が厳しいときは仲裁裁定は実施されなかった。これは非現業の人事院勧告も同じことである。(昭和29年から昭和34年まで人事院のベースアップ勧告は留保され、報告のみがなされていた。給与を決定すべき諸条件に幾多の不確定な要因を含んでいる現段階において単なる民間給与との較差をもって俸給表の改正を行うことは当を得た措置ではないとしていたのである。ところが昭和35年に春闘相場を上回る12.4%の給与改定を勧告した。これは調査時点を3月から春闘相場が反映する4月に変更したことと、ラスパイレス方式を採用したことによる。以後の人事院勧告は高率ベア勧告になるが、政策上の理由で昭和45年まで完全実施は見送られていた)。
 昭和31年の公労法改正により組合の闘争意欲をかきたてたのには理由がある。つまり予算中の給与総額制度に弾力を持たせるため、各公社法の一部改正がなされ、仲裁裁定があった場合、裁定を実施するに必要な金額は、予算の定めるところにより、主務大臣の承認または認可を受け、給与総額を超えて給与として支給することができるとしたのである。http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/ilo87_06e8.html つまり強制仲裁では給与総額制度は維持できないのではないか。
 問題の昭和32年である。この年は春闘方式の2年目で神武景気を背景に労働側が高姿勢だった。その規模は前年を上回る320万人の参加があり、まず官公庁労組が2月中旬から下旬にかけて第一波、第二波の実力行使、炭労が3月7日から48時間スト、総評を中心とした官民労組の統一闘争は3月11日から実施され国労が2日間にわたり1662箇所の駅、201箇所の客貨車区等で半日職場大会、遵法闘争を実施したため、大量の列車運休遅延を出し全国的に大混乱した。
  政府は11日午後院内大臣室で、岸首相、池田蔵相、松浦労相、石田官房長官らが対策を協議した結果「公労協の実力行使を回避するため、公労協に対して時期をみて仲裁裁定を申請する」方針を決定し、同夜開かれた岸首相ら政府首脳と社会党浅沼書記長との会談で19日、20日に予定されている国労などの第四波実力行使を回避するため努力することで意見の一致をみた。 ところが12日の閣議及び同日夕刻の労働関係閣僚懇談会では、「調停案の拒否理由や、仲裁裁定がなされた場合の態度については検討を要する」との態度をとったため、公労協は仲裁裁定を故意に遅らせているとして16日に第三.五波の実力行使を設定した。
  政府は14日の次官会議、15日の閣議で各調停案を拒否して仲裁申請を行う方針を決定、石田官房長官は「仲裁裁定については公労法の精神にのっとり誠意をもってこれを尊重する。この際労使とも静かに仲裁裁定を待つことを希望する」との談話を発表。 16日午前零時20分~45分に岸・鈴木会談が首相官邸で開かれた、政府側は岸首相、松浦労相、石田官房長官、社会党は鈴木委員長、浅沼書記長、横路国対委員長、池田禎二代議士らが出席、会談後石田官房長官と浅沼書記長が共同発表を行った。国労は年度末手当0.31月分と賃金確定にかえての一時金を3月22日に支給することで了解したが、しかしこの妥結は大蔵省の了解をえておらず、23日に支給困難となったため国労は午後から抜き打ち職場大会に入り、東京管内の主要線が運行困難となり、運輸大臣が午後3時50分に国鉄総裁に業績手当の支払いを命じ収拾されたが、ダイヤは終日乱れ、翌朝まで乗客の騒動が続く始末だった。

 この昭和32年岸・鈴木会談による政治決着により仲裁裁定完全実施の慣例化がなされたのである。労働省のプロレーバー政策を石田博英官房長官の強力な説得により岸首相が追認したものである。要するに社会党とつるんだ合意というものは、石田氏個人の政治力によるところが大きいと考える。『石田労政』によると石田氏は「仲裁裁定の完全実施ををきめた時は、三日ほど池田蔵相に口をきいてもらえなかった」と述懐しているように、石田官房長官主導の政治判断については財政当局は不満があったことを看取することができる。
 岸内閣の方針は、仲裁裁定完全実施というアメを与えつつ、労働組合の違法行為には厳格に対処するというムチをともなうものだったということは、32年6月の岸内閣6月改造で石田官房長官が労相に就任し衆院社労委で「今後とも仲裁裁定については責任をもって対処したい。しかし労組の違法行為に対しては峻厳な態度をもって一貫する」としていることで明らかである。
 その趣旨は仲裁裁定は実施するから違法行為はやめさせ、労働運動の健全な発展と言うことになろうが、しかし、そんなものはしょせん幻想に過ぎなかったのである。

 昭和39年池田・太田会談では史上空前「陸海空統一スト」の脅しに屈した池田首相がストを回避させるため、民賃準拠ルールの確立させてしまった。
 1公共企業体と民間企業との賃金格差は、公労委が賃金問題を処理するに当たって、当然考慮すべき法律上の義務である。従って公労委における調停等の場を通じて、労使ともにこの是正に努力するものとする。
2公労委の決定についてはこれを尊重する。
 マスコミ・世論は史上空前のストを止めた首相に好意的だったが、その代償は大きかったと思う。5月19日に国鉄・林野9.5% 、郵政7.5%、電電・専売6.5%、平均2209円賃上げの仲裁裁定が出された。これは兼子公労委委員長の談話によると「民間賃金の引上げ趨勢がおおむね明らかになってきたので、これを裁定の内容に反映させた」としている。
 以後これが先例となって公企体等の春の賃上げについては、まず公労委の調停の中で、民間の春闘の賃上げを反映すべく努力がなされ、その上に立って仲裁裁定が出されることになった。いわゆる民間賃金準拠原則が確立されたのである。あくまで民間準拠原則は5政-労間の政治決着によるものである。
 ストで脅した結果の組合側の獲得物は大きかった。民間並の生産性を有し、企業としての業績をあげているなら別だが、民賃準拠ルールを与えたことは今日的観点からすれば疑問に思える。またまた組合にアメを与える結果となったのである。
 
 

2010/12/05

公務員に争議権付与カウンターレポート下書き-アメリカ合衆国・オーストラリアとの比較法制(4)

第一回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-d339.html
第二回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-0419.html
第三回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-de46.html

ブッシュ政権による新しい人事制度National Security Personnel Systemの導入について(1)

