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カテゴリー「東京都労務管理批判」の207件の記事

2016/09/20

豊洲新市場報道について3

 テレビで平成21年7月より2年間市場長だった岡田至都歴史文化財団副理事長がインタビューに応じ、地下空間があることは知っていたが盛り土の上と認識していたと語ったといってましたが、そうすると市場長も認識してないものが、副知事も知るはずがない。このいいわけで逃げ切れるのか、世論の期待にこたえるためになんらかの不利益処分されちゃうのか。

2016/09/19

豊洲新市場報道について2

   藤井聡、高橋洋一、橋下元大阪市長が、地下ピットがあるのは当たり前の構造、むしろ排水設備もあって安全、全面盛り土のほうが不自然というような見解をテレビやツイッターでみた。そうだとすると空騒ぎになる終わる可能性がある。
表向きの話とと実態がちがったといっても、技術会議で資料として出して承認されたということになると、それは表向き擬似性交、実は本番という業界よりも実態との乖離ほさほど大きなものではないとの印象もえた。地下空洞は重大問題ではないように思った。
テレビでは卸売市場は公営企業会計とか、予定価格は公表されているとか知らない人がコメントしており、報道は偏っているとの心証がある。

2016/09/17

豊洲新市場報道について

  表向き敷地全体に盛り土と広報されていたのに実は主要な建物の地下が空洞だったことからこの関連記事が連日一面トップ、ワイドショーも、汚染対策や建築の専門家を呼んで詳しく報道している。技術的な問題なので難解であるにもかかわらず少なくとも中村橋之助の不倫事件より世間の関心は高いといえる。
 最近の報道は、都庁の体質の批判に及んでいる。日経9/16は「都庁の統治不備露呈」との見出しで、「意思決定が曖昧なままに事業が進んでいた」とする。慎太郎元知事は13日の報道番組で「都庁の役人は腐敗していると思った」「東京都は伏魔殿だ」とさえ言ったという。平成14年にながら条例問題で三羽烏と呼ばれる都議から厳しく追及されたが、主として報道していたのは産経新聞だけだったように思う。都庁の問題はローカルニュースでも情報量は少なかったが、今回はワイドショーもやっているので世論への影響ははるかに大きく、ガバナンス改革が必要ということになりそうだ。

  築地に魚河岸があるのは知っていたが、青果市場もあるいうのを今回はじめて知った。都政新報を熟読したことはないので、今回テレビのインタビューで慎太郎元知事に反論していた比留間英人氏すら知らなかったというほど、都政にうといのでとやかく言える立場ではないが、16日発行(17日付)日刊ゲンダイhttp://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/190025「盛り土無視・全責任者リスト公開、都庁は伏魔殿、クロをシロとする奴ほど出世する」という見出しで近年の中央卸売市場幹部13人の実名と現職をピックアップしている。中でも比留間氏の「渡り」がすごいと言っている。平成23年7月総務局長で退職、同年10月に東京臨海ホールディングス社長、昨年8月から東京メトロの代表取締役副会長で報酬約1800万と推定されている。
  自分がネットで調べたところこの人は、教育庁での経歴が長く、平成24年に教育長に就任しているから、実力相応の出世なのだろう。
  天下りについては『週刊ダイヤモンド』2011年10月15号特集「おいしい公務員」(つまり比留間氏が退職した時期)、「国以上の伏魔殿東京都!天下り・わたり野放しの実態」という記事がありで定年退職後の生活に不安を抱く民間を尻目に悠々自適の生活が保障されていると批判されていたことなので驚くことはない。
  しかし、26年6月9日 地方公務員法等の一部を改正する法律で、詳しくは知らないが、元職員による働きかけの規制、働きかけ規制違反に関する監視、再就職状況の公表、例2 職員が他の職員又は元職員の再就職をあっせんすることの制限、職員が在職中に自らの職務と利害関係のある企業等に求職活動することの制限など措置する退職管理を行うようになっているので、改善されると思う。

2015/06/21

下書 三六協定締結拒否の争議行為性について(3)

承前

(二)国鉄の職場が荒れた原因は三六協定の現場締結にあった

 

 労動基準法は八時間労働制を原則とし、三六協定と割増賃金を条件として一日八時間をこえる労働を容認することにより、労使協定と、割増賃金という圧力を課すことにより長時間労働を抑制するものといえるが、労働組合もしくは労働者の過半数代表の三六協定を締結しなければ、時間外労働又は休日出勤の命令不可というのは、契約の相対効を基本とする市民法理に反するものであり契約自由にも反するものである。組合ないし過半数代表がうんといわなければ命令できないなどという、労働者への指揮権限を奪うような悪質な法制度は世界的に類例のないものであることはすでに述べたとおりである。

 8時間労働は、労働組合主義者の19世紀末期頃から戦略的スローガンであったが、パートタイム等の労働者はともかく、長期安定雇用を前提とする従業員については時間外労働が本来的に平常時においても期待されている職場がほとんどであり、8時間で完結する業種などほとんどなく、繁忙期はむろんのこと日常的にも官民を問わず締結が不可欠であることはいうまでもない。

 このように反市民法的で組織労働者に有利な強行法規がありながら、高度経済成長を遂げ世界第二の経済大国にまでなったのは、労働省が労使関係の介入に抑制的であったこと。少なくとも昭和時代は組合のない企業や中小企業では市民法理を基本とする労務管理が常識という健全な認識が基底にあったし、労働者も超勤を歓迎し、労働組合も時短よりも雇用の安定と賃上げを要求した。8時間労働制自体が絵空事であり、それを原則とし恒常的な残業を予定していないなどという労働基準法の立法思想自体、多くの健全な国民が疑わしく思っていたし、労働基準法36条は軽視されるのが一般的傾向だったためである。

 1980年代まで日本人は年間300時間サービス残業が常態だった。[i]また90年代まで定額の超勤手当で打切るような運用はごくあたりまえのことであった。

政府が労働基準法違反の摘発を積極的な行うようになり、市民法理より労働基準法遵守を優先する考え方を企業がとるようになったのは21世紀に入ってから比較的近年のことである(森内閣の坂口厚労相時代からである)。[ii]独仏のような時短先進国でも政策転換がなされているにもかかわらず、ジェンダー理論に基づく時短政策が推進されているのは異常というほかない。近年はやりの朝型出勤もそうした背景によるものと思われる。

 

 三六協定締結という強行法規が反市民法的と私が断言するのは、加えて、使用者の業務指揮権を無効にする事実上の争議行為として利用されたこともある。

むろん民間企業でも時間外労働拒否闘争はなされるが、三六協定締結拒否をスケジュール闘争に組込むことにより職場での組織強化に巧みに利用したのが官公労であったといえる。全逓や国労は戦後早い時期から三六協定締結拒否による時間外労働拒否闘争を行っていた。

  郵政省人事局『新しい管理者』昭和415月第六章によると「特に全逓の場合は春、夏、秋、冬、スケジュール闘争を行い、三六協定もこれを戦術に利用し、一年の相当部分の期間を超勤拒否している状態である。これは日本だけに見られる現象であり、全逓がいまだに闘争至上主義から脱脚しきれないでいる」[iii]と組合運動のありかたを批判しているのである

 スケジュール闘争については、昭和40年のドライヤー報告でも批判されており、それを受けてのことであろうが、一年の相当部分を超勤拒否というのも世界的にみても異常なことだろう。

 実は、国鉄の職場が荒れたのも元をたどれば三六協定が現場締結が原因であると国鉄OBの升田嘉夫氏が断言されていることである。[iv]

 1980年代国鉄における職場規律の乱れが国会でも追及されるようになり、国民・世論の厳しい批判を受けたことは周知のとおりである。

 鈴木善幸首相時代の昭和56年10月・11月に開かれた第95回国会の衆議院及び参議院の行財政改革における特別委員会においては、国鉄におけるヤミ慣行、ヤミ協定、ヤミ休暇、ポカ休等の問題がとり上げられ、職場規律の乱れが指摘された。また昭和57年3月頃から一部の新聞、月刊誌等において鉄労の内部告発をもとに、国鉄労使悪慣行の実態「ヤミ手当」「カラ超勤」「ブラ日勤」「突発休」「時間内洗身入浴」「時間内の食事の仕度」「助役の下位職代務」「現場協議における管理職のつるし上げ」等の職場規律の乱れについて厳しい批判が展開されたのである。報道は、国鉄の現場管理者の弱腰・軟弱とそれを制度的に保障する現場協議制を諸悪の根源とみなしていた。

 

 

 どうして、このようなことになったのか。人の問題か、組織の問題か、法律や制度の問題か。

 私は第一に労働法制の問題だと思う。

 

 三六協定は期間を定めて締結される、国労や動労はこれを逆手にとって、春闘や合理化闘争のときは三六協定を締結しないというやり方により、長時間勤務や休日出勤の負担を現場管理職(駅長・区長・助役)におしつける闘争手段をとった。組合の意向で下位職務を助役などが代務せざるをえなくする悪しき慣行の元はこれだと思う。

 三六協定の締結単位は労使間の合意があれば管理局単位でも駅・区などの現場単位でも有効だったので、国労は現場の組合組織を強くし「職場団交権」「現場協議制」を確立する手段として、例えば東京地本は昭和419月から管理局本局・駅・車掌区等の現場ごとに締結する方式をとったのである。

 国労の酒井企画部長が「この三六協定の現場締結は‥‥形式的に押印するにしても、これによって分会長の地位を現場長に認めさせることとなり、‥‥‥明らかに職場団交を確立する突破口を開いたのである」 (国労編『国鉄労働組合の現場交渉権』)と述べているように、国労は三六協定の現場締結による分会の地位上昇を梃子として昭和41年「現場における団体交渉権制度確立」を申入れた。

 当局は国鉄の現業機関は輸送業務を専一に行う場であり、現場長には業務の遂行と労務指揮の権限のみを与えており、労働問題処理に適していないとして反対の立場だったが、昭和42年12月19日の公労委仲裁委員会の勧告を受入れ現場協議機関を設けられることなった。  

 国鉄OBの升田嘉夫氏は現場協議制こそ「国鉄関係の労使を陰湿な内線状態に陥れ、職場規律を根底から掘り崩す要因になった」[v]と述べておられる。現場協議制は抵抗闘争、

非協力闘争という名の職制麻痺闘争の場を提供し、管理職の負担を増大させ業務遂行の障害となった。元をたどれば三六協定の現場締結により分会長の力が強まったことからはじまったことなのである。

 

 自民党国鉄基本問題調査会は昭和57年2月5日に「国鉄再建に関する小委員会」(いわゆる三塚委員会)を設置。早くも3月4日には「中間報告」がなされ、同日小坂徳三郎運輸大臣は、国鉄に対し、ヤミ手当、突発休、ヤミ休暇、現場協議の乱れ等の悪慣行について実態調査、総点検を指示、[vi]4月16日には三塚委員会が「管理経営及び職場規律についての提言」(第1次)提出された。提言では「現協協定をまずいったん破棄し白紙に戻したうえで、現場における業務遂行上必要な現場長と職員の意思疎通をはかる制度を新たに検討、制定すること。」[vii]とされたのである。

 これを受けて国鉄は昭和57 7 19 日従来から行われてきた現場協議に関する協約の改訂案を各労組に提示し、57 11 30 日までに交渉がまとらなければ現行協約を破棄すると通告した。

 鉄労らと国鉄は、国鉄の提案した改訂案どおり協約を改訂したが、国労と国鉄の交渉は決裂し、国労については、同年12 1 日以降現場協議に関する協約は失効し、それまで14 年間続いた現場協議の制度がなくなった。

次いで、国鉄と各組合との間では、議員兼職制度の廃止、無料乗車証制度の変更等これまでの労使間の慣行及び協定が大幅に変更された。

このころ以降、国労及び全動労を除く各組合は、争議行為を行わなくなった。

) 昭和57 3 月から60 9 月に至るまで、国鉄は、8 次にわたる職場総点検を実施し、この中で、事実上、就業時間中の組合活動の禁止、職場集会のための構内空き地の提供拒否、組合掲示板の管理の強化、組合事務所での組合旗の掲揚の禁止並びに組合事務所の明渡し要求及び実力撤去等が行われ、これに抗議した国労の組合員に対し、昇給延伸等の処分がなされた。

 昭和60 7 月以降及び61 4 月以降、国労は、国鉄の分割・民営化反対の

キャンペーンとして、ワッペン着用闘争を行った。これに対して、国鉄は同闘争の参加者について、60 9 11 日、約5 9,200 名に対し、さらに、61 5 30 日、約2 9,000 名に対し、戒告、訓告及び厳重注意等の処分を行った。

 このように現場協議制の見直し以来、国鉄の労使改革は着実に進んだとみてよい。

 しかし問題の本質を通俗的、マスコミ等がいうように現場協議制が元凶とか、「国鉄労働者悪玉論」のような人の問題とするのは皮相な見方だといわなければならない。

遵法闘争とされる三六協定の現場締結拒否による助役等への下位職代務の押しつけを梃子として職制の業務指揮権を麻痺させ組合の現場の組織が強くなりすぎたことにより、職場団交権が主張され、その組合運動の成果が現場協議制であったわけで、元凶は三六協定にあったとみるべきなのである。

 労働基準法は官公労働者の争議行為禁止を予定しておらず立法化されているが、実質的に凄まじい毒薬が仕込まれていたとみてよいのである。世紀の悪法だというのはそのためである。

 

 

 

三 三六協定締結拒否等に関する学説

 

 

 三六協定締結拒否の法的評価は大雑把にいって3つである。

 

1 信義則に反する違法行為である

 

2 争議行為である

 

3 労働者側の正当な権利行使である

 

 本来ならば法的正義は市民法的判断である1であるとするのがまっとうであるはずある。既に述べたようにコモンローでは被用者の黙示的誠実労働義務として、使用者の経営目的に協力的でなければならないから雇用契約違反とされるのであるが、イギリスに限らず、誠実労働義務とか、信義則は市民法理として当然のことなのである。

 ところが我が国は憲法で労働三権を保障し、著しい反市民法的労働法制のある国であるるために、市民法理を歪める考え方が浸透したためまっとうな判断ができない状態にあるといってよい。

 初期の労働委員会の裁定とである三井造船事件岡山地労委の裁定(昭26.4.27命令) 『労働法律旬報』77(1951がでは、会社は申立人のなした時間外労働協定の拒否ないし保留行為に対し造船業と残業の特殊関係、特に造船工程中、残業が計画中に織込まれている点、永年の慣行であった点、従来累次の協定締結の際何らの紛議を生じなかった点等を挙げ右行為はこれ等の現実を無視し、信義則に反するものとして不当なる争議行為と主張したが、このまっとうな主張は認められず、本件は違法不当な争議手段ではないとした。

 したがって学説は、基本的に争議行為かとするか、正当なに権利行使とするかで見解が分かれているだけである。

 

 

(一) 争議行為であると言う説

 

1. 吾妻光俊

 

 争議を有利に解決する手段としておこなわれる順法闘争は「ノーマルな業務」を阻害しているかぎり争議行為となる。法律の評価としては実質的な争議行為として価値評価する観点から、時間外労働拒否は正真正銘の争議行為とする。

「遵法闘争の法理」『季刊労働法』151955

 

 三六協定拒否については「協定拒否を行った労働組合または争議団の主たる意図が、その拒否を他の争議目的のためにする争議手段とするにあった場合には、労調法、公労法にいう「労働争議」の定義ないしその関連においてはこれを「争議行為」とみるべきであり、したがって協定拒否に対して争議目的になっている係争問題につき当事者は労委・公労委に調整を申請し、また労委・公労委は法律の規定に従い調整に乗り出すことができると解される(‥‥)。協定拒否の主たる意図が、これを他の争議目的のためにする手段とするにあった場合には、労調法の争議行為禁止との関連においても、協定拒否をこれら法条にいう争議行為と解すべきである(公益事業での争議手段としての協定拒否には労調法三七条の予告義務が課せられ、労調法三六条との関連においても同条にいう争議行為と解すべきである)。」とする、

 労調法三六条を絡めた議論をしているが、安全保持施設の正常な維持運行につき時間外労働が不可欠であるのに協定を拒否することは、安全保持施設の正常な維持な維持運行を停廃、妨げるものとして、同条が禁止する争議行為に当たるという見解であり、これは労働組合側も是認するだろう。のである。

 さらに「公労法、公務員法等の争議行為禁止との関連において、協定拒否がこれらの規定にいう「業務の正常な運営を阻害する行為」、「争議行為」または「政府(ないし地方公共団体の機関)の活動能率を低下させる行為」に該当するかどうかは、協定拒否がもっぱら他の争議行為目的のためにする争議行為のためにする争議手段として用いられた場合にかぎり、右規定にいう争議行為と解し、当事者の意図がかような点にあったと認められるかどうかは、拒否を右規定にいう争議行為と主張する側において立証する責を負うと解すべきだろう。副次的にも協定拒否が法律上非正常な時間外(休日)労働の状態化をあらためようとする意図に発するものであるかぎり、争議行為の禁止規定に触れると解することは時間外労働の常態化を法律が保障する結果になるからである。」と述べているが、時間外労働が副次的な闘争課題としされることよくあることであり、この点プロレーバー学説に接近しているともいえる。

『註解労働基準法』青林書院新社 1960年

 

2.石井照久

 

 「労使関係においては慣行的事実が尊重さるべく、期待された業務の通常の運営が阻害される限り」順法闘争は争議行為となる。

『労働法』1954

 

3.三橋正

 「通常順法斗争と呼ばれる一連の斗争手段は、組合も争議戦術と呼び、社会通念的に又社会事実的に争議行為と考えられている通りに「業務の正常な運営を阻害し」「争議目的の貫徹のためになされ」る限り、労調法七条、従って公労法一七条の云う争議行為であると考えられる。」

『不当労働行為の諸問題』勁草書房1955年256

 

4.大野雄一郎

 

三六協定締結拒否でなく、たんに超勤拒否戦術について言及し、一斉休暇戦術、勤務時間内職場大会、いわゆる定時出勤戦術と同じく、時限ストの類型に属する。公務員・公企体の職員の場合争議行為に合法の衣を装わせるためにストライキと呼ばない工夫をした名称をつけたにつぎないとする。

『争議行為法総論』日刊労働通信社1967年

 

5.林迪広

 

 「怠業・順法闘争」『労働争議論 浅井淸信教授還暦記念』法律文化社(京都)1965年は、総論的に順法闘争=争議行為説 ただし三六協定締結拒否は具体的な場合に争議行為とみられることはありうるが、争議行為と法的効果において同一視できない順法闘争という云いかたをする。

順法闘争の法的評価につき「順法闘争は、社会的事実としては明らかに争議行為である‥‥問題は、法的意味における争議行為に該当するか否かである。」と述べるが結論はそのほとんどが、法的にも争議行為であるとする。

 

 労調法6・7条の概念、労働関係の当事者間での主張の不一致、主張の貫徹を目的として行う行為、業務の正常な運営を阻害する性質の三点から検討しているが、結論は労調法7条にいう争議行為に該当する。 「順法そのものを目的とする順法闘争はともかく、他の争議目的達成のための手段たる順法闘争においては、それを労使間に生じている紛争を全体的に直視して位置づけるならば、結局は「労働関係における意見の不一致」を原因として順法闘争が行われていることは明らかである。したがって‥‥法的意味での争議行為たる一定要件を満たす」 ‥‥ 業務の正常な運営の阻害については、「正常」の意味は「平常」とは区別して法規に従った業務の運営と解し、順法闘争によって法規どおりの作業を行ったとしてもなんら、「業務の正常な運営」阻害したとはいえないとする主張と、「正常」とは法規に従った業務とは解さず、法規に違反していても事実上行われている状態をさすものと解し、順法闘争も争議行為であるとする主張が対立しているが、結論的にいえば「労調法第七条にいう『正常』な業務の運営とは使用者の労働者使用に関する指揮・支配権能が他のものに阻害を受けずに事実上円滑に行為されている状態をさすのであって、この場合においては、使用者の指揮・支配の内容が個別的契約関係の権利義務にてらして適法なりやいなやを価値的に判断することを前提とせず、ただ雇用関係を有する労働者に対する使用者の事実としての指揮権限が、労働組合の事実行為による阻害によらず貫徹されている状態をいう‥‥」  

 ここから私のコメントだが、著者は明らかに労働組合寄りのプロレーバー学者だが、要するに順法闘争は社会的事実としても争議行為であり、法的にも労調法の争議行為にあたるとする見解それ自体はほぼ妥当といえる。『正常』な業務の運営とは使用者の労働者使用に関する指揮・支配権能が他のものに阻害を受けずに事実上円滑に行為されている状態をさすとするならば、労働基準法は三六協定が締結できないときに労働者使用に関する指揮・支配権能を阻害する強行法規のようであり、まさに争議行為促進を内包していた悪法といえるだろう。

 

次に「順法闘争について」『法政研究』25巻2-4号は、順法闘争は労調法7条の争議行為にあたると云いながら、公労法17条の争議行為禁止は、国民生活に対する著しい侵害を及ぼす業務の正常な運営を阻止の行為に限定されるべきで、順法闘争は基本的に含まれないとする。この見解は昭和52年の名古屋中郵判決で明確に否定されていることから通用しない。要するに争議行為であっても争議行為制限禁止規定に反しないというものであるから、公労法の解釈としては通用しない。

 

  

 

6.中村博

 

 労働省大臣官房秘書課長、中労委次長、公労委次長、人事院公平局長を歴任。

 

(三六協定が成立している場合の超勤拒否戦術)

 この場合の残業命令については残業義務が発生を認めるという説と、その場合でも個別の合意が必要とする説があるが、仮に後者をとるとしても、組合の意思に基づいて、個々の労働者の合意による残業義務の発生を抑制することになるので、正常な業務運営を阻害するので争議行為となるとする。

 

(三六協定締結拒否)

32法制局一発第22号の法制意見「‥‥『業務の正常な運営』とは、業務の運営であって、経験則に照らし、経常・普通の状態にあると客観的に認められるものというと解されるが、特定の事業場において時間外又は休日の労働の行なわれることが常態であり、また、そういうことが行なわれることによってのみ当該事業場における業務の運営が経常・普通の状態にあると客観的に判断しうる事情の存するときは、労働組合が当該協定の有効期間の満了により、時間外又は休日の労働行なわれなくなった場合は、当該事業場における『業務の正常な運営』が阻害されたことになるといいうるところであろうと考えられる。してみれば、このような事情のもとに労働組合が当該協定の更新を拒否する行為は、争議行為にあたるといいうる‥‥‥労働組合が労働基準法第三六条を引用して協定の更新を拒否しているにかかわらず、労働組合以外の者が当該協定の更新の拒否をもって争議行為にあたると主張するためには、労働組合による等が居卿手居の更新の拒否が、もっぱら時間外労働又は休日労働以外の事項についての労働関係に関してその保持する主張を貫徹するのに有利であるかどうかの判断に基き、ただその目的を達成するがためにのみむなされたものであることを立証しなければならない‥‥」を引用し著者もこれに与するとする。

 

『公務員の争議行為と処分』中央経済社1971108頁以下

 

7.恒藤武二 

 

 労働法もやっているがフランス政治思想史の著書も多い人。我が国では一般的ではないが、争議行為とは同盟罷業、怠業、業務管理の三種類に大別して概念を整理すべきと云い、「怠業とは、団結した労働者が、使用者に対抗するため、その労働契約の履行を部分的に拒否すること=労働契約の不完全履行」「怠業とは能率低下(スローダウン)による典型的な怠業のみでなく、定時出勤、順法闘争、上部遮断スト、納金スト、などのようなやや変則的な争議行為を包括し、さらに残業拒否、時限ストのような労働契約に基づくその日その日の労働義務の一部分を履行しない形でなされる争議行為を包括し」と述べ、「怠業」は争議行為の範疇なので残業拒否=争議行為説である。

「サボタージュ」日本労働法学会編『新労働法講座4』労働争議 有斐閣1967年所収

 

(二)  労働者側の正当な権利行使とする説

 

1. 沼田稲次郎

三六協定が有効要件を欠くか有効期限が切れた場合「組合としても、個々の労働者としてもいつでも時間外労働を拒否できる。権利濫用などというトンデモナイ議論の生じる余地はない。」また時間外労働拒否だけの争議行為もできるとしている。労基法36条は32条の例外であるとして「争議状態においては、労使は対立状態に在るわけであって、かゝる場合においてまで、使用者のための恩典的例外を労働者に受忍せよというのは労働良識上認めがたいことである」と反市民法的見解を述べ「労働者側が第32条の原則に遵うという態度(遵法斗争)を以て36条の例外を拒否することは当然である」とする。

「遵法斗争と権利濫用-三井造船事件に関連して-」『労働法律旬報』77(1951)