  ブッシュ政権は議会においても共和党が優勢な状況において、半世紀以上、いや1920年代から改革されていなかった、連邦公務員制度の人事制度を抜本的改革に着手した。
 National Security Personnel Systemである。これは団体交渉を制限し、懲戒などの不服申立などの行政上の保護規制をなくし、職務遂行能力と処遇の結びつきを強化し、定期昇給をなくし、ペイフォーパフォーマンス給与体系とするもので、本格的、業績・成果主義の人事制度の導入という意味で画期的なものであった。
 もっともそれは、国家安全保障という名目で、他の省庁と区別するやり方だったので、国家安全保障省と国防総省に限定されたという意味では部分的な改革にとどまっただけでなく、後述するように、2009年にオバマ政権、民主党優勢議会でこの方針を転換させることとなり、政策は後退しているのが現状である。
 しかしこの制度を一般の省庁にも拡大してようとする(Working For America Act)動きも一方にはある。そうでなければ本物の行政改革にならないからである。再び共和党優位の形成になればトレンドはそちらに向かう可能性があると考える。。

 従来、本省課長級以下の連邦政府職員に適用される一般俸給表General Scheduleは1923年職階法Classification Actkの給与制度を再編した1949年職階法によって法定されたもので、15階級、定期昇給を基本とした給与体系である。一般俸給表の給与額は連邦議会で必要に応じて改訂されたが、この改訂は不定期であり、民間賃金の上昇やインフレに即応していないため、民間賃金の調査やこれを公務員給与改訂に活用が検討され1962年の連邦給与改革法federal salary reformation はよって、大統領が適切な時期に、連邦労働統計局Bureauof Labor Statisticsの年次調査を基礎として連邦公務員の給与の改訂を「勧告」すべき任務が課せられ、1970年連邦給与均衡法Federal Employees Pay Comparability Actでは給与改訂の権限を決定権を原則的に大統領に委任した。(*1)また1990年連邦給与均衡法Federal Employees Pay Comparability Actで地域差を考慮する賃金調整も行うこととなっている。(*2)
 この一般俸給表General Scheduleによる給与制度と連邦公務員の賃金・職階、業績管理、懲戒処分、人事に関する不服申立等の行政上の保護規制が硬直的なものであることはもはや時代遅れであるとして強い批判があった。
 つまり、優秀な人材の確保や、適材適所への迅速な採用・配置ができないという問題である。例えば成果よりも年功を重視した賃金体系は、優秀な人材の確保を妨げるだけでなく、公務員の士気にも悪影響を与える。また業績が極度に悪い公務員でも解雇することは難しく、その一方で新規・中途採用の長く煩雑な手続きある。長すぎる採用プロセス、業績(成果)によらない悪平等な給与の支払い。再任用の柔軟性の欠如。テロ対策上直ちに首にしたい職員も不服申立等の保護規制があるので簡単に解雇できないといったことである。
 しかし、ブッシュ政権において時代遅れの人事制度の改革に着手、2002年新設の国土安全保障省と国防省において従来の一般俸給表の給与制度によらない新しい人事制度を導入した。

2002年国土安全保障省の設立と新しい人事制度

 2001年9.11事件を契機として、テロ対策強化が重要な政治課題となった。2002年5月リーバーマン上院議員(当時民主党)が、ホームランドセキュリティを一元的に担う「国土安全保障省立法案」を連邦議会に提案したことがきっかけである。巨大官庁の創設に当初ブッシュ大統領は乗り気でなったともいわれるが、2002年6月にリーバ-マン法案と同じ内容の「国土安全保障省」設立に関する法案を提出した。これは、1947年に合衆国軍隊の国防総省への統合、国家安全保障会議とCIAを設立して以来の大きな省庁再編ともいわれる。〔*3〕
 国土安全保障省は、国境警備隊(司法省)、移民局(司法省)、関税局(財務省)、出入国管理及び市民権局(司法省)、連邦航空保安局(運輸省)、動植物保健検査局(農務省)運輸保安庁(運輸省)、沿岸警備隊(運輸省)など8省庁22機関17万人の職員を一つの省に再編・統合したもので包括的なテロ対策を目的としている。
 ブッシュ提案がリーバ-マン提案と異なっていたのは、採用・昇進・解雇等を容易に実行できる柔軟性のある人事制度、連邦公務員の人事や懲戒に対するめ不服申立制度や団体交渉を排除する提案であった。
 リーバ-マンら民主党議員のほか、労働組合は国会議員にメール攻勢をかけて、反対したが、2002年11月25日共和党が両院で多数をしめている状況で成立した。2003年1月より正式に発足した。この立法では国土安全保障省長官と人事管理局長に既存の連邦公務員の人事制度の一部を免除・改正して、新たな人事管理制度を確立する権限を与えた。また、従来、大統領が連邦公務員の団体交渉権を制限する場合には、①その連邦公務員が、主にインテリジェンス、犯罪捜査、または国家安全保障業務を主たる機能とする行政機関に勤務する場合で、かつ、②団体交渉権が、国家安全保障の確保を満たしながら行使することができない場合に限られていた。(5U.S.C7103(b)(1)) のに対し、国土安全保障法では大統領が国土安全保障上の必要から同省の職員について団体交渉権を留保しようと決定する場合、この二つの要件を免除した。

 2005年2月の人材管理制度の最終規則案70 Fed. Reg.5272,5273により行政規則化された(5C.F.R.pt.9701)が、それによると
○連邦政府被用者に認められている懲戒などに対する不服申立制度は利用できない。
○団体交渉を経ずに、多くの人事関係の事項や手続が同省長官の指令で実施できる。
○インテリジェンス、捜査、セキュリティ業務に就き、国土安全保障に影響を与える業務の場合は交渉単位に含まれない。
○連邦労使関係局で扱われた問題は、同省長官により指名された委員によって構成されたいくつかの内部委員会で処理される。〔*4〕
 新制度の主眼は、職務遂行能力と処遇の結びつきを強化し、職員の雇用、昇進、懲罰をより容易にすること、団体交渉を制限して労働組合の力を抑えることにあるとされるhttp://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2006_4/america_01.htm#01
 給与制度は一般俸給表General Scheduleから離脱して、大きく性格の異なる新しい給与システムとした。号俸を簡略化(10号俸ぐらいを3号俸ぐらいにまとめる)それぞれの号俸の中で、上限、下限を設けることで給与の幅(Pay Band)を作成。ペイ・バンドの中で、どの給与を支払うかについては、査定権者の権限とし、実績に比重をおく給与体系とした。定期昇給はなく、給与をフレキシブルに決定できる。〔*4〕職務等級制度の改革、ブロードバンド化は民間の成果主義導入と基本的に同じ流れとみてよいだろう。
 この人事制度は画期的な意義をもつと思うが、わが国ではあまり紹介されなかいのは、不可解である。