したがって、争議行為という認識を示しているが、順法闘争は権利の行使であるから、争議権の濫用にあたらず、争議禁止規定にも該当しないとしている点で、順法闘争をあおる悪質な議論を展開しているといえるのである。(続く)

 



[i]森岡孝二『企業中心の社会構造』青木書店1995

[ii] 90年代日経連が全ホワイトカラー裁量労働制を提唱したことに危機感をもった労働組合や共産党が時短政策に絡めるかたちで不払い残業是正キャンペーンを行い、それを背景として中基審が2000年11月に「労働時間短縮のための対策に対する建議」を行い、厚生労働省が「労働時間の短縮促進に関する臨時措置法」の改正を労政審に諮問し、森内閣の坂口力厚労相のもとで2001年2月に同法改正を閣議決定し、それまでは労使間の問題として政府が積極介入しなかったあり方をやめ、サービス残業は労働基準法違反で、悪質な企業は司法処分を辞さないという労働基準局長通達(基発339号)を出し、「サービス残業規制政策」が開始した。初期は電機大手が集中的に狙われ、まずNECが基準監督署の指導で主任以下の調査を行い過去2年分の残業代を支払わされた。本社田町の100人以上について平均150時間約4500万とされている。日立製作所でも未払い残業代が支払われ、三菱電機で是正勧告、係長級に導入していた残業手当の定額支給も見直された。さらにシャープで是正勧告、沖電機でも是正指導がなされた(清山玲「サービス残業の実態と規制政策の転換」『茨城大学人文学部紀要. 社会科学論集』39 2003 ネット公開論文参照)。

 

[iii] 新しい管理者(昭和415月・郵政省人事局編)-2- 『労働法律旬報』646号 1967

[iv]升田嘉夫『戦後史のなかの国鉄労使-ストライキのあった時代』明石書店2011年

 

[v] 升田嘉夫 前掲書131頁

[vi]日本労働年鑑 第57集 1987年版http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/rn/57/rn1987-045.html

[vii] 日本労働年鑑 第53集 1983年版http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/rn/53/rn1983-295.html

 

 

 

2015/06/07

下書 三六協定締結拒否の争議行為性について(2)

二、順法闘争とは

 

 順法闘争を一言でいえば、ストライキと同じ効果を狙いつつ、ストライキではないと偽装した闘争戦術を指す。

 安全闘争(国鉄で行なわれた運転取扱基準規定関係の順法闘争などを含む)、定時出勤、定時退庁、一斉休暇取得、時間外労働拒否をひと括りにして、順法闘争と称される。国家法、自主法、規則等を厳格に順守することによりノーマルな業務運営を阻害する逆説的な闘争戦術といえる。

 

 特に評判が悪かったのが、国労・動労の順法闘争である、運転安全規範などの諸規則を厳格に遵守するとかえって列車の運行が遅延することを逆手に取り、「順法」を口実としてダイヤを著しく混乱させ闘争の手段としていた>

 不条理に耐えた乗客の怒りが爆発、昭和48312日の上尾駅暴動事件(当時の映像 https://www.youtube.com/watch?v=aPC_rRCXmDk)と、同年424日の首都圏国電暴動は当時自分は中学生だったが、報道などでよく覚えている。

 当時は通勤時間の混雑がひどいうえ、通常なら37分の上野-上尾間を順法闘争に入ると3時間かかるノロノロ運転を故意に行い、通勤客に苦痛を与えても、それはスト権を認めない国会が悪いのだと責任を転嫁し、乗客も労働者階級なのだから連帯のため受忍すべきという厚かましさだったから、自然発生的な暴動に発展したのは当然と思った。

 この年の4月25日石田和外率いる最高裁が可罰的違法性論の労働事件の適用に消極的な基準を示した、久留米駅事件など画期的な労働三判決を下しており、上尾事件は時代の転換点となったものと評価できるのである。

 

 遵法闘争が、労働組合の要求を使用者に認めさせるために企業運営の能率を低下させ、実質的に怠業やストライキと同じ効果がある以上、社会的事実としての争議行為であるであることは大多数が同意するだろう。外国でも同じことだか、時間外労働拒否は、本格的なストライキに突入する前段闘争としてなされることが多いのである。

 周知のとおり労働組合法は昭和213月に施行され、当初公務員は、警察・消防・監獄職員に団結禁止の規定があったが、私企業と同様の権利が付与されていた経緯があるが、マッカーサー元帥書簡に基づく昭和22731日のいわゆる政令101号によい一切の公務員の争議権が禁止された。

「遵法闘争」とよばれる闘争形態は国鉄労組や全逓により早い時期から行なわれており、昭和213月省電の安全運転闘争、全逓の安全通信闘争、一斉賜暇戦術、定時退庁がなされている。争議行為が有している時期にも行なわれていた闘争形態なのである。

三六協定闘争のはしりとされる残業拒否戦術が昭和23131日に国鉄労組により指令されている。この戦術は昭和22年勅令591号のスト中給与不払いを免れるためのものであったのであり[i]、したがって順法闘争の本質は、公務員の争議行為禁止からのがれるための戦術と位置付けられたものとはいえない。

 

(一)イギリスなら順法闘争は違法

 

ちなみに、イギリス法[ii]、では遵法闘争はコモンロー上の被用者の黙示的誠実労働義務(協力義務)に反し違法であり、雇用契約違反となる。典型的な例Secretary of State for Employment v ASLEF (No 2) [1972] 2 All ER 949 CAは組合が就業規則を遵守し時間外労働を行わないという戦術をとったが、控訴院は、組合の主張を退け、全ての雇用契約には、被用者は誠実に使用者に仕え、かつその使用者の営業利益を追求すべきであるいう黙示的義務がある判示した。また、Sim -v- Rotherham Metropolitan Borough Council [1987] Ch 216 QB)は、教員が病気で欠勤している同僚の仕事を争議行為の一環としてカバーしなかったことが雇用契約違反とされた[iii]

そもそもイギリスでは制定法で「公認ストライキ」の不法行為免責を認めているが、積極的な意味での争議権などないので、ストライキ参加は一方的契約履行拒絶として即解雇事由になるのであって、憲法で労働三権が保障され、近代市民法は労働法との法益権衡により修正されるという左翼思想の跋扈する我が国とはかなり事情が異なるが、市民法感覚でいえば、順法闘争や超勤拒否が違法というのは当然のことのように思える。コモンローの黙示的義務は、我が国の民法1条2項の信義誠実の原則を判例法により具体化したものと言いかえることができるたろうが、近代市民法を基準とした思考方法でいえばイギリスがまともで我が国が異常であると断言したい。

 

時間外労働協定締結拒否が違法か否かが争われた初期の労働委員会の裁定として三井造船事件岡山地労委の裁定(昭26.4.27命令) 『労働法律旬報』77(1951がある。昭和24517日全造船玉野分会が団交を重ねていたが、妥結に至らず、921日から時間外労働協定の締結保留、1119日から労働安全遵法斗争を開始、29日から部分ストを開始、1219日一部組合員が業務命令に協力したためストは崩壊し、21日に斗争態勢を解くにいたったという争議行為に対し会社側は組合指導者と積極分子を解雇した[iv]

時間外労働協定の締結保留について会社側の主張は従来慣行となっていたことを無視し信義則に反している点において不当であり労働基準法36条の権利の濫用であるというもの。組合側は労基法が慣行に優位するというのは法理的に明らかであり、突如保留を申し入れたからといって、抜打争議が禁ぜられているわけではないというものだった。

岡山地労委昭26.4.27命令は「時間外労働協定の保留ないし拒否について見るに一般の労働者が、所定の平常労働時間を超えて、いわゆる時間外労働をするとしないとは、労働者自らの意思で決せられるものであって、何ら外的の強制を受くべきものではない。会社は申立人のなした拒否ないし保留行為に対し造船業と残業の特殊関係、特に造船工程中、残業が計画中に織込まれている点、永年の慣行であった点、従来累次の協定締結の際何らの紛議を生じなかった点等を挙げ右行為はこれ等の現実を無視し、信義則に反するものとして不当なる争議行為と主張しているが、右行為は当初においては格別争議行為の手段としての意図より出発せざるををえざるものと認められるからその間、客観的に見れば信義則を逸脱せし嫌いがないわけではなかった。しかしながら右行為のなされたのは争議中のことであり、諸般の事情より勘案して明らかに争議手段の一環として採用されたものとみることができるので、たとえ申立人らが争議行為として会社に通告する場合早期にこれを行わず、ために会社が対策等樹立の上に支障を来するところ、被申立人主張するが如く当該会社が特に労調法上公益事業として指定されたことが認められない限りこれを違法不当なる争議手段とすることは当たらない。」 

 要するに信義則に反する嫌いがないわれでないが「明らかに争議手段として採用されたもの」で「違法不当なる争議手段とするには当たらない」というものである。

 イギリスのように信義則に反し違法とはされず、労働法により争議行為の権利を認めているから是認されるというものである。

 このように労働委員会の裁定では、後述する都水道局事件ように、時間外労働協定締結拒否を争議行為とするものが少なくない。問題は三井造船事件は私企業だったが、公労法・地公労法適用企業で適法といえるか否かである。

 


[i] 香川孝三「文献研究・日本の労働法学(14)順法闘争」『季刊労働法』951975

[ii] 雇用契約はあくまでも一対一のものであって、我が国の不当労働行為制度のような集団的労働関係はを保護する制度もなく、積極的な意味で争議権を保障してない(イギリスでぱストライキ参加は契約履行の一方的拒絶とされるので解雇事由となるストが収拾され解雇されない場合でも法的には再雇用である)

[iii] 小宮文人『現代イギリス雇用法』信山社出版200699p以下。

[iv]沼田稲次郎「遵法斗争と権利濫用-三井造船事件に関連して-」『労働法律旬報』77(1951)

2015/05/10

下書 三六協定締結拒否の争議行為性について(1)

 一 はじめに

(本論に入る前に前書きがやたらと長いが技術的議論だけでなく大所高所から捉えることを重視しているためである)

 

私は近代私法、古典的自由主義(個人主義的自由主義)、自由企業体制を侵害する、階級立法、労働法制の多くに反対であり、1906年ロックナー対ニューヨーク判決(労働時間規制立法違憲)、1923年アドキンス対小児病院判決(最低賃金立法違憲)〔1937年に明示的に判例変更したが、今日では再評価されている〕は正しいと考えるから、強行法規である労働基準法は当然、悪法と評価し、オーバーホールすべきと考える(むろん三者構成原則の労働政策決定の枠組み自体、準コーポラティズム的体制というべきものであり、それを打破して、英米型に移行しない限り困難であることはいうまでもないが)。

なかでも三六協定に類する労働法制は世界的にも類例がなく、著しい契約自由の侵害であり、合理的理由のない取引制限と考えるから、初めに結論を述べる。

三六協定締結拒否は法的にも争議行為であるというのが結論である。少なくとも社会的・事実的に争議行為であることは大多数が是認していることであるから、それが争議行為を禁止している公営企業でなされることは好ましくない。それを許容するあり方は是正されなければならないが、本稿はその論理構築を課題として取り組むものである。

 

 

 

 

(一)民法の相対効、契約の自由に反する労基法36

 

 

 市民法的論理、契約自由、意思自治の観点から労働基準法の三六協定について根本的に疑問に思うのは「八時間労働制」という時代遅れで非合理なドグマに固執し、たとえ個別労働者が受け入れるとしても過半数組合等が三六協定を締結されない限り、使用者の労働者使用に関する指揮・支配権が及ばないと解され、時間外労働に関する雇用契約について個別労働者の自由意思が基本的に否認されていること、

また事業所協定は、協定締結集団である過半数組合や代表等に関係ない非組合員や過半数代表を選出していない従業員にも及びうると一般に解されていることから、自己自身の労働力処分について自ら合意したわけでもない第三者による協定により拘束されるあり方は、近代市民法の原則である「契約の相対効」に反し、契約の自由にも反するという点である。

 我が国の労働法は個人の権利よりも第一次大戦後に広がったドイツで有力になった団体優位の思想に基づいている点で、本質的に近代私法と矛盾する性質のものといえるが、フランスでは、1886年労働組合を合法化したが労働協約は「契約の相対効」(民法典1165条)により法的強行性が否定されていた、それが本来の近代市民法のあり方である。

要するに、団体協約は近代私法の重要な原則に反するのである。

1919年に市民法論理を覆して労働協約は法認されたが、戦争協力の見返りとして労働組合に譲歩せざるをえなかっただけだ。英国コモンローは今日でも労働協約は営業(取引)制限の法理に反し違法であり、それ自体法的拘束力はないとされている。それが近代自由企業体制の本来のあり方だろう。

 

 

 

二)世界的に類例がない強行法規

 

 我が国の三六協定のような強行法規は世界的に類例がない。特殊であり、グローバルスタンダードに明らかに反する。TPPの加盟国、加盟交渉国にはニュージーランドの国民党、オーストラリアの自由党といった新自由主義政策を推進する政府があることを考慮すれば、TPP加盟交渉を契機に労働基準法の罰則など過剰な労働者保護的法制は世界の常識とずれたものとして見直す必要があるのではないだろうか。

 世界の常識に反しているということについて、ここでは英米法圏の法制と対比してみていきたい。

 

合衆国の1938年公正労働基準法(FLSA)は、使用者に対し同法が適用される被用者に対し週40時間を超える労働に対して割増賃金支払義務を課すが、過半数代表との協定の必要はなく、たんに割増賃金支払義務があるだけだ。

 そもそもFLSAは、大恐慌により失業問題が深刻であった時代に立法されたため、その立法趣旨は追加的賃金を避けるメカニズムにより「雇用を拡大すること」や「ワークシェアリング」することであり、長時間労働の抑制ではないのである。[i]

また1935年全国労使関係法では、従業員の過半数の支持を受けない限り組合は承認されず交渉権はなく、会社が関与する従業員代表制度を認めていないので、交渉代表のない大多数の職場は、団体交渉のない個別契約なのである。団体との協定を強行法規とする考えはとってないので、三六協定のような制度はない。もし強行法規とすると憲法違反の疑いが強くもたれたと考える。[ii]

合衆国の2014年の労働組合組織率は、11.1%だが、民間企業では6.6%にすぎない。http://www.bls.gov/news.release/union2.tn.htm従って民間企業の大多数の職場では団体協約でカバーされない個別契約であり、我々が良く知るエクセレントカンパニーの多くは、組合不在企業で、団体との協定などないから、外資系の企業は三六協定について不可解に思っているのではないだろうか。

一方、EUについて1993年制定(2000年に改正)EU労働時間指令http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2005_5/eu_01.htmという労働時間規制が知られている。例外規定があり、イギリスとマルタで適用されている。

イギリスは、EUに加盟しながら、本来、加盟国の義務であるユーロの導入や労働時間指令についてオプトアウト(適用除外)の権利を獲得し、 欧州大陸諸国と一線を画してきた。EU労働時間指令について新自由主義政策をとるイギリス保守党メジャー政権が激しく抵抗したため、結果として例外規定として1週間の労働時間について、時間外労働を含め、労働時間平均週48時間以内の上限(算定期間は4カ月)の免除を受けるかどうかについて個々の労働者が選択するオプト・アウト制度を勝ち取ったのだ。

労働党ブレア政権は前政権が受容れなかった同指令を受容れ、週平均48時間を超えてはならないとする「1998年労働時間規則」を設けたが、同時に労働者により署名された書面による個別的オプト・アウトの合意により、法定労働時間規則の適用を免除する制度も設けたのである。

2004年の『海外労働情報』によると使用者側のあるアンケート調査では、759社中65%の企業が、自社の従業員にオプト・アウトに同意するよう求めているほか、CBI(イギリス産業連盟)の調査では、英国の労働者の33%が同意書にサインしており、EU労働時間指令の空洞化は明らかである。

EU15カ国において週48時間以上働いているフルタイム雇用者は5%以下であるが、イギリスは20%を超えている。http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2005_5/eu_01.htmというように他国とは勤勉さ、労働時間に大きな違いが出ている。

イギリスは1992年から2008年のリーマンショックまで16年間連続で景気拡大し経済は好調だった。日本が時短政策で失われた十年とも二十年ともいわれる経済低迷が続いたこととは対照的である。外国からの投資を呼び込んでいるのもオプト・アウト制度のおかげ。イギリスは近年でも5年連続プラス成長で経済は好調であり、リーマンショック以前の成長率に戻ったことが、201557日総選挙で保守党の勝因と報道されているが、欧州大陸諸国とは一線を画す労働政策が効果を現しているとみるべきである。

重要なことは、我が国のように労働時間規制を適用除外とするために、過半数組合との協議など必要なく、個別労働者との同意でオプト・アウトが可能だということである。なぜならば、イギリスではあくまで法的に雇用契約は一対一のものであって、労働協約は法外的に処理されている、1999年労働党がつくった労働組合承認(union registration)制度を別として、集団的労働関係を格別保護する法制が存在しないというメリットによるものといえるだろう。

また、私は新自由主義の先進立法としてオセアニア諸国に関心をもつものである。オセアニアは強制調停仲裁制度により労働条件規制をするユニークな制度があったが、時代遅れのものとして批判され改革がなされたのである。

ニュージーランド雇用契約法Employment Contracts Act は国民党政権により1991年より約10年施行され、(労働党への政権交代により2000年雇用関係法Employment Relations Act にとって代えられたが)仲裁制度を完全に廃棄して契約自由を理念とした新自由主義に基づく先進的な立法である。

同法では、個別的雇用契約については「集団的雇用契約があるときは、使用者と被用者は、集団的雇用契約の定める雇用条件に反しない範囲で個別的に雇用条件を交渉することができる」(19-2)(一)71頁とあり、集団的取引が優先されることとしている。しかしながら労働協約が個別契約を排除するのに対し、個別雇用契約を原則とする同法の先進的といえる。

同法は、団体交渉に関する規定も、それを支援する規定も、不当労働行為などの特別な救済も用意しない。集団的取引による労働契約をとるか否かは当事者の任意であるし、使用者に「団交応諾義務」を課すものは何もない。労働市場を規制する主要な要素であった「労働組合」、「団体交渉」および「労働協約」という集団的労働法の概念を排除し、契約自由を理念とする雇用契約を労使関係の基礎に据えた。「労働組合」は雇用契約のための交渉代理人にすぎず、「団体交渉」は交渉代理人と使用者の個別的交渉に改変されたのである。ニュージーランドでは時間外労働の割増賃金を定めた立法はなかったため、従前はアウォードや労働協約で定めていたが、1991年雇用契約法は契約自由なので、割増賃金やペナル賃率は廃止されるようになった[iii]

オーストラリアではニュージーランドの改革に刺激され、まずビクトリア州が1992年被用者関係法制定により仲裁制度廃止の口火を切り、1996年にハワード自由党・国民党の保守連合政権による職場関係法Workplace Relations Act を制定した。これにより90年以上続いた調停仲裁制度は原則的に廃棄され、労働条件の決定は企業別に行なわれる直接交渉と、使用者と労働者個人の個別雇用契約に委ねられることとなった。[iv]2005年職場関係改正法(Workplace Relations s Amendment Work Choices仕事選択法) Act)は、労働改革の総仕上げであるがオーストラリア労使協定Australian Workplace Agreements: AWAs)といわれるものは週38時間労働、公休日、4週間の有給休暇、12ヶ月の無給育児休暇、人員整理時の解雇手当とか一定の基準を定めている(その点で契約自由とはいえない)が、それらの基準をクリアすればそれ以外の労働条件は労働組合に干渉されることなく労働者個人が労働条件を契約交渉で決める制度である。超勤手当の割増し率、シフト勤務手当、休日勤務手当、休憩時間が個別交渉の対象となる。したがって、割増し賃金でない安い賃金でも長時間働くのは個人の契約の自由という考え方である。

仕事選択法という法令名からもわかるように、仕事の仕方について労働者個人と企業との直接交渉。それを通じた当事者の選択の自由に委ねられるべきであり、労働組合などの第三者の介入を許さないという点で個人主義的自由主義の復権と位置づけられる先進立法といえるが、まさに、我が国の三六協定のように過半数組合で時間外労働を規制する発想とは全く逆のベクトルの立法であるということがわかる。

同法は労働組合が猛反発し2007年の労働党政権によって廃止された。しかしオーストラリア経済好調の要因は、自由党を軸とする保守連合政権による労働改革の効果とみるべきである。

 

 

 


[i] FLSAの目的につき比較的詳しく述べた連邦最高裁判決は、「時間外労働そのものは禁止されないものの、追加的な賃金の支払を避けるために雇用を拡大することに向けて財務上の圧力が加えられ‥‥追加的な賃金支払を避けるという経済メカニズムが、提供可能な仕事を分配するのに有効な効果をもたらすことが期待される」と述べている OVERNIGHT MOTOR TRANSP. CO. v. MISSEL,316U.S.572(1942) http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.pl?court=us&vol=316&invol=572

ここでは、法定労働時間を超える時間外労働それ自体を禁止することは法の趣旨とは捉えられておらず、長時間労働による労働者の健康への負担にも言及はなく、立法目的はあくまでも大恐慌対策としての雇用拡大、失業対策のためであるから、今日のような平時に戻れば廃止されるのか筋であるともいえる。(労働政策研究・研修機構の労働政策研究報告書 No.36『諸外国のホワイトカラー労働者に係る労働時間法制に関する調査研究』第一章アメリカ27頁(平成 17 年)http://www.jil.go.jp/institute/reports/2005/036.html参照)

 

[ii]米国では我が国のような協定の締結を義務付けることは、憲法違反の疑義があるのである。

アメリカではニューディール期にいたるまでは、組合を承認するか否かは経営者の自由であったが、1935年全国労使関係法National Labor Relations Act(ワグナー法)制は、全国労働関係委員会の監督下で従業員の過半数の支持を得、交渉代表と認められた組合に排他的団体交渉権を承認した。しかし団体協約の締結を強要するものではない。また強制仲裁のような制度はない。団体協約の締結の強要はコモンロー取引制限の法理に抵触すると考えるが、締結を強要しない限りにおいて連邦政府は労使交渉に積極的に干渉するものではないし、契約の自由を積極的には侵害していないともいえる。かろうじて自由企業体制を侵害してないともいえるのである。

ワグナー法は違憲判断が下されると大方の人々の認識だったが、憲法革命直後の1937年全国労働関係委員会対ジョーンズ対ラフリン鉄鋼会社事件判決で「州際通商規制権に関して幅広い解釈を行い「州際通商」に密接で実質的な関係を持っている産業を規制することを認めて合憲判断が下され、さらに1941年合衆国対ダービー木材会社事件で1938年公正労働基準法も合憲判決が下された。

しかし、団体との協定の強行法規ならば違憲の疑いのあるものとしてすんなり合憲判断とされたかは疑問なのである。

 

 

[iii]林和彦「ニュージーランドにおける労働市場の規制緩和--一九九一年雇用契約法の研究(1) 」『日本法学』75(1) [2009.6]

林和彦「ニュージーランドにおける労働市場の規制緩和--一九九一年雇用契約法の研究(2・完) 」『日本法学』5(1) 75(2) [2009.9]

 

[iv] 長峰登記夫「規制緩和という名の規制強化-豪州「仕事選択法」の検討から」『大原社会問題研究雑誌』5842007

2015/04/12

下書き)地方公営企業の職員の労働関係に適用できる法律、判例法理について(4)

 

オ 目的外使用の法律関係

(ア)中央卸売市場事件

(イ)昭和郵便局(全逓昭和瑞穂支部)事件

 以上前回

 

 

(ウ)全国税東京足立分会事件

 

全国税東京足立分会事件最二小判 昭59.1.27労判425[i]は昭和411014日から15日、足立税務署の管理職が組合掲示板に貼りだされた「ストライキ宣言」等掲示紙を撤去しようとしたところ、体当たり、肘突き、足蹴り等の行為により撤去作業を再三妨害し、職場復帰命令に従わず職務を放棄した、全国税足立分会副委員長(徴収課勤務の大蔵事務官)の戒告処分を有効とした原判決を認容したものである。

判決は「ストライキ宣言」を掲示したことは、国家公務員法110条二項所定の違法な行為のそそのかし、またはあおり行為に当るとした。また「秋闘四大要求獲得」の四大要求の一として「アメリカのベトナム侵略にスト抗議しよう!」を掲げている点において、政治的目的を有する文書であるとし、国家公務員法一〇二条一項、人事院規則一四―七の五項五号、六項一二号の各規定に違反するものであると判示した。

国有財産である掲示板を組合が使用する法的関係については、上述の全逓昭和瑞穂支部事件最一小判昭57.10.7民集36巻10号2091頁判時1067号39頁を引用し同じ判断である。
 

上告棄却の最高裁判決は次のとおり

 