 国防総省の新しい人事制度

 2003年11月、2004年度国防授権法に基づき、連邦議会は国防総省に、同省に勤務する軍属(civilian employee軍人でない公務員70万人)に新たな人事管理制度を定める規則制定権限を付与し、2005年2月に国家安全保障人事制度National Security Personnel Systemに関する規則案を公表した。
 この規則案は連邦公務員の行政上の保護規制のうち、賃金、職階、業績管理、懲戒処分、人事に関する不服申立及び団体交渉権に関する規定が免除された。排他的交渉権をもつ労働組合は、国防総省に対して団体交渉を要求できるが、応じるか否かは同省の一方的な権限とされた。〔*4〕

National Security Personnel Systemの指導原則はつぎのとおり。
・任務を第1 に置く。国家安全保障目標及び戦略目的の支援。
・個人の尊重。法により保障された権利の擁護。
・才能、達成、公務に対する指導性とコミットメントに価値を置く。
・柔軟で、理解しやすく、信頼でき、対応しやすく、実行可能である。
・全てのレベルにおいて説明責任を保証する。
・独特な任務の要請と人材の相互運用性との均衡。
・競争的で費用効果的であること。〔*5〕

 給与は3つのペイ・バンドで調整される。給与には地域市場加算、成果にもとづく昇給がある。毎年度の成果管理サイクルは、目標管理制度である。昇給とボーナスが支給されるのは5段階評価の3以上である。

最終的に達成しようとしている目的に関しては、以下のように定義されている。
 国防総省の人的資源環境は、職員の成長、主導性、達成と説明責任を促進するものでなければならず、こうした環境は、適切な人を適切な仕事に、適切な時に適切な費用で、適切な工夫を用いて配置するものである。〔*5〕

 この方針は優れている。粉骨砕身働いている人、組織にコミットメントしても、その価値も認めないということはしない。たんに上司の好み、指図だということでなく、その仕事をなぜさせるのか説明責任を保証すること。職員を使い捨てにするのではく、職員も成長し指導性を促進させるといったことは、組合が支配的な企業ではありえないことである。 

〔*1〕菅野和夫「公務員団体交渉の法律政策」アメリカ(一)」『法学協会雑誌』98巻1号 1981
〔*2〕人事院「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会報告-補論1アメリカ及びイギリスにおける公務員給与決定方法の実態調査」(平成18年3月20日)http://www.jinji.go.jp/kyuuyo/kenkyukai_hp/hikakukenkyukai_top.html
〔*3〕土屋恵司「米国における2002年国土安全保障法の制定」『外国の立法』222号2004年
pdf http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/222/022201.pdf
〔*4〕永野秀雄 「海外労働事情(65)アメリカ/国家安全保障にかかわる業務に従事する連邦公務員に対する団体交渉権の制限--九・一一テロの影響とその評価」『労働法律旬報 』(1662), 68-71, 2007-12  /1261 
〔*5〕小塚郁也「米陸軍の文官人的資源管理-SES 制度改革とNSPS 導入をめぐって-」『防衛研究所紀要』9巻1号2006年http://www.nids.go.jp/publication/kiyo/j9-1.html

2010/12/01

公務員に争議権付与カウンターレポート下書き-アメリカ合衆国・オーストラリアとの比較法制(3)

 第一回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-d339.html
 第二回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-0419.html
 
 
連邦公務員はスト参加で解雇される(3

 また連邦法7116条では、使用者・労働組合双方の不正労働行為(Unfair Labor Practice、ULP)を定義しており、ストライキ(strike)、業務停止(work stoppage)、怠業(slowdown)、ピケ(picketing)への参加(participate)、および、これを呼びかけること(call)が、労働組合としての不正労働行為にあたるとしている。これらの行為をおこなえば、労働組合の排他的交渉代表権が取り消される。また、職員には、懲戒処分が科せられる。これらの不正労働行為のなかでも、ストライキだけが刑事罰の対象となっており、1,000ドル以下の罰金などが科せられるとしている。PDFhttp://www.gyoukaku.go.jp/koumuin/kentou/working/dai7/siryou7.pdf
 もっとも労働組合の支持によって当選したカーター政権により1978年連邦公務員法改正法Civil Service Reform Act of 1978により団体交渉制度が導入された。これは、連邦公務員の団結権および団体交渉権を宣言して〔民間企業の全国労使関係と同じく〕排他的交渉代表権の枠組を定め、労使双方の誠実交渉義務を設定してこれを不当労働行為手続で担保するとい全体構造であるが、団体交渉の範囲は限定されており、給与については法定制度が維持されている(次回以降後述)。 
 団体交渉の対象になりえない事項としては(1)行政庁の任務、予算、組織、被用者数及び機密保持措置を決定する権限(2)被用者を採用し、配置し、指揮し、レイ・オフし、または官職に留める権限(3)懲戒処分を行う権限(3)仕事を割り当てたり、下請けに出す権限などである。また、当局の選択によって交渉事項となりうるのは、組織単位、作業プロジェクトまたはは勤務割に割り当てる被用者の数、種類、等級又は官職や業務遂行の技術、方法、手段などである。
 
 連邦公務員人事委員会は、人事管理庁Office of Personnel Management)とメリット・システム保護委員会Merit Systems Protection Boardとに分割された。
 7万人の中間管理職クラスに能力給が適用され、従来の定期昇給と官民格差を是正するための昇給ベースアップという自動昇給システムからはずされた。
 メリット・システム保護委員会は。従来、成績不良者に対する降格や免職と勤務評定との関連が明確でなく、統一的基準規定がなく、メリットシステムが形骸化していた状況を改め、勤務評定・不利益処分・不服申立てを関連つけた制度整備を行ったものである。
 これは人事院公平局を独立させたような組織だが、任期7年の三名の委員と任期5年の法律専門家たる特別顧問により構成される。メリット・システムの原則を実現するための法律等による違反行為の有無を監視し、違反行為に対する不服申立てなどについて審査決定し、人事管理庁の制定する規則や細則の審査もできる。
 人事委員会を分割してこの組織を設けた眼目が、勤務成績不良者の降任、免職を容易にすることにあった。すなわち、成績不良職員は、自己改善のための援助を与えられることにはなっているものの、90日前の通告が必要だった免職等が、30日前の通告となり、不服申し立ての手続きは迅速化するということだった。
 しかし、この制度でも硬直的と批判されている。実際に解雇される例が少ないのだ。2002年国家安全保障省新設のさい、2002年11月の国土安全保障省創設にあたって大統領は、国土安全保障省の労働者の採用、解雇、異動について大きな権限を持つことになったが、ブッシュ大統領はこの行政上の保護を剥奪すべきことを力説した。要するに、容易に採用、昇進、解雇ができるようにしたいとのことだった。
 また連邦労使関係院(Federal Labor RelationsAuthority)があらたに設置されたが、協約上に強制仲裁を含む苦情処理手続を規定することが義務づけられ、従来排除されていた「勤務成績を理由とする解雇、免職、給与低下、休職、停職や昇進の遅れ、人員削減などが対象となっているらしい。この制度、勤務成績を理由とする解雇に組合が口を出せる制度をつくったために、一層硬直したものになったという見方ができる。2002年の国家安全保障省設立のさいに、団体交渉権廃止をブッシュが力説したのもこの点にあったと考えられる。

引用・参考
菅野和夫「公務員団体交渉の法律政策」アメリカ(一)」『法学協会雑誌』98巻1号 1981
大久保史郎「アメリカ公務員制度改革改革詳論」『立命館法学』150-154号、1980
大河内繁男「アメリカにおける公務員制度の改革」『公企労研究』42号、1980
『欧米国家公務員制度の概要』財団法人社会経済生産性本部・生産性労働情報センター、1997
 国土安全保障省と団体交渉権問題など
http://www.jil.go.jp/jil/kaigaitopic/2003_02/americaP01.html
http://www.govexec.com/dailyfed/1102/111202p1.htm
http://www.govexec.com/dailyfed/1102/112202b1.htm
http://www.usatoday.com/news/washington/2002-09-12-homeland_x.htm
http://www.csmonitor.com/2002/0905/p10s02-comv.html
http://www.brookings.edu/views/op-ed/light/20030509.htm

その他
PDFhttp://www.gyoukaku.go.jp/senmon/dai13/sankou1.pdf

2010/11/29

公務員に争議権付与カウンターレポート下書き-アメリカ合衆国・オーストラリアとの比較法制(2)

 第1回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-d339.html
 
連邦公務員はスト参加で解雇される(2)

 A マッカーサー書簡-政令201号による政策転換とは、アメリカ本国では公務員に団体交渉権も争議権も付与してないのに、それを行った急進的な占領政策を、アメリカ的な政策に戻したもの

日本の戦前の官吏、待遇官吏、吏員はドイツ公法の考え方と同じ、公法上の勤務関係、特別権力関係にあると考えられ、官吏服務規律第一条は天皇陛下及び天皇陛下の政府に対し忠順勤勉を主とし、法令命令に従いその職務に奉仕する旨規定し、私法上の契約雇用関係ではなく、官吏の俸給は労働の対価ではなく、「天皇の官吏」として社会的体面を保つにふさわしい身分給として、高等官は年俸、判任官は月俸、俸給表は天皇大権により勅令により、枢密院の諮詢事項として扱われ、官吏の待遇にかかわる勅令は法制局が、予算は大蔵省が所管した。天皇大権事項だから団体交渉などありえないし、争議行為などは無条件に否定される。〔*1〕
 しかし終戦直後の官公労働はきわめて異常な無秩序、混乱に陥った。〔*2〕その要因は総司令部経済科学局労働課の指導により、新憲法施行前に逸早く昭和21年3月1日から労働組合法が、21年10月13日から労働組合調整法が施行され、官吏は労働組合法が一部の例外を除いて適用され、政府職員の組合は労働組合を結成し、非現業以外の職員には争議権が認められ、当局との間に労働協約が適用されることとなったことによる。これは合衆国本国の法制・判例法とも全く合致しない急進的で異常な政策で経済科学局労働課長キレンはAFL系労働組合副委員長であり、労働組合主義者である。このような人物によって労働政策が指導されたことが、終戦直後の混乱・無秩序をもたらしたいうべきである。
 昭和23年7月22日マッカーサー元帥の芦田首相宛書簡の発出〔*3〕により、31日政府は政令201号により政府職員の団体交渉権、争議権の否認、既存の団体協約の無効化を定め、GHQとの協議により、11月に国家公務員法が改正された。マッカッサー書簡には1937年のいわゆるルーズベルト書簡〔*4〕が引用された。全国労使関係法の適用は民間企業であって、これは大統領が公務員に団体交渉の手段は採用されないことを明言したものである。
 経済科学局労働課長キレンは団体交渉を否認する占領政策の転換についていけないとして、辞意を表明し帰国するが、実質的には追放されたわけである。 民主党のマニフェストは労働基本権の回復であるが、私は逆に政令201号は当然のことであると考える。
 アメリカ本国でも公務員の団体交渉や争議は認められてないのに(組合は議会への陳情することが行われていた)、本国よりも急進的な政策を軌道修正したマッカーサー元帥の政治判断は全く正しかったと評価するものである。
 
B 連邦公務員は今日においても争議権を全面的に否認

 連邦公務員において争議権が全面的に否認されていることは今日でも同じことである。ストの参加や主張は欠格事項に該当し解雇されると法律で規定されている。
 アメリカの民間企業一般において労働組合活動が制定法によって実質的に保護される体制となったのは赤い30年代、1932年のノリス・ラガーディア法(非暴力的な争議行為につき、裁判所による労働争議差止命令発給権限を否定し、契約自由により裁判所が法的効力を認めていた黄犬契約を否認した急進的立法)以降である。
 1935年ワグナー法(全国労使関係法)7条で被用者の団結する権利、労働団体にに加入・組織・支援する権利、自ら選んだ代表者を通じて団体交渉をする権利、団体交渉またはその他の相互扶助・保護のために団体行動をする権利を保障を規定し、8条に列挙される不当労働行為の規制を担当する機関として全国労働局を設けた。しかし公務員は適用除外である。
 1947年タフト・ハートレー法では「合衆国または合衆国により完全に所有される公法人(Government)を含む政府諸機関に雇用される個人が、ストライキに参加することは違法である。合衆国またはその機関に雇用されている個人であって,ストライキを行った個人は,直ちに解雇され、公務員としての身分を剥奪され,しかも以後三年の間,合衆国またはその機関により再雇用される資格を失うものである」(305条)とされている。
 さらに1955年に制定れた「法律第330号」は、同様の趣旨を詳細に規定し、さきのタフト・ハートレー法第305条を廃止したのである。法律第330号によれば(1条)、①いかなる争議行為であってもこれに参加し,または合衆国政府またはこれらの機関に対する争議権を主張する者および,②その事実を知りながら,合衆国政府またはそれらの機関に対する争議権を主張する政府職員の組織の構成員となっている者に対しては,合衆国政府またはその機関におけるすべての職につき、またはそれらの職を保持することはできないとし、その違反者に対しては、1000ドル以下の罰金もしくは-年以上の懲役またはそれらを併科することとされている。〔*5〕
 