「‥‥ 庁舎管理者による庁舎等における広告物等の掲示の許可は、専ら庁舎等における広告物等の掲示等の方法によってする情報、意見等の伝達、表明等の一般的禁止を特定の場合について解除するものであって、右許可の結果許可を受けた者は右のような伝達、表明等の行為のために指定された場所を使用することができることとなるが、それは、禁止を解除され、当該行為をする自由を回復した結果にすぎず、右許可を受けた者が右行為のために当該場所を使用するなんらかの公法上又は私法上の権利を設定され又はこれを付与されるものではなく、また、右許可が国有財産法一八条三項にいう行政財産の目的外使用の許可にもあたらないと解すべきことは、当裁判所の判例(最高裁昭和五二年(オ)第五〇〇号同五七年一〇月七日第一小法廷判決・民集三六巻一〇号二〇九一頁)とするところであり、原審の適法に確定した事実関係の下では、結論においてこれと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。‥‥

国家公務員法九八条二項が憲法二八条に違反するものでなく、同法一〇二条一項、人事院規則一四―七が憲法二一条、三一条に違反するものでないことは、いずれも当裁判所の判例(最高裁昭和四三年(あ)第二七八〇号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻四号五四七頁、同昭和四四年(あ)第一五〇一号同四九年一一月六日大法廷判決・刑集二八巻九号三九三頁)とするところであり、本件各掲示紙は国家公務員法九八条二項前段所定の違法な行為をそそのかし、又はあおる内容のものであって、これを掲示する行為が同項後段に違反し、また、本件各掲示紙のうち一部のものは政治的目的を有する文書であってこれを掲示する行為が同法一〇二条一項、人事院規則一四―七第五項五号、六項一二号に違反するとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、採用することができない。‥‥」

 

本件は国家公務員法等の判断であるが「ストライキ宣言」の掲示が、違法な行為をそそのかし、又はあおる内容のものであるとしている。

この判決の論理が地方公営企業にも適用できるかについて検討すると、地方公営企業の争議行為を禁止する地公労法171項が合憲であることは北九州市交通局事件昭和63.12.8最高裁一小判 民集42-10-739頁、判時1314号で明らかにされたことであり、地方公営企業において「闘争宣言」等が掲示板等に張り出されるケースにおいても、別異に解釈する理由はないと考える。

ただし、政治的行為については国家公務員とは法制度が異なる。地方公営企業法三九条が、企業職員(政令で定める基準に従い地方公共団体の長が定める職にある者を除く。)については、地方公務員法第三十六条(政治行為の制限)の規定は適用しないとしていることから、この点は私企業と大差なく、局所内での政治的行為の禁止、制限について就業規則や労働協約で明示されていれば、政治目的の掲示物の撤去という庁舎管理権の発動が可能と考える。

 

(エ)鹿児島県立大島高校等6カ所の学校施設目的外使用不許可事件(鹿高教組主催ミュージカル公演不許可)事件 

 

鹿児島地判昭58.10.21訴務月報30巻4号685頁は鹿児島県高等学校教職員組合からのミュージカル公演を目的とする県立学校体育館6箇所の使用許可申請に対し校長が学校教育上支障があるとして不許可処分を適法とした判決であるが、控訴審、福岡高裁宮崎支部判昭60.3.29判タ574号も控訴棄却した。

ここでは控訴審判決を引用する。

 本件は現鹿児島県奄美市に所在する県立高校施設の校長による目的外使用不許可処分を、合憲、適法とし、控訴棄却としたものであるが、判例タイムズの解説によると学校施設の目的外使用の法律関係についてアメリカの表現権判例におけるパブリックフォーラム論を踏まえ、学校施設はセミ・パブリックフォーラムとする思想を受け容れた点でスマートな新判例であり、目的外使用の法律関係について丁寧に検討している。。

 事案は教職員組合が主任制反対闘争に関連してミュージカル公演(カチューシャ劇団の「ああ野麦峠」)を企画し県立高校体育館の使用申請をしたところ、校長が学校教育に支障があるとの理由で使用不許可処分とした。教職員組合は憲法21条、地方自治法2443項等に違反するとして損害賠償を請求したものであるが、判決は学校施設は本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置されたもので、一般公衆の集合、表現活動の利用のために設置された公会堂、公民館等の公の施設と異なるが、本来使用目的のほかに、社会教育法、スポーツ振興法の趣旨、慣行上、副次的に集合活動の場とされてきたことに照らし、全く住民が学校施設の目的外使用につき、憲法21条に基づく権利がないとはいいきれないとしながら、「本来の使用目的である学校教育上に支障がある場合にまで、その使用を要求する憲法上の権利を有しないというべきであり、また管理者は右施設の本来の使用目的である学校教育上の目的に支障が全く存在しないことが明らかな場合など特段の事情がない限り、集会、表現活動のゆえをもって右施設を使用させることを義務づけられるものではないというべきである。」とし、本件ミュージカル公演は学校教育の目的上明らかに支障がないとはいえないので、不許可処分は憲法に違反しないと述べ、裁量権の濫用にもあたらず、不許可処分を適法としている。なお公演は学校施設が不許可のため野外で行われた。

 

 

 以上は要約であるが、以下判決の要所である。

 

()地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用を供するために設置した公の施設につき、住民がその目的に適う公の施設としてこれを利用することを正当な理由なく拒んではならない(地方自治法244)

 しかしながら、公の施設をその目的外に使用する場合は、施設管理権の使用許可が必要であり、それは行政財産たる公の施設の用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができるのである(地方自治法238条の44)

 そして、このような公の施設ないし行政財産の目的外使用の一般的原則は、その施設ないし財産の一である学校施設の目的外使用についても、特段の定めがない限り当嵌るといわなければならない。

 (中略)

 ()学校施設の目的外使用に関しては、学校教育法八五条に「学校教育法八五条に「学校教育上支障がない限り、‥‥学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる。」の旨の規定があるが、これはとくに前示行政財産の目的外使用一般を律する地方自治法二三八条の四第四項を学校施設の目的外使用一般を律する地方自治法二三八条の四第四項を学校施設の目的外使用に敷衍したもので、両規定は同一の趣旨を定めたものにわかならない。(中略)

 ()県教委が公立学校施設の目的外使用許可基準等について定めた管理規則は、地方教育行政法三三条一項に基づき適法に制定されたものであるが、同管理規則は次のように定めている。

 「第八条 次の各号の一に該当し、又は該当するおそれがある場合においては、校長は、施設、設備の利用の許可を与えてはならない。

 (1)学校教育上支障があるとき。

 (2)公安を害し、風俗をみだし、その他公共の福祉に反するとき。

 (3)もっぱら私的営利を目的とするとき。

 (4)施設、設備を損傷する等、その管理上支障があるとき。

 (5)その他校長において支障があるとき。

 右管理規則八条も学校施設の目的外使用について前示地方自治法二三八条の四第四項、政令三条、学校教育法八五条、社会教育法四四条一項、スポーツ振興法一三条一項等の趣旨を踏えて学校施設の第一次管理権者である県教委がその目的外使用基準を定めその基準内において校長にその利用許可権限について授権したたものであるというべきである。

 二「学校教育上の支障」について

 ‥‥「学校教育上支障がない」とは、単に施設が狭隘であるなどの物理的支障に限らず、教育上の配慮から広く児童、生徒に対し精神的悪影響を与え当該学校の教育方針に悖るような場合もこれに当たるべきである。

 そして、「学校教育上の支障」は、単に現在の具体的な支障の存否だけでなく将来における支障が生じる虞れが明白な場合も含むと解するのが相当である。

 ()本件公演実施と学校教育上の支障

 ‥‥かくして控訴人組合及び鹿児島県教職員組合と県教委との間に激しい対立が生じ、右両組合員多数が鹿児島県教育庁内等で連日座り込みやデモを行い、ストライキによる反対闘争を行ない、右給与条例成立後は、従前どおり主任の職員会議における選出、一年交替制の確立、主任中心の学校運営の排除を目標とする活動をするとともに、主任手当支給対象者に対し主任手当金を両組合に拠出することを決め、その誓約書を提出させる主任手当拠出闘争に積極的に取組み、その結果鹿児島県立高校の主任手当受給者のうち控訴人組合への拠出者が、昭和五三年七三・六%、昭和五四年七五店・五%に達したが‥‥右拠出闘争から脱落した者もあるし、非組合員でも右拠出に応じたものがいた。控訴人組合は昭和五四年度の具体的闘争目標の一つとして、主任制の空洞化のための主任手当の完全拠出を実現させるため組織をあげて積極的な説得活動をすること及び累積した拠出金を公立学校の体育教材の購入及び不足する学校施設の改善の資金として寄附すること、及び右拠出金をもって本件公演を実施することを掲げていた。本件公演の宣伝用パンフレットにも、「主催者のあいさつ」の表題で「主任手当は、ごく一部の先生にしか支給されず、学校の仕事をみんなで公平に分担しあい協力し合っている先生がたにとっては非常に不公平な手当てであり、先生がたの和が乱れるもととなります。ほとんど大部分の先生方がたがこの主任手当に反対し、主任手当は、支給されても受けとらず、教育を向上させるための資金になるよう寄附されています。」との記載があり、この資金を役立てるため本件公演を計画したとの趣旨が併せて記載されているし、本件公演の際の主催者である控訴人組合の挨拶でも同旨のことが述べられていた。

 以上の事実を考え併せると、本件カチューシャ公演が主任制形骸化闘争としてなされた主任手当拠出運動の一環であり‥‥右闘争の教育宣伝を行い、もって主任制度の終局的廃止を目指したものであって、本件公演の会場として本件学校施設の使用を許可することは主任制度をめぐる前示深刻な紛争に一石を投じ、校長らと控訴人組合員のみならず、教職員間の対立、緊張を一層昂め、紛争が激化増大して学校運営に支障をきたし、ひいて児童生徒に対する学校教育上に支障を与える蓋然性が高かったと推認するのが相当であり‥‥適法な処分である。

 (中略)

 第三 裁量権濫用の検討

 ‥‥

 一 地方自治法二三八条の四第四項、学校教育法八五条は前示のとおり、「用途又は目的を妨げない限度」ないし「学校教育上支障のない限り」その「使用の許可」ができ「利用させる」ことが「できる」ことを定めたものであって、右学校教育上の支障があれば利用許可ができないことは明らかであるが、その支障がないからといって直ちに利用許可を管理権者に義務づけたものではなく、その場合でもなお行政財産たる学校施設の目的用途と当該目的外使用の目的、態様などの関係において合理的、合目的的裁量判断により利用を許可しないこともできる趣旨であると考える。(中略)

 そして本件利用不許可処分は‥‥本件公演が学校教育上支障がある場合ないしその虞れがある場合に該り、かつそのように校長が判断してなされたものであって‥‥とくに恣意的な害意をもってなされたものであるなどの特段の事情は認められないから、前示合理的、合目的的裁量判断の枠内にあり、これが裁量権の濫用に当たるとは認められず‥‥

 二 控訴人らは本件公演が主任制形骸化闘争の一環として行われたものとすれば、それは組合活動であり‥‥憲法二八条の団結権、地方公務員法五二条の職員団体結成の自由に基づき結成されたものであるから、その正当な団結権教化と経済的地位の向上を目指した団体活動を嫌い、これを尊重せずに学校施設の利用不許可処分をしたのは裁量権の濫用である旨主張するが、そもそも行政財産たる学校施設は本来の学校教育の目的にしようすべきものであり、前示限度でこれを目的外に使用することを許可する場合の法律関係は、私法上の賃貸借などの貸借関係たる性質を帯有するものにほかならないから、特別の事情がない限り賃貸主になろうとするものに賃借人が自己の団結権の保障を根拠に貸借契約の締結を強制することができないことは明らかである。

 したがって、第三者の行なう本件公演の学校教育の目的外使用の許可申請と団結権の保障とは無関係であって、控訴人の団結件の保障の故をもって本件学校施設利用不許可処分が処分権の濫用になるという控訴人の主張は採用できない。」

 

 つまりこの判決は、学校施設が副次的に集合活動の場でもありうることを否定しないが、本件ミュージカル公演は、組合による主任手当の拠出を資金として行なわれ、主任制形骸化闘争の教育宣伝を目的とし、教職員間の対立、緊張を一層昂め、紛争を激化増大して学校運営に支障をきたす蓋然性が高かったがゆえに不許可処分は適法であり、団結権侵害にも当たらないとしている。 

 

(オ)福岡県鞍手町立小学校施設使用不許可処分事件

 

 福岡県鞍手町立小学校施設使用不許可処分事件福岡高判平16.1.20判タ1159号149頁公立小学校長による組合分会会議(他の学校の教職員も参加し、非組合員の組合加入勧誘を目的とするものだった)の学校施設使用不許可処分が裁量権の行使を逸脱した違法な処分であるとして教職員組合支部の損害賠償請求が認められた例。

 

(註)判決文では行政財産の目的外使用について、238条4条4項による許可が必要としているが、平成18年の地方自治法改正で、この条文は238条の4第7項となっている。

 

 

 判決は次の通り

‥‥2 本件不許可処分の遺伝違法性(争点1)について

(1)一般に、行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができ(地方自治法2 3 8条の44項)、特に学校施設については、学校管理者は、学校教育上支障のない限り、これを社会教育その他公共のために利用させることがで きると定められているところ(学校教育法8 5条)鞍手町においては,これを受けて、町立小中学校等においては核長が学校の施設.設備を社会教育その他公共のために利用させることができるものとされている(鞍手町立小中学校等管理規則2 5条1項、乙2)。なお、鞍手町立学校教育施設使用に関する条例(乙3)では、社会体育活動等の場として鞍手町立の学校施設を使用しうる範囲を、町立学校の体育館と運動場に限定し、学校教育に支障のないよう教育委員会と当該学校長が協議のうえ使用を許可するものとされているが、上記条例は、体育館及び運動場が町民等の社会体育活動等に供されることが適切でありかつその利用頻度も高いことから、その利用方法を定めたものと解せられ、同条例により体育館及び運動場以外の学校施設の目的外使用を全く許さない趣旨と解することはできない。)。

B分会長のA校長に対する本件許可申請は,上記のような学校の施設についての目的外使用の許可申請であると解されるところ、Z小学校の管理者たるA校長は、学校設置の目的に反しない組合活動のために、裁量によって学校施設の利用を許すことができるだけでなく、 その不許可処分に管理者の裁量権の逸脱、濫用があった場合には違法となると解すべきこと、並びに裁量権の逸脱、濫用に当たるか否かは、許可を求める内容許可が与えられなかった場合の弊害及び与えた場合の障害等の具体的個別的事情を社会通念に照らし総合的に 判断して決せられるべきことはいずれも原判決(‥‥)に説示のとおりである。そして、校長が学校の施設の目的外使用につき、与えられた施管理兼に基づく裁量権に基づく裁量権を行使してその諾否を決するに当たっては、公の財産でありかつ教育目的の施設である学校の管理の必要性とその有効適切な利用の見地から、その申請時の具体的個別的事情(当該施設の他の使用予定など)を前提として、当該許可申請の使用時の時間や場所、使用者の範囲、使用の目的など諸般の事情を総合考慮した的確な判断が求められるのであり、学校長による裁量権の行使が違法なものか否かの判断は、それが裁量権の行使であることを前提とした上で、むその判断が合理性を有するか否か、合理性を有しないとしてその合理性の欠如が社会通念、条理、公平等の観点に照らして著しく妥当性を欠くものか否かを総合的に検討して決せられるべきものである。

そこで、以下、本件不許可処分が.このような見地から裁量権の逸脱.濫用として違法と いうべきか否かについて検討する。

 (2)証拠(略)によれば,Z小学校 を含む福岡県内の公立学校においては教職員組合(福教組)の支部の分会会議は.特別の事情がない限り、分会が置かれた当該各学校の施設を使用して行われていること、このような分会会議のための学校の施設の使用許可申請は、多〈の場合、書面等によらず分会長らが学校長等に対して「何時からどこどこの部屋で分会会議をします。」と告げることによって行われ,学校長等が「はい、分かりました。」などと口頭で答えることによって許可されていたこと、その際、会会議の目的等については、分会側も特段これを告げず、校長側もこれを質すことはなかったこと、が認められる。このように、少なくとも、当該学校の分会員のみによる分会会議を目的とする学校施設の使用許可申請については、当該分会会議の内容が分会員による当該学校教職員に対する組合加入勧誘のための活動を含む場合であると否とにかかわらず、当該施設において当該時間に他に使用の必要があるなど特段の事情がない限り、これを許可する運用が行われていたということができ,かかる運用に特段の問題があっ たことはうかがえない(但し、一般論として、当該会議の参加者については.申請者である分会長においては外部からの参加者がある場合には管理者側に誤解等が生じないようにこれを明らかにした上で使用許可を申請し、また、管理者である学校長においても、必要に応じてその許否の判断に必要な事項を質問するなどして対応すべき場合もあると考えられるが. これらが従前実際にどのような場合にどの程度行われていたかは措く。)。

(3)これに対し、本件許可申請にかかる分会会議のための学校施設の使用は、

(1)当該学校の分会員のみではなく Z小学校に所属しない支部役員が参加するものであること、及び、(2)支部役員を含む控訴人所属の組合員による非組合員たる教職員に対する 組合加入勧誘を目的とするものであること.を特徴とするものであるといえるから、以下、 この点について検討する。

(4)まず、前記(3)の(1)については.使用者が当該学校の教職員以外の者を含む点で、施設管理の観点から検討を加える必要がある事柄であると考えられる。

この点に関し、被控訴人は、A校長が本件許可申請についてこれを不許可とした理由の一として、学校警備に支障が生じる点を挙げ、外部の組合関係者が来校することになっていると、不審者を組合関係者と思い違いするなどして、学校警備にすきが生じるし、Z小学校では、当時、特定の子供の靴が盗まれたり、学校で飼育していた鶏やウサギが殺されたり.体育館の裏側にシンナーの入った一斗缶が置かれていたりして、同校長としては、警備の点に非常に神経を使わなければならない状況下にあったなどと主張し、原審証人A及び当審証人 Gの各証言中にはこれに沿う部分がある。

しかしながら、本件許可申請に対する不許可処分を行った際、A校長がBに対し、警備上 に支障が生じる点について特段の説明をした形跡はなく、当審における証人Gの証言によっても、本件不許可処分の直後に、A校長がその経緯についてG教育長に報告を行った時点でも、これについては触れていなかったことが認められることや、原審における証人Aの証言 内容などからすると、本件不許可処分の段階においては、A校長が警備上の問題を本件許可申請を不許可とする主たる理由と考えていたとはいえないこと(その主たる理由は、組合勧誘行為による教員の精神的動揺など,後記(5)に記載のとおりの被控訴人の挙げる事情で あると考えていたこと)がうかがえる。そして,被控訴人が不許可処分の理由として挙げる上記の諸点は、A校長と当該支部役員との面識や用務員の対応の問題等を含め,いずれも学校警備上の抽象的な危険性があるというに過ぎないものというべきで、控訴人の支部役員等が分会会議に参加するため来校することによって警備上何らかの具体的な危険が生じることや、一律に支部役員の參加する分会会議のための学校施設の使用を不許可とすることがその 危険を回避するために有効な手段となり得ることを認めるに足りる資料は見当たらない。他方、一般に、支部役員による分会員との連絡、意見交換、指導.助言等は、これが違法な争議行為に関する活動等でない限り、その適法な組合活動の一環として許されるというべきで あるから、この目的のために学校施設に立ち入ることをもって直ちに違法ということはできない上、社会通念上これを妨げるべき合理的理由もない。これらに加えて.分会会議のため の学校の施設の使用許可申請に対する使用の許否の実情は上記(2)のとおりであり,その中には施設使用者の範囲について支部役員など当該分会員以外の者が参加する場合が含まれていたものと考えられることをも考慮すると、学校施設の使用者として当該分会員以外の者が含まれていることを明示して行われた本件許可申請について,その具体的な人数や氏名及び地位等の具体的態様を問うことなく、また、警備上の問題点を具体的に説明するなどしないまま,一律に外部者であるということのみで支部役員の参加する分会会議のための学校施設の使用を不許可とすることは,合理性を欠くといわざるを得ない。

5)次に,前記(3)の(2)については,分会会議の内容が違法な行為等を目的とする場合は別論として,教職員組合の会議である以上.職務である教育に関連する各種活動を内容とすることが予定されるものであり、また,労働組合である以上、その組織の人的 かつ財政的基盤である組合員の維持拡大に関する活動が分会会議の内容となり得ることも当然のことというべきであるから、このような分会会議の内容や目的の違いによって,その使 用許可申請の許否の判断を異にすべき性質のものと考えることはできないし,このことは, 支部役員が参加して行われる分会会議においても.碁本的に同様であるというべきである。

これに関し,被控訴人はA校長が本件許可申請請にについてこれを不許可とした理由の一と して、学校教育に支障を生じる点を拳げ、A校長は、事前に組合加入勧誘の対象者がC, D, E及びF4名であることを聞き及んでおり、その中には,当日休暇を取ろうか、出席 を断ったら気まずくなるだろうかと動揺している者、授業に関して生徒及びその保護者との間のトラブルで神経をすり減らすような関係が続いて悩んでいる者、妊娠障害で苦しみ、特別休暇を繰り返している者がいたため、校長としては正常な授業を維持するためには授業と直接関係のないことで教員らにこれ以上の精神的負担をかけさせないように配慮する必要が ったし,激しい組合加入勧誘がなされることも予想されたので、上記対象者の精神的負担を軽減させたり、組合加入勧誘による学校内での組合員と非組合員との気まずい人間関係が生じることを危惧しなければならなかった旨主張、これに沿う原審における証人A及び当審における証人Gの各証言部分がある。

しかしながら、教職員の日常の執務状況やこれに伴う精神的負担の有無等に対する学校長としての一般的な配慮の必要性の問題はともかく、そもそも上記主張のような組合加入勧誘に関連する行為についての事情ないし危惧は、0それ自体.基本的には勧誘者ないし組合とその勧誘対象者各自の個々的対応に委ねられるべき性質のものであるばかりか、かかる行為が行われる場所の問題に限っても、これが学校の施設で行われた場合と学校の施設以外で行われた場合とでその勧誘対象者への影響ないし効果に質的な差が存するということはできず、控訴人傘下の分会会議のために学校の施設の使用を不許可とする根拠としては薄弱であるといわざるを得ない。また、この点に関連して、原審における証人Aの証言中には、A校長自身、平成114月にZ小学校に着任して以降本件許可申請までの間に、オルグ目的のため 学校施設使用許可申請を経験したことがなく、他の公立小中学校の校長に問い合わせたところによると、組合員獲得のオルグであれば、学校外で会合をしてもらっている旨の回答を得たと述べる部分があるが、これらを裏付ける資料はない、そもそも被控訴人の上記主張自体.当該学校に所属する分会員のみによる当該学校教職員に対する組合加入勧誘に関する活動との比較において、これに当該学校外の支部役員が参加して行われる組合加入勧誘に関 する活動が特有の性質を有するとして主張されているものでもないから、控訴人が主張するように、本件不許可処分自体が直ちに不当労働行為性を有しているというべきかどうかは別論としても、組合加入勧誘対象者に関する上記のような事情が、A校長の本件不許可処分の合理性を基礎付ける事情となり得るものでないことは明らかであり、被控訴人の当該主張は 失当であるといわざるを得ない。

(6)また、被控訴人は,A校長が本件許可申請についてこれを不許可とした理由の一として、鞍手町にはZ小学校から約6 0 0メートル離れた位置に中央公民館が設置されており、ここで分会会議を開〈ことができる旨助言したことを挙げ、ほかにも学校の近くに会合に適当な場所があるので学校施設の使用を認めなくても憲法が保陣する団結権を侵害することにならない旨主張する。

しかしながら、控訴人を初めとする教職員組合が、本邦における他の多数の労働組合と同様、基本的にいわゆる企業内労働組合の性質を有する上、教職員の職務自体の特質に加え、 控訴人の労働組合としての組織の規模や分会会議の頻度及び分会会議の開催に関する上記(2)の実情に照らしても、その会議の内容如何にかかわらず、学校施設を使用しての分会会議と学校外の施設を使用してのそれとは、管理者側及び労働組合側双方にとって、その利便性や実効性等の問題を含めて相当の差違があり、学校外の施設の使用に関する本件不許可 処分をもって単に控訴人において場所的な利便が受けられなかったに過ぎない程度の問題として看過することのできないものがあるというべきであって,被控訴人が挙げる代替施設である中央公民館の問題に関しても.証拠(乙42)によれば.使用許可を受けようとする ときは.公民館使用(変更)許可申請書を使用の7日前までに公民館長に提出し,許可を受けなければならず(鞍手町公民館使用条例施行規則3条),これが適当な代替施設となり得ないおそれがあると認められること(これに反する当審における証人Gの証言は採用できない。)などを総合すると.被控訴人が主張する上記事情は、いずれも、本件会議に学校施設 の使用を不許可とする根拠としては薄弱であるといわざるを得ない。