〔*1〕西村美香『日本の公務員給与政策』東京大学出版会

〔*2〕ブレイン・フーバー民政局公務員課長は当時の官界の無規律・無秩序について次のように云っいる。
「‥‥某々省においては、数千という職員が、その勤務時間の全部を職員組合の仕事に費やしそれに熱中していました‥‥彼等は勤務時間中に数千人に及ぶ組合員の会合を開催していたので、そのあいだは役所の事務は全く停止されていました。彼等は建物の中で数個の最もよい室を占領してこれを職員組合の用に充てていました‥‥彼等は、勤務時間中に役所の費用をつかって、役所の仕事を犠牲にしながら、デモ行進やストライキをやりました。彼等は、その役所の業務管理の機能を奪ってしまったため、監督の地位にある上級官吏が自分の命令が確実に行われると自信を以て仕事を指揮している人はほとんどいない有様でした‥‥」岡部史郎『公務員制度の研究』有信堂1955 200頁

〔*3〕昭和23年7月22日内閣総理大臣宛マッカーサー元帥の書簡(抄出)
  ( 松林・寺田編 労働基本権関係資料『法律時報』48巻8号)
 ……勤労を公務に捧げるものと私的企業に従事するものとの間には顕著な区別が存在する。前者は国民の主権に基礎をもつ政府によって使用される手段そのものであって、その雇用される事実によって与えられた公共の信託に対し、無条件の忠誠の義務を負う。‥‥公務員の上にはこの国民全体に奉仕する義務が負わされている。‥‥……労働者の権利の唱道者として第一人者であったかつての故米国大統領フランクリン・ローズベルト」の言葉によれば「国民はその利益と福祉の為に政府活動のうちに秩序と脈絡とが維持せられることを要求する。公務員の上にはこの国民全体に奉仕する義務が負わされている。これは最高の義務である。彼等自身の職務が政府の機能に関係するものである以上、公務員の争議行為は彼等自身に於て要求が満足せらるるまでは政府の運営を妨害する意図があることを明示するものにほかならない。自ら支持を誓った政府を麻痺せしめんと企図するこのような行為は想像し得ないものであると同時に許しえないものである。」
 余はこの見解に全面的に賛成である。雇傭若しくは任命により日本の政府機関若しくはその従属団体に地位を有する者は、何人といえども争議行為若しくは政府運営の能率を疎外する遅延戦術その他の紛争手段に訴えてはならない。何人といえどもかかる地位を有しながら日本の公衆に対しかかる行動に訴えて、公共の信託を裏切るものは雇傭せられているが為に有するすべての権利と特権を抛棄するものである。
 「ローズベルト」大統領は更に言っている、「すべての政府職員は普通に知られている所謂団体交渉の手段は公務員の場合は採用できないものであることを理解せねばならぬ。団体交渉は国家公務員制度に適用せられるに当たっては明確なそして変更しえない制限を受ける。政府の性質並に目的それ自体がその行政運営に当る官吏をして政府職員の団体との間の協議若しくは交渉に於て使用主を代表し又は拘束することを不可能ならしめている。使用主は全国民である。国民は国会に於けるその代表者により制定せられる法律によりその意志を表明する。従って行政運営の任に当る官吏も雇傭せられているものも、均しく人事に関し方針、手続並に規則を定める法律によって支配せられ、指導せられ又少なからざる場合に於て制約を受けている」と
 然しながらこの理念は公務員たるものが、自ら若しくは選ばれた代表を通じ雇傭条件の改善を求めんが為に自由にその意見見解若しくは不満を表明する個人的若しくは団体的の妨げられることなき権利を有しない意味ではないことを明確に了解しなければにらない。この権利は民主主義社会に固有の権利であり奪うべからざるものである。而して余はこの権利は現に提案されている国家公務員法の修正案の中に十分規定せられていると信ずる。

〔*4〕ルーズベルト大統領は1937年に連邦公務員全国連合のルーサー・スチュワードに宛た有名な書簡で「すべての政府職員は普通に知られている所謂団体交渉の手段は公務員の場合は採用できないものであることを理解せねばならぬ。団体交渉は国家公務員制度に適用せられるに当たっては明確なそして変更しえない制限を受ける。政府の性質並に目的それ自体がその行政運営に当る官吏をして政府職員の団体との間の協議若しくは交渉に於て使用主を代表し又は拘束することを不可能ならしめている。使用主は全国民である。国民は国会に於けるその代表者により制定せられる法律によりその意志を表明する。従って行政運営の任に当る官吏も雇傭せられているものも、均しく人事に関し方針、手続並に規則を定める法律によって支配せられ、指導せられ又少なからざる場合に於て制約を受けている」と述べ、職員団体の論理的地位を認めつつも公務員の団体交渉の可能性についてははっきりとした限界(definite limits)があることを明確にしている。団体交渉権の否定であるから当然争議権を否定しているのである。

〔*5〕浜口金一郎「公務・公共部内における労働基本権の考察――主要各国の法制――」『比較法制研究』(國士舘大學比較法制研究所)第5号1981
http://libw01.kokushikan.ac.jp/RING/SKStart.html?recordID=1001731&status=01&type=2&reqPageType=SN

2010/11/28

公務員に争議権付与カウンターレポート下書き-アメリカ合衆国・オーストラリアとの比較法制(1)

 そもそも私は、2008年自民党政権の「国家公務員制度改革基本法」12条における「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益および費用を含む全体像を提示し、その理解のもとに開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とした団体協約締結権付与も反対であるが、このたびの争議権を付与する民主党政権の方針はより深刻であり、なおさら強く反対である。11月26日国家公務員へのスト権付与に関する有識者懇談会の初会合を内閣府で開かれた。http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010112702000037.html報道によると有識者懇談会の慎重派は石原信雄氏を含む少数とされており、労働基本権回復は民主党のマニフェストに明記されていることもあり、来年の通常国会でスト権付与法改正提出が想定できる。もっともねじれ状態での通常国会は紛糾が予想されるが、政治的取引で民主党提案を軸に可決する危険性も高い。これは国制の根幹にかかわる重大問題であり、争議権付与に反対の立場でカウンターレポートを短期間に書き、ブログだけでなく国会議員に送付したいと考えてます。論点は多岐にわたる。総じて言うなら労働基本権付与問題はILO勧告に引きずられすぎであり、19世紀末期から20世紀60年代頃までのトレンドに過ぎなかった、コレクティビズムに固執しすぎである。論点は多岐に及ぶ。各題材で下書きを積み上げて一本に要約するやりかたとします。

 諸外国との比較法制という観点で、公務員にスト権付与は突出して急進的な政策といえる。まずアメリカ合衆国と関連してオーストラリアの比較である。
 
連邦公務員はスト参加で解雇される(1)

(要旨)アメリカ合衆国では連邦公務員は同盟罷業を一律に否認している。ストトライキに参加したり主張するたけでも欠格事項であり解雇される。1981年の航空管制官ストではスト参加の組合員1万2千人が解雇され、判例上も解雇が確立している。団体交渉制度は組合の支持で当選したカーター政権の1978年連邦職員労使関係法で制度化されたが、団体交渉の範囲が限定されているうえに、給与は法定主義が維持されている(ただし1970年連邦給与均衡法では連邦被用者給与諮問委員会で組合代表者5名の意見・勧告が考慮されることとなっている*1)。会計検査院(GAO)、連邦捜査局(FBI)、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)、連邦労使関係庁(FLRA)、連邦公務紛争処理委員会(FSIP)、テネシー渓谷開発公社(TVA)は団体交渉権の適用除外である。
 また大統領には国家安全保障上必要であれば、その部署の団体交渉権を剥奪する権限がある。ブッシュ大統領は2002年に司法省の1000人の団体交渉権を剥奪したほか、新設の国家安全保障省(22の国内組織を統合・約20万人)では実質的に団体交渉を廃止した。また新設の運輸保安庁の空港荷物検査員5万6千人、 National Imagery and Mapping Agency (NIMA) 2000人の団体交渉権を撤廃した。
http://www.psi-jc.jp/focus/2004_02/12_bushkeeps.htmさらに国防総省の新人事制度では、職務遂行能力と処遇の結びつきを強化し、職員の雇用、昇進、懲罰をより容易にし、加えて賃金水準の決定を団体交渉の対象から外し、労働組合の力を抑えるものである。http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2006_4/america_01.htm#01
 連邦政府職員に横断的に適用される一般俸給表は、50年以上前に設計された年功序列の給与制度で、もっと柔軟で採用、昇進や解雇も容易な制度にオーバーホールが必要な時期に思える。トレンドは団体交渉権を抑える方向である。特にブッシュ政権が活発に動いて組合の弱体化政策をとったといえる。ただしそれは国家安全保障を名目とする組織に限定されているが、国防総省などの新制度を他の省庁も実施できるようにできれば大きな改革となるだろう。
 なお、「民間サービスマネジメント」(連邦政府行政予算管理局のA-76通達による官民競争入札)による行革施策も行われている。
http://www5.cao.go.jp/koukyo/hourei/nyumon/pdf/nyumon4.pdfがこれも民間に業務を移して雇用は増やす政策で組合が反対している政策である。
 アメリカの経験からみて行革のためにわざわざ争議権を付与し、労働組合の威力を増すようなわが国のやり方は本末転倒であるといわなければならない。

*1菅野和夫「公務員団体交渉の法律政策-アメリカにおける可能性と限界(一)」『法学協会雑誌』98巻1号 1981

2008/05/28

痛恨の極みだが、川田亜子のように死ぬことはない

 公務員制度改革で玉虫色的表現を残しつつも、団体協約締結権付与に道を開いたとされている決着は痛恨の極みである。http://www.asahi.com/politics/update/0528/TKY200805280116.html。締結権を付与したら公務員が労働組合の職務統制に支配されていく可能性が強い。そもそもこの問題は森内閣の頃から足かけ9年ぐらいになるが、理論的に明快に改革は必要だが、労働基本権は付与しないことが正しいという対抗言論を展開できず8~9年無為に過ごしたことは非常に後悔している。もっともその間に停職1ヶ月の他、特別指導職員とされ昇給停止や、不本意配転、狭心症、心筋梗塞の発作と、手術があり、健康状態も思わしくなかったので、意欲がそがれた投げやりになった面もあるが、しかし川田亜子のように人生に絶望せずに、地道に対抗言論をやっていく予定である。
 『海外労働情報』2003年4月号「難航の公共部門、Verdiが賃金協約締結 」
 という記事http://www.jil.go.jp/jil/kaigaitopic/2003_04/germanyP01.htmlにドイツの公共部門ストライキについて載ってます。それによると
 「難航を極めた交渉の最終段階で、Verdiは交渉決裂の場合には1月末から新たな戦術を取り入れて無期限ストに打って出る強硬姿勢を示していたが、これに対する使用者側の譲歩の背景には、1992年のOTVのストで、多額のコストとともに市民生活に大きな支障を来したという事情がある。同年の公共部門のストでは、公共部門の労働者と郵便・鉄道関係の職員約40万人が11日間ストライキを行い、この間バスは止まり、郵便は遅配され、収集容器が放置されてごみ収集が滞る等、6大経済研究所の一つミュンヘンのIfo経済研究所の試算では、このときのスト関連の損失は10億マルク(当時)に達したとされる。その意味では、使用者側の今回の譲歩も、ストの損失を回避するためと言える。しかし財務省の試算によると、今回の公共部門の協約締結で連邦・州・自治体にかかる財政負担は、2003年が25億ユーロ、2004年が29億ユーロの合計54億ユーロであり、このような財政負担を招いた使用者側の大幅譲歩に対しては、財政の逼迫する州・自治体レベルの不満は大きい。1パーセントの賃上げで自治体の財政負担は年間7億ユーロ増加するとして、ゼロ回答に近い妥結を要望していたシュラム市町村連合会長は勿論、州・自治体レベルでは、交渉団体からの離脱の声のほか、現行の連邦主導による労組との協約交渉の在り方自体に疑問を呈する声が上がっている。」
 ドイツの公共部門にみられるように協約締結交渉が決裂した場合、長期ストを打つぞという脅しは相当きくし、多大の財政負担を強いられることになる。
 

 
 

2007/04/22

労働基本権が基本的人権だなどいうのは大きな間違いである(2)

  ストライキは本来犯罪である(コモンロー共謀法理について)-(1)

要旨-本来、団結は共謀法理により徹底的に弾圧されてしかるべきである。社会正義の回復のために共謀法理の継受復権を望む

川西正彦

 ここでは1800年小ピット政権の団結禁止法までのイギリスの法制を概観しておく。イギリスの労働を論じる場合1349年エドワード3世の治世の労働者勅令から取り上げるのが通例になっている。この勅令では日雇いを禁止、年期奉公を強制、就労場所の限定、契約満了以前の労働放棄の投獄、慣習的賃金より高い賃金の支払、受領を禁止した。これは百年戦争が勃発し、ペスト大流行による人口減少により賃金が極端に高騰し、過大な賃金を受け取らなければ働かなくなった在り方を旧に復す目的があった。年期奉公の期間満了まで解雇を規制したのは労働者の保護ではなく深刻な労働力不足から勝手な離職させないためのものであったといわれている。
 1543年法は、一定の賃金もしくは一定の労働時間でなければ働かないと共謀した労働者に対して重く処罰するものとしたが、コンスピラシー(共謀)に理由に労働者の団結が犯罪とされるようになったのである。
 1563年エリザベス1世治世の職人規制条例は、徒弟条項、移動禁止・強制就労条項、賃金条項があるが、賃金条項では治安判事にその年ごとの各職種の賃金を裁定する権限を権利を与え、裁定賃金を上回る賃金を支払った雇主と受領した労働者を投獄する権限を与え、この条例を無効、変更ならしめる労働者の団結を禁止した。
 1720年の主従法は仕立て職人の雇用期間中ないし仕事完成前の労務放棄および、法定、裁定賃金によって就労することの拒否には、治安判事が理由ありとしない限り2ヶ月以下の懲治監での重労働、その後主従法は、就労強制条項は含まなくなったが、契約期間満了前の労働放棄、非行や、仕事完成前に履行を怠る場合、懲治監での重労働が科された。中世の立法のような雇主の解雇規制はなくなった。