(7)以上のような.教職員組合の分会会議のための学校施股使用に関する運用の実情(上 (2) )を含めた諸事情に加えて、本件使用許可申請において予定された使用者(分会会議の参加者)は、許可の対象となる施設であるZ小学校の教職員とこれを含む鞍手郡内及び直方市内の教職員で組織する控訴人の支部役員であり、教育施股としてのZ小学校からみて教職員以外の外部の者を含むものではないこと、の使用目的が、控訴人の組合活動の一環たる分会会議であり、憲法2 8の趣旨からも、その団結権が尊重されるべきであること。被控訴人が指摘する上記各事情の他に、本件許可申請にかかる施股について控訴人以外の者による利用が予定されているなど、本件申請を許可することによってZ小学校の施設の管理運営上特段の支障が生じることを基礎つける事情は見当たらないこと等、本件にあらわれた諸般の事情を併せ考えると、本件において本件許可申請に対してA校長の行った不許可の裁量判断は不合理で、社会通念上著しく妥当性を欠くものといわざるを得ない。そして、このことは、一般に、労働組合が使用者の許諾を得ないで企業施設で組合活動を行うことは,その利用を許さないことが使用者の施設管理権の濫用と認められる特段の事情がない限り正当性を有しないこと(最高裁判所昭和5 41030日第三小法廷判決民集3 3 66 4 7頁參照)や、労使慣行がそれ自体で特別の法的効力を認めるべき実定法上の根拠はないこと(但し、一般に、労使慣行がそれに反する使用者の権利の行使を権利の濫用として無効とする効果を持つことがあり得るし、少なくとも,本件においても裁量権の濫用の 判断の一要素として従前の運用の実情が考慮されるべきは当然である。)を前提

にしても、 なお同様であるというべきである(略)。

(8)以上のとおりであって,本件不許可処分は,裁量権の逸脱.濫用として違法と いわざるを得ない。」

本件は、下級審判例であり、判例タイムズ以外判例評釈がないが、教研集会以外で組合側が勝訴した点で注目した。不当労働行為に該当するか否か争われたのではなく、校長の学校施設使用不許可の裁量判断は不合理で、社会通念上著しく妥当性を欠くと判示であるが、印象としては救済命令取消訴訟であるが総合花巻病院事件最高裁第一小法廷昭和60 523日『労働委員会関係裁判例集』20164http://web.churoi.go.jp/han/h00312.htmlのケースと理屈としては類似していると思った。

これは、組合が上部団体である医労協に加盟し、原告の意に副うような労使関係が崩れた時期に、病院は従前の施設利用を拒否するようになったことから、従来の例を破る特段の正当な事情は認められないから、病院施設を組合に利用させないことによって組合活動の弱体化を図ったものとみられても仕方なく、組合の運営に対する支配介入にあたるから、労組法七条三号に該当する不当労働行為であるとして、労委命令に違法はないと判示した原判決を支持したものである。

本件では従来機関運営の分会会議は学校施設使用を許可していたのに、校長が非組合員の組合加入勧誘を目的としていることに着目し、組合に施設利用を拒否したことを不当労働行為とはしていないが、施設利用を不許可とする合理的根拠とはみなさなかったのである。

(カ)広島県高教組定期総会学校施設使用不許可事件 

広島高教組定期総会学校施設使用不許可事件広島地判平17.2.9(掲載-裁判所ウェブサイト) 広島県高教組の支部である原告がそれぞれの事務局のある高校の体育館で定期総会を開催するための使用許可申請の校長による不許可処分を適法とした。 

判決(抜粋)

「 () まず,本件各大会の目的及び使用態様について検討する。

 本件各大会は上記のとおり組合活動の一環として行われるものであり,前記(1)イ認定のとおり,本件各大会は原告らの組合員全員が参加資格を有し,新年度の運動方針などが報告・議決されるものであり,第50回定期大会(府中地区)には約250名もの組合員が参加する(証人E)のであるから,本件各大会では原告ら地区支部の意思が決定され公になるものと考えられ,例えば各種委員会や分会会議などと比べても大きな社会的影響を有する形態で開催されるということができる。

() 続いて,代替施設の確保の困難性を検討する。

 前記(1)(),エ()に認定のとおり,原告旧府中地区支部においても原告三次地区支部においても,本件各申請を行う前に代替施設である府中市文化センター及び三次市まちづくりセンターを予約しており,本件各大会の1年前の第49回各大会はこれら施設において開催されていたことが認められる。そして,たとえ学校施設以外の施設を使用することによって事前準備や使用料,駐車場等の面で若干の不都合があるとしても(証人E,同F,同H),前記(1)(),エ()に認定のとおり本件各大会は特に混乱もなく開催されたのであるし,使用料を要したとしても,従前はたまたまこれが免除されていたに過ぎず,本来,施設を使用した原告らが料金を負担すべきことは論をまたない。原告らは他の施設使用の申込み等の事前準備のために年次有給休暇を取らなければならなくなったとして不満を述べるが,本件各大会は組合活動の一環であって,職務専念義務(地方公務員法35条)を負う教職員が組合活動を行うために年次有給休暇を取るべきことは当然である。これら事情からすれば,原告らにおいて代替施設を確保することが困難であったとはいえない。

() 従前の経緯を検討する。

 前記(1)イに認定のとおり,春の定期大会や批准集会は従前から高教組の各地区支部事務局が置かれている高等学校の体育館を使用して開催されてきたが,平成11年度の批准集会から一部を除いて高等学校の体育館を使用できなくなり,平成12年度の春の定期大会からは全く使用できなくなったことが認められる。しかしながら,これは平成10年の文部省是正指導以降,県教委が学校施設の使用関係について,それまでの事実上の慣例にとらわれることなく,学校設置目的との親和性,学校教育上の支障の

有無を一つ一つ審査して判断するという方針で臨んだ(前記(1)(),エ())からに他ならない。事実上の慣例を見直すという県教委の姿勢は文部省是正指導に従ったものと考えられるところ,確かに学校施設の使用関係の見直しは是正項目ではない(乙1)けれども,前記(1)アに認定の背景事情からすれば,文部省が是正指導を行うに至ったのは被告広島県における教育の適正化を図る必要があったと考えたからであると推測され,学校施設の使用関係の見直しもこの流れに則ったものと考えられる。そこで,文部省是正指導の内容をみると,そこでは教育内容や学校運営管理を法令等に従って実施するように求めており(乙1),特に明白な違法性を有するものは認められないから,文部省是正指導と同様の趣旨で学校施設の使用関係を見直すという県教委の施策にも相応の理由があると考えられる。原告らは文部省是正指導とそれ以降の県教委の施策に関して反対の立場を取るが,いずれが相当であるかは畢竟,民主政の過程ひいては県民の民意に委ねるべき事柄である。したがって,被告広島県においては文部省是正指導及びこれに伴う慣例の見直しによって,基礎となる事情が変更したというべきであって,原告らが学校施設を使用して春の定期大会を開催してきたという従前の経緯を過大に重視すべきではない。

() 施設管理上・学校教育上の支障を検討する。

a 本件各大会が開催された平成14年4月20日は土曜日で,戸手高等学校でも三次青陵高等学校でも授業や特別な行事は行われておらず,本件各大会を開催しても部活動その他への影響はなかった(被告A,同C,弁論の全趣旨)し,従前は高等学校の体育館を使用して春の定期大会が開催されてきたとの経緯(前記(1)イ)からすれば,施設管理上の支障は特に認められないと考えられる。

b しかしながら,原告らの組合活動の一環である本件各大会を学校施設で開催することは,次に述べるように,学校教育上の支障を来すといわざるを得ない。第1に,前記(1)(),エ()に認定のとおり,本件各大会の内容は第49回各大会と大略同じであるところ,第49回定期大会(府中地区)において,「ストライキを基軸とした通年的な戦いを堅持して諸要求の実現を目指さなくてはなりません。」とストライキを視野に入れた組合活動が提言された上,ストライキの方針であったが最終的に不満を残しつつもストライキを回避するに至った経緯が詳細に報告され,第49回定期総会(三次地区)では,高教組がストライキを配置し,諸要求実現のために戦う方針であると組織決定され,ストライキ権が確立されたが最終的にはストライキが回避されるに至った経緯が詳細に報告された上で,「確定闘争は職場闘争の集大成です。だからこそ日常的な職場闘争をさらに強化していくことが,最大の課題だと思います。」と提言されている。そこで検討すると,地公法37条1項は地方公務員の争議行為を禁止しているのであって,ストライキ権の確立から回避に至る経緯を報告し,争議行為を視野に入れた活動方針を示すだけでは,直ちに地公法37条1項に反するものではない。しかしながら,学校教育上の支障の有無は,本件各大会の内容が現に法令に違反しているか否かだけで判断されるのではなく,法令違反がないとしても,生徒,保護者等が公教育に対して不信を抱く危険性があれば,学校教育上の支障を認めることのできる事情として考慮するのが相当である。現実にストライキの実施が予定されているものではなくても,ストライキ権が確立されたことの報告や,ストライキを視野に入れた活動方針の提言は,ストライキの実施という意図や法令違反の可能性を示すものであるし,「ストライキを基軸とした通年的な戦いを堅持」などの内容からすれば,生徒,父兄等が公教育に対して不信を抱くことは想像に難くなく,本件のストライキに関する内容は,学校教育上の支障を肯定する事情として考慮するのが相当である。

第2に,前記(1)(),エ()に認定のとおり,第49回定期大会(府中地区)において,主任制とは対等・平等であるべき教職員集団の間に分裂を持ち込もうとする制度であって,その実働化により職場に差別と分断が持ち込まれるとして反対の立場を明確にし,そのために学校組織の確立に向けた闘争を行うべきと提言され,第49回定期総会(三次地区)では,主任制とは教職員の管理・統制ひいては教育の国家統制に向けた攻撃であるとして反対の立場を示し,その実働化阻止闘争の経過と共に学校組織の見直しが提言された。そこで検討すると,学校教育法施行規則65条1項,22条の3第1項は高等学校に教務主任及び学年主任を置く旨を定めているから,主任制に反対し,学校組織の見直しと確立を提言している第49回各大会の内容には,学校教育法施行規則65条1項,22条の3第1項に抵触するものが含まれていたと認められる。

第3に,前記(1)(),エ()に認定のとおり,第49回定期大会(府中地区)において,卒業式等での国旗掲揚・国家斉唱は権力者の意図を貫徹させ,権力者に従わせるための上意下達システムを構築しようとするものであるなどとして,国旗掲揚等を強制すべきではないとの立場を明確にし,強制阻止に向けた活動を展開すべきであると提言され,第49回定期総会(三次地区)では,国旗掲揚・国家斉唱の半ば暴力的な強制に対して的確な対抗措置や阻止行動を講じなければならないと提言された。そこで検討すると,学校教育法43条,106条により高等学校の学科及び教科に関する事項は監督庁たる文部省が定めるとされているところ,同法施行規則57条の2に基づく高等学校学習指導要領(平成元年3月15日号外文部省告示第26号)第3章の第3の3は,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と定めているから,第49回各大会の内容には,同学習指導要領に反する内容が含まれていたことは否定できない。なお,原告らは学習指導要領の法的拘束力を否定する旨を主張するが,学習指導要領は,全体としてみた場合,高等学校における教育課程に関し,教育の機会均等の確保及び全国的な一定水準の維持の目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な遵守基準を設定したものとして,法的拘束力を有するものとして有効と解されるのみならず,学校教育上の支障の有無を判断するに当たっては,法令違反の有

無のみを考慮するものではないのは上記のとおりである。文部省告示である学習指導要領に反している以上,生徒,県民等が公教育への不信を抱くことは否定できず,日の丸・君が代に関する内容は学校教育上の支障を肯定する事情として考慮すべきである。

 第4に,前記(1)(),エ()に認定のとおり,第49回定期大会(府中地区)において,次回の参議院選挙で新社会党から立候補する予定の者を組織推薦し支援することが決定されたこと,第49回定期総会(三次地区)においも同様に決定されたことが報告された。そこで検討すると,教育基本法8条2項において学校での党派的政治教育が禁止されていることなどから明らかなように,公教育においては政治的中立性が求められている。それにもかかわらず第49回各大会では特定政党の候補者を推薦する旨が報告されたのであって,教職員団体である原告らが特定政党に対する支持の報告を学校施設で行うことによって,政治的中立性を揺るがす事態を招く可能性があったことは否定できない。なお,原告らは,特定政党の支持について教職員組合としての原告らの政治活動であり,公職選挙法136条の2に反しないと主張する。しかしながら,法令違反がないとしても学校教育上の支障を判断するための事情となり得るのは上記のとおりである。いかに組合活動としての政治活動であったとしても,組合員は教職員であって,その教職員団体が特定政党の支持の決定をことさらに学校施設において報告することは,公教育の中立性を著しく害する結果となることは明らかである。したがって,特定政党支持に関する内容は学校教育上の支障を肯定する事情として考慮すべきである。

 このように,本件各大会は,主任制については学校教育法施行規則に現に違反する内容を打ち出し,日の丸・君が代問題については高等学校学習指導要領に反し,ストライキ実施・政党支持については公教育に対する不信を招く危険性を内包していることが認められる。本来中立である

べき公教育の実践の場である県立学校において,上記のとおり現に学校教育法施行規則に違反する内容等を含む本件各大会を学校施設で開催することは,原告らの主義主張に反対する生徒や父兄,県民はもちろん,そうでない者に対しても,公教育への不信を惹起させる危険性があることは否定できない。そして,前記(1)アに認定のとおり,被告広島県の教育を巡って様々な議論が紛糾し,全国的にも注目を集めてきたとの経緯をも併せ鑑みれば,県民や国民の間に公教育への不信を引き起こす危険性は,もはや抽象的なものではなく具体的なものとして認められるのであって,これらからすれば,本件各大会を開催することにより学校教育上の支障を来すと認めるのが相当である。

() そこで,前記()ないし()に認定判示した各種事情を総合すると,組合活動を目的とする本件各大会は,原告ら地区支部の意思が決定されるもので大きな社会的影響を有すること,代替施設を確保するのに困難はなかったこと,従前は使用が認められていたという経緯があるけれども,被告広島県においては,相応の理由によって施設使用関係についての事実上の慣例を見直す施策が取られて基礎となる事情が変更したのであり,従前の経緯を重視することはできないこと,本件各大会のために学校施設を使用しても施設管理上の支障は認められないけれども,生徒,父兄,県民の公教育への不信を引き起こす具体的な危険性の存在という学校教育上の支障が認められることからすれば,本件各不許可処分の判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等によりその判断が事実の基礎を欠き又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合には該当しないので,被告A及び被告Cが裁量権を逸脱濫用したものとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって,本件各不許可処分はいずれも適法である。

(3) 原告らの主張について

ア 原告らは,本件各不許可処分が憲法21条1項に違反する旨を主張するので検討する。憲法21条1項は集会の自由を保障するところ,集会に使用されることが前記(2)アに判示のとおり,本来的に教育目的のために設置されている学校施設の目的外使用の許否については管理権者に一般の行政財産と比

較してもより広範な裁量が認められており,憲法が集会の自由を保障した趣旨はかかる裁量の範囲内,あるいは少なくとも学校教育上の支障がない範囲内において考慮すべきであって,前記(2)イに認定判示のとおり管理権者等に裁量権の逸脱濫用も学校教育上の支障の不存在も認められない以上,本件各不許可処分によって集会の自由の趣旨が否定されたと認めることはできず,原告らの上記主張は採用できない。

イ 原告らは,本件各不許可処分は高教組の活動を抑えようとする不当労働行為意思の下になされた違法なものであると主張する。しかしながら,前項(2)に判示したように,本件各不許可処分は学校教育上の支障が認められることを理由として管理権者等の裁量権の範囲内で適法に行われたものであるから,

不当労働行為には該当しないといわなければならない。それだけでなく,本件各不許可処分は原告らの事務局が置かれている高等学校における学校施設での集会の開催を制約するものに過ぎず,原告らが公務員の労働基本権や日の丸・君が代などの様々な問題について議論を深め,原告らの立場から提言することを否定するものではないし,他施設の使用により原告らに多少の不便があったとしても,前記(2)()に認定判示のとおり原告らにおいて代替施設を確保することが困難であったとすることはできない。また,前記(1)(),エ()に認定のとおり,県教委は各県立学校の分会に対して,分会専用電話やファクシミリの設置場所としてその学校の校舎の一部を使用することを許可し,地区支部に対しては地区支部事務所としてその地区支部が置かれている学校の校舎の一部を使用することを許可している。加えて,学校長は高教組主催のスポーツ大会等のためにグラウンド等の使用を許可している(乙10,11,被告A,同C)ところでもある。したがって,本件各不許可処分が不当労働行為意思をもってなされた不当労働行為に当たるとする原告らの主張は採用できない。

ウ 原告らは,本件各処分は便宜供与の一方的廃止であって不当労働行為に当たると主張する。前記(1)イに認定のとおり,従前から春の定期大会や批准集会は各地区支部の事務局が設置されている高等学校の体育館を使用して開催されてきたことは認められる。しかしながら,学校施設などの行政財産は,住民全体の利益のために使用されるものであって,特定の個人や団体の利益のために使用されるべきものではない。前記(2)アに判示のとおり,本来,行政財産は行政上の用途又は目的のために最も適正に使用されるべきものであるから,特定の個人や団体に当然に行政財産の使用請求権を認めることはできないのである。このことは,地方自治法238条の4第4項等の規定からも明らかである。とすれば,従前から施設の使用を認めてきたという経緯があったとしても,その施設の本来の目的を阻害する態様での使用であったのであればこれを是正すべきは当然であるから,公務員労働者は従前の施設使用の実績を基に施設の使用継続を求めることはできないというべきである。なお,使用不許可処分によって公務員労働者の労働基本権を不当に害することはできないこともまた当然ではあるけれども,本件においては,前記(2)()()()()に認定判示のとおり,本件各大会の目的は学校施設の設置目的とはかけ離れていること,代替施設の確保が困難であったという事情は認められず,本件各大会を開催すること自体は否定されていないこと,本件各大会を学校施設で開催すると学校教育上の支障を来すと認められることなどからすれば,原告らの労働基本権が違法に制約されたとみることはできない。

したがって,原告らの上記主張は採用できない。」

 

(キ)広島県高教組支部教研集会学校施設使用不許可事件 

 

広島県高教組支部教研集会学校施設使用不許可事件 広島高判平18.1.25判時1937号広島県高教組東地区支部など四支部は平成148.9月に開催予定の支部教研集会の会場として、県立高校6校の施設の使用許可を申請したが、校長が集会の内容が学習指導要領に反しているなどとして不許可処分にしたことに対し、組合側が裁量権の逸脱、違法があるとして損害賠償を請求したものであるが、一審(広島地判平17.1.20)は、裁量権の逸脱、濫用があるとして約260万円の損害賠償を認めたが、控訴審は一審判決を取消、損害賠償請求を棄却した。

 (判決要旨)

 学校施設においては、その設置目的に沿って使用することが原則とされ、目的外に使用する場合の管理権者の裁量は、学校施設がその性質上、広く一般に開放、利用されることを予定した施設ではないことから、行政財産一般と比較してより広範にわたるというのが相当であり、管理権者の広範な裁量の下で、その許可処分によって初めて例外的に使用が認められるにすぎないと解すべきである。

 教研集会においては高教組の当年度の運動方針を受けて、一定の指導方針と研究方針を提示し、学習指導要領や学校教育法施行規則、県教委の施策に対峙する討議を行うといった労働運動的側面を強く有しているといわざるを得ず、その目的は教育研究活動にとどまめものとは到底いえないから、学校施設を教研集会の開催のために使用することは、その設置目的に沿うとはいえない。

 学校長において、教研集会の開催のために使用させることは学校教育法上の支障があると判断したことが明白に合理性を欠くものと認められず、本件不許可処分に裁量権の逸脱、濫用の違法があるとうことができない。

(ク)呉市教委教研集会使用不許可事件 

 

呉市立中学校教研集会使用不許可事件 最三小判平18.2.7 民集602401頁、判時193663頁、判タ1213106[ii]は平成111113日(土)14日(日)広島県教組が広島県教研集会会場として学校施設の使用を申し出、校長が、職員会議を開いた上で支障がないと判断し口頭で了承されたが、その後呉市教委の指導があり、不当に使用を拒否されたとして損害賠償を求めた事案で、一審、二審とも県教組が勝訴、最高裁は前年まで一回を除き会場として使用されていたこと、右翼団体の妨害もなかったとして、不許可処分が裁量権の逸脱したものであるとして上告を棄却したものである。

本判決は、最高裁として初めて、学校施設の目的外使用の諾否の判断の性質、司法審査のありかたを明らかにしたもので、あくまでも原審確定事実の判断ではあるが、類似事件の参考となる判例といえる。

 

(註)判決文では行政財産の目的外使用について、238条4条4項による許可が必要としているが、平成18年の地方自治法改正で、この条文は238条の4第7項となっている。

 

 判決

「‥‥‥ (1) 地方公共団体の設置する公立学校は、地方自治法244条にいう「公の施設」として設けられるものであるが、これを構成する物的要素としての学校施設は同法238条4項にいう行政財産である。したがって、公立学校施設をその設置目的である学校教育の目的に使用する場合には、同法244条の規律に服することになるが、これを設置目的外に使用するためには、同法238条の4第4項に基づく許可が必要である。教育財産は教育委員会が管理するとされているため(地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条2号)、上記の許可は本来教育委員会が行うこととなる。

 学校施設の確保に関する政令(昭和24年政令第34号。以下「学校施設令」という。)3条は、法律又は法律に基づく命令の規定に基づいて使用する場合及び管理者又は学校の長の同意を得て使用する場合を例外として、学校施設は、学校が学校教育の目的に使用する場合を除き、使用してはならないとし(1項)、上記の同意を与えるには、他の法令の規定に従わなければならないとしている(2項)。同意を与えるための「他の法令の規定」として、上記の地方自治法238条の4第4項は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができると定めており、その趣旨を学校施設の場合に敷えんした学校教育法85条は、学校教育上支障のない限り、学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができると規定している。本件使用規則も、これらの法令の規定を受けて、市教委において使用許可の方法、基準等を定めたものである。

 (2) 地方自治法238条の4第4項、学校教育法85条の上記文言に加えて、学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている(学校施設令1条、3条)ことからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。学校教育上の支障とは、物理的支障に限らず、教育的配慮の観点から、児童、生徒に対し精神的悪影響を与え、学校の教育方針にもとることとなる場合も含まれ、現在の具体的な支障だけでなく、将来における教育上の支障が生ずるおそれが明白に認められる場合も含まれる。また、管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時、場所、目的及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である。

 (3) 教職員の職員団体は、教職員を構成員とするとはいえ、その勤務条件の維持改善を図ることを目的とするものであって、学校における教育活動を直接目的とするものではないから、職員団体にとって使用の必要性が大きいからといって、管理者において職員団体の活動のためにする学校施設の使用を受忍し、許容しなければならない義務を負うものではないし、使用を許さないことが学校施設につき管理者が有する裁量権の逸脱又は濫用であると認められるような場合を除いては、その使用不許可が違法となるものでもない。また、従前、同一目的での使用許可申請を物理的支障のない限り許可してきたという運用があったとしても、そのことから直ちに、従前と異なる取扱いをすることが裁量権の濫用となるものではない。もっとも、従前の許可の運用は、使用目的の相当性やこれと異なる取扱いの動機の不当性を推認させることがあったり、比例原則ないし平等原則の観点から、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となったりすることは否定できない。

 (4) 以上の見地に立って本件を検討するに、原審の適法に確定した前記事実関係等の下において、以下の点を指摘することができる。

 ア 教育研究集会は、被上告人の労働運動としての側面も強く有するものの、その教育研究活動の一環として、教育現場において日々生起する教育実践上の問題点について、各教師ないし学校単位の研究や取組みの成果が発表、討議の上、集約される一方で、その結果が、教育現場に還元される場ともなっているというのであって、教員らによる自主的研修としての側面をも有しているところ、その側面に関する限りは、自主的で自律的な研修を奨励する教育公務員特例法19条、20条の趣旨にかなうものというべきである。被上告人が本件集会前の第48次教育研究集会まで1回を除いてすべて学校施設を会場として使用してきており、広島県においては本件集会を除いて学校施設の使用が許可されなかったことがなかったのも、教育研究集会の上記のような側面に着目した結果とみることができる。このことを理由として、本件集会を使用目的とする申請を拒否するには正当な理由の存在を上告人において立証しなければならないとする原審の説示部分は法令の解釈を誤ったものであり是認することができないものの、使用目的が相当なものであることが認められるなど、被上告人の教育研究集会のための学校施設使用許可に関する上記経緯が前記(3)で述べたような趣旨で大きな考慮要素となることは否定できない。

 イ 過去、教育研究集会の会場とされた学校に右翼団体の街宣車が来て街宣活動を行ったことがあったというのであるから、抽象的には街宣活動のおそれはあったといわざるを得ず、学校施設の使用を許可した場合、その学校施設周辺で騒じょう状態が生じたり、学校教育施設としてふさわしくない混乱が生じたりする具体的なおそれが認められるときには、それを考慮して不許可とすることも学校施設管理者の裁量判断としてあり得るところである。しかしながら、本件不許可処分の時点で、本件集会について具体的な妨害の動きがあったことは認められず(なお、記録によれば、本件集会については、実際には右翼団体等による妨害行動は行われなかったことがうかがわれる。)、本件集会の予定された日は、休校日である土曜日と日曜日であり、生徒の登校は予定されていなかったことからすると、仮に妨害行動がされても、生徒に対する影響は間接的なものにとどまる可能性が高かったということができる。

 ウ 被上告人の教育研究集会の要綱などの刊行物に学習指導要領や文部省の是正指導に対して批判的な内容の記載が存在することは認められるが、いずれも抽象的な表現にとどまり、本件集会において具体的にどのような討議がされるかは不明であるし、また、それらが本件集会において自主的研修の側面を排除し、又はこれを大きくしのぐほどに中心的な討議対象となるものとまでは認められないのであって、本件集会をもって人事院規則14-7所定の政治的行為に当たるものということはできず、また、これまでの教育研究集会の経緯からしても、上記の点から、本件集会を学校施設で開催することにより教育上の悪影響が生ずるとする評価を合理的なものということはできない。

 エ 教育研究集会の中でも学校教科項目の研究討議を行う分科会の場として、実験台、作業台等の教育設備や実験器具、体育用具等、多くの教科に関する教育用具及び備品が備わっている学校施設を利用することの必要性が高いことは明らかであり、学校施設を利用する場合と他の公共施設を利用する場合とで、本件集会の分科会活動にとっての利便性に大きな差違があることは否定できない。

 オ 本件不許可処分は、校長が、職員会議を開いた上、支障がないとして、いったんは口頭で使用を許可する意思を表示した後に、上記のとおり、右翼団体による妨害行動のおそれが具体的なものではなかったにもかかわらず、市教委が、過去の右翼団体の妨害行動を例に挙げて使用させない方向に指導し、自らも不許可処分をするに至ったというものであり、しかも、その処分は、県教委等の教育委員会と被上告人との緊張関係と対立の激化を背景として行われたものであった。

 (5) 上記の諸点その他の前記事実関係等を考慮すると、本件中学校及びその周辺の学校や地域に混乱を招き、児童生徒に教育上悪影響を与え、学校教育に支障を来すことが予想されるとの理由で行われた本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。そうすると、原審の採る立証責任論等は是認することができないものの、本件不許可処分が裁量権を逸脱したものであるとした原審の判断は、結論において是認することができる。‥‥」

この事件は一審、二審とも組合側が勝訴したが、下級審と最高裁では理論構成に差異がある。[iii]原審では、市教委に積極的に研修の場として学校施設を確保すべき配慮義務があるとし、許可しない場合の正当理由と存在の立証を求めている。

つまり一審判決は「学校施設の使用の許否の判断は、管理権限者の広い裁量に委ねられているものであるが、 管理権限者の裁量権の行使にあたって恣意が許されないのはいうまでもなく、使用目的が学校施設の設置目的に沿っているのに、特に理由もなく使用を拒否したとか、使用目的が設置目的に沿うものでなくとも、不当な理由により拒否するなど、管理権限者の判断において、裁量権の逸脱・濫用にあたる事情があれば、違法というべきであり、その判断は、学校施設の使用目的、代替施設の確保の困難性、施設管理上、学校教育上

の支障などの諸事情を基礎として総合的に判断されるべきものである」としたうえで、

本件を、目的外使用の問題ではなく、設置目的に沿った使用の問題と捉えているような行論を展開し、結論として、「本件教研集会は、原告の労働運動という一面も併せ持ってはいるものの、主として、教員などによる教育研究活動の報告、検討会としての性格を有し、学校施設の設置目的に沿うものとして取り扱わなければならないこと、また、代替施設の提供は一応はなされているものの、学校教科項目の研究討議は、器具、設備との関係で、教室等

の学校施設で行われることが必要不可欠であって、他の施設では、研究討議に不便を来し、研究討議が十分になされないおそれがあり、他の施設の提供では十分とはいえないこと、そして、さらに、前記認定判断のとおり、施設管理上、学校教育上の支障など、その使用を拒否するにつき、正当な理由が何ら認められないことなどの事情を総合勘案すると、原告の他の主張の当否を検討するまでもなく、本件不許可処分は、呉教委において、その裁量権を逸脱した違法な処分であるといわざるを得ない」とするのである。

 

最高裁は原審の考え方について法令解釈を誤っているとし、理論構成を修正したうえで、本件は目的外使用不許可の裁量権の逸脱があったという結論については原審の判断を支持した。

最高裁判決では、学校施設の目的外使用は本来、限定的なものであって、これを許可するかどうかは原則として管理者の裁量に委ねられているとし、その場合の裁量権の濫用と目される司法審査の判断指針として「その判断要素の選択や判断過程」にまで立入った「合理的」判断を求める一方で、その判断が 「重要な事実の基礎を欠くか,または社会通念に照らし著しく妥当性を欠く」場合にのみ濫用となるものとして、裁量権の幅を広く解している。

(ケ)都立王子養護学校「ものづくり教研」使用事件

都立王子養護学校事件東京地判平18.6.23判タ1239169頁の事案は次のとおりである。平成17年2月上旬東京都障害児学校労働組合(都障労組)のS分会長(教諭)は、口頭で王子養護学校のK校長に、「第15回ものづくり教研」と称する集会の開催場所として学校施設の使用許可を求めた。その際、校長は集会の内容が不明であるとして資料の提出を求めたため、S教諭は、前年の案内書面を提出した。案内書面は次のように記載されていた。

表題 『ものづくり教研』のご案内-手打ちそばをつくって食べ、『学校と人権』を考える-

『特別支援教育』で『障害児』教育が、いえ、学校そのものが大きく変えられようとしています。『教育ニーズ』によって子どもたちによって生活の場でなくなる、と危惧するのは私たちの考えすぎでしょうか(中略)一方、今の日本はイラクへの自衛隊派遣を強行するなど、憲法を踏みにじり戦時体制に向けてつき進んでいます。その憲法と表裏一体の関係にある教育基本法が既に踏み荒されている荒々されていると言っても過言ではない状況が東京都では相次でます。今の状況をどう考えるのか‥‥午後の部では、学校における子どもと教職員の人権問題に長年取り組んでこられた弁護士のWさんをお招きして『学校と人権』をテーマに講演会と学習会を行います」

K校長は平成1729日口頭でS教諭に対し、案内文を判断資料とすると、学校施設の使用を許可できない旨回答したが、S教諭が理由ア文書にして示すよう求めたので、14日「‥‥貴都障労組は案内のとおり、国及び都の方針に反対の意思を表明しています。都立学校の校長として、都の管理する施設の使用を認めるのは適切でないと考えます。‥‥」との文書を交付した。

その後原告都障労組は、3月10日「組合主催学校教育連休の会場拒否についての解明要求書」を校長に提出する等の経緯があり、5月の協議の場でも校長は許可することはできない旨説明したので、組合は、本件不許可処分が裁量権の逸脱濫用であるとして100万円の損害賠償を求めたものである。

東京地裁は、先例の呉市立中学校教研集会使用不許可事件最三小判平18.2.7民集602401頁の司法判断基準を踏襲して、本件不許可処分が裁量権を逸脱したものとして11万円の限度で都の損害賠償責任を認めた。控訴審東京高裁平19.1.31判タ1239号169頁も控訴棄却している。

(判決の主要部分)

「ところで、学校施設の確保に関する政令(昭和24年政令第34号。以下「学校施設令」という。)1条,31項,2項,地方自治法238条の44項、学校教育法85条等の各法令の諸規定によれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量に委ねられているものと解するのが相当である。そして,管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時,場所,目的,態様,使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断基準の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となると解するのが相当である。(中略)前記認定によれば、養護学校等においては、児童及び生徒らが、物作りの実践を通じ,自発的に考え主体的に生活を作り出すこと、地域の人と触れ合うこと、働く意欲や働く力を培うこと等を目的として、物作りを実践する授業が教育課程に取り入れられ、ものづくり教研は、養護学校等の児童、生徒、保護者及び教職員らが共同で物作りを実践し、養護学校等における授業の作り方や教材の工夫等を議論、検討する集会であって、活動内容において養護学校等の教育目的に合致する上、參加した教職員らが、実際に、それぞれの勤務先において、集会での体験を授業内容に取り入れているという意味において,養護学校等の授業を準備するための教員らの自主的研修としての意義ももつ集会であるといえる。これまで開催されてきたものづくり教研が、いずれも管理規則157号に当たるものとして使用を許可されてきたという事情は、ものづくり教研のこのような教育的意義が重視された結果にほかならないと考えられる。そして,実際にも,ものづくり教研の開催によって、これまで混乱を招いたことはなく、特に、児童又は生徒等に教育上悪影響を与え、学校教育の運営に支障が生じることもなかった。

ものづくり教研は、他方で、教員の人事考課に関する講演会等労働組合活動としての側面を有する活動もしているが、教員らによる自主的研修という側面についてみる限り、自主的で自律的な研修を奨励する教育公務員特例法19条、20条の趣旨にかなう集会であるということができる。そして、物作りのためには,各種調理器具,特殊機器,作業台,強力なガス器具等の備品が具備されている学校施設を使用する必要性は高いため、これまでも、ものづくり教研は、養護学校の施設を利用して実施され、ハム、ソーセージ作りと藍染めを予定していた本件集会についても、学校施設を使用する必要性は同様に高かったといえる。

しかしながら、前記認定によれば、K校長がした本件不許可の回答の主たる理由は、原告が、国及び被告の方針に反対の意思を表明していること、本件文章類似の文章を掲載した書面等が案内書面として配布されることで、児童・生徒及び保護者らに、国及び被告の方針に関する誤解を生じさせ、よって教 育上の悪影響を与えるおそれや、学校側が国及び被告の方針に反対する_体に助力しているとの誤解や混乱等を生じさせるおそれがあるので、これらの弊害を回避する必要があるということにあり、本件文書取扱基準を作成した経緯に照らし配布物の記載内容を重要な判断資料として考慮したものと窺われる。確かに、平成1611月に被告が策定した「東京都特別支援教育推進計画」の内容が、障害の重度重複化や多様化、養護学校や心身障害学級の在籍者の増加という現状にかんがみ、障害の種類、程度に応じ、特別な場で指導を行う「特殊教育」から転換し、障害のある児童生徒11人の教育ニ一ズに応じ、教育機関と保健、医療、福祉、労働等他の分野と積極的な連携を図るなどして、適切な教育支援を行うことを基本的方針とするというものであったから、本件文章は、上記の被告の方針に反対する意思を表明するものであるとはいえる。とはいえ、本件文章は、上記被告の方針を殊更にねじ曲げて伝達したり誤解を生じさせるような批判を展開するものではなく、保護者等がその内容を誤解するおそれがあるということはできない。また、本件案内書面には「2 • 28都障労組『ものづくり教研』のご案内、「問い合わせ先、都障労組」などの記載がされており、主催者が王子養護学校とは異なる団体であるが記載上も明らかであるから、本件集会の開催にあたり、本件案内書面類似の書面が配布されたとしても、保護者等に、被告の方針に反対する団体に学校側が助力しているとの誤解を生じさせるおそれがあるともいえない。このことは、平成15年度のものづくり教研開催に当たり、本件案内書面が配布されたものの、特に弊害が生じたり、混乱が惹起された等の形跡がないことに照らしても明らかである。したがって、仮に本件案内書面類似の書面が配布されたとしても、被告が主張するような弊害等が生じるおそれがあったものとは認められない。

以上によれば、本件不許可の回答は、原告が国や被告の方針に対して反対意思を表明している点や本件案内書面類似の書面の配布により混乱が生じるおそれがあることのみを理由としてされたものであり、重視すべきでない考慮要素を重視している上、 考慮した事項に対する評価が合理性を欠いている。一方K校長は、養護学校教諭の経歴を持ち、養護学校教頭、養護学校校長を歴任し、前任校においては、教育研究会のために学校施設の使用許可をした経験も有し、教育研究会においては、主に障害児教育に関する情報交換や研究報告を、教育的意義 を有することも承知しており、本件集会も、従前の活動同様、教育現場へ還元がされる物作りを実施、研究することを予定していることや物作りのためには作業台等の備品が備わっている学校施設を使用する必要性が高いことを容易に推測できたにもかかわらず、あえて本件集会の内容、ねらいや意義等の説明を求めることもなく、それらを全く考慮の外に置き、その結果、社会通念に照らし、著しく妥当性を欠いた判断に基づきなされたものというべきであり、K校長の有する裁量権を逸脱してなされた違法なものというほかない。」

(コ)大阪市立人権文化センター事件

 

大阪市立人権センター事件大阪地判平20.3.27判タ1300177頁は、平成12年の人権文化センター開設以来、原告部落解放同盟大阪府連合会生江支部、同住吉支部、同平野支部部落解放同盟西成支部は、大阪市長(磯村隆文市長)の行政財産目的外使用許可により大阪市立生江人権文化センター、同住吉人権文化センター、同平野人権文化センター、同西成人権文化センター内に支部事務所を設置し、平成19年3月31日まで目的外使用許可の更新(継続)がされていたが、大阪市(関淳一市長)は、各人権文化センターの平成19年4月1日以降の行政財産使用許可申請を不許可処分とした。

本件各不許可処分の理由は、「人権文化センターにおける貴支部事務所による行政財産の使用については、平成124月に人権文化センター条例が施行された後、その前身である解放会館当時から使用されてきたという歴史的経緯に鑑み平成1210月より暫定的に目的外使用許可を行ってきた。しかしながら、人権文化センター条例施行後7年近くが 経過しており、平成17年度定期監査等結果報告において本市監査委員からは『広く一般の利用に供する市民利用施設という性質に鑑み、使用許可の見直しについて早急に検討されたい』との意見、また、昨年8月、『大阪市地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会 の提言において『外部への移転』との方向が示された。こうした意見を踏まえ、広く一般の利用に供する市民利用施設という性格に鑑み、特定の団体事務所に対する使用許可について 見直すこととし,平成19年度は行政財産の目的外使用許可は行わないというものであった。

これに対し原告が不許可処分は違法無効であるとして取消請求を行ったものであるが、大阪地裁は裁量権の逸脱濫用はないとして、請求を棄却した。

(*なお、大阪市内に12地区13施設あった人権文化センターの機能は、近年、地域老人福祉センター、青少年会館等地域施設と統廃合がなされ市民交流センターという名称の施設になっているようである)

行政財産の目的外使用の司法判断については、先例の呉市立中学校教研集会使用不許可事件最三小判平18.2.7民集602401頁を引用し「普通地方公共団体の長には‥‥広い裁量があるというべきであり、目的外使用の不許可処分が違法となるのは、普通地方公共団体の長がかかる裁量権を逸脱濫用した場合に限られ、裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が重 要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として違法となると解すべきである」としたうえで、

「同和政策が特別対策から一般施策として行われるようになり,それとともに人権文化センターの位置付けも広く一般市民が利用することを予定した施設になったことからすれば,その一室である本件各事務室部分を部落差別から部落民衆を解放することを目的として活動する特定の運動団体である原告ら(‥‥)の 支部事務所として利用させることは、現在の同和政策のあり方と矛盾するだけでなく、広く一般市民の利用を予定する本件各センターの目的ないしそのあり方に反する‥‥平成17年度定期監査等結果報告及び大阪市地対財特法期限後の事業等の調査 監理委員会の提言も上記と同じ趣旨であるから、処分庁が上記監査等結果報告及び提言を本件各不許可処分における考慮要素としたことは合理的なものというべきである。」等として不許可処分に合理性を欠くところはないとしている。

 

旧解放会館の時から、長年にわたって、支部事務所として使用されていた経緯についても、「そもそも行政財産は、行政目的達成のために利用されるべき財産であることからすれば、従前の歴史的経緯として、その使用が認められていたことから、直ちにそれと異なる扱いをすることが裁量権の濫用となるものではない。むしろ,行政財産である本件各センターの一部を長年にわたり、 特定の運動団体である原告らの支部事務所として、目的外使用許可という手続すら採ることなく、平成12年まで使用させていたというその歴史的経緯自体、少なくとも法的観点からは、正当化することはできない」と言い切っており、処分庁に幅広い裁量権を是認した判例といえるだろう。

‥‥

1本件各不許可処分が本件各合意に反して違法であるという主張について

原告らは、行政庁が私人とある行政行為をする合意をしたときには、その裁量権が付与さ れた趣旨に反しない限り,当該合意に法的拘束力が認められるという確約の法理が解釈上認められることを前提とした上で、本件各合意に反する本件各不許可処分は違法であると主張する。

しかし、地方自治法(平成18年法律第5 3号による改正前のもの。)2 3 8条の41 項は、行政財産は、同条2項に定めるものを除くほか、これを貸し付けたり、これに私権を 設定することはできないとし、同条3項は、これに違反する行為を無効としている。したが つて.仮に被告が、大阪府連及び原告らとの間で、平成12年ころ、行政財産である本件各事務室部分を原告らに継続的に貸し付けることを内容とする本件各合意をしたとしても、それは上記条項に違反する無効なものであり、確約の法理を適用する前提を欠くというべきである。

これに対し、原告らは、社会福祉法2311号において、第二種社会福祉事業として 隣保事業(隣保館等の施設を設け,無料又は低額な料金でこれを利用させることその他その 近隣地域における住民の生活の改善及び向上を図るための各種の事業を行う)の実施が定められていることから、原告らは、近隣地域住民の代表として隣保館である本件各センターに ついて私権の設定が認められると主張する。しかし、上記規定は、第二種社会福祉事業に含まれる隣保事業の定義を定めたものにすぎない上、同号にいう隣保館等の施設の利用は、近隣住民による公の施設としての隣保館等の利用を規定したものであり、同施設に対する私権の設定を想定したものとはいえず、行政財産に対して私権の設定を禁じた地方自治法(平成 18年法律第5 3号による改正前のもの。)2 3 8条の41項の規定を排除する趣旨を含むと解することはできない。原告らの上記主張は失当である。(中略)

2本件各不許可処分における裁量権の逸脱濫用の有無について

(1)地方自治法2 4 4条の規律に服するか否かについて

原告らは、裁量権の逸脱濫用を主張する前提として、本件各事務室部分の使用関係は、地方自治法2 4 4条の規律に服すると主張するので検討する。

ア 同法2 4 42項は,「公の施設」について、普通地方公共団体が正当な理由のない限り、住民の利用を拒んではならないと規定するが、これは、住民がその所属する普通地方公共団体の提供する役務をひとしく受ける権利を有すること(同法102項)に鑑み、行政財産のうち、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供された公の施設について、 住民の自由な利用を保障した点にあると解される。

この趣旨に照らせば.同法2 4 42項の規律に服するのは、住民の利用に供するための施設を、その設置目的に基づいて使用する場合に限られ、それ以外の場合には、同法2 3 8 条の47項の目的外使用許可の問題として処理するのが相当である。そして、公の施設の設置及び管理権限は普通地方公共団体の長にあり(同法1497号)、公の施設に関する事項は、原則として条例で定めるとされている(同法2 4 4条の21項)ことからすれば,当該施設が住民の利用に供されるためのものか否かは、当該施設に関する条例の規定や当該施設の使用管理の実情などを考慮して判断すべきであり、この判断は、当該施設のある建物(本件では、本件各センター)全体についてではなく、当該施設(本件では,本件各 事務室部分)ごとに行うべきである。

イ そこで、このような観点から、本件各事務室部分が住民の利用に供するためのもので あるか否かを検討する。

(ア)証拠(‥‥)及び前提事実によれば、以下の事実が認められる。

A 本件各センターの設置及び管理に関する事項に関して、人権文化センター条例が制定されている。同条例において、本件各センターは、地域住民の自立支援及び自主的活動の促 進に関する事業、人権啓発及び人権に係る調査研究に関する事業、市民交流の促進に関する事業及びその他市長が必要と認める事業を行うこと(同条例3条)、本件各センタ一の供用 時間は、午前915分から午後915分まで、本件各センターのうち、ホール、講堂、集会室.研修室.会議室などの各施設部分(以下「本件各施設部分」という。)の供用時間は,午前93 0分から午後90 0までであり、本件各施設部分を使用しようとする者は,指定管理者の許可を受けなければならないこと(同条例51項,6条)。本件各施設、部分を使用するためには、使用料(例えば,研修室は,117 6 0 0円の範囲で市長が定める額)を前納しなければならないこと(同条例10条)が定められている。

B 被告市民局のホームページには、本件各センタ一の貸室として、ホール、集会室、会議室、学習室などが、一日当たりの使用料とともに記載されている。

C 本件各センターには、本件各事務室部分を含む事務室が複数あるが、そのいずれも、上記条例における本件各施設部分やホームページにおける貸室に含まれていない。

D 被告は、本件各事務室部分について、1年単位の目的外使用許可という上記条例に規定されていない形式で、原告らに継続的に使用させてきた。

(イ) 人権文化センター条例の上記各規定や本件各事務室部分の使用・管理方法等に照らせば、本件各事務室部分を住民の利用に供するための施設であると認めることはできず、原告らの本件各事務室部分の使用関係について、地方自治法2 4 4条の規律に服するものということはできない。

これに反する原告らの主張は、理由がない。

(2)行政財産について目的外使用許可をするに当たっての裁量権について

ア 地方自治法2 3 8条の41項は、行政財産は、原則として、これを貸し付け、交換 し、売り払い、譲与し,出資の目的とし、若しくは信託し又はこれに私権を設定することができないとし、同条6項は、これに違反する行為を無効とする。その一方、同条7項は、行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができるとし、行政財産の目的外使用許可の制度を定めている。

目的外使用許可の制度が定められた趣旨は、行政財産が、本来、公益を増進するという行政目的を達成するために用いられるべきものであることから、その使用による行政目的の達成を確保するとともに、他方で、行政財産によっては、本来の用途又は目的外に使用させても、その用途又は目的を妨げないばかりか、場合によっては、行政財産自体の効用を高めることもあることから、当該目的以外の使用に供しても本来の使用目的が阻害されない例外的な場合に、当該行政財産の効率的な利用を可能にしようとした点にあると解される。

このような目的外使用許可の制度が定められた趣旨に加えて、行政財産が、本来、行政目的達成のために使用されるものであり、地方自治法も目的外使用許可について具体的な要件を定めることなく「その使用を許可することができる。」(同法2 3 8条の47項)とし、同条9項は、行政財産の目的外使用許可をした場合において、公用若しくは公共用に供 するため必要を生じたときは、これを取り消すことができるとしていることからすれば、普通地方公共団体の長は、当該行政財産につき目的外使用許可の申請があったとしても、これを許可すべき義務を負うものではなく、当該行政財産の性質、これにより達成しようとする行政目的の内容、公用又は公共用に供する必要の生ずる見込み、当該許可をした場合に予想される支障の程度及び当該許可の相手方が享受する利益の性質など諸般の事情を総合的に考慮してその可否を判断することが予定されていると解すべきである。

そして,これを判断するに当たり、普通地方公共団体の長には要件及び効果の双方において広い裁量があるというべきであり、目的外使用の不許可処分が違法となるのは、普通地方公共団体の長がかかる裁量権を逸脱濫用した場合に限られ、裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が重 要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として違法となると解すべきである。

イ 原告らは、本件各事務室部分を原告らの支部事務所として利用することが本件各センターの設置目的に適合していることから、本件各不許可処分の処分庁の裁量は地方自治法 2442項の規定に準じて収縮され,正当な理由のない限り行政財産の使用の不許可処分をすることはできないと主張する。

しかし、前記のとおり、同条項の趣旨は,住民の利用が予定された施設について、住民の自由な利用を保障した点にあると解されるのであり、このような施設ではない本件各事務室部分の利用には妥当しない(もっとも,当該行政財産の利用が当該財産の設置目的に適合していることは、当該裁量権の逸脱濫用の評価根拠事実の1つにはなり得る。)。

したがって.原告らの前記主張は採用できない。

(中略)