 しかし、産業革命以後、急速に発展してきた労働者の団結活動に対して、もっとも効果があったのは、刑事共謀法理を労働運動に適用することだった。
 そもそも、共謀法理は13世紀中世高期黄金時代の裁判手続に起源を有する裁判法上の不法行為概念だった。当時イギリスにおいて陪審裁判の手続でしばしば悪用が行われていた。損害賠償の不可能な12歳未満の者に告訴させたり、共謀して誣告的な告発がなされていたのである。悪用をなくすためエドワード1世の治世1285年にコンスピラシー条例により共同謀議を犯罪とした。1305年の共同謀議者令はコンスピレイターについて次のように定義した。「宣誓・誓約その他の約束により、互いに共同もしくは結合して虚偽の申立を行い、それによって他人を起訴ないし起訴の危険に陥し入れ、あるいは他人をして有罪の責任を免れせしめ、あるいは訴訟を提起もしくは支持し、あるいは12歳未満の者に、他人に対して重罪の告訴をなさしめるもの‥‥」。
 当初の適用範囲は重罪としての誣告だったが、「営業の制限の法理」に適用された。これは独占取引を禁止することにより営業の自由を確保するもので、使用者の団結に向けられたものだったが、18世紀から19世紀にかけてのイギリスの裁判所は、「営業」には使用者の取引のみならず労働者ないし労働組合の取引も含まれるという想定のもとに労働者の団結は「営業の制限」に該当するとして刑事共謀法理を適用した。
 コモンロー上の刑事共謀法理が初めて適用されたのが、1721年のジャニーメン・テイラーズ事件である。ケンブリッジの仕立職人が団結して賃上げのストライキをしたことが、1720年の主従法に違反するとして起訴された事件で、裁判所は制定法の有無にかかわらず、労働者の団結はコモンロー上の共謀罪で処罰しうること。個人で行えば合法的である場合でも、共謀すなわち団結することによって不法となることを明らかにした。さらに1783年のエックレス事件はリバプールに住むエイチ・ブースの営業を妨害する労働者の団結であったが、共謀罪は妨害がなされたか否かにかかわりなく、いかなる方法にせよ妨害を意図して数人が共謀することによって成立するとし営業妨害をたくらむ共謀それ自体が犯罪となることを明らかにした。さらに1799年のハムモンド事件で労働組合結成も刑事共謀罪とした。
 18世紀の裁判所の判断は正義であると思う。コンスビラシーの法理は大変優れたものである。労働者の団結とは営業を制限する共謀であり、犯罪なのである。犯罪であるべきものが、憲法上保障された基本的人権になる。こんな馬鹿げたことはないのである。価値観が顛倒している。悪魔を神として崇めることと同じである。労働組合は共同謀議を恒常化するものである。団結権は財産権を侵害し、本来個別契約であるべき雇用契約の自由を侵害し、個人の就労する自由を侵害し、コモンロー上の黙示的誠実労働義務を否定し働き方を統制することにより、個人の幸福追求権まで否定する。これほど悪い思想はないのである。
 もっともコンスビラシーの法理を継受しなくても労働組合を駆逐する方法はある。しかしこれを継受して労働組合(共謀犯罪団体)を絶滅させることも選択肢の一つと私は考える。

引用文献・参考文献
高橋保「イギリス労働法における共謀法理(コンスピラシー)の形成と展開」『創価法学』7巻4号1978
小宮文人『現代イギリス労働法』信山社2006
中西洋『《賃金》《職業-労働組合》《国家》の理論』ミネルヴァ書房(京都)1998
 

労働基本権が基本的人権だなどいうのは大きな間違いである(1)

(公務員に労働基本権付与反対シリーズ)

 自分の人生はがけっぷちである。非常にまずい状態です。昨年のある要因があって5月頃から異常な無気力状態でした。ワールドカップ日-豪戦でロスタイム大黒投入というほど絶望的というわけでもないけれど、自分が怠けていたことは率直に反省しますが、もう死にものぐるいにやらないとダメです。だからここから死にものぐるいで通常人の3倍ぐらいの生産性でやっていくしかない。ブログで宣言してしまったほうがよいと思います。今、宣言しましたから、本日から365日無休でやります。小さいものを量産していきたいと思います。

川西正彦
 
ストライキは本来犯罪で非常に恐ろしいものである
 
 私は、脅迫、威嚇、罵り、襲撃、監禁、殺し合いのようなことが白昼堂々行われるストライキを憎む者であり、ストライキが権利だなどいう思想は、大罪に値し、そういう悪を許容する「法制度」を持っているのは道徳的倫理的に腐敗した国家・社会だといわなければならないと思います。そんなものは人権であるはずがない。実は争議権の名のもとに殺人も容認するプロレーバーの学者や弁護士もいたことを吾妻光俊が講演で述べている箇所があるんです。吾妻光俊(中労委公益委員)の「〔講苑〕中郵事件の最高裁判決について」『中央労働時報』66巻12号(447号)から引用します。
「労組法一条二項が、暴力行使はこの限りにあらずなんて、わざわざいったのか‥‥事実、争議行為なら人を殺してもいい、けがをしてもいい、そういうことをいう学者もいたし、弁護士さんもいたんです。あれは、昭和二十二・三年ですから、労働法なんていうのを議論する皮切りのころです。ある弁護士さんがいったことには、人殺しでも傷害でも暴行でも強迫でも、労働組合が勝つための手段は全部一条二項だと。正当業務だと。こういうんですから、すごいことをいう人があるもんだと思って私は口をつぐみました。これは、あるところの主催でやった、研究会、判例批評のときです。‥‥ともかく、終戦後そういう考え方はあったです。‥‥争議というレッテルさえはれば、本来なら許されないはずのものが許されるという気分はあった」「今度の事件はわりと単純な職場放棄でした‥‥この判決に乗っかっていくストライキというものは、腕力は使わないようなストライキ、ピケでも平和的説得だとかいうものとこの判決は、だいたい同一線にあると思うんです。だからスクラムは組み放題、乗務員の奪い合いはやりたいほうだい、人の職場のなかにははいりほうだい、仕事もしないのにはいり込んでわんさかやっているような、そういう実態がこっちにあって、この判決を歓迎しているというのは、私は気心が知れないと思うんです。ほんとうをいえば、はずかしいんじゃないかと思います」
 プロレーバーは労働基本権の名のもとに、最大限の威圧、強迫で団体行動を強要することがができると解釈するのが常です。ストとなれば殺し合いもありえます。1984年のイギリスの炭労ストでは二人の死者が出ました。このとき炭労委員長のスカーギルは組合員の秘密投票もなくストを指令したため、採算がとれて閉山の可能性の少ないノッティンガムシャ-の炭坑労働者はストに反対した。スト派とスト反対派の抗争になりましたが、サッチャー政権はスト派の切り崩し工作をする一方、1980年雇用法では、被雇用者以外の者がピケに参加することを禁止していましたが、フライングピケットという遊撃ピケ隊に警官隊が投入され、各地でピケ隊と警官隊の衝突乱闘となり、多くの労働者が逮捕され、乱闘に巻きこまれた炭坑夫1人が死亡しました。もう一人の死者はスト反対派の炭坑夫を乗せてきたタクシーの運転手で、スト派の炭坑夫二人から追い越しざまにコンクリートブロックが投げつけられタクシーが潰れたためです。ストライキとなると憎しみあいになります命懸けなんですよ。この暴力事件で、世論は恐れをなし組合側の行動は支持されなくなり、敗北しました(アンドリュー・ローゼン著川北稔訳『現代イギリス社会史1950-2000』岩波書店2005、86頁)。組合側は警官隊によるピケ隊の逮捕を非難しましたが、世論は同調しなかった。
 しかし公務員にスト容認となればスト破りの襲撃や監禁はつきものであってスト派と反対派の暴力抗争は当然じゃないですか。東京都水道局はしょっちゅう闘争をやっているから殺気だってますよ。メキシコプロレスみたいな乱闘や揉み合いはは何回もやってます。管理職が争議推進なので組合と協力し私がギブアップする所まで苦しむのを見ていて楽しむ陰険さがあります。私は4~5人の下敷きになって一ヶ月以上寝返りができない怪我をして死ぬかと思うくらい苦しい思いをしたことがあります。組合と管理職が結託して威圧、強迫して業務を妨害し違法行為に巻きこんできますから、自力救済しかないわけです(管理職は勤務時間内の庁舎内、事務室内の争議行為をあおり、非組合員を攻撃する趣旨のアジ演説のある職場集会やオルグ活動を是認し、いっさい解散命令や就労命令を発出しないことなど争議行為の協力者であることが常である)。だから争議権容認なんてとんでもない。
 暴力は許されないといったって、人格的に屈辱を与える暴行と限定的に解釈されますから、争議権の名のもとに強圧的な脅迫と擦れ合い相当の暴力は容認でしょう。スト破りの襲撃や暴力も是認されることになるでしょう。公務員に争議権を付与すると、強迫、腕力をふるいほうだい、なんでもありといなってしまうのではないかという懸念が強くあるわけです。アメリカの労働組合であれば2~3年の労働協約改訂期にストを打ちますが、日本の公務員は年中行事的にしょっちゅう闘争やってますから、今までも、多くの人が処世術として組合の指令に唯々諾々と従ってますが、今まで以上に組合のジョブコントロール、締め付けが強くなり、労働組合に脅迫されて組合の奴隷とされる公務員になる可能性が強い。 
 
 社会的常識論を述べたいと思います。市民法のものさしでは争議権はわりきれないものがあるという常識的な見解を引用します。再び吾妻光俊(中労委公益委員)の「〔講苑〕中郵事件の最高裁判決について」『中央労働時報』66巻12号(447号)です。
「戦前にはご承知のように争議行為という社会現象を無理矢理といいますか、ものの考え方もそうだったわけでしょうけども、市民法のワクのなかにしょっぴいてきて、そして業務妨害だ、やれ債務不履行だ。これは別に裁判所がそういったというだけの意味ではなしに、明治以来、俗なことばを使えば、不逞の輩の行動だという考え方の奥底には、仕事をやめるということは、賃上げの要求があるか、人員整理反対の要求をかざしているにせよ、ともかく平常請け負っている仕事をやめるということは、なにか契約違反である。しかも仕事のじゃまになる。業務のじゃまになるという意味では業務妨害の要素を含んでいるんだと。こういう意識があったと思うんです。もっとも戦前の判例で別に業務妨害罪でやられたというケースが多いわけじゃないんですけど、‥‥一般の社会常識でなかったかと思うんです。戦後反動というんですか、そういう考え方は欧米的な労働運動に対する、あるいはストライキに対するものの考え方や、天下の大勢に合わないという意味で、これは末広さんあたりの音頭とりで一条二項とか八条という労組法のなかにはいってきている‥‥刑法学者でもない私が口幅ったいことはいえないなですれれども、いままで争議行為というものは、そもそも債務不履行であるべきものだとか、それから実は業務妨害というものになるはずのものだ。しかし、憲法二十八条は保障しているんだから、違法でないなだという考え方には、少々賛成しかねるというのが私の実感なんです。‥‥いってみれば市民法というのはご承知のように、市民法のなかにも団体法がありますけれども、市民法が労使関係というものを考える考え方はも契約原理なんです。‥‥だからストライキというのは一致団結して契約違反をやることであり、一致団結してやれば刑法上からいえば業務妨害のうちだ、こういうものさしで割り切るほかない」
 逆にいえば市民法的なものさしはあくまでも基本であって本質的にストライキは悪である。とにかく私はプロレーバーの労働法理論というのは全く信用していない。
 「従来いろいろな学説がありましたけれども、公務員法とか公労法とかの争議権の制限というのは、一方には憲法違反だという非常に強い主張がある。一方といいましたが、そちらのほうがおそらく大多数。どちらかというとそういう考え方が非常にきつかった。‥‥学説といいましてもこれが民法とか刑法とかいうことになりますと、多数説、少数説、通説、異端邪説というものが、いちおう通用するわけなんですが、こと労働法らーに関する限り私の実感から言いますと、多数の学者がある立場をとったから正しいんだという安心感というものが全然ない」
 それはそのとおりでしょう。社会常識では、他者に損害を与えること、他者の自由を拘束すること、他者の意思に反する行為を強要すること(就労妨害、スト破りの襲撃・監禁など)はよくないことなんです。しかし労働組合やプロレーバーはそれが権利だという。暴力団の暴力、強迫、威嚇は、みかじめ料の徴収は悪で(ただし暴力団が社会紛争の調停者としての役割をはたしており是認する考え方もありうる)、労働組合の暴力、強迫、威嚇、組合費の収奪は良いことだとはいえないのであります。

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