‥‥、本件各不許可処分について、処分庁の裁量権の逸脱濫用があるか否かについて検討する。

()本件各センタ一の設置目的は、基本的人権尊重の精神に基づき、歴史的社会的理 由により生活環境等の安定向上を図る必要がある地域の住民の福祉の向上並びに市民に対する人権啓発の推進及び市民交流の促進を図り.もってすベての人の人権が尊重される社会の実現に寄与することを目的とし(人権文化センター条例2条)、その事業は,地域住民の自立支援及び自主的活動の促進に関すること、人権啓発及び人権に係る調査研究に関すること,市民交流の促進に関すること等を行うものとされている(同条例3条)。そして,原告 らは,部落差別から部落民衆を解放すること等を目的とする団体であり(‥‥、地域住民に対する相談活動.地域住民の福祉向上のための活動、部落差別や外国人差別などについての人権啓発活動等を行っていること(‥‥)からすれば、原告らの活動は、本件各センターの設置目的及び事業に沿うものといえる。

しかし、同和政策は、昭和4 4年に10年間の時限法(後に3年間延長)として同対法、 昭和5 7年に5年間の時限法として地対法、昭和6 2年に5年間の時限法として地対財特法(平成4年と平成9年にそれぞれ5年間延長)という特別法が制定された上で、特別対策と して物的な生活環境の改善を図るべく行われてきたこと(‥‥)平成85月には、国において、同和地区、同和関係者に対象を限定した特別対策の結果、その目的は概ね達成され、一般施策の中で同和問題の解決が図られるべきであるとされたこと(‥‥)平成9年に地対財特法が5年間延長されたのは、従来の特別対策から一般政策への移 行を円滑に行うことを目的としており、指定の事業以外は,一般対策で行うことが基本方針 とされたこと(‥‥)平成91月には,大阪市同和対策推進協議会においても、 今後の同和政策は、一般施策を有効、適切に活用することを基本方針とし、特別措置については、廃止あるいは統合し、一般施策に移行することを基本として進めるべきであるされたこと(‥‥)平成1310月には,同協議会において、平成143月末の地対 財特法の失効後は、同和地区及び同和地区住民に限定した特別措置としての同和対策事業は廃止すべきであり、残された課題については、一般施策での対応を検討すべきであるとされ たこと(‥‥)地対財特法は,平成14331曰に失効したことなどからすれば、現在における同和政策については、同和地区ないし同和地区住民に対する特別政策という形ではなく、広く一般市民を対象とする一般施策の一環として対応することが地対財特法等の予定するところといえる。

そして、人権文化センタ一ないし解放会館の位置付けについて、昭和4 0年ころから昭和 5 0年ころまでは、解放会館は.同和問題の根本解決のための拠点であり、地区における総合対策の場であり、地区を対象とした総合的社会福祉施設として位置付けられていたこと (‥‥)、平成元年ころから平成4年ころには,地区住民のための施設であると ともに地区周辺地域住民との交流とコミュニティ作りのための拠点として位置付けられるよ うになったこと(‥‥)平成9年ころから平成11年ころには、地区住民の拠点施設にとどまらず、周辺地域住民を対象とする人権啓発センターの機能と住民交流のコミュ ニティセンタ一としての機能を有する広く市民が利用する施設として位置付けられるように なったこと(‥‥)平成1241日には、解放会館から人権文化センターに名称が変更され、その設置目的事業内容について、解放会館の設置目的が同和地区住民の社会的、文化的、経済的生活の向上を図り、同和問題の速やかな解決に資することであり、 その事業内容も、同和問題の調査、研究や地区住民の各種講習、相談及び指導や地区住民の自主的組織活動の促進に関すること等とされていた(人権文化センター条例2条,3条)のに対して、人権文化センターの設置目的は,一定の地域の住民の福祉の向上だけでなく、市民に対する人権啓発の推進及び市民交流の促進を図り、もって人権尊重社会の実現に寄与することとされ、その事業内容も地域住民の自立支援等の促進だけでなく、人権啓発及び人権係る調査研究や市民交流の促進とされ(人権センター条例2.3条)、その設置目的事業内容も変更されたことなどからすれば、人権文化センターは、同和地区住民のための施設ではなく、一般施策を活用する自立支援センター、人権啓発住民交流の拠点として地区内外に開かれたコミュニティセンターというべきであり、広く市民が利用することを予定した設といえる。

以上のように,同和政策が特別対策から一般施策として行われるようになり,それとともに人権文化センターの位置付けも広く一般市民が利用することを予定した施設になったこと からすれば,その一室である本件各事務室部分を部落差別から部落民衆を解放することを目的として活動する特定の運動団体である原告ら(‥‥の 支部事務所として利用させることは、現在の同和政策のあり方と矛盾するだけでなく、広く一般市民の利用を予定する本件各センターの目的ないしそのあり方に反する。

そして、平成17年度定期監査等結果報告及び大阪市地対財特法期限後の事業等の調査 監理委員会の提言も上記と同じ趣旨であるから、処分庁が上記監査等結果報告及び提言を本件各不許可処分における考慮要素としたことは合理的なものというべきである。

(イ)原告らは、処分庁は、原告らに対して一度も退去要請やそれに向けた協議をしておらず、本件各センターの一部を支部事務所として使用してきた歴史的経緯や本件各合意があったことを考慮していないことから、本件各不許可処分は、考慮すべき事項を考慮していないと主張する。

しかし、被告と原告らの上部組織である大阪府連は、平成111019日、同年12 3日、平成1212 0日に解放会館の今後のあり方についての協議を行い、その際、 被告が持参した資料には、支部事務所については暫定的に目的外使用許可と記載されており、.の担当者は目的外使用許可について説明したこと(‥‥)、被告は、平成12316日から平成171011日までの大阪市財政総務委員会等において、一貫して、特定の運動団体である原告らの支部事務所が本件各センタ一にあることは好ましくなく、その見直しの協議を継続している趣旨の陳述をしており、大阪市財政総務委員会は、非公開ではあるものの,モニターを通じて別室で傍聴ができ,その議事録は3か月から5か月後に公開されていたこと(‥‥)、原告らと部落解放同盟日之出支部以外の大阪府連の各支部は、支部事務所を各人権文化センターから他に移し、同センターから退去していること(‥‥)からすれば、被告は、遅くとも平成17年ころまでには、大阪府連や原告らに対して.退去要 請及び退去に向けた継続的な協議を行っていたことが認められる。また、.そもそも行政財産は、行政目的達成のために利用されるべき財産であることからすれば、従前の歴史的経緯として、その使用が認められていたことから、直ちにそれと異なる扱いをすることが裁量権の濫用となるものではない。むしろ,行政財産である本件各センターの一部を長年にわたり、 特定の運動団体である原告らの支部事務所として、目的外使用許可という手続すら採ることなく、平成12年まで使用させていたというその歴史的経緯自体、少なくとも法的観点からは、正当化することはできない(なお、大阪市議会等において、遅くとも平成元年、平成4 年、平成9年に原告らが解放会館を無償で使用していることが問題となり,審議されている (‥‥)

加えて、前記のとおり、同和政策を特別対策としてするのではなく、一般施策として実施する基本方針が定められたこと(‥‥)、それに伴い、解放会館ないし本件各センターの位置付け、具体的な設置目的及び事業内容も変更されたこと (‥‥)からすれば、現時点において、従前の歴史的経緯を重視する必要性は低い (しかも、処分庁は,平成12101曰から平成19331曰まで目的外使用の許可を継続しており、これは上記同和政策や本件各センタ一の位置付け等が変更されたが、従前の歴史的経緯から直ちに退去できない原告らに対する猶予期間と解することができ、処分庁は、本件各不許可処分をするに至るまで、従前の歴史的経緯を十分に踏まえてもいたといえる。)

また、本件各合意については、仮に本件各合意がされていたとしても、それが違法で、無効であることは前記のとおりであるから、これを考慮しないことが処分庁の裁量権の逸脱濫用を基礎付けることにはならない。

したがって、原告らの前記主張は理由がない。

(ウ)原告らは、本件各不許可処分は.原告らが被告と共同して、エセ同和行為廃絶、人権啓発などの人権領域に関わる主要な団体や事業体に協調的に参画して具体的協議、会議、企画等の活動を行っていること、原告らの中には本件各センター以外にその事務所として利用できる場所が各地区内に存在しないものもいることを考慮しておらず、要考慮事項の考慮が不十分であるとも主張する。

しかし、原告らの活動が人権文化センターの目的に沿ったとしても、その支部事務所をそこに設置することまでその目的に沿うことにはならず、かえって、その目的に反することは前記のとおりである。したがって、原告らの上記活動を積極的に考慮したとしても本件各不許可処分が不合理であるとはいえず、原告らの前記の主張は理由がない。

また、前記のとおり、大阪府連の支部は、原告らと日之出支部を除き、支部事務所を各人権文化センターから他に移していることや本件各事務室部分の各面積(‥‥)に照らせば、原告らの支部事務所を設置する場所が各地区内に存在しないと認めることはできず、原告らの前記の主張も理由がない。

(エ)以上からすれば、処分庁が平成17年度定期監査等結果報告及び大阪市地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会の提言並びに本件各センターの性格を考慮して、本件各不許可処分をしたことについて、その判断が重要な事実の基礎を欠くとも、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くともいえず、処分庁において、裁量権の逸脱又は濫用があったと はいえない。」

(サ)目的外使用不許可を争点とする判例理論の要点

 以上、行政財産の目的外使用を争点とした7判例をみてきたが、要点だけいえば次のとおりである

 A 組合掲示板の使用関係は行政財産の目的外使用ではなく、一般的禁止の解除(事実上の使用許可)であって、私法上、公法上なんらの権利を設定するものではない

昭和郵便局掲示板撤去(全逓昭和瑞穂支部)事件最一小判昭57・10・7最一小判民集36巻10号2091頁行政財産たる掲示板の使用関係につき、国有財産法18条3項の目的外使用であることを否定し、庁舎管理権に基づく掲示物の使用許可によって事実上使用を許可されたものであることを明らかにしたうえ、その許可の性質は講学上の「許可」、すなわち一般的禁止の解除であって、これにより私法上のみならず公法上においてもなんら権利を設定、付与させるものではないと判示した。全国税東京足立分会事件最二小判 昭59.1.27労判425号もこの判断を踏襲している。

上記判例は、いずれも郵政省の庁舎管理規程等の法的性格について判断したものであり、公労法適用国営企業や税務署の事案であるが、この判例法理は、地方自治体や地方公営企業の庁舎管理規程についても別異に解釈する理由はないように思われる。

B 「ストライキ宣言」の掲示は、違法な行為をそそのかし、又はあおる内容のものとして撤去理由となる。

全国税東京足立分会事件最二小判 昭59.1.27労判425号の判示であるが、この論理が地方公営企業にも適用できるかについて検討すると、地方公営企業の争議行為を禁止する地公労法171項が合憲であることは北九州市交通局事件昭和63.12.8最高裁一小判 民集42-10-739頁、判時1314号で明らかにされたことであり、地方公営企業において「闘争宣言」等が掲示板等に張り出されるケースにおいても、別異に解釈する理由はないと考える。

C「アメリカのベトナム侵略にスト抗議しよう!」といった、政治的目的を有する文書の掲示は、国家公務員法、人事院規則違反で撤去理由となる。

全国税東京足立分会事件最二小判 昭59.1.27労判425号の判示であるが、政治的行為の規制については教育公務員を除いて地方公務員と国家公務員とは法制度が異なるのみならず、地方公営企業の場合は、地方公営企業法三九条が、企業職員(政令で定める基準に従い地方公共団体の長が定める職にある者を除く。)については、地方公務員法第三十六条(政治行為の制限)の規定は適用しないとしていることから、この点は私企業と大差ないといえるのである。従って、直接この判例法理を適用できないが、局所内での政治的行為の禁止、制限について就業規則や労働協約で明示されていれば、政治目的の掲示物の撤去という庁舎管理権の発動が可能と考える。

D 呉市立学校教研集会使用不許可事件最高裁判決の示した判断基準について

呉市立中学校教研集会使用不許可事件 最三小判平18.2.7 民集602401頁、判時193663頁、判タ1213106頁 は平成111113日(土)14日(日)広島県教組が広島県教研集会会場として呉市立中学校の施設の使用を申し出、校長が、職員会議を開いた上で支障がないと判断し口頭で了承されたが、その後、呉市教委の指導があり、不当に使用を拒否されたとして損害賠償を求めた事案で、一審、二審とも県教組が勝訴、最高裁は前年まで一回を除き会場として使用されていたこと、右翼団体の妨害もなかったとして、不許可処分が裁量権の逸脱したものであるとして上告を棄却したものである。

本判決は、最高裁として初めて、学校施設の目的外使用の諾否の判断の性質、司法審査のありかたを明らかにしたもので、あくまでも原審確定事実の判断とはいえ、重要判例と認識している。

 

D-1 原審との理論構成の違い

 

 

 この事件は一審(広島地判平14.3.28民集602443号)、二審とも組合側が勝訴したが、原審と最高裁では理論構成に差異がある。 一審判決は、市教委に積極的に研修の場として学校施設を確保すべき配慮義務があるとし、許可しない場合の正当理由と存在の立証を求めている。

一審判決の論理構成は「学校施設の使用の許否の判断は、管理権限者の広い裁量に委ねられているものであるが、 管理権限者の裁量権の行使にあたって恣意が許されないのはいうまでもなく、使用目的が学校施設の設置目的に沿っているのに、特に理由もなく使用を拒否したとか、使用目的が設置目的に沿うものでなくとも、不当な理由により拒否するなど、管理権限者の判断において、裁量権の逸脱・濫用にあたる事情があれば、違法というべきであり、その判断は、学校施設の使用目的、代替施設の確保の困難性、施設管理上、学校教育上の支障などの諸事情を基礎として総合的に判断されるべきものである」とし、本件を、目的外使用の問題ではなく、設置目的に沿った使用の問題と捉えているような行論を展開し、[iv]結論として、「本件教研集会は、原告の労働運動という一面も併せ持ってはいるものの、主として、教員などによる教育研究活動の報告、検討会としての性格を有し、学校施設の設置目的に沿うものとして取り扱わなければならないこと、また、代替施設の提供は一応はなされているものの、学校教科項目の研究討議は、器具、設備との関係で、教室等の学校施設で行われることが必要不可欠であって、他の施設では、研究討議に不便を来し、研究討議が十分になされないおそれがあり、他の施設の提供では十分とはいえないこと、そして、さらに、前記認定判断のとおり、施設管理上、学校教育上の支障など、その使用を拒否するにつき、正当な理由が何ら認められないことなどの事情を総合勘案すると、原告の他の主張の当否を検討するまでもなく、本件不許可処分は、呉市教委において、その裁量権を逸脱した違法な処分であるといわざるを得ない」とするのである。

 

最高裁は原審の考え方について法令解釈を誤っているとし、理論構成を修正したうえで、本件は目的外使用不許可の裁量権の逸脱があったという結論については原審の判断を支持した。

最高裁判決では、学校施設の目的外使用は本来、限定的なものであって、これを許可するかどうかは原則として管理者の裁量に委ねられているとし、その場合の裁量権の濫用と目される司法審査の判断指針として「その判断要素の選択や判断過程」にまで立入った「合理的」判断を求める一方で、その判断が 「重要な事実の基礎を欠くか,または社会通念に照らし著しく妥当性を欠く」場合にのみ濫用となるものとして、裁量権の幅を広く解している。

D-2 この判決はやはり組合活動に甘い

下級審判例で公立学校の学校施設の利用許可申請拒否を適法とした例は少なくない。少なくとも以下に挙げる6判例だが、(1)を除く5判例は教職員組合主催集会等の不許可を適法としているのである。

(1) 広島県能美町立小学校施設使用不許可事件広島地判昭50.11.25

(2) 鹿児島県立大島高校等6カ所の学校施設目的外使用不許可事件(鹿高教組主催ミュージカル公演不許可)事件 鹿児島地判昭58.10.21訴務月報30巻4号685頁、

(3) 同控訴審福岡高裁宮崎支部判昭60.3.29判タ574

(4) 広島県高教組「人事委員会報告説明会」県立高校体育館使用拒否事件 広島地判平14.3.28(判例集未登載)

(5) 広島県高教組定期総会学校施設使用不許可事件 広島地判平17.2.9(掲載-裁判所ウェブサイト)

(6) 広島県高教組支部教研集会学校施設使用不許可事件 広島高判平18.1.25判時1937号 

呉市立学校事件最高裁判決は「職員団体にとって使用の必要性が大きいからといって、管理者において職員団体の活動のためにする学校施設の使用を受忍し、許容しなければならない義務を負うものではないし、使用を許さないことが学校施設につき管理者が有する裁量権の逸脱又は濫用であると認められるような場合を除いては、その使用不許可が違法となるものでもない。」と述べ、これはプロレイバー学説である受忍義務説を明確に否定した国労札幌地本ビラ貼り事件・最高裁昭和54年10・30第三小法廷判決民集33巻6号647頁『労働判例』329号と同趣旨と思えるが、最高裁は原審の判断と同様、教員の自主研修を教育公務員特例法19条、20条(平成15年改正で21条・22条)の趣旨にかなうものと評価し、組合活動としての側面があることを否定しないが、教研集会それ自体には好意的であることが、不許可処分を違法とする結論をもたらしたとみる。しかしこの最高裁判決の直前の広島県高教組支部教研集会学校施設使用不許可事件 広島高判平18.1.25判時1937号 が教研集会不許可を適法としており、教研集会不許可が必ず違法となるというものみなすのは早計に思える。

D-3 過大考慮・過小考慮定式による裁量権逸脱の判断についての批判

 

本件は最高裁が学校施設の目的外使用に許可に関して、学校施設の法的性質に鑑み、学校教育上支障がなくとも不許可にする管理者の裁量を認める一方、本件事実関係に過大考慮・過小考慮定式を当てはめることにより、裁量の逸脱濫用を導いたものである(仲野武志論文参照)。判決では「その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査」のあり方について「その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である。」という基準を示したが批判はある。

私がこの司法審査基準についてまず疑問に思うのは、企業秩序維持の観点から労働組合の経営内施設使用に関する指導判例である国労札幌地本ビラ貼り事件・最三小判昭54・10・30民集33巻6号647頁が「企業は‥‥‥職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもつて定め、又は具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができるもの、と解するのが相当である。」と判示し、これは企業施設の組合活動の正当性を「許諾」と「団体交渉等による合意」に基づく場合 に限定したものと解され、このこととは、オリエンタルモーター事件最二小判平7.9.8労判679号等でも踏襲され、判例は安定的に推移している。

国労札幌地本事件の判例法理は、一般の労働組合活動と施設管理権との関係であるから、公立学校施設と職員団体の関係に直接適用されるものではないが、国労札幌地本判決の法理では、本件のような施設管理権の濫用の有無について過大考慮・過小考慮定式は示されておらず、すでにのべたとおり、法益権衡論も排除していることから、それとの比較でこの学校施設は一般私企業以上に裁量権統制が強められたという心証はぬぐえないのである。

本件の過大考慮・過小考慮定式の判定方法を批判する評釈としては、新進気鋭の行政法学者仲野武志のものがある。[v]

判決は、教研集会の要項などに、学習指導要領について批判的な内容の記載は存在するが、いずれも、自主研修としての性質をしのぐほどに中心的な討議対象となるまでは認められないとしている。

しかしながら仲野氏いわく「本件集会は基調報告の他、教科をテーマとする分科会と教職員の人事、勤務条件及び研修制度をテーマとする分科会から構成されており、少なくとも後者の分科会には労働としての性格が純粋に現れていたと考えられるからである。そうすると、本件不許可処分のうち後者の分科会に限れば労働運動としての性格を自主的研修との性格と別個の対象事実と捉えた上、前者の性格を重視したとしても、それは適正な考慮であったといいうるように思われる。」と述べ、さらに「もうひとつの疑問は、本件集会の政治的性格についての過大考慮の判定方法にある。すなわち判旨は、犯罪構成要件(人事院規則14-7第6項の政治的行為)に該当しない限り、政治的性格は「使用目的の相当性」に関する考慮対象事項にならないとしているように解されるが、このような絞り込みの根拠は必ずしも明確ではない。使用が政治的行為に該当する場合はむしろ義務的に不許可処分をすべきである‥‥」とされているが、鋭い指摘のように思える。

D-4呉市立学校事件判決の影響力

この判決が示した司法審査基準は、その後の下級審判例でも踏襲されており、都立王子養護学校事件東京地判平18.6.23判タ1239169頁は、都障害児学校労働組合(都障労組)の教研集会の使用不許可処分が裁量権の逸脱であり違法としているほか、大阪市立人権センター事件大阪(地判平20.3.27判タ1300177頁が地域施設の事務室部分について、本判決とほぼ同様の司法審査基準「目的外使用の不許可処分が違法となるのは、普通地方公共団体の長がかかる裁量権を逸脱濫用した場合に限られ、裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として違法となると解すべきである。」)を適用して、平成19年(当時関淳一市長)、11カ所ある市立人権センター各施設のうち4カ所(現在は地域施設が統廃合され市民交流センターと名称を変更)における部落解放同盟大阪府連合会各支部事務所の目的外使用許可の更新不許可処分を適法と判断しており、学校施設以外でも影響を及ぼしている。

大阪市立人権センター事件大阪地裁判決は、使用不許可処分の判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くことはないと判断されており、すんなり適法とされた。呉私立学校判決の過大考慮の判定方法に問題があるとはいえ教研集会の判断以外に悪影響はいまのところない。

大阪市立人権センター事件大阪地裁判決が、学校施設以外の公用行政財産の目的外使用に、呉市立学校事件の判断基準を適用したので、同じく地方自治法244条の7第4項の行政財産の目的外使用が適用される地方公営企業についても。この判断基準を用いることは可能といえるだろう。


[i] 判例評釈 「季刊公企労研究」59号122~123頁1984年6月、新谷真人「季刊労働法132号168~170頁1984年7月 、「警備法令研究会・捜査研究」34巻3号89~96頁1985年3月

[ii]判例評釈

川神裕・最高裁判所判例解説~~民事篇<平成18年度>〔上〕〔1月~5月分〕206~239頁「法曹時報」59(11)284頁最高裁判所判例解

松澤幸太郎「月刊高校教育」39巻8号86~89頁2006年6月

岡田正則「法学セミナー」51巻10号116頁2006年10月

川神裕「ジュリスト」1333号109~111頁2007年4月15日

藤原ゆき「季刊教育法」152号74~79頁2007年3月

仲野武志・判例評論578(判例時報1956)177~180頁2007年4月1日

大江一平「関西大学大学院法学ジャーナル」80号395~418頁2007年4月

有田謙司「法律時報」79巻8号173~176頁2007年7月

渡辺暁彦「同志社法学」59巻1号271~297頁2007年5月

本多滝夫「平成18年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊1332〕」39~40頁2007年4月

黒原智宏「自治研究」84巻10号142~151頁2008年10月

吉澤邦和「行政関係判例解説<平成18年>」1~10頁2008年1月

山本隆司「月刊法学教室」359号104~119頁2010年8月

上村貞美・名城ロースクール・レビュー22号1~25頁2011年10月

安藤高行「近年の人権判例(6)」『九州国際大学法学論集』16巻3号2010年(ネット公開)

[iii] 労働判例916号の解説参照

[iv]安藤高行「近年の人権判例(6)」『九州国際大学論集』1632010年(ネット公開)

[v]仲野武志「公立学校施設の目的外使用の拒否の判断と管理者の裁量権」判時1956号177頁

2015/03/08

下書き)地方公営企業の職員の労働関係に適用できる法律、判例法理について(3)修正1

2)行政財産の目的外使用(国有財産法18条3項・地方自治法238条の4第7項)

 

 

 地方公共団体の公有財産は行政財産と普通財産に分類され(自治法238条の3)行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産という(自治法238条の4)。

 

 行政財産の目的外使用については、その用途又は目的を妨げない限度で、その使用を許可できる(自治法238条の4第7項)している。なお許可を受けてする行政財産の使用については、借地借家法は適用されない。

 なお、国有財産法18条3項にも類似の規定があり、「行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度において、その使用又は収益を許可することができる」としている。

 目的外使用の実例として地方自治法の解説書で例示されているのは、食堂、売店施設、理髪室等の厚生施設、記者クラブ等の広報施設、災害時の応急施設である。自動販売機の設置もそうである。

 「公用又は公共用に供し」と区別していることには意味がある。公用(財産)とは事務また事業を執行するため、直接使用しているために保有しているもので、庁舎、議事堂、研究所、公用車等という。

 

 公共用(財産)とは住民の一般利用に供されるために保有しているもので、道路、橋梁、公園、学校、病院等の敷地、建物をいう。公共用財産について、公共の利用に供するために人的サービスを伴い、上記の目的のために施設管理サービスを行っているものを「公の施設」という[i]

 

 なお、近年では大都市の土地の有効活用、市町村合併や学校統廃合による行政財産の空きスペースの活用の観点から、平成18年の地方自治法の改正(地方自治法238条の42項。それを受けて地方自治法施行指令169条の3)がなされ、庁舎等の床面積又は敷地のうち、当該普通地方公共団体の事務又は事業の遂行に関し現に使用され、又は使用されることが確実であると見込まれる部分以外の部分がある場合(要は余裕のある部分)には、これを貸し付けることができ、地上権、地益権を設定できることとなった。この場合、建物の貸し付けをすると借地借家法の適用を受けることになる。

 

ア 地方自治法と地方公営企業法の関係

 

 

 

 地方公営企業法では、「地方公営企業の用に供する資産」(地公企法97)には自治法に定める、行政財産と普通財産の両者が含まれるとしているが、地方公営企業法と地方自治法の関係はおよそ以下のとおりである。

 

 

 

○地方自治法の適用がある

 

 

 

 自治法238条(公有財産の範囲と分類)

 

 自治法238条の3(職員の行為の制限)

 

 自治法238条の4(行政財産の管理及び処分)

 

 自治法238条の5(普通財産の管理及び処分)

 

 自治法238条の6(旧慣による公有財産の使用)

 

 自治法238条の7第3項から6項まで(行政財産を使用する権利についての不服申立)など

 

 

 

○地方自治法の適用除外

 

 自治法96条1項5号から7号まで(契約の締結、財産の交換、出費等、重要な財産の取得又は処分について議会関与を排除)地公企法40条1項による。

 

 自治法237条2項 など。

 

 

 したがって、地方公営企業用資産のうち行政財産の目的外使用については、その用途又は目的を妨げない限度で、その使用を許可できるとしている地方自治法が適用される。

 

 なお、地方公営企業用資産のうち行政財産を目的外使用された場合に徴収する使用料については、条例で定めることを要せず、管理者限りで定められる(地公企法40条3項)。行政財産の目的外使用の許可およびその取消、使用料にかかる督促手数料等の決定についても管理者が定めるものである(行実昭和41.10)[ii]]

 

 

 

イ 公用財産と公の施設は違う

 

 なお自治法224条2項は正当な理由がない限り、住民が「公の施設」を利用することを拒んではならないとし、同条3項で住民が「公の施設」を理由することについて、不当な差別的取扱いをしてはならないと定めているが、庁舎は行政財産のうち公用財産であり、「公の施設」とは別の範疇である。水道局についていえば庁舎等は公用財産、配水本管は公共用財産あるいは公の施設と区別してよいと思う。

 

 

エ 庁舎管理規程における目的外使用規定の例

 

 

 例えば『郵政省庁舎管理規程』(昭40・11・20公達)「庁舎等における秩序維持等、犯罪の防止、業務の正常な遂行、清潔の保持及び災害の防止を図る」(一条)という目的のために必要な事項を定めたとし、「庁舎管理者は、庁舎等における秩序維持等に支障がないと認める場合に限り、庁舎等の一部をその目的外に使用することができる」(四条) とされ、国有財産法の趣旨に沿ったものとなっている。また厚生労働省が入居する霞ヶ関の『中央合同庁舎第5号館の管理に関する規則』では「第1条 この規則は、国有財産法(昭和23年法律第73)5条の2の規定に基づき財務大臣の指定した中央合同庁舎第5号館を厚生労働大臣が統一的に管理することを目的とし、「12条 管理官庁等は、原則として合同庁舎を所掌業務以外に使用させてはならない。2 管理官庁等は、やむを得ない事由によりその管理する合同庁舎の一部を目的外に使用させようとする場合は、あらかじめ「使用許可申請書」(別紙第4号様式)を提出させ、当該申請書を審査し、当該行為が所掌業務の遂行を妨げず、かつ、庁舎内の秩序維持及び安全保持に支障のないものに限り「使用許可書」(別紙第5号様式)を申請者に交付し、許可するものとする。この場合において、管理官庁等は、必要な条件を付し、又は指示することができる  としている。

 しかし、昭和郵便局掲示板撤去事件最一小昭和57・10・7判決民集36巻10号2091頁が、庁舎管理権には国有財産法183項の目的外使用許可の範疇に含まれず、使用権や利用権を取得しない事実上の許可とう範疇があることを明らかにしているように、庁舎管理権の運用は、国有財産法の目的外使用許可に限定されるものではない。

 とはいえ、禁止されるべき行為は大抵の場合「目的外使用」の範疇にくくられるから、庁舎管理規則の目的外使用=国有財産法および地方自治法の目的外使用でなくても、辻褄はあうものと考えてよいだろう。

 

 

 

 

オ 目的外使用の法律関係

 

 学説は、公法上の関係であるという説と(長野士郎・加藤富子)と、基本的には私法上の契約関係だが許可・取消など公法的要素があるとする(原龍之介)がある。以下、主要判例を検討する。

 

(ア)中央卸売市場事件

 

 中央卸売市場事件昭和49・2・5最高裁第三小法廷判決民集28巻1号1頁 判時736号41頁 判タ307号171頁[iii]は、都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使用許可が、当該行政財産本来の用途または目的上の必要に基づき将来に向かつて取消されたときは、使用権者はよって生じた損失の補償を求めうべきであるが、右取消による土地使用権の喪失に対する補償は、特別の事情のない限り求めることはできないと判示した。

 

最高裁判決は

「‥‥ 原判決は、()第一審判決添付別紙目録記載の土地合計一八〇〇坪‥‥上告人の所有であり、昭和六年六月一七日開設を認可された東京市(都)中央卸売市場築地本場の指定区域内にある行政財産である、()被上告人は、上告人から昭和二一年七月二七日および同年九月三日の二回にわたりいずれも始期を同年八月一日とし、使用期間の定めなく、使用目的をクラブ、レストラン、喫茶、料理およびこれに附随する事業を営むために建物を建築所有することとして本件土地のうち一五〇〇坪と残三〇〇坪とを順次借り受けたが、右は私法上の契約によるものではなく、当時施行されていた東京市条例昭和九年第三七号東京市中央卸売市場業務規程にもとづいてされた行政財産の使用許可処分によるものである、()その後まもなく、本件土地のうち七五六坪が進駐軍に接収されることになつたので、上告人は、昭和二二年一一月二五日右七五六坪の使用許可を取り消した、()被上告人は、昭和二四年末残余の一〇四四坪の一部に木造瓦葺平家建店舗一棟建坪五五坪を建築し、翌年から喫茶店等の営業を営むようになつたものの、一〇四四坪のうちのその余の部分については被上告人の事業計画が上告人の方針に沿わず承認を受けるに至らなかつた等の事情から利用されずに経過していた、()一方、朝鮮戦争のころから中央卸売市場への入荷が急激に増加し、市場としては右土地をも自ら使用しなければ入荷物や多数集合する市場関係者の混雑を防ぐことができなくなつてきたうえ、被上告人の土地使用が不必要または不適切と認められたので、上告人は、昭和三二年六月二九日昭和二三年東京都条例一四七号東京都中央卸売市場業務規程を適用し、一〇四四坪のうち九六〇坪につき同月三〇日限り使用指定を取り消す旨の通告を被上告人に対してし、同年九月二二日行政代執行法により右九六〇坪上に存した前記建坪五五坪の建物を取消をしていない八四坪上に移転し、右九六〇坪を回収した旨判示したうえ、上告人が右九六〇坪についてした使用許可の取消によつて被上告人が受けた右土地についての使用権の喪失という積極的損害は特別の犠牲に当たるから憲法二九条三項にもとづきその補償がされるべきであるとし、かつ、右土地の使用権は借地権と同一視することはできないが、これときわめて相似するものであるとして、補償金額は更地価格の六〇パーセントを相当とするとし、右の補償を求める被上告人の請求を一部認容している。

 ところで、本件取消を理由とする損失補償に関する法律および都条例についてみるに、本件取消がされた当時(昭和三二年六月二九日)の地方自治法および都条例にはこれに関する規定を見出すことができない。しかし、当時の国有財産法は、すでに、普通財産を貸し付けた場合における貸付期間中の契約解除による損失補償の規定をもうけ(同法二四条)、これを行政財産に準用していた(同法一九条)ところ、国有であれ都有であれ、行政財産に差等はなく、公平の原則からしても国有財産法の右規定は都有行政財産の使用許可の場合にこれを類推適用すべきものと解するのが相当であつて、これは憲法二九条三項の趣旨にも合致するところである。そして、また、右規定は、貸付期間中の解除に関するものであるが、期間の定めのない場合であつても使用許可の目的、内容ないし条件に照らし一応の使用予定期間を認めうるときは、これを期間の定めのある場合と別異に扱う理由がないから、この場合にも前記規定の類推適用が肯定されてしかるべきである。(中略)

 そこで、この見地から、被上告人の本件損失補償請求を一部認容した原判決を是認することができるかどうかについてみるに、前記国有財産法二四条二項は「これに因つて生じた損失」につき補償すべきことを定めているが、使用許可の取消に際して使用権者に損失が生じても、使用権者においてその損失を受忍すべきときは、右の損失は同条のいう補償を必要とする損失には当たらないと解すべきところ、原判決の前記判示によれば、被上告人は、上告人から上告人所有の行政財産たる土地につき使用期間を定めないで使用の許可を受けていたが、当該行政財産本来の用途または目的上の必要が生じて右使用許可が取り消されたものということができる。このような公有行政財産たる土地は、その所有者たる地方公共団体の行政活動の物的基礎であるから、その性質上行政財産本来の用途または目的のために利用されるべきものであつて、これにつき私人の利用を許す場合にその利用上の法律関係をいかなるものにするかは、立法政策に委ねられているところと解される。(中略)したがつて、本件のような都有行政財産たる土地につき使用許可によつて与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。すなわち、当該行政財産に右の必要を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひつきよう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであつて、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。

 それゆえ、被上告人は、むしろ、上告人に対し、本件行政財産についての右の必要のもとにされたと認めうる本件取消によつて使用権が消滅することを受忍すべき立場にあると解されるから、被上告人が本件取消により土地使用権の喪失という積極的損失を受け、この損失につき補償を必要とするとした原判決の判断は、さらに首肯しうべき事情のないかぎり、これを是認することができないのである。もつとも、原判決は、被上告人が本件使用許可を受けた際上告人の依頼により本件土地を整理、宅地化するため相当の費用を支出したことをもつてあたかも借地権取得に際し権利金を支払つたのと対比することができる旨判示しているが、右の一事をもつて被上告人の使用権を借地権に比することはできないというべく、右の事情もいまだ原判決の前記判断を是認するに足りるものではない。したがつて、原判決には法令違背があることに帰し、ひいて審理不尽、理由不備の違法があるものというべきである。そして、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、その余の上告理由について判断するまでもなく原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れず、本件は前叙の観点からなお審理をつくす必要があるので、右部分を原審に差し戻すこととする。 ‥‥」

  行政財産の目的外使用は公法関係とされており、要するにこの判決は相手の損失を補償する必要は、「原則としてない」とし、都が使う必要があるから、あなたの使用許可を取り消す・・・と言われたら、それを受け入れなければならない性質の使用権であり、例外的に「当事者の特約などで、使用する側が継続して使用できる実質的理由があれば補償は必要」としたものである。[iv]

 

 

 (イ)昭和郵便局掲示板撤去事件

 

 昭和郵便局掲示板撤去事件最一小判昭57・10・7最一小判民集36巻10号2091頁判時1067号39頁[v]は、郵便局長が郵便局庁舎の二階にあった掲示板を全逓組合に使用することを許可していたが、古くなったので、環境整備の目的から一回の掲示板を拡大してこれを使わせるかわりに、二階の掲示板の使用を禁じこれを撤去したため、組合が二階掲示板の原状回復及び損害賠償を求めて訴えを定期した事件であるが、行政財産たる掲示板の使用関係につき、国有財産法18条3項の目的外使用であることを否定し、庁舎管理権に基づく掲示物の使用許可によって事実上使用を許可されたものであることを明らかにしたうえ、その許可の性質は講学上の「許可」、すなわち一般的禁止の解除であって、これにより私法上のみならず公法上においてもなんら権利を設定、付与させるものではないことを明言した。判決は「庁舎管理者は、庁舎等の維持管理又は秩序維持上の必要又は理由があるときは、右許可を撤回することができる」とした[vi]

 

掲示板が国有財産法の目的外使用であったとしても、それは民法上の使用許可で契約関係を生じるものであるから、被許可者に何ら使用の権利を生じさせるものではないと説く見解もある[vii]]。しかし判決は掲示板の使用関係はそのように議論のある目的外使用ですらないので、なんら組合に占用利用の権利性を設定、付与するものでないとしているのである。

 

判決は次のとおり

「‥‥上告人の本訴請求は、上告人の支部組合である全逓信労働組合昭和瑞穂支部がかねて昭和郵便局長から掲示物の掲示の一括許可(以下「本件許可」という。)を受けて、その掲示場所として指定された同郵便局庁舎内の国の設置にかかる本件掲示板を組合活動のための掲示物の掲示に専用してきたところ、昭和郵便局長が違法に本件許可を撤回して本件掲示板を撤去したとして、被上告人に対し、本件掲示板が設置されていたのと同一の場所にそれと同一規格の掲示板を設置してこれを上告人に使用させるべきこと(以下「本件原状回復請求」という。)及び債務不履行若しくは不法行為又は国家賠償法一条一項の規定に基づく損害賠償の請求をするものである。そして、郵政省庁舎管理規程(昭和四〇年一一月二〇日公達第七六号。以下「庁舎管理規程」という。)二条は、各郵便局庁舎の庁舎管理者を当該各郵便局長とするものと定め、同規程六条は、庁舎管理者は庁舎等において広告物等の掲示等をさせてはならないものとするとともに、庁舎等における秩序維持等に支障がないと認める場合に限り、場所を指定してこれを許可することができるものとしているところ、原審が適法に確定した事実関係によれば、本件許可は昭和郵便局長が右規程六条の規定に基づいてしたものであることが明らかである。

二 そこで、本件許可の性質について考えるのに、庁舎管理規程は、郵政省に属する行政機関の遂行する事業及び行政事務の用に供される土地、庁舎等における秩序の維持等を図るため、庁舎管理権に基づく右土地、庁舎等の取締りに関し必要な事項を定めたものであつて(一条)、同規程四条以下の庁舎等における諸行為の規制に関する規定も専らその趣旨で設けられたものであること、他方、右土地及び庁舎についての国有財産法一八条三項の規定によるいわゆる行政財産の目的外使用の許可については、別に、郵政事業特別会計規程(昭和四六年三月一七日公達第一〇号)第一一編四条において、許可権者、許可の要件、その手続等に関する規定が設けられていること等に照らすと、庁舎管理規程六条に定める庁舎管理者による庁舎等における広告物等の掲示の許可は、専ら庁舎等における広告物等の掲示等の方法によつてする情報、意見等の伝達、表明等の一般的禁止を特定の場合について解除するという意味及び効果を有する処分であつて、右許可の結果許可を受けた者において右のような伝達、表明等の行為のために指定された場所を使用することができることとなるとしても、それは、その者が許可によつて禁止を解除され、当該行為をする自由を回復した結果にすぎず、右許可自体は、許可を受けた者に対し、右行為のために当該場所を使用するなんらかの公法上又は私法上の権利を設定、付与する意味ないし効果を帯有するものではなく(したがつて、使用の対価を徴することなどは、全く予定されていない。)、もとより国有財産法一八条三項にいう行政財産の目的外使用の許可にも当たらないと解するのが相当である。そうすると、昭和郵便局長が庁舎管理規程六条の規定に基づいてした本件許可によつては、上告人は本件掲示板ないし庁舎壁面についての使用権ないし利用権を取得するものではないから、上告人の本訴請求のうち、かかる権利を有することを前提とする本件原状回復請求及び右権利に対応する債務の不履行を理由とする損害賠償請求は、いずれも理由がないというべきである。

また、昭和郵便局長が本件許可を撤回し又は本件掲示板を撤去するに至つた経緯及び事情についての所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。そして、庁舎管理規程六条の定める許可の制度の先にみたような趣旨に徴すれば、庁舎管理者は、庁舎等の維持管理又は秩序維持上の必要又は理由があるときは、右許可を撤回することができるものと解すべきところ、原審が適法に確定した事実関係のもとにおいては、昭和郵便局長がした本件許可の撤回又は本件掲示板の撤去が違法ではないとした原審の判断も、正当として是認することができる。‥‥」

組合側の主張は、掲示板使用賃借契約ないし掲示板使用契約の不当解除、国有財産法183項の目的外使用の違法な撤回だったが、いずれも否定した。

もし掲示物の許可を国有財産法182項の目的外使用とすると、同法24条(貸付契約の解除)が準用される結果、本件掲示板は「国又は公共団体において公共用、公用又は国の企業若しくは、公益事業の用に供するため必要を生じたとき」でないと許可の撤回ができないため、不都合であり、国有財産法上の目的外使用許可ではないとした最高裁判決は妥当といえる。


[i] 村上順・白藤博行・人見剛編 別冊法学セミナー211号『新基本法コメンタール地方自治法』日本評論社2011年313頁

[ii] 詳細は加賀裕『地方公営企業の理論と実際』帝国地方行政学会1978年163頁以下参照

[iii]判例評釈 川口冨男・法曹時報27巻6号100頁1975年6月 、大和勇美・法曹時報29巻3号90頁1977年3月、下山瑛二・民商法雑誌71巻6号134頁川口冨男・ジュリスト562号64頁原田尚彦・ジュリスト590号43頁

[iv] http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1089559255

[v]判例評釈 松永榮治・法律のひろば36巻1号38~44頁 秋山昭八・教育委員会月報389号19~25頁1983年1月津山直登・自治研修234号62~72頁1983年1月 小西國友・月刊法学教室31号90~91頁1983年4月 林修三・時の法令1173号59~62頁1983年3月23日 西谷敏・季刊労働法127号110~118頁

[vi]茂田忠良・内田淳一「昭和郵便局掲示板撤去事件に対する昭和57107日最高裁判決について--庁舎管理権をめぐる問題」『警察学論集』36巻1号 1983

[vii]槇重博「郵政省庁舎管理規程(昭和四〇年一一月二〇日公達第七六号)六条に定める許可の性質(最判昭和57.10.7)『民商法雑誌』89巻1号 1983

2015/03/01

下書き)地方公営企業の職員の労働関係に適用できる法律、判例法理について(3)

承前(ただし(2)と一部重複し一部をカットした。)

 

. 庁舎管理権について

 

 但し、組合掲示板の一部撤去を正当とした昭和郵便局掲示板撤去事件最一小昭和57・10・7判決民集36巻10号2091頁判時1067号は.郵政省庁舎規程(昭和四〇年一一月二〇日公達七六号)六条に定める庁舎管理者による庁舎等における広告物等の掲示の許可は、掲示等による、表明等の一般的禁止を特定の場合について解除する処分であるとした。組合は使用権ないし利用権を取得せず、右許可の撤回または掲示板の撤去に対する原状回復請求権および債務不履行を理由とする損害賠償請求権は存しないと判示したが、企業秩序論は引用されず、端的に、掲示板それ自体が行政財産であるため庁舎管理権の問題として処理されていることからよ、庁舎管理権の発動のありかたについても言及しておく必要がある。

 

 

1)庁舎管理権の根拠

 

 

庁舎管理権の根拠についてはA公物管理権を根拠としてそれ自体独立した公法上の特殊な物的支配権とするもの(田中二郎『行政法』(中)有斐閣版432頁、原龍之助『公物営造物法』57頁)と、B所有権の現れにほかならないとする(美濃部達吉『日本行政法』(下)786頁)を根拠とする見方に分かれる。このほか有力ではないが特別権力関係説や、部分法秩序の理論もあるが、この際無視してよいと考える。

 

 行政主体が公物本来の機能である公共用又は公用に供するという目的を達成させるために有する特殊の包括的な権能を公物管理権という(田中二郎『新版行政法』中巻全訂版317頁)。A説では公用物たる庁舎の管理者が直接、国又は地方公共団体等の事務又は事業の用に供するための施設としての本来の機能を発揮するために一切の作用を行う権能を庁舎管理権とされ、その作用の形式から(1)庁舎管理規則(抽象的な規則の定立)、(2)目的外使用の許可(目的外使用)、(3)ポスター・ビラの撤去その他庁舎内の障害物の除去(事実上の行為)があるとされるのである。

 

 B説は、永井敏雄大阪高裁元長官(平成26年退官)が法務省刑事局付検事時代に書かれた論文[i]である。行政裁判所の認められてない現憲法下では公法上の権利の効果は乏しく意義がない。私人の施設管理権と統一的に説明できたほうがよい、借上庁舎等他有公物についても判例及び学説は債権に基づく妨害排除請求権を認めているから問題ないとするものである。

 

 

2)行政財産の目的外使用について

 

 地方公共団体の公有財産は行政財産と普通財産に分類され(自治法2383項)行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産という(自治法2383項)。

 行政財産の目的外使用については、その用途又は目的を妨げない限度で、その使用を許可できる(自治法23847号)している。

 「公用又は公共用に供し」と区別していることには意味がある。公用(財産)とは事務また事業を執行するため、直接使用しているために保有しているもので、庁舎、議事堂、研究所、公用車等という。

 公共用(財産)とは住民の一般利用に供されるために保有しているもので、道路、橋梁、公園、学校、病院等の敷地、建物をいう。公共用財産について、公共の利用に供するために人的サービスを伴い、上記の目的のために施設管理サービスを行っているものを「公の施設」という[ii]

 

ア 地方自治法と地方公営企業法の関係

 

 地方公営企業法では、「地方公営企業の用に供する資産」(地公企法97)には自治法に定める、行政財産と普通財産の両者が含まれるとしているが、地方公営企業法と地方自治法の関係はおよそ以下のとおりである。

 

○地方自治法の適用がある

 

 自治法238条(公有財産の範囲と分類)

 自治法238条3項(職員の行為の制限)

 自治法238条4項(行政財産の管理及び処分)

 自治法238条5項(普通財産の管理及び処分)

 自治法238条の6(旧慣による公有財産の使用)

 自治法238条7項3号から6号まで(行政財産を使用する権利についての不服申立)など

 

○地方自治法の適用除外

 自治法96条1項5号から7号まで(契約の締結、財産の交換、出費等、重要な財産の取得又は処分について議会関与を排除)地公企法40条1項による。

 自治法237条2項 など。

 

 したがって、地方公営企業用資産のうち行政財産の目的外使用については、その用途又は目的を妨げない限度で、その使用を許可できるとしている地方自治法が適用される。

 なお、地方公営企業用資産のうち行政財産を目的外使用された場合に徴収する使用料については、条例で定めることを要せず、管理者限りで定められる(地公企法40条3項)。行政財産の目的外使用の許可およびその取消、使用料にかかる督促手数料等の決定についても管理者が定めるものである(行実昭和41.10)[iii]

 

イ 公用財産と公の施設は違う

 

 なお自治法224条2項は正当な理由がない限り、住民が「公の施設」を利用することを拒んではならないとし、同条3項で住民が「公の施設」を理由することについて、不当な差別的取扱いをしてはならないと定めているが、庁舎は行政財産のうち公用財産であり、「公の施設」とは別の範疇である。水道局についていえば庁舎等は公用財産、配水本管は公共用財産あるいは公の施設と区別してよいと思う。

 

ウ 庁舎管理規則における目的外使用の規定の例

 

 ちなみに国有財産法18条3項には「行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度において、その使用又は収益を許可することができる。」と自治法23847号と類似の規定があり、国営企業や省庁の庁舎管理規則もそれに準拠した規定がなされているのである。

 例えば『郵政省庁舎管理規程』(昭40・11・20公達)では「庁舎等における秩序維持等、犯罪の防止、業務の正常な遂行、清潔の保持及び災害の防止を図る」(一条)という目的のために必要な事項を定めたとし、「庁舎管理者は、庁舎等における秩序維持等に支障がないと認める場合に限り、庁舎等の一部をその目的外に使用することができる」(四条) とされ、国有財産法の趣旨に沿ったものとなっている。また厚生労働省が入居する霞ヶ関の『中央合同庁舎第5号館の管理に関する規則』では「第1条 この規則は、国有財産法(昭和23年法律第73)5条の2の規定に基づき財務大臣の指定した中央合同庁舎第5号館を厚生労働大臣が統一的に管理することを目的とし、「12条 管理官庁等は、原則として合同庁舎を所掌業務以外に使用させてはならない。2 管理官庁等は、やむを得ない事由によりその管理する合同庁舎の一部を目的外に使用させようとする場合は、あらかじめ「使用許可申請書」(別紙第4号様式)を提出させ、当該申請書を審査し、当該行為が所掌業務の遂行を妨げず、かつ、庁舎内の秩序維持及び安全保持に支障のないものに限り「使用許可書」(別紙第5号様式)を申請者に交付し、許可するものとする。この場合において、管理官庁等は、必要な条件を付し、又は指示することができる としている。

 

エ しかし組合への掲示板は目的外使用とされないのが判例の通説

 

 一般的にいって目的外使用の実例として地方自治法等の解説書で例示されているのは、食堂、売店施設、理髪室等の厚生施設、記者クラブ等の広報施設、災害時の応急施設である。清涼飲料やタバコの自販機の設置等もそうであろうし、映画のロケーション撮影のため便宜供与する場合も目的外使用の範疇と考えられる。

 しかし組合掲示板の判例では、組合に便宜供与された使用関係は事実上の使用関係であり、組合に使用権を設定するものではないとしている。

昭和郵便局掲示板撤去事件最一小判昭57・10・7最一小判民集36巻10号2091頁判時1067号39頁について--庁舎管理権をめぐる問題」は行政財産たる掲示板の使用関係につき、国有財産法18条3項の目的外使用であることを否定し、庁舎管理権に基づく掲示物の使用許可によって事実上使用を許可されたものであることを明らかにしたうえ、その許可の性質は講学上の「許可」、すなわち一般的禁止の解除であって、これにより私法上のみならず公法上においてもなんら権利を設定、付与させるものではないことを明言した[iv]。判決は「庁舎管理者は、庁舎等の維持管理又は秩序維持上の必要又は理由があるときは、右許可を撤回することができる」とした。

掲示板が国有財産法の目的外使用であったとしても、それは民法上の使用許可で契約関係を生じるものであるから、被許可者に何ら使用の権利を生じさせるものではない説く見解もある[v]。しかし判決は掲示板の使用関係はそのように議論のある目的外使用ですらないので、なんら組合に占用利用の権利性を設定、付与するものでないとしているのである。

また税務署における組合掲示板につき足立税務署事件最二小判昭59・1・27労判425号30頁は「庁舎管理者による庁舎等における広告物等の掲示の許可は、専ら庁舎等における広告物等の掲示等の方法によってする情報、意見等の伝達、表明等の一般的禁止を特定の場合について解除するものであって、右許可の結果許可を受けた者は右のような伝達、表明等の行為のために指定された場所を使用することができることとなるが、それは、禁止を解除され、当該行為をする自由を回復した結果にすぎず、右許可を受けた者が右行為のために当該場所を使用するなんらかの公法上又は私法上の権利を設定され又はこれを付与されるものではなく、また、右許可が国有財産法一八条三項にいう行政財産の目的外使用の許可にもあたらないと解すべきことは、当裁判所の判例(最高裁昭和五二年(オ)第五〇〇号同五七年一〇月七日第一小法廷判決・民集三六巻一〇号二〇九一頁)とするところであり、原審の適法に確定した事実関係の下では、結論においてこれと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。」とし、昭和郵便局事件と同じ結論である。

 

 

 

 

 



[i] 永井敏雄「庁舎管理権と裁判所」『警察学論集』31巻9号1978年

[ii]村上順・白藤博行・人見剛編 別冊法学セミナー211号『新基本法コメンタール地方自治法』日本評論社2011年313頁

[iii] 詳細は加賀裕『地方公営企業の理論と実際』帝国地方行政学会1978年163頁以下参照。

[iv]茂田忠良・内田淳一「昭和郵便局掲示板撤去事件に対する昭和57107日最高裁判決について--庁舎管理権をめぐる問題」『警察学論集』36巻1号 1983

[v]槇重博「郵政省庁舎管理規程(昭和四〇年一一月二〇日公達第七六号)六条に定める許可の性質(最判昭和57.10.7)『民商法雑誌』89巻1号 1983

2015/02/15

公務員の争議行為を理由とする懲戒処分等の相場についての検討(6)

38(10708)北海道教育委員会(北教組43年一斉休暇闘争)事件 札幌地判平2.12.26 労判578号40頁
原告34名のうち当初3人が減給1/10(3か月)その余の原告は戒告だったが審査請求の採決により3人も戒告に修正採決
 処分理由は、北教組の統制のもとに昭和43年10月8日一斉休暇闘争(勤務場所を離脱し、正常な運営を阻害した)または、 宿日直勤務命令を受けながら従事しなかった。第一回自主教育研究釧路大会(教研集会)または第18次合同教研全道集会に参加するため職免の承認に得られなかったにもかかかわらず、勤務場所を離脱した。

39(10709)北海道教育委員会人勧スト事件 札幌地判昭54.5.10判タ394号145頁 
同判決は戒告~免職の懲戒処分を取り消すものである。
「‥‥その時期・頻度、職務放棄時間、放棄の方法は年一回、短時間、単純不作為の形態であり、さらに行われた時期等を勘案すると‥‥児童生徒への影響を考慮し、比較的小さな規模で行われた結果と認められ‥‥北海道教育委員会が懲戒権を濫用し結果である‥‥」
昭和41・10・21の争議行為(一斉に休暇を請求し要求闘争 定時制は1時限の終了時までその他は午後授業開始から勤務時間終了まで)
昭和42.10.26の争議行為(早朝勤務1時間について休暇請求をして職場を離脱し市町村単位で要求貫徹集会を行う)
昭和43.10・8の争議行為(早朝勤務1時間について休暇請求をして職場を離脱する)
。本件懲戒処分は次のような原則で行われた

昭和41・10・21争議行為
争議行為に参加した者は原則として戒告
(昭和41・5.13に行なわれた北教組統一行動に参加するため勤務場所を離脱し、訓告あるいは懲戒処分を受けたにむもかかわらず再び前記争議行為に参加した者は原則として停職一月)
 管理職の地位にありながら参加した者は停職三月
 事後は反省の情を示した者は、戒告にあたる者を訓告、停職一月にあたる者は減給六月
(被処分者 北教組組合員(小中高校・特殊学校)2737人、高教組組合員1559人、合計4296人)

昭和42.10.26争議行為
争議行為に参加した者は原則として訓告
(昭和41.10.21争議行為に訓告もしくは戒告を受けた者は戒、減給以上の処分を受けた者は減給六月』
 管理職の地位にありながら参加した者は停職三月
(被処分者 北教組組合員4073人)

昭和43.10.8争議行為
 北教組三役3人 免職
 北教組中執委員13人 停職
 北教組支部役員55人 減給

★★★ 40(10710)福教組北九州支部事件 福岡地判昭60.12.26 労判468号16頁
(控訴審 福岡高判平3・12・26、上告審最一小判平5.4.8)

人事院勧告完全実施を要求する昭和43~46年5回にわたる争議行為に対する北九州市教育委員会による単純参加者で戒告から減給一月、組合役職者で最大停職三月の懲戒処分に懲戒権の濫用はなく適法とする。最高裁も原判決を維持し上告を棄却している。

昭和43・10.8争議行為(早朝勤務時間1時間の休暇をとらせ要求貫徹の集会を実施)
(福教組は、組合員の92%にあたる1万8262人が統一実力行使に参加した。)

昭和44.7.10争議行為(早朝30分勤務時間カット)
(福教組は組合員の95.55%にあたる1万8659人が統一実力行使に参加した。)
当局側の対応
○文部省 昭和44年6月25日初等中等教育局長名で、各都道府県・指定都市教育委員会教育長あて通達を発し、日教組の七・一〇闘争の計画について、教職員がかかる違法行為を行うことによって、学校教育の正常な運営を妨げることがないよう十分指導するとともに、当日の服務の実態把握を的確に行うとともに、あえて非違をおかすものについては厳正な措置をとるよう要請した。
 
 ○北九州市教委 7月7日、教育長名で小・中・養護学校長宛前記、局長通達を添付したした通達を発し、日教組の七・一〇闘争の計画について、公立学校教職員が職務を放棄することは、地公法に禁止されている違法行為であり、教職員がこのような違法行為に参加することがないよえう所属職員の指導及び服務の監督に万全の措置を講ずるよう指示した。
 また7月7日福教組北九州支部長に対し、7月10日に予定されている統一行動を行わないよう文書で強く警告するとともに、教職員な各人に対しても、7月7日、文書をもって日教組及び福教組が7月10日に予定している違法行為に参加しないよう警告し、更に7月8日各校長をして職務命令書を交付させ、「七月一〇日は定められた勤務時刻に出勤し命ぜられている職務を遂行するよう」との職務命令を発せしめた・

昭和44.11.13争議行為(早朝勤務時間1時間30分カット)
 闘争目的は人事院勧告の5月1日実施をかちとる。最低賃上げ幅を四〇〇〇円とする。期末手当を最低0.2か月分とする。等
(福教組の93.64%にあたる1万8233人が統一実力行使に参加)

昭和46.5.20争議行為(早朝30分勤務時間カット)
(福教組の81.7%にあたる1万4929人が統一実力行使に参加)

昭和46年7.15争議行為(早朝30分スト)
(福教組組合員総数の88.18%にあたる1万6373人が統一実力行使に参加)

判決は次のとおり

「‥‥被告(北九州市教委)は本件各処分に際し、単純参加一回につき戒告、二回につき減給一月を原則とし、離脱期間の短いことを軽減事由とし、組合役職者等指導的地位にあること(本部役員、支部三役)を加重事由としてこれに修正を加える懲戒基準の下に処分を行ったが、本件各処分を受けた原告のうち、単純参加者として最高処分は減給一月で、組合役職者としてのそれは停職三月であり、従来の処分、他の任命者の処分、他府県の処分に比しかなり重いといえる面の存すること、しかもこれらの処分には、すべて昇給延伸を伴うものであること。また、以前の争議行為なおいては処分の対象の範囲が主に指導的立場の組合幹部に限定してたなされ、本件のように単純参加者を含めた大量処分がなされることは異例に属することは認められるが‥‥本件各処分は未だ社会観念上著しく裁量権の範囲を逸脱し妥当性を欠いた苛酷な処分であるともいい難い。‥‥福教組北九州支部の組織を破壊する意図を有していたという時事も認めることはできない。‥‥懲戒権を濫用した違法な処分であるとすることはでき
ず、‥‥各処分の取消しを求める原告らの各請求はいずれも理由はない‥‥」

41(10711)大分県教組人勧スト処分訴訟 大分地判平5.1.19 判時1457号36頁
(控訴審-福岡高判平12.10.6)
人勧完全実施を要求する昭和58年10月8日勤務時間内最高2時間(定時制1時間)スト
原告1003人 戒告~減給 なお、本件は9年ぶり(49.4.1統一スト)のスト参加者全員処分である。

(一審判決は、本件懲戒処分を違憲とした判決)

 「各所属学校長、教頭は、本件ストライキに先立ち‥‥争議行為を行った者に対しては厳正な措置をもって臨む旨伝達するとともに、本件ストライキは違法であるから、これに参加せず、当日は平常どおり勤務するよう職務命令書を交付して、職務命令を発した。
 しかるに、右原告らはも右職務命令に違反して本件ストライキに参加し‥‥勤務時間中に職場を離脱して、職務を放棄した。
 右原告らの行為は、争議行為を禁止した地方公務員法第三十七条一項に違反し、同法三五条(職務に専念する義務)、三二条(職務上の命令に従う義務)に違反するもので、同法二九条一項一号ないし三号に該当されている。」
本件懲戒処分の背景について原告の主張
 「昭和五八年七月の大分県議会で、自民党及び自民クラブは、昭和五七年一二月一六日の人事院勧告ス処分をめぐり県教委を追及した。その理由は、(1)他県に比較して処分時期が遅れたこと、(2)県教委が従来県議会に対し「文書訓告者が違法ストを重ねた場合は、懲戒処分の強い姿勢で臨む」と言明していたにもむかかわらず、軽い処分に止めたことの二点てあり、高野教育委員長の答弁を不満として議会が中断し、空転が続くという異常事態が起こった。
 同月一九日高野教育委員長は、混乱の責任をとって県議会議長に辞意を表明し、議長あっせんという形式の政治的圧力を受け入れて、同日午後七時からの議会で同委員長が「今後重ねてストを行ったものき従前より厳しい措置で対処する」旨を言明することでようやく混乱を収拾した。」
 
42(10712)北海道教育委員会(北教組事件)札幌地判平7.11.13 出所TKC法律情報データベース 単純労務職員の昭和52年2.17の午後1時間35分~2時間15分の職場離脱と同年4.15の早朝2時間ストへの単純参加の事例(本件は地労委の懲戒処分を取消する救済命令を違法とする救済命令取消し訴訟。
単純労務職員H(根室市臨時職員・根室市立根室西高校の事務生)
単純労務職員T(北海道函館盲学校の寮母)いずれも戒告処分

 なお、北海道教育委員会は、上記各ストライキに参加したことを理由として、各市町村教委の内申に基づいて、52年9月12日~53年2月10日の5回にわたって、停職2ヶ月11名、減給1ヶ月~2ヶ月が184名、戒告が2万5695名の北教組組合員を懲戒処分とした。

昭和52年2月17日 午後3時に職場を離脱し、市町村単位の要求貫徹集会に参加する争議行為
(2万5751人が参加、組合員の88.28%)
 戒告処分を受けたHは午後3時から午後4時35分までの1時間35分、Tは午後1時45分から礦午後4時までの2時間15分の職場離脱)

昭和52年4月15日 早朝2時間スト
 Hは午前8時から午前10時まで2時間、Tは午前6時45分から8時45分職場離脱

(10713)全気象東北支部仙台分会事件 最三小判平6.3.2判タ817号163頁
シリーズ4の31と同じ

43(10714)12.福岡県職労(43.44.46闘争)事件 福岡地判昭63.3.15判例地方自治49号23頁(1)昭和43年10月8日 始業時より1時間のスト(公務員共闘全国統一行動)
 約2900人が参加した。

(2)昭和44年11月13日 始業時より1時間のスト(人事院勧告完全実施、安保条約破棄を要求、佐藤首相訪米抗議の公務員共闘・自治労統一行動)約4300人が参加した。

(3)昭和46年7月15日 始業時より1時間のスト(公務員共闘・自治労の人事院勧告4月実施要求統一行動)約3600人が参加

 昭和43.44.46年に福岡県職労による人事院勧告完全実施等を要求する一時間の時限ストに対して、(1)については44年2月17日付、(2)については昭和45年1月1日付、(3)については昭和46年9月23日付、争議行為の決定・指導・参加等を理由とし、参加の態様に応じ停職(六月~一月)、減給(1/10 1ヶ月)・戒告の懲戒処分を行った。争議行為の協議決定、争議行為の参加を呼びかけたり、ピケを張った組合員が多数処分されている。原告は211名。なお単純参加者20名の戒告処分を裁量権の濫用とする組合側の主張は認めていないが、管理職の作成した報告書がない戒告処分2名については懲戒処分の取消し請求を認容している。

[昭和43.10.8争議行為の事前の警告]
 被告は、一〇月七日総務部長名をもって、本庁各課長及び各出先機関の長あてに、前記ストライキ〔昭和四三年一〇月八日勤務時間開始時刻から一時間のストライキ〕に参加することは違法行為であるので、所属職員にかかることがないよう十分指導するよう通達するとともに、所属長から所属職員に対し、一〇月八日午前八時三〇分までに出勤して、職務に従事するよう職務命令を発するよう指示した。右通達及び指示に基づき、各所属長は、各所属職員に対し、右趣旨を伝達するとともに、前記の職務命令を発した。

44.全商工事件 東京地裁昭61.3.25判決 判時 1189号
(昭和44年通産省職員で組織する全商工が人事院勧告完全実施を要求する国公共闘、公務員共闘の配置する統一行動に参加し、一支部二八分会において勤務時間に29分食い込む(*但し出勤簿整理時間内)職場大会を実施。全商工本部・支部・分会役員原告八名を含む37人に戒告処分、85人に訓告、6300人に厳重注意)
 *当時、通産省の勤務開始時刻は原則午前八時三〇分であるが、本省など大都市部においすては大臣訓令により開始時刻を遅らせる措置をとっており、大部分の者が午前九時一五分とされ、九時三〇分まで出勤簿整理時間とされ、その時刻に出勤簿を押せば遅刻扱いにならないとの取扱いが定着していた。

通産省本省での争議行為

[事前の警告]
 通産省大臣官房のM秘書課長は同年一〇月二一日、全商工のM執行副委員長及びI書記長なに対し、‥‥一一月一三日に予定している勤務時間内食い込み早朝職場大会は違法であるとして‥‥勤務時間内に食い込んで行われた場合には、厳重に処分せざるを得ない旨通告した。更に、当局は、同年一〇月二三日付付けで、「職員の皆さんへ」と題する次官文書を通産省の職員全員に配布した。次官文書には、勤務時間に食い込む職場大会手は明らかに国公法で禁止された争議行為であり、「このような司法な職場大会には絶対に参加しないようにしてください。」「職員の給与の改善については、当局としても出来る限り努力しております。職員の皆様の自重を切望してやみません。」との記載があった。これとは別に総理府総務長官が同日付けで‥‥公務員共闘の統一ストライキについて、公務員はいかなる場合も争議行為をしてはならないから、‥‥ストライキ宣言を発することは遺憾であるとし‥‥自重を求める談話及び公務員共闘議長に対する同旨の警告書を発していた。通産省当局は、右談話及び警告書についても職員らに周知させるとともに、全商工のI書記長にもそれらの写しを交付しはて自重を求めた。‥‥その後全商工は、同年一一月七日、大平通産大臣と交渉して‥‥大平通産大臣は、人事院勧告の完全実施には努力するが、時間内食い込みの職場大会はしないよう要望した。以上のほか当局はもM秘書課長において、同月一一日に全商工幹部に対し、翌一二日には全商工本部のM副委員長とI書記長に対し、それぞれ同月一三日の職場大会は必ず勤務時間内に終わるよう要望し、同月一二日には再び同旨の次官文書を作成し、各庁舎に掲示してその趣旨を職員らに周知させた。また内閣官房長官は、同日、公務員は法律によって一切の争議行為を禁止されているから、違法なストライ的は行わないよう、関係組合員の自省自戒を要望する旨の談話を発表し、右談話は一般報道機関を通じて広く報道された。
[当日の解散命令]
 ‥‥大臣訓令所定の勤務開始時刻である午前九時一五分近くになっても、職場大会は終了する様子がみられなかった。‥‥当局ではT官房審議官が、午前九時一四分ころ、被告事務次官名によるI本省支部執行委員長あての解散命令書を携えて庁舎内から中庭に赴こうとしたが、中庭の入口付近に待機していた三四名の組合員らに中庭に入ることを拒まれ、やむを得ず引き返した。そこで、午前九時一六分ころU人事専門職が、官房長室から中庭に向けて設置した拡声器により「ただいま九時一五分を過ぎ勤務時間です。本省支部委員長に対し、事務次官より解散命令が出されています。組合が現在開催している職場大会は違法であり、かつ勤務時間中における中庭の使用は許可していないからただちに解散しなさい。」との放送を二度繰り返したが、組合は無視‥‥更に、午前九時一八分ころ、官房室から就業命令を記載した懸垂幕を垂らして大会参加者に対し就業命令が発せられたことを明示するとともに、U人事専門職が拡声器で「大会に参加している職員に対し、事務次官より就業命令が出されています。皆さんの参加している職場大会は違法であるから、直ちに解散し就業しなさい。」との放送を二度繰り返した。

東京通産局の争議行為

[事前の警告]
 当局は、同年一〇月二二日、S総務部長が東京通産局分会のI事務局長及びH事務局次長に対し、「職場大会は勤務開始時刻まで終わらせるよう組合の良識ある行動を期待する。もし違法な職場大会が行われるようであれば、主催者はもとより単純参加者も法に照らして処分せざるを得ない」旨伝達した。‥‥翌二三日には、各課において職員に対し、本省から送付されてきた‥‥「職員の皆さんへ」と題する事務次官文書を配布し、同月二九日には‥‥総理府総務長官談話の写しを各課に配布してた職員に回覧させた。しかし、東京通産局分会は、組織的に次官文書の返上運動を行い‥‥
[当日の解散命令]
 当局は、これが庁舎管理者の許可を受けないで行われていることから、東京通産局長名の解散命令書を作成し、午前九時ころ、I総務課長及びT会計課長が、これを原告Aに手交するため、本局庁舎九階の局長室から東側の廊下を通って大会場に赴こうとしたが、廊下の途中で分会の組合員七、八名からなるピケ隊に阻止され、命令の趣旨を説明して通行を求めても阻止を解かなかったため、やむなく引き返した。更に、勤務時間開始時刻で゜ある午前九時一五分になってもね本件職場集会が続行されていたので、K総務部長が、I、Tの各課長と課長補佐二名を伴って、右解散命令書を原告青山に手交するため大会場に赴こうとしたが、前同様ピケ隊阻止された。さのころK海水課長補佐は、局長の命により就業命令を記載したプラカードを携えて大会場に赴こうとしたが、やはりピケ隊に阻止されたため、その場でプラカードを高く掲げて大会場の方向に示した。

45.人事院(全日本国立医療労組)事件東京地裁平11.4.15判決 労判761号
(平成三年全日本国立医療労組(全医労が)昭和40年に人事院が行った判定が20年たっても実現されていないとして、看護婦増員5000名等の早期実現を要求し、全国で二万五千名が参加した勤務時間に最大27分食い込む職場大会の実施につき、積極的に関与し指導的な役割を果たした組合員の戒告処分を是認)
(本省における警告)
 厚生省保健医療局管理課調査官H及び同調査官Mは、平成三年一一月五日、全医労本部の書記長M、同書記次長Wに対し、全医労が一三日に予定している時間内職場大会につき中止を勧告し、同月八日に厚生本省から全医労本部に対し、各施設から全医労各支部に対し、それぞれ警告をする旨予告した。
 厚生省保健医療局は、平成三年一一月八日、同局長名義の全医労医院長あて「全医労が一一月一三日に計画している時間内職場大会は違法なものである。もし違法な争議行為が行われたときには、関係法令に基づき厳正な措置をとらざるを得ないので、自重を強く要望する。」旨の警告書を用意した。前記調査官Hは、前記書記長Mに対し、右警告書を発出するから受取りにきてくれるよう電話連絡をしたところ、受取りを拒否されたので、右警告書を読み上げた上、郵送する旨伝え、同日、全医労本部あてに右警告書を配達証明・速達郵便で差し出したが、全医労はその受領を拒否した。また、国立病院、国立療養所等の二四二施設は、それぞれ各施設は、それぞれ各施設の全医労支部に同様の警告を行った
(全医労南福岡支部の争議行為)
‥‥南福岡病院においては、同病院長名義の南福岡支部支部長庶あての「貴支部は、来る一一月一三日に勤務時間内職場集会を計画している模様であるが、いうまでもなく、国家公務員子は、いかなる場合においても争議行為を行うことを許されず、このような違法行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし若しくはあおってはならないこととなっている、当局は、貴支部が違法は争議行為を行った場合には、関係法令に基づき厳正な措置をとらざるを得ないので、違法行為が行われないよう貴支部の自重を強く要望する旨の警告書を用意し、同病院庶務課長Sが、同月一一日、南福岡病院応援室において、南福岡支部書記長K及び同書記次長Iに右警告書を交付しようとしたが、両名が受領を拒否したので、警告書を読み上げて警告した。
(全医労西多賀支部の争議行為)
[*当時の西多賀病院は現在の独立行政法人国立病院仙台西多賀病院]
[事前の警告]
 西多賀病院は、同病院長名義の西多賀支部支部長あての「貴支部は、一一月一三日に勤務時間内職場集会を計画している模様であるが、国家公務員は、いかなる場合においても争議行為を行うことを許されず、このような違法行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし若しくはあおってはならないこととされている、当局は、貴支部が違法は争議行為を行った場合には、厳正な措置をとらざるを得ないので、違法行為が行われないよう貴支部の自重を強く要望する」旨の警告書を用意して、西多賀病院庶務課長T及び会計課長Kの両名が、同月八日、西多賀病院中央材料室において、西多賀支部副支部長Yにに同警告書を交付しようとしたが、同人は右警告書の受領を拒否した。
 西多賀病院は、同月一二日、同病院長名義の職員あての「全医労西多賀支部は来る一一月一三日早朝時間内職場集会を計画している模様であります。すでに承知のとおり、勤務時間内職場は国家公務員法で禁止された争議行為であります。このような違法行為には、絶対に参加しないようにしてください。もし、これに参加した場合には、関係法令に照らし、必要な措置をとらざるをえないので、皆さんの良識ある行動を望んでやみません。。」と記載しこの書面を、西多賀病院内の四か所の掲示板に掲出‥‥。
[当日の解散命令等]
 西多賀病院の事務部長Sは大会参加者に対し、勤務時間前の同日午前八時一八分及び一九分に、構内の向け許可使用を理由に解散命令を発し、勤務時間に入った午前八時三〇分、三一分及び三六分の三回にわたり、本件職場大会は時間内の職場大会で違法であるとの理由による解散命令及び就業命令を発したが、大会参加はこれを無視‥‥

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